諸星きらり「ハピハピしてぅ?」ジャック・ハンマー「…ハピハピ?」 (261)







ーカナダ、某所ー



ジャック「フワァ…………」


ジャック「……チッ、欠伸ガ止マリヤガラネェ」

ジャック「トレーニング中デモナニシテテモ出ヤガル」





───戦士は退屈していた

弟[バキ]に敗北け[まけ]
父に[ユウジロウ]に潰され




そして弟[バキ]は────




────鬼[チチ]に勝利した




ジャック「クソッッッッッ!!!!!」










SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1402561926







───戦士にとってもっとも恥ずべきは

退屈すること



研鑽を積むことを止め
肉体を苛めることを止め
精神を昇華させることを止め

強きを目指すことを止める───

それが───

退屈



しかしジャックは違う──


敗北を重ね、それでもまた先へと進む強き意思ッッッッ!!!!!

どのような無様にも
どのような恥にも
どのような苛酷にも



決して曲げることは無き強さを求める比類なき精神ッッッッ!!!!!


ジャック「オオオオオオ…………!!」ブルブルブル




───だからこそ赦せぬのは


ジャック「…………ッッッッ!!!」フワッ……


ジャック「フワァ……………」



自身の口から出る
───退屈の象徴[欠伸]ッッッッ!!!!!


ジャック「クソッ………………ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!」














ジャック「足リナイノカ……足リナイッテイウノカッッッッ!!!?」

ジャック「コレゴトキトレーニングナドカスダトデモ言ウノカッッッッ!!!!!?」





……戦士をしていれば他者に敗北することはある
それを呑み込むほどの強さ──それが自分にはあると信じてきた


これまで負けてきたジャックの敗戦記録の中でも────

もっとも屈辱的な敗北───


それが『今ッッッッ!!!』



ジャック「フザケルンジャネェッッッッ!!!!!」



俺は俺に負けている──ッッッッッッ!!!







───椰子の実を噛み砕くジャックでも噛み殺せぬ欠伸に悩み続けること、3日




ジャック「…………………」ガクガクガク……



戦士[ジャック]は戦士[グラップラー]をやめようとしていた…………



自身にさえ勝てぬ男が他者に勝てるものか───


そう悪魔が呟き続ける



ジャック「…………フワァ」



ジャック「…………」ピッ


────特に理由はない
ただなんとなく、普段はほとんどつけることもないテレビの電源をいれた





テレビ『~~♪』



ジャック「…………歌、カ」










考えてもみれば──


強きことのみにその命を燃やしてきたのだ──



歌を聞くなどほとんど初体験
うぶな心で……テレビから流れる歌を耳に入れた



テレビ『まーしゅまろほっぺ♪ゆびーさきでプーニプニ♪』




ジャック「……マーシュマロ、ホッペ……♪」


ジャック「ユビーサキデプーニプニ…………♪」


ジャック「…………ッッッッ!!?」ガタッ!!




───聞き覚えのある、弟達がいる遠い異国の地、ジャパンの歌

なぜか
なぜなのか



この歌を聞くと───






ジャック『欠伸ガ止マッ───タ──ッッッッ!!?』












ジャック「コレダ…………コレシカネェ」


ジャック「俺ノ退屈ヲ止メルニハ───コイツガ必要ダッッッッ!!!!!」







ジャック─────






来日決定ッッッッッッッッ!!!!!





前に蘭子が克己に空手習うss書いた?

>ジャック「……マーシュマロ、ホッペ……♪」

>ジャック「ユビーサキデプーニプニ…………♪」


やばいwwwwwwwwwwwwwwwwww

>>23
そうだよ





ーシンデレラ事務所ー



きらり「Pちゃーん!!!にょわー!!!」ダダダダダダッ!!!


モバP「うおきらりよせ嬉しいのはわかるがとにかくよせ!!!!」


きらり「Pちゃんにハピハピわけてあげるにぃ☆」ギュッ!!!


モバP「ぐおおおおおおお───ッッッッ!!!!!」ギリギリギリ





ちひろ「ふふふっ……きらりちゃん、CDがランキング入りしたのが嬉しいのね」

杏「がんばれプロデューサー…杏は帰るとするようん」








きらり「きらりがいーっぱいハピハピ出きるのはPちゃんのおかげだからハピハピお裾分けするにぃ☆」ギュッ!!!

モバP「もう充分!!!充分だから!!!」ギリギリギリ



ゴンゴンッッ……


モバP「……?ちゃ、待ってくれきらりお客さんだ」

きらり「むぇー……はーい」



モバP「取材とかですかね?」

ちひろ「今日はそんな予定ないはずなんですけど……なんでしょうか?」

杏「ねぇ帰っていい?」



モバP「とりあえず応対してきますね」

ちひろ「あ、おねがいしますプロデューサーさん!」





モバP「すいませんアポ無しの取材はお断りしてるんですけど────ッッッッ!!?」ガチャッ










まず視線がいったのは───

顔ではなく
『肉体』



はち切れんばかりの筋肉が服越しでも見てわかる───

そして次に見たのが───


『凶貌』(顔)ッッッッ!!!!!





モバP「あ……あ…………」ガタガタガタ

ジャック「あんたガ…ぷろデュウさあ、か?」

モバP(か、カタコトッッッッ───!!?外人ッッッッ!!?そもそも人かこれッッッッ!!?)ガタガタガタ










ー喫茶店ー


モバP「ええ、そりゃ驚きましたよ」

モバP「事務所の扉を開けたら化け物がいたっていうか………いや化け物のほうがマシだったかも?」

モバP「なんにせよめちゃくちゃなサイズの大男がいたんですからね」


モバP「え?それでどうしたって?」

モバP「んんゥ~……信じてもらえないかもしれないですから……あんまり言いたくないんですけどねぇ~~」

モバP「驚いたのはここからですよ、なんたってその大男がいきなり───」






ジャック『頼ム』

ジャック『俺ヲ────』




ジャック『アイドルにシテくれッッッッッッッッ!!!!!』









モバP「俺は事実を述べてるだけですから……信じるかどうかは貴方次第かと……」












モバP「え……えェ~~~~ッッッッ!!?」

ジャック「…………男が…戦士ガ頭を下げル───」



ジャック「そのイミ───男ならばワカルだろう」

モバP「いやでも…そんないきなり来てアイドルにしてくれったって…」

モバP「そもそもうちは女の子しかとらない方針で…315プロならもしかすれば………」

ジャック「…………」ギロッ!!!

