櫻井桃華「この素晴らしき庶民文化探究を、皆さまと」 (92)

●注意●
・短編形式
・日常系
・嘘知識、誤情報、超偏見、謎集団が見受けられます
・独自解釈している点が多々ありますので、ご了承ください

●登場人物●
櫻井桃華、他
http://i.imgur.com/SYbBRVX.jpg
http://i.imgur.com/rmdPxbw.jpg

●前作●
櫻井桃華「この素晴らしき庶民文化探究を、休日に」
櫻井桃華「この素晴らしき庶民文化探究を、休日に」 - SSまとめ速報
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櫻井桃華「この素晴らしき庶民文化探究を、街中で」
櫻井桃華「この素晴らしき庶民文化探究を、街中で」 - SSまとめ速報
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【七曜会本部】


桃華「千秋さん、ご無沙汰しておりますわ」

千秋「ええ。久しぶりね」

ゆかり「……Zzz」

千秋「本当に久しぶり」

千秋「事務所も多方面のイベントに向けて、慌ただしかったし」

桃華「ええ、そうですわね。一向に皆さまの予定が揃う気配がありませんでしたわ」

桃華「リトルチェリーブロッサムとしての活動や、新春のツアーイベントに加え、CM出演などもあり、喜ばしいことにランクも上がり……」

桃華「多忙を極め、まさしく東奔西走の毎日でした」

ゆかり「……Zzz」

桃華「千秋さん? 例の課題の進捗状況はいかがです?」

千秋「……ごめんなさい。まだ一つも手を付けてない」

桃華「まあ……! 時子さんでさえ、5つほど既に終えたとおっしゃられていましたわ」

桃華「早急ではないとは言え、蔑ろにされても困ります。ゆめゆめ、お忘れなきように?」

千秋「ゴ、ごめんなさい……」

千秋「(……というか、財前さんの課題を手伝ったのは私だけど)」

桃華「千秋さん。貴女は次期『日曜日』候補の一人なのですから、課題は全てもれなく、要領良くこなして頂きませんと」

千秋「(次期日曜日候補……!?)」

ゆかり「………Zzz」


桃華「千秋さんがこの“七曜会”に加入し、早半年以上経ちますわ」

桃華「事務所もここ7、8ヶ月で様々な躍進がありましたわね?」

千秋「うん、そうね」

千秋「事務所内にカフェが新しく出来たし、新部署の設立と人の移り変わりもあった。大手食玩メーカーとアイドル部署がコラボしたり」

桃華「音葉さんの歌とタイアップした映画が空前絶後のヒットを飛ばしたり、どこか非日常的な雰囲気を漂わせる大型新人の高峯のあさんが所属し、事務所の注目を集めたり……」

千秋「日野さんが赤坂マラソンで獅子奮迅の激走を見せて一躍時の人となったり、大石さんの自作アプリが海外でウケて人気を博したり、ヘレンさんが流行語大賞にノミネートされたり……」

千秋「挙げれば、キリが無いわ」

桃華「そうですわね」

ゆかり「………Zzz」

千秋「………」

ゆかり「………Zzz」

千秋「(水本さん、微動だにしない)」


───ガチャ!



卯月「お……、おはようございますっ!」

桃華「おはようございます、卯月さん」

千秋「おはよう」

ゆかり「………Zzz」

卯月「す、すみません。遅くなりました」

桃華「いいえ、とんでもない。定刻通りですわ」

桃華「では木曜日さんもお見えになりましたので……」

桃華「始めましょう。本日の、庶民文化探究を♪」


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【幕間①】


━━七曜会・喧伝━━

生き甲斐と夢を持ち、
充実したアイドル人生を送りたいとお望みならば、
是非とも七曜会に入りましょう。

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【七曜会本部(事務所の空き部屋)】


千秋「(私の名前は、黒川千秋)」

千秋「(職業は学生、兼、アイドル………兼……)」

千秋「(このサークル『七曜会』の一員)」

千秋「(……)」

千秋「(端的にこのサークルを表現すると『常識知らずの箱入り娘が世俗に触れる』……と言ったところかしら)」

千秋「(経緯はいろいろあるけど、庶民の文化や生活に慣れ親しめるよう……)」

千秋「(処世術と知識を学ぶために、私はこの奇妙なサークルの活動に勤しんでいる)」

千秋「(……)」

千秋(水曜日)「(七曜会のメンバーはそれぞれ曜日の名が割り振られ、独特な合言葉で挨拶をしたりする。ちなみに私は水曜日)」

千秋「(変なルールも存在するけど……それが何を意味するのかは皆目見当がつかないし、むしろ庶民の文化探求よりコッチの謎の方が気になる時もあるのは、内緒の話)」

千秋「(…………)」チラッ





桃華(日曜日)「ようやく……!」

桃華「ようやく、今日は全員が揃って活動出来ますわ。本来であれば月二回開催するこの七曜会ですが、本当に………辛くて胸が張り裂けそうでした。多忙とはいえ、この会が長きにわたり開催できず皆さまに会えない退屈な日々。皆さまのお気持ち、理解できますわ。長い間、庶民文化探究に触れられず、持て余した抑えようのない好奇心。次第にそれは、物足りなさからくる寂寞とした倦怠感と、やり場のない憤りとなり、果てには、人としてすべからく備わっているはずの知的向上心・探究心が次第に失われていく焦燥。そして………絶望に」






千秋「(………さて)」

千秋「(櫻井さんの、ただただ長い前置きが始まったわ。また何時間も付き合わされるのもご遠慮願いたいところだけど……)」

ゆかり(土曜日)「………Zzz」

千秋「……ねえ、島村さん?」

卯月(木曜日)「はい?」


千秋「そう言えば島村さんは、どういう経緯でこのサークルに入ったの?」

卯月「経緯、ですか?」

卯月「………っ」

千秋「!?」

千秋「ご、ごめんなさい………その、そんなに辛そうなら別に言わなくても……」

卯月「あっ!」

卯月「いえ、辛いワケじゃないんですが……」






~~~~~~回想・約1年前~~~~~~
【事務所 通路】


卯月『……』スタスタ

卯月『(凛ちゃんも言ってたけど………)』

卯月『(最近、桃華ちゃんが一部の人に対して、変な勧誘をしてるって事務所でウワサになってる)』

卯月『(うぅん……、一体何の勧誘だろ? 気になるけれど)』

卯月『(でも、ちょっと怖いから気を付けよう)』

卯月『…………』スタスタ




桃華『う、ウゥ…………』フラフラ




卯月『!』

卯月『(う、うわっ! 桃華ちゃ───)』





───ドテッ!


桃華『あぅっ……!』ズザー!



卯月『!?』

卯月『も、桃華ちゃん! 大丈夫?』

桃華『あ……、う、卯月さん………っ』


桃華『ハァ、ハァ……。み、見苦しい姿を晒してしまい、申し訳ありません』

桃華『最近はレッスン漬けで、もう……心身共々ヘトヘトですの………。歩いているだけで、頭がくらくらする程で……』

卯月『大丈夫? 休憩室まで、肩貸す?』

卯月『(ホントはちょっと距離を置きたいけど…………、でも可哀想……)』

桃華『いえいえ、これしき平気です………、お優しいのですね、卯月さんは』

桃華『では、失礼します……』フラフラ

卯月『(……………)』

───ぽとっ


卯月『!』

卯月『桃華ちゃん、ハンカチ落としたよ?』

桃華『あっ!』

桃華『……ありがとうございます』

卯月『ううん。はい、どうぞ』スッ

桃華『……このハンカチは、母から頂いた大切な物なのです。掛け替えのない大切な……』







桃華『……この、“バーバリー”のブランドハンカチは……』






卯月『あれっ? それ、“スワトウ”のハンカチじゃないの? 最高級だと10万円以上も値が張るっていう、芸術的価値もある希少な……』







がしぃっ!!


桃華『貴女ッ!! 目敏く看破するその慧眼、まさしくセレブですわねッ!!! 少しお時間を頂いてもよろしくてッ!!??』ズイッ!

卯月『し、しまったァ!!! う、うわああああぁぁっっ!!!!』



~~~~~~回想終わり~~~~~~







卯月「…………って、いうことが」

千秋「(なんだろう……、島村さんとは何だかすっごい仲良く出来そうな気がする)」


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【幕間②】


━━七曜会・要綱(現在)━━

庶民の文化を愛し、尊び、じかに触れ学び、
自分達の見識を広めることを唯一の目的とし、
理解しあえる可能性の発見を至上の喜びとする。

最終的な到達点は、
処世術として殊勝な振る舞いと正しい知識、
そして家柄や境遇は違えど良き隣人として対等に、
偏見や固定観念を払拭し隔てなく、
仲間たちとのより良い関係を円滑に築ける交流の形と心構えを身に付ける。

(以下略)

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【七曜会本部(事務所の空き部屋)】


桃華「本日の七曜会の活動テーマ、それはズバリ!」

桃華「『ゲーム』、ですわ!!」バンッ!

卯月「ゲーム?」

千秋「それって、つまりはテレビゲームという事かしら?」

桃華「水曜日さん、ゲームと一口に申しても様々な種類がありますの。定義は社会学や哲学など多角的ではありますが……」

桃華「ルールに則り、遊戯という形で競い合い、目的を達成することですわ」

卯月「ふむふむ……」

桃華「例えるなら、それはスポーツであったり、水曜日さんがおっしゃられたゲーム機を使用することであったり」

桃華「戦略的で、かつインタラクティブな行いであることと存じておりますわ♪」

千秋「チェスとか、ダーツとか……、あとはトランプとか?」

桃華「はい。カードやボード等のツールを用いた物も同義です」

卯月「えっと……、じゃあ『鬼ごっこ』とか『かくれんぼ』とかも、かな?」

桃華「モチロン! ツールを使わないものであっても、ゲームの形態は環境によって多種多様です!」

桃華「流石は木曜日さん♪ 次期日曜日候補なだけありますわ♪」

卯月「(───っ!)」

卯月「(…………)」チラッ

千秋「(…………)」

卯月「(ち、千秋さん? 今、ものすごい不吉なワードが聞こえた気がします……)」

千秋「(私も、さっき似たようなことを聞いたわ)」


ゆかり「…………んん」ゴシゴシ

ゆかり「……あら? おはようございます、卯月さん」

卯月「おはよう、ゆかりちゃん」

ゆかり「ふわあ……っ。ちんちこーるー(挨拶)………」ウトウト

千秋「おはよう、水本さん」

桃華「遊戯(ゲーム)。読んで字の如く『戯れ、遊ぶ』ことが大前提」

桃華「遊興として、娯楽として、教育として、趣味として、そして文化として」

桃華「それは子供も大人も関係なく、幅広い年代の人々を楽しませるものとして、時代の変遷とともにバラエティ豊かに発展を遂げてきました」

桃華「……わたくし達のように外界を知らず育った人間からしたら、庶民の方々が生活の一部のように嗜んでいるそのゲームは、まさに未知との遭遇! 新たな発見!!」

桃華「それらに触れる事こそ……、彼らの人となりを、機微を、庶民らしさを。まさしく知ることが出来るとわたくしは考えております」

千秋「なるほどね……」

桃華「わたくし、今日のため差しさわりのない程度に、庶民一般の予備知識は確認しましたわ」

桃華「さあっ! 本日もさっそく楽しんで庶民文化探究と参りましょうっ♪」

卯月「頑張りましょうっ! 千秋さんっ!」

千秋「……ところで、櫻井さん?」

千秋「先ほど、今日は全員が揃うって言ってなかった?」

桃華「はい。最終的にはですが」

千秋「最終的?」

卯月「ひょっとして、他の人は途中から合流するんですか?」

桃華「ええ、おっしゃる通りです。家庭やお仕事の都合があるとのことですが、予定を繰り合わせて頂けるとのことでした」

桃華「有り難い限りです、本当に」

千秋「(ふぅん……)」

桃華「わたくし、この日を楽しみにしておりましたの。一日千秋の思いで待ち焦がれ、そして今日っ!!」

桃華「まさに快哉を叫ぶ心持ちです。遂にこの会、『七つの曜日』が揃って活動できる日を迎えようとは……!」

桃華「さあっ! はりきって参りましょう♪」

ゆかり「チンチコール♪」

千秋&卯月「ち、チンチコール……!」


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【幕間③】


━━七曜会・合言葉━━

「チンチコーラ」(疑問・質問)
「チンチコーリ」(意義・否定)
「チンチコール」(挨拶・宣誓)
「チンチコーレ」(祝福・賛成)
「チンチコーロ」(禁句。意味は不明)

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【七曜会本部(事務所の空き部屋)】


千秋「まずはこの部屋で?」

桃華「はい。本日のテーマは『ゲーム』」

桃華「初めにご紹介するのは、『ソーシャルゲーム』ですわ」

ゆかり「ふふっ……♪」

千秋「ソーシャル……、ゲーム……?」

卯月「よく耳にしますけど、イメージとしては……」

卯月「スマートフォンでダウンロードして気軽に遊べるアプリゲーム、くらいの認識です」

桃華「!!」

桃華「木曜日さん、よく御存じで」

桃華「流石は次期日曜日候補。そんな木曜日さんには1ポイント贈呈ですわ♪」ニコニコ

卯月「(!?)」

卯月「(ちち、千秋さんっ!? い、今、得体の知れないポイントが私に……!!)」オロオロ

千秋「(島村さん………損な役回りね)」

千秋「(迂闊な発言は、ちょっと控えよう)」


桃華「卯月さんがおっしゃる通り。携帯やスマホで簡単に遊べるゲームの事を指しますわ」

桃華「ソーシャルゲーム、略して『ソシャゲ』」

桃華「歴史を紐解けば、黎明期には『探検ドリランド』『怪盗ロワイヤル』『サンシャイン牧場』等が火付け役としてその名を馳せ……」

桃華「そしてスマートフォンの普及とともに、ソーシャルプラットフォームを介さないものが主流となっていったのです」

ゆかり「~~……♪」スッ

桃華「フフッ♪ ゆかりさん、気が早いですわ♪」

千秋&卯月「??」

桃華「本日はまず、国内で最大級の人気を誇るソシャゲを実際に、皆さまにプレイしていただきましょう♪」

卯月「国内で最大級の人気……!」

桃華「ゆかりさんとわたくしは、既にダウンロードして楽しんでおりますの」

桃華「お二人とも。本日、スマホを御持参いただけましたか?」

千秋「ええ。あるわ」

千秋「それで、そのソシャゲって?」

桃華「まぁ……!」

千秋「えっ?」

桃華「いやですわ、水曜日さんっ♪ それをわたくしの口から言わせるおつもりですか??」

桃華「おふざけも大概にして頂かないと、わたくしもさすがに怒りますわよ♪ もうっ♪」

千秋「(ま、マズイわ島村さん。私、怒られるかも……!)」

卯月「(ち、千秋さん……!)」


桃華「ほら、アレですわ♪」

千秋「ア……、アレ??」

桃華「はい♪ 国内で大ヒットし、更にはアニメ化もされ……」

桃華「可愛らしいキャラクターで多くの人の心を鷲づかみにし、彩られた舞台で舞い踊る様に競い、そして……」

ゆかり「様々なコンテンツとコラボし、4コマ漫画も大人気っ♪」

桃華「フフフッ♪ わたくし達と言えば…………、もうお分かりですわね?」

千秋「あ、あぁ……。アレね」

千秋「アー………………………………………………………………………………」

桃華&ゆかり「……♪」ニコニコ

千秋「……………っ!!」

千秋「わ、分かった! アレね!」

桃華&ゆかり「……♪」ニコニコ

千秋「そのゲームのテーマは『アイドルのプロデュース』」

千秋「レッスンやLIVE、衣装やプロダクション、その他のイベントといった形でほかのプレイヤーとも競い合い……」

千秋「切磋琢磨、日進月歩。我が子のように、または掛け替えのないパートナーとして、その子達と苦楽を共にし歩み、一流のアイドルを目指すシュミレーション」

千秋「簡単に言えば……、プレイヤーはプロデューサーの立場として、お気に入りのアイドルを探し、ユニットを組ませたり、またはお気に入りの子を手に入れるために死力を尽くして遊ぶゲーム」

