なおかれ吸血鬼ものです
ドラクエのような中世ヨーロッパのファンタジーな世界観の物語です
戦闘シーンがときどきあります
もしかしたら登場人物の死亡シーンがあるかもしれません
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1521569778
「……よしっ、掃除終わりっと」
城門前の掃き掃除を終え、箒を持ちながら城の廊下を歩く。
ここはスニエーク王国のお城。大陸の真ん中にある小さな国だ。
にしてもなんであたしがメイドなんかしてるんだよ……絶対似合わないだろ……。
「あっ、ナオ。おつかれさまです」
「おう、アーニャ!これから勉強か?」
「いえ、これからは食事会ですね。」
他愛もない話をしながら2人で廊下を歩く。
アーニャはこの国の王女様。王様の一人娘でそのうち王位を継ぐことになるらしい。
本当は敬語を使うべきなんだろうけど昔から仲よかったからかタメ口のほうがいいらしい。
「しっかし、あたしがメイドなんて似合ってないと思うんだよなぁ。なんてったって元は部隊の隊長だぜ?」
「似合ってますよ?」
「そうか?あたしは戦いの方が性に合ってる気がするよ」
「ンー、でも、去年、魔王が倒されてから魔物、減りましたね?」
「ああ、そうだな」
去年、勇者達によって魔王が倒された。それによって魔物達は力を失い、人間を襲う事もほぼなくなった。無抵抗の魔物を[ピーーー]のは忍びない、ということで人間と魔物は住み分けしてそれぞれ別の場所で暮らしている。それでもところどころで小競り合いは起きているらしいが。
「魔物もいないのに、兵士がたくさんいると、国が大変、ですね?」
「それは……そうだけどよ……」
「まあ、これは建前、です」
「え?」
「魔物が少なくなった今、気をつけないといけないのは人間です」
「ああ……」
「先日、遂に領土の奪い合いがおきてしまいました」
「だったら、戦争に備えて戦力を強化しなきゃならないんじゃないか?ただでさえ小国なのに軍を縮小してる場合じゃ……」
「ダー。その通りです。平和になったので、どの国も軍隊を縮小してますがそれは表向きは、です」
「じゃあ……この国も……?」
「ハイ。ナオ以外の辞めた兵士達は秘密裏に訓練しています」
「じゃあ、なんで私だけ……」
「それは、ナオが私のボディーガードとしてメイドさんをしてもらうからです」
「私がアーニャの?」
「ダー。メイドさんは私の横にいても、敵に警戒されません。それに、ナオは腕が立ちますし、仲良しです。」
「そういうことか……」
「お城にいるときは、兵士もいます。だからできるかぎりで結構です。でも、外に行くときはナオと一緒にいます」
「そういえばここ最近アーニャと一緒にいる時間多かったよな……」
「本当は初めに伝えるべきだったんですが、タイミングがなくて……」
「別にいいよ。ちゃんと話してくれたんだし」
アーニャは歩きながら申し訳なさそうにしていた。
あたしだけ他のメイドさんと比べてメイドの仕事少ないなぁ、と思ってたんだけどこれで合点がいった。いつアーニャが狙われるかわからないし、私も訓練続けておかないとな!
「着きました。これから勉強なので、私はここで、失礼します」
「おっ、そうか。またな」
「ダー」
そういってアーニャは部屋に入っていった。普段はメイドとして仕事してアーニャが外出するときについて行くということか。なるほど。
さて、私も仕事仕事っと。次は夕食の準備だったかな……
ーーーーーーーーーーーー
翌日 書庫
今日は午前中アーニャが勉強してる間は書庫の整理だったな。しっかし本が多いな……。書庫だから当たり前だけども。
ん?机の上に置きっぱなしの本がある。だしたらちゃんとしまえよなー。どれどれ……。
『吸血鬼とその対処法』
吸血鬼、か。本の整理にも飽きてきたしちょっと読んでみるか。
近くにあった椅子に腰掛けて本を読み始める。
『吸血鬼は別名ヴァンパイアと呼ばれ、人と非常によく似た容姿をしているが、吸血のための牙を持っていたり、鏡に映らなかったりするのが特徴。吸血鬼は知性が高く人語を話し、非常に高い魔力を持つ。
そしてなにより吸血鬼を語る上で外せないのが人の血を吸うということだ。吸血鬼に血を吸われるとそのまま血を吸い尽くされて死ぬか、吸血鬼の眷属にさせられると言われているが、詳細は不明。』
ふむふむ……。そういえば吸血鬼は兵士やってた時も出会ったらすぐに逃げろって言われてたな。やっぱ強いんだろうなぁ。眷属になるなんて真っ平御免だし。
『弱点は日光だと言われている。吸血鬼のいるであろう場所は夜中には近づかないのが懸命だ。もし出会ってしまったときは逃げること。桁外れの魔力を持っているため並大抵の人間では勝てないからだ。銀の武器や十字架、流れる水やニンニクが苦手だという報告があるが、証拠はない。』
へー。まあ吸血鬼のいるところに近づくことはないだろうけど一応覚えとくか。
ん?足音……。こんなところに誰だ?
「ナオ!」
「アーニャか。勉強は終わったのか?」
「ダー!お手伝いにきました」
「ありがとな」
読んでいた吸血鬼の本をしまい、2人で書庫整理を始める。しっかしアーニャはなんていい子なんだ……。私がしっかり守らないとな。
ーーーーーーーーーーーー
ある日
晴れとも言えず、曇りとも言えない天気の中、あたしは出かける用意をしていた。
これで準備出来たかな……。おっと、剣もちゃんと持っていかないとな。
今日はアーニャがお隣のヴァルガルズ王国に行く日だ。あたしたちのスニエーク王国と友好国であるミズガルズ王国とはよく食事会を行っている。
「ナオ、準備出来ましたか?」
「ああ、ちょうど終わったところだ」
「それじゃあ、いきましょうか」
ーーーーーーーーーーーー
国を出て、馬車に揺られること数時間。あたしたちは現在魔物が出る森を通過している。魔物が出る森だが、街道を通る限り危険は少ないとのこと。
だから今回ヴァルガルズ王国に行くメンバーはあたしとアーニャ、それに城の兵士数人だ。
城の警備を怠るわけにはいかないから少数だ。
のんびりアーニャと話していると外から叫び声が聞こえてきた。
「うわああああ!」
「どうしたんだ!」
「魔物だ!魔物がでたぞ!」
「いっても1、2体だろ?そんなに叫ばなくてもいいだろ」
「そんなもんじゃない!軽く10体は超えている!」
「なんだって!」
急いで馬車から出て剣を鞘から抜き、戦闘態勢をとる。
戦いはまず、状況の整理からだ。敵の数は10数体。こちらの兵士の数だと全員倒すのは厳しいだろう。こちらが絶対にしてはいけないのはアーニャを危険な目に合わせること。そういうことなら……。
「みんな!聞いてくれ!」
「まず馬車を運転してるやつ!あたしと兵士達で道を切り開くからアーニャを無事にヴァルガルズ王国まで送り届けてくれ!」
「わかった!まかせろ!」
「次に他の兵士達!死ぬ気で姫様を守ってくれ!」
「おう!」
「あたしは道を防ぐ魔物を倒す!」
「いくぞ!」
ーーーーーーーーーーーー
「はぁっ!」
あたしの一撃が魔物に直撃し、魔物が地に伏せる。
よしっ、これで道は開けた!
「道は開けた!行ってくれ!」
「でも、これじゃあナオ達が!」
「大丈夫だ。馬も何頭か残ってるし、アーニャが逃げる時間を稼いだら頃合いをみてあたし達も逃げるよ。」
「でも……」
「大丈夫だ。先に行って待っててくれ」
「……わかりました!また後で!」
アーニャを乗せた馬車が駆け抜けていく。よし、後は時間稼ぎだ。足を狙って機動力を奪う!
ーーーーーーーーーーーー
「はあっ!」
勢いよく魔物の足を切り裂く。見渡すと、他の兵士達もうまくやれているようだ。
なんだか違和感がする。魔物達の殺気が少ない。というか何かに怯えているような……?
「ギィヤァァァ!!」
突然聞こえた鳴き声に振り向く。そこには巨大な猿型の魔物がいた。
3メートルを超える巨体に、遠目からでもわかる筋肉は自分の力を余すことなく誇示していた。
魔法が得意ではないあたしでは相手にならないことは一目瞭然だ。他の兵士達の中には魔法が得意なやつもいるが、あの魔物の攻撃を回避しながらだとなかなか難しいだろう。
アーニャが逃げる時間も十分に稼いだし頃合いか……。
あたしは剣を鞘に納めて叫ぶ。
「みんな!撤退だ!馬に乗れ!」
あたしの合図であたし達は各自、戦う前に止めておいた馬に向かって駆け出す。
あの魔物もそれを許そうとはせず、1人、また1人とやられていく。
くっ……。心苦しいが勝てる相手じゃない。
ーーーーーーーーーーーー
決死の思いで走り、なんとか馬までたどり着いた。
後ろからはあの魔物が迫ってくる様子は何故かない。
今がチャンスだと急いで馬にまたがる。
いざ駆け出そうとした瞬間、目の前に木の山が降ってきた。後ろを振り向くと、あの猿型魔物の周りの木が無くなっていた。どうやら周りの木をむしり取って私たちの目の前に投げ、逃げ道を防いだらしい。
まずは逃げ道を防ぐとは……。まったく……賢い野郎だぜ。
こうなったら戦うしかない!