モバP「ひっ………ッッッッ!?」



ジャック「俺でハ…フマンか?」

ジャック「俺デハ………アイドルのトップなどメザセぬ──そう言うノカ?」


モバP「いえあのですからうちは…………」




ジャック「……物事を前例ナド数値でシカ語れヌ、コシヌけにはワカるまイ」



ジャック「不可能───それを可能にする奇跡ッッッッ!!!!!」

ジャック「その奇跡ヘノ信仰ッッッッ!!!!!」

ジャック「信仰コソが暴挙をうミ────ッッッッ!!!!!」



ジャック「暴挙コソがッッッッ!!!!!奇跡を産ムッッッッ!!!!!」




モバP「い…………い…………」



モバP(意味わかんねェ~~~~~~ッッッッ!!!!!)









ちひろ「プロデューサーさん?なに入り口で騒いでるんですか?」ヒョコッ

モバP「ち、ちひろさん!この人がアイドルにしろとかなんとかきかなくて……」



ちひろ「あれ!!?ジャックさん!?」

ジャック「チヒロ、ここが職場ダッタのか?」



モバP「……え?お知り合い……?」

ちひろ「あぁはい、いつも外注でスタドリとエナドリを大量注文してくれる常連さんですよ」

モバP(なにしてんだよこの人……)


ちひろ「ジャックさん、お久しぶりです!前にあったときよりも大きくなりました?」

ジャック「アァ、骨延長手術を再ビしてな」

ちひろ「おっきいですねぇ~、弟さんには勝てましたか?」

ジャック「イヤ……あれからファイトをしてイナイ」

ちひろ「そうなんですか~、なんでまたアイドルなんかに?」

ジャック「───可能性ヲ感ジタ」








ジャック「俺ハ…ファイターとしての自分ニ誇りヲ持ってイタ」

ジャック「この身長モ、この筋肉モ──一度は捨てタが強くアルために手にイレタものダ」

ジャック「しかし───コノ手にイレタ強サは何度もネジフセラレタ」


ジャック「ソレデモ──俺ハまだまだ諦めはシナカッタ」

ジャック「しかし───」




ジャック「俺ハ俺に負ケタ」





ジャック「最早、俺ハもうファイターではイラレナイ───」







ちひろ「つまり…行き詰まったってことですか?」

ジャック「アァ、そしてそんな時ニ」スッ…




ジャック「コレを見つケタ」



──ジャックの手にあったのは

シンデレラガールズ事務所のアイドルである、諸星きらりのCD


ジャック「ミツケタ…といってもコノCDを見つけたワケではない」

ジャック「俺ガ見つけたノハ───」




ジャック「アイドルという強サッッッッ!!」

ジャック「笑イ、躍リ、歌イ………人々を魅了スルッッッッ!!!」

ジャック「闘いで人々を魅了スルのと、歌とダンスと笑顔デ人々を魅了スルのも根本は違ワヌはずッッッッ!!」



ジャック「ならば俺ハ─────」



ジャック「グラップラーアイドルとなるッッッッ!!!」



ジャック「ソレコソが──俺の新タナ強さダッッッッ!!」




















モバP「え、えぇぇぇ~~~ッッッッ!!?」

モバP(なんだよグラップラーアイドルってッッッッ!!!ていうかこんなムキムキなアイドル嫌だろッッッッ!!!!!)



ちひろ「なるほど…私のドリンクをよく注文してくれる事から想像はついてましたけど──」

ちひろ「ジャックさん、貴方って本当に貪欲なまでに強さを欲しがる人なんですね」

ちひろ「でも───」

ジャック「……………」





ちひろ「かまわんッッッッ!!!!!」

モバP「ッッッッ!!?」





ちひろ「嘆くこと無く鍛えッッッ!!」

ちひろ「倒れてでも踊れッッッッ!!!!」

ちひろ「枯れてでも唄えッッッッ!!!!!」

ちひろ「命を棄てるまで笑えッッッッ!!!!!」


ちひろ「アイドルとはならしてもらうのでは無くッッッッ!!!己の力のみで勝ち取る強さッッッッ!!!!!」











ちひろ「アイドルになりたくば喰らえッッッッ!!!!!」





ちひろ「朝も昼もなく喰らえッッッッ!!!!!」



ちひろ「食前食後にその強さを喰らえッッッッ!!!!!」



ちひろ「飽くまで食らえッッッッ!!!!! 飽き果てるまで食らえッッッッ!!!!!」




ちひろ「喰らって喰らって喰らい尽くせッッッッ!!!!!」




ちひろ「そして私達も…自己を高めましょう、貴方の仲間として───」


ちひろ「決して喰らい尽くせぬ仲間でいようッッッッ!!!!!」


ちひろ「祝福しますよ、貴方の門出を───」ニコッ



ジャック「──恩に着ルゼ、チヒロ」


モバP「え?──えッッッッ!!?」





──ジャック・ハンマー

アイドルデビュー決定ッッッッ!!!!!








まだ完結もしてないのにコブラPのところのまとめサイトにまとめられててすごいビックリした




ー面接室ー


モバP「……………」

ジャック「………………」




ちひろ『あ、採用はしますけど一応面接だけはしてくださいねプロデューサーさん?』



モバP(あの人────面倒なことは押し付けてきやがったッッッッ!!!!!)

モバP(どうすんだよォ~ッッッッ!!?なに聞けばいいの!?)



ジャック「───オイ」

モバP「ヒィ───ッッッッ!!!!!」



───小動物は天敵が多い
よって自衛のための習性が数多く存在する


ある鼠は───
自身を針の鎧で護り──

ある鳥は──
自身を大きくみせるための虚勢をはる



モバP───
普通の大学を出て就職し──闘争の縁遠き世界に身を置いていた


つまり────




モバPとジャック・ハンマーの力の差は例えるのなら───




蟻 と ド ラ ゴ ンッッッッ!!!!!