千秋「アイドルを疑似恋愛のような感覚で愛でたり、好きな楽曲を楽しんだり、人材養成のような感覚で育成に励むのは、まあ人それぞれのプレイスタイルだけれど……」

千秋「国内で大ヒット、2015年にはアニメ化もされ、200名を超える可愛らしい女の子のキャラクターは多くの人達に愛され、輝く舞台で本当に舞い踊るかのようなモデルチェンジしたアプリもリリースされ……」

千秋「グランブルーファンタジーや進撃のバハムートともコラボし、作内で展開されている4コマ漫画もいよいよアニメ化。その人気はとどまるところを知らない………まさにアイドルゲーム、いいえ、ソーシャルゲームの金字塔」

千秋「……バンダイナムコエンターテインメント(旧バンダイナムコゲームス)とCygamesが開発・運営する『THE IDOLM@STER』の世界観をモチーフとする携帯端末専用のソーシャルゲーム」






千秋「『アイドルマスター シンデレラガールズ』(THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS)…………ね」
















桃華「『パズドラ』ですわーーーっっっ!!!!!!」




千秋「(パズドラ!!!)」


桃華「もうっ! 一体何をおっしゃいますの、千秋さん?」

ゆかり「ふふっ♪ ちょっと何を言っているか分からなかったです」

千秋「ゴ、ごめんなさい。聞かなかったことにして頂戴」

卯月「(………)」

桃華「……こほん」

桃華「ソシャゲの全盛期。激化する産業競争の口火を切った急先鋒『パズル&ドラゴンズ』」

桃華「RPGとパズルゲームを融合させた『パズルRPG』、です♪」

千秋「略して、パズドラ?」

桃華「いかにもっ!」

桃華「モンスターの収集と育成、そしてバトル。単純、かつ奥深くも爽快なパズルアクション」

桃華「今現在、この日本で最も遊ばれているアプリと称しても過言ではありませんわ」

ゆかり「ちなみに“ランク”と呼ばれる、他のゲームでいうところのプレイヤーのレベルがあってですね? 私のランクは90です♪」

桃華「わたくしは530ですわっ!!」フフン

卯月「よ、良く分からないけど……、す、すごいね」

桃華「琴歌さんは200、ライラさんは110、時子さんは160とおっしゃられていました♪」

卯月「(みんなもうやってた!!)」

千秋「(櫻井さん一人だけ高っ!!)」

桃華「さあっ♪ お二人もいますぐダウンロードですわっ♪」





━━━━━━30分後━━━━━━


卯月「えーっと……?」

卯月「最後に、このガチャを引くのかな?」

桃華「はい。それでチュートリアルが完了ですわ」

千秋「(これでチュートリアル……、結構疲れた)」

千秋「島村さん、せっかく同じタイミングだし、一緒に引きましょう?」

卯月「あ、ハイ。いいですよ」

千秋「わっ。なにコレ」

千秋「このドラゴンがガチャ本体なの?(変なの……)」

卯月「腕を下方向にフリックするんですね?」

桃華「お、お待ちください! まずはそのガチャドラの頭を優しく10秒間撫でてあげてくださいまし!!」

ゆかり「スマホを6回上下に振ってから引くと、良いモンスターが引けるらしいですよ!」

千秋&卯月「は、ハイ……」スリスリ

千秋&卯月「せーの……」

───スッ




ポロッ☆


千秋&卯月「!!!」

千秋「げ、『激レア』ですって!?」

卯月「わっ……、可愛いっ♪ この猫のキャラクター♪」

千秋「あっ!? 島村さんのキャラ、確かに可愛い………私のはなんか屈強でゴツゴツしてて、ちょっとヤダ」

千秋「でも激レアだからかなり強いのよね? このキャラも」

桃華「フッ……」

ゆかり「ふふっ♪」

桃華「微笑ましいですわ……」

ゆかり「微笑ましいですねー♪」

千秋&卯月「(???)」





━━━━━━1時間後━━━━━━


千秋「………なぁんだ」

千秋「『激レア』だから、てっきりすごく強いと思いきや……、そうではないのね」

桃華「本来であればチュートリアルからガチャまで一連の流れを、あと3時間ほど繰り返していただくのですが………今回は省略します」

千秋「(さ、3時間……!?)」

卯月「より強いキャラクターを手に入れるためには、さっき引いた『ガチャ』をまた引けばいいのかな?」

桃華「!」

桃華「………はい、その通りですわ」

千秋「ふぅん………『1回:魔法石5個』」

千秋「なるほど。ガチャを1回引くためには所持している魔法石というアイテムを5個消費しなければならないのね」

卯月「千秋さん。この1時間で結構貯まりましたね?」

千秋「うん。私、何故か妙にマッシブなキャラばっかり手に入るから……」

千秋「そろそろ気分転換も兼ねて、心がゆるく和むような可愛いキャラが欲しい」

ゆかり「千秋さんが『たまドラ(※)』をパーティに入れた時は、私達は結構和みましたけどね♪」(※『たまドラ』:モバマスで言うところのマスタートレーナー。育成用素材キャラのため戦力にはならない)

千秋「(み、水本さんって無垢な顔して普通に毒吐いてくるわね……用心しよう)」

卯月「私は……、チュートリアルで引いた金の卵から出たキャラが結構強いですし、もう少し様子見ですかね?」

千秋「(くっ! 普通に悔しい……!)」

千秋「……いま所持している魔法石は20個だから、4回ガチャを引ける。4回」

千秋「まあ4回も引いたら、流石に1回くらいは一番良いレアリティが出るでしょう」

千秋「(……♪)」

桃華「ハァ……」

ゆかり「フー……」

千秋「??」

桃華「………大甘の中の大甘」

桃華「愚の愚」

ゆかり「人生舐めてる……」

千秋「そこまで!?」


桃華「申し訳ありません、少し言葉が過ぎましたわ」

千秋「いえ、別にいいわ」

桃華「では……、ここから本題に入っていきましょう。庶民一般でいうところのソシャゲとは何たるか」

桃華「ソシャゲを製作する会社は、ゲーム性、ストーリー、そしてキャラクターの魅力等を武器に消費者に売り込みます」

桃華「さて、水曜日さん?」

桃華「ソーシャルゲームにおいて最も重要なファクターは何だと思います?」

千秋「重要……」

千秋「それは勿論、ゲーム性でしょう? ゲームは楽しくなければモチベーションが上がらないもの」

桃華「確かに、基盤となるゲーム性の質と安定性は必要不可欠ではありますし、ユーザーがプレイするゲームを探す際、主に着目する要素ではありますね」

千秋「違うの?」

桃華「では次に、木曜日さん?」

卯月「えっと……」

卯月「やっぱり、気楽に遊びたいですよね」

卯月「空いた時間で、気軽に、サクサクと。場所も問わず、年齢も幅広い層に向けて」

卯月「ソシャゲならではの、単純明快なストーリーが一番のウリなんじゃないかなぁ……って思うけど、どうかな?」

桃華「ふむふむ………、いえ、素晴らしい着眼点です」

桃華「木曜日さんがおっしゃられるのもまた、限りなく正解に近い意見でしょう」

卯月「じゃあ、桃華ちゃんが考えているのは……?」

桃華「はい。最も重要なファクターは、『コレクション要素』ですわ」

桃華「その対象はキャラクターであり、アイテムであり、称号であり……」

桃華「土曜日さん。何故だかお分かりになりますか?」

ゆかり「そうですね……。キャラクターなどは一番目に付く、そのゲームを象徴するような存在だからですか?」

桃華「はい。第一に『集客効果』」

桃華「先ほど、千秋さんがおっしゃったとおりですわ。仮にソシャゲの看板を背負うキャラ達が、ゴリゴリのマッシブで益荒男のような殿方達でひしめいていたら……」

桃華「……どう思われます?」

卯月「私は、キュートなキャラの方が良いかな?」

ゆかり「そうですねぇ……」

千秋「仮にそうなら……、まあゲーム内容にもよるわね。そういうカテゴリなのかなって想像するわ」

千秋「一部の層にはウケそうじゃない?」

桃華「(……っ!?)」

卯月「そ、そういうカテゴリ……!?」

ゆかり「千秋さん……!?」

千秋「ッ!?」

千秋「あっ!! ちちち、ちがっ、違うわよ!! 私がそういうのが好きとか言う意味じゃなくて!!!」

千秋「あくまで客観的な話!! カテゴリっていうのは、そのっ、格闘技とか、ミリタリーものとか……………くっ!!!」

千秋「み、水本さん!! お願いだから椅子を離さないで!!!」


桃華「…………コ、こほん」

桃華「は、話を元に戻してよろしいですか…………、す、水曜日さん」

千秋「是非とも!!」

桃華「つまりユーザーは自分の琴線に触れたカワイイ、カッコイイ、お気に入りのキャラクターを入手するためにソシャゲに勤しんでいると言っても過言ではありませんわ!」

ゆかり「うーん………ゲーム性や気軽さは、二の次ですか?」

桃華「それらの要素を蔑ろにする、というワケではありませんが……」

桃華「事実、先ほどのガチャで千秋さんは卯月さんに対しこう思いを抱かれませんでした? 『そちらのキャラが欲しい』『もう一回ガチャを引きたい』と」

千秋「うん………そうね」

卯月「私の引いたキャラの方が、レアリティが高いですしね」

千秋「ええ」

ゆかり「千秋さんのキャラの方が卯月さんのより遥かにマッシブなのに?」

千秋「ええそうよ!!」

卯月「つ、つまり………桃華ちゃんが言うところのソシャゲは、キャラクター収集を念頭に置いたカンジなのかな?」

桃華「流石は卯月さん! 的を射ていますわ♪」

桃華「5ポイント差し上げます♪」

卯月「(ウグッ……)」

千秋「(これ、沈黙は金かも)」

卯月「(千秋さん!?)」

桃華「庶民の方々がソシャゲにハマる理由は様々でしょう」

桃華「単純にそのゲーム性が面白い、ランキングで上位に入り名声を勝ち取る快感が欲しい、暇つぶし、オンライン上の交流、ゲーマー魂……」

桃華「しかし、それよりも捨て置けない理由がコレクション要素、収集癖に訴えたファクターに他ならないのです!」


ゆかり「コレクション要素……」

桃華「人間は自己顕示欲を持つ生き物です。我々も、庶民の方々も同じく」

桃華「ガチャで引いた可愛いキャラを皆に見せたい、強い装備を集めてランキング上位を目指したい、レアなアイテムを収集しコンプリートした達成感を味わいたい」

桃華「遊びやすさや数値的な強さ。それ即ち、レアリティが高いキャラやアイテムの所有数に比例するのです」

ゆかり「それは?」

桃華「そうですね……、あくまで例えですが」

桃華「わたくし達のようなアイドルをキャラとして収集し、LIVEなどやイベントを行うゲームがあったとしましょう」

卯月「うん、アイドル……」

桃華「ランクやレアリティはキャラの魅力。ゲーム的な用語で表現するならば戦闘力や発揮値と申しましょうか。そこで!」

桃華「我が事務所が誇る、3名しか在籍しない数少ないSランクアイドル。その中の一人である『神崎蘭子』さん」

桃華「彼女が満を持して登場したとしたら…………どうです?」

卯月「確かに強そう! 手に入れたいファンも大勢いるでしょうね」

ゆかり「自慢も出来ますし、戦力としても更にゲームを有利に進める鍵になりそうです」

千秋「……つまり」

千秋「仮にキャラに興味が無くてもゲーム内でアドバンテージを得るためには否応なくキャラを集めるはめになり、そこからキャラに愛着が沸き、所有欲が生まれる……!」

千秋「これは……良循環ね!」

桃華「では、ここからが真の本題です」

桃華「今までお話ししたのはソシャゲの魅力」

桃華「しかしそもそもの話、ソシャゲのゲーム性はコンシューマーゲームハードのそれと比べると、格段に劣ると言わざるを得ませんわ」

桃華「ゆえに、ゲーム性ではなく手軽さやコレクション要素に訴える部分もありますが……」

桃華「それに加え、他の利点を最大限に活用する。これこそソシャゲが近年大きくヒットしている理由に他なりません」

ゆかり「他の、利点?」

桃華「“課金”です」


卯月「課金……、ですか。ソシャゲと一緒によく聞く単語ですね」

千秋「ソシャゲしか出来ないの?」

桃華「いいえ。しかし先ほど卯月さんが仰られたように、『気軽に』『誰でも』遊べるソシャゲだからこそです」

桃華「この課金と収集要素を掛け合わせると、とてつもない魔性が顔を見せ、人々を欲望の渦へと誘うのですわっ!!」

千秋「うん。少し読めてきたかも」

千秋「さっきのパズドラのアプリを立ち上げた時も、気になったの。未成年に向けた注意書きで、“お父さんやお母さんに”とか“おゆるし”とか」

卯月「言われてみれば、明らかに低年齢層に向けた書き方ですね?」

桃華「課金は、やり方さえ知っていれば誰でも購入できてしまうのです。それこそ幼稚園児から高齢者まで」

ゆかり「それが社会的な問題になったことがある話も聞いたことがありますね」

桃華「ふふふ……。今回はそういったアナーキーで暗いお話は置いておきます」

ゆかり「ご、ごめんなさい。とんだ横槍を」

桃華「つまり!!」

桃華「“誰でも課金が出来る”というのは、言い換えると!」

桃華「“課金をすれば誰でも、ランキング上位に上り詰めることが出来る”!!」

桃華「“課金をすれば誰でも、強い装備を軒並み揃えることが出来る”!!」

桃華「“課金をすれば誰でも、憧れのキャラクターを手に入れることが出来る”!!」

桃華「……ですわ!!」

ゆかり「…………」

卯月「…………」

千秋「…………」

ゆかり「えっ??」

卯月「あれっ??」

千秋「うん……??」

桃華「????」キョトン

千秋「それってつまり逆に言ってしまえば“課金をしなければ楽しむことが出来ない”………、ということにならないかしら?」

千秋「じゃあ一番楽しめるのは多額を投入できる富裕層で、庶民は───」

桃華「ちっ、千秋さん!!!!」

千秋「えっ?」





桃華「50ポイント!!!!」





千秋「ン゙、ォ゙ッ……!?」


桃華「次期日曜日候補に向けて、大きくリードですわ! 流石は水曜日さん!!!」

卯月「…」

ゆかり「わぁー……♪」パチパチ

千秋「」

桃華「わたくし達セレブの底のない資金力をもってすれば、ゲーム内で大きなアドバンテージを獲得するのは容易でしょう。それこそ他の追随を許さない程に」

桃華「スタミナを回復させ無限とも思える時を跨ぎ莫大な経験値を一瞬で稼ぐことも、好きなキャラをコンプリートし嫁艦隊を舐めるように眺めることも、全鯖最終再臨宝具レベルをMAXにすることも……!」

