セミラミス「物凄い退屈なのでカルデアを練り歩く」(166)

セミラミス「カルデアに召喚されて一か月。やっとのこと我専用の玉座が完成した」

セミラミス「シミュレーターとは言え存外心地が良いものだな。うんうん」

セミラミス「はっはははは。やり切った。やり切ったぞ我は。ははは」

セミラミス「……暇だな。退屈だ。この広い空間に我一人となればさもありなん」

セミラミス「どうしてくれようか」

セミラミス「……マスターを呼ぶか」

シミュレーター内 虚栄の空中庭園

立香「げほっげほっ! うえええっ……!」ゴホゴホ

セミラミス「よく来たな我がマスター! 藤丸立香よ! まずは長旅ご苦労さまと言ってやろう!」

セミラミス「物理的な距離はそうでもなかったが、首に鎖を巻きつけて無理やり引っ張ったからな! 肉体的に相当苦痛であっただろう!」

セミラミス「持て成すぞ? 緑茶とほうじ茶とコーラとアクエリアス、どれがいい?」ワクワク

立香「い、今それどころじゃないんだけど……乙女の肌に痕が残るようなことしないでよ……!」エエッホエッホ!

セミラミス「我お手製の保湿クリームをやろう。治験としてバイト代も払うぞ」ヒョイッ

立香「イヤな予感がするから遠慮させてください……」

立香「あー、びっくりした。それで。何の用です? さっきまでマシュとリバーシやってた途中だったんすけど……」

セミラミス「暇だ。我の退屈を癒せ。できなければ斬る」

立香「斬る!?」ガビーンッ

セミラミス「もしくはバシュムのエサにする」

バシュム「ジュララララララララ!」フシュルルルルル

立香「どっちにしろ死ぬ!」ガビーンッ

立香「なるほど。最近まではチクチクと宝具をシミュレーター内で作ってたのが終わったから」

立香「急に暇になったので相手をしろと」

セミラミス「直接的に相手をしなくともよいぞ? 暇を潰せるいい娯楽を紹介できるのであれば」

立香「天草くんに相手してもらうとか……」

セミラミス「召喚できたのか?」

立香「未召喚でした……」ズーン

セミラミス「であろう。仮にいたとして積極的に関わろうなどとは思わぬしな」

セミラミス「なのでそれ以外の娯楽を用意せよ。この空中庭園は広いのでな。大抵の遊びには対応できると思うぞ?」ワクワク

セミラミス「必要な人材がいれば我が連れてこよう。なぁに、その程度は女帝としての我の甲斐性だ」

立香(面白いくらい自分の都合しか話さないなぁ)

立香「別に連れて来るのは構わないけど、さっきみたいな鎖ジャラジャラはちょっと……」

セミラミス「なに? 不満か」

立香「それもそうだけど、まずそんな不快な方法で連れてこられたら一緒に遊ぶ気も失せますって」

セミラミス「ふむ。そうか。ならば別の方法を検討しよう。そうさな……」

セミラミス「……ふーむ。今の出力なら呼べないこともないか? 小間使いとしては使えるかもしれぬな。そやつに招待を任せるとしよう」

立香「?」

セミラミス「我が攻撃手段として呼び出すバシュムがティアマト由来の蛇だということは知っておるか?」

立香「ああ、うん。図鑑で見た。バビロニアの件もあったし」

セミラミス「今ならギルタブリルをも召喚できるやもしれぬ。あれと同じような原理(ノリ)で!」

立香「原理って書いてノリって読むのやめよう」

立香「……って、ギルタブリル!? それだけはよしといた方がいいよ! 巴がブチ切れるよ!」

セミラミス「はあああああああ! 我が意に応え出でよギルタブリル!」バチバチバチッ

立香「もうやってるーーー! しかもなんか成功しそう!」ガビーンッ

セミラミス「うおおおおおおおおおお!」

バシュウウウウウウッ!

立香「あ、ああ……召喚しちゃった……なんてことを」

立香「ん?」

セミラミス「よし。成功だ。よく働けよギルタブリル」

エネゴリくん「ウホ」

立香「エネゴリくんじゃない!? それ!」ガビーンッ

セミラミス「……? エネゴリくん? どう見てもギルタブリルであろう? なぁ?」

エネゴリくん「ウホ」コクンッ

セミラミス「本人もこう言っておるぞ。ギルタブリルだ、間違いなく」

立香「いやいやいやいやいやいやいやいや!」

セミラミス「というわけでギルタブリルよ! 適当に通りすがったサーヴァントを片っ端からこの空中庭園に招致せよ!」

セミラミス「最悪は実力行使で構わぬ!」

エネゴリくん「ウッホ! ウッホ! ウッホ!」ダッ

立香「行っちゃったーーー!」ガビーンッ

五分後

バァーーーンッ!

巴御前「一定の安寧が約束されるべき拠点に『こんなもの』を持ち込んだ命知らずはここですか?」ズリズリズリ

エネゴリくん「」ボロッ

立香「エネゴリくーーーんっ!」ガビーンッ

巴御前「……? えね、ごり? なにを言っておられるのですか。コイツはティアマトの十一の獣が一画、ギルタブリルですよ?」

立香「嘘でしょ!? 嘘だよね巴! マジで言ってる!?」

セミラミス「……貴様一人だけか……まあいい。巴御前と言ったか。我の退屈を癒せ」

巴御前「?」

立香「ひとまずエネゴリくんの首根っこを掴んで引きずるのやめよう! ね! ね!」アタフタ

五分後

巴御前「なるほど。死ぬほど退屈だったから適当に人を呼んでいた、と」

巴御前「その過程であのバケモノをカルデアに放った、と」

巴御前「マスター。この人はこのまま放置してよい類ですか? 私にはどうもブラックリスト直行のド級危険人物にしか見えないのですが」

立香「悪気はないからさ……いや悪気なくこんなことしてる時点で確かに危険だけど……」

巴御前「まあいいでしょう! 遊びたいというのであれば私にも考えがあります! ゲームをしましょうゲームを!」ワクワク

セミラミス「その手のものには疎い。適当に持て」

巴御前「お任せを! あ、ところで……」

巴御前「まだ息があるようですね……それの処理は如何様に?」ギロリ

エネゴリくん「」ビクビク

セミラミス「後で適当にこちらが処理する」

巴御前「それならいいでしょう!」グッ

立香「今すぐ帰そう! ガソスタに!」

その後

巴御前「……あ。ここって電気が通ってるんですね……据え置き機も持って来れるかな……」

セミラミス「……ム。なんだこれは。タイプ? 存外多いぞ」ポチポチ

巴御前「あ。タイプ相性表は私が手作りしたものがこちらに」

セミラミス「ふむ……?」ポチポチ

数時間後

イギアリ!

セミラミス「……推理ゲーというものも案外、スリルがあるものだな……」

立香「わかるよ。割と不気味な雰囲気もあるからね……」

巴御前「あ。次はこの証拠を……」

セミラミス「口を閉じよ! 冗談ではすまぬぞ……!」

巴御前「す、すみません! つい……! 推理ゲーでネタバレは致命的ですよね」

数時間後

セミラミス「……むう。狩りゲーに関しては、我はどうとも言えぬな……」カチャカチャ

セミラミス「こう、微妙に足手まといになっておるような……?」

巴御前「強い武器で格下相手に無双するのが楽しくてつい……」カチャカチャ

セミラミス「それ以前にプレイヤースキルが我と貴様では違うであろう……ん? マスターはどこに……」

立香「ぐー」スヤァ

セミラミス「寝落ちか! まだ途中というに!」ガーンッ

数時間後

立香「……はっ! 寝てた! あ、あれ。毛布? 誰がくれたの?」

巴御前「セミラミスさんが用意したものですよ。かけたのは私ですが」

立香「ごめん巴。途中で寝ちゃった」

巴御前「いえ。いいんですよ。というかサーヴァントの私たちに付き合って貫徹ゲーム祭りとかする必要もありませんし」

立香「貫徹!?」

セミラミス「……存外楽しかったな」ホクホク

立香(本当だ。微妙に満たされた顔になってる)

セミラミス「一日目はゲーム三昧。実にいい趣向であった。大儀である」

巴御前「お気に召したようで何よりです」

セミラミス「だが二日目も、というわけにはいかん。飽きるであろうしな」

巴御前「え」

立香「……あの。つかぬことをお伺いしたいのですが」

セミラミス「なんだ?」

立香「私がここに来てからどの程度の時間が経ったので?」

セミラミス「大体十三時間か……?」

立香「日付変わってるじゃん!」ガビーンッ!

巴御前「私としたことが、夢中になって時間を忘れてしまうとは……!」

立香「セミラミス! 私、そろそろ帰りたいんだけど! マシュの前から急に消えたから多分心配させちゃってると思うし!」

巴御前「多分? いえ、心配してましたよ」

立香「え」

巴御前「ですので、空中庭園に誘われて、そこで遊んでいますと伝えておきました」

立香「ちょっと待って。いつの間に」

巴御前「ぴーえすふぉーを外から空中庭園に運び込むときに見かけたので……」

立香「そういえば据え置き機を持ってくるって言ってたね!」ガーンッ

セミラミス「もうトモエも出さんぞ。光栄に思え。貴様はマスターと同じく空中庭園の客として持て成そう」

巴御前「ええーっ……」

セミラミス「さて。ギルタブリル! この空中庭園に新たなサーヴァントを招待せよ!」

エネゴリくん「ウホ!」シャキーンッ

立香「まだ帰してなかったの!?」ガビーンッ

巴御前「……またそれを使うので?」

セミラミス「そう言うな。我が扱う限りは無害だぞ?」

立香「後でちゃんと然るべきところに返してあげてね! 約束だよ!」

セミラミス「……」ニガニガ

立香(滅茶苦茶イヤそうな顔してる!)ガーンッ

イベント進めるのでちょっと休憩

数分後

イヤー イヤー ヤメテー! オカサレルー!

立香「……ん。この耳につくヘタレ声は……」

バターンッ

刑部姫「えーん! 助けてー! エリエリー! まーちゃーん!」エグエグ

立香「あ、やっぱり! 刑部姫!」

刑部姫「え? マスター? なんでこんなところに……」

巴御前「おお。刑部姫でしたか。また随分と濃い人を連れてきましたね」

刑部姫「巴ちゃんも……え? なにこの集まり?」キョロキョロ

セミラミス「何故また一人なのだ……ん? 抵抗が? 割と厳しくて? 一人が限界だった?」

セミラミス「相手がサーヴァントなら仕方がない、か」

数分後

刑部姫「なるほどー。女帝の退屈しのぎに揃って巻き込まれて脱出不可能になったってわけね」

刑部姫「……なるほどー」

刑部姫「……頭痛くなってきた。帰りたい。そしてなんでエネゴリくん?」

立香「あーよかったー! やっぱりあれエネゴリくんだよねー! 閉鎖空間に閉じ込められて認識機能が狂ったのかと思った!」

セミラミス「どうでもよい。それで。貴様はどうやって我の退屈を癒してくれるのだ?」

刑部姫「テレビがあるんでしょー? で……ああ、うん。PS4もある。条件はそろってるかなー」

刑部姫「ネット環境を引っ張って来れればそれなりに役立つと思うけど」

立香「何するの?」

刑部姫「ゲーム三昧、の次はアニメでしょ」

数分後

セミラミス「アマゾンプライム……そんなものが……」

刑部姫「意外に気づいてない人いるんだよねー。PS4でアマプラとか見れるってことに」カチャカチャ

巴御前「なんと。ぴーえすふぉーにそのような機能が」

立香「最初は何見る?」

刑部姫「厨二病の学生がタイムリープしまくるあの作品とかどう?」

立香「いいね!」

セミラミス「任せよう。つまらなかったら貴様の首を刎ねるのみだからな」

刑部姫「!?」ガビーンッ

今日のところはここまで! 眠い!
VIP速報はいつになったら復旧かな

数分後

メールガ……カコニオクラレテイル……

セミラミス「……伏線をぽいぽい投げているだけで最初の展開は遅いな……」

立香「SFならこんなものじゃない?」

刑部姫「スラングって足が早いなー。今使ったら不自然なヤツのオンパレードだよ」

巴御前「あ。飲み物を持ってきますよ。何がいいです?」

数十分後

ナニイッテルンダ……トラノアナナラソコニ……!?

巴「回を越すごとに不穏さが増しているのですが……?」

セミラミス「……」ハラハラ

立香(さっきからセミラミスの口数が少なくなってる……)

刑部姫「ねー。お菓子切れちゃったー。誰か持ってきてー」

巴「あ、それでは私が……」

立香「それにしてもこのお菓子の備蓄、いつの間に……」


更に数十分後

ナンダヨコレ……ナンダヨコレ!

セミラミス「……!?」アワワワワワ

巴御前「え……死……え!? 死ん……え!?」アタフタ

立香(リアクションめっちゃ面白い……口に出したら怒られるから言わないけど)

数十分後

シッパイシタシッパイシタシッパイシタアタシハシッパイシタ

セミラミス「……」ボーゼン

巴御前「……」←頭を抱えてふさぎ込んでいる

刑部姫「わかる」

数十分後

セミラミス「……」ワクワク

巴御前「やっとのこと光明が見えてきましたね……みんなには可哀想ですが……!」

立香「あ。ジュース切れちゃった……次どれ飲む?」

巴御前「緑茶で!」

数十分後

アッタ……IBN5100ダ……

セミラミス「……」グッ

巴御前「長かった! そして辛かった時の旅路もこれで終了ですね!」

巴御前「希望の未来にレディゴーです!」キラキラキラ

ソレッテアレデショ ワタシガラジカンデササレタッテヤツ

アッ

セミラミス「んっ?」

巴御前「えっ」


数分後


セミラミス&巴御前「……」←揃って頭を抱えている

立香(ちょっとどうかと思うくらいハマってる!)ガーンッ

数分後

ナニカガカワルハズダ……ナニカガ!

巴御前「そうです頑張れ頑張れ頑張ってくださいなんとかしてくださいお願いします」

オカリンッ

ドグシャアッ

巴御前「うああああああああああああ!」

セミラミス「……」←固まっている


数分後

オカベ……ワタシモアナタノコトガ……

グニャアアアアアア

セミラミス&巴御前「……」←目が死んでいる

数分後

アタシトイッショニタイムマシンニノッテ……

巴御前「来た! タイムマシンが来ました! これで勝てます! 今度こそ! 今度こそは!」

セミラミス「……!」キラキラキラ


数分後

シニタクナイ……シニタクナイヨ……

ウワァァァァァァァァ!

