周子「総選挙やね、プロデューサーさん」 (60)
周子の総選挙を応援せねばと書きました。
作者の妄想炸裂してます。公式との大きな乖離等ありましたらご指摘頂戴したいです。
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「おー、そういやそんな時期だ」
プロデューサーさんは、たった今思い出したというような顔をして振り返った。
今日のあたしは、久方ぶりの1日オフ。
とはいえ、オフは未だに少し苦手だ。
こっちに出てきたばかりのころと比べると交友も遊び場所も随分と増えたけれど、それでもやっぱり、お仕事をしていない日は手持ち無沙汰に過ごしてしまうことの方が多い。
いつも通りの時間に起きて、寮の食堂で朝食を済ませ、部屋に戻る。
昨夜寝る前に、明日の時間潰しにとわざと少し散らかしたベッド周りの掃除に取り掛かったけれど、1時間も経たずに終えてしまった。
特にやりたいこともないし、何かと声を掛けてくる子らも仕事でいない。
遊び相手でもいないかと事務所までふらふら歩いていったら、プロデューサーさんが1人寂しく机に積み上げられた書類の山と戯れていた。
応援もなしにお仕事はおつらいでしょうと、シューコちゃんがせっせと愛嬌を振りまいてあげていたんだけれど、事務所の中はびっくりするくらい時間が経つのが遅い。
あたしがここに来たのが10時前で……。
驚き。
まだ30分ほどしか経っていない。
もしかして、2人きりだから? なんて。
「ふーん、意外」
「なにが?」
「なんか、余裕やね」
ちひろさんの椅子をがたがた揺らしながら、あたしは思ったままのことを口にする。
「もっとこう、選挙だー! やばいー! みたいな感じだと思ってた」
「いやー、なんだかんだ言っても7回目だしなあ。手慣れたもんよ。それに」
「それに?」
何の仕事をしているんだろう。
キーボードの上で踊っていた指をいったん止めて、プロデューサーさんはぐうっと身体を伸ばしながらこっちを見た。
「なんてったって、目の前にシンデレラがいるからなあ」
あたしのおかげかー。
言葉に出さなかったけれど、あたしの目は口ほどに物を言っていたらしい。
プロデューサーさんもにやりと笑って応えてくれる。
「言い方はよくないかもしれないけど、ゆとりがあるというか。未央ちゃんとこのプロデューサーは気合いすごいぞ。前回2位だし余計になあ」
「んー、そっか」
少し気のないあたしの返事をどう思ったのだろうか。
プロデューサーさんは「と言っても」と打ち消すように右手を振った。
「仕事の手は抜かないから安心しろな? 周子のためなら、例え火の中水の中、だ」
それきり、プロデューサーさんの視線はパソコンの方に戻ってしまう。
その横顔を見つめながら、あたしはというとふくれっ面だ。
「なー、プロデューサーさん」
「なんだ? 昼飯か?」
「ちゃうよー。もー、すーぐそうやってシューコに美味しいもん食べさせようとするー」
かすかに聞こえたのは、多分笑い声になり損ねた鼻息だろう。
プロデューサーさんは相変わらずあたしに横顔を向けたまま。
右手は電卓の上でカタカタ、左手は積み上げられた書類の山から引っ張り出したファイルを忙しそうにめくっている。
「なーにが旨いもんだ。それこそせっかくのオフなんだから、もっといいもん皆と食いに行けばいいのに。言っとくけどな、俺しかいない事務所での昼飯は漏れなく龍鳳の出前だぞ」
「りゅうほう?」
「4丁目のあたりにある中華屋。最近お気に入りなんだ」
へえ。
いいこと聞いたかな?