桃華「……では、わたくし達より金銭面で劣る庶民の方々は?」

桃華「庶民はセレブよりゲームを楽しむことが出来ない?」

桃華「否ッ!! ですわ!!」

桃華「資金が無いのであれば!! 資金が足りないのであれば!!!」





桃華「命を削るのです!!!!」





卯月「い、命……?」

桃華「はい! 庶民にとってゲームとは遊びではないのです!!」

桃華「戦いなのですわ!!!」

ゆかり「戦い……!」

桃華「戦わなければ勝てない。そして」

桃華「たたかわなければ生き残れない……! 血で血を洗う戦火の中、遥か昔に散った名も無き課金兵が遺した言葉です」





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★櫻井桃華学習帳★

・たたかわなければ生き残れない【台詞】:たたかわなければいきのこれない
残酷で儚くも美しい世界における、悲しき宿命を的確に表現した台詞。
(※『たたかう』に当てる漢字は『多々買う』を正とする説もあるが詳細は不明)
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桃華「皆さま、想像が出来ますの?」

桃華「課金のために身を削る。ソシャゲのために命を懸ける彼ら庶民の凄まじい信念を」

ゆかり「彼らは、一体……?」

千秋「櫻井さん。初めに言っていたけれど、ゲームは、その……単なる遊びや戯れなんでしょう?」

千秋「大げさすぎじゃ……」

桃華「はい。しかしそれはあくまでわたくし達が見出した一義的なものに過ぎません」

桃華「多様な角度から物事を深める。それがこの七曜会の活動においては大切ですわ」

卯月「ふむふむ……」

桃華「───『これはゲームであっても遊びではない』」

桃華「わたくしの知己である、とあるゲームデザイナーの庶民の殿方はこう仰られました」

卯月「ゲームであっても……」

千秋「遊びではない……」

ゆかり「……深い、です。とてつもなく」

桃華「庶民は、日々の労働でお金を稼ぎます」

桃華「何のためでしょう。生活のため? 自分のため?」

桃華「いいえ、それは愛する者のためですわ」

千秋「愛する者?」

桃華「はい。愛する者のため、全てを捧げるのです。生活を、お金を、己の全てを……!」

桃華「注がれる愛は課金という形となり、愛する者を手に入れる糧となる」

桃華「わたくしがソシャゲに対する重要なファクターを、コレクション要素と申し上げたの最大の要因はここにありますわ」

桃華「ことキャラクターやアイテム等のコレクション要素が備わるゲームにおいて、庶民の方々の課金額はわたくし達の想像を遥かに凌駕します。廃課金兵と呼ばれる方々の熱量はそのなかでも一線を画します」

桃華「わたくし達が知るある殿方も、そのような気概を持ってわたくし達を…………いいえ。これは詮無きこと」

千秋「?」

桃華「……課金とは並々ならぬ信念と覚悟をもってこそ為せるプレイングであり、極限を更に超えた課金を経て入手したそれらは、この世の神秘を思わせるほどに尊い輝きを放つもの…………と聞いたことがありますわ」

卯月「愛ある課金……!」

千秋「愛あるプレイング……!」

千秋&卯月「(………………………………………)」

卯月「(なんだろう……何故か分かりませんが、胸が締め付けられる思いです……)」

千秋「(そうね……)」


桃華「……ゆかりさん」

ゆかり「はい」

桃華「課金は行いましたか?」

ゆかり「……はい」

桃華「お幾らほどでしょう?」

ゆかり「…………1000円ほど」

桃華「ありがとうございます」

千秋&卯月「(課金したんだ……)」

桃華「わずか1000円。されど1000円」

桃華「1000円を課金するために、彼らは一食を削る。1000円は課金するのに、スーパーで半額の惣菜を目敏く選ぶ」

桃華「生きるという営為に、刹那的に接している彼らだからこそ選択できる決断です」

桃華「獲るためには失う。この世の真理をソシャゲという媒体を通し、庶民は獣の本能のように観取し、その戦いに身を置いている」

ゆかり「そ、そんな………っ」

桃華「皆さまは、ありますか?」

桃華「ゲームに命を懸ける、その覚悟が」

ゆかり「────っ……」

千秋「身につまされる思いだわ。ソシャゲとはこれほどに壮絶な遊戯だとはね……」

桃華「? 以前なにかありまして?」

千秋「あ、いや違うの」

千秋「私自身は今まで課金も何もしたことないし、そういった浪費にはかかわりのない人生を歩んできたのだけれど」

千秋「その…………何故だか、他人事のように思えなくって……」

卯月「はい……」

桃華「……???」






【ソシャゲは適度に楽しむ遊びです】

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今日はここまで。また次回。
覚えていらっしゃっている方はお久しぶりです、早めに更新します。

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【幕間④】


━━七曜会・規律━━
ルール1:活動中は基本的に相手を見ること
ルール2:日曜日には基本的に服従
ルール3:基本的に本名を出さない
ルール4:処分を受けた者はその処分者に基本的に従う
ルール5:セクハラは基本的に厳罰
ルール6:七曜会のヒミツは基本的に漏らさない
ルール7:恋愛可。お金で買えない価値がある
ルール8:常に視野を広げ目標に邁進すること
ルール9:???
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【公園】


琴歌(月曜日)「みなさ~ん♪」ヒラヒラ

夏樹「おっ。やっとおでましか」

拓海「ん?」






千秋「!」

卯月「琴歌ちゃん! …………と、夏樹さんと拓海さん?」

桃華「お待たせしましたわ♪」ヒラヒラ

ゆかり「チンチコール♪(挨拶)」






琴歌「チンチコ~ル~♪(挨拶)」

夏樹「………」

拓海「………」

夏樹「……えっ?」

拓海「チ…………何?」

夏樹&拓海「…………???」

卯月「(千秋さん。琴歌さんのことを訝しげに見てますよ、あの二人)」

千秋「(ごく自然な反応ね)」

卯月「(何なんでしょう、この挨拶)」

千秋「(島村さん。今更気付いたのだけれど、特に深い意味は無いと思うの)」

桃華「チンチコール♪(挨拶)」


桃華「遅れてしまい申し訳ありませんでした。夏樹さん、拓海さん、月曜日さん」

拓海「ん。別に待ってないぜ(月曜日……?)」

夏樹「琴歌から面白い話も聞けたしな(月曜日……?)」

千秋「(木村さんと向井さんの不信感がすごい勢いで高まってる)」

琴歌「ツーリングというものを、初めて体験させていただきました♪」

琴歌「お二人に体を預け、あんなにもいっぱいの風を心地よく一身に受けるとは、とても新鮮でスリリングでした!」

千秋「えっ? ツーリング??」

夏樹「早朝から待ち合わせて、3人で奥多摩までな」

拓海「琴歌の送迎がてらな。暇だったし」

琴歌「風と朝日が溶け合う冷たい空気のなか、壮観な山の景色を堪能しながら味わう塩味の効いたカップ麺は、まさしく得も言われぬ幸福でしたわ♪」

千秋「(いいなぁ……)」

桃華「この時間は特別に、夏樹さんと拓海さんのお二人を招いて行います」

夏樹「まーた面白いことやってんのな、お前ら」

拓海「なんだ。夏樹は知ってんのかよ」

夏樹「ちょっとな。よく分からないけど」(※第一作参照)

