【安価・コンマ】野球やろうぜ【3回】 (1000)

 1回:【安価・コンマ】野球やろうぜ【1回】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1519545065/)
 2回:【安価・コンマ】野球やろうぜ【2回】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1520687957/)

天才世代。
それは高校野球が超絶大人気な現代でこぞって使われる単語。

要するになんかこうパワプロ的な野球の安価SSっすね。
だから現実じゃプロレベルじゃん! ってのも、ゴロゴロいるわけっすね!
よければおつきあいくださいまし。

更新頻度は、てきとー!


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1521349989

【新摂高校】:新設校

 打:C
 筋:C
 走:B
 肩:B
 守:B

メディアの注目選手:松坂・佐野>久遠>阿部・田中>中井

スローガン:豪打必勝

田中太郎 二塁手
B C A C A
「俺をセーフティだけの男と思うなよ!!」

久遠康宏 投手
149km/h B C ↘
B B B A C
「エース争いに、俺は勝つ」

阿部 博 捕手
C D C A A
「腹黒じゃないしぃー」

佐野誠一 三塁手
B A C B B
「豪打必勝じゃあ!」

中井 薫 外野手
C B B B B
「何で…打てないんだ…」

加賀茂雄
138km/h C D
C D C C C
「先輩達ヤバいっす!!」


【東究高校】:投手王国
絶希 望:インコースエグい投手
144 B C
金剛 明羅:速球自慢の投手
150 D B

【羽生高校】:名門校
中沢拓斗:?
? ? ?

【波動高校】:超重量打線
佐川大信:怪物スラッガー
B A D C C

【大東高校】:黒木擁するチーム
黒木喜一郎:超精密機器投手
140 S B

【唐栗高校】:最強ルーキートリオ
坂上二郎:3番ライト バットの達人
ABACC
遠野 始:4番ファースト 強打巧打
BACCB
時任藤二:5番ピッチャー 荒れ球豪速球&闘争心
148 E D
BABAD

 ※他校選手のステは前回対戦時のものと思ってね

【記者】
三橋京子
広田 陣


新摂高校
松坂修一 投手 両投/両打 右:スリークォーター 左:サイドスロー

球速:142キロ
制球:C(62)
持久力:S(98)
カット:C(52)
チェンジアップ:D(40)
シンカー;C(65)

打力:C(65)
筋力:C(62)
走力:C(63)
肩力:C(球速換算)
守備:A(86)

特能
四刀流:どちらの手で投げようが、どちらの打席に立とうが一切能力が衰えない
ハングリーバッター:狙い球を絞ることで打席を重ねる度、その狙い球をめちゃくちゃ打ちやすくなる
クロスファイアー:左投げ時、対角線への投球で球威と制球力がグンと上がる


チームメイト(の一部)

2年
田中太郎 二塁手
久遠康宏 投手 ★☆☆
○阿部 博 捕手
◎佐野誠一 三塁手 ★★★
中井 薫 外野手

1年
加賀茂雄 投手

監督&女マネ
長島貞治 監督
種田夕実 女マネ
宮野 光 女マネ


 キインッ

阿部(今の甘すぎ…!)

加賀(しまった…!?)


<おっしゃ、先頭打者が出たー!

<加賀ァ、完投できんのかぁっ!?


佐野「打たせてけ、ドアホ!」

田中「そーだそーだ、松坂くらいのスタミナなんか求めてねんだよ! あいつオバケなんだから!!」

加賀「は、はい…!」


松坂(ちょいちょいオバケって言われる…何か、オバケはなあ…)シュン

久遠(俺も松坂くらいのスタミナさえあればな…)



<ガンガン押せぇっ!

<加賀はもうガス欠だぞ!


阿部(さてさて、松坂くんならこれくらいのピンチ、何度も何度も脱して無失点にしてきたけど…)

阿部(きみはどうかな?)

加賀(落ち着け…焦らず、落ち着いて、投げられれば…!)


 ビシュッ
 ギンッ

<ファール!

阿部(縦スラのキレがなくなってきてるな…)

阿部(うーん、これは本格的に…スタミナつけるために走り込んでもらうしかないかなあ…?)

阿部(とにかく、この1イニングが勝負…)



 下1 お、崩れるか? おっ?

 1~3 1点しか返せなかったか
 4~6 ちぃっ、もう少しで同点だったのに
 7~9 同点きたぁー!!


 キインッ

<いったぁー!

<回れ回れぇーっ!


加賀「はっ…はっ…」

阿部「同点か…」

阿部(がんばった方だよ。もうスタミナも尽きてるのに)


阿部(まあ投げてもらうんだけどね)

阿部「加賀くーん、マウンド降りたいなら止めないよー? どうしたいー?」

佐野(鬼畜か、こいつ)

田中(打ち込まれて同点にされた投手にかける言葉がそれかよ)

加賀「っ……な、投げます…!!」

阿部「お、根性あるね。いいねっ。じゃあ張り切っていこー」

佐野(鬼畜じゃの、こいつ)

田中「よっしゃ、打たせろーい!」


松坂(阿部くんキツいなあ…)

久遠(それだけ加賀を戦力として見てるのか…)



┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃赤┃2 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃白┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃2 ┃ ┃┃ ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻



久遠「同点に追いついたんだ、ここからはより気を引き締めよう」

<おうっ

久遠「……副キャプテンからは?」

松坂「えっ…? あ、ああっと…えーと…………阿部くんのことだから、色々するだろうけど…ま、惑わされずに…?」

<おうっ


久遠「よし、このまま逆転勝利だ」

<おおおっ!



 下1 流れはきてるのか!?

 1~3 阿部の配球推理攻撃か…? 狙い球を各打者が絞ってきてるような…?
 4~6 チームメイトだけあって久遠の球に馴れるのが早いか…?
 7~9 流れはきている(確信 あとは打ち勝つだけだ



久遠(カーブで仕留める…!)

 ビシュッ
 クイッ
 ギンッ

久遠(手を出した…!?)

 バシッ
 ビシュッ

<アウト!

久遠(………今のはいけると思ったんだが…)



阿部「んー、手強いなあ、さすがに…。でもこうして当てられてるって事実を突きつけ続ければ勝手に圧力感じてくれるかもだし」

阿部「とりあえず、初球のストレートを狙おうか…。多分、高めにくるから。思いきり振れば…と」ススス

田中「えー、当たるのかあ、それ?」

阿部「どーだろうねー。当たるも八卦、当たらぬも八卦…」

中井「占いか、っつうの…」


 キインッ

中井「当たった!?」

田中「しかもデカいんじゃねっ!? いけいけぇーい!」

佐野「やらしい戦い方じゃのう…」

阿部「そりゃ、みんながみんな、佐野くんみたいな技術と体格とパワーあればいいけどねー」



 下1 阿部めえっ!

 1~3 ランナー溜まったとこで田中に1点取り返された…
 4~6 切り抜けられた…
 7~9 読まれたところで力押しすか


田中「俺を、出塁だけの男と、思うなよぉっ!!」

 キィィンッ

<打ち上げた!?

<タッチアップいけるぞ!

松坂(ライト方向に…!)

 パシッ

<スタート!

 ビシュッ

<走りこめええっ!

 ズザァッ

<セーフ!


<うおおおおおおっ!

<田中ナイス犠牲フライ!

田中「ふっふっふ…だが、俺をフライだけの男とは思うなよぉっ!? だぁーっはっはっはー!!」


久遠「………さすがにやるな」

久遠(そしてここで阿部…。前の打席では力押しでいけたが…いくしかないか)

阿部(正直、力押しされたら俺のパワーじゃちょっと自信ないんだよね…。あれこれ迷走したピッチングしてくれるといいなあ…)


 ズバアンッ

<バッターアウト!

阿部「切り替えていこー!」

松坂(阿部くんが誰より切り替え早い気がする…)



┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃赤┃2 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃1 ┃ ┃ ┃
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┃白┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃2 ┃ ┃┃ ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻


<この回で久遠と松坂まで回せぇー!

<繋げばまた同点か、今度は逆転だぞ!

松坂(な、何か打者としても期待されてる…!? 9番がいつもの打順なのに!?)



 下1 チャンスはくるのか…? 加賀疲弊:+2

 1~3 こなかったか…
 4~6 久遠が同点にして、逆転のかかった…場面
 7~9 満塁で松坂にきちゃった…


 キインッ

<よっしゃあああーっ!!

<松坂に満塁できたぁー!!


松坂「えええっ…?」

加賀「はぁっ…はぁっ…ふっ…はぁっ…」

阿部(加賀くんきてるなあ…。それでもまだ投げようとするところは誉めるけど…)

阿部(松坂くんって、何か試合の終盤で打撃が好調になるイメージ…)

阿部(まあ、当たって砕けるしかないか…? 要求通りにこないんじゃ、リードのやりようがな…)


松坂(こんなチャンスで…回っちゃうんだ…)

松坂(自分で出した失点を取り返す…チャンス…?)

松坂(加賀くん、もう完全にガス欠って感じだし……い、いける…よね…?)



 下1 そりゃあ、いけるでしょう? ハングリー!:+2

 1~3 あれ、押し出しフォアボール…? 活躍できんかった…
 4~6 きっちり2失点分、返せました
 7~9 走者一掃!! さすが松坂!


 キインッ

<やっぱり打ったぁー! 右中間!!

松坂(やった、打てた…! ランナーも帰れてるし…!)