───しかし



必ずしも───
ドラゴンに敵意があるわけではなく


いや



蟻に敵意を向けるドラゴンなど存在するハズも無く────



ジャック「そうカタクならないデくれ」

モバP「はっ、はぇ……?」



ジャック「タしかニ、お前カラ見れバ俺は巨大でオソロしいダロウ」

ジャック「ダガ──別ニお前をトッテ食おうナンテ思っちゃイナイ」

ジャック「ダカら安心シな」

モバP「あ──は、はいィィィッッッッ!!」










ジャック「オシえな、俺ハどうすればアイドルにナレる?」

モバP「そ、そうですね……とりあえずはこの履歴書だけでも書いていただいてもいいですかね……?」スッ


ジャック「……なんだいこりゃあ?」

モバP「いえだから履歴書ですよ、アイドルとはいっても仕事ですから……」


ジャック「…………」



───思い返せば思い返すほど
自身の生涯は強さの獲得にのみ費やされていた


ジムに通い──
そして他のジムに通い──

そしてまた違うジムに通う───


それがジャックの若かりし頃の曲げることのなかった生き方

例え過度なトレーニングにより幽鬼のように痩せこけようともやめることは無かった───


そんな彼の人生───

必然的──




無 職 ッ ッ ッ ッ ! ! ! ! !






履歴書など───書いたことなどあるはずも無く──












モバP「……なにかわからないことでも?」

ジャック「いや……ダイジョウブだ」

モバP「そうですか……」




言えるはずも無い
今から雇ってくれる事務所にたいして

履歴書の書き方がわからぬなどと───

例えるなら───グローブの付け方も知らぬままリングへ上がるような行為ッッッッ!!!


ジャック(ソレハ最早──)


ジャック(侮辱デシカナイッッッッ!!!!!)




モバP「あの……俺他の仕事もあるので……」

ジャック「アァ……イイゼ、外しナ」


モバP(よかった……生きた心地がしなかったぞ……)





ジャック「…………」

ジャック(ドレホド考エヨウト───ワカラネェ )

ジャック(俺ハ、ココニ何ヲ書ケバイイ?)



ガチャッ




ジャック「……ン?」

杏「あれ?……誰?」





ジャック「……ここノアイドル、カ?」

杏「そうだけど……え、誰?」


ジャック「ナルホド……つまり俺ノ先輩ってワケだな」

杏「は?」




ジャック「ジャックだ、ヨロシクたのむ」

杏「ちょっと待ってちょっと待って」

ジャック「……ン?」

杏「えっとさぁ……まさかとは思うんだけど」



杏「アイドル……なの?」

ジャック「……違ウ」

杏「だよねー…そんなわけないよね」



ジャック「マダ候補生ダゼ」

杏「」











───杏の脳裏にあるモノが浮かぶ


『水の上を走る人』

『恐竜を狩る原始人』

『虎に勝利する空手家』

『画家になったプロレスラー』

『カマキリと闘う男』

『誰よりも自由な囚人』

『高校に通うヤクザの若頭』

『巨大な象を[ピーーー]大男』



そして今──
目の前にいる


2 メ ー ト ル を 越 え る ア イ ド ル 候 補 生 ッ ッ ッ !!!!



それらすべてに共通するのは




杏「あり得ねェ~~~ッッッ!!!!」






───杏の脳裏にあるモノが浮かぶ

『水の上を走る人』

『恐竜を狩る原始人』

『虎に勝利する空手家』

『画家になったプロレスラー』

『カマキリと闘う男』

『誰よりも自由な囚人』

『高校に通うヤクザの若頭』

『巨大な象を[ピーーー]大男』

そして今── 目の前にいる

2 メ ー ト ル を 越 え る ア イ ド ル 候 補 生 ッ ッ ッ !!!!

それらすべてに共通するのは

杏「あり得ねェ~~~ッッッ!!!!」

何度もすまん



───杏の脳裏にあるモノが浮かぶ

『水の上を走る人』

『恐竜を狩る原始人』

『虎に勝利する空手家』

『画家になったプロレスラー』

『カマキリと闘う男』

『誰よりも自由な囚人』

『高校に通うヤクザの若頭』

『巨大な象を殺す大男』

そして今── 目の前にいる

2 メ ー ト ル を 越 え る ア イ ド ル 候 補 生 ッ ッ ッ !!!!

それらすべてに共通するのは

杏「あり得ねェ~~~ッッッ!!!!」




杏(いやでも…うちの事務所だしなぁ…)

杏(婦警と暴走族が一緒にいるような事務所だし…あり得なくもないのかも…?)


ジャック「先輩、聞きタイことがアル」

杏「あ、いきなり先輩ってよんでくるんだ…なに?」



ジャック「コイツなんだが…」ペラッ

杏「あぁ、履歴書?それがどうしたの?」

ジャック「書き方ガわからねェンだ」

杏「普通に名前とか住所書くだけでいいんだよこんなの」

ジャック「フム…」サラサラサラ

杏(うわ、めっちゃ字きれい)


『ジャック・範馬』


杏「…ハーフ?」

ジャック「…ソンナところだ」









ジャック「ソレニシテモ、だ」

ジャック「ジャパンでは君ノようなキッズがアイドルをシテイルのか」

杏「あー、まぁうちの事務所は小学生も多いよ」

杏「あとこうみえて杏…私は17だよ」

ジャック「ッッッ!!?」



ジャック「驚いたゼ…すまない」

杏「いいよー、なれっこだし」




ジャック(17…刃牙トカワランナ)

ジャック(アイツモ闘士ニシテハ小柄ダガ───彼女ハマルデ──)




ジャック「妖精(フェアリー)──」ボソッ







杏「は?」

ジャック「──君ノ体型、容姿、雰囲気」

ジャック「そのすべてを的確ニ表現スルナラばそんな言葉がピッタリだゼ」


杏「…じゃあジャックさんは怪物(モンスター)って感じだよね」

ジャック「──よく言われテたモノだ」



ガチャッ


きらり「杏ちゃーん、何してるのぉ?☆」

杏「あ、きらり」

ジャック「ッッッ!!!!」ガタッ




きらり「うきゃー☆おっきいおにいさんがいるねぇー☆」

ジャック「き、君ハ───」

杏「紹介してあげるよ、この娘はきらりだよ」

きらり「きらりだよぉ☆」




──男として生を受けた者の宿命

『史 上 最 強 ッ ッ ッ 』


それを夢見るように


女として生を受けた者の宿命───

『史 上 最 愛 ッ ッ ッ 』

それを夢見る───



ジャックの目の前にいる二人のアイドル──

一人は、大きく
一人は、小さい


しかしその二人の共通点───



ジャック『か わ い い ッ ッ ッ !!!!』



圧 倒 的 雌 ッ ッ ッ !!!