あの魔物は逃げ道を防いだことを確認するとこちらに向かってきている。
あたしは馬から降り、再び剣を抜いて斬りかかる。
「えいや!」
あたしの剣が真っ二つに折れる。
「えっ……」
くそっ!国から支給される剣じゃダメか!武器がなかったらどうにもならねぇ……。得意じゃないけど魔法で……!
「火炎魔法!」
だめだ……。魔物の体毛が少し焦げたぐらいでまともなダメージになっていない。万事休すか……。
魔物の手があたしに向けて振り下ろされる。
なんとか、かわし続けているがこれも時間の問題だろう。なにか、なにか方法はないのか!?
「ガハッ……」
魔物の攻撃をモロに受け、森の中に吹き飛ばされる。
くそっ、打開策を考えるのに夢中になりすぎたか。
魔物はトドメを刺したと思ったのかこれ以上追ってこない。
それにしてもこれは本格的にやべぇ……。体も動かないし、視界もぼやけてきた……。アーニャと約束したのに……。くそ……。
ーーーーーーーーーーーー
「いってて……」
なんとか生きてるか……。
まだ残る痛みを堪えながら目を覚ますと、待っていたのは静寂だった。かすかに聞こえるのは、窓から見える森に住む鳥のさえずりだけ。いつのまにか寝かされていたベッドから体を起こす。
いったいここはどこなんだ?おそらくあたし達が戦ってた森の中なんだろうけど。窓からの景色を見る限りはここは二階か。それにしても豪華な部屋だな。
「あっ、起きた?」
「うわっ!?誰だ!?」
赤みがかった茶髪の、真紅のドレスを着た女の人が突然話しかけてきた。深い赤色が、どこか儚げな雰囲気によく似合っている。
「そんなに驚かなくてもいいじゃん。私は加蓮。この屋敷で1人で暮らしてる」
「そうか……。あたしは奈緒だ。お前が助けてくれたんだよな?礼を言うよ。ありがとう」
「どういたしまして」
加蓮という人はベッドの横にある椅子に腰掛ける。その立ち振る舞いからはどこか気品が感じられる。
さて、これからどうしよう。取り敢えずアーニャのいるであろう〇〇国に行かないとな……。
……待てよ。よく考えるとここはどこだ?それにこの加蓮っていう人は、なんで森で倒れてたあたしを助けてくれたんだ?
「なぁ加蓮……だっけ。いろいろ聞いてもいいか?」
「あ、やっと?すぐに聞かれると思ったんだけど」
「こっちも突然のことでいろいろ考えてたんだよ」
「はいはい」
「んで、聞いてもいいか?」
「うん。なんでもどうぞ」
「まずここはどこなんだ?」
「ここはスニエーク王国の南の森にある、私の屋敷だよ」
「え?でもこの森って魔物が出るよな?そこに住んでるのか?」
「まあね。でも、私の敵じゃないし」
「は……?」
当たり前だというように加蓮は話す。
あんなに強い魔物がいて何言ってるんだこいつ。
そうとう腕が立つ人なのか?
「それであの後どうなったんだ?」
「あの後?私がそこに着いたときにはアンタ以外全員死んでたよ。」
「くっ、そうか……。」
あたしは死んでいった兵士たちに黙祷を捧げる。
あたしも死んでいてもおかしくなかったんだ……。そう思うと突然恐怖が込み上げてくる。
「それで、加蓮はなんでこの森に?魔物ばっかりだし危ないだろ?」
「確かにそうだけど、人間社会では苦手なものが多くてまともに生きづらいし、しょうがないよね」
「え?どういうことだ?」
「だって私、吸血鬼だし」
「吸血鬼!?」
「そうだよ?あ、これ見る?」
加蓮は見せつけるように牙を見せてくる。たしかにあの本に書いてた牙にそっくりだ……。
それにしても吸血鬼ってあの本に書いてあったあの吸血鬼か!?まじかよ……。
に、逃げなきゃ……。
急いでベッドから立ち上がろうとするも、体が痛み上手く動けない。
「まあまあ、体も満足に動かないだろうし、少しお話でもしようよ」
あたしは立ち上がろうとするのを諦め、ベッドの上に座る。
これはやばいことになったな……。幸いにも、今のところあたしに危害を加える気は無いみたいだし、慎重にいかないと。
「きゅ、吸血鬼のってあの吸血鬼か?」
「うん、そうだよ?」
「じゃ、じゃあなんで吸血鬼なのに私を助けてくれたんだ?」
「なんでだと思う?」
加蓮がいたずらっぽく笑顔であたしに聞いてくる。
吸血鬼のくせしてかわいい顔してるなこいつ……。おっと、そんなことはどうでもいい。吸血鬼が人を殺さずにして生かしておく理由ってなんだ……。ハッ!
「もしかしてあたしのち、血が目当てか!?」
「うーん、半分正解で半分間違いかな」
「どういうことだ?」
「うーん、順を追って説明しようか」
「私は確かに血が好き。でも、普段は人間を襲わずに魔物の血で我慢してるんだけど、やっぱ人の血のが美味しいんだよね」
「…………」
「そしたらちょうど魔物に襲われた後を見つけてさ。」
「それでギリギリ生きてたあたしの血を吸おうとしたわけだ」
「そういうこと。でも、酷い怪我でね。これ以上血を吸ったら死んじゃうなって状態。ここで死なせるぐらいなら私専用の血液パックになってもらおうかなって」
「ん?つまりどういうことだ?」
加蓮は淡々と話しているがあたしの頭の中は大パニックだ。
吸血鬼が人を助ける?聞いたことがない!
それに血液パックって……
「……ねぇ、私の眷属になってよ」
「え……」
まだまだ導入ですが眠いので今回はここまで
sagaし忘れて一箇所やられてしまいましたね……
書き溜めは完結はしてるので安心してください。
質問や見にくいなどの意見があればなんでもどうぞ
>>3訂正
「しっかし、あたしがメイドなんて似合ってないと思うんだよなぁ。なんてったって元は部隊の隊長だぜ?」
「似合ってますよ?」
「そうか?あたしは戦いの方が性に合ってる気がするよ」
「ンー、でも、去年、魔王が倒されてから魔物、減りましたね?」
「ああ、そうだな」
去年、勇者達によって魔王が倒された。それによって魔物達は力を失い、人間を襲う事もほぼなくなった。無抵抗の魔物を[ピーーー]のは忍びない、ということで人間と魔物は住み分けしてそれぞれ別の場所で暮らしている。それでもところどころで小競り合いは起きているらしいが。
「魔物もいないのに、兵士がたくさんいると、国が大変、ですね?」
「それは……そうだけどよ……」
「まあ、これは建前、です」
「え?」
「魔物が少なくなった今、気をつけないといけないのは人間です」
「ああ……」
「先日、遂に領土の奪い合いがおきてしまいました」
「だったら、戦争に備えて戦力を強化しなきゃならないんじゃないか?ただでさえ小国なのに軍を縮小してる場合じゃ……」
「ダー。その通りです。平和になったので、どの国も軍隊を縮小してますがそれは表向きは、です」
「じゃあ……この国も……?」
「ハイ。ナオ以外の辞めた兵士達は秘密裏に訓練しています」
>>3
>>16
なにやってんだ……
訂正の訂正
「しっかし、あたしがメイドなんて似合ってないと思うんだよなぁ。なんてったって元は部隊の隊長だぜ?」
「似合ってますよ?」
「そうか?あたしは戦いの方が性に合ってる気がするよ」
「ンー、でも、去年、魔王が倒されてから魔物、減りましたね?」
「ああ、そうだな」
去年、勇者達によって魔王が倒された。それによって魔物達は力を失い、人間を襲う事もほぼなくなった。無抵抗の魔物を殺すのは忍びない、ということで人間と魔物は住み分けしてそれぞれ別の場所で暮らしている。それでもところどころで小競り合いは起きているらしいが。
「魔物もいないのに、兵士がたくさんいると、国が大変、ですね?」
「それは……そうだけどよ……」
「まあ、これは建前、です」
「え?」
「魔物が少なくなった今、気をつけないといけないのは人間です」
「ああ……」
「先日、遂に領土の奪い合いがおきてしまいました」
「だったら、戦争に備えて戦力を強化しなきゃならないんじゃないか?ただでさえ小国なのに軍を縮小してる場合じゃ……」
「ダー。その通りです。平和になったので、どの国も軍隊を縮小してますがそれは表向きは、です」
「じゃあ……この国も……?」
「ハイ。ナオ以外の辞めた兵士達は秘密裏に訓練しています」
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「どう?」
加蓮は足を組みながらあたしに尋ねる。
なんてことを聞いてくるんだこいつは……。無理やり断っても殺されるかもしれないし、取り敢えず情報を引き出してみるか。
「そもそも眷属ってなんだ?」
「あっ、知らないんだ。眷属っていうのは人間の体内に吸血鬼の血液を入れて僕にする……みたいな?」
「なんでお前が覚えてないんだよ……」
「だって覚えたの数百年前だし」
「そういえば吸血鬼は長寿だったな……。あたしの眷属になるメリットデメリットは?」
「細かいところまで確認するね。そういうところ私は好きだよ」
そう言って吸血鬼の加蓮は考え始める。しっかしどうしたものか……。眷属になる気はさらさらない。でも無理やり断ると死ぬまで血を吸われる可能性があるからな……。
「まずはデメリットからね。そっちのデメリットとしてはまず人間社会で暮らしにくくなる。苦手なものも多くなるし、半分とはいえ吸血鬼だからね。牙も生えるし、見られたら1発でバレちゃう」
加蓮は続けて言う。
「あとは吸血鬼まではいかないけど血が飲みたくなるのもデメリットかな。本物の吸血鬼と違って眷属は飲まなくても生きていけるみたいだけど」
「へぇ……」
「次にメリット。1番のメリットとしては吸血鬼のような力を得られる。魔力だったり、長寿だったり、再生能力だったりね。さすがに本物の吸血鬼には敵わないけど」
「あとは普通の魔物が恐れて近づかなくなるのもメリットになるのかな?私はこれのせいでなかなか獲物が見つからなくて困るんだけど」
本には書いてなかったこともいっぱいあるな……。しっかり覚えとかないと。
デメリットを先に言って印象を薄くするあたり、こいつ頭も冴えるな。
「それじゃあお前にメリットがないんじゃないか?」
「まあそうだね。アンタが眷属になったときのメリットは2つ。」
「1つは私が好きな時に血が吸えること。眷属の血はおいしいらしいんだよね」
「あっ、もちろん死なない程度には抑えるからね」
慌てて訂正する加蓮。
血を吸われるってどんな感覚なのかな……。いや!吸われる気はないけどな!
