長官「これが世界を救う任務だ」 男「ふざけんな!」(52)


─── 県立××高校


男「はぁ~・・・ 夏休みだってのに追試って何だよ」テクテク


ガラガラ


男「追試受けに来ました~」

女教師「ギリギリで登場とはよほど自信があるようね、男」

男「いや~ 愛用のシャーペンが見つからなくて・・・ あれ? 少女ちゃん!?」

少女「おはよう」ニコッ

男「まさか少女ちゃんも追試?」

女教師「追試は男だけよ。 少女はテストの時体調不良で休んだから再テスト」

男「あ~ 少女ちゃんが追試な訳ないもんね」

少女「テスト一緒に頑張ろうね!」

男「はい!(やっぱ可愛いな~ 少女ちゃん。 良い匂いするし)」

女教師「さてと、それじゃ始め!」



ガシャーン


男「え? 何なに?」キョロキョロ


ダダダダッ


男「ちょ、何この黒ずくめ達!? テロ? テロリスト!?」

黒ずくめA「県立××高校1年男さんですか?」

男「違います。 教壇に座っているのが男くんです」

黒ずくめA「」クルッ

女教師「男はそいつです。 間違いありません」

男「コラ! それでも教師か! 可愛い生徒を守れ!」


黒ずくめB「写真と一致」

黒ずくめA「男さん、ご同行頂けますでしょうか」

男「どちらへ?」

黒ずくめA「来て頂ければ分かります」

男「拒否権は?」

黒ずくめA「ありません」

男「うち身代金とか用意できないっすよ?」

黒ずくめA「誘拐目的ならあなたに声なんか掛けません」

男「あ~ ハッキリと言いますね。 俺じゃなきゃダメ?」

黒ずくめA「手荒なマネはしたくありません。 大人しく従って頂けませんか?」ポキポキ

男「はい、ご一緒させて頂きます」



─── とある秘密施設


長官「よく来てくれた」

男「拉致しておいてその挨拶は変じゃね? って言うかその巨大なアフロ頭は地毛?」

長官「秘密基地の事を聞くより私の髪の事を聞くとは見所があるな」フッ

男「いや、だってデカすぎるでしょそのアフロ。 っていうかここって潰れたデパートじゃん」

長官「私は国───」

男「はじめまして、お姉さん」キラッ

秘書「は、はじめまして。 国連特務機関防衛管理本部アジア管轄局の長官秘書です」

長官「そして、私がここの責任者である長───」

男「そのピチッ! としたワンサイズ落としたスーツお似合いです」キラッ

秘書「ど、どうも・・・」


男「では、詳しい話は僕の行きつけのカッフェでゆっくりと」

長官「無視すんなやエロガキ!!」

男「うっせーよ! 変な髪したおっさんより、綺麗なお姉さんから事情を聞いた方がテンション上がるんだよ!」

長官「こっちだって好きでこんな髪型にしてるわけじゃねーよ!!」

男「え? そうなの?」クルッ

秘書「詳しい話は長官から」

男「お姉さんじゃダメですか?」

秘書「長官の話を聞いていただけないでしょうか?」

男「分かりました。よし、話しを聞いてやるアフロ」


長官「うむ、私は長官だ。 早速だが、君はこの世界を愛しているかい?」

男「別に? っていうかその頭で長官ってナメてんの?」

