猫耳少女「私は……化け物ですから」(199)
少女「は、ぁ……ふ……」フラフラ
少女「……ぅ、あ」ドサッ
少女(だめだ……うごかなきゃ……)
少女(うごかないと……おいつかれ――)
男「お、おい……大丈夫か……!?」
少女「っ」ビクッ
少女(だれ……?)
男「体調悪いのかっ? おい、なぁっ」
少女「……ぁ」
男「な、何だ?」
少女「……たす……けて」
男「え!? ちょ、まっ……寝るな――っかりし――――!」
――――――
――――
――
こぽこぽこぽ
少女(…………あ、紅茶の匂い)
少女「……ここ、は」ムクリ
男「うわっ! 起きた!?」
少女「あの……すみません、ここは?」
男「え、ぅあ……っと、俺ん家だけど」
男「行き倒れてたっぽいから、少しでもましなところに……って、駄目だったり?」
少女「いえ、助かりました」
男「あれそういえば良く考えたらこれ誘拐じゃね女の子を自分の部屋に連れ込むとかがっつり犯罪だよね見られてないかな見られてたらヤバいよな」ガクガク
少女「お、落ち着いてください、えと、お茶でも飲んで!」
男「お、おう……んくんく、ふぅ」
男「あ、お前……じゃなくて君も飲む?」
少女「いえ……その……」
男「遠慮するなって、ほら」コポポ
少女「ありがとうございます……」コク
少女(……おいしい)
男「…………」
少女「…………」
男「さて、聞きたいことが――色々あるんだけど、まずは一つ」
少女「はい」
男「その獣っぽい耳と目って何?」
少女?「…………」
男「えーと、コスプレだったり?」
少女?「いえ……これは……」
少女?「…………」グッ
猫耳少女「……本物、です」
男「ほ、ほんもの……ぉ?」
猫耳「……あの、聞くんですか? 私の話」
男「へ?」
猫耳「その、なんていうか、あんまり関わらない方が」
男「はは、聞いたら消されるぞってか?」
猫耳「はい」
男「そんなバカな………………マジ?」
猫耳「はい」
男「…………」ゴクリ
猫耳(やっぱり、私は……)
男「なんか、ヤバい由来なの? その耳」
猫耳「それなりには」
男「…………ふぅー」
男「まぁ、聞くよ」
猫耳「いいんですか?」
男「だってそんなヤバいものを既に知っちゃったんだから聞こうが聞くまいがあんま関係無いだろ」
猫耳「……それは、そうですが」
男「大体、一度助けた死にそうな女の子を追い出すとか、できないし」
猫耳「……ありがとう、ございます」ペコリ
男「おう、照れるわー」
男「で、君は何であんなとこで倒れてたん? 純粋にそれも気になるし」
男「まぁとにかく、その耳も」
猫耳「荒唐無稽な話をしても良いでしょうか……」
男「……あぁ」
猫耳「合成獣《キメラ》という概念を知っていますか?」
男「えっと、いろんな生き物を組み合わせた生物?」
猫耳「はい、私はその合成獣です」
男「はぁ……」
猫耳「信じ……られないですよね」
男「まぁ、そうなんだけど、聞くっていったからには」
猫耳「……ありがとうございます」
猫耳「私は、遺伝子学関連の研究所で身体を弄られました」
男「…………」ピク
猫耳「安い小説みたいですよね……事実ですけど」
猫耳「頭のおかしい人達の頭のおかしい研究に使われた実験体ですよ」
猫耳「身体が動かなくなるまで、データを取られて……っ」ブルブル
男「おい、無理するなよ」
猫耳「へ、平気です……それでこのままじゃ殺されると思って、逃げてきて」
男「あてもなく彷徨って、力尽きたところで俺に会ったのか」
猫耳「はい」
猫耳「とがって上を向く耳、縦長の瞳孔をもつ眼」
猫耳「あとは、尾骨が伸びたしっぽとかこの長い犬歯とかに影響が現れています」
猫耳「混ぜられたのは、猫」
猫耳「私は人間に猫科の遺伝子を組み替え移植して作り出された生物」
猫耳「人間でもなく、猫でもない、出来そこない」
猫耳「そういう存在をなんと言うか知っていますか?」
男「…………」
猫耳「化物」
猫耳「っていうんですよ」
猫耳「なにか、質問はありますか?」
男「えっと」
男「なんだそれゲームかよとかそんなことを研究してる場所があるのかよ、とか言いたいことはいろいろあるけど」
猫耳「…………」
男「あのさぁ」
猫耳「……?」
男「泣くくらいなら、自分のこと化物なんて言うなよ」
猫耳「……え」
猫耳「あれ、私、何で」グシグシ
猫耳「ひぐ、あれ、あれぇ……」ポタ
男「辛かったか?」
猫耳「諦めて、もう゛諦めてだのに……うっく」ポタポタ
猫耳「化物でみんなから、拒絶さ、れてっ……生きてぐって……」
猫耳「納得したは、ずなのに゛っ……うぁ……うああぁ」
男「そんな、悲しい諦め方すんなよ」
猫耳「っ!」
男「俺は、まぁ……化物だとは、もう思わねぇよ」
男「確かに不気味――って言ったら失礼か、だけど猫だろう?」
男「猫ってのは、結構な人数に好かれてる愛玩動物だ」
男「そう考えると、可愛いじゃんか」
猫耳「うぇ……ぁ……」
猫耳「ありがとうござ、いますっ……あ゛りがとうございます、っ」