ゆかり「桃華ちゃん。この公園で、一体なんのゲームを?」

桃華「よくぞ聞いてくれましたわ、土曜日さん」

桃華「この行うゲーム、それは……」

桃華「“決闘”です!!」

千秋&卯月「決闘?」


桃華「決闘と書いて“デュエル”と読みますの。この時間はデュエルを行いますわ」

拓海「遊戯王か?」

桃華「まさしく♪」

夏樹「あぁ、遊戯王カードか」

ゆかり「ユーギョー、カード???」

夏樹「有名だぜ。世界で一番売れているカードゲームだっけか」

ゆかり「お恥ずかしい話、まったく馴染みが無く……」

桃華「では、このデュエルについて簡単な説明を」

桃華「遊☆戯☆王オフィシャルカードゲーム(※以下、遊戯王カード)を用い、1対1で対戦するカードゲームですわ」

桃華「デッキを組み、多彩な効果を持つカードでバトルを繰り広げ、相手のライフポイントを先に減らした方が勝利となるユニークなルール」

卯月「遊戯王……、確か原作は漫画でしたっけ?」

ゆかり「卯月さん、ご存じなんですか?」

卯月「うーん、内容は知らないけれどタイトルだけならね?」

桃華「ちなみに水曜日さんはいかがでしょう?」

千秋「私も──────……ァッッ」

卯月「?」

千秋「…………私は」

千秋「その…………初耳だわ。ユーギオー」

桃華「そうですの? 卯月さんはやはり流石ですわね」

桃華「卯月さん、5ポイント贈呈ですわ♪」

卯月「(!!!!)」

卯月「(ち、千秋さん!! 千秋さんッ……!?)」

千秋「(ご、ごめんなさい……)」


桃華「原作では『マジック・アンド・ウィザーズ』という架空のカードゲームとして登場し、それが人気を博したことにより、名を改め商品化に至りました」

夏樹「懐かしいな。小学校の頃は男子どもが夢中でやってたよ」

桃華「まあ……!」

拓海「新聞にも記事で掲載されたりしてな。まさしく社会現象ってやつさ」

千秋「すごいわね。今もなお世界中で波及しているなんて」

桃華「ふふふ……♪」

夏樹「あっ、ワリィ。話の腰を折って」

桃華「滅相も無いですわ。むしろ嬉しいですわ♪」

桃華「お二人から当時のお話を聞けるとは、わたくしとしても興趣が尽きません」

桃華「遊戯王カードを含め、庶民一般の嗜みであるゲームを学ぶ今回の活動にとって非常にありがたいことです」

拓海「庶民一般……」チラッ

ゆかり「??」

千秋「……?」

拓海「(ははーん……)」

拓海「(おい夏樹よぉ、コイツらがやってること、ちょっと読めて来たぞ)」ヒソヒソ

夏樹「(アタシは知ってるよ。さっき琴歌も言ってただろ?)」ヒソヒソ

拓海「(……けどよ)」

拓海「(いや、まさか。なあ………なんでアタシ達、ここに呼ばれたんだ?)」ヒソヒソ

夏樹「(………まさかだろ。だってここ、公園だぜ?)」ヒソヒソ

夏樹&拓海「(…………)」

桃華「わたくしの知人である、世界的エンターテイメント企業の若手社長の庶民の殿方から、必要なカードと道具はお借りしましたわ」

千秋「櫻井さんの交友関係は広いわね」

千秋「北条さんにコンテナで贈ったハンバーガーの時とかもそうだし、食品添加物の教えとか、帝愛グループとか、先ほどのゲームデザイナーとか」

卯月「(一応、そんな人達でも括りは庶民なんですね……)」

千秋「(セレブの概念って何かしら……)」


桃華「こちらのアタッシュケースに遊戯王カードを多く取り揃えました。そしてこれがデュエルに使用するデュエルディスクと呼ばれる道具です」

ゆかり「あら?」

ゆかり「カードゲームなのに、机の上で行うものではないんですね?」

琴歌「そのゴツゴツした器具にカードをセットしながら勝負をするんです?」

ゆかり「形状から察するに、腕に取り付けるみたいですが……重そう……」

桃華「お二人とも、非常にナイスな質問ですわ♪」

桃華「庶民の方々がこのデュエルを行う際、どのような場所で実際に行うのか?」

桃華「ズバリ!」

桃華「バイクの上で決闘を執り行います!!」




ゆかり&琴歌「………エッ?」




千秋&卯月「バ、バイク……!?」




桃華「専用に整備された公道で、風と一体となりつつ興じるゲーム……、いえ、スポーツと言っても差し支えはないでしょう!」




千秋「公道で!?」

卯月「う、運転しながらですか!?」




桃華「スポーツには怪我やアクシデントは付き物。死と隣り合わせであり、まさしく命を懸けた“闇のゲーム”と言えるでしょう……!」




千秋「い、意味は!? バイクに乗る必要性は何!?」




桃華「ふふふっ……」




桃華「わたくしにも、分かりませんわ」




千秋「(───!?)」




桃華「共に学び、意味を見出すのです。庶民文化を探究する、七曜会の一員として」




卯月「(い、命を懸けて……!!)」

千秋「(学ばされる……!!)」


桃華「御賢察の通りですわ。デュエルと言えど、たかがカードゲーム」

桃華「カードゲームの基本性質から鑑みても、バイクを用いる必要性も理由も荒唐無稽で理解不能の極みではあります、が……」

桃華「しかし……わたくしは先程、ソシャゲの時間にも申し上げましたわ」

桃華「庶民の方々は、ゲームに命を懸けています」

桃華「心血を注ぎ、全身全霊を以って、身命を賭して………ゲームという戦いに興じるのです」

千秋&卯月「そ、そんな……!」

琴歌&ゆかり「………っ!!」

桃華「わたくし達が持つ固定的観念を破り、理解から目を背けずプライドを捨て去らなければ、彼らに歩み寄ることは叶いません」

桃華「本日、夏樹さんと拓海さんをお呼びしてありますのは他でもありません」

夏樹&拓海「……!」

桃華「お二方がバイクの運転を嗜み、なにより遊戯王カードを御存じという………とある筋からの情報提供を受け」

桃華「琴歌さんの送迎を兼ね、特別講師として招いた次第です」

桃華「……改めまして、夏樹さんと拓海さん」

桃華「スピードの世界で進化を遂げた“ライディングデュエル”。そのご指導、ご鞭撻のほどをお願いいたします」ペコリ

卯月「───っ!」

卯月「……よ、よろしくおねがいします!」

ゆかり「新たな境地へ……、少し不安に思う部分もありますが何卒ご教授を……!」

琴歌「カードゲームとバイク運転のシンクロ、とでも表現すべきでしょうか。ライディングデュエル……」

琴歌「……む、胸が熱くなりますわ!」

千秋「わ、私もちょっと見てみたいかも」

千秋「木村さん、向井さん………その、よろしくね?」

拓海「んー……」

拓海「……おう。いいぜ」

夏樹「(……)」

夏樹「(おいおい……待てよ拓海)」

夏樹「(コイツら、未来を見てきたエメット・ブラウンでも腰抜かすようなこと言いやがる。やめとけって)」

拓海「(まあまあ、そりゃあアタシらの単車じゃそんな芸当出来っこねえよ)」

拓海「……だが、ご教授ってなら出来るぜ」

拓海「桃華。お前にな」

桃華「?」

拓海「いいか? ライディングデュエルってのは────」




━━━━━━10分後━━━━━━



拓海「……ということだ」

桃華「……っ」

桃華「些か……、勉強不足でしたわ」

琴歌「ライディングデュエルには、専用のライセンスが必要なのですね」

拓海「バイクもカスタムしてねえし、区に事前申請も必要だ。万が一の際のプロテクターも無え」

桃華「面目もありませんわ。本来ならばわたくしの方であらかじめ手配すべき事であるのに、怠るとは……」

拓海「構わねえさ。なあ、夏樹?」

夏樹「ああ。ライディングデュエルはムリだが、桃華達でも簡単にやれるスタンダードの方式なら、アタシ達二人で面倒見るぜ」

桃華「では、今回はバイクを用いるルールではなく……」

卯月「机の上でやるんですね?」

桃華「いいえ。このデュエルディスクがあれば、場所は問わず可能ですわ」

桃華「わたくしも実際にデュエルをするのは初めてですし、そうですわね……?」

桃華「このままご指導頂けるというのならば、夏樹さんと拓海さん、それとわたくし達」

桃華「二つのチームに分配し、デュエルを行いましょう」

千秋「うん。分かったわ」

ゆかり「実際にどういうルールかも少し把握したいですし」

桃華「そうですわね。ルールブックも全てあちらに用意してありますので───」



夏樹「(………ふぅ)」

夏樹「(いやぁ、上手くごまかしたな。拓海)」

夏樹「(桃華達、庶民の遊びを体験したいみたいだけどよ……)」

夏樹「(まあ、なんつーか間違った知識とかネットの誤情報に踊らされてたりとか、現実と2次元をごちゃごちゃにしているというか……)」

拓海「(………? ごまかす?? 間違った???)」

夏樹「(あ?)」

拓海「(ごまかしてないだろ。ライセンスの有無、専用カスタムバイクの使用、区への事前申請……)」

夏樹「(………………)」

拓海「(それより見ろよ、あのデュエルディスク。サイズが小さめの、折り畳み機能が無い旧式だぜ?)」

拓海「(試作機を貸し出すってことは、桃華の知り合いって本当にまさか…………なあ、おい聞いてんのか?)」

夏樹「(………………)」

夏樹「(………………なんでもいいよ。はやいとこ、デッキ作成の手伝いしてやろうぜ)」

拓海「(なんだよ、疲れた顔しやがって……???)」



━━━━━━30分後━━━━━━



桃華「では♪」

桃華「デュエルを始めていきましょう♪ 勝負ですわ千秋さんっ!」

千秋「………っ」

千秋「(重ッ……。なにこの器具……腕に付けているだけでかなりの筋トレになりそうな重量なんですけど……っ)」ヨロヨロ




☆チーム
→千秋(決闘者)、卯月、夏樹

★チーム
→桃華(決闘者)、琴歌、ゆかり、拓海




拓海「デッキは分かりやすく初期のカードで!」

夏樹「ライフポイントは8000な。ちゃっちゃと行こーぜ!」(ライフポイント、以下LP表記)

拓海「ちなみに桃華のデッキはアタシが、千秋のデッキは夏樹が手伝って作ったぜ」

拓海「(夏樹。負けた方はメシ奢りなっ!)」

夏樹「(上等だ。泣いて詫びることになるぜ、拓海!)」

卯月「千秋さん、ファイトですっ!」

千秋「ええ。負けないわよ、櫻井さん!」

桃華「フフッ♪ 気合充分ですわね水曜日さん、実に善いことです」

桃華「次期日曜日候補の実力、存分に発揮してくださいな♪」


















千秋&卯月「(…………───────!!!!!!!!!!)」


千秋「…………シッ」チラッ

千秋「島村さん…………カ、代わる???」

卯月「チ、千秋さん!! 頑張りましょう!!!!」グッ!

千秋「島村さんっ……貴女とは分かり合えると思っていたのに……ッ」

卯月「い、いやいや!! 千秋さんこそ、さっき!!!」

千秋「(くっ、……そうだった。我が身に跳ね返るというやつね)」

桃華「では、いざっ!」




━━━━━━決闘開始!━━━━━━




桃華「わたくしから参りますっ!!」ズァッ!

桃華「【強欲な壺】を発動し、デッキから2枚ドローしますわ!」

桃華「守備表示でモンスターをセット! 1枚カードを場に伏せてターン終了ですっ!」

千秋「次は私のターンね」

千秋「(………)」

夏樹「(さーて。じゃあ定石通り攻めますか)」

千秋「(………木村さん)」

千秋「(身の程を弁えず申し訳ないのだけれど、アドバイスを請う上で一つお願いがあるの)」

夏樹「(うん?)」

千秋「(今回の勝負の流れだけれど……、その……)」

千秋「(櫻井さんが不審に思わない程度に白熱させるところまで盛り上げて、ギリギリのところで力及ばず私が敗北する…………っていう采配でお願い出来ないかな?)」

夏樹「(何だそりゃ)」


千秋「まずは……」

千秋「魔法カード【抹殺の使途】で、櫻井さんの守備表示のカードを除外するわ」

桃華「あら?」

夏樹「(除外されたカードは、【ニードルワーム】、………ね)」

夏樹「(ふーん……)」

千秋「次に、【大嵐】発動。伏せたカードは全部墓地に置いて」

千秋「……これで櫻井さんは無防備ね。私は───」

千秋「───【ミノタウルス】を攻撃表示で召喚」スッ



http://i.imgur.com/xAbjmxi.jpg



桃華「なかなか強そうなモンスターですわ」

千秋「このモンスターで、櫻井さんにダイレクトアタック!」

桃華「うぅっ!!」【★LP: 8000→6300】

桃華「ハァ、ハァっ……!!」プルプル

千秋「……」

桃華「ぐふッ! や……、やりますわね」

千秋「(なにあの迫真のやられ演技……、これ、私もやる流れなの???)」

夏樹「(スゲー……、これが本物のソリッドビジョンシステムか。こんなリアルな立体映像、初めて見たなぁ)」ジー

琴歌「桃華さん、まだまだこれからですっ!」

ゆかり「どちらも頑張ってくださーい♪」



━━━━━━省略━━━━━━



夏樹「千秋。手札の魔法と罠カードを、全部伏せとこうか」

千秋「ええ、分かったわ」

拓海「ッ!?」

拓海「アーーッ!! ずりィ!!!」

夏樹「ずるかねぇ、真っ当な戦法さ」

千秋「3枚のカードを伏せて、私は……とりあえずこのモンスターを召喚よ」



http://i.imgur.com/ldEj8RK.jpg



桃華「【ブラッド・ヴォルス】……魔獣人。これもなかなか強そうなモンスターですわね」

千秋「まずは【ミノタウルス】で、櫻井さんの守備表示カードを攻撃!」

桃華「守備表示のカードは【メタモルポット】ですわ!」

桃華「リバース効果っ! えーっと……お互いの手札を全て捨て、それぞれデッキから5枚カードを引く…………ですわ!」

桃華「ふふふっ♪ デッキをかなり消耗していますね、千秋さん?」パサッ

千秋「うん? そうね……??」

千秋「(カードを全部伏せたおかげで、捨てなくて済んだのは助かったけど)」

拓海「(………)」

夏樹「(………♪)」

千秋「次は、このターンに召喚した【ブラッド・ヴォルス】で、櫻井さんにダイレクトアタックよ」

桃華「───ッ!!」【★LP: 3400→1500】

桃華「ああああッッ、う、クッ!」

桃華「いやあああっーーーー!!」ズザー!!

千秋「そこまで派手に転ぶ必要ある?」

桃華「ハァ……ハァ……」

琴歌「た───っ!」

琴歌「タイム! タイム!!」

ゆかり「レフェリータイム!!」

千秋「レフェリータイム!?」


琴歌「桃華さんっ! これを……!」

ゆかり「これで気力を、いいえ、庶民力を! 庶民力を回復してください!」

卯月「(庶民力!?)」

琴歌「添加物どっぷりの無果汁ですわ! さあっ、どうぞ!!」

夏樹「(ただの炭酸ジュースじゃねーか、160mlの)」

桃華「ハァ、ハァ……!」カシュッ!

桃華「むぅっ───!」ゴキュゴキュゴキュ!

琴歌「のーんでっ、のんでのんでっ♪」

ゆかり「もういっぽん♪」スッ

桃華「はぁぅ───!!」ゴキュゴキュゴキュ!

桃華「────っ、ぷふぅ!!」

拓海「(ウマそうに飲むなぁ)」

千秋「(なにコレ)」

桃華「はぁ、ふぅぅっ! 庶民力が高まり、溢れますわ……!」

千秋「………」

桃華「……お待たせしました、水曜日さん」

千秋「あ、いえいえ……」

桃華「わたくしのターンです、庶民力が漲ったわたくしを甘く見ないことですわ!」

桃華「ところで、デュエルにおいて、“ディスティニー・ドロー”を御存じでして?」

千秋「ディスティニー・ドロー??」

卯月「destiny draw…………直訳で、運命の引き?」

夏樹「ん……、【デステニー・ドロー】か?」

桃華「いいえ、“ディスティニー・ドロー”。それは運命をも味方に付ける力」

桃華「劣勢に立たされた時に、その状況を打破し逆転につながる最高の切り札を引き当てる。それがディスティニー・ドローです」

千秋「」

千秋「い、いやいや。手品のつもり?」

夏樹「漫画やアニメのヒーローじゃあるまいし、な?」

拓海「……っ!」

拓海「ま、まさかよ……、あの伝説のドローのことかっ……!?」

夏樹「拓海、お前何言ってんの?」


桃華「庶民の力を侮ってはなりません! そして庶民力を補給した今、わたくしにも可能であるということをッ!!」ドン☆

桃華「はあぁぁーーーーーーーーっ!!!!」

卯月「で、デッキから謎の光が!!」

千秋「(まぶしッ!! 目に悪い!!!)」

桃華「おいでなさいッ!! わたくしの相棒ぉぉぉーーーーーーーっっ!!!!」




桃華『ディスティニー・ドローーーーーーーーーーーーーーッ!!』





───スッ













桃華「………」

千秋&卯月「………」

桃華「……2枚のカードを場に伏せて」

千秋&卯月「………」

桃華「……た、ターン………」

桃華「………………………………ターンエンド、ですわ……」

千秋「(………)」

夏樹「(千秋のリバースカードに【はたき落とし】があったが……、まあ使わなくてもいいか)」

千秋「(それは?)」

夏樹「(相手が今引いたカードを、そのまま捨てさせる罠カードだよ)」

千秋「(やめてあげて……)」


夏樹「……まあ、どっちにせよ」

夏樹「もうお前の勝ちだぜ。千秋」

桃華「ま、まだ勝負はついていませんわ!?」

拓海「くっそー……。デッキ破壊デッキはそう上手く嵌らねえかぁ」

千秋「デッキ破壊?」

夏樹「ああ。デュエルの勝利方法は、例外もあるけど基本は『相手のLPを0にした時点』か『相手の山札(デッキ)を0枚にしてカードを引けなくした時点』でさ」

夏樹「桃華は、後者を狙った玄人向けのデッキで挑んでたんだよ。デッキ組んだのは拓海だけど」

千秋「確かに……、やけにカードを引かされたりして、捨てさせられたりしたわね。そういう効果のカードも多かった気がする」

卯月「デッキ構成にも、特色があるんですね?」

拓海「ああ。融合デッキ、トゥーンデッキ、種族デッキ、テーマデッキ…………戦法も全然違ってくるし、奥が深いんだぜ?」

琴歌「ふむふむ。色々あるものですわ……!」

夏樹「とりあえずこの勝負を付けようか」

千秋「そうね。手札から【ゴブリン突撃部隊】を攻撃表示で召喚」



http://i.imgur.com/iRURuOa.jpg



ゆかり「(………)」

千秋「そのまま櫻井さんに直接攻撃よ!」

桃華「罠カード発動! 【聖なるバリアーミラーフォース】っ!」

桃華「相手の攻撃宣言時、相手の全ての攻撃表示モンスターを破壊ですわ!」

千秋「あっ!?」

千秋「…………っ!」

千秋「こ、これで………私のモンスターカードが全部やられちゃったけど、マズイんじゃないかな?」

夏樹「あちゃー、やられたな」

桃華「(フフフっ♪)」

夏樹「じゃあこっちは罠カード、【リビングデッドの呼び声】だ」

桃華「あうっ!?」

千秋「そ、そうね! これで私のモンスターが1体生き返るわ!」

千秋「【ジャイアント・オーク】を墓地から呼び戻して、これで……!!」



http://i.imgur.com/w3AVcxQ.jpg



ゆかり「(………)」

ゆかり「あの~……」

拓海「どうした?」


ゆかり「はい。先ほど拓海さんは、戦法によって組み方が変化し千差万別のデッキがあると言っていましたが……」

拓海「ああ」

ゆかり「では、千秋さんのデッキは一体、何を念頭に置いて構成されているのですか?」

ゆかり「見ていると随分、その………たくましいイラストのモンスターカードが多い気がして……」

千秋「(───!?)」

琴歌「どことなく凶悪で、かなり強そうな絵柄のモンスターばかりですわ」

拓海「確かにな。種族で統一してるカンジとは違うし……脳筋デッキか?」

卯月「屈強モンスターデッキ?」

ゆかり「マッシブデッキ?」

千秋「」

夏樹「………」

琴歌「(あっ………)」

卯月「ち、千秋さん……?」

ゆかり「や、やっぱり……」

桃華「いえ、お待ちください!」

桃華「もしや千秋さんのデッキは、『くっ! ころ───」

千秋「ジャイアント・オーク!!」

千秋「櫻井さんに、ダイレクトアターーック!!!」

ジャイアント・オーク『グオオオオオオォォ!!!!』

桃華「ぅあああああああああああああああっっ!!!!!!!!!!!」



【★LP: 1500→0】



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【幕間⑤】


『櫻井桃華学習帳(通称・モモカ学習帳)』

櫻井桃華学習帳とは、庶民文化探究を目的とする七曜会リーダー・日曜日である櫻井桃華が活動に支障が出ないよう、とあるツールを使って独自に収集・調査した庶民文化の用語や知識や解説がまとめられた手記であり、全4巻から成る汗と涙の結晶である