長官「この平和な世界を守るためだったら、君は命を差し出す勇気があるかい?」

男「あるわけねーじゃん。 それよりどうやったらそんなアフロ作れるの?」

長官「君を国連特別機構アジア部、通称KoBAKaのエージェントに任命する!」

男「話聞いてた? ていうか秘書さんが言った名称と違うし“こバカ”って何? バカにしてんの?」

長官「これから辛く厳しい状況に置かれることになるだろうが、その強い意志を忘れずに」

男「すいません、家の金魚に餌やらないといけないので帰ります」スタスタ

長官「無論、タダとは言わない。 世界を守るわけだ、報酬もそれなりに用意する」

男「」ピクッ

長官「危険手当が月200万」

男「危険手当で200万ってどんだけ危険なんだよ! 高校生だぞ! 俺はそんな話に乗るほどバカじゃない」スタスタ

長官「君と同じ高校に通う少女ちゃんも、うちのエージェントだ」

男「喜んでお受けいたします」グッ

長官「君のその決意、受け取ったぞ」グッ



ブーブーブー


部下「長官! 指令文を受電しました!」

長官「早速か・・・」

男「指令文?」

秘書「敵からの指令よ」

男「敵から指令が来るの?」

長官「内容は!?」

部下「暗号の復号化を完了! 超巨大モニターに出します」


パッ


長官「これは!」

男「おい・・・ 何だよ、これ・・・」



■第1話「それが任務だから」


─── 都内某所


ガタンゴトン


男「こんな指令、どうしろってんだよ・・・ てか、一人で電車移動かよ」



~1時間前

長官「男くん、早速君の出番のようだ。 この指令を遂行する、それがエージェントの任務だ」

男「冗談だろ、俺にはこんな事できないって」

長官「この指示の通りに君は行動するんだ。 これは世界平和のための任務だ」

秘書「すでにコードネーム女神が指定場所に向かっています」

長官「うむ、男くん、健闘を祈る」

秘書「電車賃は戻ってきてから小口伝票で精算して下さい。 領収書関係はローマ字でKOBAKAで」



 恋ヶ淵~ 恋ヶ淵に到着です
 プシュー


男「おっ、この駅か」テクテク


 男く~ん


男「この声、少女ちゃん!?」

少女「こんにちは!」ニコッ

男「なんで少女ちゃんがこんな所に!?」

少女「長官から聞いてない? 私もKoBAKaのエージェントだよ?」

男「それは聞いたけど・・・ コードネーム女神って少女ちゃんのこと!?」

少女「恥ずかしいよね」モジモジ

男「そんな事ないさ。 これ以上のコードネーム、僕には思いつかないよ少女ちゃん」キラッ


少女「任務中はお互いコードネームで呼び合うんだよ? エロガキ」

男「・・・・・・え? 今なんて?」

少女「男くんのコードネームはエロガキって聞いたけど?」

男「・・・・・・」

少女「指令書見せて、エロガキ」

男「はい・・・」ペラッ


─ 指令 ─
エロガキと女神のお仕事
13:50に恋ヶ淵駅の交番の前でエロガキ全裸
女神を追いかけ回す
追って来た警察官をセブンイロブンの前で撒く
出来なかったら10人お仕置き~