この二人を見たとき────


ジャックの脳裏に浮かんだのは───



己が目標であり──
父である──



『オ ー ガ ッ ッ ッ
!!!!』



二人のかわいさを暴力に置き換えれば──


まさしく



史 上 最 強 の ────





『ア イ ド
ル ッ ッ ッ !!!!』











ガチャッ



モバP「ジャックさーん、書けましたか…ってお前ら!!?」

杏「あ、プロデューサー」

きらり「おっすおっす☆」


モバP「な、なにしてんだこんなところで!!殺され───」




ジャック「決めたぜプロデューサーッッッ!!!」

モバP「ッッッ!!?」



ジャック「俺ハ───この二人を── 」


ジャック「喰らう───ッッッ!!!」



ジャック「無論、アイドルとシテな」



モバP「え、えェ~~~ッ!!!?」



モバP「く、くらうって…それは…ッッッ?」



ジャック「俺ハこの二人を越エルッッッ!!!」




ジャック───灼熱の夏が始まる───









ーレッスンルームー



ルーキートレーナー(私が呼ばれるのも久しぶりだなぁ)

ルーキートレーナー(最初の頃はよく呼ばれてたけどみんなもう姉さん達じゃないと追い付けないくらい成長したし)


ルーキートレーナー(今日は入ったばかりの候補生の子のレッスンらしいけど、どんな子だろう?)

ルーキートレーナー(プロデューサーさんは『いろいろと規格外、例えるなら非公認記録だけど日に日にオリンピックの最高記録を全て塗り替えそうな雰囲気』っていってたけど…どんな子なのか全然わかんないや)

ルーキートレーナー「私につとまるかな…そんな凄そうな子のトレーナーなんて」


ルーキートレーナー「…ううん、だめだめ!弱気になったら!私は例えどんな子がきてもしっかりと要点を教えなきゃ!私がくじけたらアイドルの子がかわいそうだよね!」



ガチャッ


ルーキートレーナー(あ、きた!)


ルーキートレーナー「初めまして!あなたのボイストレーニングなどを受け持つルーキートレーナー…ッッッ!!?」



ジャック「ジャックだ、ヨロシクたのむゼ」


ルーキートレーナー「~~~~ッッッ!!?」ガクガクガク


ルーキートレーナー『巨大(でか)ッッッ──こわッッッ───オバケッッッ───怪獣───いや、人間ッッッ!!?』

ルーキートレーナー「あ…あ……」ガクガクガク

ジャック「ドウシタ、震えテルぞ」




ルーキートレーナー「まッッッ───丸坊主のオバケッッッ!!!」バタンッ

ジャック「オイ、ドウシタ───チッ、気絶してるゼ」

















───娯楽


人によって、ソレは多種多様にある


文字を書くのも──
絵を描くのも───
闘うのも───


すべて、娯楽といえる



刃牙「……」テクテクテク…



範馬刃牙──
類いまれなる才能をもった闘士(グラップラー)

その少年の娯楽───

『 闘 い 』


ジャック「……」テクテクテク…


少年の隣にいる大男

彼の娯楽──

『 ト レ ー ニ ン グ 』




刃牙「──まさか、兄さんが俺を誘うなんて」

刃牙「考えもしなかったよ」ハハッ


ジャック「──以前ノ俺達は闘士(グラップラー)ダッタ、闘士(グラップラー)である以上血縁ハ関係ネェ」

ジャック「ダガ、今はちげぇ」

ジャック「闘士(グラップラー)ではなく、アイドル候補生としての俺」

ジャック「ツマリ──俺達はタダの兄弟ダ」



刃牙「──ほんとだったんだ、アイドルになるって」




刃牙「噂で聞いたときは驚いたよ、アンタがアイドルになるなんて」

刃牙「でもまぁ──そうこともあるか」


ジャック「──刃牙、お前が言ッタ通り」

ジャック「俺ハ、ピクルニ餌として見ラレタ時からグラップラーとして終わっテイタ」


ジャック「そしてお前が父ニ挑み、俺が俺ニ負けたとき確信シタゼ」

ジャック「俺ハもうグラップラーではナイ」


刃牙「………」

刃牙(兄さん……またカトコトになってる)

刃牙(国に戻るとカトコトになるんだな)



刃牙「でさ兄さん、どうなの?」

ジャック「ナニがダ」

刃牙「アイドル……なれそう?」

ジャック「──そのためにお前ヲ呼ンだ」




ジャック「ついたゼ、目的地ダ」

刃牙「──ここって」





店員「いらっしゃいませ」


刃牙「……」キョロキョロ



店員「何時間のご利用ですか?」

ジャック「30時間」



刃牙(カラオケかァ~~~ッ)

刃牙(そういや……初めてじゃん俺)


ジャック「いくゾ、三番の部屋ダ」

刃牙「あ、わかったよ」





刃牙「兄さんが俺を呼んだのって一人カラオケは恥ずかしいとか?」

ジャック「ボイストレーニングだ、お前ハ俺ノ歌を聞イテ感想を教エナ」


刃牙(兄さん───)


刃牙の頭に浮かんだ疑問───




刃牙『 ジ ャ ッ ク ・ ハ ン マ ー っ て 歌 え ん の ッ ッ ッ ! ! ? 』



刃牙「でも───」



『聞 き た い ッ ッ ッ !!!!』

『こ の 人 が ど ん な 風 に 歌 う の か ッ ッ ッ ! ! ! 』



刃牙(ジャック・ハンマーの歌──気になり過ぎるッッッ!!!)