<よっしゃ、逆転きたぁー!!

<このまま加賀をぶっ潰せぇー!

<松坂が血祭りの戦端を開いたぞぉー!!


松坂(血の気多いよ、やっぱりいつの間にか…)

松坂(加賀くん…紅白戦とは言え、大丈夫かな…?)


阿部「加賀くん、マウンド降りようか?」

加賀「っ……で、でも…まだ俺…!」

阿部「じゃあここから、そのボロボロのコントロールと、威力もないボールでどうやって抑え込むの?」

加賀「っ…!」

阿部「どうやって?」

加賀「……それ、は…」

阿部「……がんばったよ、きみは」



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┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
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┃赤┃2 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃1 ┃0 ┃3 ┃
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┃白┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃2 ┃2 ┃× ┃4 ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻



田中「何でだぁーっ!? 途中まで勝ってたのに!! 勝ってたのにぃー!?」

田中「結局、野球は投手の力か、そうなのかあっ!? おい加賀、加賀ァッ!?」

加賀「すみ…ません……でした…」

田中「……いやお前、そんなしょげんな!? そんなにしょげてると俺だって遠慮するんだぞ!?」

中井「お前に遠慮なんてあったのか」

佐野「ないじゃろう」

阿部「意外とあるんじゃない?」

田中「お前らは負けたってのに、悔しくないのかー!?」



久遠「松坂のタイムリーが決勝点だったな」

松坂「回ってきたタイミングが良かったんだよ…。久遠くんは1失点だけど、僕は2失点で…」

久遠「いや、勝負強さは腕力とかを鍛えるようにいかない。そういう強み…松坂にはあると思うぞ」

松坂「久遠くん…」

久遠「俺も、勝負強くならないとな」

松坂(これ以上を求めちゃうからなあ…久遠くんは……)



 下1 紅白戦の後…

 1 で、エースは誰なんだ!? 阿部よっ!?
 2 あれ、加賀がものすごく落ち込んでる……声かけるべきかな…?
 3 阿部くんのリードの頼もしさが身に染みました、って


松坂「ふぅ…久しぶりの試合…勝てたし、楽しかった…」

松坂(あとは素振りして帰って……あれ?)

松坂(ブルペンの隅っこに、加賀くんが小さくなって座ってる……)


松坂(………声、かけた方がいいかな…?)

松坂(でも、何て声かければ…?)

松坂(勝った人からよくやったとか、面白くないだろうし…)

松坂(う、うーん……い、いやでも、先輩として…ここは…!)

松坂(…………先輩として……どうするべきなんだろう…?)




 下1 なんて声をかけるべきか…

 1 阿部くんのキツい発言は、信頼してる証拠みたいなものだから…て
 2 縦スラすごかったね、って
 3 野球に全然関係ない話題で…


松坂「……加賀くん?」

加賀「っ…」


加賀「…お、お疲れっす、松坂先輩!」グシグシ

松坂(泣いてたぁーっ!?)

加賀「何すか、雑用っすか!?」

松坂「あ、いや…そうじゃなくて…あー………た、縦スラ、すごかったね」

加賀「え…?」

松坂「あんな終盤まで隠されてたから…全然、打てるイメージはなかったよ」

加賀「そ、そうすか…?」

松坂「うん…」

加賀「………あざっす!」

松坂「うん…」

加賀「…」

松坂「…」


松坂(会話が続かないぃー!)



 下1 松坂くんだからなあ…

 1~3 じゃあおつかれさま…て
 4~6 負けた試合は、悔しいよね…て
 7~9 自分も最初はダメダメだったからさあ…て


松坂「……僕も、最初は全然で……丁度1年前くらいに紅白戦やって」

加賀「…?」

松坂「見事に負けたよね…」

加賀「そうなんすか?」

松坂「うん…」


松坂「久遠くんがエースで、夏はやるんだろうなって思ってたら…事情があって、久遠くん、チームから離れざるをえなくて」

松坂「だから、急遽というか…エースになっちゃって…。大会前にすごくスパルタされて…」

松坂「1試合ごとに、どうにかこうにか…負けそうになりながら、必死だったなあ…」

加賀「…」


松坂「………て、だ、だからどうしたって話だよねっ?」

松坂「あ、ごめんね、何か…うん……」

加賀「いえっ」

松坂「えっ」

加賀「松坂先輩、すげえ大活躍だったじゃないすか。だから、入学時から久遠先輩とバチバチのエース争いとかしてたのかと思って…」

松坂「全然そんなことないよっ!?」

加賀「!?」

松坂「いや、むしろ久遠くんと僕とか…本当、住む世界が違うっていうか、ストイックだし、球速いし、コントロールあるし、カーブで三振狙えるし…」

松坂「勝った試合なのに課題とか見つけて、それをやろうみたいな…」

松坂「僕なんて、ただ……最初は、みんなの足引っ張らないようにがんばる…みたいな感じで…」

加賀「じゃあ、今はどんな感じなんすか?」

松坂「え?」

加賀「最初は、って言ったじゃないすか」

松坂「………そう、言えば…?」

松坂「えーっと……今は…………」



 下1 今は?

 1 今でも、そうかなあ…
 2 ちょっとくらい…頼られたいというか…
 3 可能なら…またエースナンバー背負いたいし…いやでも久遠くんいるし難しいんだろうけども…でも…



松坂「可能なら…またエースナンバー背負いたいし…」

加賀「…」

松坂「いやでも久遠くんいるし難しいんだろうけど…」

加賀「…」

松坂「でも…」

松坂「やっぱり……こんな僕でも、エースってみんなが呼んでくれたの、うれしかったし…」

松坂「今は…このチームで、エースとして……戦いたいみたいな、感じかな…?」


加賀「………………何で先輩、そこまで自信ないんすか?」

松坂「うぇぇっ!?」

加賀「だってそうじゃないすか。結果も残してるのに」

松坂「あれはほら…偶然…」

加賀「運も実力の内じゃないすか」

松坂「う、うーん…」

加賀「俺、ぶっちゃけていいすか?」

松坂「な、何を…?」

加賀「久遠先輩もヤバいけど、松坂先輩が投げてると何か…チームの雰囲気が変わるっていうか、そんな気がするんすよ」

松坂「頼りないから…」

加賀「逆っす! 松坂先輩を勝たせたい、って感じ………に、まあ見えただけなんすけど」

加賀「久遠先輩は何か………この人ならやれるだろ、みたいな? チームをまとめられてるっていうか、そういうのが多分松坂先輩にあるんすよ!」

松坂「そ、そうかな…?」

加賀「まあ去年の試合見てただけの俺が言うのもなんだとは思うんすけどね」

松坂「うーん…でも客観的に見てそうなら………そうなのかなあ…?」


加賀「俺まだ先輩達の間に割って入って、エースナンバーってのは難しいと思うんで…」

加賀「打倒・久遠先輩ってことで松坂先輩に協力しますよ!」

松坂「えっ? あ、ありがとう…」

加賀「でもって今日の悔しさ、俺の分まで晴らしてください!」

松坂(決勝打打っちゃったの、僕なんだけど…それでいいの、加賀くん?)

加賀「あ、でも松坂先輩に負けたみたいなもんだった…!? うううう…悩む…けどっ、男は一旦決めたことを翻せませんから!」

松坂(あ、この子もけっこう…あれな方かも…)


加賀「それに…」

松坂「?」

加賀「…………何か恥ずかしいんで内緒にしてほしいんすけど、俺、松坂先輩の試合見て、新摂いこうって決めたんすよ」

松坂「ええっ?」

加賀「だから、俺は松坂派っす」

松坂「は、派閥争いは…やめよう…? 同じチームだから…」



 下1 加賀に懐かれた!!

 1~3 最近の松坂くんと加賀くん見てるとさ、ご主人様と飼い犬って感じしない?  by阿部
 4~6 でも加賀はけっこう誰にでも懐くやつだった!?
 7~9 何か松坂、1年に好かれるなあ… 癖がない分か!? あんにゃろう!!  by田中


加賀「松坂先輩、おはざっす!!」

松坂「お、おはよう…」

加賀「先輩、先輩っ、あれ見ました!? ユーチューバーの!!」

松坂「ごめん…見ない…」

田中「ユーチューバーの? おい加賀ぁっ、あれか?」

加賀「分かるんすか!? あれっす!!」

田中「あれなあっ!? ヤバいよな!?」

加賀「ですよねっ!?」


松坂(何か加賀くんて…人に遊んでもらうの大好きな…子犬…?)

阿部「渾名はわんこかな?」

松坂(人の心読んできた!?)