少女「・・・・・・」

男「ねぇ、これってやらないとダメ? 喫茶店で適当にお茶して帰ろうよ」

少女「ダメだよ、世界の平和がかかってるんだもん」フンスッ

男「マジっすか・・・ これ、何の意味があるの? 犯罪だよね?」

少女「つらい任務だけど頑張ろうね、エロガキ!」ニコッ

男「・・・はい、女神さま」

少女「指定時間まで後10分。 交番は・・・ あった、あれみたいね」

男「全裸って、マジ全裸?」

少女「二人で協力すればきっと遂行できるよ。 だから、ね」ニコッ

男「喜んで!」キラッ


ゆっくり行きます
よろしゅうです



─── 2時間後・本部


ウイーン


男「おいコラ! 責任者出てこい!」ズカズカ

長官「初任務ご苦労様。 君たちのおかげで今日も世界の平和は守られた」

男「ふざけんじゃねーよアフロ! なんなんだよ、この指令は!」バンバン

長官「君の勇士はこの超巨大300インチのモニターでしっかり見届けたぞ」

男「俺のフリチンを大画面で見て楽しーかよ!」

秘書「少女さんもお疲れ様。 辛かったわね・・・」

少女「任務ですから・・・ とても小さく些細なことでした」

男「なんかすごい傷つくんですけど・・・」


長官「よし! それじゃ、男君の歓迎会でもしよう」

男「あっ、俺帰るんで。 もう会うことはないと思いますのでさようなら」テクテク

長官「今日の君の働きは30万円の危険手当が付いた」

男「割に合わねーよ! 犯罪だぞ? 軽犯罪法違反!」

長官「歓迎パーチーは豪華だぞ?」

男「食べ物につられるほど落ちぶれちゃいませんー」

長官「会場は、少女の家だが?」

男「長官、これからも長い付き合いになりそうですね」グッ

長官「ようこそ、エージェントエロガキ」



─── 秘密施設 廊下


テクテク


男「いや~ まさか潰れたデパートが丸々秘密施設だったなんて・・・」

秘書「研究部門や特殊調査部門もあるので規模としては世界で一番大きいんです」

男「え・・・ 世界中にこんなバカみたいな事をするところがあるんですか・・・」テクテク

秘書「男さん、行き過ぎです」

男「ん? だってここ5階ですよ?」

秘書「歓迎会の会場はこの部屋です」

男「・・・少女ちゃんのお家に行くんですよね? ご両親にも挨拶しないと」

秘書「ここはエージェント宿舎。 男さんは緊急任務に備えて今日からここで暮らすことになっています」

男「俺、環境が変わると寝られないんで無理です。 親も溺愛している息子がいなくなると心配しますし」

秘書「ご両親の承諾書もあります」ペラッ

男「・・・・・・」



ウイーン


少女「あ、男くん」

男「少女ちゃん!?」

少女「ようこそエージェント宿舎へ!」

秘書「少女さんもエージェントですからここで暮らしています」

男「マジで!?」

少女「そうだよ? 同じ学校の男子と一緒に住むって恥ずかしいけど、これからよろしくね!」

男「一緒に・・・ 住む?」クルッ

秘書「各々の自室はそれぞれ別ですが」

男「もしかして、今日から俺は少女ちゃんと一つ屋根の下で・・・」

秘書「そうなりますね」

少女「今日は男くんのために、腕によりをかけて料理作ったから期待してね! さ、上がって!」ニコッ

男「僕は今日という日を一生忘れることはないだろう。 お邪魔するよマシェーリ」スタスタ

秘書「・・・・・・」ハァ



─── 宿舎・居間


長官「お、来たな」

男「なんだアフロもいるんだ」

長官「長官だぞ・・・ いるのが普通だろ」

男「まぁ良いや。 今日の俺は気分が良い、特別に許可する」

長官「生意気な・・・ それより随分遅かったな」

男「女神さまと会食ですから、身だしなみに時間がかかってしまいまして」キリッ

秘書「男さんが間違えてゴミステーションに入ってしまい着替えに時間がかかりました」

長官「気をつけるんだぞ? あそこは核廃棄物がたまにあるから」

男「・・・・・・」

少女「はいはい~ お料理お待ちどおさま~」スタスタ

男「うひょー! 少女ちゃんの手料理が食べられるなんて生きてて良かった~」ジーン

少女「クラスの皆には内緒だよ?」

男「ふぁ~い」デレー



─── 1時間後


男「ふい~ 食べた食べた」ゲップ

少女「も~ 男くんったら~」ニコニコ

長官「あれだけの量を全て食べきるなんて凄いな」