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【タクシー内】


桃華「次に足を運ぶのは、喫茶店です」

千秋「喫茶店でゲームを?」

桃華「ええ。午後からの予定は、全てその喫茶店で行います」

桃華「お仕事を終えた金曜日さんと火曜日さんとは、そこで待ち合わせていますのよ」

千秋「財前さんとライラさんもいよいよ合流するのね」

卯月「そういえば」

卯月「今向かってる喫茶店って、ひょっとして……」

千秋「??」

卯月「例のイベントの、企画店舗のうちの一つだったよね?」

千秋「例の───………っ、あぁ!」

桃華「御賢察ですわ、卯月さん。おっしゃる通り」

桃華「七曜会のメンバーには居りませんが、我が事務所で現在進行中のイベントで提供して頂いている店舗の一角ですわ」

千秋「だとすれば多くても、5、6人は誰かアイドルが働いてるのよね?」

桃華「シフト性だとは思いますが、おそらくは」

卯月「じ、邪魔しないようにしなきゃ……」

桃華「ご安心を♪ 本日は貸切ですわ♪」

千秋「けれど、羽を伸ばし過ぎてもダメだからね? 櫻井さん」

桃華「もちろんっ♪ もちろんですわ千秋さん♪」

卯月「(イベントかぁ。誰がいたっけ……?)」


━━━━━━15分後━━━━━━
【〇〇喫茶・店前】


桃華「お待たせ致しましたわ、火曜日さん! 金曜日さん!」

ライラ(火曜日)「ちんちこーる(挨拶)ですよ、モモカさん」

時子(金曜日)「………」

千秋「お疲れ様です。財前さん、ライラさん」

時子「……ええ」

卯月「この場所が、さっき話してた喫茶店ですね?」

ゆかり「7つあるうちの協賛店舗の中では、一番小さい店舗らしいです」

琴歌「しかしアンティークの看板や置物、調度品がありますわ♪ 外景からでも良さそうな雰囲気が伝わってきます♪」

千秋「喫茶店というよりはバーに近い印象だけれど……」

時子「そろそろ足が疲れたわ」

ライラ「おなかも空きましたですよ~」

千秋「アッ! は、はい。行きましょうか、櫻井さん」

桃華「…………」

千秋「櫻井さん?」

桃華「…………感無量です」

桃華「わたくしがこの会を開催してから早一年。ついに七つの曜日が……」

桃華「……同じ志の皆さんと、時間を共にできる日が来ようとは」

千秋「(……!)」

時子「……何でもいいわ」

時子「感傷に浸ってないで、早いところ余興で笑いの一つでも取ってみなさい。ホラ、さっさと」

桃華「え、ええ! さあ皆さん、中へ入りましょう♪」

千秋「……」



───カランカラン♪



━━━━━━━━━━━━
【メイド喫茶・店内】



店長「───!」ガタッ!

店長「櫻井様! ようこそお越し下さいました!!」

桃華「今日はお世話になりますわ♪」

店長「ウィ、マドモアゼル! 本日はごゆっくりと、楽しいひと時をお過ごしください。僭越ながらスタッフ一同で、心よりお持て成しをさせて頂きます」

店長「………おぅい。みくにゃん」パンパン



みく「お、お帰りなさいませ、ご主人様……!」



千秋&卯月「!」

千秋「ま、前川さん!」

卯月「その恰好……、あっ! そ、そうか!」

卯月「メイド喫茶!」

ゆかり「今回のイベントは、そういう趣向でしたものね♪」

琴歌「猫耳も相まって、とっても愛らしいコスチュームですわ♪」パシャパシャ!

みく「(ぐっ……、何故に桃華チャン達がこの店に)」

店長「(上客だ。チップの催促を忘れるな、毟るところまで毟れ)」

みく「(いや、絶対しないし)」

みく「こ、こちらへどうぞ♪ ご案内いたします~」




時子「………………」




みく「(───ッ!?)」ビクッ!

時子「そこの張り紙に『任意の追加オプション可。料金、要相談』と書いてあるのだけれど」

時子「内容はいかなるものかしら?」

店長「はっ! 膝枕から、首輪を付けての市街散歩まで!」

みく「絶対にしないから!!!」


━━━━━━10分後━━━━━━



桃華「さて、注文も済みましたし」

琴歌「この時間は、どのようなゲームを??」

桃華「このメイド喫茶で行うのは『じゃんけん』です」

ゆかり「じゃんけんって、あの?」

桃華「ええ。皆さんが恐らく頭の中に思い浮かべたじゃんけん、それで相違ありませんわ」

桃華「簡素故にこれ単体で遊ぶというよりは、何かの目的のための手段であったり、他のルールや条件を付随させるものも多く見受けられますわね」

桃華「例えば……わたくしはあまり馴染みが無いですが」

桃華「給食で余ったプリンを手に入れるために大勢で。あるいは物事の順番を決めるために採用されたり、時には多重債務者がひしめく船内で命を懸けた催しごととして繰り広げられたり……」

千秋「(最後のは何)」

卯月「(やっぱりどのゲームでも命を懸けるんですね)」

桃華「多くとしては、何かの勝敗を決するために用いられるのがこの『じゃんけん』ですわ」

桃華「さて、あと20分ほどでしょうか」

琴歌「13時です?」

桃華「はい。このメイド喫茶では13時より───」






桃華「“萌え萌えじゃんけん大会”を開催いたしますのよ♪♪」






時子「……もえもえじゃんけん?」

桃華「ヒッ!?」

千秋「(やばい)」

アーニャ「イズヴィニーチェ シュトー ザデルジャールシャ♪」

アーニャ「こちら『しろくまさんフロート』と『きらきらラメとバニラアイス盛りホットケーキ』、『がっつりカツカレー』、『はつみつワッフル、洋梨のコンポート添え』になります♪」

ライラ「全部ライラさんですよー」

千秋「全部!?」

ライラ「はい。お仕事でお腹が空きましたです」カチャ

千秋「お、お疲れさま……」

卯月「というか、アーニャちゃんっ!」

アーニャ「ズドラーストヴィチェ♪ ご主人様ー♪」


琴歌「お疲れ様です、アーニャさん♪」

桃華「ごきげんよう♪ ちょうどいいタイミングですわ」

桃華「アナスタシアさん? よろしければ、この萌え萌えじゃんけんと大会の概要について具体的な説明を頂けますでしょうか?」

アーニャ「ダー♪ パニャートナ♪」

アーニャ「私達メイドさんとみなさんで、じゃんけんの勝負をします」

アーニャ「最後の一人まで、続けます。勝ち残った人には、記念の撮影と、豪華な賞品をプレゼント、ですよ?」

ゆかり「思ったよりシンプルですね」

千秋「じゃんけんだしね」

アーニャ「あっ。あと」

アーニャ「掛け声と、ポーズがありまして」

卯月「うんうん……」







アーニャ「にゃんと♪ にゃいすな♪」







アーニャ「萌え萌えにゃんにゃん♪」







アーニャ「最初はにゃん♪ じゃんけん……」







アーニャ「ぽーん!」











桃華「カワイイ!!!」ガタッ!

琴歌「ソレですわ!!!」ガタッ!

ゆかり「やりましょう!!!」ガタッ!

卯月「かわいい……♪」

ライラ「………♪」モグモグ

時子「帰るわ」

千秋「財前さん!?」


アーニャ「記念の撮影も、この猫のポーズで、私達メイドと一緒に撮りますよ」

時子「帰宅意欲に拍車をかける有益な情報ね。これで心置きなく店を後に出来るわ」スッ

桃華「か、勝てばいいだけですわ金曜日さん! それとも……」

桃華「………モ、もしかして自信が無いんです?」

時子「低俗な挑発に揺れるほど、脆弱な精神を持ち合わせてはいないの。残念ね」

卯月「ま、まあまあ……」

卯月「折角ですし、ね? 時子さん、その……ようやく全員が集まった訳ですし……そのぉ……っ」オロオロ

時子「………」ジロッ

卯月「…………………………………………………………………………………………ナ、ナンデモないデス……」

千秋「(し、島村さん!)」

桃華「(も、もうちょっと頑張って下さいまし!!)」

卯月「(ゴ、ごめんなさい……)」

みく「お待たせにゃー♪」トコトコ

みく「こちら『よくばりキッシュプレート』と『サンライトエッグガレッド』と『にこにこポテト盛り合わせ』になります♪」

ライラ「みくさん、それもライラさんですよー」モグモグモグ

みく「えっ、そうなの? すごい食べるね」

千秋&卯月「………」

桃華「………」

時子「………」






━━━━━━20分後━━━━━━


みく「ご主人様たち、お待たせしました♪」

アーニャ「ただ今から、“萌え萌えじゃんけん大会”を、はじめまーす♪」

みく「店内前方の、小さなステージまでお集まりくださいにゃ♪」

桃華「恨みっこなしの勝負ですわ!」

ゆかり「ふふふっ……腕が鳴りますね」

琴歌「豪華賞品はなんでしょう? 気になりますわ」

ライラ「ばっちこい、ですよー」

卯月「ライラちゃん、本当にすごい食べるね……」

千秋「………」チラッ

時子「………なによ」

千秋「ナ、なんでも……」


━━━━━━1回戦:アナスタシア━━━━━━


アーニャ「じゃんけんを担当するメイドさんは、私とみくが、交代で行います」

みく「ご主人様達、ポーズはバッチシかにゃ~??」

桃華&琴歌&ゆかり「はーい♪」

千秋「(ちょっと恥ずかしいけど)」

卯月「(そうですか?)」

アーニャ「さっそく、行きますよ?」

時子「………」

アーニャ『にゃんと♪』

桃華&琴歌&ゆかり「にゃいすな♪♪」

卯月「萌え萌えにゃんにゃん♪」

千秋「最初は」

ライラ「にゃん♪」

アーニャ『じゃんけん……!』

アーニャ『ぽーん!』





~~~~~~~~~~~~~~

アナスタシア:【グー】(※ 勝〇 負● 引△)

櫻井桃華:〇
西園寺琴歌:○
水本ゆかり:●
ライラ:●
島村卯月:△
黒川千秋:○
財前時子:○

~~~~~~~~~~~~~~



千秋「か、勝ったわ!」

時子「……………チッ」

桃華「ふふふっ♪ 楽勝ですわね」

ゆかり「まあ……」

卯月「ちなみに、あいこはどうするの??」

アーニャ「あいこの方は、もう一回ですよ」

卯月「よぉし、頑張りますよっ!」






※島村卯月、1回戦敗退●


━━━━━━2回戦:前川みく━━━━━━


卯月「(ふ、普通に負けた……)」

みく「残ったのは4人かにゃ?」

ライラ「皆さん、ファイトですよー」モグモグ

ゆかり「にゃー♪」

卯月「(あっ。負けたら着席か)」スッ

みく「じゃあ行っくよー!」

みく『にゃんと、にゃいすな♪』

桃華&琴歌「萌え萌え、にゃんにゃーん♪」

千秋「最初は、ニ、にゃン……ッ!」

みく『じゃーんけーん! ぽーん♪』





~~~~~~~~~~~~~~

前川みく:【パー】

櫻井桃華:〇
西園寺琴歌:●
黒川千秋:△
財前時子:△

~~~~~~~~~~~~~~



琴歌「あうぅっ! し、賞品が……」ガクッ

千秋「そこまで欲しかったの?」

琴歌「もちろんですわ! 初めて耳にする珍しい催しでしたので非常に興味がありましたのに……」シュン

みく「あいこの二人は、もう一回にゃ!」

みく『にゃんとにゃいすな♪』

千秋「もっ、萌え萌え……にゃん、にゃんっ!」

みく『最初は~♪』

時子「………」

千秋「じ、じゃんけん……………、ぽん!」






※黒川千秋、2回戦敗退●
 財前時子、2回戦勝利○


千秋「……ふぅ」

卯月「桃華ちゃん、つよいね!」

桃華「フフフ……!」

桃華「じゃんけんとは、シンプルに見えてなかなか奥深い遊びです」

千秋「そうかしら?」

桃華「はい。じゃんけんとは心理戦ですの」

卯月「心理戦? 確率じゃなくて??」

時子「………」

桃華「モチロン♪ 一見、勝ち負け分け各33%の確率による運否天賦に思えますが」

桃華「洞察と研究次第で、この勝率を大きく上げることも可能です」

千秋「そうなんだ。ちょっとソレ興味深いかも」

桃華「例えば………最初、アナスタシアさんの手はグーでしたね?」

千秋「ええ」

桃華「統計的に、もっとも人が最初に出しやすい手がこのグーなのです」

千秋「へえ……!」

桃華「かつ!」

桃華「その他の判断材料としては、足の開き方・手の持ち上げ方・力の入り具合・視線・室温・日光の差し方・髪の流し方・風水も加味しまして、アナスタシアさんが最初にグーを出す確率は70%強といったところでしたわ!」

千秋「へ、へえ………………」

卯月「(風水……!?)」

桃華「みくさんは、パーでしたね。あいこの次もパー」

千秋「そうね」

桃華「時に、卯月さん? じゃんけんの際、全国的によく用いられる『最初はグー』という掛け声の起源はご存じでして?」

卯月「『最初はグー』の、起源?」

卯月「地域独特のものかと思ったけど………ううん、ちょっと分からない」

桃華「これは昔放送していた大人気バラエティ番組『8時だヨ! 全員集合』の出演者のアイデアと、それを基にしたコントがウケてお茶の間から全国に浸透していったという説が有望です」

桃華「さらにこの『最初がグー』の際に、握り拳の力の込め方と、手を出す位置が体から遠ければ遠いほど、そして振りかぶり方が大きければ大きいほど、パーを出す確率が上がると言われており……」

