【艦これ】鳳翔「空母達のだらだらとした居間談義」 (43)


空母達がだらだらとくつろぐお話です。

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ザァァァァ………

瑞鶴「雨、今日も止まないなー」 (瑞鶴、窓ガラスから雨空を見上げている)


瑞鶴「昨日も降ってたし、今日は止むと思ってたんだけど」

瑞鶴「加賀さぁーん、やっぱし演習中止ですかねー」

(とある一室の居間にて、加賀、赤城がちゃぶ台を囲んで座っている。鳳翔、ふたりからすこし離れた所で編み物をしている)

(赤城、せんべいをほおばりながらテレビショッピングを眺めている)


『つづいての商品はこちらぁ!』

加賀「そうね」 (頬杖をついて、退屈そうにテレビを眺めている)

瑞鶴「やっぱそうかー」

瑞鶴「どっこいしょ」 (加賀の隣に座る)

瑞鶴「ふいー」

加賀「止めなさい、瑞鶴。年頃の娘がみっともない」


瑞鶴「うるさいなー、別にいいじゃないですかこのくらい」

加賀「品がないと言っているのよ。もっとおしとやかになさい」

瑞鶴「いまどきの女子高生だって、おっさんくさい座り方くらいしてますよ」

加賀「そういう問題じゃないでしょう。あなたは仮にも空母なのですから、恥の無い行儀作法を心掛けるようにと、いつもいつも………」

瑞鶴「はいはい、はいはーい。つぎから気をつけますー」

瑞鶴「もー、頭が固いんだから」

加賀「瑞鶴」

瑞鶴「わかりましたって、ごめんなさい、ごめんなさいー!」


『なななんとぉ!こちらの商品に付属が三点つきまして、お値段十万九千円!十万九千円ですよぉぉー!』

赤城「ふふふ」パリパリ

瑞鶴「おもしろいですか、この番組」

赤城「ええ、そこそこ」

瑞鶴「わかんないなー、通販見たって何もおもしろいことないでしょ。チャンネル変えましょうよ」

赤城「いいですよ」パリパリ


加賀「赤城さん、食べかすをポロポロこぼしていますよ」

赤城「あら、これはいけない」ヒョイパク

加賀「赤城さん!落ちた食べ物を口に入れないっていつも言ってるじゃありませんか!」

赤城「すみません、でもおいしいですよ?」

加賀「はぁ………まったく」

瑞鶴「そこらへんが俗に言う一航戦の誇りなんですかね」ピッピッ (ザッピングをしている)

加賀「茶化さないの」

瑞鶴「へいへい」ピッピッ


ザァァァァ…………

加賀「…………」 (窓ガラスにあたる雨粒を眺めている)

加賀「雨………止みそうにありませんね」

赤城「そうですねぇ」ビッ (せんべんの袋を開ける)

加賀「…………まだ食べるんですか?」

赤城「いやぁ~、お腹がすきまして」

瑞鶴「ダメだ、何にもおもしろそうなのやってないや」ポイ (リモコンを投げそのまま畳に上半身を投げ出す)


ザァァァァ・・・・・・

(間、誰もしゃべらない。鳳翔は編み物をつづけている)

瑞鶴「加賀さん、なんかおもしろい話してくださいよ」

加賀「嫌よ」

瑞鶴「ぶーもったいつけて。どうせできないくせに」

加賀「なら聞かないで頂戴」

瑞鶴「…………………」

加賀「…………………」

赤城「…………………」パリパリ

(再び、間。鳳翔、編み物を続けている)


瑞鶴「………………あー!ひまひまひまひまぁー!!」ガバッ (突如、起き上がる)

加賀「!?………急に大声をあげないで。驚きました」

瑞鶴「なんか話してくださいよー、退屈で死にそうなんですー」

加賀「…………そうね。では、こんな話を知っているかしら。おとといに私と赤城さんが浴場で………」

瑞鶴「作業中の妖精さんを、赤城さんがまんじゅうと間違えて食べた話でしょ?もうみんな知ってますよー」

加賀「なっ………」

瑞鶴「別にそこまで珍しい話でもないですし」 (ちゃぶ台にだらしなく寝そべっている)

赤城「あれはよかった」

加賀「あなたが、話をしろって、言ったから……………」 (加賀、すねる)


