僕「・・・だって」女「だってじゃない!」 (13)

僕「痛い・・・痛いよぉ・・・」グスッヒッグ

女「僕、また虐められたの?」

僕「・・・ぅるさい」グスッヒッグ

女「情けないわねぇ・・・うわ!肋骨まで青黒くなってる・・・僕、あんたが言い返さないと、何も変わらないのよ?」

僕「・・・だって」

女「だってじゃない!」

僕「!?」ビクッ

女「言い返さなきゃだめ!先生にでもチクっちゃえばいい!」

僕「・・・」

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いじめっ子「なぁ僕ぅ、さっきお前に壊された鉛筆削り、あれ1000円するんだよ。弁償しろよぉ。明日、1000円持ってこいよ・・・・・・・な?」ギロ

僕「(鉛筆削りが1000円もする訳ない・・・)」

僕「(でも、だって・・・恐いし、もっと嫌なことされるかもしれないじゃん)」

僕「わかっ

ーーだってじゃない!

いじめっ子「・・・どうした?返事は?」

僕「・・・ぇんも・・・けな・・・

いじめっ子「あ?」

僕「1000円もする訳ないじゃないか!」

いじめっ子「」ビクッ

僕「そもそも、君の鉛筆削りが壊れたのだって、僕のせいじゃないじゃないか!」

僕「僕は弁償しない!もう一切、君と関わらない!」



女「スッキリした顔してるじゃん、僕」

僕「・・・言えたよ。僕、言い返せたんだ」

女「そうなんだ。根性あるじゃん」

僕「君のおかげだよ。だってじゃない、君の言葉が、僕に勇気をくれた」

女「違うよ」

僕「?」

女「あたしはあんたの背中に手を添えただけ、それを実行できる人って、あんまりいないんだよ。これはあんた自身の力だよ。誇りなさい」ニコッ

僕「そ、そうかな」テレッ

その日、夢を見た。女が死ぬ夢だ。右腕がちぎれ、無残にも殺されている、そんな夢を見て僕は自覚する。女が好きだ、と。




僕にとって、女は尊敬に値する存在で、太陽のように僕を照らしてくれて、それと同時に、この人とともに歳をとりたい、人生を一緒に歩みたい、そう思える存在だった。


僕「嘘・・・・・・だろ?」

女「・・・ごめ・・・んね」ポタポタ

そこには、血まみれで右腕のない女が横たわっていた

僕「まるで・・・あの夢じゃないか!?」

僕「だって・・・この間まで普通に

女「だってじゃ・・・ない」

女「僕・・・今から言うところに行きなさい」

僕「ぁ・・・・・・ああ」ツ-

女「そしたら・・・あたしの・・・」

僕「あああ・・・」

女「僕、こんな形だけど・・・言うね?」

僕「あああ・・・・あああ」

女「脆くて・・・弱くて・・・泣き虫で・・・勇気のあるあんたがあたしは」

女「好き・・・でし・・・た」ガク

僕「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


女は僕の腕の中で息を引き取った。

僕は、女が最後に言う場所へ向かった。



僕「ここかな・・・」ガラ

そこには、1人の男と1人の少女がいた。

男「君が女ちゃんの言っていた僕くんだね」

少女「・・・」

僕「はい・・・あの、ここに行けば女の事がわかると・・・」

男「あの子の口から入ってあげればよかったのに・・・それで?女ちゃんは?」

僕「っ!?」

男「・・・・・・・・・そうか」

男は表情には出さないものの、女の死を汲み取ると、拳を握りしめ、手のひらからは血がこぼれ落ちていた。

少女の方はまだ自体を飲み込めていないようだった。無表情だった少女の目は見開かれ、その大きな目からは大粒の涙が溢れていた。

その2人を見て僕は、改めて女の死を実感した。



男「今から言うことは、信じられないかもしれないが、信じろ。何を言おうが鵜呑みにしろ。いいね?」

男「この世界には、魔術がある」

僕「・・・それと女ちゃんの死の真相が関係あるんですね?」

男「・・・よろしい。ああ、ある。大いに関係がある。だって、女ちゃんの死因は魔術だ」

僕「!?」

男「あの女ちゃんがそこらの魔術師に倒されるとは思えないけど、と言うか俺も直接現場を見ていないから断言できない、でも、女ちゃんが魔術師に殺される理由がある」

僕「・・・ちょっと待って、女も魔術師だったんですか!?」

男「ああ、彼女はこの歳、16歳でで“女帝”と呼ばれるほど強く、気高い魔女だったよ」

僕「・・・それで、女が殺されなければならない理由って?」

男「それは、君だよ」

僕「・・・は?」

男「君には、“未来視”という能力がある」



僕「・・・」

男「たまに、デジャブのような事はないかな?」

僕「・・・夢を」

男「夢?」

僕「女が死ぬ夢を・・・見ました」

男「それが彼女の死因だよ」

僕「は?」