「もう1つはこの屋敷で一緒に暮らせること。やっぱり1人だと退屈なんだよね」
加蓮は窓の外を眺めながら言う。
そりゃあ、数百年も1人じゃ暇だよなぁ。ちょっと同情するぜ。
「これぐらいかな。どう?」
「ちょっと考えさせてくれ……」
あからさまに考え始めるフリをする。どうしたらこの状況を打開できるか。こういうときは、まず1番してはいけないことをしないことが大事だ、っていうのが兵士やってた時からのあたしの考えだ。この場合は眷属になること。眷属になると人間をやめることになる。これだけは絶対に回避しないとな……。
「……決まったよ」
「答えを聞かせて?」
「助けてくれたのはありがたいけど、それはできない」
「……なんで?」
「私はアーニャのところに行かなくちゃならないんだ。人間社会で生きていけないのは困る」
「そんなに王女様のことが大事なんだ……」
「ああ……」
「そっか……残念だよ」
私が目線を落とすと加蓮は心底がっかりしたようにそう呟いた。
「じゃあ……」
「ここで干からびるまで血を吸わせてもらうよ!」
突然屋敷が揺れだす。加蓮の目の色が紅くなり、加蓮から溢れる魔力がひしひしと伝わってくる。やっぱこうなるよな……。それにしても吸血鬼の魔力やべーな。近くにいるだけで気圧されるぜ……。こうなったらしょうがない。最後の手段だ。
「まあ待て。話は最後まで聞け」
「……なに?」
加蓮は睨むようにあたしに目線を向ける。
怖ぇ……。ここからは1つでも間違えたらゲームオーバーだ。
「私は眷属にはなれない。でも加蓮の条件は飲むことができる」
「は?」
「死なない程度なら血だって吸っていい。屋敷にだって一緒に住んでやる」
「ふーん……。それならまあいっか」
加蓮の魔力が収まっていき、目の色も元に戻る。
ふぅ……。怖かったぜ。怒らせないようにしないとな。
「それじゃあよろしくね。奈緒」
「ああ、よろしく。加蓮」
加蓮が差し出してきた手を握り握手する。なんだかひんやりしてて緊張して火照った体にはちょうどよかった。
私は隙を見てここを抜け出す!そのために不本意だけどコイツと仲良くなって、ある程度あたしに隙をみせるようになる必要がある。
「じゃあ今日はここで寝てていいよ。ご飯とかは時間を見て持ってくるし」
「吸血鬼用の飯とかじゃないだろうな?」
「当たり前じゃん。私だって普段は人間と同じもの食べてるんだよ」
へぇ……また新しいこと知ったな。あとあと役にたつかもしれないから吸血鬼のことはしっかり覚えとかないと。
あたしは1つ気になったことを加蓮に問いかける。
「なぁ……」
「なに?」
「そもそも私を無理やり眷属にさせることも出来たんじゃないか?」
「まあねー。でも無理やり眷属にしてこの屋敷に住まわせてもギスギスするじゃん。そういうの嫌なんだよね」
「確かにそうだな……」
「だから奈緒はギスギスしないで仲良くしようねー♪それじゃ」
そう言って加蓮は部屋から出て行った。
やっぱ数百年も1人っていうのは寂しいんだろうな……。ちょっとくらいなら優しくしてやるか。
ーーーーーーーーーーーー
森の小鳥のさえずりで目を覚ます。寝起きのまだ開かない目を擦りながら、ぼーっと考える。
あの後、加蓮が持ってきたご飯を食べてから、やっぱり疲れていたのかすぐに眠りについてしまった。吸血鬼の食べ物だからゲテモノなんじゃないかと不安に思ってたけど、普通のシチューで美味しかった。
体の痛みは随分とマシになったな。加蓮が回復魔法かけてくれたおかげか?
「おっはよー!起きた?」
「いきなりビックリさせんなよ……加蓮」
「ごめんごめん」
「それでどうした?」
「奈緒にはこの屋敷の家事をしてもらうから。一緒に暮らすんだから、当たり前でしょ?」
「まあな……。んで、何をすればいいんだ?」
「んー、掃除とか、食事とかいろいろあるけど、取り敢えず屋敷の案内するよ」
そう言って部屋から出て行く加蓮の後ろをついて行く。
相変わらず真紅のドレスは似合っているけど、昨日の儚げな雰囲気が薄くなって、快活で元気な少女のような印象を受けた。
「まずは二階の1番奥の部屋。奈緒の寝てた部屋ね。この部屋を奈緒の部屋にするからよろしく」
「あぁ」
加蓮の言葉に返事をしながら廊下を見渡す。いったいいくつ部屋があるのやら……。
「次はここ。私の部屋ね。何か私に用があるときはここに来るのがいいのかな?」
「なんでお前が疑問形なんだよ……」
「だって私結構うろうろしてるし」
加蓮は口角を上げて言った。
加蓮の部屋は二階に上がってすぐの部屋っと。もし脱出するとしたら加蓮の部屋の前を通らないといけないのは厄介だな……。
「二階はこれだけ。空いてる部屋はいっぱいあるけど、大体使ってないから気にしなくていいよ」
「りょーかい」
ーーーーーーーーーーーー
あたしたちは階段を降りると広間にでる。
左右に廊下があり、正面には入り口があった。
なんか高そうな彫刻や絵がたくさんあるけど、こういうのはよくわからん。
「ここは玄関……というかロビーみたいなところ?とにかく屋敷に入ってすぐのところだよ」
やけに広いな……。ダンスパーティでも出来そうだぜ。
「次はこっちだよ」という加蓮の声についていく。なんかウキウキしてるなあいつ……。
「入って左の廊下にはホールっていうのかな?とにかく大きい部屋で、ご飯食べたりするところ!」
「でけぇ……」
広すぎるだろ……。うちの国の兵舎の食堂よりでかいぞ……。なんだこの屋敷。
……加蓮はこんなに広いところで1人ご飯を食べてたのか……。そりゃあ寂しくもなるよな。
「隣の部屋にはキッチンがあるよ。食料庫もすぐ隣にあるから、もし料理するときは自由に使ってね」
「りょーかい」
「反対側の廊下にはお風呂とか、来客用の部屋とかあるけど行けば大体わかるだろうし、説明しなくてもいいかな」
「来客用の部屋?誰か来たりするのか?」
「ううん。誰も来ないよ」
「じゃあなんでそんな部屋があるんだ?」
「私はもともとあった屋敷に住んでるだけで、この屋敷を建てたわけじゃないの」
「え?それじゃ加蓮がその……乗っ取ったのか?」
「人聞きの悪いこと言わないでよ。テキトーにフラフラしてたら屋敷を見つけて、中を見てみたら誰もいなかったから住んじゃえ!って思っただけだよ」
加蓮はそう答えた。
結局一緒じゃね……?そう思ったけど黙っておく。
じゃあ誰がこんな魔物が出る森に屋敷なんか建てたんだ……?
「説明はこれで終わりでいいかな。何か聞きたいこととかある?」
「何個か聞いていいか?」
「うん、いいよ」
2人で近くにあった椅子に座る。
情報収集は大事だ。いくつか疑問に思ったことを聞いてみよう。
「この森は魔物が出る森だけど、この屋敷が襲われたりすることはないのか?」
「大丈夫だよ。魔物達は私を恐れて近づこうとしないしね。それに、この屋敷の周りには結界を張ってあるから、魔物が入ろうとしても入れないんだ」
加蓮はあたしにそう説明する。
それに結界って言ったか?それじゃもしかして……
「奈緒の考えてること、当ててあげよっか?」
「へ?」
加蓮が悪そうな顔をしながら言ってくる。
本当にわかるのか……?
