龍驤「さーて、いよいよ始まったなぁ」

サラ「ええ、その、頑張りましょうね」

龍驤「……前から思うてたんやけど、キミ、うちになんか遠慮してへん？」

サラ「……昔沈められた艦と仲良くするのは難しいでしょうし、duoなんてますます無理なんじゃないかって」

龍驤「そんなん関係あらへんて。昔は昔、今は今よ」

龍驤「そら実際会うまで怖なかったか言うたらウソになるけどな、会うて話したらもう友達やろ」

サラ「龍驤さん……」

龍驤「前まで週4で悪夢見とってんけどな、キミと話してからは週3に減ったわ」

サラ「あら、良かったです！」

龍驤「えっ？」

サラ「えっ？」

龍驤「……いや良くないやん？　実際かなりの頻度で夢に見とるやん？」

サラ「大変！　やっぱりサラのせいで……」

龍驤「ちゃうちゃう、冗談やて！　漫才やねんからうちがボケるやろ？」

龍驤「そしたら『いやトラウマバリバリ残ってますやん！』てツッコんだらええんよ」

サラ「なるほど、勉強になります」

龍驤「やっぱ最初は練習せなあかんかなぁ……なんかやってみたいこととかないか？」

サラ「あ！　だったらサラ、面接の練習がしたいです」

龍驤「いや練習言うて今思いついたやろ」

サラ「そんなことないです！　艦娘以外の経験がないので、面接ってどんなものかぜひ知りたくって」

龍驤「確かにせやな、うちも深海棲艦との戦いが終わったら次の勤め口探してカミさんと子供と養わなあかんからな」

サラ「はい！」

龍驤「だからそこは『はい』ちゃうやろ！」

龍驤「……まぁええわ、今のは振り方が雑かったな。うちが面接官やるから、キミは志願者やってや」

サラ「志願……apply側の人ですね、でも何を話したらいいんでしょう」

龍驤「そこは志望動機とか、これまでの経験とか、意気込みとか……正直に喋ったらええよ」

サラ「わかりました、お願いしますね」

龍驤「……では次の方」

サラ「失礼します」

龍驤「呉鎮守府の軽空母龍驤です、本日はよろしゅう」

サラ「航空母艦Saratogaです、よろしくお願いします」

龍驤「……じゃあまずは、弊社を志望された理由を伺ってええですか」

サラ「はい、貧しい農村では働かない人手は穀潰しだと言われたので、タウンワークで一番給与の高かった御社を」

龍驤「いや切実すぎやろ！　ちょい一旦ストップで頼むわ」

サラ「……？」

龍驤「『なんかおかしいですかね』みたいな顔すんなや、全体的におかしいわ」

龍驤「まずな、正直にとは言うたけど出会って初っ端で何もかもさらけ出すんはちゃうで」

龍驤「そこは普通に、『御社の経営方針に共感してー』とかでええんよ」

サラ「I see、そうなんですね」

龍驤「あとちょっち気になったんやけど、『穀潰し』てどこで覚えたん？」

サラ「先日、駆逐艦の子たちが提督を取り囲んで『この穀潰しは毎月EOも全部割れない役立たずだぴょん』と言いながら衣服を脱がせて」

龍驤「ごめんやっぱええわ、続けよか」

龍驤「Saratogaさん、弊社を志望された理由をお聞かせください」

サラ「御社の経営方針に強く共感したことが一番の志望動機です」

龍驤「特にどのような部分ですか」

サラ「『足らぬ足らぬは工夫が足らぬ』という考えはエコを意識した、時代の先を行くスローガンだと思います」

龍驤「それ戦時中のやつやん！　いや今戦争やってるけど！　時代の先どころかおもくそ逆行しとるわ！」

サラ「……？」

龍驤「だから『なんか問題ですか』みたいな顔やめーや、問題しかないわ」

龍驤「なんでそんなキワッキワの方針を想定してんねや」

龍驤「別に『人材は社の財産』とかそういう感じのでええやん」

サラ「わかりました、そうします」

龍驤「あとさっきの標語はどこで覚えたんや」

サラ「この間駆逐艦の子たちが、『おやつの供出が滞っておるぞ、足らぬ足らぬは工夫が足らぬにゃしぃ』と言いながら提督が隠していた間宮羊羹を根こそぎ奪って」

龍驤「よっしゃ続けよか！」

龍驤「当社の経営方針のどのような点に共感しましたか」

サラ「御社の掲げている『人材は社の財産』という方針から、企業と社会の進歩のために社員教育を徹底するという心構えを感じました」

龍驤「これまでの経験から得た、弊社で働く上で業務に有用やと考えられるスキルを説明してもらえますか」

サラ「私は数少ない夜間空母として改装されましたので、夜間の艦載機発着艦を行うことができます。御社の夜間戦闘にも、空母夜襲カットインで悪・即・斬することが可能です」

龍驤「物騒！　そんな経験が重要視されるとこなんか！？」

サラ「……」

龍驤「『でも今まで艦娘でドンパチばっかりやったからなぁ』とちゃうわ！　戦闘以外にも色々あるやろ！」

龍驤「艦娘かて戦いだけやなくて秘書艦業務とかで帳簿付けたり勤怠管理したりやっとったやん」

龍驤「そういうとこアピールしてこ、な？」

サラ「ごめんなさい、そうですよね」

龍驤「それからなんでカットインのSEが悪・即・斬やねん」

サラ「昨日駆逐艦の子たちが『るろ剣ごっこしようぜ、ご主人さま宇水な』と言いながら提督を椅子に縛り付けて目隠しして」

龍驤「まずは面接の練習しよか、最後まで行ってへんしな！」

龍驤「これまでの職歴から、当社の業務に有用なスキルは得られましたか」

サラ「秘書艦として多様な書類作成にあたった経験は、御社においても事務作業や発注管理で役立てられると考えています」

龍驤「本日はありがとうございました。最後に弊社への自己アピールを自由にお願いします」

サラ「御社に採用されましたら、お国のために鬼畜米英の兵士を一人でも多く倒していく所存です」

龍驤「だから戦時中か！　ていうか米英は自分やろ、自殺願望アピールしてどないすんねや！」

サラ「……」

龍驤「そうやな、『今戦争してるやん』ってその通りやなうちも言うたな、でも問題はそことちゃうんよ」

龍驤「さっきからやったら古い時代の話しとるけど、誰に聞いたんやそんなん」

サラ「今朝駆逐艦の子たちに『日本のルールならこれを読むといいっぽい』と言って渡された、提督が徹夜でまとめた日本軍の資料を」

龍驤「司令官夜なべで何してんねん！　さっきからちょいちょいスルーしてきたけど駆逐艦に対して立場弱すぎやろ！」

サラ「でも提督、いつも笑顔でしたよ？」

龍驤「ごめんな、それ今いっちゃん聞きたない情報やったわ」

龍驤「……とりあえずキミはしばらく艦娘一本でいこか、もう5年も続いとるしそうそう終わらへんやろ」

サラ「でも、いつかは終わりが来ることですから……」

龍驤「そんなんそん時に決めたらええやん、もう面接なんて考えたくもないわ」

サラ「！　『いやトラウマバリバリ残ってますやん！』」

龍驤「うっさいな誰のせいやと思っとんねん！　もうええわ！」

龍驤・サラ「どうもありがとうございましたー」「Thanks a lot!」