「プロデューサーさんは中華がお好み?」
「いや、いかにも身体に良くない量と味付けが食欲をそそる」
最悪だ。
いいこと聞いたなんてとんでもない。
ダメ大人ここに極まれり、ってやつだ。
「最悪やわ」
わざとちょっとキツい感じで、口を尖らせる。
「ちひろさんとトレーナーさんに言いつけたろ」
「やめろやめろ。俺の数少ない毎日の楽しみを奪わないでくれ」
あら、やっぱりいいこと聞いたかもしれないな。
慌てふためくプロデューサーさんを見るのなんて、いつ以来だろう。
どーしよっかなー、と鼻歌交じりに足を振るあたしをよそに、プロデューサーさんは積み上げられていたファイルをいくつかどさどさとちひろさんの机に押しのけている。
どうやら一区切りついたのか、プロデューサーさんの両手が机から離れて、さっきよりも少しばかり長く伸びをした。
ばきばきばき、と思わず心配になる音が首やら肩から鳴っている。
「で?」
「え?」
「え、じゃないよ。なんか選挙に思うところでもあるのか? 前回と前々回の選挙は順位下げちまったから、今回も心配か?」
ぐるぐるぼきぼきと肩を回しているプロデューサーさんと目があう。
ほんとに聡いなあ、この人は。
「……あたし、そんなに分かりやすかった?」
「もう長い付き合いだからな。だいたいのことならお見通しだ。昨日の晩ご飯とか」
「そら、寮のおばちゃんのメニューやからね」
んー、嬉しい。
承認欲求とはまた違う、誰かがあたしのことを分かってくれているという喜び。
しかもそれは、1番分かっていてほしい人。
表情筋がにへらと歪むのを抑えきれない。
まったく、こんなので大喜びなんて。
チョロすぎるなー、あたし。
最近はとくにそうかも。
「んー、えっとな。順位下がったのはまあ、あたしの思ってた通りというか」
「ん?」
プロデューサーさんの眉が不審そうに動く。
怒られるかな、と続ける言葉を少し躊躇した。
けれどまあ、思わせぶりな態度を取ったのはあたしの方だし。
「あたしさ、1番になったやん?」
「なったなあ」
「シンデレラになったやん?」
「なったなあ。今でもたまに、結果発表の速報見たときの夢を見るな」
「もー。恥ずかしいからやめて!」
2人でくすくす笑いあう。
窓から差し込む光はぽかぽか暖かい。
「……それでね」
「おう」
桜はすっかり緑色に衣替えを終えたけれど、季節はまだまだ春一色だ。
昨日はしとしと降っていた春雨もどこかへ行ってしまった。
不揃いな高さのビルの林で、行き交う車の喧噪に混じって季節の鳥たちが声高に合唱会を開いている。
「だから、今回は頑張らなくてもいいかな……なんて」
それまで阿吽の呼吸で返ってきていたプロデューサーさんの相槌が、ぴたりと途絶えた。
やっぱり怒られるかも、とおそるおそる顔を上げて、あたしは思わず息を呑んだ。
怒られる、なんて暢気なものじゃない。
プロデューサーさんはこれまで1度も見たことがないくらい、ものすごい怖い顔をしていた。
あたしの全身が総毛立つ。
これは、ひょっとすると、お笑いでは済まないんじゃ……?
「なんかあったのか」
お腹に響くプロデューサーさんの声が、冷たくて、重たい。
「嫌なこと言われたのか。週刊誌か? インターネットか?」
「ちゃうちゃう。そういうのとちゃうんよ」
努めて明るい顔で、大きく手を振って否定する。
「ほら、うちの総選挙といえばCDデビューじゃん、やっぱり。あたしの知った顔でもデビューがまだな子って大勢いるわけだし。
あたしはさ、表彰台に立たせてもらって、歌まで歌わせてもらったじゃん。だから、なんていうのかな。
その、あたしにこれ以上投票してもらっても、よくないのかな、っていうか」
少し早口で、一気にそうまくし立てた。
上目遣いに伺ったプロデューサーさんの表情は、ぴくりとも変わらない。
ちょいちょい。
プロデューサーさんが怖い顔のままで手招きしている。
「……なに?」
無言のまま、手招きは続いている。
怖い。
総選挙のたびに、あたしがずっと抱えていたうっすらとした不安を吐き出した解放感なんて、瞬く間にどこかに行ってしまった。
困ったときのいつもの軽口も、今は全くたたけない。
おそるおそる歩み寄るけど、プロデューサーの手はまだ動いている。
少し戸惑ってから、内緒話をするときのように顔を近づける。
プロデューサーさんの雰囲気があまりに怖くて、思わずぎゅっと目を閉じてしまう。
「……っ」
あ、これ。
もうちょっといい雰囲気なら、キスしちゃうやつだ。
そう思った刹那、べちん、と軽い音とともにあたしの額に痛みが走る。
……でこぴん?