ジャック「イレルゼ」ピピッ


刃牙(きたッッッ!!!!)


刃牙『デスメタ──?ロック──?』


否ッッッ



ジャック「はりつめたーゆみのー」


ジ ブ リ ッ ッ ! ! ! !




刃牙「………」



刃牙「なんか…うまいじゃん、歌」

刃牙「マジイケる」

刃牙「なんの歌?」






『事務所』


マスタートレーナー「……ほう、私にレッスンさせたいアイドルがいると」

マスタートレーナー「───妹ではなく、私に」

モバP「はい、是非ともマスタートレーナーさんに…お願いしたく──」



マスタートレーナー「──少し、痩せたかね?プロデューサー」

モバP「はっ…?はぁ…確かに…」





マスタートレーナー「───体調不良、意図的な節食、もしくは心労」

マスタートレーナー「体重の減少の主な原因となるものだ」

マスタートレーナー「見たところ体調は良さそうだ──ダイエットという柄でもないだろう」

マスタートレーナー「心労かい?」クスッ



モバP「──恥ずかしながら…とあるアイドル候補生とのコミュニケーションに悩んでおり」

マスタートレーナー「200ちかいアイドルを育てる君がそれを言うのかい?」クスクス…

マスタートレーナー「そして──そのアイドル候補生とやらが」

モバP「…はい、貴女のレッスンを必要としています」













マスタートレーナー「ほぉう──」



マスタートレーナー「超人──たしか君はそう呼ばれているね」

モバP「…えぇ、たしかに」

マスタートレーナー「君のプロデュース能力──」

マスタートレーナー「それはまさしく超人と呼ぶにふさわしい」



マスタートレーナー「そんな超人から見て、どんな子だい?」


マスタートレーナー「そのアイドル候補生とやらは」



モバP「───超人」

モバP「その呼び名さえ───小さく感じずにはいられない」

モバP「前にたてば自身が凡人であることを自覚させられる──怪物、かと」



マスタートレーナー「ふむ……で、何リットルかね?」

モバP「は……?リットル……ですか?」



マスタートレーナー「フフフッ……初心(うぶ)いねェ、プロデューサーも」

マスタートレーナー「レッスンとは時間ではなくリットルで数えるものだよプロデューサー」

マスタートレーナー「何リットル…汗をかかせるかというね──」クスクスクス……



モバP「…ッッ!!!」ゾクゥッ!

モバP「マスタートレーナーさん───」



モバP「アンタやっぱり狂気(イカ)れてるぜッッ!!!」

マスタートレーナー「誉め言葉だ」ニヤッ













『トレーニングルーム』



ジャック「……」カツカツカツ…



ジャックがアイドル候補生になり二週間ほどの時が過ぎようとしていた

アイドル候補生───
候補生がついていてもあくまでアイドル


本来ならば歌やダンスのレッスンに汗をかく時期──



しかし──ルーキートレーナーの気絶……ッッ!
それによってジャックはしばらくの間弟を付き合わせた自主的なトレーニングしか出来ないでいた


ジャック「……トレーニングルーム」

ジャック「来るのは久しぶりだぜ」


ガチャッ



ジャック「入るぜ────ッッ!!?」


ジャック「オッ!?オッオッオッ!!!?」


『 開 か な い ッ ッ ッ ッ !!?』













ジャック(誰かが向こうからドアノブを抑えているのかッッッッ!!?)グッグッグッ



ジャック「───面白レェッッ!!!」グッ──



メキャッッッッッ!!!


???「うおっ……!」




ジャックの膝蹴りにより──
トレーニングルームの扉───半壊ッッ!!!




ジャック「誰だ、抑えていたのは?」



マスタートレーナー「フフッ……確かに怪物(モンスター)だね」

ジャック「………」ギロッ



違う──
こいつじゃあ無い──

気絶したルーキートレーナーとかいう彼女と似ているが姉妹か──?



???「イテテテ……ふぅ、さすがにもう敵わないかァ~~」

ジャック「…お前は───」



長く──
首までのびた髪──

端正でありながらも男らしさも感じられる風貌(ルックス)───

服を着用(き)ていても理解(わか)る筋肉の張り───



ジャック「紅葉ッッッッ!!!!」

紅葉「元気そうじゃないか、ジャック」









紅葉「みずくさいじゃないか、主治医であるボクになにも教えずにアイドルへ転向なんて」

ジャック「……」



マスタートレーナー「ヘイ、ミスタージャック」

マスタートレーナー「私が今日から彼、ドクター紅葉と二人で君のレッスンパートナーになるマスタートレーナーだ」

マスタートレーナー「プロデューサーから君の話を聞き……友人である彼を呼んだんだ」


ジャック「ほう…」チラッ

紅葉「ボクはこのシンデレラプロダクションのレッスン監修もしていてね、マスタートレーナーとはよくディナーを一緒にする仲なのさ」


紅葉「そんな彼女の口から君の名前を聞いたときは驚いたよ、ジャック」

紅葉「この二週間……窮屈な思いをしていただろう?安心したまえ、彼女とボクが君を全力でサポートする」

マスタートレーナー「……君なら多少のムチャも大丈夫そうだ」クスッ


ジャック「………」フルフルフル…

紅葉「…不満かい?ボクたち二人じゃ」


ジャック「いや……」

ジャック「歓喜に震えているだけだ──ッッッッ!!!」



マスタートレーナー「今日から二週間後!!!」

マスタートレーナー「君のデビューライブが決定したッッ!!!」

マスタートレーナー「あの双葉杏と諸星きらりと同じステージだッッッッ!!!」


マスタートレーナー「約束しようッッッッ!!!私達は君を───」



マスタートレーナー「シンデレラにするッッッッ!!!」






モバP「……ここかァ~~」



ジャック・ハンマーのデビューライブが決定(きま)った

いくらジャックが規格外の怪物(モンスター)といえどやっておかねばならない事がある──



モバP「プロレス団体──だよなァ、ここって」

モバP「ジャックが寝泊まりしてるのって、ここなのかァ~」

モバP(……イメージ通りって感じだな)

モバP「とりあえず入るか」


まず目の前に飛び込んできたのは──
リング

激しいトレーニングが日夜行われているのか──損傷が激しい




猪狩「おう、アンタがプロデューサーさんかい?」

モバP「おわァッッ!!?」ビクッ

猪狩「ここの団体の代表、猪狩だ…一応名刺は渡しておきますよ」スッ

モバP「こ、これはご丁寧にどうもッッ!!!モバPともうしますッッ!!」スッ

猪狩「ハハハ…まぁ、そうかしこまらないでくださいや」

モバP(かしこまるなって……無理だろッッ!!!)