阿部「加賀わんこー、走り込みの時間だよー。投手3人でいっといでー」

加賀「うっす! さ、松坂先輩、行きましょ! あれ、久遠先輩は? 久遠せんぱーい!? どこっすかー!? ――って、わんこて何すか!?」

松坂「ノリツッコミ…? それとも…?」

佐野(犬…?)ジィッ

加賀「わんこは何か間抜けみたいじゃないすかー」

阿部「えー、わんこって感じだよ? ねえ、中井くん?」

中井「んー…まあ、うーん…」

田中「よし、ボールを投げてやろう」

加賀「むしろ俺投げたいっす! ボールください、ボールぅっ!」

田中「はははこいつめえ」

佐野(……………あかん、末期か、ワシは…? ちいとかわいく見えてしもうた…)


新摂高校
松坂修一 投手 両投/両打 右:スリークォーター 左:サイドスロー

球速:142キロ
制球:C(62)
持久力:S(98)
カット:C(52)
チェンジアップ:D(40)
シンカー;C(65)

打力:C(65)
筋力:C(62)
走力:C(63)
肩力:C(球速換算)
守備:A(86)

特能
四刀流:どちらの手で投げようが、どちらの打席に立とうが一切能力が衰えない
ハングリーバッター:狙い球を絞ることで打席を重ねる度、その狙い球をめちゃくちゃ打ちやすくなる
クロスファイアー:左投げ時、対角線への投球で球威と制球力がグンと上がる


チームメイト(の一部)

2年
田中太郎 二塁手
久遠康宏 投手 ★☆☆
○阿部 博 捕手
◎佐野誠一 三塁手 ★★★
中井 薫 外野手

1年
加賀茂雄 投手

長島貞治 監督
種田夕実 女マネ
宮野 光 女マネ


<失礼しまーす

 ガチャッ

長島「…きたか」

阿部「きました」


長島「……お前はどう思う、エースナンバーを与える男について」

阿部「難しいですよね」

長島「うむ」

阿部「単純に能力だけ見れば久遠くんが飛び抜けてますけど…」

阿部「松坂くんはそういうところではかれないものを持ってると思うんです」

長島「そうだな。何より、夏の大会、そして秋の県大会で全試合を投げ抜いたという得難い経験がある」

阿部「多少のピンチになっても安定感がありますし、何よりスタミナです」

阿部「エースとなればここ一番という大事な場面で大会中に、何度も何度も投げざるをえない…」

阿部「でも松坂くんは、そういう時、ガス欠を心配する…なんてことがなくなります」


長島「久遠もスタミナを己の課題としてトレーニングを続けているが…」

阿部「はい。それでも、松坂くんは結果として、その安定感を叩き出してますから」

長島「…難しいな」

阿部「ですね…」


阿部「…あ」

長島「どうした?」

阿部「エースなら、クジ運で決めるとか?」

長島「…………確かに運は、大事な要素だろうが…」

阿部「ですよねー…」

長島「しかし、やってみる価値はあるかも知れないな」

阿部「えっ…く、クジで決めたなんて、みんなに言えないですよ?」

長島「言わなければ良いだけだ」

阿部「確かに」

長島「…」

阿部「クジに、します…?」

長島「いや…最後まで悩んでからにしよう」

阿部「はい」



 下1 てことで…

 1 コンマで決めるかい?
 2 それとも長島と阿部の会議に委ねるかい?
 3 何かもう、何かで2人を勝負させりゃええんとちゃう?(結局コンマ…?



阿部「松坂くんと久遠くーん」

松坂「阿部くん…?」

久遠「どうした?」

加賀「もう走るのおしまいっすか!?」


阿部「あ、加賀くんは走ってて」

加賀「ひとりで…!? さみしいけど、やるっす!!」ダダダッ


阿部「ちょっと2人とも、バッティングピッチャーしてくれない?」

松坂「いいけど…突然だね…」

阿部「3打席分だけだから」

久遠「3打席分だけ…?」




田中「おい中井、何でいきなりこんなことになってるんだ?」

中井「さあ…?」

佐野「どーしていきなり、バッピと真剣勝負せえって話になるんじゃ…。バッピとちゃうじゃろうが、それじゃ」

中井「……もしかして、エース選考?」

田中「マジでっ?」


阿部「それじゃ、松坂くんと久遠くんと真剣勝負したい人、この指とーまれ」

佐野「やるぞ」ムンズ

阿部「痛い痛い痛い! 俺の指折るつもり!?」

佐野「折れてしまえ、ボケが」

阿部「ひっどいなー、このキャップ…他には?」

田中「俺!」

中井「俺もだ」

阿部「はいけってーい」



阿部「それじゃ久遠くんからね」

阿部「本気で勝負してもらっていいから。守備もついてもらったし」

久遠「ああ、分かった」

田中「さあさあさあ、久遠、ガツンと打ってやるぜぇー!?」



 下1 て、わけで…まずは久遠の判定

 1~3 うおお、2勝1敗
 4~6 1勝2敗?
 7~9 まさかの3敗!?
  0  全勝


佐野「ぬうん!」

 ギインッ

久遠「やはり佐野か…」


阿部「はい、これで3打席勝負は2勝1敗…と」

阿部「それじゃ次は松坂くんの番ね?」


松坂「……えっ」

松坂「も、もしかしてこれ…何か、すごい、大事な…やつ……?」

阿部「ただの練習だよ、練習」

松坂(白々しい!?)


松坂(で、でも…とにかく、真剣勝負しなきゃ…)

松坂(最初は、田中くん…。今回は阿部くんのリードもあるし…!)

松坂(佐野くんまで全員、アウトにできさえすれば…え、エースに…!?)



田中「っしゃ、オラ!!」

阿部(田中くん相手だからねー…んー、シンカーでいこうか)

松坂(し、シンカー…? 今、田中くん、左打席いるけどいいの…?)

阿部(さっき久遠くんに三振されてるからねー。振ってきたら内野ゴロ。あとは守備を信じるしかないよ)

阿部(田中くんの足が勝つか、守備力が勝つか…)



 下1 vs田中!!

 1~3 打たれた…
 4~6 ほっ…
 7~9 松坂フィールディングの良さを見せつけた

あ、前>>998ですが、「振り直しのタイミングのサンプル」として挙げただけで巻き戻しって意味じゃないです。
ああ言う事が起きた時に振り直し選択、って感じでいいのでは? って事ですね。

>>62 ですよねー、はい…あざっす


 ビシュッ

田中「黒い阿部の考えなんざぁっ!!」

松坂(踏み出して…!?)

 キインッ

田中「読めるよーになったら俺まで腹黒なのかぁ-!?」ダダダッ


 ズザァッ

<セーフ!


松坂「…」

阿部「おおー…さすが田中くん」

松坂(え、これ…エース…えっ…?)



中井「次は俺だぞ」ゴゴゴ

松坂(中井くんもすごく気合い入ってるぅー!?)

田中(最近、本気で危機感抱いてるみたいだしなあ…。こういう場面でもアピールしようって躍起なんだよ)



 下1 vs中井!!

 1~3 また打たれた…だと…
 4~6 ラッキーだけど打ち取れたのだ
 7~9 ファインプレーなのだ!


 ビシュッ
 キインッ

松坂「――!?」

中井(このライナーなら抜け――!?)


 バシィッ

<おおっ…?

松坂「あっ…」

阿部「何でそこいるの、ていうか…けっこう強かったライナーをマグレキャッチ…?」

中井「な、ん、で、だぁー!?」


松坂(でも今の、運が良かっただけで普通だったら打たれてたよね…?)

松坂(……でもって、最後に…)


佐野「勝負せえよ?」ゴゴゴ

松坂(せざるをえない、状況ですよねー…)


阿部(よし、佐野くんでアウトを取ろう)

阿部「松坂くん、いつも通りで!」

松坂「う、うん…」



 下1 vs佐野っち!!

 1~4 打たれた…さす佐野…
 5~7 シンカーで詰まらせたー! やったぜ、ヒャッホー!
 8~9 チェンジアァップ!!


 ビシュッ
 クイッ
 ギイイインッ

<うおおおおっ!?

松坂「詰まってる…けど…!?」

阿部「大丈夫――」


 バシッ

<アウトだ!?


佐野「ぬゎにいっ!!?」

阿部「みんな、レギュラー狙ってるんだもん。詰まった打球なんてどんなスライディングしようと捕ろうって必死だよ~」

阿部「打ち上げた時点で分があったのだ」

佐野「ぐぬっ…!!」


阿部(それにしても…)チラッ

長島「…」


阿部(結果的に、引き分けか…)

阿部(となると内容の勝負…。2者連続で抑えておいて、主砲に打たれた久遠くん…)

阿部(ある意味、1番厄介な打者を出塁させたものの、主砲を打ち取った松坂くん…)

阿部(………これは…)



 下1 エース争いのコンマ判定!!  佐野をアウト:+1

 1~5 久遠、背番号1
 6~0 松坂、背番号1



佐野「集合じゃあっ!!」

 ザザッ…


長島「諸君、いよいよ春季大会が始まる」

長島「我々の目標は、夏大会での甲子園制覇である」

長島「春の大会はシードを獲得しつつ、こちらの手の内を隠す。それを目標とする」


長島「その上で…これより、スターティングメンバー、そして背番号の発表をするぞ」

夕実(松坂くん…!)

光(エースはやっぱり、松坂先輩…? でも久遠先輩も…)


松坂(エース…)

久遠(エースナンバーは、俺だ)

加賀(松坂先輩にエースナンバーよ行けぇっ!!)

中井(俺は…俺の名前は、スタメンにあるのか…?)

阿部(監督は、どっちにしたのかな…?)

田中(俺はもちろん、1番セカンド!!)


長島「1番、セカンド。田中。背番号、4」

田中「はいっ!」

長島「2番、キャッチャー。阿部。背番号、2」

阿部「はい」

長島「3番、レフト。久遠」

久遠「!」

中井(降ろされ…!?)