巴御前「」

セミラミス「」

刑部姫「白目剥いてる!」ガーンッ

視聴終了 映画版含めて

セミラミス「……」

セミラミス「大したことはなかったな! くっはは!」キラキラキラ

立香「めっちゃリアクションしてましたけど!?」ガビーンッ

刑部姫「強がりもここまで来たかー。流石は女帝、キラキラした笑顔でよく言うね」

セミラミス「黙れ。暇潰しにはなったことを認める。だから黙れ」

巴御前「よかった……本当によかった……最初はあの厨二? というアレが若干キツかったですが」

巴御前「あれ? まだ続きがありますね。二期というヤツでしょうか」

立香「あっ、それは……」

視聴中

テニスサークルダ

セミラミス「我の鳳凰院凶真を帰せ誰だ貴様はふざけておるのかァ!」ウガァ!

立香「今までずっと無言だったのに!」ガーンッ

巴御前「え……え……あ、諦めて……あ、あれっ?」ガタガタ

立香「これ別ルートみたいなもんだから気にしないでいいよ。あっちのハッピーエンドは揺るがないから!」

刑部姫「まー面喰うよね。さっきまでのギャップ含めてさ」




結果的に二日目のアニメ鑑賞会もそれなりの暇潰しとなりました

数十分後

立香「……本当にそろそろ帰してくれませんか。シャワー浴びたいし」

セミラミス「ギルタブリルに用意させたぞ。そら、その扉の向こうだ」

エネゴリくん「ウホ」

巴御前「おお。入浴剤の香りが」

立香「き、着替え……」

セミラミス「当然用意しておる」

刑部姫「軟禁状態にする気満々だねー。じゃ私はこれで」

セミラミス「貴様も帰さん」

刑部姫「あっはっはっはっは……嘘やん」ガーンッ

刑部姫「いやー。それでもやっぱり帰らせてもらうかなー。一応これでもサーヴァントの端くれだし」

刑部姫「ダルいけど全力で抵抗すれば逃げる程度はできるかもよ?」

セミラミス「そうか。ならば白状しよう。出口はあの扉の向こうだ。ただし」

刑部姫「逃げるんだよォォォォォォォ!」バッ

立香「あ、逃げた」

バタムッ

刑部姫「ふはははは! 姫にできぬことなどな……あれ。エネゴリくん? なんでこんなところに。さっきまであっちにいたはず……」

ビリバリバリッ

刑部姫「ぎゃああああああああああああああっ!」

立香「おっきーーーっ!」ガビーンッ

セミラミス「ある程度間取りを変えることができるので出口の方角がわかったとしても出れるかどうかはわからぬぞ?」

セミラミス「あとギルタブリルは庭園内限定で高速移動が可能だ」

立香「扉の向こうで一体何が……!」

バタンッ

バニーガールと化した刑部姫「ぐへっ」ベシャッ

巴御前「帰ってきましたね。無事よようでなによりです」

バニーガールと化した刑部姫「服を見て服ゥ! これが無事に見えますかァ!?」プンプン

立香「似合ってるよ」

刑部姫「え? そ、そう?」テレッ

刑部姫「……でもこんな姿じゃもう外出れない。ハズい」ズーン

セミラミス「当然貴様も持て成す。帰さん」

刑部姫「があああああああ! 締め切りがああああああああ! まだネームしか終わってないのに!」

セミラミス「ともかくさっさと湯浴みをして、体を磨いてくるのだな」

セミラミス「そうだ。刑部姫よ。そのバニーガールは貴様にやろう。褒美だ」

刑部姫「気分的には押し付けられたに近いんですが!?」

巴御前「マスター。お風呂に参りましょう。背中をお流しします」スタスタ

立香「一人でできるって。でも一緒に入るってアイディアは悪くないかも」スタスタ

刑部姫「……え。一緒に? 入るの? ちょっと待って資料になるかもしれないから姫もー」スタスタ

セミラミス「……さて。気になったところを見直すか」ポチポチ


二日目終了

三日目

セミラミス「さて。朝だ。朝だぞ。朝だな?」ワクワク

刑部姫「うっわー。朝っぱらから超ワクワクした顔してるよこの女帝。嫌な予感しかしないー」

巴御前「滅多なことは言わぬが花ですよ」

立香「……二日連続で庭園の広さをまったく活かしてないマキシマムインドアレクリエーションしかしてないんですけど……」

立香「今日はどのような趣向で行くので?」

セミラミス「待て。その前に貴様らにはやってもらうことがある」

立香「何?」

セミラミス「長期休暇の朝と言えばラジオ体操だと聞いたので音源を用意したぞ」ババーンッ

立香「この人もう思考回路が夏休みの子供かなにかだよ!」ガビーンッ

巴御前「……確かにずっと外出してなかったので体を動かすのは賛成です」

刑部姫「姫としてはその意見に反対である」

セミラミス「そうか。聞かぬ。ラジオ体操をするぞ!」

空中庭園 上部

刑部姫「うおー! うわー! 凄いー! シミュレーションの中の設定とは言えこれはちょっと感動かも!」

立香「本当に『空中』なんだ……」

セミラミス「絶景であろう。簡単に作ったものだから効果と規模は多少劣るが、それでもな」

巴御前「これで軟禁状態でなければ素直に楽しめるのですが」

セミラミス「ラジオ体操の準備をしろ! ギルタブリル!」

エネゴリくん「ウホ!」カチッ

刑部姫「謹んで辞退させていただきま――」

セミラミス「我の鎖で操り人形にされたいか?」ジャララッ

刑部姫「命懸けでレィディオ体操しまっす!」

立香「かしこい」

刑部姫「うるさいー! 皮肉は受け取りませんー!」

数分後

セミラミス「よし。『よくできました』のスタンプを押してやろう。それと水分補給にスポドリもな」テキパキ

刑部姫「あー疲れた」グビグビ

巴御前「……」

立香「どうかしたの? 巴」

巴御前「いえ……あの有名な空中庭園に来て……普通ならば見ること能わぬ絶景を見て……」

巴御前「改めて『私は一体こんなところまで来て何をしているのだろう』と我に返ってしまって」ズーン

立香「このタイミングで!?」ガビーンッ

セミラミス「さて。運動も終わったところで今日も今日とて誰かを招待するか。ギルタブリル!」

立香「あ。セミラミス。これ以上は本気でお勧めできないんですけど」

セミラミス「なに? 我に意見するのか? まあよい。理由さえ話せば特別に許してやろう」

立香「この二人はたまさか上手く行ったけどさ。『暇を潰すため』って名目でうっかり呼び込んだら大惨事になりかねない英霊がいるでしょ」

立香「その人たちをこの空中庭園に招き込んだりしたら……」

セミラミス「……」

パターン1

ネロ『なに!? 暇と申すか! よかろう! 余が特別にこの黄金宮殿を貸してやろうではないか!』

ネロ『ぼえーーー!』ドグシャアアアアアアッ

パターン2

エリザ『なに? 暇なの? それで私をここに呼び込んだってわけ?』

エリザ『普段ならその不遜の対価を血で贖ってもらうところだけど、ファン相手なら無下にできないわね! いいわ! 歌ってあげる!』

エリザ『ぼえーーー!』ゴカァァァァァァンッ!




セミラミス「……よかろう。これ以上の招待は慎重に、な」

立香「わかってくれてよかった」ホッ

巴御前「本音は?」ヒソヒソ

立香「これ以上、被害者は増やせないでしょ」ヒソヒソ

今日のところはここまで!
明日は美食編。しかしミッション系のイベントは大分体力使うな……これで配布サーヴァントの育成ミッションも多分あるんでしょ。やべぇよ

セミラミス「しかし……ふむ。それはそれとして、だ。ギルタブリルはカルデアに派遣せねばならぬ」

立香「ん? どうして」

セミラミス「食料がそろそろ心もとないのでな。量はともかく種類が……ちょっと偏った食事をしすぎた」

巴御前「それは……確かに。そこも反省すべき点ですね」

刑部姫「んー。姫たちサーヴァントは全然大丈夫だけどマスターちゃんがねー」

立香「この年でデブデブになるのは勘弁したいなぁ。確かに」

セミラミス「そういうわけでギルタブリルを向かわせる!」

セミラミス「……そうだ。そのついでに次の娯楽の方向性も決めておこう」

刑部姫「この中で料理できる人っている? 姫はあまり自信がないっていうか面倒なんだけど」

セミラミス「……!」ピーンッ

数分後

セミラミス「雲の上! そう! 青空! 一度でいいからやってみたかったのだ!」

セミラミス「バー! ベ! キュー!」ドーンッ ドーンッ ドーンッ

刑部姫「なんでそんなにテンション上げてるの」

セミラミス「バーベキューだぞ?」

刑部姫「あっはっは。あのさー女帝サマ。このひきこもり姫がバーベキューとか陽属性丸出しのイベントではしゃげる人間に見えます?」

セミラミス「バカ者めっ!」ベシーンッ

刑部姫「びんたっ!?」ヘブッ

セミラミス「我とてどちらかと言えば闇属性だぞ!」

刑部姫「あーもー! なんなのよこの女帝! さっきから信じられないくらい絡みづらいんだけど!」

立香「……鍋とかある」

巴御前「飯盒もですね。バーベキューだけでなくって本格的な料理全般できます」

セミラミス「しろ。我もするからな」

立香「セミラミスって料理って……」

セミラミス「できるぞ。チョコパスタ、蜂の子パフェ、シャケのコーラ煮」

立香「全部絶妙にゲテモノじゃん!」ガビーンッ!