瑞鶴「赤城さんは何でも口に入れすぎですよ。園児じゃないんだから」

赤城「食べ物かと思うと、つい…………」

瑞鶴「妖精さんを食べ物と見間違えますかね…………」

赤城「まるまるっとしたものを見ると、どうしても、こう、反射的に食欲がですね」

瑞鶴「変ですから、それ」

瑞鶴「どうして同じ一航戦なのに、加賀さんと赤城さんはこうも違うんでしょうねー、ねえ加賀さん」

瑞鶴「加賀さん?」

加賀「………」 (すねている)


ガラガラ (戸の開く音。つづいて、飛龍、蒼龍、翔鶴が部屋に入ってくる)

蒼龍「あ、やっぱりここにいた」

飛龍「おじゃましまーす」

翔鶴「みなさん、こんにちは」

瑞鶴「あー翔鶴ねえ」

翔鶴「みっともないわよ、机の上に寝そべったりして」

瑞鶴「翔鶴ねえも加賀さんみたいなこと言うー」

蒼龍「わたし赤城さんのとなりー!」

飛龍「瑞鶴、もちょっと左にずれてくれる?」

(三人、ちゃぶ台を囲むように座る)


翔鶴「加賀さん、提督より今日の演習は明日に延期とのことです」

加賀「そう………………」

翔鶴「ど、どうなさったんですか?具合でも……」

加賀「いえ、なんでもないわ…………」

翔鶴「………………」

蒼龍「テレビ、テレビ~、飛龍~リモコンとって~」

飛龍「はいはい、ってなんであんなとこに投げ出してあるのよ」


翔鶴「………………ねえ、瑞鶴」ヒソヒソ (翔鶴、コソコソと瑞鶴に耳打ちする)

瑞鶴「んあ?なに?」

翔鶴「………………加賀さん、いったいどうしたの?元気ないみたいだけど………」

加賀「………………」

瑞鶴「あー、加賀さんの話おもしろくないって言ったらすねちゃった」

翔鶴「……………なにやってるのよ!あなたは!」

蒼龍「ん~おもしろそうな番組やってないな~、通販でいっか」


『つづいての商品はぁ!?こここちらぁぁあー!!』

蒼龍「あはは、よく通る声してるよね、この人」

飛龍「だねー」 (スマホをいじっている)

翔鶴「………………加賀さんが怒ったらどうするの!」ヒソヒソ

瑞鶴「加賀さんはいつも怒ってるじゃん」

蒼龍「そうだ、飛龍知ってる?」

飛龍「ん~?」ポチポチ


蒼龍「おとといの赤城さんの話。めっちゃおもしろいよ」

加賀「……………」ピクッ (わずかに身体を震わせる)

飛龍「え~?なにそれ、知らない」 (スマホをしまう)

蒼龍「知らないの~?みんなの間で話題だよ、私も暁から聞いたんだけどねー、これがまた傑作………」

加賀「私が話します」ズイッ

蒼龍「おおぉう…………ど、どうしたんですか加賀さん…………そんなに身を乗り出して」

加賀「蒼龍、私が話します」

蒼龍「え、ええ、いいですけど………」

翔鶴「………加賀さんが元気になったわ!瑞鶴、しっかり相づちを打たないと!」ヒソヒソ

瑞鶴「いひっ、ダメだ。笑いそう」 (ちゃぶ台に突っ伏して笑いをこらえる。肩が震えている)


加賀「あれは、まだ雨も降らず空が澄み渡っていた、おとといの出来事です」

翔鶴「モノローグから始めるのですね!(相づち、相づちを打たなければ!)」

瑞鶴「………っ………っ……!」 (懸命に笑いをこらえている)

飛龍「ほうほう」


加賀「その日は私も、何か肌に来るものを感じていました。そう、ちょうど戦場で感じるピリッとしたあの緊張感に似て異なるものです」

翔鶴「結局、違うものなんですね!」

加賀「違和感を感じていた私は、どこか心の奥底で不信感を抱きながらも、海域から帰投し、なにはともあれ、まずは食堂に向かいドンぶりで白ご飯を七杯いただきました」

翔鶴「ご飯はしっかり食べたんですね!」

瑞鶴「………しょっ、しょうかくっ、ねえっ…………」 (激しく肩がゆれる)