長島「背番号、6」

松坂「!?」

久遠「………はい」

長島「4番、サード。佐野。背番号、5」

佐野「っす」

長島「5番、センター。中井。背番号、7」

中井「っ……はい…」

長島「6番、ピッチャー。松坂。背番号、1」

松坂「……は、はいっ! はい! ありがとうございます!」


加賀(うおおおっ、松坂先輩がエースだ!!)

夕実(やった、松坂くん!)

光(松坂先輩…やっぱりすごい…)

阿部(佐野くんを打ち取った勝負強さを監督は選んだのか…)

佐野(投手が1人じゃなければ、あの打力を9番に置くのもアホらしいっちゅうことか)

田中(うひょー、1番セカンドゲット~♪)


長島「以上、このメンバーで大会へ挑む」

長島「ベンチメンバーについては、まだ未決定だ。練習の様子を見ながら決めさせてもらう」

QK!!!
します!!!!


松坂「エースナンバー…」ジィーン

松坂「1番…」ジィーン

松坂「……えへへへ…」


夕実(あ、松坂くんがブルペンで座り込んでる…。何してるんだろ?)

夕実「おーい、松坂くーん」

松坂「うぇっ!?」バッ

夕実「あれ、何か隠した?」

松坂「か、隠して…ないよ?」

夕実「えー、隠してたでしょ? 何何、何見てたの? すっごい嬉しそうなニヤけた顔してたけど」

松坂「あ、いや、だ、だからっ…」

夕実「もらった!」

松坂「あっ!?」


夕実「って…さっき、手渡された背番号?」

松坂「………う、うん…嬉しくて…」

夕実「そうだよね、嬉しいよね。エース、守れたんだもん」

松坂「…うん…」


夕実「あ、そうだ。これ、つけてあげよっか?」

松坂「え?」

夕実「試合用のユニに。縫ってあげるよ?」

松坂「………いいの?」

夕実「もっちろん。それでエースの松坂くんが調子上げてくれるなら」



 下1 女マネとの交流…

 1 だがしかぁーし、そこへ光が乱入(?)してきて…?
 2 夕実にお願いする
 3 でもお母さんつけてくれるだろうから…



光「松坂せんぱーい」

夕実「ん?」

松坂「あ、宮野さん…」

光「先輩、エースナンバーおめでとうございま――あれ、何で夕実先輩が?」

夕実「これ、嬉しそうにずぅーっとニヤけて眺めてたからつけてあげようと思って」

光「……そんな、先輩、忙しいじゃないですか。わたしがつけますよ?」

夕実「え?」

光「はい…?」

松坂「う、うん…?」


夕実「ほら、わたし、裁縫とかけっこう得意なんだよね。だからさ、光ちゃんも、色々やらなきゃだし」

光「でもこれくらいのことなら、わたし…夕実先輩の教え方がいいから、取り返せますし…」

夕実「いやいや」

光「いえいえ…」

松坂(…こ、この状況は…?)



 下1 松坂くん?

 1~3 え、エースナンバーは僕のものなのに、取り合われてる…!? 中井くぅーん、取られない内にこれつけてー!
 4~6 出た、先輩命令!!? 女マネ間で!?
 7~9 光が、ソーイングセットを持ち歩いてただとぉっ!?


夕実「それに、わたし、自前のソーイングセットも持ってるし」

光「それならっ、今ここでわたし、持ってます!」つソーイングセット

夕実「え、何でっ!?」

光「……こ、こういうこともあろうかと…?」

夕実「っ……」

夕実「そ…そう…? じゃあ、うん…松坂くんがいいんなら、いいんじゃないかな…?」

松坂「あ、宮野さんが点けてくれるの? ありがとう…」

光「い、いえっ、むしろこのくらいしかできないと言いますか…。おめでとうございます、松坂先輩」

松坂「う、うん…」

夕実「ぐぬぬぬ…」



 下1 この場の勝者は光だったのさ…

 1~3 尚…ドジっ子…
 4~6 エースナンバー1の試合用ユニで松坂ご満悦
 7~9 エースナンバー1の試合用ユニで松坂、一時的に調子アップ!!


 下1 0コンマ判定

 偶数 積極的や、この子…! そして松坂ァッ!!
 奇数 女マネ間で、松坂を巡ったライバル意識がめらめら燃え上がった…?

0は偶数なのさ…



光「で、できました…」

松坂(恐ろしく時間かかったなぁ…もう真っ暗になっちゃったよ…)

光「松坂先輩、どうぞ」

松坂「ありがとう…」

松坂「………エースナンバー…」ホクホク

光(松坂先輩がよろこんでる…)ホクホク


松坂「…こ、これ、袖通しちゃっても、いいよね…?」

光「も、もちろんいいと思います…!」

松坂「じゃあ…」

 スッ

松坂(試合用のユニフォームの感じ…前は緊張ばっかだったけど、今は何か……身が引き締まっていいかも…)ホクホク

光(松坂先輩がよろこんでる…)ホクホク


光「あ、あの……松坂先輩…」

松坂「うん…?」

光「す……すごく、似合ってます…!」

松坂「…………ほ、本当…? 本当に…?」

光「はいっ…! そ、それに、わたしの中だと……松坂先輩が、このチームのエース……だったので…」

光「しっくり…きます」

松坂(しっくり!?)

松坂「…………………そ……そう、かなぁ~……?」テレテレ



 下1~ 多数決 彼女候補が、彼女になる時…!!?

 1 光、告白せえや。松坂はオーケーするんや
 2 い、いや、まだどっちつかずのこの状態を楽しもうぜ…! 告白されたら色々あれじゃん!
 3 とりあえず告白だけさせといて返事は先延ばしって展開や…!!

 最速3票獲得選択肢を採用いたしまする



光「…ま、松坂先輩………わたし…」

松坂「ん…?」

光「松坂先輩の…ことが……」

松坂「…」

光「好………」


加賀「あ、松坂せんぱぁーい!!」

光「っ!!?」


松坂「加賀くん?」

加賀「先輩、先輩、佐野先輩って、あれで小動物が大好きってマジすか!? マジなんすか!?」

加賀「ちょっと怖くて苦手意識持ってたんすけど、それ聞いた瞬間、何かほほえましー! とか思っちゃって、俺の中で佐野先輩の株価が急高騰中なんすけど――って、あれ?」

加賀「………もしかして、高校野球の醍醐味の、女マネとの甘酸っぱぁ~い一時、邪魔しましたぁっ!?」

光「そ、そそそっ、そんなことないですからぁっ…!」

松坂「……うん、別にふつーに話してただけだから…」

加賀「ほっ…」


松坂「あ、それで…何だっけ? 僕のこと…が………す…?」

光「!!?」

加賀「す?」

松坂「あれ…? い、言いかけてた…よね? 何か…」

光「……す、好、好っ………酢飯って、何であんなにお刺身と合うんでしょうっ…?」

松坂「………酢飯…?」

加賀「酢飯…?」

光「…………………………………失礼しました…」トコトコ


松坂「……な、何でなんだろうね…?」

加賀「さあ~…?」


光(うあああああんっ…! 酢飯なんて言うつもりなかったのにぃ~!!)

光(加賀くんめえ………今度、加賀くんにだけ冷たくないドリンクあげるもん…)




 下1 そんなことがありつつも、春季大会…!!

 1~3 県予選なんぞ余裕のスキップじゃーい!!! コールドじゃーい!
 4~6 県予選なんぞ余裕のスキップじゃーい!! たまにコールドだったじゃーい!
 7~9 県予選なんぞ余裕のスキップじゃーい! ふつーに勝ったよ!
  0  え、おい…?


阿部「県本戦、出場決定~っと」

松坂「…」

阿部「あれ、何かちょっと面白くなさそうな顔だね?」

松坂「だって…」

阿部「?」

松坂「思ったより…投げられなかったから……」

久遠「そうだな…。何でコールドゲームをするんだ…。物足りない…」

佐野「こいつらっ…!」

中井「まあまあ…頼もしいくらいって思えばいいんじゃね?」

田中「だぁっはっはー! 県本戦だろーが、この勢いだからぁ~? お前らは2人仲良く欲求不満になってろよー」

久遠「……走って帰る」

松坂「僕も…」

加賀「あ、じゃあ俺もつきあいます!」


阿部「そんなに投げたい…? いや、物足りなかった…?」

佐野「毎試合、どっちも完投せんかったからのう…」

田中「ちょいちょい加賀もマウンド上がったから、尚更な」

中井「基本、1試合は1人で投げ抜くものって…感じでやらせてきちゃってた反動だよな。あれは」

阿部「けど、ここから学校は………かなーり遠いと思うんだよね…。フルマラソン以上なんだけど」

佐野「どーにかせえ、副キャップ」

阿部「まったくもう、こういう時ばっか…」



 下1 さて、本戦でっせ

 1~3 今年はパッとしない…と評判良くない羽生と…
 4~6 名もなき学校との試合! え、先発じゃないの…?
 7~9 名もなき学校との試合! 強くなったなあ…新摂…



長島「県大会本戦の1回戦の先発だが…」

松坂(今度はしっかり投げきりたい…)

長島「……加賀でいこうと思う」

松坂「!?」

久遠「か、加賀…?」

加賀「俺っすか!?」


長島「そうだ。久遠はいつも通り、レフト」

長島「松坂は控えだ」

松坂「……ひ、控え…また…?」


阿部「まあまあ、松坂くん。監督は加賀くんに公式戦の経験を積んでほしいんだよ」

阿部「松坂くんはその点、いっぱい分かってるんだからさ。たまには後進育成にも目を向けるべきじゃない?」

松坂「後進…育成…?」

阿部「それにまだ春なんだから。松坂くんは、エースなんだよ?」

松坂「っ」ピク

阿部「だから、あえての、温存。アンダスタン?」

松坂「アンダスタン!!」


田中(阿部って投手操るのうめーよなー)

中井(あれは松坂が単純なのもありそうだな…)



 下1 さあ、1回戦!!