モバP(猪狩っていや斗馬とならぶ日本プロレスの英雄じゃねェかッッ!!!)

モバP(顔の傷がすげェッッッッ!!!どうやったらそんな傷がッッ!!?)







モバP「い、猪狩さん、貴方が……ジャックの保護者なんですか…?」

猪狩「…いや、ちげぇな」

猪狩「ジャックとは私はまぁ…世話やいたりやかれたり…そんな関係ですよ」


猪狩「案内しますよ、ジャックの保護者の下へな」




アイドルとしてのデビュー
それはそのアイドルの人生を大きく左右する

よって例え成年していたとしても──保護者への最後の確認を行わなければならない
少なくともウチの事務所じゃそうしてる



猪狩───日本プロレスを代表する彼に案内されたどり着いたのは街灯も少ない荒れた小道──



モバP「な、なんですかこれ…ッッ?」

猪狩「──落書き、の範疇をこえた落書きってところですなァ」


ブロック壁──電柱──果ては道路──
そのすべてに書き込まれた罵詈雑言の嵐──


モバP「こ、こんなところに人が住んでるんですかッッ!!?」

猪狩「えぇ、いつもはまだ学生の少年が一人で住んでますよ」

モバP「ッッ!!?」

猪狩「ジャックの弟です」ニヤッ


モバP(あ、アイツに弟ォォ~~ッッ!!?)

モバP(ど、どんな化け物なんだその弟ってッッ!!?)









猪狩「ここだ、ジャックの家族がいるのは」

モバP(す、すげェッッ…家にまで落書きされてるッッ…!!!)


ガラララッ…


猪狩「おう、刃牙いるか?」

刃牙「…あれ?猪狩さん?」

モバP(──ッッ?)


猪狩「紹介するぜ、この方が君の兄のプロデューサーさんだ」

刃牙「あ、どうも…兄が世話になってます」

モバP「い、いえいえ!」


モバP(この子がジャックの弟?思ってたよりずっと小さい……それにすげェ優しそうな好青年じゃないか)

刃牙「親父が中で待ってます、どうぞ入ってください」

モバP「あ、ありがとう…」

猪狩「私は前で待ってますよモバPさん」



モバP(なんだ…普通の少年じゃないか)

モバP(まぁでも…そりゃ家族全員があんなふうってわけがないよな…お父さんも普通の方なんだろうか…?)

モバP(…土産も一応あるけど気に入ってくれるかッッ────ッッッッ!!!!?)



足が──とまった─
この先に進めば───とんでもない事がおきるッッ!!!

それを関知し──モバPの体はいっさい前へと進まない───


モバP(な、なんか鳥肌がッッ…!!?なんで…ッッ!!?)


日本の古くから伝わる古武術や合気の達人は敵を打ち倒すのでなく自身の身を守ることを奥義としている──

かつてそんな話を有香と一緒にインタビューしにいった達人の口から聞いたことがある


達人いわく───


渋川『自分よりもはるかに強大でつえェ奴と闘うことになったら……この足はその相手のもとへと向かってくれんでしょうな』

渋川『わかりやすくいえば───巨大な川が急に現れてその濁流で足を止めたり、だとかね』


モバP(いま俺の前にあるのって……ただのふすまだよなッッッッ!!?)

モバP「な、なんででっかい鉄の扉が見えるわけェ~~~ッッ!!!!?」





モバP──
無意識のうちに護身完成ッッッッ!!!





刃牙「あの…どうかしました?」

モバP「──はッッ!!?」(も、元のふすまに戻って……なんだったんだ今の…ッッ!!?)




モバP「す、すいません…失礼します」ガラララッ





勇次郎「……オウ」

モバP「~~~ッッ!!!!?」ビクッ!!!

モバP(デカ───コワッ───死──?──化物───鬼──ッッ!!?)


勇次郎「……」ヌッ

モバP(立ち上がっ───殺される?───事務所──帰れない──ちひろさん───課金できない───)



モバP『 殺 さ れ る ッッ ! ! ! 』




──モバPの脳内を支配する恐怖

その恐怖の元凶である大男がとった行動───



勇次郎「──倅が世話になっている」ペコッ

モバP「~~~ッッ!!!!?」



モバP『え、え…会釈ゥ~~~ッッ!!!!?』













モバP(そ、そういやさっきから見たことある気がすると思ったらこの人達って───テレビで中継されてたあの二人ッッ!!?)

モバP(ま、間違いない!!こんな恐ろしい見た目を忘れるわけがない!!)





勇次郎「…おい」

モバP「は、はいッッ!!!!?」

勇次郎「なに意外そうなツラしてやがる」

モバP「い、いえその…ッッ!!」



勇次郎「いくら血が薄くとも──アレもまた間違いなく範馬の子」

勇次郎「親がてめぇの息子の上司に礼をいうのはきわめて当然のこと…」

勇次郎「それとも貴様は───この範馬勇次郎にはその程度の常識もあるまいと──」

勇次郎「つまり───この俺を嘗めてやがんのか?」ギロッッッ!!!


モバP「め、滅相もございませんッッ!!!」

モバP(ほんもんだッッ!!!間違いなくあの中継の男だッッ!!!)


