瑞鶴「私は、あんたに憧れられるような艦じゃない」 (90)


※大戦末期のお話です。
※史実とは異なる場合があります。
※シリアス基調ですがコメディもあります。
※初投稿なので不慣れな点が多いです。助けてください。


それでも大丈夫な方よろしくお願いします┏○



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雨。
鎮守府の片隅にある部屋で私は、しとしとと降り続く雨を窓越しに見ていた。

「また煙草?」

聞きなれた声が聞こえる。

「……そうよ」

「あんたね……無理してそんなもの吸わなくてもいいんじゃない?」

この声の主は瑞鳳。私にとって……大事な仲間だ。


「うるさいわね。あんたも吸えば?」

「わたしはエンリョ。 ……ところでさ最近できた後輩のことなんだけど」

そう言って、扉の方を見る。……あぁまたか。

「あんた、名前なんだっけ」

「は、はいっ!?」

呼ばれるとは思わなかったのだろう、すっとんきょうな返事を返す。


「葛城ちゃんよ。 あんたと話したいって言ってしょうがないの」

「私に?」

「は、はい!」

目をキラキラ輝かせながら返事をする。
…私はこの子が苦手だ。


「あ、憧れの瑞鶴さんにお話がしたく…」

「……私に、ね」

「は、はい!!瑞鶴先輩と言えば軍関係者でなくても知らない人はいないくらい!!」

聞きたくない。

「お話には聞いています!!一航戦として前線を張り」

やめて。

「幸運艦として名も高く、数々の作戦をーー」

「違う!!!!」



つい大声で叫ぶ。
呆然とする葛城。 それを見て我に返る。

「…わたしは」



「わたしは、あんたに憧れられるような艦じゃない――」


――――
――――

「あの子がごめんね?」

「い、いえ」

廊下を歩きながら、申し訳なさそうに瑞鳳さんが口を開く。

「あ、あの……」

「なぁに?」

「わたし…何か無礼をしてしまったのでしょうか…」


「うーん……、うん。葛城ちゃんは悪くないよ」

「え……。で、でも」

「いーの、今はそっとしといてあげて、ね?」

「は、はい」

わたしが悪くないはずがない。瑞鶴先輩のあの形相…見たことも聞いたこともなかった。


しばらく沈黙が続いた。足音と雨音だけが廊下を響く。

「……あの子はね、変わっちゃったんだ」

ポツリ、と。こぼすように瑞鳳さんの口が開いた。

「え?」

「葛城ちゃんは知ってるかな、瑞鶴はね。昔は、第五航空戦隊に所属してたんだ」

「もちろん知ってます」

忘れるはずがない、3年前民間人のわたしを助けてくれたのは他でもない。
瑞鶴先輩だ。


「その頃の瑞鶴はね、無邪気で、明るくて――。なにかする度に先輩に怒られてばっかりだったんだよ?」

「へー、そうなんですね」

瑞鳳さんが楽しそうに話す。無邪気に笑う瑞鳳さんについ見とれてしまう。
いやいや今は違う…。
……わたしの知っている瑞鶴先輩とはイメージが程遠い。
今の瑞鶴先輩は、冷静で、落ち着いていて、大人で、……どこか寂しそうで。


「――でもね、2年前を境に…いや、正確には半年前、かな」

「…それって」

「んじゃ、私はこっちだから。話に付き合わせちゃってごめんね葛城ちゃん」

「い、いえそんなこと!」

「今度またお話しよ?その時は間宮で!!」

「ぜ、是非!!」

約束だよー、と笑顔で走っていく瑞鳳さん。
新兵のわたしが言うのは失礼だが、可愛い人だな、と思う。

……ふと、外を見る。
雨は窓を激しく叩いていた。


今日はここまでです。

瑞鶴が好きすぎて書きました…



コメントありがとうございます!少し投下します。



「はあ……」

布団におもむろに倒れ込む。
私は何をしているんだろう。
葛城にあたり散らかす自分が嫌になる。

「私は……」



――――
――――

1週間前。

「新入り?」

「そうだ。新しい正規空母が3隻うちに来ることになった」

「こんな最前線に新しい艦を?提督さん本気なの?」

「ああ、本気だ」

「ちょっと…そんなの、死にに来るようなもんじゃない!」

「ちょっと瑞鶴!!」

瑞鳳が口を挟む。







「いい、瑞鳳。……お前のいうことも最もだ。私も乗り気ではないのだがな。急遽手配されたため……訓練も終わったばかりの娘達だ」

「……そんなの無駄死にになるだけじゃない」

「そこでだ、瑞鶴、瑞鳳。」

「なによ?」「はい」

「お前達が稽古をつけてやって欲しいんだ」

「……私達が?」

「ああ、彼女達を助けるためにも」



――――
――――

帰り道。

「……」

「そんな怖い顔しなくてもいいじゃない」

「別に」

「でもさ、瑞鶴もそういう立場になってきたわけだねぇ」

「……私は嫌よ。足でまといになるだけだわ」

「ふふっ……」

「何がおかしいのよ」

「いや?あんた加賀に似てきたなって、さ」

「はあ?何を言って……」

「そのままの意味よ?」






―――
―――

「……似てきた、かあ」


布団に倒れたまま、横目で写真を見る。
そこにいる加賀さんはいつもの通り、ぶっきらぼうな顔をしていた。

「加賀さん……皆。私さ、どうしたらいいのかなあ」

もちろん返事は帰ってこない。けど、それでも何かにすがりたかった。




写真の中のみんなは優しい笑顔で私を見ていた。
皆は……、皆は私を見ててくれてるのかな。

……。
ダメだ。

これ以上考えちゃ。
私が泣いてちゃダメ。弱い私が邪魔をする。
こんな顔みんなには見せれない。


その時、ノックが響いた。

「秋月です!瑞鶴さん今、大丈夫ですか?」

最悪のタイミングだなあ。

「うん、どうした?」

戸が開く。幸いにも灯りは暗く、顔までは伺えないだろう。

「失礼します。瑞鶴さん、ご飯ができましたのでお呼びにまいりました!!」

「なんだそんなことね。分かったわ、すぐ行くわ」

「はい!今日は私も手伝ったんですよ!」

「それは楽しみね、何かなー?」

「ふふふ、お楽しみですよ」



――秋月、この娘も半年前の戦いで大切な人を無くした。
瑞鳳も、そうだ。
それでも、暗い顔をひとつもせず、いつも明るく周りを支えてくれている。
それなのに、私はどうだ?

「……何してんだろ」

「? 何か言いました?」

「ううん、何でもない。ほら、いこ?」

「はい!」

私は……。
皆……。


以上です。また溜まり次第投下します。

このSSまとめへのコメント

1 :  レイテ   2018年08月03日 (金) 18:38:31   ID: U4zojqVf

レイテ作戦、エンガノ岬沖海戦で『瑞鶴』等、沈没、蛸壺屋『TK』同人誌『艦娘、太平洋戦争』シリーズ、7巻『レイテに散る。』メロンブックス等で予約受付中

2 :  SS好きの774さん   2018年08月05日 (日) 13:38:23   ID: rmXJZWdE

こいつゲームやったことあんのか?

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