セミラミス「チョコパスタに関しては既にできておる」ジャーンッ

立香「誰が食べるの!?」

セミラミス「汝が食え」グイーッ

立香「がぼふっ……もがっ……もがっ……美味っ!?」ガーンッ

セミラミス「ギルタブリルが食糧を持って帰ってきたら本格的にバーベキューを開始するぞ」

セミラミス「それまでは各自料理を作れ! そして我によこせ!」

セミラミス「特にトモエには期待しておるぞ」ニヤァ

巴御前「レシピと材料さえあれば大抵のものは作れると思いますが……」

セミラミス「……割と一般的な料理スキルの範囲だな……?」

刑部姫「包丁を一度も持ったことないって人よりは頼れると思うけど」

セミラミス「マスター?」

立香「巴と似たようなものかなぁ……」

セミラミス「期待しすぎたか? この空中庭園で一番料理が上手いのはまさかのギルタブリルか……」

刑部姫「あれ料理できるの!?」ガーンッ

立香「朝ご飯は私が作ってあげるから、みんなは座ってていいよ」

刑部姫「わーい」

数十分後

セミラミス「……」

立香「セミラミス。レシピうろ覚えだったけど各種サンドイッチの味は大丈夫そう?」

セミラミス「む……」

立香「刑部姫。巴。味噌汁のお代わりはあるから好きにとってってね」

巴御前「……ど、どうも……」

刑部姫「おいしい……」

セミラミス「……パン派とご飯派で朝ご飯を分けるとは……賢しいマネを」

立香「レオニダスの筋トレから逃げる口実に『ごめんエミヤから料理教わる予定だから』って言ったら本当に叩き込まれちゃって……」

セミラミス「美味い……いやサンドイッチなら誰が作ってもそれなりに美味しくなるが……美味い……」モグモグ

巴御前「というかご飯とパンの両方料理するって時点で料理の美味しさより『要領の良さ』が凄いですよ」

刑部姫「え? え? 嘘でしょ。特異点では頭ゆるゆるのド天然なのに。姫ってばこの子より女子力が下なの」ガタガタ

立香「刑部姫が私を普段からどう思ってるかはよーくわかった」

立香「こっちはバレンタインのとき何十人分ものサーヴァント男子にチョコ配ってたんだよ。料理程度なら多少は要領よくやらないと」

立香「……まあエミヤと比べたら恥ずかしくなるくらい簡単な物しかできないけど」

巴御前「いえ! いいえ! とても素晴らしいことだと思います!」

セミラミス「……よし。今日の娯楽は汝が主導せよ。任せる」ポンッ

立香「!?」ガビーンッ

数十分後

セミラミス「ギルタブリルが戻ってきたぞ。早速開始だ!」

立香「ええと、こういうときはカルデアのデータベースに頼るのが一番だよね……バーベキューの下準備は……」

刑部姫「この固形燃料ってヤツをコンロの中にぶちこめばてっとりばやく火力上がるんじゃない?」

立香「絶対にやめろって書いてあるからよしてね? 火を起こすときはともかく火を起こした後は」

巴御前「……燻製用の設備もありますね。お肉を焼くのと同時進行でこちらも使ってみてはどうでしょう」

立香「巴にそっちは任せるよ。問題はそもそも何を食べたいかだよなー」

立香「肉、肉、肉、申し訳程度に野菜……あ、マシュマロとかを焼いてみるのも面白いかな……」

セミラミス「一つ聞きたいのだが、焼肉屋に行ってタマネギやピーマンを注文したとしよう」

セミラミス「汝はそれを網で焼く。肉と同時進行でな?」

セミラミス「しかし肉は焼けた傍からはけていくのに対し、野菜は中々手がつかない」

セミラミス「そんな光景を目にしたことはないか?」

立香「あるけど! あるけどだからって肉ばかりはちょっと! 体裁だけでもさ!」

巴御前「やはり素人がいきなりバーベキューは難易度が高いのでは……」

セミラミス「案ずるな。この本とギルタブリルとカルデアのデータベースがあればそうそう失敗することはない」

逢魔降臨暦「」ドーンッ

刑部姫「それに書いてあるのはバーベキューのやり方じゃなくって魔王の作り方だと思うんだけど!?」ガビーンッ

セミラミス「それと釜戸とかも作ってあるので火はこちらにもよこせ。アップルパイとか作るぞ」ワクワク

巴御前「やりたい放題ですね彼女」

立香「既にわかってたことでしょ」

数十分後

立香「ツナギに人参スティックとか作ったよ。あとリンゴ剥いた。食べる?」

刑部姫「ヤ、ヤメローーー! それ以上女子力の高いマネをするなァーーーッ!」

セミラミス「さあ釜戸にアップルパイを投入しろ! ギルタブリル!」

セミラミス「……予熱? ああ、なるほど。釜戸にはそういうものも必要なのか」

巴御前「チーズ……鶏肉……豚肉も外せませんよね……こっちはサイドメニューのつもりですからあまり量は必要なさそうですが」

立香「セミラミス。こっちにもエネゴリくん貸してくれないかなぁ。割とやること多いよ?」

セミラミス「よかろう。すぐ返せよ」

刑部姫「頑張ってー」ポリポリポリ

立香「人参食べながらでいいから刑部姫もちょっとは手伝って!」

一時間後

ジューッ

立香「おお! いい感じ! ていうか正解がわからないならひとまず全部焼けばいいんだよ!」

ボウッ

刑部姫「……ちょっと火力高すぎじゃない? 調整ってどうやんの?」

立香「あっはっはっはっは……わかんない」

立香「……ひとまずこれ以上火力を上げないことだけは決定かなぁ」

巴御前「……レシピを調べていて気付いたのですが、燻製って本当に時間かかりますね」

セミラミス「これならサイドメニューと言わずデザートを作った方がよかったかもしれぬな?」

巴御前「ひとまず今日中には食べられそうなものを中心にやっているので、その点に関しては安心してよいかと」

立香「うおおおおおお頑張れ私の中のエミヤーーー!」ボオオオオオッ

数十分後

立香「バーベキューなら一度はやってみたいよね。シュラスコで食材をジュージュー焼くヤツ!」

刑部姫「いやー。鉄串に刺した食材を鉄網の上で焼くのは微妙にシュラスコとは違うんじゃないかなー」

立香「似たような物!」

セミラミス「……ム? ギルタブリル。それは……ピザ生地? そんなものを作れと命令した覚えは……」

巴御前「せっかくの釜戸ですし、やってみてもいいのでは?」

セミラミス「むう。我の毒入りアップルパイを蔑ろにするようなマネは慎めよ?」

巴御前「今なんと? アップルパイの前にありえぬ接頭語がついてましたが、なんと?」

数十分後

立香「ふいー。コンロの方はもう店じまいでいいよね。お腹いっぱいだし」

刑部姫「当然ながらおやつは別腹である! 女帝サマー。そっちはどう?」

セミラミス「む?」グビグビ

刑部姫「お酒飲んでる!」ガーンッ

セミラミス「マスター。ご苦労。初めてにしては中々の催しであった」プハァーッ

立香「うげっ。息が酒臭っ……」

巴御前「まぁーーーったくれすよぉー。未成年もいるからやめた方がいいって言ったんれすけどねぇー」グデグデ

立香「巴も!?」ガビーンッ

刑部姫「出家経験者が酒飲んでっ……いや胤舜くんも飲んでたか……」

セミラミス「刑部姫。貴様も飲むか? 漬け置きサングリア」

刑部姫「酒税法的にグレーゾーンな代物をそうポイポイ出さないで……」

立香「個人的に消費する分にはギリギリセーフだっけ?」

巴御前「この人が『個人的に消費するためだけの酒』を造れると思います?」

立香「今はセーフでも後々確実にアウトになる宿命かー」

刑部姫「お酒って気分じゃないからいいや。それよりアップルパイはー?」

巴御前「たった今ギルタブリルが焼いています……毒入りじゃないヤツも」

立香「そっか。それならいいけどさ」

立香「毒が入ってるヤツと毒が入ってないヤツの区別はちゃんと付くようになってる?」

セミラミス「あ」

刑部姫「あ、じゃないっつーの!」ウガァ!

数十分後

セミラミス「ふむ。マスターに毒見をさせることでなんとかなったな」

立香「前のバレンタインのときも言ったと思うけど、毒を意図的に食べさせるのは微妙に気分よくないからやめてくださいよ……」

セミラミス「静謐のハサンにも伝えておこう」

立香「やめてよ!? スキンシップが余計に多くなるから! いやそれ自体はいいけど面倒ごとがバタフライエフェクト的に増えるから!」

巴御前「……燻製の方はもうちょっとかかりそうですね。お酒と一緒に欲しいところなのですが」

刑部姫「次にバーベキューやるときはその辺も考慮しよっかー」

セミラミス「次……次か。ククク……」

立香(めっちゃ嬉しそう)

刑部姫「……あ。当然姫は抜きにしてよね。楽しかったけど同時に面倒だったから」

セミラミス「聞くと思うか?」ニヤァ

刑部姫「聞いてよ!」

セミラミス「……さてと。燻製なら別に冷めたところでそこまで問題はないであろう」

セミラミス「そもそも保存用の調理なのだから」スタスタ

巴御前「おや? セミラミス、どこへ?」

セミラミス「眠る。少しはしゃぎ疲れたし、酒もあいまって眠い」

刑部姫「おっ。チャンス到来。このまま逃げちゃおう」ヒソヒソ

立香「そうだね。少し悪い気もするけど書置きでも残してひっそりと……」ヒソヒソ

セミラミス「ところで、知っておるか?」

巴御前「なにをです?」

セミラミス「兎は寂しがりな動物らしいぞ? 寂しさが極まると周りにソマンやらサリンやらをまき散らしながら一つの村と心中するくらいのな」

刑部姫「そんなテロリズム丸出しのウサギがいてたまるかァ!」ガーンッ

セミラミス「我が起きたときいなくなってたらウサギが死ぬ。ではな」スタスタ

立香「最悪だ。最悪な形で釘刺された……!」ガーンッ

立香「考えよう。真面目に考えよう。私、そろそろマシュに会いたい」

立香「というかそろそろダヴィンチちゃんに怒られる。遠回しに笑顔で『仕事しろ』って言われる」

刑部姫「相棒への愛情が仕事より優先なのね」

立香「なんとかしてよ、おきえもーん」

刑部姫「だれがおきえもんか。語呂悪いし」

刑部姫「こんなときはね? ともえもんに頼りなさい。姫より役に立つわよ」

立香「巴! なんとかならない!?」

巴御前「ぐー」スヤァ

立香「……寝てる」

刑部姫「こっちも酔うと眠くなるタイプだったか!」

立香「エネゴリくん。簡易ベッドか簡易テントを用意できない? 椅子に座ったまま寝るのはちょっと辛そう」

エネゴリくん「ウホ!」シュバババババッ

立香「わあ! 全然簡易じゃないテントが一瞬で!」

刑部姫「どうしよう。愛着湧いてきちゃった。女帝サマに頼んだら貸してくれないかなー」

立香「巴もダウン。となると戦力は私と刑部姫のみ」

立香「はい終了。今日も諦めよう。すべての勝負は明日になってからだ。解散っ!」

刑部姫「特異点のお前を思い出せよ! 大丈夫大丈夫絶対できるって!」シュウゾオオオオオオ!

立香「無責任にそういうこと言うのやめよう?」

刑部姫「うん」

刑部姫「……でも実際問題出たいことは出たいからさ。一緒に考えてみよう?」

立香「と言ってもなぁ。これと言った策があるとは思えないんだけど……」

刑部姫「……ん……そういえば女帝サマが用意した着替えの中に……」

刑部姫「……あっ! さっそく思いついちゃったかも!」ニヤァ

立香「?」

数十分後

刑部姫「ナイスナイスばっちし!」

ベビードール立香「……あの……この服は……」

刑部姫「ベビードォォォォォォォォォル!」パシャパシャッ

ベビードール立香「写真に撮るなぁ! 言われるがままに着てみたけど思ったより百倍恥ずかしいよコレ!」

立香「なんのつもり!? いや何をさせるつもり!?」

刑部姫「女帝サマに狼藉を働いてきて」グッ

立香(殴っていいかな。この子殴っていいかな。メガネむしってから叩き割っていいかな)

刑部姫「いやこれでも作戦としてはまともだと思うんだよね。姫たちが監禁されてる理由は単純に『気に入られているから』でしょ?」

刑部姫「酷い狼藉を働けば『興が冷めた』とか言って全員をたたき出してくれるんじゃない?」

立香「そうだね! その前に私は殺されるけどね! 確実にね!」

刑部姫「意外に半殺しで済むかもよ? 出た後はナイチンゲールでもパラケルススでも頼って全快すればいいだけだし」

立香「簡単に言ってくれるなぁ! それどっちもデメリットが違う方向性でデカいんだけど!?」

刑部姫「ええい、文句を言うなぁ! マシュに会いたいんじゃないの?」

立香「!」

マシュの幻聴『せんぱーい!』

立香「……会いたいです」

刑部姫(ちょれぇー。マジでちょれぇー。ちょろすぎて笑いを堪えるのつれぇー)ケタケタ

立香「……いや……でも……ううーん……」

刑部姫「エネゴリくーーーん! マスターが女帝サマに水差し持っていきたいってー!」

エネゴリくん「ウホ!」ガシッ

立香「え。ちょ。待っ――!」

セミラミスの寝室

立香「ぐへっ」ベシャッ

刑部姫「がんばー」

立香「お、おっきー! 後で絶対に覚えて……」

バタムッ

立香「し、閉めた……ふふふ……ことが済むまで出さないってつもりか……マスターのことをなんだと思って……」

立香(薄暗い。真っ暗ってわけじゃないから、どこに何があるかくらいはわかるけど……)キョロキョロ

立香(セミラミスはあのでっかい天蓋付きベッドの中かなぁ)

立香(……ご丁寧に水差し本当に持たされちゃったよ。どこか近場に置いてさっさと出るか……さもなくば部屋の隅で蹲ってるか)スタスタ

立香(ひとまずテーブルの上でいいかな……よし。さっさと外に)ジャララッ

立香「ん? 鎖の音? どこから……」ジャラッ

立香「私の右手だぁ!?」ガビーンッ

グイイイッ

立香「きゃーーー!」ヒュンッ

ボスンッ

立香「……あ、あわわわわわ……」ガタガタ

セミラミス「女帝の臥所に忍び込むとは……まったく厚顔なマスターよな?」クスクスクス

立香「まったくですね! 私もそう思うんですけどね! これはちょっとした間違いでして――!」

立香「ひええええええ! セミラミスの下着姿めっちゃセクシー! 私のベビードールがチャチなコスプレに見えるレベル! スケスケ!」ガビーンッ

セミラミス「ククク。誰が口を開いていいと言った?」バシッ

立香「むぐっ」

セミラミス「さあて……どうしてくれようか?」ニヤァ

立香(どっちだ……? 半殺しコースか? 全殺しコースか?)ドキドキ

セミラミス「……静謐のハサンとキスを交わしたとき、貴様は少し痺れたと言ったな?」

セミラミス「我のチョコを食したときも同様に」

セミラミス「……という前置きをした上で、今から我の話を聞くがよい」

セミラミス「なに。我も反省するのだ。明日になったら何もせずとも汝らを外に出してやろう」

立香「え。本当に?」

セミラミス「本当だとも。外からの侵入者を阻むのもそろそろ億劫なのでな」

立香「……」

立香「あっ! やっぱり! 誰かが連れ戻そうとこっちに来てたんだ!?」

セミラミス「なんだ。予想してたのか。つまらん。もう少し驚くかと思ったのだが」

セミラミス「その通り。汝らを連れ戻すために、我の空中庭園に十人十色の攻撃をしかけてくる輩がいた」

セミラミス「全部つっぱねているが……限界が近い」

セミラミス「なので一旦は明日でお開き、というわけだ」

立香「……そっか」

立香「楽しかったよ。セミラミス」

セミラミス「だがそれはそれとして、我に夜這いをかけようとした不敬者に対する罰は与えねばな?」ガサゴソ

セミラミス「同時に、今日の催しの礼もかねよう」ゴソゴソ

立香「……あ、あのー。セミラミス? 私を鎖で拘束したまま、そっちで何を取り出してるので?」ジャララッ

立香(う、動けない……! ていうかこれ肌に食い込んで微妙に痛いんだけど!)ガシャッ

立香「夜這いって時間じゃないでしょ? それに私は水差しを持ってきただけで……」

セミラミス「言い訳だな。汝のやりたいことなど既にわかっておる」

セミラミス「というわけでコレだ」ジャキイイイインッ

立香(注射器が両手にいっぱーーーい!)ガビーンッ

立香「セミラミス! それ中に何が入ってるの?」

セミラミス「それぞれ効果は違うのだが、方向性はすべて似たようなものだ。すなわち……」

セミラミス「ちょー強力な媚薬」ヌボーンッ

立香(めっっっちゃくちゃ頭悪そうな薬出た!)ガビーンッ

立香「ちょっと待って。まさか私にそんなものを打ち込む気じゃないよね!?」

セミラミス「自分に打ち込むと思うか? 第一これらの毒の用途は本来『我抜きでは生きられない人間を生産すること』だ」

セミラミス「後遺症? 依存症? 当然出るぞ。そういう薬なのだから」

セミラミス「まあ汝の場合は別であろうがなぁ?」ニヤァァァァ

立香「ま、待って! 嘘でしょ! マジで打つの!?」ガシャンッガシャンッ

セミラミス「さて。実験だ。果たしてこれらの毒を、貴様の体の中に飽和するレベルで打ち込めばどうなるか」

セミラミス「快楽を増幅する部分のみが効果を発揮して、天井楽土が見えるやもしれぬな?」ニヤァ

セミラミス「これが我の礼と罰だ」

立香「許してくれませんかねぇ! かなり怖いんですけどねぇ! 私自身はあんまり悪くないから理不尽さがひたすら募るんですがねぇ!」

セミラミス「……」

セミラミス「ダメだな」ニヤァ

立香「ひっ……」

ブスウッ

立香「あ、ぎっ……ひぎゃああああああああああああっ!?」

扉の外

「あっ……や、やだ……見ないで……んんっ……は、恥ずかしい、よお……」

「くくっ。いいや。鎖で雁字搦めの汝に代わって、我が存分に見てやろう。一生忘れない思い出になるな?」

「や、やだ……いやあああああああ……あんっ」

刑部姫「……」

刑部姫「姫、しーらないっと!」キラキラキラ



後で巴御前と結託したマスターに滅茶苦茶折檻された

数時間後

立香「んん……?」

立香(くそ。体が熱い……! 微妙にダルい。瞼が重い……)

立香(私は眠ってた……のかな? 部屋がさっきよりも更に暗くなってる気がする)

立香(そうか。夜か。あの責め苦を浴びてる内に眠って……いや気絶してたみたい、だな)

立香「……鎖が緩くなってる。外には出れそうだなぁ」

立香「ああ、でも……ダメだこれ。多分だけど『臭い』が酷い。シャワー浴びたい」

立香「刑部姫もだけどセミラミスも後で覚えてろよ……!」

「すう……すう……」

立香「……」

立香「寝てて助かった……!」

セミラミス「すう……すう……」スヤァ

明日で終了! 予定! 眠いから寝る!