「いっ……たぁ!」
「あほたれ」
目を開けて見たプロデューサーさんは、もう怖い顔をしていなかった。
責めるような言葉とは裏腹に、その表情はいつもと同じように優しく笑っていた。
「いいか、周子。たしかに総選挙は単なるお祭り騒ぎじゃ済まないイベントだわな。なんてったってCDデビューの直通切符だ。
総選挙に向ける思いは、デビューできたアイドルとそうでないアイドル、1位になったアイドルとそうでないアイドルでは全然違うだろうよ。
それはもちろんファンもそうだし、俺たち担当のプロデューサーだってそうだ」
「うん……」
プロデューサーさんの瞳の中に、こちらを見上げているあたしがいる。
引き潮のように遠のいていく痛みとは裏腹に、白い額にうっすらと残っている痕が、なんだかおかしい。
「周子は、シンデレラになれたのは何でだと思う?」
ずきりと、胸の奥が微かに痛む。
本当に聡い人。
その質問は、あたしをちくちく苛み続ける不安という名の棘そのものだ。
「んー、ブースト?」
茶化すように答えるけれど、きっとプロデューサーさんは何もかもお見通しなんだろうな。
「あほたれ」
「運営の思惑?」
「あほたれ。ったく、世間の風評って奴を気にしすぎだ、お前は」
わしゃわしゃっと頭を乱暴に撫でられる。
「いやー、なにすんのさー」
言葉とは裏腹に身体はまったく逃げようとしない。
それどころか、無意識のうちに猫のようにすり寄せているかもしれない。
我ながら全く格好がつかないなあと思う。
「前に声出し選挙あったろ。4回目の総選挙の前のやつだ。覚えてるか?」
無言で頷く。
覚えている。
というか、忘れられる訳がない。
「中間発表、1位だったな」
「うん。速報持って走ってきたプロデューサーさんが、楽屋ですっころんで眼鏡割った」
「んなこともあったなあ、懐かしい。で、だ」
プロデューサーさんの顔が、再び少し厳しくなる。
あたしも、少しだけ身構える。
「負けたな?」
「……うん」
「2位の女」
「もー!」
腕を振り上げて抗議する。
プロデューサーさんの表情が、再び元の明るいそれに戻る。
「冗談だ冗談。あの晩のことはよーく覚えてるぞ」
あたしだって覚えてる。
今まで流した分と同じくらい、あの一晩の間に泣いた。
泣いてるあたしと慰めてるプロデューサーさんを見ていたダーツバーのおじさんが、あまりに怪しんで警察を呼ぼうとしていたらしい。
たぶん、あの夜から、あたしにとっての『アイドル』が本当に大きく変わったんだと思う。
「明けて総選挙だ。リベンジしたな?」
「うん」
「嬉しかったろ?」
嬉しかった。
「アイドルやってきてよかったって、心の底から思った。プロデューサーさんに拾われて、一緒についてきてよかった」
「そりゃ何よりだ。プロデューサー冥利につきる」
いったん言葉を切って、プロデューサーさんは大きく息を吐いた。
コップに少し残っていたお茶をぐいと飲み干す。
あたしも、口の中がからからだ。
「1位になれたのは周子の努力のおかげだ。本当によくやったよ。目の色変わってたからなあ、あの時のお前。でもな、それだけじゃない」
小首を傾げたあたしを見て、プロデューサーさんは小さく口角を上げた。
仕方ない奴だな、とその目が言っている。
「声出し選挙の結果を見て目の色を変えたのはお前だけじゃないってことだよ。
お前のファンが皆、周子にガラスの靴を履かせて、ドレスを着せて、舞踏会行きの馬車を用立てたいって思った結果がシンデレラガールだ」
子供に言い聞かせるように、ゆっくりと、滔々とプロデューサーさんは話し続ける。
空を歩いていた薄雲が通り過ぎていったらしく、窓の外から差す日光が少し強まったのを感じた。
事務所の空気がだんだん暖かさを増していくのが分かる。
「2位だったことに対する同情票もあったかもしれないし、1位になったから、次は別のアイドルに投票するってファンもいるかもしれん。