男「…………」ナデナデ
猫耳(それでも、私は化物だ)
猫耳「……ん、あっ……やぁ」ピクン
猫耳「はぁ、はぁ……あんっ……ぅ……だめぇっ……」ビクビク
男「ごめ、痛かったか!?」
猫耳「ぁ、だ、大丈夫です……ちょっと刺激が強くて」
男「そうか、じゃぁもう少し……いいか?」
猫耳「……はい」コクン
猫耳「あっ! ぅんっ……そ、そこっ……あ」ビクッ
猫耳「どうですか? 私の猫耳」
男「あぁ、マジで本物なんだな」
男「柔らかくて」クニッ
猫耳「っ」
男「暖かくて」ギュ
猫耳「ぁ」
男「毛触り最高」スリスリ
猫耳「んっ」
男「いやー病みつきになるね」
猫耳「そう、っ……ですか?」
男「うん、化物とかもう考えられないくらい」
猫耳「……あはは」
男「お、笑った」
猫耳「あなたって、不思議な人ですね」
男「んー? 俺なんてまだまだだろう」
男「日本でオタクとかいわれる集団はもっとヤバい化物でも〝萌え〟に出来るらしいぜ」
猫耳「そ、それはそれで怖いですね」
男「それに比べりゃ、まだまだ軽いよ」
猫耳「あは、は」
男「あと、あなただなんて他人行儀じゃなくて、男って呼んでくれよ」
猫耳「男、さん……?」
男「おう、男だ」
男「で、君の名前は――」
猫耳「」ビクッ
男「――地雷踏んだ?」
猫耳「いえ……いえ、平気です」
猫耳「前の名前は捨てられました……今は『検体番号1024猫人』ですかね」
男「……えーと」
猫耳「謝る必要はありませんよ」
男「じゃぁ、猫耳ちゃん」
猫耳「えっ」
男「そのナントカ番号は長いし嫌いだから、猫耳ちゃんで」
男「嫌だったか? 変なあだ名で」
猫耳「ねこ、みみ」
男「あ、嫌なら」
猫耳「いやじゃないです」
猫耳「いやじゃ、ないです」ニコ
男「……おう」
猫耳「猫耳、ふふっ、猫耳」
男「さて、もう少し話を聞こうかな」
猫耳「分かりました、それでは――」くぅぅ
男「…………」
猫耳「…………」カァ
男「話す前に飯食うか」
猫耳「……もうしわけないです」
男「いいさいいさ、何が食べたい?」
猫耳「え、そんな私は」
男「飯くらい我儘言っていいってば」
猫耳「じゃぁ……」
猫耳「お肉、食べたいです」
男「おっけ、ちょっと待ってろ」
今日はここまでー
ワタシ ネコミミ アイシテル
猫耳「ごちそうさまでした」
男「お粗末様で」
猫耳「いえ、本当に私なんかにこんな親切に……」
男「猫耳ちゃんって何歳?」
猫耳「え? え、14ですけど」
男「俺は20だ、つまり子供の面倒は大人が見るってわけ」
男「遠慮するなよ? 子供はもっと甘えていいの」
猫耳「ごめんなさい……」
男「そこはありがとうっていってほしいなぁー」
男「で、その話だ」
猫耳「どの話ですか?」
男「面倒見るって話」
男「ふむふむ、話をまとめると、捕まってたところから逃げてきて、この先どこにもあてが無いと
男「現在14歳、仕事が出来る能力もなく(そもそも耳とか目とかが目立つ)、一人で生きていくのは絶望的と」
猫耳「はい……」
男「そんじゃさ」
男「猫耳ちゃん、ウチに住まない?」
猫耳「…………」
男「……あれ、駄目かな?」
猫耳「男さんは……なんでそんなに優しくしてくれるんですか」
男「一人暮らしなんですよ、俺」
猫耳「はい?」
男「若干、暗い部屋に帰ってくるのが寂しかったりするんですよ」
男「そんなときに今『親方! 空から女の子が降ってきた!』状態な訳で」
猫耳「お、親方……」
男「その女の子が……可愛かったりするとね」
猫耳「つまり?」
男「ぶっちゃけ、タイプなんです」
猫耳「……はぁ?」
男「猫も嫌いな訳じゃないし、テレビの猫画像なんか見ると和むし」
男「その可愛い猫と可愛い女の子のハイブリッドが現れたらもうね」
猫耳「そ、そんな理由で?」
男「下心満載でしたすみませんでしたぁっ!」ガバッ
猫耳「…………」
男「……怒ってる?」プルプル
猫耳「男さんって」クス
猫耳「優しくて、暖かくて、不思議で」クスクス
猫耳「とっても……」
男「……?」
猫耳「変態さんですね」クスッ
男「ぐふっ」ドスッ
男「女の子に……変態って……言われた……」
猫耳「それでは、子供として遠慮なく大人にお世話になります」
男「……はい」
猫耳「それとも恋人としてお世話になった方が良いですか?」
男「!」
猫耳「冗談です」
男「」
猫耳「それでも、ただお世話になるだけにはしませんから」
猫耳「家事はお手伝いしますから」
猫耳「お手伝いは子供の仕事ですよね?」
男「おう、分かった」
猫耳「不束者ですがよろしくお願いします」
男「よろしくお願いされました」
――――――
――――
――
男「……くぅ」Zzz
男「……すぴー」
猫耳「……」ギョロ
猫耳「……ぐ、ぅ」
猫耳「我慢しないと……」
猫耳「ごめんなさい、男さん」
猫耳「やっぱり、私は化物なんです」
猫耳「ねぇ、男さん」
猫耳「あなた、とっても美味しそうですね」
今日はーここまでー
暗闇で光るキャッツアイ! そしてまさかのカーニバル!?