立香「ああ、もう! ビジュアル的にも最悪だし。あちこち鎖で縛られた痕! 痕!」

立香「こんなところ見られたら死ねるなぁ。サーヴァントによっては死ぬより酷い目に遭いかねない」

立香「うげっ! お腹にも注射されてる! 痛みはないけどかなり痺れてるなぁ。歯医者とかで使う部分麻酔みたい」

立香「それ以前に注射痕って滅茶苦茶目立つな……ちゃんとした服着ればわからないだろうけど」

立香「……眠い。もうひと眠りしようかな……」ウトウト

立香(というか疲労で今にも意識が飛びそう……もう指一本すら動かすの億劫だし)ウトウト

バタンッ

立香(ん?)

ちょっと時間は遡る

ドカァァァァァンッ

モードレッド「おーっし! 俺が一番乗りィ! ははっ! 間取りは微妙に違うけどマジであの女のハウスだ!」

モードレッド「さぁって、ギルタブリルってヤツァどこだ? エミヤの野郎が来る前に粉々にしてやったらアイツどんな顔すっかなー」キョロキョロ

刑部姫「あれ。大きな音がしたと思ったらモーちゃんじゃない。やっほー」

モードレッド「お! 被害者C発見! 元気だったか?」

刑部姫「姫は元気だよー。あの女帝サマ、割と客人には優しかったからね」

モードレッド「おー。そうかそうか。もしもマスターに手ェ出してたらそれ口実にぶった斬ってやろうかと思ったんだけどな!」

モードレッド「しゃーねーなー! マスターが無事ならしゃーないよなー!」ニコニコ

刑部姫「……ええと。マスターが無事だと勘違いして胸をなで下ろしてるところ悪いんだけど」

刑部姫「彼女は無事じゃないわよ?」

モードレッド「は?」

モードレッド「……いやいや。いくらあのカメムシババァでもマスターに手を出したりは……」

モードレッド「……マスターは今なにしてる?」

刑部姫「キメセク」

モードレッド「ん? なんだ? オタクのスラングか何かか?」

刑部姫「ええっとねー。ちょっと大声で話せない内容だから耳貸して」チョイチョイ

モードレッド「うん? ……うん。うん……ひにゃあっ!?」ガビーンッ

刑部姫「あっちの部屋でヤッてます」

モードレッド「ざっけんなボケーーーッ!」ダッ

刑部姫「あ、行っちゃった。まあ半分くらい嘘吐いてないから別にいいよね!」

そして現在

モードレッド「マスター! いるかマスター! ああ、暗いなオイ! 明かり明かり!」キョロキョロ

モードレッド「……クラレントの出力調整したらライトになったり……あ、違うな。そんな真似しなくっても明かりあるじゃねーか」

モードレッド「魔力放出!」バチバチバチッ

モードレッド「おーし! これで明るくなっ――」

モードレッド「――」

立香「……も……モードレッド……? 助けに来てくれたの?」フラフラ

セミラミス「……なんだ騒々しい。少しは静かにできぬのか?」モゾリ

セミラミス「あ。しまった。うっかり鎖を緩めてしまった」ジャララッ ガシャンッ

立香「ちょ!」

モードレッド「!?」ガーンッ

セミラミス「ククク。実験はまだ終えたつもりはないぞ?」

セミラミス「楽しいな。我の作った毒でグズグズになっていく人間を見るのは」

セミラミス「耐毒がある汝なら溶かした傍から再生するから無限に遊べるし」グイッ

立香「あんっ……ああもう! 変な声出ちゃった! 今それどころじゃないんだって!」

セミラミス「何を……む? モードレッド?」

モードレッド「俺の名を呼ぶな堕婦。すぐ死ね」ギャランッ

セミラミス「!?」ガビーンッ

立香「状況呑み込むの遅いよ!」

セミラミス「何故我に刃を向ける?」

立香「呑み込めてなかった!」ガーンッ

モードレッド「ひとまず今すぐにマスターを離せ。そうすれば最低限死体が残るよう手加減はしてやる」

セミラミス「……」

セミラミス「何故こやつはここまで怒り狂っておるのだ?」

立香「セミラミスがサーヴァントとしてはギリギリのイタズラしたからだよ!」

セミラミス「何? モードレッドは先ほどの実験のときは空中庭園にはいなかったぞ」

セミラミス「それでどうやってこの部屋での実験を知ったというのだ」

モードレッド「こんだけ物証あってわからねー方がおかしいだろクソババァ!」

モードレッド「注射痕と拘束の痕だらけのマスターの肢体とか臭いとかなんだとか!」

セミラミス「チッ。流石にそこまでバカではなかったか」

モードレッド「俺のことどんだけ舐めてたんだテメェ!」

立香「や、やめよう! ひとまず刃傷沙汰はまずいよモードレッド! 私は大丈夫だからさ!」アタフタ

モードレッド「あのな。鏡で自分の姿を見るか、自分の姿を客観的に述べてみろ。全然大丈夫じゃねーぞ」

立香(確かに)ガーンッ

モードレッド「最後に無様に命乞いしてみろよ。気が変わるかもしれないぜ?」

セミラミス「……ふむ?」

立香「せ、セミラミス……ここは素直に命乞いした方がいいよ」

セミラミス「なんだ。詫びを入れればいいのか? ならば……そうだな……」ゴソゴソ

セミラミス「我と一緒にマスターで遊ぶ栄誉を許すぞ?」ジャキィィィィンッ

モードレッド「……」

立香「――」

セミラミス「この注射をな? マスターに刺すとな? 色んなところがほどけて柔らかくなってな?」ワクワク

セミラミス「自由研究としてはとても楽しくてな? ほら、見てみればわかるが今もマスターの大事なところが――」ワクワク

モードレッド「死ねええええええええええええっ!」ブンッ

立香(もう庇いきれないーーーっ!)ガビーンッ

ジャララッ ガチンッ

モードレッド「くそっ! 鎖が……」ギシギギッ

立香「よ、よし! ナイスだよセミラミス! 早く今のうちに逃げよう!」

セミラミス「いや。逃げたところでこのチンピラ騎士はすぐに追いついてくるであろう」

セミラミス「それよりは更なる詫びを入れた方が、多少は賭けとして分がいいぞ?」ゴソゴソ

セミラミス「そら。マスターの分だけでは不満だというのなら貴様の分も用意してやるぞ? 貴様用に調整した別口の媚薬を」ジャーンッ

モードレッド「」ブチイッ

立香「火に油を注ぐ天才だよね!?」ガビーンッ

セミラミス「……これでも大真面目に考えたのだが」ムクーッ

立香「ムクれないで! 余計に悪いし!」

セミラミス「ふむ。ならばそうだな……空中庭園建設中、休憩のときに我が遊んでいた指人形などはどうだ?」

セミラミス「聖杯大戦のときの赤のサーヴァント揃い踏みだ」

セミラミス「あっ。赤のセイバーの指人形だけ紛失していたのだった……」

バキンッ

モードレッド「死ねっ」ズバァッ

セミラミス「ぐはっ」

立香「うわああああああああ!? 割とガチめにバッサリ行ったーーーッ!」ガビーンッ

セミラミス「馬鹿め。それは残像だ」バターンッ

モードレッド「何ィ!? ちっ、やられた! どこだカメムシババァ!」キョロキョロ

セミラミス「……」チーンッ

立香「……」

立香(いや残像じゃなくって間違いなく実体斬られてますけどーーー!?)ガビーンッ

立香「大丈夫?」ヒソヒソ

セミラミス「血が止まらぬ。このまま行けば死にかねん」ダクダク

モードレッド「どこだー?」キョロキョロ

立香「どうしよう。ナイチンゲール呼んでこようか?」オロオロ

セミラミス「ククク。マスター。こんな話を聞いたことがあるか?」

セミラミス「『自分と何一つ変わらない人形』を作り出し、最終的には『今の自分が本物かどうかすらわからなくなった一流の魔術師』がいた」

セミラミス「その魔術師は今現在の自分が死ぬと、あらかじめ作られていた自分自身を模した人形が動き出し、実質死ぬことがないという」

立香「へえー。そんな魔術師もいるんだ」

セミラミス「凄いであろう?」

立香「うん」

立香「……」

立香「セミラミスはそうじゃないから今の話は全然関係ないよね!?」ガーンッ

セミラミス「そうだな!」ニヤッ

モードレッド「あ! 見つけたぜ! そんなところにいやがったか!」

立香(そんなところも何も最初から動いてないよ!)

セミラミス「ククク……あのときのことを思い出すな。忘れもしない。聖杯大戦も終盤のこと。我と貴様はこうやって……」

セミラミス「……?」

セミラミス「……」

セミラミス「我と貴様の間に、今更思い返すような記憶などない。そうであろう?」ニヤッ

立香(忘れてるーーーッ!)ガビーンッ

モードレッド「ハッ。んだよ……そんなこと言われるまでもねぇ!」ギンッ

立香(忘れられてることに気付いてないーーーッ!)ガーンッ

モードレッド「今度こそ引導を渡してやるぜぇーーーっ!」ブンッ

セミラミス「む。ダメだ。目が霞む……」フラッ

立香「わ、わ、きゃーーーっ!? 誰か助けてーーーっ!」

ザンッ

モードレッド「……ん? あれ? おお?」

立香「えっ?」

セミラミス「……そんな……バカな……こんな、ことが……!?」ガタガタ

立香「あれ。セミラミスが無事だ……んっ!? じゃあ今斬られたのは!?」

エネゴリくん「う……ほ……」バタリッ

セミラミス「ギルタブリルううううううううっ!」

立香「ええええええええええええええええええっ!?!?!?」ガビーンッ

モードレッド「順番は前後しちまったが……まあよし!」

立香「いいわけあるかーーーッ! エネオスにどう釈明すんのコレ!」アワワワワワ

セミラミス「……ギルタブリル……体が……透け……まさか、霊核が砕け……」ガタガタ

立香「うわあああああああ! これまずい! これまずいよ! 死ぬ! エネゴリくんが死ぬゥ!」ガタガタ

エネゴリ「……ウホ……ウホ……ウホ」

セミラミス「ギルタブリル……もうよい。喋らなくともよいのだぞ?」

エネゴリ「ウホ……ウホウホ……ウホウホウホ!」

セミラミス「ギルタブリル……! そんなことを言わなくともよい……ギルタブリル!」

エネゴリ「……ウホウホ」

シュウウウウッ……

立香「消えちゃったぁ……!」

セミラミス「ギルタブリル……」

立香「エネゴリくん……最後になんて言ってたの……?」

セミラミス「『ウホウホ』で意思疎通なんぞできるわけがなかろうがァ!」

立香「ですよねーーーッ!」ガビーンッ

セミラミス「……マスター……令呪をよこせ」

立香「……」

セミラミス「我だけの問題で話が済めば、まだ我慢はできたのだが……」

セミラミス「我の臣下に、勝手に殺されたのだぞ。ここで怒らなければどこで怒るというのか!」

立香「……うん。わかった。令呪を切る」

モードレッド「へぇ。ストックホルム症候群ってヤツか? そのクソババァの味方するってんなら……」

モードレッド「これから先、容赦を期待するんじゃねーぞ」ギロリ

立香「令呪をもって命ずる……」キイイインッ

セミラミス「ゆくぞ。モードレッド」ジャララッ

モードレッド「いつでも来やがれ! クソ売女!」バチバチッ

立香「令呪をもって『モードレッドに』命ずる!」キィィィィンッ

セミラミス&モードレッド「ゑ?」

立香「今すぐに空中庭園から飛び降りてェ!」キュインッ

モードレッド「」

立香「重ねて令呪をもって命ずる! 当然『魔力放出』での抵抗は認めない! 無防備に落ちろ!」キュインッ

モードレッド「おい。待て。ステイステイステイ。やーめーろ! やーめーてーくーだーさーいー!」

立香「最後の一画をもって勅命とする! さっさと飛び降りろって言ってるの! 飛び降りろコラァ!」キュインッ

モードレッド「がああああああああああっ! て、テメェら……助けにきてやったのに……お、お、お……」

モードレッド「覚えてろよおおおおおおおおお……」ピューッ

立香「はあっ……はあっ……はあっ……」

立香「……はあーっ……」

立香(……セミラミスに薬盛られたとき、これ使って抵抗すればよかったんだなぁ……思いつかなかった……)ズーン

立香「……終わったよ。セミラミス」

セミラミス「う、うむ。大儀であった」

立香「……疲れた。寝る。エネゴリくんを弔うのは明日でいいよね」モゾモゾ

セミラミス「そこは我のベッド……」

立香「……燻製、できてるころじゃない? 巴を起こして酒盛りでもしててよ……」

セミラミス「本当に疲れておるな……余裕のないとき以外は敬語だったのだが……」

セミラミス「……」

セミラミス「確かに小腹が空いたな。巴と共に酒盛りでもするか」スタスタ



三日目、終了

割とSS速報がダウンしてる時期が長いなー。
続きは明日!