 1~3 加賀ァッ!?
 4~6 あ、あれこれ…出番くるのかな…?
 7~9 あのー…快勝はいいけど…出番は…?


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃敵┃1 ┃0 ┃2 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃0 ┃2 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻



加賀「っ…」

阿部(3回表で打ち込まれて、でも流れを断ち切れたかと思えばこれか…)

阿部(うーん…紅白戦の時の方が良かったな…。もしかして、本番に弱いタイプ…?)

阿部(予選の時は割と余裕がありそうに見えてたけど…)


加賀(自分でピンチ作ってどうするんだ…!)

加賀(先頭打者にシングルヒット食らったからって、フォアボールでさらにランナー溜めるとか…!)

加賀(いくら後ろに先輩達が控えてるって言っても、この試合…俺が先発に任されたんだから…!)

阿部(さてさて…4回までは様子を見るって監督はこっそり教えてくれたけど…早めの交替もあるかもよ?)

阿部(踏ん張らないとね、加賀くん。いつもすごい投手の背中見てたんだから、見習ってよね)



松坂(だ、大丈夫かな…? 大丈夫だよね…?)

松坂(でも今日はちょっと調子悪そうだしなあ…)

松坂(い、いやいや…今はしっかり肩作って、備えておかないと)

 ビシュッ
 バシッ




 下1 加賀ァッ!?

 1~3 1失点されてノックアウトか…松坂、出番やで
 4~6 4回までで交替か…松坂、出番やで
 7~9 持ち直したけど、結局、松坂の出番や


<アウトー!

加賀「はぁ~…」

田中「おい加賀っ、危ないピッチングしやがって、こんにゃろっ」

加賀「うっ…すんません!」

田中「守り甲斐があるってもんだ、いいぞ、そのスタイル!」バシバシ

加賀「え、いいんすかっ!?」

長島「ダメだぞ」

加賀「」

長島「松坂、次の回からお前だ」

松坂「はいっ…!」

久遠(出番がこない…)


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃敵┃1 ┃0 ┃2 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃0 ┃2 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻


松坂「マウンドだ…」ジィン

松坂(今日もいつも通りのコンディションのはず…。あとは阿部くんのサイン通りに投げられれば…!)

阿部(ここ最近の試合、松坂くんも久遠くんも、完投できなくて欲求不満なのか、立ち上がりいいんだよね…)

阿部(点差は1点だけだし、うちの打力なら充分に返しきってお釣りもくる…はず)

阿部(だからここから先、強気のピッチングでシャットアウトしよう)


松坂「ふぅーっ…」

 ビシュッ
 バシインッ

<うおーっ、クロスファイア炸裂ぅっ!!

<最近の松坂、前にも増していいよなっ! 安定感ってのか?



 下1 松坂ァッ!!

 1~3 尚、お約束のランナー背負った展開…
 4~6 ちょっと打たれたけど得点圏にランナー進ませず! いい立ち上がり
 7~9 安定感あるわー…


 キインッ

松坂「あっ…」

阿部(あーるぇ~…?)

阿部(何でこう、ちょいちょい…松坂くんはピンチにさらされるのかな…?)

阿部(しかも次…4番だよ?)


松坂(一死一二塁…)

松坂(今日は調子いいと思ってたのに…)

松坂(…………はっ、も、もしかして…ちょ、調子に乗ってた!?)

松坂(ちょっと大会でいい結果出してたからって…そ、それで…無意識に…!?)

松坂(ダメダメダメ…え、エースナンバー、もらえたんだから…そんな、そんなの、絶対…できない…!!)




 下1 さあ、エース松坂!

 1 エースらしい、堂々の三振狙いピッチングで…!
 2 ゲッツー狙いだ、打ち取るぜ!
 3 ゴリ押して勝ってこそのエース感…!



<松坂ぁー!

<本領発揮しろぉー!!


松坂「ふぅーっ…」

 ビシュッ
 バシイッ

<ストライク!

阿部(うん、ボールはいいんだよね…)

阿部(なのに何故か打たれるのが問題で…俺が悪いはずもないしなあ。松坂くんの宿命かな?)

阿部(まあでも、無失点にしてくれれば何も問題ないんだけどねー)


阿部(さてと…勝負をかけよう)

阿部(すでに布石は置いた。ここでインコースへ、シンカー。必ず打ってくる)

阿部(でも、ゴロにしかなりゃしないよ)

松坂「ふぅーっ…」

 ビシュッ
 クイッ


 下1 いったれや!

 1~3 何でやっ!?
 4~6 あちゃー、ゲッツーにはならんか…
 7~9 狙い通りだぜぃっ! これぞ松坂やね!


 下1 0コンマ判定

 偶数 ゲッツーにはなれなかったけど、結果は二者連続三振!?
 奇数 もしかしてこいつら……松坂にヤマ張って研究してきてた!?


 ズバァンッ

<ストライク、ツー!

阿部(おっ、振ってもこなかった…)

阿部(どころか今の、ビビって腰引けたみたいだね。だったら…)

 ビシュッ
 バシインッ

<ストライク、バッターアウト!!


阿部(おおー、勝手に臆してくれたかな?)

阿部(さ、この調子でいこうか、松坂くん)



┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃敵┃1 ┃0 ┃2 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃0 ┃2 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻



阿部「松坂くんがあえてピンチを演出してからの二者連続三振なんて“パフォーマンス”したんだから、こっちも打撃で活躍しよー!」

松坂「ぱ、パフォーマンスなんて…」

加賀「マジっすか!? 松坂先輩、パねえ…パネえっすわ…」

松坂「いやだからあの…」


佐野「1年のケツ拭くんは上級生の役目じゃからのう」

佐野「お前ら、ガンガン打ってこのままコールドじゃあっ!!」

<おうっ!!


松坂(コールドは…ちょっと…)

久遠(出番がなくなるからな…)



 下1 松坂の作った勢いに…!?

 1~3 何故乗り込めない?
 4~6 乗った。同点
 7~9 乗りきった。逆転勝利だぜィ!


<アウト

佐野「おう、帰ったら全員、素振り1000本じゃ」ゴゴゴ

阿部(みんな、打つぞーっての満々すぎてかわされちゃうし…)

阿部(次の回の田中くんからで勝負かけられればいいか)


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃敵┃1 ┃0 ┃2 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃0 ┃2 ┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻


阿部(さあって…松坂くんはいつも通りみたいだし、気合い入れないと)

松坂(前の回は、偶然うまくいっただけだし…うん、改めて、しっかり投げなきゃ)

<松坂いけぇー!

<ぶち殺せぇー!!

松坂(……ちょいちょい聞こえる応援が、やっぱり血の気濃い…)



 下1 松坂ァッ!!

 1~3 だから何でお前は…!
 4~6 うん、無失点
 7~9 うん、1イニングで奪三振2


 ビシュッ
 ブンッ
 ズバンッ

<ストライーク、バッターアウト!

<おおおっ、また1イニングで2奪三振!

<松坂すげーな!


松坂(ま、また、やれちゃった…!?)

阿部「松坂くん、ナイピッチ」

田中「つまんねーから打たせろっての!」

佐野「そうじゃ、つまらんやっちゃのう」

松坂「ごめん…」

久遠「いやこいつらの言い分がおかしい」

中井「久遠が珍しく言うな」

久遠「投手は三振が好きなものだ。狙うのは、必然だろう」

松坂(僕は、そこまで狙おうとは…ていうか、阿部くんのリードに任せきりだし…)



┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃敵┃1 ┃0 ┃2 ┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃0 ┃2 ┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻



加賀「やっぱ松坂先輩やべえっす! どうぞ、飲み物っす!」

松坂「あ、ありがとう…」

中井「この回は田中からか…。そろそろ取り返さねえとな」

松坂「そうだね…」



 下1 田中ァッ!!

 1~3 なんでお前もちょいちょい?
 4~6 安定の田中
 7~9 二塁打の田中


 キインッ

田中「だぁっはっはっはー! 俺を内野安打だけの男と思うなよぉー!!」

<田中やっぱ速ええええええっ!!

<お前の足どーなってんだ!?

田中「霊長類最速とはそうっ、この俺だ!!」

<言い過ぎだぞ、引っ込めー!

田中「何をうっ!?」


阿部「続きたいなー…」

阿部「続けるかなー…」

阿部「どー思う?」

敵捕手「っ…」フイッ

阿部(お、乗ってくれない…ちぇっ)



 下1 阿部ェッ!

 1~3 ダメやって
 4~6 さあ、ランナーを溜めたぞっ!
 7~9 捕手として投手を助けるためならば…


 キインッ

阿部「よっし…!」ズザァッ

<セーフ!


<おおおおっ!

<ここで3番打者の!

<くおおおおおおんっ!!

<くーおーんっ!

<くーおーんっ!


松坂「久遠くんコールがすごい…」

加賀「選手としてみても、やっぱすげえっすからね、久遠先輩!」

中井「…」ムスッ



 下1 さあ久遠よ!!