桃華「みくさんの元気なご様子から、パーと予測したまでです」

卯月「そうなんだ! すごいねっ!」

桃華「あいこの次の手は、無意識的に前回の手かそれより強い手を出す確率が高いと言われています」

桃華「あとは!」

桃華「声量・タイミング・体の傾き・腰の曲げ具合・身長・血行・髪のツヤ・手相から鑑み、みくさんの次の手も70%強はパーだと、わたくしは予想しておりましたわ!」

卯月「そ、そうなんだ………すごいね…………………」

千秋「(何故どれも途中から胡散臭くなるのかしら)」

時子「…………で?」

時子「次はまだかしら。早くして頂戴」

みく「あっ、はいにゃ! じゃあ───」




のあ「………みく。少しいいかしら」



みく「───にゃ?」

千秋&時子「!」

桃華「あら? 高峯のあさん……、だったかしら?」


のあ「店長が貴女を呼んでいる。厨房に、と」

みく「あっ、ハーイ。じゃあついでに……」

みく「のあにゃん? 萌え萌えじゃんけんの3回目、お願いできる?」

千秋「(『寡黙の女王・高峯のあ』。面と向かって会うのは初めてだわ)」

桃華「(次のお相手は高峯さんなのですね。ふふっ、相手に不足はありません♪)」

時子「(…………)」

のあ「………承知したわ」






━━━━━━3回戦:高峯のあ━━━━━━


ライラ「すみません、注文をお願いします」

琴歌「私もコーヒーのおかわりを頂けますでしょうか?」

アーニャ「かしこまりましたー♪」

卯月「(高峯さん、ここのメイド喫茶の配属だったんだ)」ズズズ…

のあ「………」

時子「………」

桃華「高峯さん。わたくし、櫻井桃華と申します♪」

桃華「初めまして、ですわね? 以後お見知りおきを」

───スッ


のあ「………………」

のあ「………………よろしく」スッ

桃華「よろしくお願いしますわ♪」ギュッ♪

桃華「(………フフフ♪)」

桃華「(こうもやすやすと握手に応じてくれました。ガードが甘くてよ、高峯のあさん)」

桃華「(利き腕は右ですわね。彼女の体温、手相、握力。ここから導き出す彼女のじゃんけんの手としては……)」

桃華「(………………)」

桃華「(………けれど高峯さん、握手のために右手と右足を同時に出した。これは緊張の表れ?)」

桃華「(いいえ、彼女は新人ながらも大物のオーラを放っていると話題を集める『寡黙の女王』)」

桃華「(これは、わたくしが心の内を探ろうとしている思惑を読み、あえて掻き乱そうと……、挑発……ッ!)」

桃華「(ふ、ふふふ……! あの涼しい顔の裏はその実、闘志で煮えたぎっているという事ですわね!!)」

桃華「(流石は寡黙の女王。心理戦、駆け引きの応酬……! 受けて立ちますわ!!)」

時子「………」


のあ『……にゃんと』

桃華「にゃいすな♪」

時子「………」

のあ『…………………時子』

桃華「金曜日さん、その………ポ、ポーズは?」

時子「アァ?」

のあ『萌え萌え』

桃華「にゃんにゃん♪」

時子「………」

桃華「(………………っ)」

桃華「(よ、読み切れませんわ)」

桃華「(高峯さんの手が絞れない……。声の抑揚からはチョキですが、しかし脚の開き幅だとグー。付けている猫耳のズレ具合から予想するにパー……)」

桃華「(いいえ。店内の湿気を加味すると、チョキかもしれない……!)」

桃華「(そ、そうですわ! 彼女の視線も判断材料に─────)」チラッ





のあ『………………』ジー





桃華「(ひっ………!?)」ビクゥッ!

桃華「(み、見られていますわ!! このわたくしの目論みが、み、見透かされている……!?)」

桃華「(これは恐怖……、いえ、屈服、甘受……!?)」

桃華「(鉄の壁すら射通しそうなほどに鋭いながら、どんどん人の心の中に入り込んできそうなほどの、どこか慈愛の温かさすらも感じるその視線!!!)」

桃華「(み、見透かされる……、し、思考が溶ける………!!!!!)」ガクガク

のあ『………………』ジー

のあ『じゃんけん』

桃華「うっ………、うあああああああああああああああああああああああっっ!!!!」

のあ『ぽん』







~~~~~~~~~~~~~~

高峯のあ:【グー】

櫻井桃華:●
財前時子:△

~~~~~~~~~~~~~~


桃華「────っ……」

桃華「完敗、ですわ」ガクッ

のあ「………」

時子「………」

卯月「桃華ちゃんが負けで、時子さんが………あいこ?」

千秋「この場合だとどうなるのかしら。最終的に残った財前さんが、勝者?」

時子「……ちょっと、冗談じゃないわ。無効よ」

時子「ハッキリしなさい、ホラ。そこの」

のあ「……?」

時子「アナタよ」

のあ「………………………」



みく「ただいまにゃー。のあにゃん、お待たせ!」トコトコ

みく「そっちはどう??」

のあ「………みく。後は任せたわ」

みく「??」





━━━━━━1分後━━━━━━


みく「えっと、じゃあ」

みく「あいこで残った時子さんと、みくで勝負を付けるというコトで」

時子「………」

桃華「金曜日さん、素晴らしい勝負を期待していますわ♪」

琴歌「勝ったら撮影と賞品ですよ~♪」

ゆかり「時子さん、頑張って下さいっ♪」

アーニャ「お待たせしました♪ こちら、えーっと、『チョコソースがけハンバーグプレート』と『醤油ラーメン』になります♪」

ライラ「………♪」モグモグ

卯月「アーニャちゃん、私も注文お願いしていいかな?」

桃華「アナスタシアさん? わたくし、セイロンオレンジペコティーを頂けますでしょうか?」

琴歌「私は『にこにこポテト盛り合わせ』追加でお願いします!」

ゆかり「私も少しお腹が空いたので、『貴女の心にプロシュートトースト、オリーブとルッコラを添えて』を♪」

千秋「あっ、私も頼もうかな。えっと……」

時子「………」

千秋「紅茶とコーヒーの品揃えが多いんだ。じゃあ……」

時子「……」

時子「……千秋。アナタ、あとで覚悟しておきなさいよ」

千秋「ご、ごめんなさい! ほ、ホラ、私も立っててあげるから……!」ガタッ

みく「準備はいいかにゃ? じゃあ───」

時子「そもそも」

みく「にゃ?」

時子「不服なのよ。この方式」

千秋「ふ、不服??」


時子「気が乗らない催しで、のみならず勝てば萌えポーズで写真撮影?」

時子「狂気の沙汰ね」

みく「ソ、そう言われましても……」

時子「いいえ。一度自分の意志で参加している身で、今更抜けるだの中止だの言うつもりはないけれど」

みく「えっ? じゃあ……」

時子「逆よ。逆」

千秋「逆?」

時子「せめて逆にしなさい。勝てば写真撮影ではなく、“負ければ”写真撮影」

時子「自らすすんで勝ち残りを望んでいるカンジが癪だわ。罰ゲームという名目で十分なのよ、罰ゲーム」





━━━━━━最終戦:前川みく━━━━━━
(※ルール変更。負け残った者が、店内メイドスタッフと写真撮影&賞品プレゼント)」


みく『にゃんと~♪』

みく『にゃいすな~♪♪』

時子「………」

千秋「ほら、財前さん。ポーズポー───」

時子「………」グリッ

千秋「───ズあ゙ッ! 痛っ!!! ふ、踏むなんて酷いっ……」

時子「はー…………ハイハイ」

みく『も、萌え萌えにゃんにゃん』

みく『最初はー……!』

時子「…………にゃん」

みく『っっ!!!』

千秋「ッ!?」

時子「殺すわよ」

みく『アヒッ!! ス、すみません!』

時子「じゃんけん……」

みく『ぽんっ!!』




~~~~~~~~~~~~~~

前川みく:グー
財前時子:チョキ

~~~~~~~~~~~~~~




千秋「───ま、前川さんが……」

卯月「か、勝った!!」ガタッ!

桃華「やったッッ!!」ガタッ!

ゆかり「やりました時子さん!!」ガタッ!

琴歌「写真撮影と豪華賞品GETですわ!!」ガタッ!

ライラ「おめでとうございますですよー」モグモグ!

千秋「(みんなやめてあげて!!)」


時子「はぁ?」

みく「か、勝った……(勝ってしまった!)」

桃華「(見れる………時子さんの萌えポーズで写真撮影ッッ……!)」

時子「待ちなさい。何を言っているの」

千秋「えっ?」

時子「これは私の勝ちよ」

桃華「いいえ金曜日さん、じゃんけんのルールとして『チョキ』は『グー』に負けるのですわ。『ハサミ』は『石』に勝てないのです」

時子「だから……」



みく「?」


http://i.imgur.com/nHXcGul.jpg



みく「!!」



http://i.imgur.com/gUhMeke.jpg



桃華「!!?」



http://i.imgur.com/vMdyrxI.jpg



千秋「」



http://i.imgur.com/cUGthpW.jpg



時子「覚えておきなさい。この世には」



http://i.imgur.com/FLHDQj0.jpg



時子「石をも断ち切るハサミがあるということを」



http://i.imgur.com/RSd8xnh.jpg












桃華「…」

みく「…」

千秋「…」

ライラ「すみません、注文をお願いしますですよ~」

──────
────
──

今日はここまで。また次回。
早めに更新しますー

──
────
──────
【メイド喫茶・店内】


桃華「さて………皆さま、ティーブレイクも済みましたし」

桃華「あぁ、火曜日さんはそのままお召しになっていて結構ですのよ」

桃華「本日最後のメニューと参りましょう」

千秋「それもこの店内で?」

桃華「はい。最後のゲームは庶民のパーティでは定番と言われるほど浸透している物ですわ」

卯月「パーティで定番? なんだろう?」

ゆかり「はい! はいっ!!」ビシッ!

桃華「土曜日さん、どうぞ」

ゆかり「『ロシアンルーレット』っ!」

桃華「残念、不正解です」

琴歌「はい! はいっ!!」ビシッ!

桃華「月曜日さん、どうぞ」

琴歌「たけのこたけのこニョッこ、ケ、ックキッキ……!!」

千秋&桃華&卯月「??????」

琴歌「ゴ、ごめんなさい。何でもないですぅ……」

桃華「木曜日さん、如何です?」

卯月「うーん………、び、『ビンゴゲーム』?」

桃華「いいえ、違いますわ。では水曜日さん」

千秋「えっと、『テイスティング』とか?」

桃華「それも違います。金曜日さん?」

時子「……………………」

桃華「デ、では最後に火曜日さん?」

ライラ「そうですねー……、『汝は人狼なりや?』??」

桃華「ハズレです。では正解を」

桃華「最後は───」

ライラ「すみません、注文をお願いしますですよー」

アーニャ「ズドラーストヴィチェ♪ ご主人様ー♪」


桃華「最後は、『女王様ゲーム』を行いますわっ!!」

千秋&卯月「女王様ゲーム?」

桃華「説明しましょう。女王様ゲームとは───」




━━━━━━━━━━
★櫻井桃華学習帳★

・女王様ゲーム【名詞】:じょうおうさまげーむ
“女王”と他に番号を書いたクジを割り箸で作り、“女王”と書かれたクジを引き当てた者が、他の者に様々ないやらしい命令(拒否不可)を下すことが出来る大人のゲームである
用例) 「女王かよォォォオオオオ!!」
━━━━━━━━━━




琴歌&ゆかり「い、いやらしい命令……!!」ガタッ!

千秋&卯月「お、大人のゲーム……!?」

ライラ「ふむふむー」

時子「……」

桃華「まあ、正味のところは“王様ゲーム”ですわね」

桃華「せめてゲームという遊戯だけでも、庶民が疑似的にヒエラルキーの頂点に立ち征服欲求を満たすために考案した淡い夢」

桃華「以前お仕事の前入りで遠方の旅館に宿泊した際、泰葉さんと薫さん、沙理奈さんと聖來さん…………そしてPちゃまと」

桃華「一度行ったことがあるのですが、勝手がわからずあまり馴染む事が出来ずにいたので」

桃華「このたび、あらためてチャレンジさせていただきたく存じますわ!!!」

千秋「へ、へえ」

卯月「そ、そうなんだぁ」

時子「………」

千秋「(いや。ていうか……)」チラッ

時子「………」

卯月「(女王様、いるんですけど……)」チラッ

時子「………」

桃華「さて! 使うのはこの割り箸クジのみ!」

桃華「早速参りましょうっ♪ 女王様ゲーム、スタートですわ♪♪」


━━━━━━★1st Challenge★━━━━━━


桃華「皆さま、どうぞお引きくださいな♪」

───スッ


千秋「…………っ(うわ、なんか緊張してきた。なんで?)」

ライラ「どれどれ、ライラさんのクジは───」

桃華「ああっ! 待って下さいましライラさん! 掛け声を合わせ、皆で同時にクジを確認するのです」

ライラ「了解ですよー」

桃華「せーのっ!」

桃華&琴歌&ゆかり『女王様だーれだ??』

千秋「(………)」チラッ

千秋「(私は5、ね。女王は───)」

ライラ「むむむー……?」

卯月「ん……」

桃華「………っ、…………ッ♪♪」ニヤニヤニヤニヤ

ゆかり「…………」

千秋「(……櫻井さんね)」

桃華「わたくしが女王ですわッ!!!!」

桃華「うふふふっ♪ さあて、どんな素晴らしい命令を下してあげましょうか!!」

琴歌「ハハー、女王さま~~!」

ライラ「なんなりとご命令をー♪」

ゆかり「く、ぐくっ………!」

卯月「(マズイ、ゆかりちゃんが本気で悔しがってる)」

時子「……」

桃華「では初めはオーソドックスに、小手調べ感覚の命令で行きますわ」

千秋「ハードなのはやめてね」

桃華「3番の方は、今日身に着けている下着の色を皆さまの前で公表してくださいまし!!!!」

千秋「(いきなりハードなの来た!!)」












時子「ピンクよ」








千秋「」

卯月「」

桃華「オーーーッホッホッホッ!!!!!」

桃華「時子さんの本日の下着はピンクですわッ!!!!!!!」

桃華「 ピ ン ク で す わ ー ー ー !!!!!!!!!」

桃華「~~~っ……!!」ゾクゾク!

