女子高生「もしかして……一昔前に流行った異世界転生!? 私、ひょっとして死んだの……?」
表参道を散歩していたら、時空が歪んで渦に吸い込まれた。
目が覚めたら、見知らぬ雑木林で寝転んでいたというわけだ。
頭はズキズキ痛むし、お腹もペコペコ。
女子高生「どこかで休まなきゃ……」
???「君、大丈夫かい?」
女子高生「ひゃっ!」
後ろからいきなり声をかけられた。
振り向くと、そこにはーーー
>>3がいた。
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喋るキノコ
女子高生「き……キノコがしゃべったーッ!?」
喋るキノコ「ははは、喋るキノコがそんなに珍しいカイ?」
そのキノコは……私が図鑑で見ていたずんぐりむっくりなヤツとは違った。
スラッとして、背が高くて、藤色の着流しが素敵で、何より信じられないほどイケメンで―――
喋るキノコ「見惚れちゃダメだよ、お嬢さん」
女子高生「はうッ! す、すみましぇん……」
喋るキノコ「さて、話を始める前に君の名前を聞いておこうか」
女子高生「私の、名前……?」
女子高生の名前>>5
相葉七海(あいば ななみ)
七海「相葉七海(あいば・ななみ)です」
喋るキノコ「ほぉ~、いいね。君のことは七海、と呼ぼう。いいね? 七海」ズイ
七海(ひゃん/// そんな近くに寄らないで……そんなに寄られたら私……///)ドキドキ
喋るキノコ「僕のキノコ、食べてみる?」
七海「す、少しだけなら……あううぅ」カアァ
???「おい! そこの女! キノコ様にちょっかい出してんじゃあねーぜ!」
七海「えッ、誰!?」
止めに入ったやつ
安価下
1 ナメクジ
2 なすび
3 梨
4 自由安価
なすび「このお方をどなたと心得る! ベジタブル・キングダムの第一皇子なのだぞ」
割り込んできたのは、ちょっぴり強引な色黒のイケメン。
喋るキノコ「よせ、なすび。無礼を働いたのは僕だ」
なすび「しかし、それでは護衛の意味が……!」
喋るキノコ「彼女に敵意は見られない。それに、か弱い女性を痛めつけるのは趣味ではないしね」
なすび「殿下が仰せならば。女、命拾いしたな。殿下の寛大な御心に感謝しろ」
ナスがキノコの護衛をしているなんて、不思議だなと私は思った。
そもそもキノコは菌類なわけで、どうして菌が野菜の国の皇子様なのかも―――
喋るキノコ「父上(粘菌)が陛下と意気投合して、勝手に決めたのだ。まったく、つくづく迷惑な話さ」
七海「あの、私……」
なすび「おい、貴様! 殿下に気安く話しかけるんじゃあないッ!」
喋るキノコ「七海、君の言いたいことは分かるよ」
七海「私、家に帰らなくちゃいけなくて。表参道を歩いていたらいきなり」
喋るキノコ「そうだな、まずは僕の家に招待しよう。ヤ・オヤという名の村なのだがね」
七海「え!?」
なすび「オラ、ついてこい。念のため、貴様の手首を蔓で拘束させてもらうぞ」シュルシュル
七海「つ、通じてな~い!」
こうして、不思議ながらも甘酸っぱい私の異世界ライフが始まりました。
あの時の私はまだ、自分が恐ろしい運命に巻き込まれたことなど、露も知らなかったのです……。
雑木林を抜け、灰色の荒地を越え、山を登り、谷を渡り、辿り着いた湖の孤島。
小さな修道院が建っていた。
七海「わぁ……!」
クリーム色の外壁に、蔦が絡みついている。
もう何百年も経っていそうな、年季の入った修道院だ。
遠くからだと煙突のように見えた物は、ステンドグラスの屋根だった。
喋るキノコ「ここが僕達の最後の砦。ヤ・オヤ修道院。昔は500玉のキャベツがアンティオキア神学を学んでいたけどね」
七海「学んで『いた』?」
なすび「殺されたんだよ、全員……!」
なすびさんが強く唇を噛みしめる。
キノコさんの瞳にも、翳が射した。
喋るキノコ「その話はやめるんだ、なすび。宴の席に、血はいらない」
なすび「クッ……!」
七海「あの、気に障ったのなら謝ります」
なすび「貴様の謝罪に何の価値があんだよ」
なすび「何も知らねぇくせに……ふざけんな」
七海「あ、なすびさん……!」
たかが野菜なのに、胸が締めつけられる。
なすびさんの表情が、とても寂しそうだったから。とても悲しそうだったから。
あの人は、ずっと孤独に生きてきたんだ。
キノコさんのように頼れる人はいても、真に心を開いて話せるパートナーが、いなかったんだ。
ー修道院の屋根・夜ー
なすび「殿下はあの女にお熱だし、肝心の野菜男子は思うように集まらなねぇし、気に食わないことばかりだ」
七海「なすびさん、そこにいるんですか?」