「結界張ってあるんじゃ逃げられないんじゃないか、って思ってるでしょ」
「なんでそれを……!あっ……」
「やっぱり。」
「くそっ!心を読む魔法でも使ったな!?」
「そんな魔法ないから。奈緒がわかりやすいのがいけないんだよ」
加蓮は悪戯っぽく笑う。昨日は大人っぽいイメージだったけど、今日は少女のように見える。
「結界に触れるとはじき返されるから気をつけてね。まあ、逃げようとしなければ関係ないけど」
加蓮は悪戯っぽく笑う。
うーん。どうしたものか。いきなり計画が頓挫したような……。
……考えてもしょうがないか。そのうち必ずチャンスはあるはずだ。
「もう一つ聞くな?加蓮はいつから1人なんだ?」
「うーん、正確には覚えてないんだけどね。生まれてから10年ちょっとは親もいたし、仲のいい人……というか吸血鬼もいたんだけどね。いろいろあって、みーんないなくなっちゃった」
「そっか……。すまん、嫌なことを聞いた」
「別にいいよ。数百年も前だし」
「それに、吸血鬼って数も少ないし、普段は人間のフリしてるからなかなか同族には会わないんだ」
「そっか……」
「そんな暗い顔しないで!私はもう何も気にしてないから!」
加蓮はそうは言ったが表情は暗い。
数百年もひとりぼっちで暮らすなんて辛すぎるだろ……。
「それで、聞きたいことはこれだけ?」
「いやもう一個あるんだけどよ……」
「何?」
「着替え、ないか?昨日からずっとこの服だし、そろそろ着替えたいんだよ。あと出来れば風呂にも入りたい」
「あっ、そっか。そうだよね」
加蓮は顎に手をあてながら考えている。
怪我してたせいか、寝てる時に汗をかいたみたいだから、さっぱりしたい。
「サイズはだいたい同じっぽいし、着替えは私と同じ服でいい?」
「同じ服って……その真紅のドレスか?」
「そうだよ?これなら何着もあるんだよね」
どこか嬉しそうに言う加蓮。
そんなにあたしにこの真紅のドレスを着せたいのか?
「む、無理だって!そんな肩丸出しの服なんて恥ずかしいって!」
「そう?残念……」
加蓮は肩を落とす。
そんなに残念そうにするなよ加蓮……。あたしは小さい頃から戦いにしか目がなかったんだ。そんなは、肌を晒すようなことなんて……。
「普通の!普通の服でいいから!寝巻きみたいなやつ!」
「うーん、それだと私の分がなくなっちゃうし……」
少し考えた後あたしを見ながら加蓮が続けて言う。
「ねぇ、奈緒。服買いに行こっか」
「は……」
ーーーーーーーーーーーー
ところ変わってここは、ピニャコラーダ王国のというう国街中。ぴにゃこら太という動物?がたくさんいるからこんな名前になったらしい。
あたしのいた××国や〇〇国だと、あたしの知り合いに会って面倒なことになるから、という理由でこの国へ買い物に来た。
途中で逃げ出そうとしたけど、逃げたらあの国滅ぼすよ?と言われてしまった。冗談っぽく言っていたが、加蓮なら出来そうなところが恐ろしい。
あの屋敷からはだいぶ離れてるけど、あの屋敷とこのピニャコラーダ王国の近くの森の中にある遺跡が転移の魔法陣で繋がっているらしく、さほど時間を労せずにこの国までたどり着くことができた。
「ねぇ奈緒。どこの店から行く?あっち?そっち?」
「この国には来たことないからわかんねぇや。とりあえず、適当にブラブラしようぜ」
外出用に動きやすい服装に着替えた加蓮は目に見えてウキウキしている。仮にもここは人間だらけのところだぞ?普段これないから嬉しいのか?
ちなみに加蓮は着替えただけでなく、吸血鬼だとバレないように軽く変装している。帽子を深めに被って、牙を見られないように口元までマフラーをしている。万が一の時のリスクを減らすためらしい。
「なぁ加蓮。加蓮はよくこういう町にくるのか?」
「ううん。たまーにだね。食料庫の食べ物がなくなったときとか……あっ!」
「どうかしたか?」
「ポテト!」
そう言い残すと加蓮は一目散に駆けて行く。急にどうしたんだよ……。
ーーーーーーーーーーーー
たまたまあった出店のポテトを買ったあたしたちは、近くの公園のベンチに座ってそれを食べる。
「いやーさっきはごめんね」
「ああ、びっくりしたよ」
「大好きなんだよねー、ポテト。もう血より好き」
「あたしも嫌いじゃないけどさぁ……」
加蓮は満足そうにポテトを頬張っている。
血より好きってそれでいいのか吸血鬼……。
「あ~、屋敷でもポテトが食べられたらなぁ……」
「確か家でも作れたはすだぞ」
「ホントに!?」
今までで1番の反応の速さだ……。こういうところを見ると私たちと変わらないなぁと思う。
「ああ、あたしは作ったことないけど友達が作ってるの見たことあるし」
「いや~これからは毎日ポテトが食べれるなんて……夢のようだよ」
お前の夢は毎日ポテトを食べるでいいのかと心の中でつっこむ。見よう見まねでやってみるか……。
「しょうがない、初めてだけど、帰ったら作ってやるよ」
「やったー!奈緒大好き!」
「大好きってお前なぁ……」
加蓮があたしに抱きついてくる。さすがに大げさすぎるだろ……。好かれて悪い気はしないけど。
「なぁ加蓮さっきから思ってたんだけどよ……」
「うん、言いたいことはわかるよ」
「このブサイク緑、多くないか?」
公園の中にはたくさんの緑のブサイクこと、ぴにゃこら太がいた。
なんとも言えない目つきでこっちを見てくるから変な気持ちになる。人間に害はないらしいが……。
「あっ、ポテトなくなっちゃった……」
「ちょうどいい、そろそろ行くか」
2人でベンチから立って歩き出す。
「ポテトと言えば、まずは芋だよね!」
「おいおい目的を忘れたのか?芋買うのはそのあとにしようぜ」
「目的?ポテトでしょ?」
「服だよ!服!」
「そんなに大きな声出さなくてもわかってるって」
まったく……。こいつ、ポテト大好きすぎるだろ。吸血鬼じゃなくて吸芋鬼とかじゃないのか?……語呂悪いな。
2人でとりとめもない話をしながら街中を歩く。
「というか日光大丈夫なのか?ガンガン日が照ってるけど」
「大丈夫だよ?確かに日光で少しは弱るけど、誤差の範囲だし。もっと言うと日光で弱体化するんじゃなくて、闇で強化される感じ」
加蓮は帽子を被りなおしながら言う。
へぇ……。これはまた新しいことを知った。もし加蓮と戦うなら暗いところは禁物だってことか。
そうこう話しているうちに服屋らしき店に着いた。
2人で店の中に入る。
「うっわ~いろいろあるね」
「そうだな」
2人で妙に緑色が多い店中を見て回る。
国から推されている動物とはいえ、こんなにぴにゃこら太が書いてある服いらないだろ……。
「お店の中も広いみたいだし、2人で別れて探そっか」
「ああ、そうだな」
「じゃあ、私が普段着見て来るから、奈緒は寝る時の服見ててね!」
「わかった」
そう言って別れて服を探し始めた。
ーーーーーーーーーーーー
うーん、とりあえず寝る時の服はこれでいいか……。それにしても、ぴにゃグッズばっかりだな。緑色が目に痛いぜ。
あとは普段着だけど……。
「な~お!」
「うわっ!びっくりした!」
「これなんてどう?」
「バッカ!お前こんな服着れるわけないだろ!」
加蓮は、え~!とか言ってるけど、こんな服着れるか!め、メイド服だぞ!しかもみ、ミニスカ!
お城でメイドの真似事やってたときは、普段通りの格好だったから良かったけどこれは恥ずかしい……。
「私が屋敷の主人で奈緒はそのメイド。ぴったりじゃない?」
「関係的にはそれでいいかもしれないけどよ……。やっぱり恥ずかしいよ」
「じゃあ奈緒に服買ってあげない!」
「それはずるいぞ!」
加蓮がそう言ってそっぽを向いた
私が今一文無しだからって……。
「もう……奈緒ったらしょうがないなぁ。こっちで勘弁しといてあげる」
そう言って加蓮が見せてきたのは、ロングスカートのメイド服。これならまぁいいか……。露出も少ないし。
「わかったよ」
「イェーイ!」
結局私はそのロングスカートのメイド服とあたしが自分で決めた寝る時の服を買った。
流されちまった気もするが、まあしょうがない。
「よし、それじゃあポテト買いに行こう!」
「ポテトじゃなくて材料の芋だろ」
「いいや?ポテトだけど?」
「え?」
結局帰り道にもポテトを買って食べた。
あいつの体、ポテトでてきてるんじゃないか?