加賀「満足した私達はお箸を置き、ゆっくりと手を合わせ、ごちそうさまでしたと呟き、それから熱いお茶を一杯いただきました」

翔鶴「いらない描写ですね!」

加賀「一服ついた私達が向かった先はそう、浴場です。あいも付きまとう不信感を振り切るかのように、私は足早に………」

蒼龍「赤城さーん、おせんべいひとつくださいなー」

加賀「蒼龍!!話を聞きなさい!!」

蒼龍「ひえっ……………で、でも私、オチ知ってますし………」

加賀「いいから黙って聞くのよ」

蒼龍「はい……………」

瑞鶴「………っ!!………!!っ」バンバン (ちゃぶ台を叩いている)

翔鶴「いよっ!加賀っ!」


加賀「んんっ………それから浴場へとついた私と赤城さんは、滑らかな肌に沿うようにゆっくりと袴を脱ぎ、洗濯籠に入れました」

加賀「そこで!再びあのピリッとした何かが肌を走りました!」

加賀「私が振り返るとそこにはっ!」

加賀「赤城さんが妖精さんをくわえていたのです!」

加賀「どうですか、飛龍!おもしろいでしょう!」




(間。鳳翔、編み物をしている)





加賀「………………どうだったかしら」

飛龍「………えっ?あっ、えーと…………その…………」

飛龍「怪談ですか………?」

加賀「なっ…………」

瑞鶴「あっはっはっはっはっはっ!!!ダメ!!もう無理!!あはははっ!!」


加賀「………笑い話だったのだけれども」

飛龍「笑い話ぃ!?どこで笑えばよかったんですか!?」

加賀「なぁっ…………」

蒼龍「あー………いまの話ね、赤城さんが妖精さんをまんじゅうと間違えて食べちゃったんだって」

赤城「かたじけないです」

飛龍「あ、あぁー、なるほど………怪談にしか聞こえなかった……」

加賀「…………」

翔鶴「すてきな教訓ありがとうございました!」


瑞鶴「イッヒヒヒヒヒ!!ひひひひっ!!!」バンバン

加賀「…………翔鶴」

翔鶴「はっ、はい!」

加賀「…………私、あなたに何かしたかしら」

翔鶴「えっ!?とくになにも!」

加賀「…………そう」

瑞鶴「くくくくくっ!!ひひひっ!!お、おなか!おなかいたい、いひひひ!!」


(間)

瑞鶴「あー………笑った笑った、腹筋よじれるかと思った」

翔鶴「笑い過ぎよ瑞鶴………加賀さん、またすねちゃったじゃない」

加賀「………」

瑞鶴「だってぇー、話下手すぎるだもん。なにあのいらない描写、あっ、だめだ、また笑いそう」

翔鶴「失礼でしょ!」

瑞鶴「翔鶴ねえもけっこう失礼だったけどねー」


赤城「んー」ボリボリ

蒼龍「赤城さん、いっつも何か食べてますよねー」

赤城「そうですかね」ボリボリ

蒼龍「太らないんですかー?私、最近ちょっとやばいんですよー」

赤城「んーそういえば、あんまり太りませんねー」ビッ (ふたたび袋を開ける)

蒼龍「えーうらやましいなー、やっぱり何か太らない秘訣とかあるんですか?」

赤城「秘訣ですか?そうですねぇ、うーん」


赤城「あぁ、ありますね。秘訣」

蒼龍「えっ!本当ですか?教えてくださいよー!」

飛龍「わたしも気になるー」

赤城「ふっふっふっ、いいでしょう。お教えいたします」

瑞鶴「どうせあんまり意味ないこと言うんだろうなー」

赤城「太らない秘訣、それはですね!」


赤城「食べたい物を食べたいときに食べる!これにつきます!」

蒼龍「でぇー、なんですかそれー」

赤城「究極の秘訣ですよ」ボリボリ

蒼龍「じゃあ、食べたい物食べて太る私は何なんですかー」

赤城「修練が足りませんね。もっと食べましょう」ボリボリ

蒼龍「これじゃ豚になるー」

飛龍「あはは」


飛龍「加賀さんも体型変わりませんよね、なにかしてるんですか?」

加賀「………………私?」

瑞鶴「おっ、機嫌なおった」

加賀「そうね。普段から節制の心構えをしっかりと持って、日ごろの訓練を真面目にやれば、おのずと身体は引き締まります」

飛龍「ぐえー、さすが自制の鬼。加賀さんには、かないませんよー」

蒼龍「私にも無理そうだなー」

加賀「私はやるべきことをきちんとこなしているだけです」 (わずかに口角が上がっている)


飛龍「瑞鶴もねぇー」ニヤニヤ (意地の悪い笑み)