 1~3 あっ…。ま、まあ次佐野やし!
 4~6 満塁やでっ!! そして佐野だ
 7~9 田中を返して、ランナー一三塁に


 下1 0コンマ判定

 偶数 こいつ、ホームラン打ちよった…
 奇数 ランナー溜まってたのに…久遠…?


 ビシュウッ

投手(よし、渾身の――)

 カッキイイイイインッ

投手「!?」

<うおおおおおおおおおっ!?

<文句なしだろこれっ!!?


 ポトッ…

<ホームランだあああああああっ!

<いよっしゃああっ!

<一気に大逆転、2点差ぁー!


松坂「……さすが、久遠くん…」

加賀「久遠先輩やべぇーっ! やべーっす、やべえー!! うおーっ!!」

松坂(すごいはしゃぐなあ、加賀くん…)


田中「うおっしゃ、やっぱ久遠だな!」

阿部「やっぱ、って?」

田中「いやー、中井が傷つくからこれ以上言えねえけどさ!」

久遠「なら最初から言ってやるな」



 下1 佐野っち!

 1~3 シングルヒット
 4~6 ツーベース
 7~9 ホームラン
  0  凡退


佐野「ふんぬうっ!!」

 キイインッ

<うおー、佐野が痛打だ!!

<すっげえ速いぞ、あのライナー!?

佐野「ホームランだけが打撃の華とちゃうぞ、ドアホが」



松坂「さすが佐野くん…」

阿部「久遠くんに煽られて一発を狙おうとしないってのがいいよね」

阿部「ランナーがいない状態で一発狙いの大振りでフライになっても、この勢いが途切れちゃうだけだし」

松坂(そこまで考えて…? 佐野くんすごい)


中井(5番だろうが、クリーンナップ…)

中井(俺はまだ期待されてる。俺の役目は、塁に残ったランナーを、誰だろうが帰還させることだけだ…!)



 下1 中井!

 1~3 だからなんできみは…
 4~6 チャンスを広げて! 松坂だぁー!
 7~9 やるやんけ、中井!


 ビシュッ
 バシィッ

<ボール!!


中井(久遠からの一発と、佐野の強烈な当たりで動揺はしてるんだ…)

中井(俺は冷静に、ここで追撃をかます。そのまま突き放して、勝利まで…!)


 ビシュッ

中井「!」

 キイイイインッ


<うおーっ!? 中井も打ったぁー!?

<いいぞ、中井ー!

<つか、すげえ深いとこまで…!? まさかこれ…!?

<回れ、中井ーっ! お前の足なら三塁狙えるぞー!!


中井「言われなくて、もぉっ…!」ダンッ

<二塁回った!

<ボール3つ!!


 ズザァァッ
 バシッ

<セェーフ!



松坂「すごいっ、スリーベース!」

佐野「何じゃあいつ、よーやくまともに練習通りにできるようになったんか?」

松坂「よ、ようやくって…」

佐野「松坂、ランナーは三塁じゃ。最低限、1点取ってこい」

松坂(最低1点のノルマ…!?)



 下1 ハングリーバッターは途中登板だから使えぬのだ…

 1~3 ホームゲッツー…? 佐野くんがプレッシャーかけるから!!
 4~6 絶妙スクイズ
 7~9 ふつーにカキーンとね


 下1 0コンマ判定

 偶数 松坂、ホームラン打つってさ
 奇数 松坂、9番の方が期待されてない感があってリラックスできてた説…


松坂(い、いやいやっ…)

松坂(練習してきた通りにやれれば、それでいいんだから…)

松坂(この前やったティーバッティングでも、長打が偶然狙って出せたし…あの時の、イメージで…)

松坂(それにあのピッチャー、もうへろへ――)

 ビシュッ
 バシッ

<ボール!


松坂(クイック!?)

<すげー、松坂、全然振る気なかったぞ!?

<かなり際どかったのにな!!


松坂(打席に集中しなきゃ…)

松坂(へ、変化球は打てそうにないから、直球に…絞って…)

 ビシュッ

松坂(直球!!)

 ブウンッ
 キイイイイインッ


<うおおおおおおっ!?

松坂「えっ…?」


<は、いっ、たあぁあああああ!!

<松坂が、ホームラン!

<すげえ!

<まーつざかっ! まーつざかっ!

<まーつざかっ! まーつざかっ!


松坂「…」タッタッタ ←ダイヤモンド回ってる

中井「松坂、ナイス!」

松坂「う、うん……あれ、これ夢?」

中井「夢じゃねえよ」



┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃敵┃1 ┃0 ┃2 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃3 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃0 ┃2 ┃0 ┃0 ┃0 ┃8 ┃0 ┃2 ┃0 ┃10┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻


<ゲームセット!!


松坂(人生、初ホームランだった…)

松坂(ホームランって……すごく、いいんだな…)ホクホク

>>149
スコア変じゃね?

>>150 あ、変だった…めんご。まあ勝った、ってことで…


加賀「やっぱ先輩達やべーなー…」

加賀(折角、先発さしてもらったのに俺はダメだったし…)

加賀(先輩達いなかったらあのまま敗戦だったもんな…。もっと練習しないと)

加賀(うん、松坂先輩だって、最初はダメダメだったとか言ってたし…俺もこれからだ!)



阿部「久遠くん、不貞腐れないのー」

久遠「別に不貞腐れてない…。ただ次こそは俺が先発できっと最終回まで投げるだろうってことをお前に…」

阿部「それが拗ねてるんだってば…」

久遠「拗ねてない」


中井「久遠がめんどくせえことになってるw」

田中「あんだけ打ったのにな」

佐野「投手同士でガンガンぶつかり合うて勝手にレベルアップするんならええじゃろう。あの程度は」

田中「おおっ、佐野がもっともっぽいこと言ってる!」

佐野「あん?」

中井「んで、次はどこだろな…」

田中「そろそろ、因縁の強豪校どもが出てくるか?」



 下1 出てくるよ!

 1~3 秋大会の雪辱戦…!! 唐栗高校!!
 4~6 投手王国の東究高校!!
 7~9 今年度はパッとしないと評判の羽生…


阿部「次は、羽生です」

松坂「羽生…!」

田中「今んとこ2連敗だもんな」

佐野「今度こそ勝つわ」

中井「デッドボールの借りを返しまくるぜ…!」

久遠「次こそは俺が先発だな?」

阿部「監督に言ってください」

松坂「え、次…僕じゃ…?」

阿部「監督に言ってください」

久遠「…」ジロ

松坂「…」シュン


阿部「んで、羽生のデータなんだけど…」

田中「おう!」

阿部「……んー、去年の秋から、何だかいまいちって評判なんだよね…」

中井「そうなのか?」

阿部「エースの中沢…中井くんにデッドボールの彼なんだけど」

中井「ぶっ殺そうぜ」キランッ

田中「爽やかに恨みがましいぞこいつ!」


阿部「正直………悪くない投手止まり…って、感じかな」

阿部「打線も、どのバッターもしっかりバットを振るし、油断はできないよ」

阿部「だけど、この人がヤバいっていうような…チームのキーマンに欠く印象って言えばいいかな」

佐野「何じゃ、大したことなさそうじゃのう」

阿部「それでも」

久遠「…」

阿部「秋は準決勝まで勝ち進んでるし、春だって順当に勝ち上がってきてる」

阿部「さすがに名門校だけあって、チームが変わっても大きな弱体化なんてするはずないし、オフで秋からどれだけ地力をつけたかは分からない」

阿部「守備力も健在だしね」

田中「んで、どう戦う?」

阿部「キャップ?」

佐野「豪打必勝、打ち勝つに決まっとるじゃろうがあっ!!」

 『おおおおおっ!!』



 下1 羽生にキーマンがいないと阿部は予想したものの?

 1~3 新戦力で即戦力な1年がいましてね…?
 4~6 パッとしない代の顔的な存在になりつつある中沢くん、決意をもって臨んでます
 7~9 うんまあ…うん…面白みがないとか思わないでね


松坂「球場、ついた…」

阿部「んー、相変わらず人が多いねえ」

<阿部くーん!

<松坂だっ! 松坂ぁーっ!

<新摂バッテリーだ! 新摂バッテリーがバスから降りてきたぞ!


松坂「い、いつの間にか…注目されるように…」

阿部「いいじゃん、アピールしとけば?」

松坂「でも恥ずかしいし…」

阿部「マウンドでは投げられるのに?」

松坂「……い、言わないでください…」



<おっ、羽生のバスもきたぞ!

松坂「あ、羽生…」

阿部「同じ時間帯か、まあ試合で当たるんだし当然だけど…」

<でも羽生はなあ…

<弱いってほどじゃないけど…華がないっていうかな

<去年の羽生は良かっただけにな


松坂「…色々、あるんだね…他の学校も」

阿部「そりゃそうでしょ。全国には俺達みたいな球児がごまんといるんだから」

松坂「阿部くんみたいな捕手は、そうそういないと思うけど…」

阿部「松坂くんみたいなド変態投手もね」

松坂「」



加賀「松坂先輩!!!」

松坂「っ…ど、どうかした?」

加賀「トイレ、どこっすか!? 漏れそうっす!!」

松坂「ええっ…あ、えーと、た、確かあっち…一緒に行こ」

加賀「あざっす!」


松坂「あ、あそこあそこ」

加賀「あざぁーっす!!」タタタッ

<どんっ

松坂「加賀くんっ?」

加賀「すんませんっ、けど急いでるんで…!」ダッ

中沢「ああ、こっちこそごめ……聞いてないか…」

松坂「大丈夫、加賀く――あっ」

中沢「…あっ」



 下1 中沢拓人!!