なすび「ああ? 女、貴様どうやってここまで登ってきたんだ。10mはあるぞ」
七海「気合い、ですよ! 気合いがあれば、大抵の困難は乗り越えられるんです!」
なすび「ハッ……イカれてるのか? ご苦労なことだ、そこは評価してやる。けどよ、貴様と仲良くやったりはしねぇぞ」
なすび「むしろ逆。貴様が俺らの大将に妙な真似しないか、監視させてもらうからな」
七海「昼間の件、本当に申し訳ございませんでした。配慮が足らなくて、不快な思いをさせてしまって……」
なすび「この修道院な、俺もいたんだよ」
七海「え?」
なすび「キャベツみたいに僧侶やってたわけじゃねぇけどよ。トマトと一緒に、朝も昼も夜も身を粉にして働いてた」
働かなきゃ、叩き出されるからな。
そう、なすびさんはつけ加えた。
なすび「孤児ってのは便利なモンでよ。どれだけ酷い扱いを受けても、我が子のため殴り込む親が誰もいねぇんだ」
なすび「味方はどこにもいなかった。レッドキャベツ司教も、権力に靡く最低な奴だった。それでも俺とトマトは、働き続けたんだ。いつか、2人で日の目を見るために」
七海(なすびさん……)
なすび「そんで『奴ら』が来た」
七海「奴ら?」
なすび「俺とトマトが支えてきた平和な生活は、『奴ら』の手で焼き尽くされた」
なすび「キャベツ達は死に、相棒だったトマトも崩落した天井の下敷きになって死んだ」
七海「……」
なすび「生きる場所も盟友も失い、俺は当て所なくさまよった。盗みも殺しもやった。生きるためだ」
なすび「そんな無様な俺に手を差し伸べてくれたのが、喋るキノコ殿下だったんだ」
なすび「貴様みたいな、どこの馬の骨とも知れぬ野菜が、関わっていい相手じゃあねぇのさ。分かったか」
七海「……分かるよ」
なすび「なら詫び入れて消えろ」
七海「なすびさんの気持ち、分かるよ。私も庭で栽培してたオクラが枯れちゃった時、同じ気持ちだったから……」
なすびさんの目の色が変わった。
なすび「何!? 貴様、野菜男子と一緒に暮らし、その死まで看取ったというのか!?」
七海(野菜男子? 勘違いしてるみたいだけど、え~い! このまま進めちゃえ)
七海「オクラさんは、死に際に笑って言ったんだ。お前と共に歩めて良かった。お前は最高のパートナーだって」
なすび「貴様、あのオクラと……」
七海「私も、オクラさんのことは大切に思ってた。だから……」
なすび「もういい」
七海「あ、あの、私……」
似た者同士だから、パートナーになろう。
そんなこと、言い出せる空気じゃなかった。
なすび「自分の部屋に戻って寝ろ。明日も早いんだ。お前の処遇についても、決めなくちゃならない」
七海「なすびさん、ありがとうございます! よろしくお願いします!」
そっけない答えだけど、なすびさんは私を受け入れてくれたのかな。ちょっとだけ、嬉しかった。
新たな野菜男子の提示!
野菜の種類
ランク
見た目
性格
安価下
翌朝、私は食堂に呼び出された。
喋るキノコ「おはよう、よく眠れたかい?」
七海「ええ、おかげさまで」
喋るキノコ「この修道院では、色々な味の液体肥料が楽しめる。一本どう? マカダミアナッツ味の肥料だけど」
七海「え、遠慮します……」
喋るキノコ「ふぅん。じゃ、いきなり本題に入るよ。君が持つ異能力についての話だ」
七海「異能力?」
喋るキノコ「うん。といっても夜明け前の話だし、寝ている間に発現したから知らないのも、無理もないよね」
喋るキノコ「実際に見てもらった方が早いかな」
キノコさんがパチンと指を鳴らすとーーー
赤銅色の甲冑を着込んだイケメンが、不機嫌そうな表情で入ってきた。
ゴボウ「……」
喋るキノコ「紹介しよう。彼はゴボウ。昨夜、君が産んだ新たな野菜男子(ベジタブル・ウォーリアー)だよ」
七海「私が産んだ? 野菜男子?」
喋るキノコ「僕も驚いたよ。新たな野菜男子を生み出す能力を持つのは君ひとりだけだ」
七海「どういうことですか?」
喋るキノコ「昨晩、君の全身が眩い光に包まれていてね。そのまま観察していたら、お腹からゴボウ君が出てきたのさ」
七海「え、ええぇ~!?」
なすび「よう女王蜂。お前の役目、どうやら決まったみたいだぜ」
喋るキノコ「七海、君には後方支援を頼みたい。自分のペースでいいから、質の高い野菜男子を産んでいってほしいんだ」
七海(つ、つまり……ソシャゲでいうガチャってこと!? 私自身がガチャになるなんて、聞いてないよ~!)
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