四日目 最終日

立香「んん……ん? 朝……?」

立香「……ああ、もう。一晩寝たところで臭いが取れるわけないよね。お風呂に入りたい……」

立香「……エネゴリくんがいないから無理だ……あんな大きなお風呂、どう沸かせばいいのやら……」ハァ

立香「シャワーくらいは機能してるかな?」ムクリ

立香(……そういえばセミラミスがいない。どこで寝たんだろ)

立香(一晩中酒盛りしてた……? いやそんな量の燻製は容易してなかったはず……)

立香(まあいいや。まずは体を洗って着替えないと)

立香(今日やっと帰るんだから)

刑部姫「あ。生きてた」

立香「マスターに対する第一声がそれか! モードレッドもおっきーの差し金だよね!?」

刑部姫「……何を根拠に?」サッ

立香「目を逸らした……のは根拠として弱いけど物証はいくらでも」

立香「ほら見て。セミラミスの寝室のドアについた靴跡。あと蹴破った形跡」

立香「あとあっちの方に見えるのはモードレッドが空中庭園に到着したときに付いた所謂『カチコミ痕』かな?」

刑部姫「それが? それだけの証拠しかないけど?」

立香「それだけしかないのが問題なんでしょ。カチコミ痕と、この寝室までいくつか他に部屋があるよね?」

立香「モードレッドが私を探してたのなら、寝室までの全部の部屋を蹴破りながら練り歩くよ」

立香「『どこに私がいるのかピンポイントでわからない限り』はさ」

立香「それがないってことはモードレッドは私の居場所が、空中庭園に入って早々わかってたってことだよね?」

刑部姫「あれー? でもさー。だからと言って容疑者が姫だけってわけじゃないよね?」

立香「セミラミスはずっと私と一緒だったし巴は燻製から離れたりはしない。多分、セミラミスが帰ってくるまでは」

立香「つまりカチコミ痕の『周囲』でモードレッドに私の居場所を吹き込めるのは刑部姫だけだし……」

立香「巴ならそんな軽率なマネはしないよ。性格的に」

刑部姫「あらら。姫ってば信用されてない」

立香「こういう部分においてはまったく信用してないね!」

立香「でもいいや。(今は)不問にするよ」

刑部姫「えっ。本当? やったー! 助かったー!」

立香(後で巴と組んで全力の折檻だな……)

立香(あ。一画だけ令呪戻ってる。あれ十二時より前の出来事だったのか)

立香「……令呪を持って命ずる。お風呂入るから着替えを用意して」キュインッ

刑部姫「がっ!? そんなくだらないことに令呪使わないでよ!」ギリギリギリッ

立香「令呪使わない限りサボるでしょ」

刑部姫「あー、もう。わかった。わかりましたよ。風呂の準備くらいしますって」スタスタ

立香「よし! 活動開始!」

数十分後

立香「あーさっぱりした! 体中注射痕だらけだから石鹸とか使えなかったけど!」

刑部姫「ねーねー。こういうリョナ系はあんまり趣味じゃないけど資料として貴重だから写真撮っていい?」

立香「好きにして! ただし流出させたらレアプリの刑だからね!」

刑部姫「で。これからどうしよっか」カシャッカシャッ

立香「着替え! 下着だけじゃ外歩けないでしょ」

刑部姫「ぽいぽいっと」

立香「はいどーも。着替えたら空中庭園の上部に出よう。巴とセミラミスがそこで酒盛りしてたはずだから」

刑部姫「了解ー」

立香「機嫌最悪だったからついベッド占拠しちゃったけど、会ったら即謝らないとなぁ」

虚栄の空中庭園 上部

立香「うっわ。なにこれ。屋外なのにアルコール臭ひっどい!」

刑部姫「凄い楽しんでたみたいだね。見てよこのゴミ袋。ゴミを散乱させないだけの理性が残ってただけマシだけどさ」

立香「全部酒瓶とかビール缶とかだ! 二人でこんなに飲んだの!?」ガビーンッ

刑部姫「ん……なんだろ、この樽。ワインみたいな臭いがする」クンクン

刑部姫「……」

立香「……これ酒樽じゃない? 中身が空だけど」

刑部姫「何百Lってレベルだよ!? 全部飲んだの!?」ガビーンッ

立香「流石にサーヴァントでもこのレベルだと無事じゃ済まないよね!?」

刑部姫「まあ、直接的に酒が死因になった英霊はそんなにいないけど『酒が攻略の鍵となった英霊』はいくらでもいるしなぁ」

立香「あっちのテントの中かな? 開けるの怖いんだけど!」

刑部姫「姫だってイヤだよ。命令したいのなら令呪を使えば?」

立香「もう全部使ったって知ってる上で言ってるよねぇ!?」

立香「ひとまずテントに入ってみよう。多分中にセミラミスが……」

ペンギン「!」

立香「……??????????」

刑部姫「え。なんで入口で固まってるの? 中になんかあったの?」

立香「ペンギン」

刑部姫「はあ? なんて言っ……ペンギンだ。なんで?」

ペンギン「……」パタパタ

立香「さあ……あ。セミラミスいた。やっぱり伸びてる」

セミラミス「すう……すう……」スヤァ

立香「よかった。無事みたい。あっちのタオルケットにくるまってる塊は巴かな? 息遣い聞こえるし」

刑部姫(……なんかサイズに違和感があるなぁ?)

立香「セミラミス。起きて。セミラミス!」ユサユサ

セミラミス「んん……ん? 誰だ?」パチリッ

立香「あ。起きた。よかった。無事みたい……だね……?」

立香「あ、あれ。セミラミスなにか違和感が……ッ!?」ガチーンッ

刑部姫「え。なにその反応。スライムが氷結系の魔法食らったような顔してるけ、ど……!?」ガチーンッ

セミラミス「……む……二日酔い確実かと思ったのだが……割と頭が軽いな」キラキラキラ

セミラミス「ククク。悪くない朝だ」シャランラー

立香「物理的に軽くなってるだけだよ!? ねえ! 鏡見て鏡!」アタフタ

セミラミス「鏡? ええと化粧用コンパクトは……あった」ゴソゴソ

セミラミス「……」ガチーンッ

セミラミス「……ショートカットになっておるな……?」ガタガタ

刑部姫「髪よーーー!」ガーンッ

セミラミス「我の髪……我の髪はどこへ……?」アワワワワワワ

立香「巴! 巴ーーー! 起きてー! セミラミスが酒の勢いで思い切り過ぎたイメチェンを!」ユサユサ

「だぁぁぁぁぁ……うっせーな。頭が痛くなんだろーが!」モゾモゾ

立香「そんなこと言ってないで起きっ……ん? あれ。巴、こんな口調と声だったっけ?」

モードレッド「頼むからもうちょっと寝かせろって……」ムクリ

立香「巴御前じゃなーーーいっ!」ガビビーンッ

モードレッド「あ? 巴なら俺の隣にいんだろ?」ガバァッ

巴御前「むにゃ」スヤァ

立香「んんんんんんんんんんん!?」

刑部姫「え。なにこれ。モーちゃんって確かキレたマスターに処分されたんじゃ……」

モードレッド「墜落した『後』については指示されてねぇ。魔力放出でぶっとんで戻ったに決まってんだろ」

モードレッド「ん? ぎゃははははははっ! んだよババァ! とんでもねぇイメチェンしたもんだなオイ!」

セミラミス「……わからぬ。昨日の記憶が曖昧だ。我の身に一体何が……」ズーン

モードレッド「ん。結構シャレになってねーな……言い返してこねーんじゃ弱いものイジメみてーじゃねぇか」

立香「あ。そういう騎士の矜持的なものはあるんだ、やっぱり」

モードレッド「普段はそこら辺にポイしてるに決まってんだろ。ま、今はガウェインとか父上がうるせーからな」

モードレッド「マスターの意向もあるし。寝てる相手とテメェより遥かに弱いヤツに理由もなく剣を振るったりはしねーよ」ヘッ

モードレッド「ん? あれ。なんだこれ。俺、なんでクラレントを出しっぱなしで寝て――」

長い髪のようなものが巻き付いたクラレント「」バァァァァンッ

モードレッド「」

立香「誰が騎士だって?」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

モードレッド「」

モードレッド「待て! 待てオイ! これには何かしらの理由があるはずだ! あるはずなんだ!」アタフタ

モードレッド「ちょっと待ってろ、今から一から説明を……できねぇ! あれ!? 変だぞ! 俺も昨日のこと思い出せねぇ!」グヌヌ

刑部姫「そりゃあんだけ飲めばねぇ?」

立香「揃いも揃って……やっぱり頼れるのは巴だけかなぁ?」

セミラミス「……我の髪は……」キョロキョロ

セミラミス「ん? なんだこれは。何故テントの中にこんなものが?」ヒョイッ

刑部姫「なにそれ」

セミラミス「タトゥーを彫るための機材だな。一式揃っておる……というか最近使われた形跡があるな? 昨日見たときは未使用だったはず……」

モードレッド「ああ!? おいおい、俺の肌に彫ったりしてねぇだろうな!?」

刑部姫「いやあ。肌に関しては二人ともいつも通りに見えるけど……」

立香「……」

セミラミス&モードレッド「……」

巴「むにゃ……もうダメですよぉ……バグ技使っちゃあ……」スヤスヤ

総員(ま、さ、か)

ペンギン「……」グイグイ

モードレッド「おい! なんだあのペンギン! どこからやってきた!?」

モードレッド「違う! 今それはどうでもいい! アイツ巴にかかったタオルケット剥がそうとしてねぇか!?」アタフタ

刑部姫「や、やめさせて! 今すぐに! 姫これ以上は怖くて見てられない!」ガタガタ

立香「セミラミス! あのペンギンくんに命令してッ!」

セミラミス「我がか?」

立香「女帝でしょ! なんとかなるって! ビシッとやってよ!」

セミラミス「……そこなペンギン。その極東の田舎武者のことなぞ放っておけ」

ペンギン「?」

セミラミス「そら。我の元へ来い。貴様の望むものを与えよう」クスクス

ペンギン「……」

立香「……と、止まっ――」

ペンギン「ッ!」グイイイイイッ

立香「ってないいいいいいい!」ガビビーンッ

モードレッド「そりゃそうだ。この女にカリスマ系のスキルは一切ねーからな」

立香「ああもう実力行使だ! 私が行く! 私が巴(の名誉的な何か)を守るんだ! うおおおおおおお!」

モードレッド「あ。そこにクラレントがあるから足ひっかけないように」

立香「おっ」コケッ

モードレッド「気を付けろって言おうとしたのによォーーー!」ガーンッ

立香「がらっしゃあああああああああああ!?」ドガラッシャァァァンッ

刑部姫「ぎゃああああああ転んだ衝撃でタオルケット剥がれたーーー!」

セミラミス「まだだ! まだ『実はなんともありませんでしたー』的なオチが待っている可能性も……」

立派な龍が背中に彫られた巴御前「にゅふふ~……むにゃむにゃ」スヤァ

立香「うわああああああああああああああああ!?」ガビビーーーンッ

モードレッド「そんなものは、ねぇ」

セミラミス(謝罪会見の準備程度はしておくか)

立香「ああああああああああああ……これ回復用のスクロールとかで治るかなぁぁぁぁぁぁ……」ガタガタ

セミラミス「知らぬ」

モードレッド「毒婦め」

セミラミス「我の髪を切り落とした貴様に言えたことか? ん?」

刑部姫「酔った勢いって本当怖いなぁ……ん? 待てよ。ちょっと待って」

刑部姫「結局このペンギンくんはどこから紛れ込んだの?」

立香「知らないよもう! 勝手に野性に返しておけば!?」エグエグ

刑部姫「ヤケクソすぎるでしょ……いやまあ姫もそんなに深刻に考えられないけどさ……」

チョンチョンッ

刑部姫「ん? 誰か呼んだ?」

モードレッド「俺はなんも?」

セミラミス「同じく」

刑部姫「あれ。じゃあ今、姫の肩をつついたのって誰――」

PENGUIN RESEARC●っぽい集団「」ヤァ

刑部姫&セミラミス&モードレッド「」

立香「ああー……起きたとき巴になんて説明すれば……極妻未亡人っぽくなっちゃってるよおおおお……」エグエグ

刑部姫「マーちゃん。ねえマーちゃん。ねえねえ。ペンリ●がいる」ポンポンッ

立香「何言ってんの……」

刑部姫「マジだって! テントの出入り口のあたりにペン●サっぽい集団がいるんだってマジで!」ポンポンポンポンッ

立香「気安く肩を叩かないで! 今すごくイラッと来る!」バッ

セミラミス「このペンギンは貴様らのか? そうか。サインと交換だ。よいな? 名前? セミラミスと書け」

刑部姫「ペンリ●サイン書いてる! ねえ! こっち見てよマジでペンリ●いるんだって!」

立香「常識で考えてよ! 空中庭園にペンリ●がいるわけないじゃんっ!」

モードレッド「え? おお。ペンギンの礼か。仰々しいアタッシュケースだな。中に何が入って……イワシかよ!」ガビーンッ

刑部姫「イワシだーーー!」エェェェェェェ

立香「うるさい!」ブンッ

刑部姫「裏拳ぶっ」メリィッ

モードレッド「なんであんなヤツらが……」

セミラミス「ギルタブリル恋しさと酔った勢いで『色々と』呼んだかもしれぬ……我はまったく覚えておらぬが」

刑部姫「怖いなぁ……酔った勢い……」イテテ

セミラミス「この空中庭園は広いのでどこに何がいるのかもう我にもわからぬ」

刑部姫「怖いなぁ……女帝サマが」

巴「んん……あ。マスター。おはようございます。起こしに来てくれたのですか?」パチリッ

立香「はうわっ!?」ビクウッ

刑部姫「あ。起きた」

セミラミス「……」コソコソ

モードレッド「逃げんな」ガシイッ

セミラミス「フッ……我がいつ逃げた? ただ責任の所在についての話題に入られると困るから今すぐこの場から離れたいだけだ」

モードレッド「完璧に逃げてんじゃねぇか」

刑部姫「凄いよね……この局面に至っても自信満々だよこの人。どんな神経してんの」

巴御前「……あ。や、やだ。お恥ずかしい。上半身が裸ではないですか」カァァッ

巴御前「すみません。見苦しいところをお見せして」

立香「う、うん。気にしない、で……」シドロモドロ

巴御前「セミラミス。私の服はどこに……? いえ、というより何故私は半裸なのです?」

セミラミス「知らぬなあ」シラーッ

モードレッド「テメェ」イラッ

巴御前「……痛っ。なんか背中と肩が全体的に突っ張ってるような……?」ムクリ

立香「うわぁぁおっ!?」ガビーンッ

巴御前「?」

立香(つ、つい声出しちゃった……肩にもガッツリ入れ墨入ってるぅーーーっ……)ホロリ

刑部姫(ジャパニーズ893スタイルだなぁ)