秘書「お腹が凄いことになってますけど」

男「少女ちゃんが作ってくれたものを残すなんてあり得ないでしょ」

少女「ありがと、頑張って作ったかいがあった。 さて、じゃ片付けちゃうね」

男「女神さまにそんな事はさせられないな。 僕がしよう」キラッ

少女「大丈夫。 長官と話がしたいんでしょ?」スタスタ


男「いや~ 非の打ち所が無いね。 容姿良し、成績良し、性格良し。 真剣に将来設計を考えないとな」

長官「夢を見る権利は誰にもあるから止めはしないが・・・ 身の丈を知った方が良いと思うぞ?」

男「結婚式にはアフロも呼んでやるよ」

長官「アフロ言うな。 それよりこっちに来て座れ」

男「へいへい」


長官「食事中に聞いてくると思ったが」

男「少女ちゃんの料理を全力で楽しみたかっただけ」

長官「いい気使いだな」

男「さてと、じゃ聞きましょうか。 なぜ俺はフリチンで駅前をダッシュしなければならなかったのかを」


長官「秘書くん」

秘書「はい」バサッ

男「何この書類」

秘書「これは指令の遂行に失敗したリストです」

男「ふ~ん」ペラッ

長官「・・・・・・」

男「ん? この後ろについている新聞の記事は?」

秘書「指令失敗の後に起こった事件です」

男「これって・・・ 2年前の新幹線暴走事故じゃん」

長官「15:20に“のぞむ286号”を岐阜羽島に20分以上停車させろ」

男「は?」

長官「それが指令内容だった」


男「ちょっとまって“のぞむ286号”って・・・」

秘書「新大阪で暴走事故を起こして脱線した列車」

男「・・・・・・」

長官「出来なかったらお仕置き148人」

男「え?」

秘書「脱線事故で亡くなったのは148人」

男「!?」

長官「指令に失敗すると犠牲者が出る」

男「つまり俺がフリチンに失敗していたら・・・」

秘書「犠牲者が出ていた可能性があります」

男「冗談でしょ・・・?」

長官「そう思いたいがね」


秘書「ただ、必ずしも犠牲者が出るとは限らない」

男「どういうこと?」

秘書「指令に失敗=死者が出る、という構図でもないんです」

長官「先週、あるエージェントが男性の乗っている自転車を倒すという指令を失敗した」

男「なにその地味な指令・・・」

秘書「指令にはお仕置きは8人と書かれていましたが、特に事故らしい事は起こりませんでした」

男「ふ~ん」

長官「我々の調査では50人以下のお仕置きに関しては死者が出る確率がグッと下がるという結果が出ている」

男「・・・その指令を送っているのって誰なの?」

長官「それが分かれば苦労しない」ハァ

男「では、本題。 なぜ俺が“大バカ”に呼ばれたわけ?」

秘書「KoBAKaです。 これを見て下さい」ペラッ

男「指令書?」


指令───

新しい忠犬を用意!
忠犬の名前は県立××高校1年の男くん
コードネームはエロガキに決定!
出来なかったらお仕置き100000人!



男「お仕置き10万人!?」

長官「君がこの任務を辞退すれば確実に10万人の命が危険にさらされる」

男「ちょ、待って・・・ 何これ、嘘でしょ!?」


 それを見たときはゾッとしたね~


一同「?」クルッ

女教師「今朝方ぶり、フリチンくん」

男「先生!?」

長官「紹介しよう。 エージェント女教師。 コードネームはボインちゃん」

男「はぁ!?」


■第2話「これが俺の生き様だ!」


─── とある田舎町

女教師「女神はこの地図のAブロック、私はBブロック、エロガキはCからEブロックが担当だ」

少女「はい」

男「俺のエリア広くない?」

女教師「朝6時から各場所にターゲットが置かれる」

少女「全てを回るのは結構ハードですね」

男「ねぇ、俺の担当もう1ブロック減らしてくれません?」

女教師「時間だ、準備は良いな?」

男「いや、だからさぁ───」

少女「頑張ろうね!」ニコッ

男「任せて下さい。 全部買って帰ってきます」キラッ

女教師「大根買い占め作戦、スタート!」


タッタッタッ



───無人販売所


男「大根は・・・ あった。 全部で5本か、500円っと」チャリン

男「田舎村の無人販売所の大根を買い占めろって、これ世界を守ってんの?」

男「さて、次の販売所は100m先か・・・ って! まずい、先客が居る!!」タッタッタッ



じいさん「えぇ大根じゃな」

 ちょっとまったー!

