ミサカ「返品及びクーリングオフは不可能ですので、とミサカは釘を刺しておきます」
2013年、某日。 快晴。
家賃4万5000円の築34年アパートの一室に、平坦な声が響いた。
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:3日前
—セブンスマート
アルバイト男(以後、男)「……ふ、ふふふふふ……」
アルバイト女(以後、女)「……きもっ」
男「出会い頭に『きもっ』とはなんだよ!」
女「笑顔がきもいんだもん」
男「ここはコンビニだし、俺たちはアルバイトだろ! 接客業だし、笑顔でいるのは当たり前だろ!」
女「それはそうだけど、今の笑顔はきもすぎ。 犯罪級」
男「犯罪まで言うか……」ズーン
女「とりあえず、人様に向ける笑顔じゃなかった。 やめておいたほうがいいよ」
男「は、はい……」
女「で、何かあったの?」
男「え?」
女「今の笑顔は、きもさの中に何か嬉々とした感情がこもってたから」
男「何その分析力」
女「日本私立大学の名門、慶王大学の学生だからね」
男「一応、俺もなんだけど……」
女「補欠と主席はまったく違います。 それこそ天と地の差ね。 別に例えるのであれば王と奴隷。 金と生ゴミ。 月とすっぽ……」
男「ごめん。 わかったからこれ以上俺の心をエグらないで……」
男「……金が貯まったんだよ」
女「お金?」
男「あぁ。 ずっと欲しかったものがあってさ。 それを買えるだけのお金が貯まったんだ」
女「欲しかったもの、ねぇ……。 そういえばここ3カ月、いつシフトに入ってもあなたがいたもんね」
男「週5勤務、1回8時間!(内休憩45分)! 社会人ばりに入ってたぜ!」
女「ドヤ顔もきもい。 私からノート借りてるし、学業と両立できてないところもダサい」
男「うぐっ……。 それに関しては、本当に感謝しております……」
女「今度、ハーゲンダッツ奢りね」
男「はい……」
女「で、欲しかったものって?」
男「そ、それは……。 ……内緒ってことで!」
女「ふーん……。 別にそこまで知りたくはないけど」
男「だろ? 俺が買うものなんてどうせ大したことねーもんだよ」
女「そりゃそうでしょ。 大したものなんて思ってないわよ。 これっぽっちも」
女「(……だけど、隠されると、知りたくなってくるわね)」
男「ま、そういうことだから! 笑顔がきもくても我慢してくれや! ニヤニヤが止まらんからしょうがないんだ!」ニヤニヤ
女「はいはい……」
男「〜♪」
:夜
—男自宅(アパート)
男「ふふふふふ……」
男「ひょほほほほほっっ……」
男「くほほほほほほふふふひひひ……」
男「……」
男「……ダメだ。 たしかに笑いがきもい……。 けど……」
男「これを見るだけで、笑いが止まらない……!」
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:今
ミサカ「……入ってもよろしいでしょうか、とミサカは確認を取ります」
男「……え? あ、あの……」
ミサカ「何を驚いた顔をしているのでしょう、とミサカは男様の様子を洞察します」
男「お、俺の名前!? なんで!?」
ミサカ「顧客情報を見て記憶しております。 もちろん、配送元よりミサカ1人、この足でここまで辿り着きました、とミサカはさりげなく記憶力を自慢します」
男「え、ええええ、ええ!? き、キミ、まさか、あの……御坂(妹)……!?」
ミサカ「いかにも。 その通りです、とミサカは男様に正解のプレゼントを用意します」
男「……プレゼント……?」
ミサカ「……プレゼントは、わ・た・し。 ……と、ミサカは——」ヌギッ
男「う、うわ!!!?? ぬ、脱がないで!!! と、ととと、とりあえず中に入って!!」グイッ
ミサカ「ふぁ、とミサカは予想だにしない強引さに変な声を出してしまいます」
—男自宅
男「……これ、緑茶だけど」
ミサカ「ご厚意に感謝します、とミサカは素直に謝辞を述べます」
男「……はぁ。 その感じだと、本当にキミが御坂(妹)の現品みたいだね……」
ミサカ「ミサカは産まれてこの方、嘘をついたことなどありません、とミサカは少し憤慨します」
男「……で、一応確認なんだけど……。 返品は不可能、と……」
ミサカ「はい」キッパリ
男「……」
男「……はあぁぁ〜〜…………」ガクッ