巴御前「……ん……あら? セミラミス。あなた髪を切ったのですか?」

セミラミス「切られたようだ。後で霊基再臨の応用で元に戻す」

巴御前「そうですか。それも似合っている気がしますが」

セミラミス「貴様のそれも似合ってる気がするぞ?」

モードレッド「バカ野郎ーーーッ!」ガーンッ

巴御前「それ? 一体なんの話……?」

巴御前「……」

巴御前「鏡あります?」

立香「あ、あの。巴。落ち着いて。一回話を」

巴御前「鏡あります?」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

立香(やばい私も逃げたくなってきた)

刑部姫(そらきれい)

ギル祭にセミ様が出てた関係で今日は休みです

数分後

巴御前「……!」ガタガタ

セミラミス「……」

セミラミス「震えるほど気に入ったようだな」ガタガタ

立香「言ってて自分でもわかってるよね! 破滅への秒読みだってわかってるよね!」

刑部姫「なんなら女帝サマの方が震えてるよ。顔真っ青だし」

セミラミス「逃げたいわけではないが、急激にこの場から消えたくなってきたな」

モードレッド「一向に自分の本心を口に出さねーよコイツ」

巴御前「懺悔の用意はできていますか?」ニョキッ

セミラミス「!?」ビクウッ

立香「リアルに鬼の角生えてきちゃったよ! やばいよ巻き添えで私たちまで燃えちゃうよ!」アタフタ

刑部姫「逃げる? オア逃げる?」

モードレッド「アーチャーだぞ。逃げたところで背中から狙撃されるに決まってらァ」

モードレッド「というわけで一人囮にして残りは安全にカルデアまで帰るというのはどうだ?」

セミラミス「貴様にしてはいいアイデアだ」

モードレッド「生贄役テメェだぞ」

セミラミス「バッドアイディアだ」ガーンッ

立香「……い、いや流石にそれは可哀想だよ……? それにさ」

巴御前「それに……なんです?」

立香「そんな派手な入れ墨されておいて巴御前にも一切の責任がないとは言い切れないよね?」

刑部姫「え? 何言ってるの? カルムイク語で『死にたい』って言ってんの?」

立香「日本語だよ! よく考えてよ! 入れ墨って本来『入れられる側の同意』が必要でしょ?」

立香「こんな派手な入れ墨入れるとなったら流石の巴でも起きるって! だから……!」

モードレッド「あ! そうか! 仮に酩酊してたとしてもスミ入れられてる最中は『意識があった』んだな!」

立香「多分ここまで派手にやらかしたってことは巴も酒のせいでノリノリだったんじゃないかなぁ? 多分。そうだといいなぁ……?」ガタガタ

巴御前「……なるほど。確かに筋は通っていますね」

巴御前「でも私にそんな記憶はありません。酷く酔って昏倒した私にセミラミスが『勝手に』入れ墨を施した可能性も同量ありますよね?」

立香(あー! あー! くそう、これ以上の弁解はちょっと難しいか!)

立香(疑わしきは白だと説得したところで激怒した巴には焼け石に水だろうしなぁ!)

立香(……あれ。待てよ。そうだ。まだ弁解のチャンスはある!)

立香(巴が服を自ら脱いだことを証明できればいいんだ! 確か彼女の服はまだ未発見だったはず)キョロキョロ

巴御前「それでは私もろとも、この空中庭園を破壊します」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

刑部姫「なんてタチの悪い流星一条!」ガビーンッ

立香「ここか……? ここかな! じゃあここっ!」ガサゴソ

立香「あった! ビンゴ! 巴! これで証明するよ!」

巴御前「?」

セミラミス「……それは……着物か?」

立香「そう。巴の着ていたヤツだよ。彼女の寝間着」

モードレッド「あ。段々思い出せてきたぜ。墜落した後で空中庭園に戻ってきたらそこの二人が揃って酒盛りしててよ」

モードレッド「既にかなりベロンベロンに酔ってて……この状態を斬るのもなんだかなぁって躊躇してたら、あれよあれよというまに俺も……」

刑部姫「酒を飲まされた……いや酒に飲まれたわけね……惨い」ズーン

セミラミス「しかしこれで何をどう証明するというのだ?」

立香「問題はこの着物の状態だよ。少しだけ乱れてるけど間違いなく『たたまれてる』よね?」

巴御前「!」

立香「セミラミスやモードレッドが他人の服を畳むように見える!? これ明らかに巴が『自分で服を脱いだ形跡』だよね!」

刑部姫「あっ」

立香「つまり、セミラミスが入れ墨のキットを持ちだした際、巴御前は間違いなく『同意してた』んだよ!」

巴御前「ぐっはぁ!?」ガーンッ

巴御前「い、いや! でも他に人の着物を片付けるような甲斐甲斐しい性格の持ち主が、この空中庭園にはいたはずです!」

立香「え? いた?」

刑部姫「いや姫は心当たりないけど……女帝サマはどう?」

刑部姫「あれ。いなくなってる。どこ?」キョロキョロ

モードレッド「そっちで筆文字書いてるぜ。『無罪』って」

セミラミス「ジョーカーなんてーこなーい」ルンルン

刑部姫「早っ!」

巴御前「セミラミス! あなたにもあながち関係のない話ではありませんよ!」

セミラミス「何……? それはどういうことだ? そして無罪の『無』の字の下の点々の数はいくつだ?」

立香「四つだよ! 漢字わからないのに筆文字書こうとしたの!?」ガビーンッ

モードレッド「流石に極東のマイナー言語なんざ一々俺も覚えてねーよ。これは仕方ないっつの。ここ日本じゃねーし」

セミラミス「刑部姫」チョイチョイ

刑部姫「書けってか! 姫に! ああもう期待しないでよ!」カキカキ

巴御前「セミラミス! あなたはギルタブリルを使ったのでは?」

立香「あ」

セミラミス「ん?」

巴御前「彼がいれば着物を畳むくらい余裕でしょう。いえ、証拠隠滅と改竄のために彼ならむしろ率先してやるはずです!」

巴御前「酔っていたとは言え、私が入れ墨に同意してたなどと……!」

立香「ああー……言ってなかったの?」

セミラミス「言っ……てなかったかもしれぬ。すぐヤケ酒に入ったからな」

巴御前「?」

立香「いないよ」

巴御前「え?」

立香「ギルタブリルはもういない。モードレッドに切り殺された」

巴御前「えっ」

セミラミス「……だからヤケ酒を煽っていたのだが……そうか。気付いてなかったか」

巴御前「ええーーーっ!?」ガビーンッ

刑部姫「決まりだね。巴ちゃんは自分から服を脱いだ。ここが確定した以上、巴ちゃんは酔っていたとは言っても入れ墨には同意していた」

モードレッド「一方的にこの場にいる全員を裁く筋合いは一切ねーな」

巴御前「なっ、なっ、なあーーーっ!?」ガビーンッ

立香「悲しい事件だった……」

巴御前「ば、バカな……この空中庭園内では大人しい方だったギルタブリルが、何故そんなことに……!」

モードレッド「カルデアの方ではそうでもなかったんだよ。誘拐、食糧の強奪、その他備品への攻撃etc……」

モードレッド「討伐命令が下って当然だろ?」

立香「セミラミス?」

セミラミス「それの何が悪い? 我のための行動であろう? 仮に悪かったとしてもギルタブリルの責任であって我の責任ではないが」

立香「……」

モードレッド「マスター。コイツに常識を説くのは無意味だぞ?」

立香「ああー……」

巴御前「バカな……バカな……!」ガタガタ

立香「後で元に戻すから。ね?」

刑部姫「一件落着ゥ!」

立香「おっきーは後で巴が立ち直ったら折檻ね」

刑部姫「何故ェ!?」ガビーンッ

今日のところは休み! 何故なら眠いから!

立香「……」

立香(私はあえて追及してないことがある。今のところ何の証拠もないことだから別にいいんだけど)

立香(果たして『ただの酒』でサーヴァントがここまでベロンベロンに酔うだろうか)

立香(答えはNO。または、限りなく考えにくい、といったところか)

立香(でも例えば……そう、サーヴァント製のチョコレートを貪りまくって虫歯になったナーサリーの例のように)

立香(サーヴァント製の何かが入った酒ならありえなくもないかも、だ)

立香(このまま丸く収まりそうだから、この場はこのままでいいけど……私は怖くて一つ聞けないことがあった)

立香(『セミラミス。お酒に何を混ぜた』と)

立香(まあ聞いたら私たちのことを玩具程度にしか思ってないセミラミスのこと、正直に答えちゃうだろうから、危険すぎて訊くのは憚られ――)

刑部姫「ところで女帝サマ。一つ訊いていい?」

セミラミス「ん? なんだ? 今は助かって機嫌がいいのだ。無罪の筆文字を書かせている褒美もかねて、何でも訊くがいい」キラキラキラ

刑部姫「お酒に何か混ぜた?」

セミラミス「愚問だな。酒の席が盛り上がるように努めるのは、ホストとしての当然の責務だ。混ぜていたに決まっておるだろう!」ドヤァァァ

立香「」

モードレッド「あーあ。責任の天秤が今の一言で一気に傾いちまったなー」

立香「ばかやろおおおおおおおおおおおおおっっっ!」ガビビーンッ

巴御前「巴流流星一条(これにて失礼しまステラ)ァァァァァァァァァ!」ドシュウウウウウウウウッ

総員「ぎゃああああああああああああああ!?」

ドカァァァァァァァァンッ

数時間後 セミラミスの寝室

セミラミス「ん……んん……? 熱い……背中が熱い……?」モゾモゾ

セミラミス「む?」パチリッ

立香「やっと起きた。おはよう」

セミラミス「おはよう。我の背中はどうなっている?」

立香「大火傷……だったけど、礼装持ってきて私が治したから、もう大丈夫」

立香「今日はうつ伏せでしか眠れないけどね」

セミラミス「そうか。大儀である。あと敬語、完璧に外れたな」

立香「ん。あっ……いやもういいや。面倒だからいいや。どうでも」

セミラミス「そうか」

立香「まったく……なんの考えもなしに訊ねた刑部姫も刑部姫だけど」

立香「わざわざそれに馬鹿正直に答えなくってもよかったのに」

セミラミス「ふっ……仲間に対してそんな不誠実なマネはできまい?」キラキラキラ

立香「なんで急にキャラ変えてるの。そんな殊勝なこと言うヤツじゃないでしょ」

セミラミス「いやこの言葉自体に嘘はないぞ。汝らを仲間だと認識したことはないだけで」

セミラミス「何故一々嘘など考えねばならない? ただのオモチャ相手にそこまで手間を裂くだけの理由がない」

立香「自衛くらいはすべきだよね」

セミラミス「死んだら死んだでそのときであろう。まあ死ぬわけないが」フアーア

立香「やばい。第一印象よりも遥かに退廃思考だ……」

立香「……ああもう。わかったわかった。どうせ女帝に下々の民が何言っても無駄でしょう」

立香「アホなことをした制裁は下ったようなものだし。これ以上はうるさいこと言わないよ」

セミラミス「そうか。それは手間が省けて助かった」

セミラミス「我の背中を治療した褒美をくれてやろう。頭なでなででいいか?」ナデナデ

立香(いいかとか言ってる間に撫でてるし)

セミラミス「滂沱の涙を流しながらしゃくりあげた勢いで窒息して死ね」ナデナデ

立香(誰が死ぬか)

セミラミス「……む? 嬉しくないのか? 頭を撫でておるのだぞ? 我が」ナデナデ

立香「いやまあ……悪くはないけど……」

セミラミス「ふむ。なら汝が我の頭を撫でてみるか?」

セミラミス「なしだな。我が恥ずかしいからダメだ」

立香(今も充分恥ずかしいと思われるのですが)

立香「……」

セミラミス「ム。なんだ。辛そうな顔をして。さては巴御前にやられたときにタンコブでも作ったな?」ニヤァ

セミラミス「ここか? ここが痛いのか?」ナデナデナデ

立香「傷口を開くようなマネしないで。そうじゃなくってさ」

セミラミス「?」





立香「私、そろそろ帰るよ」

セミラミス「……」

セミラミス「痛み止めを処方しようか?」

立香「は?」

セミラミス「それとも、我の頭を撫でてみるか? さっきはイヤだと言ったが特別に」

立香「……あっ。いや! 違う違う! 気分を害したから外に出たいってわけじゃないよ!」

セミラミス「そうか? ……いや。それでも、なんだ……」シドロモドロ

立香「歯切れが悪いな。あとセミラミスが言ったことだし。今日になったら帰してやるって」

セミラミス「言ったな……ああ、言った」

セミラミス「……?」

セミラミス「他の者どもはどうした? 何故こちらに顔を出さない?」

立香「もう帰しちゃったから。私だけここに残ってればひとまず義理は果たせるでしょ」

セミラミス「……そうか」

立香「治療は終了。挨拶も終わった。義理は果たしたし、もう心残りはないよ」

セミラミス「里心の一つでも付いてるものと思ったが」

立香「空中庭園に? 悪くはなかったけど、カルデアに比べたらね」

立香「じゃあセミラミス。またカルデアで」

セミラミス「なに?」

立香「呼ばれても、もう来ないよ。少なくともしばらくは」

セミラミス「……なんだと!?」ガーンッ

立香「いや当然でしょ。数日続けて軟禁されるようなら『二度と呼ぶな』とか言われてもおかしくないし」

立香「……じゃあね」スタスタ

セミラミス「……待っ……いや、ぬう……!」アタフタ

立香「もう一度言うよ。今度会うときはカルデアで」スタスタ

セミラミス(……行ってしまった……)

数十分後

セミラミス「……」パタパタ

セミラミス「静か、だな。少し前なら考えられない」

セミラミス「……」パタパタ

セミラミス「むう。ベッドに寝転がってあざとさ全開で足をパタパタさせてみても、ドギマギする者がいないのではなぁ。虚しい」

セミラミス「……玉座に戻ってみるか」スクッ



玉座

セミラミス「……設備が……ちょっとだけ残っておるな?」

書置き『怪我が完治するまでのちょっとだけの間だけ貸してあげます。by巴』

セミラミス「ふん。あやつもあやつでやり過ぎた、と思っておるのだな。では遠慮なく……」カチッ

セミラミス「楽しい。楽しいな。娯楽としてのレベルが下がっておるわけではない。なのに」カチカチ

セミラミス「……どこか虚しいな」

数時間後

セミラミス「……ん? なんだこの敵は。羊のようだな。ロンドン橋歌っておるし……?」カチャカチャ

フンフフンフンフンフンフーン

マイ……フェア……レディ……

ドスウッ ギャアアアアアアッ

セミラミス「!?」ガビーンッ

セミラミス「……きゅ、急に描写がホラーに寄ってきた……な?」ガタガタ

セミラミス「……ぬう。隣に誰かがいれば、そやつの恐怖している様を見て楽しむのだが……」

セミラミス「そうか。ゲームがつまらなくなったわけではなく、いつもより面白くないだけなのか」

セミラミス「……楽しみ方を損している、と言えるであろうな。これは」

数時間後

セミラミス「……クリアしてしまった……いやいいエンディングではあるが生きるのが微妙に辛くなってくるな、このゲーム……」

セミラミス「さて。アカウントは入りっぱなしだ。次はアニメでも……」

セミラミス「……いよいよもって、これは大人数で見た方がよいものであろうな。我にはどれが面白いものかの判別も付かぬ……」

セミラミス「……ギルタブリルはおらぬ。鎖で呼ぶのも悪印象だと釘を刺されておる」

セミラミス「むう。これは……そういうことであろうなぁ」

セミラミス「……手土産でも持っていくか」ゴソゴソ




セミラミス「物凄い退屈なのでカルデアを練り歩く」

すばらしきこのせかいを買ったので今日はなし!