それから市場によって芋を山ほど買って帰った。こんなに買っちゃうと当分の食事はポテトだらけだな……。
「それじゃ芋も買えたし、帰ろっか」
「ああ。というか加蓮もちょっとは芋持てよな」
「私は奈緒の服持ってるし。雑に扱って買ったばかりの服がしわしわになるのは嫌でしょ?」
「ぐぬぬ……」
2人で町を出て森の中の転移の魔法陣へと歩く。
行きはなんとも思わなかったが、芋を大量に持った帰りの森の道は想像以上に辛かった。加蓮め……。後で覚えとけよ……。
とりあえずここまで
また後で来ます
ーーーーーーーーーーーー
この前買い物に行ってから1週間が過ぎた。
なんだかんだ、加蓮との共同生活は上手くいっている。食事担当はあたしで、洗濯が加蓮。掃除は分担して行い、空いた時間には訓練をしている。もともと持ってた剣は折れてたから、この屋敷にあった剣を使ってる。なんか強そうな剣だけど、誰も使ってないし勝手に使ってもいいだろう。
しっかしこう考えるとなんだか加蓮よりもあたしの方が負担が大きいような……。まあいいか。でもこのメイド服に慣れてきたのはなんか嫌だな……。
今日の昼食のポテトを作り終える。栄養バランスを完全に無視しているが、加蓮たっての希望だからしょうがない。
というかここ最近芋しか食ってねぇな……。大量に買った芋を消費するにはしょうがないんだけど、1週間連続で芋は辛い。
「おーい!加蓮ー!ポテト出来たぞー!」
「ポテト!?」
どこからともなく加蓮があらわれる。なんて反応速度だ……。もうお前吸芋鬼でいいだろ。
2人で食卓につき、他愛もない話をしながらポテトを食べる。
そろそろこの1週間考えてきたあの作戦を実行するか。
「なぁ加蓮、この後暇か?」
「うん。別にこの後することないから暇だけど」
「だったら決闘……というか試合してみないか?」
「奈緒と私が戦うってこと?」
「ああ、あたしの力がどれくらい通用するのかと思ってな」
「ふーん。別にいいよ。まあ私に勝てるとは思わないけど」
加蓮は余裕そうな顔で言う。
自信たっぷりだなこいつ……。
この作戦にはあたしにメリットしかない。
加蓮を倒すことができたら御の字だが、まあ無理だろう。
もし倒せなくても、どれぐらいの力量差か把握することができる。
さすがに加蓮があたしを殺しにくることはないだろう。
「それじゃあ先に外で待ってるね」
そう言っていつのまにかポテトを食べ終わっていた加蓮が外へ向かう。
あたしもしっかり準備していかないとな。
ーーーーーーーーーーーー
「あ、やっときた。遅かったじゃん」
「ごめんな。いろいろ準備があったんだよ」
あたしはここにきた時に着ていた、動きやすい服に着替えてきた。加蓮は相変わらず真紅のドレスのままだ。相変わらず余裕だな……。
先日の戦いで明らかになった魔法の不得手さも、少しずつ訓練してきたし多少はマシになったはずだ。
「それじゃあいくぞ……!」
「待って。ただ戦うだけじゃあれだし罰ゲームつけない?」
「罰ゲーム?」
「そう。負けた人は勝った人の言うことをなんでも聞くってこと♪」
「あたし絶対勝てねぇじゃねえか!」
「だから奈緒は私に一つでも傷つけられたら勝ちでいいよ」
「それだったらいいか……?」
「決まりだね」
「なんでも言うこと聞くっていったからな?あとで後悔するなよ?」
「それはこっちのセリフ」
「それじゃあいくぞ!」
あたしは剣を握りしめ、加蓮に斬りかかる。あたしだって部隊の隊長をやってたくらいなんだ。傷一つつけるぐらい出来るはずだ!
「お~。やる気だね」
加蓮は魔法で宙を舞う刃を作り出す。それであたしの剣はいなされた。加蓮の周りを漂っていてすごく厄介だ。
何度も斬りかかるも、いなされたり、かわされたりして攻撃が当たらない。
何回も攻撃して、少しわかったことがある。おそらくあの魔法の刃はコントロールが難しいのだろう。左側からの攻撃しかガードしていないのがその証拠だ。現に、右側からの攻撃は全てかわされている。
「そろそろこっちもいくよ!」
加蓮が唱えた魔法の衝撃波によってあたしは吹き飛ばされる。
くそっ……。やっぱり剣撃だけじゃ無理か……。
「まだまだ!」
再びあたしは斬りかかる。
「また?何度やっても当たらないよ」
あたしの剣は前と同じようにかわされたり、いなされたりしている。
まぁそうだろうな……。
あたしの剣を加蓮が魔法の刃でガードする。ここだ!
「氷結魔法!」
「えっ!!足が!」
「魔法が得意じゃなくても一時的に足を止めることぐらいならできるんだよ!」
そう言いながらあたしは魔法の刃のない右側から、加蓮の後ろに回り込む。
魔法の刃はコントロールが難しく、足が凍って動けない今、背後からの攻撃はかわせないはず!
「くらえ!」
あたしが思いっきり剣を振り下ろしたところには誰もいなかった。
なぜだ……。加蓮は動けないはずだ。どうしてかわされたんだ……。
「いや~危なかったよ。」
加蓮はいつのまにかあたしの背後に立っていた。あたしは急いで振り向く。
「なんで動けたんだ!?足は凍ってたはず……」
「確かに凍ってたね。でもほら」
加蓮が霧になっていって視界から消える。
「後ろだよー」
「え!?」
急いで振り向くと加蓮がいた。
「驚いた?私、いろいろと変身できるんだ。」
「そんなの聞いたことない……」
「だろうね。吸血鬼の特権ってやつ?他にもコウモリとかヘビになれるよ」
はぁ……とあたしはため息をつく。
こんなやつにどうやって攻撃を当てればいいのか。霧全てに魔法を撃つぐらいか……。
今のあたしにはどうにもできそうもない。
あとは不意打ちだが……加蓮も警戒するだろうしこれもできそうにない。
「今のはちょっとずるいかな?」
「……ああ、攻撃が当たりそうにないよ」
「それじゃあ、次からは霧になるのは使わないようにするよ」
マジか。これはラッキーだぜ。これならなんとかなるかも……。
「今度はこっちからいくよ!」
加蓮の周囲を漂う短剣が3つに増える。
それ増やせるのかよ!
「もう一つ!」
さらに加蓮は魔法で大剣を作り出し、手に持つ。
おいおい短剣3つをかわしながら大剣の相手しろってか?冗談きついぜ……。
「魔法で焼き払っちゃってもいいんだけど、それじゃ味気ないよね!」
加蓮があたしに向かってくる。
ずりぃよ……。吸血鬼って魔法の選択肢多すぎるだろマジで……。
「えいっ!」
「くっ……」
魔法の刃をかわしながらの大剣の相手はやっぱりきつい。なんとか隙を見つけないと……。ここだ!
「氷結魔法!」
「同じ手には二度も引っかからないよ!」
加蓮は足が完全に凍りつく前に抜け出す。くっ、魔力が低いとこうなるんだよなぁ。
「まだまだ!水流魔法!」
あたしは加蓮の顔めがけて水の魔法を唱える。
あたしの魔翌力じゃバケツの水をかけるぐらいの威力しかないけど、隙を作るには十分だ!
「ここだ!」
大きな音を立てて、あたしの剣は加蓮の大剣でガードされる。
「なんで見えて……」
「目が見えなくても魔法で見えてるっていうか、なんとなくわかるんだよね」
「今度はこっちからいくよ!」
もはやなんでもありだな吸血鬼……。そんなことを考えてると3つの短剣があたしに襲いかかる。
「うわっ!」
なんとかかわしたものの体制が崩れた。
そこに加蓮が大剣を振り下ろす。
「くっ……ここまでか」
加蓮の大剣があたしの目の前で止まる。
「私の勝ち……だね」
「あぁ。負けたよ。」
加蓮が魔法で作った大剣や短剣が消えていく。
やっぱり加蓮は強いな……。今は昼間だしこれでフルパワーじゃないっていう……。
まったく……恐ろしいやつだぜ。
「奈緒には何してもらおっかな~♪」
「ほどほどにしといとくれよ」
加蓮は顎に手を当てて考える。
あたしにできることならいいんだけど……。
「うーん、すぐには思いつかないや」
「じゃあ保留ってことでいいか?」
「うん」
保留か……。このまま忘れてくれたらいいんだけど。
「あ、そうだ。そろそろ血を吸わせてよ」
「……それがお願いか?」
「違うって。もともと血を吸わせてくれる約束だったでしょ?」
「それはそうだけどよ……」
ついにこの時が来ちまったか……。血を吸われるってどんな感覚なんだろう?
「それじゃあ早速……」
そう言って、加蓮はあたしの首筋に顔を近づける。
「まてまてまて!」
「なに?」
「今はダメだ。せめて風呂入ってからにしてくれ」
「なんで?」
「だって汗かいてるし……。変な匂いとかしたらいやだろ?」
「私は別に気にしないのに」
「あたしは気にするの!」
加蓮はえーとかいってるけど、そりゃ気にするだろ。特に戦いが終わった後なんて汗だくだし。
「と、とにかく!準備できたら加蓮の部屋に行くから待っててくれ!」
「もー、奈緒はしょうがないなぁ。忘れずに来てよ」
「あぁ」
加蓮がなんだかニヤニヤしたような顔であたしを見てくる。
それを見てあたしはフンッと言って屋敷に戻る。
あたしか?あたしがおかしいのか?とにかく心の準備をしておかないとな。
ーーーーーーーーーーーー
現在あたしは加蓮の部屋の前にいる。
諸々の準備を終わらせてついに来てしまった。なんか緊張するな……。
あたしは加蓮の部屋にノックする。
「入ってー」
「よう」
「やっほー」
中に入って加蓮と挨拶をする。
加蓮の部屋には初めてきたな……。どうやらあたしの部屋と作りは同じみたいだ。
「ささ、ここに座って」
「あぁ
言われるがままに加蓮のベッドに腰掛ける。そして、加蓮があたしのすぐ後ろに座る。
「それじゃいくね……」
「まてまて待て!なんか準備とかないのか?」
「ないよ?」
「いや……ほら……いろいろあるだろ?」
「もしかして奈緒、怖い?」
後ろにいるから顔は見えないがニヤニヤしてる加蓮が思い浮かぶ。そうだ!その通りだよ!