卯月「(桃華ちゃん悦に入ってる!!)」

千秋「(女王様ゲームという免罪符を得て不敵に攻めてる!! 普段は絶対逆らえない財前さんを相手に……!!)」

桃華「さあっ! さあさあさあッ!!」

桃華「早く!! 早く次の番に参りましょう!!!」

琴歌&ゆかり「フフフ……!!」

ライラ「次こそはライラさんがー」

時子「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………チッ……」

千秋「────ッ!」

千秋「(し、島村さん! 協力しましょう!!)」

卯月「(ええ、千秋さん。分かってます、勿論察してます)」

卯月「(時子さんの機嫌が、目に見えて悪くなっていくのが。そもそも時子さん、萌え萌えじゃんけんの時からあまり乗り気じゃなかったですし)」

卯月「(真の女王様の、ご機嫌取りというワケですね)」

千秋「(流石は島村さんね。貴女とは本当に仲良くなれそう)」

卯月「(桃華ちゃんをはじめ皆、ヘンに気合が入ってますから。暴走したり、予測不可能な事態は極力避けたいです)」

千秋「(他にも仲間が欲しいところだけれど…………)」チラッ




桃華「き、興が乗ってきましたわ。ふ、ふふ、フフフフ……!」←【天然】

ゆかり「ハァー、ハァー……!」←【天然】

琴歌「今のうちに、命令を考えておきましょうかー♪」←【天然】

ライラ「次こそはライラさんがー♪」←【天然】




千秋「(て、天然しかいない!!)」

卯月「(私達二人で頑張りましょう!!!)」


━━━━━━★2nd Challenge★━━━━━━


千秋「(島村さん。目的は一つよ)」

卯月「(はい! 時子さんに“女王様”になって貰って、ゲームを思う存分楽しんで貰うこと!)」

千秋「(それと、他の天然達に女王のクジを取られて命令されるのは絶対にマズイわ。なんとしてでも───)」

桃華「さあさあ、皆さまクジを回収しますわ」

千秋&卯月「!!」

卯月「も……」

卯月「桃華ちゃん、今度は私がやるね。進行役を任せっきりも疲れるだろうし」ヒョイヒョイ

千秋「(島村さん、上手い!)」

千秋「(さりげなくアドバンテージを奪えた。これで時子さんに女王クジを引かせれば……)」

卯月「よーし! ハイッ!! じゃあ時子さんからぁ!!!」バッ!


バシュッ!!

シュン! ヒュッ!!



卯月「───なっ!」

ゆかり「フー、フー……!」

桃華「フフフフ……♪」

卯月「(疾い! 全員、獣じみた素早さと身のこなし……!)」

桃華「女王様だーれだ??」

琴歌「ううん、私ではないですわ」

ライラ「ライラさんも違いますねー」

卯月「私も……」

千秋「私よ」

卯月「!!」

卯月「(ち、千秋さん!)」

千秋「(私だってやる時はやるのよ。ふふん♪)」

卯月「(流石です! ………で、でも千秋さんが女王だと意味が……)」


千秋「2番の人は……」

千秋「厨房に行って、美味しいコーヒーを全員分淹れてきて。ついでにケーキも持ってきて頂戴」

卯月「(あっ!)」

卯月「(そうか! これなら女王として命令できる立場じゃなくても、このゲームを楽しんで貰えることが出来る!)」

千秋「(突破口は一つじゃないの、発想の転換よ島村さん。フフッ)」

卯月「(ち、千秋さん……、カッコイイ!)」



ガタッ

スタスタスタ…




千秋「…」

卯月「…」





























時子「ハイ」

時子「これ。タンザニアコーヒー」

時子「あとパウンドケーキ」





千秋&卯月「(女王かよォォォオオオオ!!)」

千秋「(こ……、こうも6分の1を引くとは)」

卯月「(に、二連続ですよ時子さん)」

桃華「わたくし、ケーキは紅茶派ですの。もう下げてよろしくてよ」

ゆかり「苦っ! ぺっ!!」

千秋「いや女王は私でしょ!? なんで貴女達そんなに偉そうなの!?」


━━━━━━★3rd Challenge★━━━━━━



卯月「(時子さん、コーヒーの淹れ方上手でしたね。美味しかったですよ)」

千秋「(ごめんなさい。せっかく島村さんが作ってくれたチャンスを……)」

卯月「(いえ。千秋さんの行動はほぼ完璧に近かったです。運が悪いことを除けば……)」

琴歌「はいっ♪ ではでは皆さん、クジをどうぞー♪」スッ

千秋「(島村さん)」

千秋「(さっきの番で、女王クジの持ち手部分に傷を付けておいたわ)」

卯月「(なるほど! 流石です千秋さん!)」

卯月「(それを目印にして探して引くか、あるいは時子さんの手の方に誘導を……!)」


ガン!

ググッ、グググッ……!



千秋「(…………)」

卯月「(ちょ……)」

卯月「(みみみ、皆さんすごい力ですよ!? クジの前が手同士で押し合う戦場に!!!)」

千秋「(洋服売り場で服を奪い合う庶民の気分!!)」

千秋「(痛だだだだだッッ!? だ、誰かいまドサクサに紛れてつねった!!!)」

卯月「(ッ!? 千秋さん!! 全部の割り箸に傷が!!??)」

千秋「(考える事はみんな同じね!!!)」

シュッ


千秋&卯月「────っ」

桃華&琴歌&ライラ『女王様だーれだ??』

桃華「……」チラッ

ゆかり「うぐっ、ぐううっ……!」

千秋「……私じゃない」

琴歌「私も違いますわ」

時子「………………」

ライラ「はいはい。ライラさんですよー」

桃華「さあライラさん、ご命令を」


卯月「(ライラさんが女王様)」

千秋「(読めない。何を言ってくるか)」

時子「…………………………………」

ライラ「そうですねー。じゃあ……」

ライラ「3番の人は、この中で一番疲れてそうな人にマッサージをしてあげてくださいです」

千秋&卯月「(────!!!)」

ライラ「(………)」チラッ

ライラ「(………♪♪)」ニコニコ

千秋「(ら、ライラさん!!!)」

卯月「(ライラちゃんも事情を分かってくれてた! 良かった、本当に良かったぁ!!)」

千秋「(天使ね彼女。奉仕と疲労回復……、ベストな解答だわ、これなら財前さんの機嫌も幾分かはマシになるかな)」



ガタッ




千秋「…」

卯月「…」






















時子「…………」モミモミ

ライラ「お、おぉ……」

時子「次は首の部分を矯正するわ。力を抜いて」

ライラ「は、はあ……」

千秋&卯月「(また女王様ァァァアアアア!!)」

千秋「(ライラさんが困惑してる)」

卯月「(3連続とか、呪われてません? いや17年間おみくじで吉とか引いてる私が言える台詞じゃないですが)」

千秋「(それはすごいけど、コッチはそろそろ勘弁して欲しいわね)」

ライラ「き、気持ちいですよー……♪♪」グキッ

桃華「ハァ……わたくしも肩が凝りましたわ」

琴歌「どこかに暇なカイロプラクターでも転がってないかしら………はあぁ」

千秋「だから何で偉そうなの!? 知らないわよゲーム後にどうなっても!!」


━━━━━━★4th Challenge★━━━━━━


ライラ「ほふぅ……♪」ホワホワ

時子「…………………………………………」

千秋「(仏の顔も三度まで。いえ、鬼と言うべきかしら)」

卯月「(二度あることは三度ある。つまり四度目は流石にもう無いですよ、次に賭けましょう)」

千秋「(慎重に行きましょう。とりあえずクジは私が回収して真っ先に財前さんに───)」

桃華&琴歌『女王様だーれだ??』

千秋&卯月「アレェ!?」

卯月「ちょっ、な、なんでもう始まってるんですか!!」

千秋「私達、引いてないけど!!」

桃華「なにやらお話に夢中な様子でしたので、お二人の分はそこに置いておきましたわ」

千秋「(扱い雑っ!!)」

卯月「(ううっ……、ハズレです)」

千秋「(私も。やられたわ、こんな形で不意を突いてくるなんて)」

卯月「(桃華ちゃんの言うとおりです。ゲームとは時に、命を懸けるほどの真剣勝負)」

千秋「(泣きごとは言ってられないわね。おねがい、女王クジは財前さんに……)」

琴歌「わぁーい! 私が女王ですわーっ♪♪♪」

千秋「(ぐっ……)」

卯月「(次は琴歌ちゃんですか)」

千秋「(天真爛漫で素直でいい子だけれど……)」

琴歌「うふふっ♪ 一日千秋の思いで待ち侘びましたわ」

琴歌「何をどなたに命じましょう? 心が騒ぎますわ……♪♪」

千秋「(天然のなかの天然。櫻井さん以上に、予測不能で何を発言するか分からないのが彼女よ)」

卯月「(家庭環境や育ちも似てますものね)」


桃華「月曜日さん。どうぞ番号を指定し、ご命令を」

琴歌「そうですね。では!」

千秋&卯月「……っ!」

琴歌「6番を引いた方?」

琴歌「6番さんは、今回いちばん頑張っている方に対して五個ほど、その方の誇れるような素晴らしい長所を褒めてあげてくださいませんか?」

千秋&卯月「(────!!!)」

琴歌「(………)」チラッ

琴歌「(………♪♪)」ニコッ

千秋「(さ、西園寺さん!!!)」

卯月「(琴歌ちゃんも、察してくれてた! 予測不能とか思ってごめんなさい……!)」

千秋「(女神ね彼女。確かにいま財前さんに最も必要なのは、純粋な労いの言葉、これなら財前さんのやさぐれた心も角が取れて機嫌も良くなるはず)」


























時子「その淡い髪の色は、貴女の人柄を表しているみたいね。まるで春の陽気のように温かく柔らかで、周囲を落ち着かせるような優しさに溢れている」

時子「艶も良くて眉目秀麗、妖精のような美しさ。スタイルも良い、気品も漂う、まさしく非の打ち所のない絶世の美女。ふとほの見える少し無邪気であどけなさが残る部分も、男心をくすぐるチャームポイントではないかしら」

時子「性格も明朗快活、裏表なくはっきりと自分の意思を持っていて、まっすぐ物怖じせずに他者に伝えることが出来る。丁寧な口調も相まって、貴女に悪い印象を抱いている人はまずいないでしょう」

時子「温室育ちのお嬢様で世間知らずの甘ちゃんかと思いきや、チャレンジ精神旺盛で常に中立的。裕福な現状に満足せず、探究心に従い自分の在り方を問い続けるその行動力と姿勢は私も見習いたいところね」

時子「そして時に一歩引く余裕も持ち合わせている、そのおおらかさと仲間意識の強さ。私はまだ付き合いが短いから良く知らないけれど、貴女はだいぶ周りから頼られる存在だと思う。貴女の存在に、救われている人も多いのではないかしら、琴歌」

琴歌「ぁ」

琴歌「あぅっ」ボゥッ

千秋「(また財前さん……)」

卯月「(一瞬でよくここまでの褒め言葉がつらつらと出てきますね)」

卯月「(時子さん、持ち合わせのスキルが多いですね。万能じゃないですか)」

琴歌「あ、ありがとうございますぅ……、と、時子さん……」

千秋「(照れてる。顔真っ赤)」

卯月「(可愛い)」


━━━━━━★5th Challenge★━━━━━━


時子「……」

時子「…………ハァ」

千秋&卯月「(!!!!)」

卯月「(た、溜め息!!)」

千秋「(そうとうキテるかも。怒りと疲労と、あとよく分からないものが)」

卯月「(そろそろ一回は女王様に女王を引かせてあげませんと……)」

千秋「(この喫茶店が血の海と化すかもしれない)」

ライラ「皆さん皆さん、クジを引くですよ~」ヒュン!

ライラ「……と思ったら、あと3本ですね。チアキさんとウヅキさん、どうぞー」

卯月「(み、見えなかった! 他の4人が引く瞬間が!)」

千秋「(修羅場すぎる)」

ゆかり「ヴア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!!」

千秋&卯月「ひッ!!」ビクッ!

卯月「ゆ、ゆかりちゃん? 唸り声をあげてどうしたの?」

ゆかり「ハッ!」

ゆかり「ご……、ごめんなさい。つい興奮して」

千秋「さっきから無我夢中ってカンジだったものね。息遣いも荒かったし」

ゆかり「わ!」

ゆかり「私、女王ですっ!!」ドヤッ!

千秋「!」

ライラ「ユカリさん、おめでとうございますですよー」

千秋「(しまった……。水本さんも本来なら警戒すべき相手だったけど、意識から外れていた)」

千秋「(変な命令でなければいいけれども)」

ライラ「さっそく命令を。どうぞどうぞー」

ゆかり「ふふっ、もうあらかじめ言うべきことは決まっていますっ!」










ゆかり「黒川千秋さんは上着を一枚脱いで、『単騎任務の途中で屈強で醜悪なオーク達と交戦するも追い詰められ、あわや身も心も蹂躙されようとしているが、不屈の精神で抵抗の意を示す尽忠報国の誇り高き女騎士』を恥辱に塗れた表情で3分間演じて下さい!!!!」ドヤァッ!

千秋「番号ッ!!!!!」

ゆかり「エッ! ………そ、そんなルールが………!!」ガクッ

千秋「そこまであからさまに落胆しなくても」

ゆかり「じゃあ……、ハイ。1番の人で」

時子「……」

琴歌「………」チラッ

ライラ「………」スッ

卯月「(……2番)」

桃華「わたくしではありませんわよ?」

千秋「(嘘でしょ……)」←【1番】


千秋「……………っ」スッ

───パサッ


卯月「(ッ!?)」

桃華&琴歌&ライラ「(!!!??)」

時子「(…………)」カチッ






オークA『へへへ……、さあて逃げ場は無いぜ、女騎士様よぉ~!』

女騎士「くっ! 卑しい低劣な豚どもの分際で……!」

オークB『威勢だけは一著前だが………、剣も折れ、鎧も剥がれ、満身創痍で虫のように不様に這うしかできん癖に』

女騎士「ッ……!!」

オークB『素直に許しを請うなら、見逃してやらんことも無いがなぁ………グヘへへ!!』

女騎士「黙れッ! 貴様らに請う許しなどありはしないッ!」

女騎士「我が祖国の平和を脅かし……、ただ愚鈍な感情に任せ暴虐を振るう薄汚い害獣共が!!!!」

オークC『オラッ! 大人しくしやがれ!!』

女騎士「うあ゙ッ! ……………く、ぅ……!」

オークC『さあて、どうしてくれようか』

女騎士「ハァ……ハァ……」

女騎士「殺すなら、殺せ……!」

オークB『待て、この女には情報を吐かせる。その後でなら煮るなり焼くなり勝手にしろ』

オークA『グヘヘヘ……、久しぶりに若い人間の女の悲鳴が聞けるぜぇ~……!』

女騎士「……拷問だろうが凌辱だろうが、好きにするがいい」

女騎士「だが私の心は、決して折れはしない! この聖騎士チアキ、祖国に身命を捧げたからには、その意志を最期の時まで貫いてみせるッ!!」




千秋「(──────────ハッッッ!?)」




ゆかり「………千秋さんっ」

ゆかり「素晴らしいです、5分も演じてくれるなんて…………!」グスッ

桃華「圧巻でした。わたくしにはしっかりと情景が視えました、一人の騎士に群がる野蛮なオーク達が!」

琴歌「これはまさしく千秋さんの迫真の演技力が為せるもの………感激ですわ!!」

ライラ「チアキさん、ぶらぼーですよー」パチパチ

時子「…………」ピコン

店長「あ……あそこの女の子、大丈夫? 床にうずくまって変な事叫びまくってるけど、救急車呼ぶ?」

卯月「だ、大丈夫です。遊びなんで…………ス、スミマセン」

みく「ち、千秋さん……?」

のあ「……………………」

アーニャ「千秋…………シトー トゥィ デェーライシュ??」

千秋「(あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙っ゙っ゙っ゙~~~!!!!!!!!)」

━━━━━━★Final Challenge★━━━━━━


千秋「」

卯月「…」

桃華「お時間もよろしいことですし、次でお開きにしましょうか」

ゆかり「そうですね。私は今回存分に楽しめましたっ♪」

琴歌「ええ。庶民の遊び、十分に堪能出来ましたわ♪」

ライラ「ライラさんも沢山食べたので満足ですよー♪」

時子「………」

桃華「………さて」カチャ

桃華「では皆さま、これで最後です。各々クジをお引きください」

卯月「(ち……!)」

卯月「(千秋さん! 呆けてちゃダメですよ、最後のクジ引きが来ますよ!!)」

千秋「」プシュー

桃華「ではまず琴歌さん、ライラさん、ゆかりさん……」

桃華「次に卯月さん、どうぞ」

卯月「あっ、う、ウン」スッ

桃華「千秋さん? か、顔色が真っ赤ですが熱でもありまして??」

千秋「ァ……ァゥ………」スッ


桃華「最後に………時子さん、どうぞ」カシャ

時子「………」スッ

桃華「さあ、皆さまご一緒に?」

『女王様だーれだ??』











時子「………私よ」


卯月「(───!?)」

千秋「ッ……!?」ガバッ!