カルデア

立香「……いつの間にこんなことに?」

マシュ「はい。先輩が戻ってくるちょっと前あたりから、でしょうか」

マシュ「……あの。はっきり言って、ことがどれだけ深刻なのか私には……わからないのですが」

立香「あーあー。いいよ。マシュはわからなくっても。あまりにもくだらないことだから」

立香「くだらないことなんだけど……参ったな。『気が向いたらカルデアに来い』ってセミラミスに言っちゃったんだよなー」

立香「これを見せるの物凄く怖いんだけど……」

マシュ「セミラミスさん、ですか?」

立香「……まあいいか。なるようにしかならないでしょ」

立香「そんなことよりマシュー! 少し会わない間にまた背が伸びたー?」ニコニコ

マシュ「へっ? い、いえ。そんな数日ぽっちで背が伸びたりはしないのでは……」

立香「なでなで」ナデナデ

マシュ「話を聞いてください……はふう……」トローンッ

刑部姫「再会するなりラブラブだね」

数分後

立香「……セミラミスを召喚サークルの部屋に連れ込むのは危険だな」

立香「さて。どうするか。あと数日やり過ごせばどうにかなるけど……エミヤあたりに根回ししてもらう?」

立香「人望のないサーヴァントなら両手の指じゃ足りない程度には列挙できるんだけどな。人望のあるサーヴァントとなると……」

立香「……マリーに手を出したらモンペどもに足止めされかねない。あの子はよしとこうかな」

立香「そもそも来ると決まったわけじゃない。考えてみればそこまで深刻じゃないし、対症療法でもなんとかなるかな」

キャッキャッ

立香「……図書室の方から声? 誰だろ」

図書室内

セミラミス「ごん、おまえだったのか。いつも栗をくれたのは。そう言うとごんは……ごんは……」グスン

ナーサリー「ひどいわひどいわ! この人もアンデルセンと同類なの!?」プンプン

バニヤン「ごん、かわいそう」グスン

セミラミス「し……静かにしろ。今我が続きを……いやダメだ。もうダメだ。ページが見えぬ。ナーサリー、引き継げ」ヒョイッ

ナーサリー「もう。仕方がないのね」キャッチ

立香「……何やってんのセミラミス」

セミラミス「む? マスターか。昨日ぶりだな」スンスン

立香「いやどんだけ感情移入してんの」

最近は忙しくて時間がとれなかったが、やっとのこと時間が取れそうだ……ただ今日のところはスプラトゥーンをやりながら寝る!

セミラミス「質問に一つずつ答えよう。遠回しに『カルデアに来い』と言ったのは間違いなく汝だ」

セミラミス「『こんなところで何をしている』と言われる筋合いはまったくない」

立香「ん。その点はまあ……悪かったよ。気分悪くさせたなら謝る。土下座までなら可能だけど」

セミラミス「不要だ。その言葉で不問に処す」

セミラミス「二つ目。誰が感情移入などした。まったく平気だ。まったくな!」

ナーサリー「はい、おしまい。最後の方だけ引き継いだ形だからすぐ終わっちゃったわ」

セミラミス「褒めてやろう。我の仕事を引き継ぐその手際、値千金だ」

バニヤン「悲しいお話だったけど、楽しかったよ。メルシー、セミラミス」

セミラミス「ふっ。我とナーサリーにかかればこの程度造作もなっ……ぐすっ。ない!」ドヤァァァ!

立香「ハンカチ使う?」

セミラミス「使う!」

セミラミス「さて。来たぞ。持て成せ。茶とか出せ。骨までしゃぶるつもりで来たぞ」

立香「感動的なまでに厚かましいよ!」ガーンッ

バニヤン「セミラミス。もう行っちゃうの? まだ読んで欲しい本があったのにな」

セミラミス「何ィ? どれだ? 聞くだけ聞いてやる」

立香「……」

ナーサリー「……意外そうなのだわ。そこまでびっくりした?」

立香「凄いよ、あの人。上っ面だけとは言っても社交性を学習してる」

ナーサリー「ふふ。きっとマスターの采配がいいのよ」

立香「私が? まさか。本当に裏のない意味でセミラミスが凄いんだよ」

立香(しかしまあ、困った。なんとかあと数日は召喚室に入れないようにしないとなぁ)

バターンッ

巴御前「マスター! 大変です! 召喚室を見てみたら顔なじみがピックアップされてて……!」

立香「」

セミラミス「?」

巴御前「……あっ……」

立香「今更遅いッ!」ガビーンッ

巴御前「す、すみません! 迂闊でした!」

巴御前「図書室ではお静かに、ですよね」シーッ

立香「そっちじゃない! いやそっちも大事だけどそっちじゃない!」

ナーサリー「広辞苑も、お友達よ!」ガツンッ

立香「がはっ!?」ヘブッ

ナーサリー「お静かに……ね?」ニコッ

立香(広辞苑で殴られた……広辞苑で殴られた……!)ガタガタ

セミラミス「巴の顔なじみ……となると、ふむ。結構限られてくるな?」

セミラミス「確か絶対魔獣戦線とやらでも戦っただとかなんだとか……」

セミラミス「もしやシロ、げふんげふん。いや……まさかな。まさか、な?」チラッチラーッ

立香「……」ダラダラダラ

セミラミス「……」

セミラミス「冗談のつもりだったのだが?」ガーンッ

立香(全然違う。全然違う、が……! どっちにしろセミラミスに見せたらいけないヤツだから何も反論できない!)

巴御前「あ。天草四郎ではありませんよ。念のため」

セミラミス「そうなのか?」

立香「とーもーえーーー!」

巴御前「あ、し、失礼しました! どっちにしろセミラミスには会わせられないからノーコメントがベストですよね!」

立香「もう黙って! 喋れば喋るほどドツボだからさぁ!」

セミラミス「……よくわからぬが、要は我がそやつに会うとダメなのだな?」

立香「まあ……有体に言っちゃうと……」

セミラミス「ふっ。よい。今日の我はそこまで機嫌は悪くない。汝の言うことを聞いてやろう。ありがたく思え」

立香「本当!?」パァァ

セミラミス「ああ、本当だとも。さて、バニヤン。他の本を読み聞かせてやろう。リクエストは――」

ナーサリー「あ。気を付けて。足元に広辞苑あるから、つまづいちゃ――」

コケッ ベシャッ

セミラミス「……」ゴローンッ

巴御前「……」

巴御前「ぷっ」

セミラミス「我、大激怒」プンプン

立香「巴ーーーッ!」ガクガクガク

巴御前「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」アワワワワワ

巴御前「だ、だって! あそこまで見事にスッ転んで、あまつさえごろーんってなってた人、今日び中々見ませんよ!」

巴御前「つい! うっかり! 出ちゃったんです笑いが!」

セミラミス「あれは受け身だ」プンプン

立香「受け身だって!」

巴御前「柔道の心得はありませんが……それにしたってぎこちない受け身でしたよ。小学生ですか?」ウププ

セミラミス「我、超激怒」プンプン

立香「超激怒しちゃったよ!」ガビーンッ

セミラミス「我はもう貴様らの言うことを一切聞かぬ。故に召喚室に行くぞ」

セミラミス「召喚室に……召喚……?」

セミラミス「……」

セミラミス「まあ適当でいいであろう」ダッ

立香「明らかに『召喚サークルのある部屋』がどこか忘れてる!」ガーンッ

巴御前「ほぼ空中庭園に籠りっきりだったから……」

廊下

セミラミス「前に来たときはこっちだった気がしたのだが……」キョロキョロ

ワイワイ

セミラミス「む? この部屋が騒がしいな……何ごとか……」ガチャリンコ

刑部姫「ごっ、があああああああああああああ!?」ベシャアアアアッ

セミラミス「!?」ガビーンッ

水着ジャンヌオルタ「あーっはっはっは! この『地雷当て対決』は私の勝ちは決まったようなものね!」

刑部姫「おのれ……武蔵ちゃん凌辱本などどこで手に入れたっ……!? しかもNTR要素も完備! 役満! 死、死ぬっ……!」ガクガク

セミラミス「……」オロオロ

刑部姫「だけど私のターンはまだ始まってすらいない……食らえ! これが姫の選んだ、あなたに捧げる地雷本!」ズバァァァンッ

オルタンヌ「ふっ。どんなものが来ても私の勝ちは変わらな――」

刑部姫「ジャンヌ×邪ンヌ百合本」

オルタンヌ「イワーーーーーーーーーク!」ボオオオオオオッ

セミラミス「……」

数分後

セミラミス(……ううむ。これが同人誌か。薄さの割には面白いな。生々しいページが多いのが気になるが)ペラペラ

セミラミス(しかし全部、ギリギリで全年齢本か。これは話に聞くサバフェスというもので作られたものではないか)ペラペラ

刑部姫「現パロジャンヌ一家!」ドカァァァンッ

オルタンヌ「がはっ……刑部姫×モブ寿命差メリバ!」ドカァァァァァンッ

刑部姫「ぎゃあああああああああああっ! やってはいけないことをおおおおおお!」

オルタンヌ「お互い様よクソヒキニート!」

セミラミス(同人イベントか……確かゲームや音楽なども自作して持って行っていいのではなかったか)

セミラミス(ゲームの方はどうにかなりそうだな。こう、我のアルターエゴなどを搭載するなどして……)

セミラミス「ハッ。しまった。長居しすぎた」パタンッ

セミラミス「召喚室……召喚室はいずこか……」スタスタ

立香チーム

立香「くそっ! 俊敏値が高いわけじゃないのに普通に見逃した!」

巴御前「まあ、申し訳程度とは言っても気配遮断持ちのアサシンですしね……」

立香「早く見つけないと本当にまずいのに……!」

「あ~ん……」

立香「ん? 今誰かの泣き声が聞こえたような……」

ジャック「うあ~ん……!」

立香「あ。ジャック。どうしたの、そんなに泣いて」

ジャック「おかあさん! おかあさん! あのねあのね!」グスグス

立香「うんうん」

ジャック「セミラミスに、おかあさんから貰った大事なぬいぐるみ取られちゃったの!」エグエグ

立香「何やってんのあの女ッ!」ガビーンッ

巴御前「ぬいぐるみ……そんなものプレゼントしてたんですか」

立香「ダヴィンチちゃん工房で譲ってもらったものをジャックにあげたんだよね。私ぬいぐるみってガラじゃないしさ」

ジャック「それ本当?」

立香「……なんだって?」

ジャック「セミラミスが取るときに『あやつ裁縫までできるのか』って言ってたけど」

立香「……な……がっ……!?」ガーンッ

巴御前「……セミラミスが何故気付いたのかはこの際放っておきましょう。何故嘘を?」

立香「い、いや。マシュと初めて出会った日がもうすぐだったから手作りのぬいぐるみでも、と思ったんだけど……」

立香「習作はジャック含めたロリっ子たちに『工房で貰った』って建前で流してたんだよね。愛着あるからストレートにゴミ箱に投げられないし」

ジャック「道理で不細工なクマだなって思ったよ」

立香(猫ちゃんでーす)シクシク

立香「ジャック。ぬいぐるみはセミラミスから取り返すか、なんならもう一回作ってあげるからさ……マシュには内緒にして?」

ジャック「わかったー」

立香「で。セミラミスはなんでそんなことを……」

ジャック「召喚室はどこにあるって訊かれたけど、なにか怪しかったから断ったら、腹癒せに奪われたー」

立香「大人気無ァーーーッ!?」ガビーンッ

巴御前「やり口が完璧に悪ガキですね」

ジャック「解体しようと思ったんだけど、事あるごとにクマを盾にされて……なにもできなかったんだ」グスン

立香「ドン引きするほど卑劣だ! た、単純に許せない! 絶対に捕まえてやる!」

ジャック「お願いね、おかあさん」

立香「ジャック。セミラミスはどの方向に?」

ジャック「あっち」

立香「あっちね。ありがと……う?」

マシュ「先輩? それと、巴さんとジャックさん。こんなところで何を?」

立香「ああ、マシュ! ちょうどよかった! セミラミスを見なかった……って、ん?」

ジャック「あ! 私たちのぬいぐるみ! なんでマシュが持ってるの?」

マシュ「……ええと、これはセミラミスさんからプレゼントされたのですが……」

立香「――」

立香「は????????????」

マシュ「やはり盗品でしたか。そんなところだとは思いましたが……思ったより早く持ち主が見つかってよかったです」

立香「……」

立香(偶然? いやそれにしては人選が狙ったかのようだなぁ)

立香(確認してみようか……)