 1~3 特別、秀でてるものはない…にしろ、責任感からくる執念の投手になりつつあります
 4~6 松坂が何か同じ匂いを感じ取った…
 7~9 何だこの投手ども…?


 下1 0コンマ判定

 偶数 エースとしての想いが、それぞれにあるものなんです
 奇数 おい阿部よ、事前情報と違うんジャマイカ?


中沢「………前に、デッドボールにしちゃったセンターの人、大丈夫ですか? 今は」

松坂「あ、ぜ、全然っ、元気です」

中沢「それなら…じゃあ今日は遠慮なく」

松坂「あ、はい…。ていうか、今、ぶつかったのは平気ですかっ…? うちの、1年生が…」

中沢「ああ、全然それくらい」

松坂「良かった…」


中沢「………不躾かも知れないけど…」

松坂「はい…?」

中沢「…去年のきみは、最初は、エースなんてものじゃなかった…」

松坂「っ…」

中沢「でも、最後まで、ボロボロになりながら投げきったきみの姿は……俺にとって、すごく、眩しかった…」

松坂「…」

中沢「……敵として戦うのに変かも知れないけど、俺は…きみのようなエースになりたくて、秋からずっとがんばってきた」

中沢「だから今日は…胸を借りるつもりで、全力で挑ませてもらうよ」

松坂「は、はい…」

中沢「………何か、ごめんね、変なこといきなり言って…。でも…弱い羽生って、言わせないために俺は投げるんだ」

松坂「…」

中沢「凡庸な投手だとしても、エースナンバーを背負って投げ抜けば…きっと変わる。それは、きみが教えてくれた」

中沢「………全力で、やろう」

松坂「……はい」

中沢「それじゃ」スタスタ


<松坂せんぱぁーい…すみません、紙くださぁーい…

松坂(……あの人の目、すごく…強かったな…。前とちょっと印象が違う…)

<松坂せんぱーい!!

松坂「あ、うん…待ってて…!」



 下1 因縁の羽生戦!!

 1~3 ええっ、また加賀が先発っ!?
 4~6 え、先発、久遠?
 7~9 エースナンバーが先発、いいよね…  by松坂


松坂「レフトで、スタメンか…」

阿部「スタメンなだけありがたがりなさい」ビシッ

松坂「痛い…」

佐野「野手として出るんじゃ、松坂。今日は3打点くらい上げろ。ドアホ」

松坂「」

田中「にしても、こうしてプレイボール待って整列してんの、俺好きなんだよな。スタートダッシュ決めてやるぜ、って感じで」

中井「ぶち殺すぶち殺すぶち殺す…」ブツブツ

田中「あれ、中井がおかしくなってるぞ?」



 下1 さて

 偶数 先攻
 奇数 後攻


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃羽┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻


久遠「先発のマウンドほど、気分のいいものはないな。それも後攻で」

久遠「……よし。今日は完投完封だ」

阿部(完投する、とか思っちゃってるんだろうな…。長くても6イニングしか監督は投げさせないと思うけど)


阿部(でも久遠くん、羽生打線は初めてでしょ?)

阿部(いくら弱いチームだなんて評判があっても、そんなの比較された結果だよ)

阿部(1人として油断はできない。初回からフルスロットルだ。スタミナ尽きても、松坂くんが控えてるからね)

阿部(さあ、いこう!)



 ビシュッ
 ズッバアアアアンッ

<ストライーク!

阿部「ナイスボール!」


<うおおおおっ!

<久遠今日も絶好調だな!!

<いいぞ、久遠!!



 下1 久遠!

 1~3 ランナー出そうが堂々ピッチで無失点
 4~6 ランナー出さずに無失点
 7~9 いきなり三者連続三振てさ…久遠くん…


 ズバアアアンッ

<ストライク、バッターアウト!


田中「いきなり三振3つかよ!」

佐野「ちったあ加減して投げろ、守っとる意味がないわ、ドアホ!」

中井「そうだ、ぶつけてけ!」

阿部「中井くん、違うよ?」

久遠「悪いな…。手加減は性に合わない」

松坂「かっこいい…」


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃羽┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃┃
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田中「うおっしゃ、行くぜぇーい!!」

田中「今日の俺は、セーフティに命を懸けるのだ」スッ

中沢(いきなりセーフティ狙いの構えで…!)

中沢(いいさ、それなら打たせて取るだけだ)



 下1 田中ァッ!!

 1~3 セーフティ対策ばっちりかよ
 4~6 バスターだった
 7~9 警戒される中成功させるらへん、田中よ


田中「オラァっ!」

 カツンッ
 ダダダッ

田中(嘘だろ、早すぎんぞ対応!?)

 バシィッ
 ビシュッ

<アウト!!


田中「おいマジでか…!」

阿部「んー、まあそうだよねー。素直にセーフティさせてはくれないよ」

阿部(評判が悪いなんて派手さがないからって意味で、ちょっと打力落ちるかなってもんを誇張して言ってるようなもんで…)

阿部(守備力についてはもう、去年のチームと何ら遜色はない)

阿部(そのくせ、あの投手…。マックス138、コントロールは凡庸…スタミナは、何度か春で完投してるからそこそこだろうけど…)

阿部(投手としての欲を殺したような投球をするんだよね…)

阿部(それでいて、この守備の対応力…。できることは全てやり尽くしてる、って感じだよね…)



 下1 阿部!!

 1~3 阿部の弱点まで…?
 4~6 かろーじての出塁だね
 7~9 よし打てた。さす阿部か


阿部「だけど――」

 ビシュッ

阿部(それだけに、読みやすい!)

 ブンッ
 ギインッ

 バシッ
 ビシュッ

<セーフ!


<よぉーっしゃ、阿部よくやった!

<続いてくれ、久遠!!


久遠「…」

中沢(ここからは要注意打者ばかり…)

中沢(とにかく、1人でも4番佐野の前にランナーを溜めたくない)

中沢(大丈夫…ここまでのデータはしっかり取ったんだ。難しいコースでも、この人は打とうとする)

中沢(あとは俺が…そこへ投げ込むだけ)



 下1 久遠!

 1~3 打たされてゲッツー…だとう
 4~6 打たされてアウト
 7~9 打ち抜いた


中沢(アウトコース、低めいっぱい…)

中沢(打とうとしてくるはず…投げ込めれば…!!)

 ビシュッ

久遠「!」

 ブンッ
 ギインッ

<うおー! 打った!

<いや変なとこに飛んでるぞ!?


 バシッ
 ダンッ

<アウト!

 ビシュッ
 バシッ

<アウト!


久遠「っ…」

阿部「ゲッツーか…」


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
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┃羽┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
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久遠「打たせなければ、問題はない」

阿部「そのとーり、さあ、行こう!」




 下1 久遠、好調だからね

 1~3 何か対応、やっぱ早くね? 守備にしろ、打撃まで…
 4~6 クリーンナップは当ててくるみたいだけど、当てただけでどうなるなのだー!
 7~9 ねえ久遠くん…きみ背番号6だよね?



 今夜はここまでになります
 あざっした

ぼちぼちやりまっか


ズッバアアアアアンッ

<ストライク、バッターアウト!!

<うおおおおっ!

<これで三振6つ!? いくつ三振取るつもりだよ!?


阿部「絶好調すぎるね、久遠くん」

久遠「例えエースに選ばれなくとも、俺は投手だからな」

阿部「さすがの意識だね」


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┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
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┃羽┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
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┃新┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃┃
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佐野「よーやくワシの出番か」ゴゴゴ

中沢(4番サード、キャプテンの佐野…。一試合で確実に1点以上は取ってくる、間違いなく全国暮らすのトップスラッガー)

中沢(この人に匹敵する打者は波動の佐川大信くらい…。でも裏を返せば、この人を打ち取れれば、チームに自信がつく)

中沢(投手として、真っ向勝負でこの人に勝てる投手はそうそういない。だからこそ、全員で)


佐野(そーいや阿部が、この投手は、投手としての欲望っちゅうんがないなんて言うとったのう…)

佐野(打たせて取るのがスタイルとは違うて、こいつは打たせんとアウトを取れんっちゅう投手じゃ…)

佐野(ほなら、守備をぶち抜いてやるわ。それがワシからの真っ向勝負じゃ)


中沢(勝負…!)

 ビシュッ
 バシイッ

<ボール!

中沢(振ろうともせずに見送ってきた…)

佐野(これなら今度はゾーンに投げてくるじゃろう?)

中沢(だけどきっと、これは挑発だ。乗るもんか)

 ビシュッ
 バシイッ

<ボール、ツー!

佐野(カウント悪くしとるんはそっちじゃ。またボールへ投げられるんか? ワシゃ、フォアボールでもええがのう?)

中沢(…どうする、また…? いや、でもこれは誘ってるんだ。もっと際どく、コーナーを攻めて…!)



 下1 佐野ォッ!!

 1~3 ぬぬぬ…!?
 4~6 佐野がシングルヒットか…
 7~9 さす佐野っすわ


中沢(大丈夫だ、考え抜いたんだ…)

中沢(これならうまくいくはずなんだ!)