でもな、ずっと応援し続けてくれる、周子にまた舞踏会で踊ってほしいってファンだっているはずだ。同情票だけで1番になんかなれるもんか。
シンデレラガールってのは、そんな軽々しいもんじゃない。周子だってそれは分かってるだろ?」
「……でも、いないかもしれないよ。そんなファン」
「いるっての。それに、お前はどうなんだよ」
「えっ?」
突然投げかけられた質問の意図が分からなくて、あたしは面食らう。
椅子の背もたれが、プロデューサーさんが預けた体を受け止めきれなくて鈍い悲鳴を上げた。
「もっかい行きたくないのか? シンデレラの舞踏会」
そりゃ……。
「そりゃ……行きたいよ。喜ぶ顔が見たいし」
誰の? とはプロデューサーさんは訊いてこなかった。
もしかしてあたし、訊かれるのを期待してた?
「まあアイドルって、ファンありきの仕事なんだけどな。でも結局のところは周子の思い1つだ。
無理に頑張らなくたっていい。思うままに、周子のやりたいアイドルやれば、それでいい」
「うん……」
まだ煮え切らない様子のあたしを見て、プロデューサーさんは小さく嘆息する。
「ま、今回の俺は忍ちゃんと穂乃香ちゃん一押しなんだけどな」
「……はぁん?」
思わずアイドルが出しちゃいけないタイプの声が出てしまった。
プロデューサーさんは少し遠い目をして窓の向こうを眺めている。
「いやー、だって聞きたいだろ。あの2人の歌。
いや待ていかんな、2人じゃないな。あずきちゃんと柚ちゃんもいれた4人で痛い痛いいだだだ抓るな抓るな腕を抓るな痛い痛い痛い」
大きく頬を膨らませ、ぷいと顔を背けて怒りを露わにする。
「ふん! なんよ! プロデューサーさんのあほ! どあほ! にぶちん!」
「悪かった、悪かったよ周子。冗談だって、ほら」
ぐいと手が伸びてくる。
ちらりと横目で見た、大きな手に握られているその紙片は……なに?
「なにこれ?」
投票券? 総選挙の?
手渡されたそれには、『第7回シンデレラガール総選挙』とキラキラした文字で印刷されていた。
薄い青色の紙に、鮮やかな星がいくつも輝いている。
「もしかして……。自分で自分に1票入れておけってこと? 嫌な慰め方やなぁ」
「いいから。投票画面で見てみろって、それ」
眉をひそめながらも、言われるがままに携帯電話で『シンデレラガールズ』を検索する。
検索エンジンの1番上からたどり着いたのは、煌びやかなトップページと、その中でもさらに煌びやかな総選挙のバナー。
特設ページには歴代のトップアイドルの画像が並んでいて、あたしの姿もその中に混ざっていた。
改めてみると、すっごい綺麗な衣装だなあとため息が出る。
自分の顔をした、全く知らない誰かの写真を見ているみたいだ。
『投票する』というボタンを押して、投票券の裏面に印刷されているコード番号を入力する。
『0K1uhS1M0iS』。
『既に投票されています』
アイドル名を検索しようとしたあたしに、赤字のエラーメッセージが待ったをかけた。
『塩見 周子』
ぴたりと携帯をスクロールする指が止まった。
着飾ったあたしが画面の中で、この間収録したお礼の言葉を述べている。
『あなたの心意気、しかと受け取ったりー♪ しゅーこちゃんも、マジメに応えたくなるね。ま、どーんと構えてておくれ♪』
獲物を見つけた猫のように、ぱっと顔を上げる。
プロデューサーさんは、また先ほどまでのように手元のパソコンに顔を向けていた。
その表情は、横顔しか見えないせいかよく分からなかった。
かああっ、と顔に一気に血が上る。
「も、もー! なによプロデューサーさん。忍ちゃんでも穂乃香ちゃんでもないやん、この投票券! ま、間違ってんじゃないの投票先!」
「うるせ。うるっせえ。あー可愛いなあ! フリルドスクエアはかっわいいなあー!」
「ねー! かわいいよねー! ぴっちぴちだもんね!」
「なんてったって女子高生だもんな女子高生!」
あはははははは!