立香「マシュ。セミラミスなんか言ってた?」

マシュ「そうですね。ええと……召喚室の位置を知りたがっていたようなので素直に教えてしまいましたが……」

巴御前「素直に教えてしまったのですかー」

マシュ「これはそのときに渡されたものです。ただ『礼ではない。それは貴様が持つべきものだ。我の気遣いに二人揃って感謝するがいい』とか」

マシュ「そんな微妙に意図がわからないことを言っていました」

立香「……」ブチイッ

マシュ「え。せ、先輩? なんでそんなに怒ってるんですか? 私、なにかいけないことでも……」ビクビク

巴御前「え? マスターが怒ってる? あ、本当だ。物凄く怒ってますね」

ジャック「お、おかあさん? どうしたの?」

立香「……先回り作戦は失敗。巴。一緒に決着を付けに行こう」

立香「素直に教えちゃったのなら仕方ないよね」

立香「ジャック。ぬいぐるみの処遇についてはジャックが決めて。マシュなら素直に返してくれるし」

ジャック「うん。それじゃあ返してもらおうかな」

マシュ「あ、はい。どうぞ」サッ

ジャック「ありがとう! おかあさんからのプレゼントだから、取られたとき本当に悲しかったの!」ニコニコ

マシュ「それはよかったです。それじゃあ私は先輩と同行しますので、これで……」

立香「来ないでいい」

マシュ「え」

立香「むしろ来ないで。ちょっーと久しぶりにキレちゃったのは事実だけど、マシュを巻き込むわけにはいかないから」

マシュ「で、でも、あの……」

立香「後で説明するから……ね?」ニコォ

マシュ「!?」ビクウッ

巴御前(これ宣言通り、本当に激怒してますね。しかし何が彼女の逆鱗に触れたのやら)

召喚室前

セミラミス「ふっ……ここか! 長かった。長かったな、実に!」

セミラミス「さて、さっさと中を確認して、後から来るであろうマスターたちを愕然とさせる」

セミラミス「おそらくテンパったヤツらは『先回りするつもりで我本人を捕まえるつもりで動く』という凡ミスを犯しているはず……」

セミラミス「後から来たヤツらに『召喚室を先に抑えておけばよかったのだ、バカめ』と宣告してやろう! 楽しみだ!」ワクワク

セミラミス「入るぞ」ウィーンッ

セミラミス「さて。ピックアップの内容は……」

セミラミス「……!?」ガビーンッ

立香「見ちゃったね」

セミラミス「……マスターか。これはどういうことだ?」

立香「どうもこうも見ての通りだよ。前の何日かで縁が結ばれちゃったみたいだね」

セミラミス「そうか。ありえぬ話ではないな。ありえぬ話ではないが……」




ギルタブリルピックアップ「」ドォォォォォンッ

セミラミス「あやつ星5だったのだなぁ?」キョトーン

立香「うん私が一番ビックリしてる!」

セミラミス「なるほど。会わせてはいけないの意味がわかったぞ。要は『セミラミスに頼まれたら断れない』といったところか」

セミラミス「つまり我が『ギルタブリルを召喚しろ』と強請る、と?」

立香「違うの?」

セミラミス「強請るに決まっておろうが!」プンスカ

立香「ですよねー。ですよねー。そういいますよねー。わかってましたけどねー」

セミラミス「さて。何回召喚できる? 限界を越えろとまでは言わんが、あるだけすべて出せ。それが汝の責務だぞ?」

立香「……」

巴御前「……セミラミス。あなた、気付きませんか?」

セミラミス「巴?」




巴御前「マスター、物凄く怒ってますよ?」

セミラミス「……?」

巴御前「一欠けらも心当たりが無いって顔ですね」

セミラミス「……ああ。ジャック・ザ・リッパーに会ったか? それともマシュか」

セミラミス「いや何、ジャックには大人の怖さを思い知らせてやっただけのこと。マシュに関しては善性の塊なのだから責めるのは酷であろう?」

立香「ジャックの件に関しては『謝れ』とか強要しない。無理だし」

立香「マシュの件に関してはマシュの方には怒ってない。まったくね」

セミラミス「……話が見えんぞ。では何に怒っておる?」

巴御前「私にも微妙にわからないんですよね」

立香「何に? 具体的に言うと『セミラミスの行動に』かな?」

セミラミス「……はて。心当たりがないな」

立香「それでいい。今から教えるから」

立香「そうだな。結論から言っちゃうと私が怒ってるのは、マシュに私の作ったぬいぐるみを『私より先に』プレゼントしたからだよ」

セミラミス「は?」

立香「これだけ言えばわかったりしない?」

セミラミス「いやまったく。あの不細工な『ネコのぬいぐるみ』がどうかしたか?」

巴御前「ん?」

立香「……」

立香「今の発言で確信に変わったよセミラミス。あなたにはあれが『ネコのぬいぐるみ』に見えたんだ?」

セミラミス「……!」

立香「セミラミスがカルデアを歩いている間にマシュと出会ったこと。これ自体は多分偶然だったんだろうね」

立香「ただし、あのネコのぬいぐるみをマシュにあげたのは偶然じゃない。セミラミスが狙ってやったことだ」

立香「私がマシュと出会った日を記念してぬいぐるみを作ったことを知ってたね? セミラミスどころか『誰にも言ってない』のに?」

セミラミス「……」

立香「例えばホームズとかなら私が裁縫セットやら材料やら何やらをかき集めてるところから推理して」

立香「私が何をやろうとしているかはわかるかもね?」

立香「いや、ホームズでなくっても、私がカルデアで何をしていたかを知っていれば予測は可能かも?」

立香「でもセミラミス。あなたにはわかりようがない」

巴御前「……空中庭園に今日まで引きこもっていましたからね。それはそうでしょう」

立香「わかりようがないことをセミラミスは何故知ってたのか?」

立香「更には、ジャックがクマと評したあのぬいぐるみを、何故セミラミスは正しく『ネコ』と認識できたのか」

立香「藤丸立香しか知らないことをピンポイントで知る方法。心当たりがないわけでもないなー」

セミラミス「言ってみろ」

立香「藤丸立香本人に訊けばいい。というより方法はそれしかない」

立香「ただし、私には『セミラミスに対してそれを喋った記憶』が一切ない」

立香「齟齬があるなぁ? 埋めようがない齟齬だ。あれ? でも待てよ? 可能性はあるかもな?」

立香「私の意識が混濁してたあのときなら!」ズバァァァァンッ

セミラミス「ぐ……ぬ……!」

立香「実験のつもりだった? 効くかどうか試してみて、思いのほか上手く行って興奮したのかな?」

立香「取り留めのない質問を連発したんだよねぇ? セミラミス?」

セミラミス「……知らぬな。我は――」

立香「自白剤なんて投与してない? なら訊こうか。なんでアレを『ネコのぬいぐるみ』だなんて言ったのか!」

セミラミス「!」

立香「……モードレッドも言ってたっけ? あえて同じことを言おうか。『どんだけ舐めてたんだテメェ』」ギロリ

巴御前(うわー……静かなのが逆に怖い……)

立香「空中庭園での媚薬漬け。私が口を滑らせたのだとしたら、あのときしか考えられない」

立香「自白剤もあったんだよね? いや、それともストレートに媚薬兼自白剤だったのかな?」

セミラミス「……で? 自らの心根を暴かれて、汝は相当腹が立っているというわけか?」

立香「いや? サーヴァントが自分のマスターの心情を知りたいと思うのは当然の欲求だよ。その点に関しては責める気はない」

立香「死ぬほど不愉快なのは私個人の感情だしね。この点で当たり散らしても、大人気ないだけだ」

立香「言ったでしょ。問題なのは『私より先にマシュにプレゼントしたこと』なんだって」

セミラミス「ぬ?」

立香「……ははっ。あはははははは! いやぁ、見た? 巴。マシュのあの困った顔!」ケラケラケラ

巴御前「え。ま、マスター? 大丈夫ですか?」アタフタ

立香「大丈夫なわけないだろ。誰も彼もに当たり散らしたい気分だ」ギンッ

巴御前「」

セミラミス(これは……地雷を踏んでしまった、か? だが……)

セミラミス「それはそれで汝の私情だし、なんなら自白剤の件で激怒してた方がまだ大人気があったと思うのだが?」

立香「うるっさいなぁ! とにかく私は怒ってるの! 目玉の奥が熱暴走で爆発しそうだよ!」プンプン

立香「と、いうわけで。セミラミス。悪いんだけど私は憂さ晴らしをしたいと思うんだ」

立香「泣いたって許してやらないからね」

セミラミス「……ククク! バカめ! 我が汝を泣かせることがあっても、我が汝に泣かされることなどあるものか!」

立香「……賭けてみろよアッシリアの女帝。後で謝ったって遅いからな」ペイッ

セミラミス「……なんだ? 今なにを投げた?」

立香「あなたのお望みのものを。あなたにとって最悪の形で!」キィィィンッ

立香「――告げる! 汝の身は我が下に。我が命運は汝の剣に!」

セミラミス(詠唱?)ピクッ

巴御前「マスター。召喚を……!?」


ドシュウウウウウッ

立香「へえ。来たじゃない。最初の十回で上手く行ったものだなぁ」

立香「歓迎するよ。エネゴリくん」

エネゴリくん「ウホ!」ペコリ

巴御前「……」

巴御前(……なんとなくわかってきたかも。マスターが何を考えているのか)ダラダラダラ

セミラミス「ギルタブリル! 久しいな! また会えるとは思わなかったぞ!」キラキラキラ

エネゴリくん「ウホ!」

立香「じゃあエネゴリくん。最初の仕事」

エネゴリくん「ウホ?」

セミラミス「……わかってきたぞ。我にギルタブリルをけしかけるつもりだな? 薄い本のように! 薄い本のように!」

立香「なんかどんどん俗っぽくなっていくな。どこで覚えたのそんな言葉」

立香「そんなことしないって。だってセミラミス、前に言ってたし。『乱暴な男は好かぬ』って」

セミラミス「……ヌ……では何を?」

立香「わかるよね、エネゴリくん。今回は私が主だよ。セミラミスの言うことより私の方が優先。だよね?」

エネゴリくん「ウホ!」コクリ

セミラミス「え?」

立香「――空中庭園に向かって。今までカルデアから無断拝借したものを全部取り返してきて」

エネゴリくん「ウホッ!」ダッ

セミラミス「……」

セミラミス「何ィーーーッ!?」ガビビーンッ

巴御前「……ああ。なるほど。立場逆転、ですね」

立香「いい薬でしょ。ん? 今の言い方は、最古の毒殺者相手には気が利いてるな」

巴御前「ついでに私が運び込んだぴーえすふぉーも戻してもらいましょう」

セミラミス「ま、待て。貴様らァ! 女帝の持ち物に手を出すとは、不敬ここに極まっておるぞ!」ガシイッ

立香「うわっ! 離してよ! 気安く触らないで!」ムギギギギ!

セミラミス「このっ……! 面白い顔のまま蝋で固めてやろうか……!」グイイイイイッ

立香「ほっへをひっはふはー!」 訳:ほっぺをひっぱるなー!

巴御前(……確かに大人気ないですね。どちらも)

セミラミス「ぐ……ぐ、くそ! こんなことをしている場合ではない! 一刻も早く空中庭園に!」ダッ

立香「行かせると……思う?」

セミラミス「……?」

立香「巴。拘束を」

巴御前「了解」ガシイッ

セミラミス「!?」ガーンッ

立香「立場逆転、ねえ? 的確だと思わない? 私は思う。なので……」




立香「今度はあなたが軟禁される番だ。私の可愛いサーヴァント」

セミラミス「……く、ククク……ははははははは!」

セミラミス「ふざけるなよ……! 我が! アッシリアの女帝が! 最古の毒殺者が! よりによってこんな小娘なんぞに!」ジタバタ

立香「不服?」

セミラミス「見ればわかるであろう!」

立香「ああ、そう。そうか。うんうん」

立香「……あーーー! いい気味!」ニコッ

セミラミス「」

立香「私に逆らうな、とまでは言わない。当然でしょ。そういう関係は求めてない」

立香「セミラミスの持ち味を、マスターの私が潰すのはどう考えても悪手だし」

立香「……でもまあ、私だって人間だからさ。腹が立つし、度が過ぎれば怒るんだよ」

立香「話し合う時間はこれからたっっっっっぷりある。簡単に根を上げたりしないでよ」

セミラミス「……我を誰だと思っている。根を上げるだと? バカめ。こちらの台詞だ」

セミラミス「よかろう。その提案、受けてやる。だからせいぜい……」




セミラミス「我に寝首を掻かれぬよう、気を付けよ。我が愛しのマスターよ」

それからちょっと時間は流れて

マシュ(セミラミスさんは、しばらくカルデアに滞在しました。マスター認可のもと同室で寝泊まりまでしています)

マシュ(たまにセミラミスさんの気まぐれに付き合わされたマスターが溜息を吐いたり)

マシュ(逆に、度を越したイタズラを行うセミラミスさんをマスターが強引に止めたりと、細かい諍いはたえませんでした)

マシュ(でも)

立香「セミラミス。荷物ちょっとくらい持ってくれない?」スタスタ

セミラミス「断る。我は箸より重いものは持たぬぞ」スタスタ

マシュ「あ、あの」

立香「あ。マシュ。ごめん、ちょっと急いでるから用事なら後でね。緊急ならダヴィンチちゃん通してくれれば、すぐに飛んでいくから」

セミラミス「……期間はあとどの程度だ?」

立香「三日もないなぁ……そろそろ仕上げないと。手伝ってくれる?」

セミラミス「モデルの提供はしたであろう」

立香「……ありがたいけどさ……ていうかあのネコアルク? ってどこから連れて来たの?」

セミラミス「カルデアのデータベースを漁っていたら見つけた」

マシュ「……」

マシュ(なんか……ハブられてます)グスン

セミラミス(む? マシュがなにやら悲しそうな顔をしておるな……)

セミラミス「購買で焼きそばパンでも売り切れていたのか?」

立香「ん? なんの話?」

セミラミス「いや。なんでもない。戯言だったな。とにかく早めに完成させよ。深夜まで作業しているせいで部屋の明かりが消せぬ」

立香「はいはい」

セミラミス「……」

セミラミス「ふむ。悪くない、な。少なくとも退屈ではない」

立香「そう?」

セミラミス「……リツカ」

立香「うん。何?」




セミラミス「来年になったら我にもぬいぐるみを寄越せ」

立香「……うん。忘れてなければ、ね。これからもよろしく、セミラミス」ニコリ

おわり

終ーーー了---!

まとめ依頼ってどこでやるんすかね!
これやってる内にVIP復活しちゃって滅茶苦茶焦ったんすよね!

最終的に駆け足になっちゃったが仕方ない! これはこれで満足だ!
VIPに戻ってなんかするぞ! まとめ依頼を出した後でな!

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