瑞鶴「げっ、こっちに矛先むいた」

飛龍「スタイルいいもんねぇー、特に胸のあたりとかー」ニヤニヤ

瑞鶴「っるさいなー」

蒼龍「なにか特別なダイエットでもしてるのぉ~?ねぇねぇおしえておしえてぇ~?」ニヤニヤ

瑞鶴「めんどくせー、この先輩方めんどくせー」


蒼龍「瑞鶴~、すばらし~い先輩がおしえてあげようか~?スタイル抜群の秘訣をさぁ~」

瑞鶴「余計なお世話よ」

蒼龍「まぁまぁ~そう強がらなくてもいいじゃない~、秘訣はね~」

瑞鶴「聞いてないし」

蒼龍「誰かに恋するといいよ~?すると切ない思いで胸がふくらんでくるの~」

瑞鶴「うっぜぇぇーー!」 (ちゃぶ台に突っ伏す)

蒼龍「あっはっはっはっ」


瑞鶴「いじるなっ!私の胸をっ!」

飛龍「いじってもおおきくならないもんね~」

瑞鶴「あぁぁぁーーーー!返しがうざいぃぃーーー!」

飛龍「あははは!」


『つづいてはニュースのお時間です。雨模様がつづいていますが、明日以降は快晴となる予報で、絶好のおでかけびよりとなるでしょう』

赤城「おおー」ボリボリ

蒼龍「私達には絶好のおしごとびよりとなるでしょー」

飛龍「はぁ~あ、いやだなぁ~」

翔鶴「みなさん、明日もお仕事ですか?」

蒼龍「私は演習、そしてその後は例の海域の突破」

瑞鶴「うわ~、そりゃ大変だ」


飛龍「あのゴスロリちゃんのおかげでこっちは大変なんだから」

翔鶴「大変ですね………私達ももっと強ければお伴できたのですけど………」

飛龍「いいよ~、気長にまってるから~」

加賀「五航戦の子なんかと一緒にしないで。私達だけで十分です」

瑞鶴「突破出来てないくせに。やっぱり私と翔鶴ねえが必要でしょ」

加賀「口よりも身体を動かしなさい。瑞鶴は訓練でも詰めが甘いのよ」

瑞鶴「はいはい、がんばります~」


加賀「でも………まあ、あなた達はよくやってると思うわ」

蒼龍「おぉ?加賀さんがほめた」

加賀「もちろん、駆逐や軽巡の子たちも。全力をつくして戦ってくれているわ」

加賀「それでも突破は難しい海域、だからこそ私達の力が必要なのよ」

飛龍「ですね~」


加賀「だからといって無茶は駄目。突破できたとしても、誰かが犠牲になってしまったら、それはいい結果とはいえないわ」

加賀「だから必ず生きて、帰ってくるのよ」

加賀「わかったかしら、瑞鶴」

瑞鶴「なんで私?別に無茶なんかしてないし」

加賀「あなたは軽いのよ。全体的に」

蒼龍「そうそう、軽い軽い。特に胸部とか」ニヤニヤ

瑞鶴「はいはい!だったら重くなりますー!そらもうびっくりするくらいね!ったく」


鳳翔(あら………)

(空母達が談笑している中、ふと、鳳翔は手をとめて窓ガラス越しに空を見上げた)

鳳翔(…………ふふ)


鳳翔「みなさん、雨が上がりましたよ」

瑞鶴「えっ!ほんと!」

蒼龍「おーやっと止んだー」

瑞鶴「虹とかでないかなー」


加賀「さて………みんな、そろそろ仕事に戻るわよ」

赤城「ふぁい」モグモグ

蒼龍「はーのんびりした」

飛龍「ひとまず明日の作戦の再確認を天龍たちとしとかなきゃね」

翔鶴「瑞鶴、行きましょう?」

瑞鶴「あー!待ってよー!」


(空母達はゾロゾロと部屋を出ていき、それぞれ仕事に戻っていく)

(個性豊かな彼女らの談話を、始終にこやかに微笑みながら楽しんでいた鳳翔は、)

(うってかわった静かな部屋のなかで、そっと立ち上がり、窓を開けた。)

(外からは、晴れ空の下を駆けていく艦娘たちの明るい声が聞こえてくる。)


鳳翔「いってらっしゃい」


(鳳翔はそう呟いて、空を見上げた。)




鳳翔「空母達のだらだらとした居間談義」おわり

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