2人して、指まで指して大声で笑う。
机や棚に反響して、あたしたちの声が室内を思い切り飛び回っている。
しばらくそうしていたけれど、特に示し合わせておいたわけでもないのに、あたしとプロデューサーさんはぴたりと同時に笑うのをやめた。
事務所がしんと静まりかえる。
ツバメの声らしいものが窓のすぐそばを通り過ぎていった。
プロデューサーさんの瞳の中のあたしは、無言のままで身じろぎひとつしない。
バイクのセルモーターが回っている音が聞こえる。
時計の秒針の音がだんだんと大きくなる。
沈黙に耐えきれなくなったのは、あたしでもプロデューサーさんでもなく、電気ポットだった。
隣の部屋でぴろぴろぴろと湯が沸いたことを知らせる電子音が鳴り響き、あたしの肩はびくりと震える。
もうちょっといい雰囲気なら、キスしちゃうやつだったな。
プロデューサーさんは、どう思ってたんやろね?
肩を竦めているあなたも、ひょっとして同じようなこと、考えてた?
プロデューサーさんが、さっきと同じようにゆっくりと口を開く。
もちろん返ってくるのは、あたしの妄想への答えではないけれど。
「頑張れないときは頑張らなくていい。周子は自分らしく、周子らしくあり続けてくれたらいい。俺は頑張ってる周子も、そうでない周子も好きだ」
「……っっ!」
なにそれ。
そんなの、ずるいわ。
あ、愛の告白じゃん。
「あ、あたしっ」
あたしも、好きです。
……そんなこと、言えるわけがなかった。
「あたし……頑張るわ」
もう1度シンデレラのドレスを着たい。
応援してくれるファンに見て貰いたい。
あなたのため、とは今はまだ言えないけれど。
「しんどくなったら言うんだぞ」
「言ったら、プロデューサーさんが助けてくれるんよね?」
「龍鳳の唐揚げ定食くらいなら奢ってやる。630円だ」
「うっわあ」
最悪だ。
非難するように頬を膨らませたあたしを見て、プロデューサーさんは仕方なさそうに笑う。
けれど、まあ。
たまになら、身体に悪い中華とやらも、いいんじゃないですかね。
「あー、お腹すいたーん。ね、メニュー見せてよ。あたしもお昼ここで食べようっと」
「っと、もうこんな時間か。さっさと注文の電話しないと。遅いと断るんだよ、あそこのおばちゃん」
「何がお勧めなん? その唐揚げ定食?」
「待て待て、初心者はまずは小エビ定食からにしとけ。っていうか本当に頼むのか。味も量も冗談じゃないんだぞ、本当に」
プロデューサーさんが、珍しく心配そうな顔で慌てふためいている。
その表情を見るのって、あたしが風邪引いて寝込んだとき以来かもしれない。
よかった。
あたし今、笑えてる。
アイドルやっててよかったと思えてる。
「プロデューサーさん」
こちらを見上げてくるあなたの顔をのぞき込む。
「あたし、頑張るわ。応援してくれる人たちのために、もう1度シンデレラ、なってみせるね」
おう、とその顔が綻びる。
朝、寮を出たときには少し憂鬱だった日差しが、今は幾分か心地よく感じられた。
おしまいです。
あれからもう2年? 経ちますが、ますます輝きを増しているしゅーこが好きです。
各々方の担当アイドルへの投票を終えられたら、ぜひアイドルしゅーこにも1票よろしくお願いします。
お付き合いいただきありがとうございました。
HTML化依頼出してきます。
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