猫耳は世界平和への足がかり
男「おはよう、猫耳ちゃん」
猫耳「おはようございましゅ……」クシクシ
男「猫耳ちゃん朝弱い感じ?」
猫耳「昨日はちょっと寝付けなくて……」
男「まぁ、そうだな、いきなり環境が変わったしな」
猫耳(…………)
猫耳「はい」
男「それじゃ、朝ご飯にしようか」
男「ほい出来た、やっぱ朝と言えばお茶漬けでしょう」トン
猫耳「いい匂いです」
男「伊藤園だからな」
猫耳「理由そこですか?」
男「当たり前よ! よし、食うか」
男「いただきます」
猫耳「いただきます」パク
男「あー、あったけぇ」ズズ
猫耳「美味しい、です」
猫耳「昨日はいろいろあって……感じなかったけど」
猫耳「そういえば……あったかくて、おいしい料理なんて、久しぶり」
男「……前ん所では?」
猫耳「餌なら貰っていましたよ」
男「そうか」ギリ
猫耳「はむ……あむ、むぐっ」
猫耳「あったかい、すごく」
猫耳「はむはむ……ん」
猫耳「…………」
猫耳「……んく、うぅぅ……はぐ、ひっく」ジワァ
猫耳「うぇぇ……んっ、むぐあぐっ、うぁぁ」ポロポロ
男「…………」
猫耳「おいしぃ、おいしいよぉ……うっく」
猫耳「ひっ、う……んく、じゅる……」
男「…………」ナデナデ
猫耳「ごちそうさまですっ」ニコッ
男「……おう」ナデナデ
猫耳「ちょっと、寄りかかっても良いですか?」
男「いくらでも」
猫耳「…………」トサ
猫耳「……本当に、ありがとうございます」
猫耳「かわいい女の子だから、なんて昨日は茶化してましたけれど」
猫耳「私は、男さんのおかげで『人間』に戻れました」
男「そこまでのことは……」
猫耳「していますよ、凄いことをしています、男さんは」
猫耳「子供ひとりを養うのが大変だってことは私だって分かってます」
猫耳「それでも男さんは私を助けてくれた」
猫耳「私はそれが、とても嬉しいんです」
猫耳「私の一生分の感謝をあなたに」
男「……これは受け取らないと逆に失礼だな」
猫耳「ありがとうございます」
猫耳「男さん」
男「ん?」
猫耳「私はあなたのことが好きです」
男「はぁ!?」
猫耳「好きです、大好きです……それこそ今すぐ男さんに求められても受けるくらいには」
男「え、ちょ」
猫耳「でもこれはきっと駄目な『好き』です」
猫耳「これは依存と刷り込みと精神が弱ったことが原因」
猫耳「だから、この『好き』で告白するのはいけないことです」
猫耳「ですから」
男「お、おう」
猫耳「私が、本当に男さんを好きになるまで待っていてもらえますか?」
男「それは、俺がどうこう言えることじゃないけど」
男「でも無理して好きになる必要は……」
猫耳「無理してなんか居ませんよ」
猫耳「私が男さんをきちんと好きになりたいんです」
猫耳(私が、化物にならないためにも)
猫耳「お願いしますね」
男「……わかった」
猫耳「あ……でももし本当に私と男さんが恋人になったとしたら」
猫耳「男さん、ロリコンってことになっちゃうんじゃ」
男「あ」
猫耳「大変ですね」
男「六歳差、いける……いや、いけない?」
猫耳「それより男さん、もう8時過ぎてますけれど」
猫耳「大学とか、行かなくていいんですか?」
男「うわ! やっべぇ!?」
男「えっと、着替えてー荷物持ってーっ」バタバタ
男「あ、あっとぉ! 猫耳ちゃんすっごく申し訳ないんだけど留守番しててくれる?」
猫耳「かまいません、結局この耳があったら今は外に出ることができませんし」
男「窮屈な思いさせちゃうけど、我慢して! ごめんね」
猫耳「はい、いってらっしゃい」
男「いってきまーす!」ガチャ
猫耳「行っちゃったなぁ……」
猫耳(男さんが好きって気持ちは駄目だけど嘘じゃないはず)
猫耳(私はあの人を好きになりたい)
猫耳(それに……)
猫耳「恋をするのは『人間』で『獣』じゃないから」
猫耳(私が化物じゃ無くなるために『獣』から離れないといけないから)
猫耳(『人間』でいれば、きっと)
猫耳(この衝動も、薄れてくるから)ジュル
猫耳「……あ、ふ」トロン
猫耳「まだ少し眠いや……」
猫耳「睡眠がちゃんと取れるのも私が忘れてた幸せだよね」
猫耳「なんでもかんでも、しあわせ」
猫耳「飽きちゃうんじゃないかって怖くなるほど幸せだよ」
猫耳「……おやすみなさい」パタ
夢で見るのは、現実とは違う嘘物語なのでしょうか――
それとも――
目をそむけてはならない真実そのものなのでしょうか――
身体が渇く。
本能から湧き上がる食欲が四肢を動かす。
顔を上げると、そこには男さんがいた。
男さんは私を見てにっこりと微笑むと、ゆっくりと左腕を私に伸ばしてくる。
無駄な脂の無い、しなやかな腕だ。
ごくりと喉が鳴る。
私は、ゆっくりと男さんの腕を取る。
薬指を口に含み、ねぶる。
舌から、男さんの味と形が伝わってくる。
もう、我慢できない。
私は、
男さんの指を思い切り噛みつぶした。
犬歯が肉を突き破り、骨が砕けてじゃりっと音がする。