千秋「(この土壇場で女王を引き当てた! なんという豪運!!)」

卯月「(いえ……、でもさっき。最後のクジ引きの順番……)」

千秋「(?)」

桃華「(………♪)」

琴歌&ゆかり&ライラ「(…………♪♪)」

卯月「(…………………)」

卯月「(………うぅん、気のせいかな)」

千秋「(………??)」

琴歌「時子さん、ご命令を♪」

桃華「女王様は貴女ですわ。時子さん」

ゆかり&ライラ「なんなりとー♪」

時子「…………」

時子「そう、じゃあ」

千秋&卯月「…………っ!!」











時子「卯月」

時子「貴女にあげるわ。このクジ」

卯月「………へっ?」


桃華「???」

千秋「それは、島村さんに女王の権利を譲るという事?」

時子「私はさっきの茶番で楽しめたわ。貴女だけ、この女王様ゲームで何もしていない」

時子「命令も、隷従も」

卯月「確かにそうですが……」

時子「私の気が変わらないうちに、命令することね」

時子「さもなければ、私がするわよ。今まで受けた隷従のストレスを10倍返しで晴らす命令を、『4番』を持つ櫻井桃華に」

桃華「ヒッ!?」

千秋「(番号を見透かしてる。恐ろしい)」

桃華「ももも木曜日さんっ!! は、早く命令ををををっ!!!!」

卯月「で、でもせっかく時子さんが……」

時子「ただ受け入れられないというのなら、それが私の『命令』ということで納得するかしら」

卯月「……分かりました」

卯月「じゃあ…………」

































卯月「萌えポーズで写真撮影は如何でしょう?」

卯月「時子さん」

時子「…………アァ?」

千秋&桃華「(───!?)」


卯月「あっ! い、いえその、時子さんだけじゃなくて……」

卯月「ここにいる全員で……、です」

ゆかり「七曜会、全員ですか?」

琴歌「写真撮影………それは先ほどの時間の『萌え萌えじゃんけん』の勝利特典の……」

卯月「はい。あの時は結局ノーゲームで誰も何もしなかったじゃないですか」

卯月「桃華ちゃんが言うとおり、今日はようやく七人全員で集まれたんですよ?」

卯月「自慢ではないですけど、ここにいる全員のランクだとアイドルとしてのお仕事も頻繁に入ってくるし、桃華ちゃんも先日更にランクが上がって……」

卯月「こうやって、みんなで集まる機会が少なくなるのは、ちょっと寂しいなぁ……って」

ライラ「………」

桃華「………卯月さん」

卯月「私はこの活動、好きですよ? 桃華ちゃんが企画する庶民文化探究に、あっちこっち忙しく振り回されるのも」

卯月「だから楽しい思い出として、何か残る物が欲しくって。みんなで写真を撮りませんか?」

時子「………………」

千秋「……………そうね。私は賛成」

ライラ「モチロンですよー」

桃華「女王様の命令ですわ。さあ、皆さま準備をしましょう!」

千秋「前川さんを呼んでくるわ。先に並んでいて頂戴」

ゆかり『萌え萌え♪』

琴歌『にゃーん♪♪』

時子「構わないけれど、萌えポーズは不要よね」

卯月「女王様命令ですよ♪」

時子「番号を言いなさい。その命令はルールに反しているわ」

卯月「時子さんこそ、私に『命令権を譲る命令』をした時に、番号を指定しました?」

時子「…………ハァ」

千秋「前川さん、こっちよ」

みく「まっかせるにゃ! みんなの可愛い萌えポーズ、バッチリ撮っちゃうよ♪ スマホでも撮りたい人は預か───」

時子「…………チッ」

千秋&みく「ヒッ!?」

桃華「木曜日さん」

卯月「うん?」

桃華「素晴らしい提案をありがとうございます。仲間からそのような言葉を受けてわたくし、万感胸に迫る心地です」

卯月「うん。私、今回久しぶりの参加だったから……」

桃華「このメンバーの中で貴女が最もランクが高い多忙なアイドルですから、気に病むことはありません」

桃華「……卯月さん」

桃華「例えこの“庶民文化探究”の“七曜会”。皆さまが多忙で集まらなくとも、私一人でも、ずっと続けて参ります」

桃華「“七曜会”は、終わりません。求める声がある時、必ずそこに“七曜会”があるでしょう」

桃華「……今日はこれにておひらきですが、また次回も気軽にご参加いただけると幸いですわ」

卯月「うん! また絶対参加するよ♪」

桃華「ふふふっ……♪」

──────
────
──

──
────
──────
【公園】



卯月「ハァ、ハァッ……!!」

卯月「ぜえ、ぜえっ……!!」

卯月「ま、待ってくださ……ッ、ど、泥棒っ…………!!」

桃華「フッ。木曜日さん、息が上がっていますわよ!」

琴歌&ゆかり「わー♪♪」

ライラ「今のうちに、チアキさんを助けに行くですよー」









━━━━━━━牢屋(公園のベンチ)━━━━━━━


時子「………」

千秋「財前さん、いかがです?」

時子「……なにコレ」

千秋「コーヒーです。のどが渇いたので、そこの自販機で、ついでに」

時子「気が利くわね」カコン

千秋「よっと……」カコン

千秋「……『ケイドロ』。まだ終わる気配が全然ありませんね」

千秋「捕まってるのも、私一人だし。警察役の島村さんが振り回されているというか、泥棒役の他の4人が全力過ぎるというか」

千秋「(牢屋に陣取っている、警察役の財前さんの圧力が強すぎで、他の泥棒の人がなかなか私を助けに来れないし……)」

時子「……」グビッ

時子「おひらきとか言っておいて、もう今日は疲れたわ」

千秋「ま、まあ………まだ時間も余っていますし」


千秋「私達二人で呑気にベンチでお茶しているのも、必死な島村さんに少し面目無い気が……」

時子「構わないわ。千秋は牢屋に入れられて、私はそれを見張る警察なワケだし」

時子「役得よ」

千秋「はぁ……」

時子「……」

千秋「そうだ。財前さん」

千秋「財前さん、大学では心理学専攻でしたよね?」

時子「……よく覚えていたわね」

千秋「いえ。あの時、櫻井さんが言ってたけど『じゃんけんは心理戦』だって」

千秋「あの時勝ち進んでいたけど、もしかして、財前もそういう造詣があるのかなって」

時子「………余興は盛り上がらなければ、企画者の顔が立たないでしょう」

時子「早く負け過ぎなのよ。全員」

千秋「ふふ……。優しいんですね」

時子「うるさい」


千秋「あと」

千秋「女王様ゲームの時も最後、あんな事を財前さんが言い出すとは思いませんでしたよ」

時子「ああ……」

時子「別に卯月に気を遣った訳では無いわ。本心よ」

千秋「本心?」

時子「言ったでしょう。その前の茶番で十分に楽しめた、と」

千秋「茶番……………」

千秋「………………アアッ!?」

時子「……」カチッ



『……拷問だろうが凌辱だろうが、好きにするがいい』

『だが私の心は、決して折れはしない! この聖騎士チアキ、祖国に身命を捧げたからには、その意志を最期の時まで貫いてみせるッ!!』



千秋「!?」

千秋「ちょっ、な、なんで!? いつ撮ったんですかコレ!?」

時子「別に隠してないわよ。貴女が寸劇に熱中しすぎて気が付かなかっただけでしょう」

時子「ゆかり嬢も撮ってたわ」

千秋「」



────ま、まってくださーいっ!

────二手に分かれますわよ! それっ!



時子「……」ズズッ

千秋「……」

千秋「まだ捕まりそうにありませんね。あの4人」

時子「………」

千秋「こうして童心に帰って、和気藹々と楽しむのも、たまには悪くないです」

千秋「みんなで写真も撮りましたし。いい思い出が撮れましたね財前さん、ふふふっ」

千秋「今度みんな揃うのはいつかは分からないけど、でも───」

時子「…………七曜会は、終わらない」

千秋「───えっ?」

時子「撮影の前、あの子が言っていたことよ」

千秋「あ、あぁ………島村さんに言ってましたね」

千秋「時間が取れるか分からないけど、また7人で───」

時子「七曜会は不滅」

時子「言葉の通りよ。終わらないの、この会は」

千秋「───…………財前さん?」

時子「………」


時子「千秋」

時子「“七曜会”を知っているかしら」

千秋「えっ?」

千秋「それは、この櫻井さんのサークルじゃないんですか? 固いネーミングだとは思いましたが」

時子「………私も都市伝説の噂程度にしか触れたことが無いけれど」





時子「犯罪集団よ」





千秋「………………………………………………」

千秋「………は、犯罪?」

時子「語弊があったわ。軽犯罪、と表現した方が的確かしら」

時子「恐喝、ゆすり、時には暴行、窃盗や宗教犯罪、風営法違反、違法薬物取引……」

千秋「ちょ、ちょっと!」

時子「………」

千秋「な、何を言ってるんですか…………財前さん……」

時子「私が冗談を言う性格に見えるかしら」


千秋「………都市伝説ですよね?」

時子「実態が掴めない謎の集団。まあオカルトチックと言えば、確かにそうね」

時子「『白峰組』を知っている、千秋?」

千秋「白峰……」

千秋「『西の村上、東の白峰』と世に聞こえるほどの、関東一円を取り仕切る暴力団ですか」

千秋「だいぶ昔ですけど、一時期ネットや芸能界隈で妙な話題になりましたね。詳しい用語は知りませんが組の若頭が……、女優の椎名みちると婚約し、その後遅咲きでブレイクした役者の馬部甚太郎に激似だとか……」

時子「……七曜会の後ろ盾には、その白峰組が付いているという話もある」

千秋「……」

時子「それほど名の通るヤクザが関係しているの。ただの都市伝説とは考えにくい」

時子「名前が被っている……、というだけなら良いのだけれど」

時子「けれど、珍妙な挨拶や、名前を七曜に冠するという部分までソックリ」

千秋「あ……………」



~~~~~~~~~~~~~~~

千秋『櫻井さんの交友関係は広いわね』

千秋『北条さんにコンテナで贈ったハンバーガーの時とかもそうだし、食品添加物の教えとか、帝愛グループとか、先ほどのゲームデザイナーとか』

~~~~~~~~~~~~~~~



千秋「……七曜会は、終わらない」

千秋「(……………)」



~~~~~~~~~~~~~~~

桃華「千秋さん。貴女は次期『日曜日』候補の一人なのですから、課題は全てもれなく、要領良くこなして頂きませんと」

千秋「(次期日曜日候補……!?)」

~~~~~~~~~~~~~~~



時子「……何か思い当たる節でも?」

千秋「はい……少し」





桃華「ふぅっ……!」




千秋&時子「!!」

桃華「捕まってしまいました。お三方からの救出を待ちましょう」

桃華「何を話していたんですの? 千秋さん」

千秋「あっ。い、いや……」

時子「次の活動についてよ」

桃華「次の…………あぁっ!」

千秋「どうしたの?」

桃華「次回は、来月2週目の日曜日……」

桃華「その日は……、個人的に予定がありまして……」

時子「リーダーが不在なら、その日は中止ね」

桃華「申し訳ありません。あとで他の方にもわたくしから伝えておきますわ」

桃華「……っと」

桃華「わたくしものどが渇きましたわ。水曜日さん、そのお飲み物はどちらで?」

千秋「公衆トイレ前の自販機よ。ホラ、そっち」

桃華「ありがとうございます」スッ


タタタタタ…



千秋「………」

時子「………」


時子「丁度いいわ」

時子「千秋。お酒は飲める?」

千秋「は、はい」

時子「来月、第2週の日曜に人と会う約束がある」

時子「貴女も付いてきなさい」

千秋「はぁ………ちなみに、どなたとです?」

時子「柊志乃」

千秋「柊さん?」

時子「と、八神マキノよ」

千秋「……繋がりがいまいち想像できませんが」

時子「柊志乃は、“前”日曜日よ」

千秋「“前”日曜日………………」

千秋「(………………………………)」

千秋「…………………ぜっ……ん!?」

時子「彼女とは昔、親の仕事上で交友があったからこの事務所に所属する前から知っているわ」

時子「今は海外で撮影だけど、再来週丁度予定が合う」

時子「その時に、洗いざらい吐いて貰いましょう。七曜会と、珍妙なルールについても」

千秋「ルール……?」

時子「七曜会の規律よ。誰がどう見ても、一目で違和感に気が付くと思うけれど」

千秋「そ、そうですか? 私は特に何も………」

時子「まあいいわ」

千秋「………でも」

千秋「その………………」

時子「何よ」

千秋「……櫻井さんは、とても純粋な子だと、私は信じています」

時子「………」




終わり

終わりです。
機能しているか微妙ですが、一応HTML化依頼出します。
次の回で、「桃華お嬢様と楽しい庶民文化探究シリーズ」は最後になります。
ひっそりとまた公開しますので、お付き合いいただければ幸いです。

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