男「たまにいるんだ。未来を見ることのできる目を持つ者が。その者は類い稀なる魔術の才能を持つと言われている。その者を自らの組織で育てようとする魔術師が」

僕「・・・まさか」

男「察しがいいね。そう、女ちゃんは君を狙う魔術師達を、陰ながら守っていたんだよ」

僕「嘘だ・・・嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ・・・どうして・・・」ポロポロ

男「女ちゃんは、君が魔術に関わることを避けていた。魔術に関わると、ろくな死に方をしないからね」

僕「・・・」

男「どうしたい?」

僕「・・・」

男「君は、魔術師としての類い稀なる素質がある。選ぶのはーー

僕「女の!・・・仇を取る」



男「そうか・・・もう普通の人生を歩めなくなるが、いいかい?」

僕「関係ない・・・僕にとって女は、生きる意味だった」

男「そうか。なら、俺が手ほどきをしてやる」

少女「・・・・・・」



それから僕は高校を辞め、魔術の修行に明け暮れた。そして、そこらの魔術師にには負けない程度には強くなっていた。

そんな時

男「女ちゃんを殺した魔術師の手がかりを掴んだ」

僕「そう・・・ですか」

男「なんでも、女ちゃんとの交戦時につけた傷があるらしい。その傷は目を抉り、眼帯をつけていて“眼帯の魔術師”と呼ばれているらしい」

僕「・・・そうですか」




僕「・・・」ガラ

僕「どうしたの、少女」

少女「・・・いかないで」

僕「やっと女の仇を打てるんだ」

少女「いかないで!」ギュッ

僕「・・・」

少女「僕、死ぬ顔してる・・・」

僕「だって、やっと女の仇を

少女「だってじゃない!」

僕「ぁ・・・・・・」

少女「いかないで・・・お願い・・・」ポロポロ

少女「もう・・・大事な人が死ぬのはやなの!」

僕「っ!」

僕「ごめん・・・じゃあ」

少女「・・・?」

僕「僕は、君の為に帰ってくるよ」ニコッ

少女「!・・・うん/////」




それから、僕は旅に出た。“眼帯の魔術師”を探して。

眼帯の魔術師の特徴としては、左目に眼帯をしている事、いつも黒いマントに身を包んでいるという事、相当強い魔術師という事だった。

そして

僕「お前が眼帯の魔術師だな」

眼帯「・・・あぁ、お前か?俺のことかぎ回ってるっつう魔術師は」

僕「・・・質問を変える。“女帝”を殺したのはお前か?」

眼帯「・・・」ニヤァァァ

眼帯「お前かァァ、“未来視”はァ!!仇討ちかなァ?いいぜ!やってやる!」

僕「・・・場所を変えるぞ」




眼帯「あの女は強かったなァァ。まさしく女帝にふさわしい強さだ。俺には負けたけどなァァ」ニャァァァァァ

僕「殺す!」ボォォォォォ

眼帯「火の魔術か」

僕「遍く光よ!炎となり、我が権化となりて、敵を滅せよ!」ボワァァァァァァァ

眼帯「炎が龍の形に!?」

眼帯「ハァァァァァァァ!!!」パキパキパキ

僕「(詠唱もなしに氷を生成した!?)クソッ!」ドガァァァァァァァァァンンン

熱と冷気がぶつかり合い、空気が膨張し、爆風が巻き起こる。
その爆風は、周囲の木々をなぎ倒していった

僕「くっ・・・」

眼帯「いいねェ!お前、強えよ!楽しいや!」

僕「・・・」ファァン

眼帯「(?目が、光って)オラァァ」パキバキパキバキ

僕「僕の勝ちだ」ボォォォォォン

眼帯「なっ!読んでいたのか!?・・・未来視か!」

ーー言い返さなきゃだめ!

ーーそれはあんた自身の力だよ。誇りなさい

ーー根性あるじゃん



ーーーだってじゃない!

僕「終わりだ・・・」

眼帯「てめえェェェェェェェェェ」バァァァァァァァァァン

僕「・・・・・・」

僕「終わったよ・・・・・・女・・・・・・」




僕「・・・」

僕「・・・」ガラ

僕「ただい

少女「おかえり!」ダダダ

少女「・・・」ギュ

僕「・・・ただいま」ギュ

男「おかえり、僕」

僕「はい!」



こうして、僕の戦いは幕を閉じた。

眼帯の魔術師を倒した後も、僕は魔術師として、魔術の鍛錬を怠らなかった。

男さんは75歳で僕と少女に看取られ、息を引き取っていった。

後から知ったことだけど、実は男さんは最強の魔術師として、魔術界を仕切っていたらしい。
男さんが死に、事実上最強の魔術師は僕ということで落ち着いた。

僕は少女と結婚した。少女との間に娘も生まれた。名前はーー



僕「すみませんうちの娘が」ペコ

先生「まあ女さんだけが悪いわけじゃないですから」

僕「ほら、女、男の子くんに謝りなさい」

男の子「・・・」ヒッグ

女「お父さん・・・だって男の子が

僕「女!」

女「」ビクッ

僕「だってじゃないだろ」ニコッ



終わり

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