一瞬の後に断面から血があふれ出る。
しょっぱい味が口中に広がる。
口に溜まる欠片と一緒に飲み下すごとに、満たされてゆく。
脳髄を刺すような強烈な陶酔感。
麻薬じみた喜びに、身体が震える。
男さんはにっこりと笑って私を見ている。
愛しい、私の男さん。
あぁ、柔らかそうな喉だなぁ。
掴んでいた腕を放して、男さんに抱きつく。
身長差で、自然と私の頭は男さんの胸のあたりに収まる。
どきどきと、肉の新鮮さを伝えてくる音が聞こえる。
私は、顎を上げる。
眼前に、なめらかな首が広がる。
一息に噛みついて、くいちぎる。
男さんは痙攣しながらも笑っている。
私は肉を咀嚼し、飲み込んではまた噛みついて。
がつがつ、ぼりぼり。
音が響く。
美味しい、美味しいよ。
動かなくなった男さんがどんどん減ってゆく。
口端に伝う血の筋をなめとる。
身体の芯に熱い血流が流れる感覚。
喜びにくねる尻尾。
快感に震える耳。
男さんを見つめる瞳。
男さんを味わう犬歯。
ヒトクイ
私は化物だ。
猫耳「ああああああああああああああああああああああ!」ガバッ
猫耳「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
猫耳「…………」ガタガタ
猫耳「違う、わたしは違う、違う」
猫耳「化物じゃない、人間だ」
猫耳「あああああああああ、でもでもでもでもでも」
猫耳「男さん、食べたいな」ギィィ
今日はここまで
カニバ猫耳ロリとかマジ萌えだよね(錯乱)
男「たっだいまー!」
猫耳「お帰りなさい、男さん」
男「…………」
猫耳「どうしました?」
男「感動」
猫耳「?」
男「今俺は感動している」
男「家に帰ると笑顔の女の子が出迎えてくれる」
男「すばらしい」
猫耳「もう、大袈裟ですよ」
男「すばらしい」
男「っと……まぁこのくらいにしておいて」
男「大丈夫だった? さみしくなかった?」
猫耳「平気です、ゆっくりのんびり出来ましたし」
猫耳「お昼寝しちゃったのであっというまだったくらいです」
男「そっか」
男「きっと……これからもこんな感じになっちゃうけど、ごめんね」
男「ほとぼりが冷めるまで……って冷めるのかは分かんないけど」
男「猫耳ちゃんが自由に歩けるようにどうにか考えるから」
猫耳「ごめ――ありがとうございます」
男「ん、それでよし。ついでに敬語も無くしてくれるとありがたや」
猫耳「ありがとう……?」
男「あんま気ぃ張りすぎるなよ?」ナデナデ
猫耳「……んっ」
猫耳「…………」ギュ
男「おっとぉ?」
猫耳「男さんはあったかいね」
男「そりゃ生きてるからな」
猫耳「とくとく、心臓の音が聞こえる」
男「俺って鼓動早い方なんだよなー」
猫耳「ねぇ、男さん」
男「なんだ?」
猫耳「甘えていいかな」
猫耳「……ん、ぅ」スリスリ
男「なんか本格的に猫っぽいな」
猫耳「頭、撫でて」
男「あいよ」ナデナデ
猫耳「男さんの、おっきな手」
猫耳「お父さんみたいな、お兄さんみたいな。でも違う人の手」
猫耳「何年ぶりかな……こんな感触……」
男「……そっかぁ」
猫耳「…………」
猫耳「ん」ペロ
男「うひっ」ゾワッ
男「え、今何したの?」
猫耳「ちょっと、首を」
猫耳「男さんの首は、綺麗だね」
男「首ってそんなに違いあるのか?」
猫耳「うん、しなやかでしっかりしてて」
猫耳「それこそ――――ゃいたいくらい」
男「今何て言ったの?」
猫耳「なんでもない」スリスリ
猫耳「辛い時、またこうやってぎゅっと抱きしめてくれる?」
男「ぎゅーっとしてやるよ」
猫耳「私、頑張るね」
男「猫耳ちゃんはもう頑張らなくてもいいんじゃないかな」
猫耳「ううん、私は頑張らないといけないんだ」
猫耳「頑張りたいんだ、私。大切なモノ守るために」
男「…………」
今日はここまで眠気がバースト
小さめの女の子が身体伸ばして首に噛みつく構図ってエロいと私は思うの
男「猫耳ちゃん! 今日は何曜日だ!」クワッ
猫耳「土曜日ですね、どうかしましたか?」
男「……考えてみれば一ヶ月、猫耳ちゃんはこの家に閉じ込められたままだ」
猫耳「閉じ込められたって、そんな」
猫耳「それに目立たない夜にはちょこっと出たりしましたし」
男「でもさ、こそこそしてたし帽子とかで隠したりして窮屈だったわけだ」
男「まぁキャスケット帽かぶる猫耳ちゃんも可愛いけどさ」
猫耳「か、可愛いですか? えへっ」テレ
男「うん、可愛い」
猫耳「それで、土曜日がどうしたの?」
男「いや土曜日と言えばお出かけ日和じゃないか」
猫耳「今日は特に晴れてて、良い気候だもんね」
男「ということで」
男「お出かけをしよう!」
猫耳「え、でも私はこの猫耳とかが……」
男「いいからいいから、ほら準備してれっつごー!」
男「とーちゃくー!」
猫耳「こ、ここは? ていうか耳とか隠さなくてもいいの?」
男「かまわない! なぜならここは!」
猫耳「…………」ゴクリ