「無理やり眷属にさせられたり、死んじゃったりしないだろうな!?」
「当たり前じゃん。それじゃあ、約束しようか」
「え?」
加蓮が小指を出してくる。
それにつられてあたしも小指をだす。
そうすると加蓮は指切りを始めた。
「子供かよ……」
「いいの、しっかり約束をしておくことって大事だよ」
「そういうもんか?」
「そういうもの。それじゃあ、いくよー」
「ちょ、まっ……」
加蓮の鋭い牙があたしの首筋に刺さる。
一瞬の針を刺すような痛みのあとは何の痛みも感じなかった。文字通り、血の気が引いていく感覚がする。
「なぁ加蓮。どうだ?」
あたしは加蓮の方を見る。
しかし、首筋に噛み付いているので、頭しか見えなくて表情がわからない。
何も言わないってことは、悪くないってことなんだろう。
なんだかフラフラしてきた。貧血かな……。血が吸われてるんだからそりゃそうか。
「なぁ、そろそろ……」
なおも加蓮は血を吸い続ける。
「クラクラしてきた。そろそろ勘弁してくれ……」
加蓮の吸血鬼は止まらない。
「やめてくれ!」
あたしは力を振り絞って、加蓮を無理矢理振り払う。
振り払われた加蓮はベッドに倒れこむ。
あっ!やっちまった……。
「すまん加蓮。だいじょ……」
加蓮の方を見て声をかけようとした瞬間、加蓮に押し倒される。
「おい!どうしたんだ!」
「はぁ……はぁ……」
加蓮の様子が明らかにおかしい。
目も血走ってるし、呼吸も荒い。
このままじゃ殺され……。
「おい加蓮!正気に戻れ!加蓮!」
「はぁ……はぁ……」
加蓮の牙が再びあたしの首筋に近づく。このままじゃ、血を吸い尽くされちまう!
「悪く思うなよ!」
そういってあたしは加蓮の腹を思いっきり蹴り上げる。
加蓮が怯んでるあいだにとりあえずこの部屋から脱出する!
あたしが立ち上がると視界が闇に包まれる。
魔法か!?いや、これは貧血からくる立ちくらみだな……。
あたしは立っていられずベッドに座り込む。
ここまでか……。
「……ハッ!」
加蓮の目が元に戻る。
なんとかなったか……。マジで命の危険を感じたぞ。
「ごめん奈緒!大丈夫だった!?」
「大丈夫かどうかで言うと大丈夫じゃないな」
「ホントごめん!約束を破るなんて私……」
「わかってるよ。明らかに正気を失ってた状態だった」
「うん……。奈緒の血があまりにも美味しくて……いつのまにか我を忘れて……」
加蓮が泣きそうにながらそう話す。
おいおい、泣くことはないだろ。確かに死ぬかとは思ったけどさ。
「いいよ。こうして生きてるんだし」
「ごめんね……約束を破るなんて……ごめんね……」
加蓮はついに泣き出してしまった。
あたしは背中をさすってやる。
全く、しょうがない奴だ。というか約束を強調するな。昔何かあったのか?
あっ、やべ。安心したからか貧血が……。倒れる……。
「奈緒?奈緒!?ねぇしっかりしてよ!奈緒!」
加蓮の叫び声が聞こえる。
思ったより貧血は深刻だったみたいだ。体が動かないし、目も開かない。なんか前もこんなことあったな……。まあ、死ぬことはないだろ。
「回復魔法!」
「奈緒!ねえ奈緒ってば!」
「あぁ……。すまん、心配かけたな」
「奈緒っ!」
加蓮の回復魔法でなんとか回復したあたしが体を起こそうとすると、涙目の加蓮に抱きつかれた。
「もう大丈夫だ。安心しろ」
「でもっ……でも……」
「大丈夫だ」
泣きじゃくっている加蓮の背中をさすってやる。
こう見るとまるで子供だな。
「……怒らないの?」
少し泣きやんできた加蓮が聞いてくる。
「あぁ、怒ってもしょうがないだろ?加蓮もわざとじゃないんだし、あたしも無事、それでいいじゃないか」
「うぅぅ……わーん!」
加蓮がまた泣き出す。
これじゃあ子供どころか、赤ちゃんじゃないか。
「すぅ……すぅ……」
背中をさすり続けていると、泣き疲れた加蓮はあたしの胸の中で眠ってしまった。
起こさないように、そっとベッドに横にしてやる。
詳しい話はまた明日聞けばいいか……。
回復魔法で少しは回復したといえ、あたしも疲れた。部屋に戻る元気もないしここで少し寝させてもらうか……。
あたしは加蓮の隣に寝転がる。
「おやすみ。加蓮」
ーーーーーーーーーーーー
窓から差し込む光で目を覚ます。
柔らかいベッドから体を起こし、止まっていた頭が少しずつ動き出す。
そういえばここは加蓮の部屋だっけ……。部屋を見渡すも加蓮は見当たらない。そもそも今何時だ?
寝起きの頭でぼーっと考えていると突然ドアが開く。
「あ、奈緒起きた?もうお昼だよ?」
「もうそんな時間か……。昨日は夕食前に寝ちゃったのに、随分寝たなぁ……」
「貧血だったんだし、しょうがないんじゃない?」
加蓮が少し申し訳なさそうに言う。
まったく……まだ気にしてんのか。
「あぁ、そうだな。お腹も空いたし、何か精のつくものでも食べたいな」
「そうだろうと思ってお肉とかいろいろ用意してあるよ。ちょうど出来たから、起こそうときたところなんだ」
「本当か?それは嬉しいなぁ」
「下にあるから。いこ?」
「あぁ」
下の部屋にいくとたくさんの料理が並べられたいた。
肉や魚、野菜などさまざまなメニューだ。
「これ全部加蓮が作ったのか?」
「うん。ほかに作る人いないし」
素直に自分が作ったって言えばいいのに。加蓮も申し訳なさみたいなのを感じてるんだな。
「冷めたらいけないし食べるか」
「そうだね」
あたしは目の前にあった肉に齧り付く。
ん~、なかなか美味いじゃないか。
「なぁ、加蓮。いろいろ聞いていいか?」
「うん。いいよ」
「昨日の吸血はほどほどのところでやめるつもりだったけど、いつのまにか我を忘れてしまっていた。そういうことか?」
「うん。ホントごめんね」
「こういうことってよくあることなのか?」
「ううん。いままでいろんな人の血を吸ってきたけど、こんなことになったのは初めて」
「へぇ……」
「奈緒との相性がいいのかも」
2人で食事をしながら話す。
昨日の出来事は加蓮にとっても思ってもなかったことなのか。
「ごめんね……。こんなことじゃ奈緒にあれこれ言う資格ないよ……」
「ん?」
「結界は解除しとく。国に帰ってもいいよ」
「え?それは……」
「もう奈緒には近づかないようにする。国に帰るまでの道中が不安だったら、国まで送っていくよ」
「このご飯はせめてもの罪滅ぼし。いっぱい食べてくれると嬉しいな」
加蓮が突然いろんなことを言い出すので、頭が混乱する。
帰ってもいいっていったか?つまりあたしは解放されたのか。
加蓮は約束という言葉に何か思い入れがあるようだし、それを破ってしまったことでものすごく罪悪感を感じているのだろう。
これまで加蓮と一緒にいて、こいつがただの悪い魔物じゃないっていうことがわかった。
魔力が高くて、ポテトが大好きな普通の少女。
そこにあたし達人間との違いはあるのか?
「なぁ加蓮。あたしといるのは嫌か?」
「ううん!そんなことない!すごく……すごく楽しかった!」
加蓮の心がこもった言葉が胸に響く。
ふざけあったり……どうでもいい話をしたり……。あたしもなんだかんだ楽しかったよ。気の置けない話し相手って、いるだけで楽しいもんな。
「でも……奈緒に迷惑かけちゃったから……私には一緒にいる資格なんかないよ……」
「それはあたしが決めることだ」
「え……?」
「これからも一緒に暮らしてやるよ。いつまでもっていうわけじゃないけどな」
「いいの……?」
加蓮が涙目になりながら聞いてくる。
「あぁ。ただし条件がある」
「条件?」
最初の時とは立場が逆になっている。こんなこともあるもんなんだな。
「まずは一回帰らせてくれ。アーニャ達はあたしがまだ生きてるのも知らないだろうし、いろいろ報告なきゃいけないこともある」
「わかった。報告って吸血鬼のことでしょ?」
「あぁ」
「それだったら、後でいろいろ特徴をまとめて紙に書いておくね」
「おお、それはありがたい」
「罪滅ぼしをこめてね。私にできることだったらするよ」
「おお、それはありがたい。それで、2つ目にも繋がるんだが、あたしがここで暮らしている間、戦い方とか魔法の使い方とかを教えてくれないか?」
「それはいいけど……なんで?」
「昨日加蓮と戦って気づいたんだけどさ、あたしはまだまだ力不足だなって。これじゃあアーニャを守れねぇ」
「そっか……。うん、できる限り協力するよ」
「助かるよ」
アーニャが城にいるときは城の兵士たちもいるし、大丈夫だろう。でも、この前みたいに外に出るときには何が起こるかわからない。アーニャを守るためにはもっと力をつけないと……。
「こんなところかな……」
「あっ、そうだ。ちょっとくらいなら血も吸ってもいいぞ」
「え、それは嬉しいけどなんで……」
「その方が加蓮もやる気出るだろ?」
「そりゃあそうだけど……」
「でも、昨日みたいなのはやめてくれよな。やめてって言ったらすぐやめること」
「うん、もちろんそうするよ」
これぐらいかな……。
ここが森のどこにあるのかわからないけど、歩いて国に帰るとなると、半日はかかるだろう。今から出発すると夜になっちゃうな……。出発は明日にするか。まだちょっと体もだるいし。
あんなにあった料理も全て食べ終えてしまった。昨日の夜も食べてないし、お腹空いてたんだろうな。
「ごちそうさま」
「ごちそうさまでした」
「まだ昼だけどお腹が膨れて眠くなってきたし、あたしはもう一眠りするよ。出発は明日にする」
「りょーかい。私も吸血鬼の特徴をまとめた紙書いとくね」
「あぁ、よろしく頼む」
あたしは自分の部屋に向かって歩き出す。
加蓮はまだどこかぎこちなかったな。別にもう気にしてないんだけど……。
しっかし美味かったなぁ。食事も交代制にするようにまた今度言ってみよう。
ーーーーーーーーーーーー
翌日、早朝の心地よい風を感じながら、私はアーニャのいる××国に戻るため早朝から準備をしていた。
「こんなもんかな……」
「奈緒、もういくの?」
「ああ、向こうで一泊して明日帰ってくるよ」
「りょーかい。私もついていこうか?」
「いいよ別に。恐れられちゃうかもしれないだろ?」
「それもそうだね」
加蓮は納得したようにうなづいている。
加蓮も連れていくことは考えたんだけど、やっぱり危ない。
加蓮が悪い魔物じゃないってあたしは知ってるけど、城の人たちはそうじゃないからな。戦闘になる可能性もあるだろう。
「あっ、そうそう。」
加蓮が手に握っていた紙を差し出す。
「はいこれ。昨日言ってた特徴をまとめた紙。なくさないでね」
「おう、ありがとな」
貰った紙をなくさないように大事に懐にしまう。読むのは向こうについてからでいいかな……。
「それじゃ、行ってくるよ!」
「うん。気をつけてね!」
あたしはアーニャのいるスニエーク王国に向かって歩き出す。
馬がいると楽なんだけどな……。
「やっぱり途中まで送っていこうか?」
「いいって!べつに……」
あたしはついて来ようとする加蓮を制止する。
……待てよ?この森にはあたし達を全滅にしたあの猿の魔物がいるじゃないか。
あたし1人だとどうにもならないしついて来てもらうのもありか。
「ごめん、やっぱり森を出るまで頼むよ」
「はーい♪」
加蓮が機嫌よく返事する。
そんなに嬉しいことか?