じいさん「んぁ?」

男「すいません、その大根僕に譲って下さい」ハァハァ

じいさん「大根なら背中に仰山担いでいるようじゃが」

男「もっと必要なんです!」

じいさん「ほーか、んじゃワシは蕪にするかの」

男「ありがとうございます!」ホッ



─── 1時間後


女教師「タイムリミットまであと3分か。 エロガキが戻らないな・・・」

少女「やっぱり範囲が広すぎですよ・・・ 心配だなぁ・・・」ソワソワ


 お~い


少女「あっ、来た!」

男「ミッション、コンプリー・・・ ト・・・」バタン

女教師「やればできるじゃないか。 正直、半分諦めていたぞ」

男「女神ちゃんと約束したし」ゼェ ゼェ

少女「エロガキ・・・」

男「そのコードネーム、変えられないんですかね?」

女教師「任務完了。 昼飯好きなもの食わせてやるよ、エロガキ」フッ



─── 夕方・秘密施設


ウイーン


男「おいコラ! 責任者出てこい!」ズカズカ

長官「任務ご苦労様。 君たちのおかげで今日も世界の平和は守られた」

男「ふざけんじゃねーよアフロ! 田舎村の無人販売所の大根買い占めろって何だよ!」バンバン

長官「指令だ、仕方あるまい」

男「ねぇ、俺ら弄ばれてるだけじゃねーの?」

秘書「そうかも知れないですね」

男「はい?」


秘書「でも、本当の指令か遊びの指令かは私達で判断できません」

長官「私達に出来ることは、指令を忠実にこなす。 それだけだ」

男「わーたよ。 でもさ、せめて俺のコードネーム変えてくれない?」

長官「無理だな」

男「少女ちゃんからエロガキとか言われるの地味に傷つくんだけど」

少女「私は大丈夫だよ? ただのコードネームだし。 男くんは男くんだよ」ニコッ

男「やっぱり君は僕の女神さまだ」キラッ

女教師「本名で呼ばれたいならエロガキに改名でもしたら良いんじゃないか?」

男「お断りします」

長官「疲れただろう、宿舎でゆっくり休め」

男「本当だよ。 折角の土曜日が・・・」



─── 宿舎


男「しかし、先生までエージェントだとは驚いたな」

少女「先生がエージェントに選ばれたって聞いたときは、私もビックリしたよ」

男「あれ? って事は先生よりも少女ちゃんの方が長いの?」

少女「うん」

女教師「ま、理由が分かったおかげで少女が休んだり学校を抜けたりしやすくなったな」

男「そうか、先生が協力者なら・・・ 俺も特権乱用し放題?」

女教師「お~いいぞ。 その代わり、おはようからお休みまで私の監視があることを忘れるな」

男「そっか・・・ 先生もここに住んでるんだ・・・」


少女「さて、そろそろ夕飯の支度でもしようかな」

女教師「今日は土曜だから少女が夕食当番か」

少女「はい。 男くんは何か食べたい物ある?」

男「何という至福な質問!! 学校の奴らに自慢してやりたい!!」

少女「あはは、それはダメだよ?」クスッ

男「はーい」デレー



─── 1時間後


少女「お待ちどおさま~」

男「うひょー! 大好物の唐揚げ!」

少女「本当? 良かった、沢山作ったからいっぱい食べてね」ニコッ

男「少女ちゃん・・・ 俺はその笑顔だけでご飯をいくらでも食べられるよ」キラッ

女教師「分かったから早く長官を呼んでこい」

男「へいへい」ヨイショ



─── 廊下


男「何でアフロも一緒にご飯食べるんだよ・・・」テクテク


 やはりあの大根に・・・


男(ん? 長官の声?)コソッ



秘書「エージェントが回収してきた大根から高濃度の毒薬が検出されました」

長官「高濃度とは?」

秘書「人が摂取すれば間違いなく致死量の」


カラン


長官「!?」クルッ

秘書「誰かいるの!?」


男「俺っす」スタスタ

長官「エロガキ・・・ こんな所で何をしているんだ」

男「夕飯の準備が出来たみたいなんで呼びに来たんだけど、お取り込み中?」

長官「いや・・・」

秘書「それでは、明日詳しい話を」

長官「あぁ」


男「秘書さんも一緒に夕飯どう?」

秘書「え!?」

男「少女ちゃんが沢山唐揚げ作ったみたいだし」

長官「そうだな、たまには一緒にどうだ?」

秘書「・・・よろしいんですか?」

男「構わないでしょ。 というよりあの量は流石の俺でも食い切れない」

秘書「・・・・・・」



─── 夜・宿舎の居間