男「コスプレの聖地! 秋葉原!」
男「ほら、見える範囲内だけでも三人は猫耳付きがいるぞ!」
猫耳「ほ、ほんとだ……」
男「ここなら目立たないだろ?」
猫耳「はい……」
男「まぁ、でも女の子を連れてのお出かけに秋葉原ってのも微妙だけどな」
猫耳「それでも……うれしいよ」ニコ
男「ならよかった、んじゃ遊ぶか」ギュ
猫耳「あわっ、え、はいっ」
猫耳(よく考えればこれデートみたいな……)
男「ということでまずはプリクラでもとりましょうか!」
猫耳「プリクラって初めて」
男「まぁ俺も慣れてるわけじゃなく学生ノリで何回か連れてこられただけなんだが」
猫耳「んー、男さんって経験豊富なんだね」
男「猫耳ちゃんより長生きしてるってだけだよ」
男「猫耳ちゃんもこれからいろいろ経験してくんだから」
猫耳「男さんがいろんな経験させてくれる?」
男「任せとけ」
猫耳「これってどうすればいいの?」
男「えっと、このペンで落書きしたり……スタンプ押したり……」ポチポチ
猫耳「こんな感じ?」
男「こんなのも書いちゃえ」カキカキ
猫耳「わ、ちょ、ひげ書かないで下さいよ!」カキカキ
男「な、なんてことを!?」
猫耳「へへーん、反撃です」
猫耳「……わぁ」
男「そんなに喜ばなくても」
猫耳「ううん、これは宝物だよ」
男「この調子だと宝物だらけになりそうだな」
猫耳「それってとっても幸せだよね?」
男「まぁ、確かにな」
猫耳「んっ、ほら次はどこに行くの?」
男「そうだな、電気街ってもな……」
男「あぁ、本屋とか行ってみようか」
猫耳「!」
男「あ、猫耳立った」
猫耳「本がいっぱいだぁ!」
男「うひー広いなぁ……流石秋葉だけあって若干オタクエリアが多い気がするけど」
猫耳「いろんな本があるなぁ……」
猫耳「この可愛いイラストの表紙のはなに?」
男「ライトノベルってやつだな、丁度猫耳ちゃんの年齢向けの本だ」
猫耳「ふぅん……………………なんかお伽話みたいなのが多いんだね」
男「そうだなー、魔法とかバトルとか恋愛とかな」
猫耳「男さん詳しいね」
男「友達がそうゆうのをすげぇ知っててな」
猫耳「こっちは何かな」パサ
男「え、そっちはやば!」
猫耳「…………」カァァ
男「あ」
猫耳「……えっちなのはいけないとおもいます」
男「お、おう」
猫耳「わたしはまだ14です、そういうのだめだとおもいます」
男「そうだな……」
男「…………せめてのれんで仕切っとけよ店!」ボソッ
猫耳(男さんもあーゆーのが……)ボフッ
男「え、えーと、気を取り直して!」
猫耳「……うん」
男「ちょっと小腹もすいたとこだし、カフェに行ってみよう」
猫耳「カフェ?」
男「友達に薦められたとこなんだけど、ちょっと裏道入ってな」
男「こっちでー、こっちだったかな?」
猫耳「ここ?」
男「そう、ここ」
男「何だったかな『媚びた雰囲気の無い本場ヴィクトリアンメイド』がどうたらこうたらの――」
男「まぁとにかく、落ち着いた店らしい」
猫耳「メイド……?」
男「あぁ……そっか、知らないか」
男「外国の家政婦さんみたいなもんだよ」
猫耳「お手伝いさんなんだ」
男「ここだとウェイトレスだけどな」
男「おー、確かに落ち着いてる」
猫耳「外はけっこううるさかったもんね」
男「静かってのはこんなにいいものだったのか!」
猫耳「私は特によく聞こえちゃうから」
男「猫耳か」
猫耳「猫以上には耳が良いよ?」
男「そりゃ便利だ」
猫耳「紅茶美味しい……」
猫耳「そう言えば私と男さんの最初も紅茶だったよね」
男「あーそんなこともあったなぁ」
猫耳「男さん紅茶入れるの上手だよね」
男「男のたしなみってやつですよ」
猫耳「どっちかっていうと女の人のたしなみだけどね」
男「紅茶美味しく入れる男性ってカッコ良くない?」
猫耳「そうじゃなくても私は男さんが一番だよ」
男「うぐ」
男「猫耳ちゃんは何か食べる?」
猫耳「……ううん、そういうの、食べる気分じゃないかな」
男「食欲無い? 具合悪かったりする?」
猫耳「元気だよ、食欲もしっかりある」
男「なら……大丈夫か」
男「体調悪くなったらすぐ言えよ? こもりっぱなしは身体に悪いだろうし」
猫耳「わかってるよ」
きょう、ここまで
そう言えば〝餌〟ってなんだったんでしょうかねー
男「……しまったなぁ」
猫耳「どうしたの?」
男「猫耳ちゃんの猫耳が目立たないことを優先しすぎて、楽しむ場所を考えてなかった」
男「カラオケとかっても……猫耳ちゃんは歌えないよね」
猫耳「まぁ……はい」
男「目的もなしに動くには秋葉はマニアック過ぎだし……」
猫耳「私は男さんと一緒に歩いてるだけでも十分だけど」
男「どうせだったらもっと楽しいことしないと、猫耳ちゃんは少ない外出なんだから」
男「……ゲームとか?」
男「猫耳ちゃん、ゲームってやったことは?」
猫耳「テレビゲームは無いかなぁ」
男「おし、じゃあゲーム屋に行こう!」
男「猫耳ちゃんが家にいる間退屈しないようにゲームを買うことにしました!」