モバP「こ、こちらつまらないものですがッッッッ!!!」スッ

刃牙「あ、わざわざどうもありがとうございます……親父、お土産もらったぜ」

勇次郎「……フンッ」


モバP「お父様のお口に合うかどうかわかりませんが……最高級のメフンです」

勇次郎「………」




勇次郎「……」ニタァ~~ッッ


モバP(わ、笑ったッッッッ!!?)










刃牙「あ…すいませんお客さんにお茶も出さずに」

刃牙「いまいれてきますよ」

モバP「い、いえいえ!お気になさらずに!」

モバP(つーよりもこの人と二人にしないでくれッッ!!!)




勇次郎「………」

モバP「………」

勇次郎「………」

モバP「………」


勇次郎「…おい」

モバP「ッッ!!?」

モバP(まずいッッ!!!頭が真っ白になってたッッ!!!)


勇次郎「話があるんじゃねェのか」

モバP「は、はい!!!えっと…ジャックさんのデビューライブが決まりまして…」

勇次郎「……」

モバP「それでジャックさんは成人なさってますが一応親御さんの確認もとりたく参った次第でして…」

モバP「い、いかがでしょうか?」


モバP(っていうよりも絶対許さないだろこの人ッッ!!?アイドルとは真逆にいるような存在じゃんッッ!!!)



───目の前に座る男の風貌、雰囲気
そのすべてがアイドルの『可愛さ』とは正反対の『恐ろしさ』で満ちている


『阿呆がッッ!!!』

『アイドルなんざ軟弱なもの…範馬の恥だぜッッ!!!』

『いますぐやめさせろッッ!!!』


───そんな言葉が出るとばかり考えていた






勇次郎「……かまわねェ」




モバP「い、いいんですかッッ!!?」

勇次郎「無論、奴の実力がステージに立てぬ未熟なものなのであれば赦しはしねェ」


勇次郎「しかし、アイドルという道のプロである貴様が『ステージに立たたせる価値有り』と判断したなら反対する理由もない」


モバP「で、でも息子さんがアイドルをやるっていうのに抵抗とかは……?」


勇次郎「『強さ』の獲得……範馬の一族が逃れられぬ宿命ともいえよう」

勇次郎「俺も傭兵になり、刃牙も俺に挑んだ──それこそが『強さ』の獲得につながっていたからだ」


勇次郎「奴──ジャックの野郎の場合それが『アイドル』という生き方だった……それだけだ」



モバP(な、なんだよ……この人…見た目は怖いけどいい人じゃんッッ!!!)




恐ろしい姿からは想像もできぬほど柔軟で優しい男の思考───
それゆえ、モバPの頭にある可能性が浮かんだ




『もしかしてこの鬼のような男……めちゃくちゃ優しいんじゃねェのッッッッ!!!!?』




モバP「い、いやー!安心しました!これでなんの心配もなくジャックさんをステージに立たせられます!」

勇次郎「……ふん」

モバP「それにあの~…どうですか?お父様もステージに上がってみません?」




勇次郎「───なんだと?」





モバP「お父様も…なんなら刃牙くんもステージに上がればきっと大歓声間違いなしですよ!なんたってあの中継以来お二人は有名人ですから!」



勇次郎「……貴様」グニャァァ~~ッッ───

モバP「…え?」



勇次郎「この範馬勇次郎と会話し、何を思ったのが知らねェが───」ガシッ

モバP(ちゃ、ちゃぶ台を持ち上げッッ!!!!?怒らせたッッ!!!!?)




──ぶつけられる?
───なぐられる?
────なげつけられる?






勇次郎「少なくともこの程度の会話で理解されるほど────」メリッ…メリッ…

モバP「ひっ、いっ、いっえッッ!!!!?」ガクガクガク


勇次郎「底の浅い人間では無い───バカにしてんのかテメェッッッッ!!!!!」メリメリメリメリメリッッ!!





裂くッッッッ!!!!!



モバP「ひ、ひぃぃぃぃ~~ッッ!!!!?」モレッ─



刃牙「お茶いれてきた……あ、おい親父!!ちゃぶ台またかよォ~~ッッ!」

勇次郎「……ふん」














『刃牙の家の前』



刃牙「すいませんプロデューサーさん、わざわざ来てくださったのに親父が…」

モバP「い、いえ!あれは自分の責任なんで…」

刃牙「それにチケット…これ見せれば中に入れるんスよね?」

モバP「あぁ…関係者席ですが」

刃牙「ありがとうございます、絶対にいきますよ、兄さんのステージ」

モバP「…ジャックさんも喜んでくれると思います」

刃牙「ハハッ───それに俺、実はファンなんてスよね…杏ちゃん」

刃牙「いっつもCD聞いて合いの手の練習もしてたんで──嬉しいです」

モバP「ハハハハ…」


猪狩「それじゃプロデューサーさん、いきましょうか」

モバP「あ、お待たせしてすいません猪狩さん…猪狩さんもチケットいりますか?」

猪狩「是非とも」ニコッ









刃牙「親父、チケットもらったけど…いる?」ペラッ

勇次郎「……」


刃牙「せっかくの兄さんの晴れ舞台だしさ、いこうよ」

勇次郎「……」


刃牙「……いらねェの?」

勇次郎「聞くなッッ!!!」パシッ


刃牙(……いるなら欲しいって言えよ)