男「やべーな、うんこ止まんねーよ。 流石に食い過ぎたな」スタスタ

秘書「女性のいる前であまり下品なことは言わない方が良いわよ?」

男「あれ? 秘書さん、こんな遅くまで電車大丈夫なんですか?」

秘書「車通勤。 でもお酒飲んじゃったから今日は泊まりね」カラン

男「それって俺を誘ってます?」

秘書「残念、年下に興味はないの」

男「まぁ俺には少女ちゃんという心に決めた人がいるので構いませんが」

秘書「そう」フッ

男「・・・どうしたんです?」


秘書「何年ぶりかしら、こんな気分」

男「?」

秘書「君が来てから」

男「俺のダンディーホルモンが周りを誘惑しちゃってます?」

秘書「そうかもね」フフッ

男「・・・・・・」

秘書「君が来る前、この職場は凄いギスギスしてたのよ?」

男「え~ 全然そんな気配ありませんけど?」

秘書「本当に大変だったんだから。 エージェントや長官と一緒に食事だなんて、想像出来ないくらい」

男「少女ちゃんがいればそんな事にならないと思いますけど。 なんせ癒やし系女神ですし」

秘書「彼女が一番辛そうだったわ。 周りの空気を少しでも和らげようと一生懸命だった」


男「少女ちゃんを辛い目に遭わせた奴のリストって作ってもらえます? ちょっと話したいんで」

秘書「考えておくわ」クスッ

男「一人残らず消し去ってくれるわ」ヒヒヒ

秘書「・・・男くん」

男「なんです?」

秘書「エージェントを辞めずにここに残ってくれる?」

男「秘書さん?」

秘書「さっき、私が長官と話をしていたこと聞いていたんでしょ?」

男「あ~ まぁ・・・」

秘書「今まで何人ものエージェントが、理不尽な指令や人の死という重圧に耐えかねて辞めていった」

男「・・・・・・」

秘書「指令とはいえ公衆の面前で裸になれなんて・・・ 普通じゃ出来ない」

男「それって、俺が普通じゃないって言ってます?」


秘書「君がいてくれれば、何とかなる気がする。 今度こそ・・・ 全てが解決できる気がするの」

男「お断りします」

秘書「!?」

男「俺は少女ちゃんのためにここにいます。 それ以外の理由はありません」

秘書「それって・・・」

男「」ヌギヌギ

秘書「ちょ、ちょっと急に脱ぎだしてどうしたの!?」

男「指令であれば俺はいつだってこんな風に裸になれます。 でもそれは少女ちゃんの為」

秘書「・・・・・・。 あっ」

男「だって、少女ちゃんは俺と結ばれるのだ・か・ら!」

秘書「男くん?」

男「これが俺の生き様だ!」

秘書「その心意気は認めるけど・・・ 後ろ」

男「ん?」クルッ

少女「・・・・・・」ジトー


男「しょ、少女ちゃん!?」

少女「男くん・・・ 秘書さんの前で何で裸になってるの・・・」ピキピキ

男「いや、これはですね」アセアセ

少女「最低」

男「誤解! 何か誤解がある!!」スタスタ

少女「きゃー! こっち来ないで変態!!」タッタッタッ

男「待って! 少女ちゃーん」タッタッタッ


 いやー!! 来ないでー!!


秘書「・・・・・・。 ふふっ」

秘書「明日も頑張れそう、かな」


■第3話「どうでもよくね?」


─── 深夜・秘密施設本部


秘書「長官、こんな遅くまでどうされたんですか?」

長官「あぁ、ちょっとね。 秘書君こそどうしたんだい?」

秘書「開発部の進捗会議が長引きまして」

長官「そうか・・・」

秘書「第21次テストの失敗原因がまだ分からず手こずっています」

長官「今の科学レベルではやはり厳しいようだな・・・」

秘書「でも大丈夫だと思いますよ?」

長官「?」

秘書「そんな気がするだけですけど」

長官「君の口からそんな言葉を聞くなんて驚きだな」フッ



─── 朝


ウイーン


少女「長官、エージェント女神到着しました!」

長官「朝早くにご苦労様」

男「エージェント女神の夫、同伴で到着です!」

長官「死ね、エロガキ」

男「ちょっとそれ酷すぎませんかぁ~?」

少女「もー ふざけちゃダメなんだよ?」プンプン

男「は~い」デレー


長官「早速だが指令だ」

秘書「超巨大モニターに内容を」

部下「・・・出します」


パッ



─ 指令
エージェントのお仕事
××海岸沿いに住んでる中年男を見つける!
ニートを止めさせモリモリ働いてもらおう!