猫耳「そ、そんなゲームなんて高いんじゃ……」
男「子供はむしろ高い物を『買って買って』と我が侭言うの」
男「それに俺もやるからいいんだよ」
男「さて……」
男「3DS、WiiU、PSvita、PS4、セガサターンと」
男「種類あるなぁ……」
猫耳「こ、これどうやって遊ぶのっ?」ピクピク
男「落ち着け落ち着け、猫耳が狂喜乱舞してるから」
猫耳「あぅ……」カァァ
男「店員さんガン見してるな……クオリティ高ぇって言ってるから本物だとはバレてないみたいだけど」
猫耳「ちょっとヒヤヒヤするよ」
男「どうせ家なんだから据え置き型が良いかな?」
猫耳「うわぁ! このコントローラー繋がってないよ!」
男「でもWiiUって評判悪いし、プレステ系はロード重いし」
猫耳「綺麗な映像っ、本物の景色みたい!」
男「DSとかの方が手軽に出来るのが多いかな?」
猫耳「……猫人族? ファンタジーには私みたいなのがいるんだ……」
男「いっそどっちもって言うのも……金キツいかな?」
猫耳「ぞ、ゾンビ? 死んだ人が動くの……? え、人を喰べるの?」
――――――
――――
――
男「重くないか?」
猫耳「えへへ、大丈夫っ」フリフリ
男「結局店員にオススメ聞いてWiiUとピクミン3になったけどよかったのか?」
猫耳「ふんふんふふーんっ」ユラユラ
男「って、テンション高いな」
猫耳「やるの楽しみだなぁ」ピクピク
男「そりゃよかった」
猫耳「……そろそろ帰ろっか」
男「もう? いいのか、もっといてもいいんだぞ?」
猫耳「うん、私は十分満足したし」
猫耳「それに男さんとおうちでのんびりするのも私は好きだから」
男「猫耳ちゃん……」
男「本音は?」
猫耳「このままゲームおあずけとか無理です」
男「それじゃ、帰ることにしますかね」
猫耳「うんっ」
男「おっと、電車に乗る前には帽子かぶって」ポス
猫耳「うにゃっ」
男「ほい、これでおっけ」
猫耳「ありがと」
男「うい」
今はここまで
夜辺りにまた来る可能性が無いこともないかもしれない(つまり来るかも)
ちなみにWiiUは買ってから遊べるまでが長い
本体更新ウザい
「はぁ……ァ……」
渇く、躰が渇く。
視界がぶれる、手が震える、かちかちと鳴っているのは私の歯だろうか。
気が狂いそうだ。
押し留めた私の中の化物が猛威を振るおうと暴れている。
「お腹スいたナァ……あぐ……」
タベタイ。
食べちゃいけない。
タベタイ。
食べちゃいけないんだ。
男さん。
アノ柔ラカソウナ首/あの優しい声
アノ弾力ノアリソウナ腕/あの心地良い手
アノ新鮮ナ心臓/あの暖かい鼓動
「男さん、私の男さん」
何か。
何か食べるモノは、ないのだろうか。
私の餌は?
「血の滴る肉、白く飛び出た骨、震える脳」
タベタイ。
食べない。
タベタイ。
食べ……。
タベル。
食……。
タベヨウ。
食べたい。
「……えへへ、えへへへへ」
食べよう、食べよう。
えへ、こんなところにちょうどいいものが。
細くて、長くて、白くて。
あぁ、とっても美味しそう。
男「たっだいまー! ……って暗っ!?」ビクッ
男「猫耳ちゃーん……?」
男「いない……のかなー?」
猫耳「……ぁぐ」ガブ
男「猫耳ちゃん?」
猫耳「んぐ……じゅ、ぐ」ガブガブ
男「……何してるの?」
猫耳「……んぅ?」ギョロ
猫耳「あぁー、おとこさんだぁー」ニコ
男「っっ!? 手が血だらけ!? 大丈夫!?」
猫耳「男さぁん」
男「噛み傷……まさか、自分の手をっ?」
猫耳「……あれ、男さん?」サァァ
猫耳(ばれた? 男さんにばれた?)
男「と、とにかく手当てを」
猫耳「あ……あ、あ、あああ」カタカタ
男「猫耳ちゃん?」
猫耳「ご、ごえ、ごめんなさっ」バッ
男「あ! 猫耳ちゃん何処行くのっ!?」
猫耳「あああああばれたばれたばれたばれた」ダダダダ
ガチャッ! バタンッ!!
猫耳(うあ、あああ)
猫耳(男さんにばれた、私が化物だって)
猫耳(怯えてた、狂ったものを見る目だった)
猫耳(男さんに嫌われた)
猫耳(男さんは【ゴチソウミタイ】――違う! 違う違う違うちがうちがう!)
猫耳(私はおかしい、男さんは【タベモノ】じゃない! 男さんは【オニク】じゃないッ!)
猫耳(【ワタシハオナカガヘッテ】ぐあっ【オトコサンヲタベレバオナカハ】やめろやめろやめ【イッパイニナッテシアワセ】)
猫耳(【ドウシテイママデタベナカッタ】たすけ【ンダロウ? アンナニオイシソウ】いやっ【ナノニ……タベレバヨカッタンダヨネ】)
猫耳【男さんごめんなさい……私は化物をやめられない】
ニンゲン
猫耳【とりあえずは、何かを食べないと】
猫耳【でも、人を殺したら捕まってしまうから……】
ヒト
猫耳【……殺しても捕まらない獲物?】
猫耳【あぁ、そうだ】
ゴハン
猫耳【私には、追手がいたんだった】
猫耳【えへへ、いただきます】ジュル
今日はここまで
小出しですみません
おててがぶがぶ!