『数日後』



───トレーニング室



普段はアイドル達が歌、踊り、それらのレッスンに使っているこの部屋───


しかしこの数日間、ジャックを除きこの部屋に足を踏み入れるアイドルはいなかった


ジャックが怖いから?
───ノン


トレーニング室にはおびただしい汗、尿、血液
それらが飛び散っていたから──




ジャック「……」キュッキュッ…

ジャック「……」キュッキュッ…



杏「……」

杏「……なにしてんの?」

ジャック「……掃除だ」キュッキュッ…

ジャック「俺が使用していたのだから当然のことだろう」キュッキュッ…

杏「……ジャックって案外真面目だよねぇ、ソファー座っても大丈夫?」

ジャック「かまわねぇ」

杏「ありがと」ボフッ



杏「日本語、うまくなったね」

ジャック「…元々日本語は話せたからな、思い出しただけだ」

杏「ふぅん…」


杏「明日だね、ライブ」

ジャック「……」

杏「デビューライブ…っていっても杏ときらりが合間で休んでる間の繋ぎって感じだけど」

ジャック「……まぁな」



杏「…どう?アイドル楽しい?」

ジャック「…楽しい?」










杏「正直、杏は楽しいかどうかは置いとくとして……めんどくさいよ、仕事は」

杏「最近はちょっとは楽しいって思えるけどやっぱりもともとがもともとだからさ、できることなら働きたくないんだよねぇ」

ジャック「……」


ジャック「なら、なぜお前はアイドルになった?」

杏「……うーん」

杏「最初は印税が貰えるからって感じだったよ」

杏「でもいまは…アイドルである自分も悪くないかって思ってる」

ジャック「……」


杏「ジャックはどうなの?」

ジャック「──俺は『アイドル』という強さの獲得のためアイドルになりたいと思っている」

ジャック「そこに他の感情───不純物は無い」

杏「……へぇ、まぁいいや杏はそろそろ帰るよ」

杏「あ、それと」

杏「実はけっこう杏は楽しみにしてるよ、ジャックの初ステージ」

ジャック「……」

杏「だから───」




杏「逃げないでね───ッッ?」クルッ




ジャック「ッッ!!!!?」

ジャック(な、なんだいこりゃあッッ!?)



──杏の背中に浮かんだのは、超アイドル的筋肉


『女王(シンデレラ)の顔ッッッッ!!!』
















武道館──


幾万のアイドルが夢見し憧れのリング──



今宵────

集められた数万のファン、そしてそれらにこたえるためにきた諸星きらり、双葉杏の二人



なにをしに──?
歌うため──?
踊るため───?




否ッッッッ!!!!!




ライブ(や)りにきたッッッッ!!!!!




ファン『うぉぉぉぉぉぉぉッッ!!!!!あっんずぅ~~~ッッ!!!!!』


ファン『きっらりィッッッッ~~~!!!』





きらり「………」チラッ

杏「………」チラッ



杏「…いくよ、きらり」

きらり「りょうかいだにぃ☆」





史上最強のハピハピが幕をあけるッッッッ!!!!!








ファン『きらりィッッッッ!!!!!あいしてるぞォォ~ッッ!!!!!』

ファン『杏ゥゥゥッッッッ!!!!!だいすきだァァァッッ!!!!!』

ファン『死ぬにはいい日だ!!』

ファン『今の私なら提督にだって勝てる!!!』

ファン『この日を楽しみにしてたぜェェェ~~ッッ!!!!!』





─────



ジャック「……」

ちひろ「…どうですか?初めてみるアイドルとして輝く彼女達は」

ジャック「……素晴らしい」


ジャック「踊りも歌も笑顔も──そのすべてが超一流レベル」

ジャック「これこそがアイドルなのだと言わんばかりの圧倒的存在感」

ジャック「──震えやがるぜ」



ちひろ「フフッ…それは武者震いですか?」

ジャック「……サムライ、か」

ちひろ「このあとのMCの時間……そこでついにジャックさんの出番です」

ちひろ「でもまぁ──なにもあの娘達のレベルまでファンをわかせろとはいいませんよ」





ジャック「───このライブが始まる前、きらりに言われたことがある」

ちひろ「…?きらりちゃんに?」



きらり『ジャックちゃん、おっすおっす☆』

ジャック『ばっちし、だ』

きらり『それはよかったにぃ☆』


きらり『ねぇねぇジャックちゃん』

ジャック『なんだ?』

きらり『ジャックちゃん、ハピハピしてぅ?』

ジャック『…ハピハピ?』


きらり『きらりはねぇ、いっつもハピハピしてるよ!』

きらり『でもでも~、ライブのときはいつもよりもっともっとハピハピしてるの☆』

きらり『そのきらりのハピハピをファンのみんなにあげられたらいいなァって☆』


ジャック『……ハピハピ』

きらり『うん、ハピハピ☆』

きらり『だからジャックちゃんもぉ、いっぱいハピハピすればもっともっとかわいくなれるにぃ☆うきゃー☆』




────初めてステージに上がる後輩のため
そんな思いをもちジャックに伝えた『ハピハピ』という強さッッ!!!!!


その『ハピハピ』がッッッッ!!!!!

『アイドル、ジャック・ハンマー』に火をつけちまったッッッッ!!!!!



ジャック「ちひろよ──」



ジャック「 俺 だ っ て で き る ん だ ッ ッ ッ ッ !!!!! 」



ちひろ「え、ちょッッ───!!?」



ジャック───
あろうことか──



ファン「お、おい……誰だよ、あれ?」

ファン「でっけェェェ…」

ファン「ガードマン…?」



杏「……やると思ったよ」

きらり「うきゃー☆」





───ざわつく会場内
突如現れた天をつくような大男



その男の手に握られていたのは──マイクと、スタドリ───





マスタートレーナー「フフフッ…」クスッ

紅葉「それでこそ──君だ、ジャック」



ジャック「………」ガチッッッ!!!


ファン「えェッッ!!?」

ファン「栄養ドリンクのビンって……噛みきれるものなの…?」


ジャック「……」モニュ…モニュ…




───明日を捨てた男、ジャック

今、スタドリを一気に飲みほし………




ジャック「──よう、先輩方」


ジャック「ハピハピしにきたぜッッッッ!!!」





先輩アイドル達のステージに乱入ッッッッ!!!!!









ファン「な、なんだアイツ…?」

ファン「なにが始まるっていうんだよ…?」



『あー、テステス』


ジャック「…ちひろ?」


『えー、会場の皆様!本日はご足労ありがとうございます』

『いまステージに上がったのは我がシンデレラプロダクションの期待の星、ジャック・ハンマーちゃんです!』

『なんとジャックちゃんは今日がデビュー日!皆さん、暖かく見守ってあげてくださいね♪』




───会場内に響いたちひろのアナウンス
本来ならば、止めなければならない乱入


しかし、止めないッッ!!!


『ジャックさん、きらりちゃん、杏ちゃん』



『こころゆくまでやれェいッッッッ!!!!!』




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