男「ま~た意味不明な指令ですなぁ」

少女「・・・・・・」


秘書「今回のターゲットは中年男さん55歳」

男「その年でニートって、もしかして筋金入?」

秘書「1年前に仕事を辞めて一人で住んでいるという事は調べで分かっています」

男「求人情報誌を持って俺たちが相談に乗れば良いの?」

女教師「そんなに簡単な指令じゃないわ」

男「?」

女教師「彼は去年まで・・・ 帝都大学の素粒子先端技術研究所に勤めていた」

男「研究所?」

秘書「これが博士が辞める直前まで行っていた研究の論文です」ペラッ

男「どれどれ~ あぁ・・・ 俺ロシア語読めないんですよ。 ドイツ語なら読めるんですけどねぇ」

少女「すごーい! 男くんってドイツ語分かるんだぁ」

男「まぁね」

秘書「それ、ドイツ語ですよ?」

男「・・・・・・」

少女「」ジトー



─── 海のある田舎町


ガタンゴトン


少女「・・・・・・」

男「少女ちゃん! 見て見て! 海!!」

少女「え? あっ本当だ、綺麗だねぇ~」

男「これが仕事じゃなければどんだけ嬉しいか・・・」

少女「仕方ないよ、今度休みの日に来ようね」

男「マジっすか!」

少女「秘書さんって水上オートバイの免許持ってるんだよ?」

男「あぁ・・・ 皆で来るのね・・・」

少女「もちろん!」ニコッ

男「・・・・・・」



─── 海辺の一軒家


少女「あった。 ここだね」

男「中年男さんの家、間違いないね」

少女「作戦は・・・ 覚えてる?」

男「少女ちゃんがドアを開けたら、俺が中年男を押さえ込んで暴れたらスプレーを顔に吹き付ける」

少女「・・・・・・。 うん」

男「ちょっと手荒すぎると思うんだけどなぁ~」

少女「そうだね・・・ でも作戦だから」シュン

男「悩んでも仕方ないか」

少女「いくよ。 作戦開始!」



コンコン


中年男「はい」ガチャ

少女・男「・・・・・・」

中年男「どちらさま?」ムキッ

少女「あの・・・」

男「人違いのようです。 失礼しました」タッタッタッ

少女「え? あっ、すいません! 出直します!」ペコリ

中年男「?」

少女「まって~」タッタッタッ



少女「もー どうして作戦通りにしなかったの?」

男「無理でしょあれ。 何であんなにマッスルなの? あんな猛獣に市販の催眠スプレー効かないって」

少女「でも・・・」

男「見たでしょ? 腕とか少女ちゃんの太もも位のサイズあったよ?」

少女「どうしてそんな事知ってるの?」ジトー

男「うっ・・・ 想像、想像だって。 それに太もも位見れば分かるしー」ジー

少女「エッチ」ササッ

男「冗談冗談」ハハハ


少女「でも、どうしよう・・・ 本部に相談する?」

男「そうだね、どこか喫茶店でも入って作戦を練り直そうか」

少女「じゃぁホテル行こうか」

男「ホテルですと!?」

少女「うん。 長丁場になるかも知れないからってホテル予約してくれたみたい」

男「あ~ そっちのね・・・」

少女「・・・男くん? 何を想像してたの?」ジトー

男「べ、別に! シティーホテルとビジネスホテル位の些細な問題」

少女「もー」



─── 秘密施設・本部


秘書「長官、エージェントエロガキからお電話です」

長官「面倒くさいな・・・ 会議中って言っておいて」

秘書「すいません、回線が繋がっていまして・・・」

長官「・・・・・・。 ご苦労、エージェントエロガキ」

男『うるせーよアフロ、居留守使おうとしてんじゃねーよ!』

長官「緊急時以外の本部との連絡は禁止だぞ」

男『緊急だよ! 何なんだよあの中年男は! どこの格闘家だよ!』

長官「その様子だとA作戦は失敗したようだな。 心配ない、想定内だ」

男『ふざけんな』

長官「エージェントボインちゃんが向かっている。 合流して指示を仰いでくれ」

男『先生が?』

長官「それじゃ、検討を祈る」ガチャッ



─── ホテル


男「あっ! おいコラ! ってアフロの奴電話切りやがった」

少女「長官何だって?」

男「先生がこっちに向かっているから合流しろって」

少女「そう」

男「先生も参加なら最初からそうしろってーの」

少女「・・・・・・」

男「少女ちゃん? 何か気になることでも?」

少女「え!?」

男「朝に指令を聞いたときから少し様子が変だけど」

少女「気付いてたの!?」

男「少女ちゃんのことなら箸を付ける順番から、最初に歯を磨く場所まで全て知ってます」

少女「・・・・・・」ゾッ

男「冗談」


少女「中年男さんのいた研究所って覚えてる?」

男「あ~ 帝都大学だったっけ」

少女「うん」コクッ

男「それが何か?」

少女「帝都大学素粒子先端技術研究所って、先生が前にいた所なんだよ」

男「え? 先生って大学の研究員だったの?」


ガチャ


女教師「博士は私が研究所にいた時の担当教授だった」

男・少女「先生!?」クルッ

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