男「はぁ、はぁ……」タッタッタ
男「くそっ、何処行ったんだよ猫耳ちゃんっ」
男「自傷行為は訳分かんないし、飛び出した理由も知らないしっ!」
『ご、ごえ、ごめんなさっ』
男「なんで謝るのかも……わかんねぇよ」
男「ストレスが溜まってた? いや、そんなレベルの行動じゃなかった」
男「それに、昨日だって楽しそうにゲームしてた」
男「あの笑顔が作り物だなんて思いたくねぇ」
男「もっと……なんか考えてて」
男「だからって自分の手を噛むなんて……噛む?」
男「――――喰べる?」
夜の公園に身を潜めた。
街灯の蛍光灯が切れていて、辺りは真っ暗だ。
【んぅ】
臭いがする。
人間と動物の混じった薬の臭い。あの研究所の臭い。
近いなぁ。
ちょうど前方に人影が現れた。
「見つけたぞ、検体番号102――」
【みぃつけた】
「……っ?」
筋張っててあんまり美味しくなさそうなお肉だけど……まぁいいか。
あぁ、男さんはやっぱり良いお肉だったんだなぁ。
それじゃあ。
狩りを始めましょう。
【死んでくださ、いっ!】
「ぐ、っ! 抵抗するな!」
暗闇は私の味方だ。
夜目の利き具合は猫譲りの人外レベル。
〝ご飯〟は銃かなにかを打っているみたいだけど、闇雲に打っても私には当たらない。
ぷしゅ、ぷしゅと消音器の音が響く。
「ちょこまかとっ!」
背後から近寄る。
思い切って飛びかかり、爪を眼にえぐりこむ。
「がああああっ!?」
視界を奪ったところで首に牙を突き刺す。
頸動脈を切るように食いちぎる。
「っ、ご……ぷ」
〝ご飯〟は痙攣しながら倒れ伏す。
血だまりが土に広がって、染み込んでゆく。
【あぁ、もったいない】
手のひらに収まった眼球を口に含む。
噛み潰すと水晶体が砕ける音がした。
【さぁ、ごはんだごはんだ】
服をはがして、肉を露出させる。
いただきます。
私は馬乗りになって食べ始めた。
ぶち。
もぐもぐ。
ぷちぷち。
ぶしゃっ。
ごくん。
ばりばり。
ばき。
ばくばく。
ぺろん。
【ごちそうさまぁ】
あぁ、お腹いっぱい。
残っちゃったのは、面倒だけどしっかり埋めないと。
膨れたお腹で、ちょっとのんびりしたいけど、さっさと片づけしよう。
【ん、しょ】
危ない研究所の人間だ。
警察とかにばれたら不味いだろうから、人ひとりいなくなっても探したりはしない。
あそこはそういうところだ。
いつも失敗作の処分をしていた。
狂人と化物の世界。
人の命なんて、なによりも軽い。
【できた……はぁ、疲れた】
さて、これでしばらくは大丈夫だろう。
血濡れの服を脱いで、〝ご飯〟が着ていた服を着る。
少し大きいけど、たぶん平気。
数日分のお肉もとってある。
元の服にくるんで、袋に入れる。
【腐る前に食べきらないとなぁ】
この身体は少しくらい腐ったものでも平気だけど。
それに、お肉は腐る寸前が一番美味しいとも言うし……。
ゆっくり味わうことにしようかな。
〝ご飯〟が殺されたのは、いつ気がつくだろう。
次に送られてくる〝ご飯〟は美味しいといいなぁ。
【にゃぉん】
あぁ、男さん食べたいなぁ。
今日は早めだけどここまで
さてこのあと、いったいどうなるんでしょう
私も分かりません(おい)
猫耳【さて、今日のごはんー】ズルズル
肉「」
猫耳【よいしょっと……ふぅ、重たい】
猫耳【月夜の晩にー、ごちそうお肉ー】ブチブチ
猫耳【グラスに真っ赤な液体そそぎー】ドポドポ
猫耳【…………】ペロ
猫耳【ちょっとくどいなぁ……不健康】
猫耳【健康診断に引っかかるだろうね、これは】
猫耳【まぁいいや、それじゃいただきまーす】アーン
追手「手こずらせやがって、猫畜生が」ジャキ
猫耳【っ!?】
猫耳(しまっ……別の、っ……)
追手「大人しくしろ!」
パァン!
――――――
――――
――
猫耳【あ、ぐ……はぁ、はぁ】ポタポタ
追手「」
猫耳【うぅ……肩が……】
猫耳【……弾は貫通したみたいだけど】
猫耳【くそぅ……】
猫耳【……まだ別のがいるかもしれない】
猫耳【とにかく……逃げないと】フラフラ
猫耳【……ぁ】
猫耳【……血は、そんなに出てないけど】
猫耳【痛みが……だんだん……】ズキズキ
猫耳【ふぅ……はぁ……】
猫耳【このまま……死ぬのかな】
猫耳【失血死しなくても、傷が膿んだり、壊疽したり……】
猫耳【化物の最後には……ふさわしいかな】
猫耳【ちょっと……疲れたなぁ】
猫耳【ふぅ】ストン
猫耳【少し、寝るだけ……寝るだけ……】
猫耳【男さんに……なでなでしてもらいたいなぁ……】
猫耳【あったかかったなぁ……】
猫耳【……ふ】カクン
「――!」
「――ちゃん! どうしよ――いと!」
「――き――起きて猫――!」
「――そ、傷が――! ――!」
猫耳(ゆらゆら……揺れてる)
猫耳(運ばれてる? どこかに向かってるのかな……地獄?)
猫耳(地獄への旅路は案外悪くないね)パチ
男「よいしょっと」
猫耳(あれぇ? 男さんに担がれてる?)
猫耳(男さんだ……美味しそう)
猫耳(そういえば結局ご飯は食べられなかったし……)
猫耳(ちょっとくらいいいかな?)
