ことり「L」 (10)

鬱注意

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Chapter01

キーンコーンカーンコーン
キーンコーンカーンコーン。
チャイムは鳴り終わる。

鞄からお弁当を出す。

ことり「穂乃果ちゃん海未ちゃんお昼どこで食べる?」

だんだんと教室は騒がしくなっていく。

みんな私達と同じような会話をしてる。

穂乃果「中庭にしよー」

穂乃果ちゃんの手にはお財布。

お昼は購買でパンを買うつもりらしい。

海未「穂乃果またパンですか?」

穂乃果「うん!ランチパックでも食べようかなー」

ことり「あ、唐翌揚げあげるから一口ちょうだい!」

穂乃果「うん!いいよー!じゃあ購買行こー!」

教室を出て購買へと向かう。
歩きながら窓の外を見ると惚れ惚れするぐらいの綺麗な青空が私の視界の終わりまで続いていた。

海未「購買多いですね」

ことり「そうだねー」

穂乃果「じゃあパン買ってくるよ!」

穂乃果ちゃんは意気揚々とパンを選び始めた。

私達二人はそんは穂乃果ちゃんを眺めながら今日の授業の内容の話をする。
他の生徒がスマートフォンから流している流行りの音楽を聴きながら。

海未「あ、買い終わったみたいですよ」

会話に夢中で彷徨っていた視線をこちらに笑顔で近付いて来る穂乃果ちゃんへと焦点を合わせた。

穂乃果「てへへーほら!新発売のパン」

真っ白なパン。
粉砂糖だらけのパン。
パンとパンの間に生クリームが挟んである。
すごく美味しそうだけどパッケージの裏のカロリー表記が気になるそんなパンだ。

甘い物はだいたいカロリーが高いから太る。
昔お母さんがそう言ってコンビニでプリンを
諦めていたのを思い出した。

海未「もうまたそんなパンを買って・・・太りますよ?」

穂乃果「このカロリー無くなるまで練習するから大丈夫!ほら、中庭中庭!」

片手にビニール袋をぶら下げた穂乃果ちゃんはもう片方の手で中庭の方へ指をさす。

ことり「あーお腹減ったなぁ~」

生徒があっちへこっちへと行き交う購買を後にし、私達は中庭へと歩いて行く。

穂乃果「今日はいい天気だね!これ以上に無いってくらいに!」

海未「ほんとですね。雲一つもありません」

ゆっくりと夏が近付いて来るのが分かる。

最近は気温も上がり気温は25度に達していた。
でもまだ湿気が無い分、不快な暑さではなく。
風もよく吹いて過ごしやすい日だ。

だから今日は穂乃果ちゃんはお昼ごはんを中庭で食べようと思ったんだろう。

こんな日に外で食べるごはんは最高だと私も思う。

中庭に着き、ベンチに三人腰を下ろす。
私と海未ちゃんは弁当箱の蓋を開け、穂乃果ちゃんはパンの封を切る。

穂乃果「いただきまーす」

手に持った粉砂糖だらけのパンをほうばる穂乃果ちゃん。
口元に生クリームを残す。

穂乃果「うん!美味しい!」

海未「生クリームついてますよ」

私はハンカチを取り出し穂乃果ちゃんの口元を拭く。

穂乃果「このパン大きいから生クリーム付けずに食べるの難しいね」

ことり「ちょっとずつ食べればいいんじゃないかなぁ」

そよ風が三人の間を縫うように通り過ぎ、私もようやく唐翌揚げを口にした。

太陽の光が心地いい。
風が心地いい。
この空間が心地いい。



昼食を終え、しばらく中庭でたわいもない話をした後。
そろそろ昼休みも終わるので私達は教室へと戻る。

穂乃果「次なんだっけ?」

海未「数学ですよ」

穂乃果「昼食後の数学辛いなー・・・ん?」

穂乃果ちゃんは視線をしばらく泳がせ、私の後方の窓を見た。

ことり「どうしたの?」

穂乃果「ううん。今日はいい天気だなって」

穂乃果ちゃんはそう言いながら窓へと向い、外を眺める。

そう確かに今日はいい天気だ。

窓を開けた。空を眺めた。
鳥の鳴き声が聞こえた。
机の上の教科書のページが風でペラペラとめくられていく。

私は穂乃果ちゃんの後ろに。

穂乃果ちゃんは窓の縁に片足を乗せた。

ことり「・・・穂乃果ちゃん?」

ゆらり滑らかに流れる時間。
クラスメイトはテレビの話をしてる。

穂乃果ちゃんは窓から身を投げた。

ことり「・・・っ!」

私は穂乃果ちゃんの手を掴んだ。

カーテンが揺らぐ。
遠くの方で猫が毛繕いをしている。

掴んだ手を引っ張られる。

体は持って行かれ、私も窓から落ちる。





4階。
握っていたはずの穂乃果ちゃんの手の感触はない。
穂乃果ちゃんの姿は何処にもいない。
教室の窓からみんなが私を見ていた。
驚きもせず悲しみもせずただ無表情で私の事を見ていた。

3階。
昼休み終了のチャイムが鳴る。
空が遠ざかっていく。
頭から落ちたからもう即死だろう。

2階。
走馬灯。
ここから時の流れは驚く程ゆっくりになる。
時間が止まっているとさえ錯覚する。
目を閉じて勝手に再生されていく楽しかった思い出に身を委ねる。

1階。
死ぬとどうなるんだろう。
ニュースにもなるかな。
まだやりたい事、あったのになぁ。
最後に目を開け迫る地面を見る。
先に落ちてるはずの穂乃果ちゃんの姿はやっぱりない。

誰かがバケツの中の水をぶちまけた。
いや、これは私が地面に激突した音。

体が動かない。
どんどん、地に吸い込まれていく。

どんどんどんどん。
土に吸収されていく。

人間の体は80パーセントが水分だ。

だから、私は地に吸収されていく。
地に帰っていく。

私が落ちた場所にもう私はいない。

あるのは私が落ちた跡だ。

あぁ、私は水になったんだ。
体の80パーセントが水分だから、人間は死ぬと水になるんだ。

生命の始まりは水から始まったって聞いた事がある。
だから死ぬと水になるんだ。

私はどんどん地中の奥へ奥へと染み込んでいく。

蝶を食べている女王アリを他所にせっせと働く働きアリ。

モグラがちゃぶ台を囲みすき焼きをしている。

私はどんどん地中の奥へ。

ミミズが二匹交わっている。

手招きをし、私を誘ってくる。

私は今体の自由が利かない。

だから、地球の奥へ奥へ奥へ奥へ。
流れる。

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