あたし達2人は再び歩き出す。
ーーーーーーーーーーーー
屋敷を出て数分、あたし達は以前森を歩いていた。
「なあ、加蓮。この道であってるよな?」
「うん。あってるよ。もう少ししたら大通りに出ると思う」
あたし達が歩いている道はいわゆる獣道。決して歩きやすいとはいえない。
またしばらく歩くと少し大きな広場に出た。
でもおかしいな……。木々はなぎ倒され、荒らされている。自然にできたものとは考えにくい。それに新しい……?なんだか大きな魔物が暴れた後のような……。
「ギィヤァァァァ!!!」
「やっぱり出たか!」
木々をなぎ倒した後から出た来たのは、あたしが以前やられた猿の魔物だ。
あたしは剣を抜き、戦闘態勢に入る。
「加蓮!こいつが以前あたしがやられた魔物だ!気をつけろ!」
「ふーん……。この森にはこんな魔物がいたんだ。私に対抗するためにこっそり強くなろうとしてたのかな?」
「そんなこと言ってる場合か!来るぞ!」
魔物が大きな声で叫びながらあたしに近づいてくる。
あたしだってお前に負けてからちょっとは強くなったんだ!剣も支給された安物じゃないし、なんとかなるはずだ!
「奈緒、私の後ろにきて」
「え……。」
言われるがままに加蓮の後ろへ移動する。
「おい!こっちにきてるぞ!大丈夫なのか!?」
「まあ見ててよ」
「獄炎魔法!!」
加蓮が前にかざした手から飛び出した炎が魔物を包む。
「グォォオ!!」
猿の魔物はもがき苦しみ、灰になって消えてった。
「すげぇな……。あたしがあんなに苦戦した魔物を一撃で……」
「まあね。吸血鬼特権ってやつ?」
「あっ、森の中で炎の魔法なんか使ったら火事になるんじゃ……」
「大丈夫だって。そこはちゃんと計算してるよ」
加蓮はこちらを見てえへへと笑う。
やっぱこいつすごいな……。
そんなことを再確認して、あたし達は再び歩き出す。
ーーーーーーーーーーーー
再び歩き続けてしばらくすると大通りにでた。
「ここからは1人でも大丈夫だ。さっきはありがとな」
「うん。お芋いっぱい買って待ってるね!」
「やめろ!また三食芋になるじゃねぇか!」
「じゃーねー♪」
「ったく……」
別れの挨拶をしてからあたしは××国へ、加蓮は屋敷へそれぞれ歩き出す。
まったく、加蓮のポテト好きはなんなんだよ……。
ーーーーーーーーーーーー
加蓮と別れてから歩き続けて数時間、やっとスニエーク王国にたどり着いた。
朝に出発したのにもう昼だ。ちょっと腹が減ってきたな……。
城までの道にあった出店のポテトを買い、食べながら歩く。加蓮といっしょにポテトを食べてると、なんだかんだあたしもポテト好きになってきている気がする。
ーーーーーーーーーーーー
ちょうど食べ終えた頃、やっと城にたどり着く。
門番に話をすると、王様は今国におらず明日帰ってくるとのこと。アーニャは自室で昼食を食べているらしい。王様がいないんだったら、まずはそこに行ってみるか。
城の中の見慣れた風景を歩く。1週間とちょっとしか経ってない気がするのに随分と久しぶりな気がするな……。
道中歩いていると、見知った兵士達に話しかけられる。
大体はよく生きてたなとかどこ言ってたんだ?とか聞いてきたけど、どこから話していいかもわからないから、当たり障りもない返事をしておく。
その兵士達も何か事情があることを察すると去っていった。まったく……いい兵士だぜ。
ーーーーーーーーーーーー
遂にアーニャの部屋に着いた。
あたしはノックをする。
「どうぞ」
知らない女の声が答えた。あたしは言われるがままに茶色い扉を開け、中に入る。
「失礼します」
中に入って見えたテーブルには食事をしていたアーニャと茶髪の長い髪の女性がいた。
「ナオ!!」
アーニャはあたしを見るとすぐに駆け寄ってきてあたしに抱きついてきた。
「心配かけてごめんな、アーニャ」
アーニャはあたしに抱きつきながら嗚咽を漏らしている。あたしも抱き返しながらアーニャの背中をさすってやる。
「あの……そろそろどなたかお聞きしてもよろしいですか?」
テーブルにいた茶髪の女性がそう聞いてくる。それにしても何処かで見たことがあるような……?
「あたしは奈緒。ちょっと前までアーニャのボディーガードみたいなことをしてたけど、いろいろあって行方不明になってた。アンタは?」
「私は美波です。ヴァルガルズ王国で防衛部隊アインフェリアの隊長をしています」
「アインフェリア……あの守ることに関しては世界で1番だというあの……」
美波の方をしっかりと見る。道理でどこかで見たことあると思ったんだ。アインフェリアなんて世界でも有名じゃないか。
「それでなんでアインフェリアの隊長がここに?」
「アーニャちゃんのボディーガードの代わりに来たの。次の人が見つかるまでの代理ってことでアインフェリアの代表としてきたの」
「へぇ……迷惑かけたな。すまなかった」
「ううん、いいの。ちょっとくらい私1人が抜けても問題ないから」
「ミナミはとてもよくしてくれました」
アーニャは泣き止んで美波の方を見ながらそう言った。
「私がナオが帰ってこなくて泣いてたときに、いっぱい慰めてくれました」
「そうか……。ありがとな、美波」
「いいの。私もあの時のアーニャちゃんは放っておけなかったから」
初めて話したけど、なんていい人なんだ……。戦いも出来て性格もいいとか完璧すぎるだろ。
「えっと……奈緒ちゃんもご飯食べる?調理場にいけばまだ残ってたはずだけど」
「ダー!いっしょにご飯食べましょう!」
「いいのか?だったら頂くよ。ちょうどお腹が空いてたんだ」
「じゃあ早速持ってくるね!」
美波は綺麗な髪を靡かせながら小走りで部屋を出ていった。そんなに急がなくてもいいのに……。
ーーーーーー
「ナオ、聞いてもいいですか?」
「ああ」
「ナオはあれからこれまで何をしていたんですか?」
3人で食事中、アーニャがじっとあたしの方を見て言った。
やっぱり気になるよな。まぁ、頃合いを見て話そうとしてたからいいんだけど。
「私も気になります。魔物に襲われてから、どうなったんですか?」
「ちょっと長くなるけど勘弁してくれよな」
「ダー」
「はい」
「えっと、あの後、巨大な猿の魔物に襲われたんだ。時間も十分に稼げたし、あたしたちも逃げようとしたんだけど道を塞がれちゃってな……。戦うことになったんだ」
2人は黙ってあたしの話に耳を傾けている。
あたしは続けて言う。
「それで戦ったんだけど、全く敵わなくてな。そこで魔物にやられて気を失ったんだ」
「…………」
「あたしももう死んだかと思ったんだけど、目を覚ましたら森の中の豪華な屋敷の部屋の中。誰かに助けられたんだ」
「アー、その人には感謝しないと、いけないですね」
「うん、そうだね。でも、なんであの森に住んでるんだろう……?」
「それなんだけど、その助けてくれたやつが吸血鬼でさ。人目を避けて暮らしてるみたいなんだ」
「吸血鬼!?」
「シトー?吸血鬼ってなんですか?」
「アーニャちゃん知らないの!?強い魔力を持った、人の血を吸う魔物だよ!」
「魔物……!」
2人は軽くパニックになっている。
そりゃそうか。あたしもそうだったしな。
「でも、魔物が人を助けるなんておかしくないですか?」
「ああ、もちろんその吸血鬼──加蓮って言うんだけど──善意だけじゃなかった」
「初めは眷属になってくれって言われたんだ。わかりやすくいうと吸血鬼になれみたいな感じか?」
「えっ……じゃあ今の奈緒ちゃんは眷属……」
「違う違う!あたしは普通の人間だ!なんでも長年1人で暮らすのが寂しかったみたいでな。一緒に暮らしてほしいから助けたらしい」
「じゃあ奈緒ちゃんはその吸血鬼と一緒に暮らすの?」
「うーんと、一回あいつと戦ってみたんだけどやっぱり強くてさ。加蓮に戦い方いろいろ教わろうと思うんだ。今回みたいにアーニャを危険な目に合わせるわけにはいかないからな」
「?よくわかりません……」
「えーと……とりあえずアーニャを守るために力を付けないといけないから、また出て行くことになる。ごめんな」
「ダー。わかりました。ちょっと寂しいけど、美波もいるので大丈夫です!」
アーニャは納得してくれたようだ。