猫耳(いただきまーす)ガブ
男「痛ってぇっ!!」
猫耳「あれ!? 本物!?」
男「本物ってなんだよ! って起きたのか猫耳ちゃん!」
猫耳「あ、はい、おはようございます男さん」
男「お、おはよう」
男「えっと……怪我は大丈夫?」
猫耳「多分、動脈は傷ついてないみたいですし、きちんと処置すれば命に別条はないかと」
男「そうじゃなくて、痛いだろ」
猫耳「それも平気です、慣れてますから〝この程度〟」
男「…………」ギリ
猫耳(ありがとうございます、男さん)
男「病院とかは……どうする?」
猫耳「私は……」
男「お金は、って……保険証無いのか、まぁどうにかして」
男「今は安静にして、猫耳とかを隠す方法を考えないと」
男「えっと、それと――」
猫耳「やめてくださいよ」ギュゥ
男「え?」
猫耳「やめてください、やめてよ……」
猫耳「なんで私に優しくするの……」
猫耳「私は化け物なの、言ったでしょう?」
男「いや、それに対する答えはもう」
猫耳「違う、違うの! 私は!」
猫耳「……男さんも見たでしょ、私が手を食べてたの」
猫耳「化物なの! どうあってもやめられない、化け物なんだよ!」
猫耳「私は! 人を食べるんだよ!」
男「猫耳ちゃん」
猫耳「はなしてっ」バッ
男「あ、ちょ」
猫耳「……ふ、ぅ」フラ
男「猫耳ちゃん!」
猫耳「触らないで……」
猫耳「病院もいいです、なにもいらない」
猫耳「私に優しくするのはやめてください」
猫耳「男さんからもらった恩を忘れて飛び出して」
猫耳「人を殺して、食べている私に! どうして優しくする意味があるんですか!」
猫耳「五人です。五人殺しました、五人食べました」
猫耳「抑えきれない食人衝動は男さんに対しても例外ではありませんから」
猫耳「私は今男さんに、美味しそう、と感じているんです」
猫耳「気持ち悪いでしょう? 怖いでしょう! 嫌いになったでしょう!?」
猫耳「私は化物なんだ! 人喰なんだ!」
猫耳「私から離れろ、もう二度と顔を見せるなぁ!」
男「前も言ったけどさ」
男「泣くくらいなら、そんなこと言うなって」ナデナデ
猫耳「狂ってます、男さんは、天敵にどうして優しくできるんですか?」
男「平和ボケの日本人なめんな、それに女の子は助ける主義なんだよ」
猫耳「あたまおかしいです」
男「なんとでも言いなよ、猫耳ちゃんは俺が助けるんだから」
猫耳「ねぇ、男さん」
猫耳「大好きです、あなたが大好きです」
猫耳「心の底から、嘘偽りなくあなたが大好きです」
男「俺も猫耳ちゃんが好きだよ」
猫耳「嬉しいです」
男「病院いくぞ、銃の傷なんてほっといたらヤバ過ぎだ」
猫耳「私、お金無いです……」
男「俺がどうにかする、足りない分は親父に土下座してでも借りる」
猫耳「そんな……」
男「つべこべ言わない」ペシ
猫耳「にゃう……」
今日はここまでー
和解? さて?
実際、全額負担で銃創っていくらくらいなんでしょうね
まぁ、そこはご都合主義で
猫耳「男さん……私……」
猫耳「もうっ……がまんできないの……」ハァハァ
男「これが欲しいのか」
猫耳「そう、それが欲しいのっ」
男「……しょうがないな、ちょっとだけだぞ」スッ
猫耳「やったぁ!」
猫耳「いただきますっ」ガブ
男「っ」ブツン
猫耳「おいひぃ……」チュゥチュゥ
猫耳「……はむ」
男「おーい、血だけだからな?」
猫耳「分かってるよ……」
猫耳「でも」ジュル
男「はいはい落ち着こうか、噛み切ったら怒るからな」
猫耳「はぁい」
猫耳「物足りないなぁ」チュポン
猫耳(結局)
猫耳(私は男さんと一緒に住んでいる)
猫耳(食人衝動は、男さんの血を定期的に飲むことで無理矢理抑えている)
猫耳(おかげで貧血だって男さんは文句言ってたけど)
男「なんか、吸血鬼みたいだな」
猫耳「お望みとあらば首に噛みついたげるよ?」
男「なんか死の危険を感じるからだめ」
猫耳「ちぇー」
猫耳「やっぱり物足りない」
男「えー、これ以上吸われるとふらつくんだけど」
猫耳「うん、だから」ポス
猫耳「代わりに、ぎゅーっとしてて」
男「……はいはい」ギュ
猫耳「男さんはあったかいね」
男「お前の方も体温高いぜ?」
猫耳「ねこですから」
猫耳「男さん」ハムハム
男「甘噛するな……で、なに?」
猫耳「女の子と抱き合ってるのに平然としないでほしい」
男「もう慣れた」
猫耳「酷いっ! あの初心だったころの男さんはどこへ!」
男「だって何かと抱きついてくるから」
猫耳「甘えたい盛りの女の子なんです」
男「甘え過ぎ」
猫耳「好きなんですもん」
猫耳「男さん」
男「何だよ」
猫耳「今夜も……愛してくれないの?」
男「えっちなのは18になってからです」
猫耳「据え膳なのに! いくじなし! それでも男か!」
男「何とでもいいなさい」
猫耳「むぅ……」
猫耳「貞操観念堅過ぎ、今時18って遅いのに」
男「俺は子供には手を出さないの」
猫耳「ちゅーしたくせに」
男「キスはいいの」
猫耳「こうなったら、力づくで……」
男「んなことしたら三日間肉抜き」
猫耳「絶対しません!」
男「よろしい」
猫耳「はぁ……」
男「まったく、後3年だろ?」
猫耳「3年〝も〟先なんです」
男「黙れ脳内ピンク、そんなとこまで獣じゃなくていいだろうが」
猫耳「男さんは思いが通じ合ってから意地悪になった気がする」
猫耳「むかつく」ガブ
男「いってぇ! 何処噛んでんだ!」
猫耳「肩ー、ここの血は美味しいね、腕より新鮮」コクコク
男「そんな所の傷ふさがりにくそうじゃねぇか!」
猫耳「舐めれば治る」ペロペロ
男「な訳あるか!」
猫耳「もう、うるさい!」
猫耳「んっ」チュ
男「っ!?」
男「……しょっぱい」
猫耳「血の味だよ」
男「よくこんなの飲めるな」
猫耳「男さんのを飲みたくて飲みたくて身体が疼くの」
男「そこまで愛されると男冥利に尽きます」
猫耳「んへへ、良かった」
猫耳「ねぇ男さん」
男「猫耳ちゃん」
猫耳少女「大好きだよ」
おしまい
おしまい
ご閲覧ありがとうございました
猫耳は世界を救う
私はそう思います
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おぅふ・・・ドストライク