この一年間、たくさんのことがあったね。
笑ったり、泣いたり、ケンカもしたけど、励まし合って。
喜んだり、怒ったり、哀しいときもあったけど、楽しかったよ。
辛くて、苦しくて仕方ない時もあった。
それでも私は、ううん。
私たちはここまでこられた。
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最初は、私の独りよがりだった。
思いつきで、なんとなく。そんな感じで始まったんだ。
きっかけは音ノ木坂がなくなるのが嫌で……そんな理由で。
だからそのときはスクールアイドルはただの手段でしかなかったんだ。
でも、必死だったから。だって私はこの学校が大好きだったから。
私はよく考えがあまいなんて言われるけど、本当にそのとおりだよね。
そんな身勝手であまあまな私を、二人の幼馴染が支えてくれた。
私は当たり前のように海未ちゃんとことりちゃんを誘ったし、
二人とも当たり前のように協力してくれたけど、それってとってもすごいことだよね。
私ってその一瞬に全てを集中させて走って行っちゃうから、そのときは気がつかなくて……。
あとで思い返して気づくことがたくさんあるんだ。
だから、気づいたときにちゃんと言葉にしておかなきゃだよね。
あなたたちは、私の自慢の幼馴染です。
ありがとう。
いつまでも、大大大大大だーい好きだよ!
――でも、そのせいで二人にも辛い思いをさせてしまいました。
誰もいない講堂。
情けなくて、惨めで、申し訳なかった。
ごめんなさい。
真姫ちゃんにも謝らなきゃだよね。せっかく曲を作ってくれたのに。
でも、あの日μ’sは始まったんだ。
三人だけじゃなかった。
あのときあの場所には、みんないたんだよね?
私はてっきり、花陽ちゃんだけが……。
あ、そうそう。花陽ちゃんがあのとき来てくれなかったら私……。
えっとごめんなさい。話があっちこっちいってうまくまとまらないや。
とにかく! 花陽ちゃんみたいにみんな普通にみてくれたらよかったのにさ。
――なんて。私はそんな曲者ぞろいなμ’sが大好きだったりします。
そして、スクールアイドルが大好き!
そのことに気がついて、「諦めない」ことを選んだ。
もう、スクールアイドルは廃校を防ぐための手段なんかじゃなくなっていたんだ。
正直不安がなかったわけじゃない。
でもその選択は間違ってなかったと思える瞬間が、案外早くおとずれた。
三人の女の子が――真姫ちゃんと、凛ちゃんと、花陽ちゃんが、μ’sに入ってくれた。
私たちは、六人になった。
本格的に動き始めた私たちは、正式に部として認めてもらうために生徒会に掛け合う。
冷たく鋭い完全無欠の生徒会長と、何を考えているのかわからない達観オーラ漂う副会長。
なんちゃって! 今となっては御笑い種だよね!
二人とも、本当に素直じゃないんだから。
でも当時は本当に怖かったんだよ?
にこちゃんにしたって、本当にめんどうくさい先輩たちなんだから!
って、あんまり言い過ぎるとまた怒られちゃうからこの辺にしておかなきゃ。
――そんな中でにこちゃんは希ちゃんと絵里ちゃんよりもちょっぴり早くμ’sに入ってくれました。
ほんの些細なすれ違いと、ほんの僅かな意地の張り合い。
たったそれだけのことだったんだよね。
絵里ちゃんは私に「あなたの手に救われた」とかなんとか言ってくれたけど……。
手を差し伸べてくれたのは絵里ちゃんのほうだよ。
だから、昔のことを悔いるように話すのはやめてほしいな。
そんなこんなで、私たちは九人になった。
揃っちゃってからは早いもので……。
まずはオープンキャンパスの初ライブだよね! 九人になった私たちの初ライブ!
「僕らのLIVE 君とのLIFE」
すごくすごくいい曲! 私はこの曲が私たちの原点だと思う。
それから……真姫ちゃん家の別荘に合宿に行ったね。
あんなふうにたくさんの友達とお泊りするのは初めてだったから楽しかったな。
みんなで海で遊んだり、ご飯作ったり、枕投げしたり。
どれも鮮明に私の中に残ってるよ。ずっとずっと、残ってるよ。
いつまでも、忘れたくないなあ……。
あれ?おかしいなあ。なんだかちょっと……。
――おかしいなあ。楽しいお話してるはずなのに、ノートが水玉模様になっています。
文化祭の話は、耳が痛いかな。
もう謝るなって言われてるから、謝らないけど……。
ひとりで突っ走っちゃう悪い癖が出ちゃった。
みんなには迷惑ばっかりかけちゃって、本当に。
ああ! なんだか謝っちゃいそうなのでこの話は終わり!
そんなこんなラブライブには出場できなかったけど……。
私たちは満員の講堂でライブをしました。
だから、もうそれでいいよね?
そう思ってた。
ところがどっこい! はっけよーいのこった!
第二回ラブライブ。
もう私一人の問題ではなかったんだ。
私が勝手に始めたこと? 違うよね。
μ’sはみんなの思いが詰まっているんだから。
今度は、みんなと一緒に自分のために。
また行きたいと思っていた合宿もできた。
そうしてできた新曲を発表したのがなんとUTXの屋上!
なんだか夢みたいな、奇跡みたいなお話だよ。
でも、私たちの奇跡はまだまだ続く。
――いままであったこと一つ一つが、全て奇跡。
私、もうみんなのことなんでも知ってると思っていたんだ。
でも、まだまだぜんぜんそんなことはなくて。
μ’sがひとつになってからも、みんなの知らない一面がかくれんぼを続けてた。
たとえば、宇宙№1アイドルの真意とか。
いろんなものに板挟みにさせていたにこちゃんだったけど……。
私たちはそれを解いてあげることができたのかなあ。
たとえば、そうそう凛ちゃん!
修学旅行から帰ってきたらスカート履いててビックリだよ!
とっても似合ってて。もっともっと素敵な凛ちゃんが見つかるといいな。
それから、希ちゃん。
結局、一番最後まで素直になれなかったのは希ちゃんでしょ!
もっと早くから、カードのお告げじゃなくて希ちゃんの本心が聞きたかったな。
そうしてμ’sの絆はより強まっていった。
強すぎて……だからこそ……ううん。
そう、だからこそ最終予選でA-RISEに勝つことができたんだ。
学校のみんなの協力もあって……。
μ’sはいろんなものを背負って本戦へと向かった。
決して重荷ではないそれが私たちの背中を押してくれた。
だからここまで来られたんだよ。
みんなの思いが導いてくれた場所なんだ。
だから最後まで……笑って――楽しんで――。
ラブライブ優勝。
私たちはみんなでこの物語を叶えた。
嬉しいことに――悲しいことに――もう叶ってしまったんだ。
だから笑顔で手を振ろう――泣きたくて仕方がない――。
さよならμ’s――離れたくない! ずっと一緒にいたい――。
にこちゃん。希ちゃん。絵里ちゃん。
卒業おめでとう!――いかないで!――
だけどやっぱり、この物語はここでおしまいなんだね。
みんなの汗と、涙と、笑い声と、思い出と……。
大切なのものがたくさん染み込んだこの屋上。
だから、ここがこの物語の「最後のページ」にふさわしいと思うんだ――
私は水で屋上に大きく「μ’s」と描いた。
この天気だから……すぐ消えちゃうかもしれない。
でも、それでいいんだよ。
それで……。
――ねえ、ことりちゃん。海未ちゃん。
――うん?
――やり遂げようね! 最後まで!
穂乃果「やり遂げたよ……最後まで」
穂乃果「そして最後のページには」
終劇
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