このまま王様にも言ってくれたらいいんだけど……。まあ無理か。美波の方は……。
「人間が吸血鬼に……?そんなこと聞いたことない!」
「あたしもだ。でも絶対あたしの力になる」
「…………」
美波は黙り込んでいる。
普段、戦いに身を置いているものとしたら反対したくなるのは当然だろう。
「この何日か過ごしてきてわかった。加蓮はあたしたちが思っているような悪い魔物じゃない」
「でも!相手は魔物よ!今は良くても、いつ襲いかかってくるかわからないじゃない!」
あたしは懐から加蓮が書いた吸血鬼の特徴についてまとめてある手紙をテーブルの上に置いた。
「これは加蓮が直接書いた吸血鬼の特徴について書いたものだ。敵対する意思があるならこうやって弱点も書いてあるような手紙を渡すわけないだろう?」
「それは……そうだけど……。でも!ここに書いてあることだって嘘かもしれないし……」
「それは完全に否定はできないな。でも、あたしが一緒に生活した感じにはここに書いてあることと一致してた」
「…………」
「ミナミ、ナオがここまで言う人なら悪い人じゃないと思います」
「……個人的には反対だけど、奈緒ちゃんとアーニャちゃんがそこまで言うならわかりました。」
「ありがとな。悪いけど、もうしばらくアーニャのことをよろしく頼むよ」
「……はい!」
それからあたしたちはまた食事を再開した。
ちょっと美波とギクシャクしたけど、アーニャを挟んで会話するうちに次第に仲良くなれたみたいだ。
ーーーーーーーーーーーー
あたしは兵舎の自分の部屋のベッドに倒れこむ。
いろいろあって疲れたし、寝るか……。明日は王様が帰ってくるらしいから、しっかり報告しないとな。
おっと、危ない。加蓮に渡された吸血鬼の特徴を書いた紙を王様に渡す前に読んどかないと……。
ーーーーーーーーーーーー
翌日、王様は昼頃に帰ってくるということであたしはアーニャが勉強中で暇な美波と手合せしていた。
「奈緒ちゃん……なかなかやるわね!」
「美波こそ!アインフェリアの名は伊達じゃないな!」
美波の武器は2メートルほどある槍。ここまで戦ってきてわかったが、なかなか厄介だ。リーチの差があってなかなか近づくことができない。こういう武器はリーチが長い分、隙も大きいはずなんだが美波の華麗な槍さばきがそれを許さない。
お互い何回か攻撃はヒットしているが、決定打という一撃は決められるずにいた。
こういうときは……。
「ふっ!」
わざと大げさに剣を振り、隙を見せるフリをする。美波ほどの手練れなら乗って来るはずだ!
「隙あり!」
美波はあたしの隙を見ると、すかさず槍で突きにくる。
きた!予想通り!
あたしはその槍をひらりとかわし、地を蹴る。
なぎ払いならまだしも、突きなら隙が多い。この攻撃はかわせないはずだ!
あたしはすかさず槍を突き出した美波の後ろに回り込み、首元に斬りかかる。
「くらえっ!」
ペチンッと音がなりあたしの剣が美波にクリーンヒットする。
「……負けたわ」
「なんとか勝てたか~」
あたしはへろへろと地面に座り込む。
今回は魔法なしの勝負だったからなんとか勝てたけど、美波は魔法も得意らしい。魔法ありだと絶対に負けていただろう。あたしももっと頑張らないとな!
ーーーーーー
手合わせを終え。美波と話していると城の兵士がやってきて王様が帰ってきたとの報告があった。
あたしは支度を整え玉座の間に向かう。
美波はそろそろアーニャの勉強が終わるようなのでアーニャのもとに行った。
玉座の間の大きいドアを開けて中に入ると王様や大臣、護衛の兵士達がいた。
「お久しぶりです、王様。今日は報告したいことがあって参りました」
「うむ、久しぶりだな。して、報告とは?」
あたしは巨大な猿型の魔物に襲われて全滅したこと、吸血鬼の加蓮に助けられたこと、そしてアーニャを守るため加蓮のもとで修行したいことを伝えた。
「なるほど……その魔物はどうなった?」
「はい、既に加蓮が倒しています。あの森を通るときに再び襲われることはないでしょう。」
「うむ」
「あと、こちらが吸血鬼の特徴をまとめた手紙です。これは吸血鬼の加蓮本人が書いてくれました」
「ほう……」
あたしは王様に加蓮から預かった手紙を渡す。王様はそれにさっと目を通す。
「もし、加蓮があたし達に敵対する意思があるなら自分の弱点も書いてあるこんな紙を渡すわけがありません」
「しかし、嘘の情報を伝えているかもしれんぞ?」
「いろいろあって加蓮としばらく過ごしていましたがそれはないと思います。あたしが見たり聞いたりした情報とその手紙の情報を一致しています」
「ふむ……」
王様は側にいた大臣達を集めて何か話し出した。おそらくどうするべきか話しているんだろう。
ーーーーーー
……話し合いが終わったみたいだ。随分長かったな。
王様が再びあたしの方を向く。
「あい、わかった!吸血鬼のもとで修行することを許可しよう!」
「ありがとうございます!」
「ただし、月に一度報告しに帰って来ること。いいな?」
「はい!」
ーーーーーーーーーーーー
あたしは玉座の間からでてホッと一息つく。
加蓮に戻って来るっていっちゃったし、許可されなかったらどうしようかと思ったぜ。
今の時刻は昼を過ぎた頃。昼食をとってからこの国を出ればぎりぎり夜になる前には加蓮のいる屋敷に着くか。
帰る前にとアーニャの部屋に挨拶に行ったら、またアーニャと美波が食事中だったので混ぜてもらった。
「ナオ、もう行っちゃうんですか?」
「ああ、悪いな」
「美波も悪いけどアーニャのこと、よろしく頼むよ」
「うん、任せて!」
「それじゃあな!」
2人に手を振りながら歩き出す。
また長い旅の始まりだ。
ーーーーーー
はぁはぁ……。やっと着いた……。夜になる前には着くと思ってたけど、結構遅い時間になったな。アーニャ達と話し過ぎたか?
……途中から思ってたけど絶対馬借りて来た方がよかったな。気づいた時にはもう引き返せないところだったけど。
「ただいま~」
「おかえり、奈緒。ずいぶんお疲れだね」
あたしが家に入ると加蓮が出迎えてくれた。なんでこんな何もない玄関の広間にいたんだ?まあいいか……。
「まあな。歩いて帰って来たから疲れたんだよ……」
「馬でも借りればよかったのに」
「うっせぇ!わかってるよ!」
加蓮があたしを見て笑っている。
くっそぅ……。もう少し早く気づいていれば……。
「今日は疲れたからもう寝るよ」
「そう?おやすみ、またよろしくね」
「ああ、こちらこそよろしく」
ーーーーーーーーーーーー
この前、初めてお城に報告しに行ってから1ヶ月と少しがたった。
あれからあたしは毎日加蓮に訓練をしてもらいながら、週に一度この前みたいに実戦形式で試合をしている。
「ハッ!」
加蓮が魔法で作り出した刃があたしの首元に当てられる。
「クソッ……」
「また私の勝ちだね」
「今回はいけると思ったんだけどなぁ」
加蓮が作り出した刃が消える。
相変わらずまだあたしは勝てていない。でも、初めの頃に比べると随分腕を上げた実感がある。
ーーーーーーーーーーーー
部屋に戻って人形を作り、私に見えるように魔法をかけ続けてから約12分がたった。
よしっ、あともうちょっと……。
すると、聞こえたのは複数人の足音と話し声。
奈緒は!?大丈夫なの!?
すごく心配だけど私は奈緒を信じる。きっといい感じに時間を稼いでから撤退したんだろう。
まだ身代わりは不完全だけどこれ以上は無理!そろそろ隠れないと……。
足音が近づいてきた。
私は椅子に身代わり人形をセットし、ヘビに化けベッドの下に隠れる。
以上で完結です。
至らぬ点も多々あったとは思いますが、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
未回収の伏線的なものはそのうち書こうと思っている番外編で回収予定です。
ありがとうございます
加蓮過去編から書いて、余力があればifルートにいこうと思います。
今のところスレタイは
加蓮「私が変わった日」か、加蓮「あの日の約束」
にする予定ですが変えるかもしれません。
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