ミサカ「……? なぜ落胆しているのですか?と、ミサカは男様の行動意図が把握しきれないので素直に尋ねます」
男「これが現実なんて、少し信じられないっていうのもあるけど……。 何より……」
ミサカ「……?」キョトン
男「(人買うなんて犯罪でしょ……! しかも、中学生!? 高校生!? わからないけど、学生ですよ!?)」
男「(や、やばいやばいやばい……! これって、俺結構やばいやつだと思う!!)」
ミサカ「あのー……」
男「(あー、どうしよう……。 やばいやばいやばいやばい……っっ。 やばいしか頭に出て来ないくらいやばい!!)」
ミサカ「……と、ミサカは一言声をかけ——」
男「(っていうか、ほんとに御坂(妹)の現品なのかこの子……。 そ、そうだよ。 何かしらの情報源から俺が買った履歴などを見て、暇つぶしに騙しに来た学生の可能性もゼロじゃないんじゃないか!!?)」
ミサカ「……」ヌギッ
男「脱がないでっ!」ガバッ
ミサカ「きゃあっ、とミサカは女の子らしい叫び声をあげてみます」
男「何で脱ぎ出すの!?」
ミサカ「男様がそれを望んでいると判断したので」
男「どんな思い違いなだよ!!」
ミサカ「何やら思い悩んでいたようでしたので、思わず……と、ミサカは少々呆れながら答えます」
男「呆れるのはこっちね!!!」
男「……そ、そうじゃなくて!! ミサカ……ちゃんでいいのかな。 君が、本物の『御坂(妹)』だっていう証拠はあるのかな?」
ミサカ「証拠……ですか」
男「あぁ。 ほら、もうしかしたら、配送ミスだったりする可能性もあるしさ、確認のためだよ」
ミサカ「……」
男「(……おっ! こ、これは……!? やっぱり、ただのイタズラか!? れ、冷静に考えればそうだよな!! なんだって俺の部屋に唐突に女の子が——)」
ミサカ「……」ヌギッ
男「脱がないでって!!!」ガバッ
ミサカ「」ヒョイッ
男「へぶぅっ!?」ガツン
ミサカ「大丈夫ですか? と、ミサカはコンクリート製の壁に唐突に頭突きを始めた男様に優しく声を掛けます」
男「いっつつ…………。 あ、あぁ……一応大丈夫……」ジンジン
ミサカ「別に今しがたの行動は衣服を着脱するための行動ではなく、これを見せるために靴下を下げただけです、とミサカは男様に説明します」
男「これ……? ……ふともも?」
男「(いい感じの肉付きだ…………って、そうじゃなくて!!)」
男「ど、どうしたの、それが」
ミサカ「はい、こちらです」
男「……? …………!」
【MK-11111】
透き通るような白い肌には、赤く浮き彫りになった、まるでミミズ腫れのような文字が刻まれていた。
ミサカ「私がミサカたる証拠はこれです。 シリアルナンバーは11111。 学園都市外者向け、奉仕特化型ミサカNo.1」
ミサカ「学園都市外で、一部研究者を除いた一般人の方とのコミュニケーションを取ることを許可された、唯一のミサカ。 それが私です。
と、ミサカは1から10まで懇切丁寧に男様にお教えします」
男「……研究者? しりあるなんばー?」
男「……? ………………????」
ミサカ「とにかく、ミサカは、間違いなく、男様が3日前の夜に購入した御坂(妹)の現品です。 と、ミサカ面倒くさいので確定的に結論づけます」ハァ
男「い、いやいや! 今の話を一瞬で理解しろって言う方が無理でしょ!? そもそも、学園都市なんてテレビでしか見たこと無いんだぞ!? 超能力がなんたらーとか唱えてる怪しい集団じゃないの!?」
ミサカ「怪しい集団……? 学園都市は、主に児童から生少年少女を対象とした超能力者育成カリキュラムを導入している世界随一の研究市街です、とミサカは自分の博学っぷりに惚れ惚れしながら回答します」
男「超能力なんて、なおさらのことテレビでしか見たことないっつーの!!! 戦隊モノとかアニメとかの見過ぎ!」
ミサカ「……」スゥ
ミサカ「……ッッ」バチバチバチッ
ばりんっ
男「っ!?!」
ミサカ「……これで、信用して頂けましたでしょうか。 とミサカは真剣な顔で男様に尋ねます」
男「い、今の……って、で、電気……!? え……!? 何も無いところから……電気が……」
ミサカ「夢でも幻想でも、はたまたアニメでもありません。 超能力……いや、異能の力は、現実に存在しているのです。と、ミサカは改めて説明に移ります」
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