 ビシュッ
 ギィイインッ

中沢「!?」

中沢(大丈夫、そっちへの打球なら――!)

 バッ

中沢「よしっ!」

<うあああっ、ショート直撃のライナー!?

<いや、グローブの先端からボールがこぼれた!?

<外野が深めに守りすぎてた分、ボールが…!


田中「うおーっ、佐野すげー!?」

阿部「あえてのライナーでグローブごとボールをぶっ飛ばすつもりだった…の?」

久遠「さすが佐野だな」

阿部「でもってきっちりツーベースにしちゃってるらへんもね…。あの体格でそう足も遅くないんだから怖い打者だよ…」

久遠「燃えるがな」

阿部「久遠くんはね…」


中井「……勝負だ」ゴゴゴ

中沢(チャンスに弱いイメージはあったけど、打順が5番になってから、そのイメージが払拭されつつある打者…)

中沢(外野手としても強肩、俊足と兼ね備えてるし、プレーヤーとして、オールラウンドに優れてる…)

中沢(一打で先制点を許さざるをえない状況…だけど、ここで踏みとどまらないと)



 下1 中井ィッ!!

 1~3 おうふ…
 4~6 佐野を返すには至らなかったか…
 7~9 ええやんけ、中井ィッ!


中沢(インコース、高め…!)

 ビシュッ
 バシイッ

<ストラーイク!

中井「この野郎…」ピキッ


中沢(彼にはデッドボールを当てたことがあるし、悪いことをした…)

中沢(それを思い返してくれれば頭に血が上る。大振りになる。そういう煽りには弱い打者だ)

中沢(そこへ打ちごろに見せた、変化球…!!)

 ビシュッ

中井(直球、ナメやがって!)

 カクンッ
 ブンッ

中井「!?」

 バシイッ

<ストライク、ツー!


中井(フォーク…か? 落ちた…!?)

中沢(ここで、畳みかける…!)

 ビシュッ

中井(また低め――直球か、フォークか、どちらがくる…!?)

 ブンッ
 バシイッ

<ストライク、バッターアウト!!


中井「……っ」

中沢「ふぅー…あと2つ」



松坂(阿部くんの、前情報と…何か違うような…?)

松坂(阿部くんと佐野くんしか、まともに打ててないし…。まだ一巡もしてないにしろ…)

中沢(さあ、次の勝負だ)



 下1 松坂ァッ!!

 1 しっかり見ていこう
 2 まだ一死だし、タッチアップも視野に入れた大振りで!
 3 バントでいこ



松坂(一死二塁だし…状況としてはこっちが有利…だよね)

松坂(久遠くんは先発してなくてもバットで試合に貢献してくれたし…僕だってがんばらないと)ギュッ

中沢(一発はないかとも思っていたけど、前の試合で彼はホームランを打っている…)

中沢(油断ならない打者だ…。けれど、バッターとして何を狙おうとするタイプなのか、いまいち掴みづらい…)

中沢(ある意味、もっとも怖いタイプだけれど…状況によって、どういう打撃をしようとするかは…分かりやすい)

中沢(まずは一球、様子を見る…!)


 ビシュッ

松坂(アウトコース、ボール…!?)

 バシッ

<ストライーク!

松坂(ゾーン…!? 入ってたんだ…)

中沢(迷って振らなかった…。もう一球…)

 ビシュッ

松坂(今度はゾーン、打つ!)

 ブウンッ
 カクッ
 バシイッ

松坂「っ…!」

松坂(フォーク…!!)

中沢(……大振り、長打狙いか。それなら…!)



 下1 松坂ァッ!!

 1~3 三振しちゃった…まあまだ序盤やし…
 4~6 ピッチャーフライ…
 7~9 打ったよぉー!! でも佐野はホームに帰れんかったか…


 キインッ

松坂(当たったけ、ど…!)

佐野(こんなん前へ進めんわ!)


 パシッ

<アウト!

中沢(よし…ここから下位打順…)

中沢(アウトは、あと1つ…!)


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃羽┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻


松坂「…何だか、すごく…」

阿部「派手さはないけど、弱くもない」

田中「堅実ってやつだな!」

中井「ああ、お前と正反対のタイプだな」

田中「何をぅっ!?」

佐野「こっちをなかなか研究してきとるようじゃからのう…。阿部ぇ、何かないんか?」

阿部「……やれることをやるだけだよ。向こうも、やれることをやってきたんだ」

阿部「両チームの地力が、そのまま勝敗に繋がる。監督が俺達に課してきたオフのハードトレーニングの成果を信じよう」



 下1 久遠はいつまで投げるのか…

 1~3 おおっ、打たれた!? と松坂がひそかにwktkしたけどもね…
 4~6 お、やっと連続三振記録が途切れた…三振の、連続記録がね…
 7~9 少なくとも3回まで、完璧ですからね…


 ビシュウッ
 ブンッ
 ズバアアアンッ

<ストライク、バッターアウト!!

<久遠やべえええ!

<9連続三振って…おかしいだろっ!?

阿部「久遠くん、完投する気?」

久遠「完投したくない投手がいるのか?」

阿部「……いなくはないね」


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃羽┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻


阿部(圧倒的な実力で圧倒…ていうのはいいんだけど)

阿部(球数が増えるんだよね、三振を取っていこうとすると…)チラッ

夕実「はい」つスコアブック

阿部「ありがとー」ジイッ

阿部(……やっぱり、多く投げてるな…)

阿部(……………これも、向こうの策のひとつか…?)



 下1 新摂の打撃は!?

 1~3 ぬぐぐ…めっちゃくそ研究されてんな
 4~6 打てても得点に繋がらぬ…
 7~9 チャンスが巡ってきましたぜぇー!


 バシッ

<アウト!!

阿部「…この回は得点圏にも進めなかったか…」

久遠「こちらの打撃はかなり研究されてるようだな…」

佐野「やらしいのう」

阿部「…………この試合、1点が勝敗を分けるかもね…」


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃羽┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻


長島(……クリーンナップの2巡目までは様子を見るか)

長島(もし、それでも得点の気配がなければ、延長戦も視野に入れた方が良い…)

長島(となれば…)チラッ

松坂(またレフト…。ボールこないから、集中力途切れそう…)

長島「…」



 下1 クリーンナップの2巡目は…!?

 1~3 佐野さえ、2巡目で打たされた…?
 4~6 佐野以外打てぬ…
 7~9 ちょいちょい、当たってはきている…?


松坂(6回裏で…無得点…)

松坂(こういう展開は前もあったけど…何だか、今までと感じ方が全然違う…)

松坂「…」

中沢(前の打席と同じく、一死二塁の状況で…また大振りなバッティングをしてくるか?)

 ビシュッ
 ブンッ

<ストライーク!

松坂「っ…」

松坂(思ってたより遠いところだった…。もっとバットを短めに持って、当てるのをイメージして…)

中沢(バットを短く…当てることを意識したか。それなら――!)

 ビシュッ
 キンッ

松坂「っ…! ショートの、正面…!?」

 パシッ
 バシッ

<アウト!

松坂(打たされた…?)


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃羽┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
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┃新┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻


長島(打てるようにはなってきたが…まだ、得点のイメージが見えないな)

長島「………久遠」

久遠「…はい?」

長島「松坂と交替だ。松坂、肩は作ってあるな?」

松坂「! はいっ!」

久遠(降ろされた…)シュン

松坂(登板できた…!)ホクホク



 下1 松坂ァッ!!

 1~3 なんできみはいつもいきなりピンチを…
 4~6 いける、いける
 7~9 よっしゃ、今日も好調だぜっ!


 下1 0コンマ判定

 偶数 久遠に触発されてる…? こっちもバリバリに三振とってるやで
 奇数 あれれー? 松坂くん、立ち上がり弱い方じゃなかったよね?


松坂(踏み荒らされてるマウンド…)

松坂(交替したばっかりで注目は浴びちゃうけど…1回表のマウンドほどじゃない期待感…)

松坂(………マウンドって、いいなあ…)ホクホク

田中「おい松坂、浸るなー!」

佐野「打たせてけ、ドアホ! こちとら守っとる意味がないわ、さっきから!!」


阿部(確かに打たせて取りたい気持ちはある…。けど久遠くんがここまで、三振ばっかりで無失点にしてきたんだ)

阿部(例え投手が変わったところで、得点ができない。そういうイメージを相手に持たせておきたい)

阿部(球数が増えようが松坂くんのスタミナなら、9イニング丸ごと三振狙いのピッチングでもできるはず)

阿部(だから、ガンガン攻めていくよ)

松坂「ふぅーっ…」


 ビシュッ
 バシイッ

<ストライーク!

松坂(調子良さそう、今日…!!)


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃羽┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
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┃新┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃┃
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松坂「2奪三振…」ホクホク

久遠「俺なら三者連続だった…」ムスッ

加賀「先輩方、ドリンクどーぞ!!」

松坂「あ、ありがとう…」

久遠「もらおう」


阿部(立ち上がりいいなあ…。1人もランナー出さなかったし)

阿部(あとは打つだけ…。そろそろ、試合を動かしたいけど…)



 下1 羽生の守備力、高いっすもん…

 1~3 それに中沢が、崩れそうにない…
 4~6 粘り強いなあ…あとちょっと感があるのに突破できない…
 7~9 おおおっ、とうとうチャンスが!?


 ギインッ

佐野「ぬ…!」ダッ

中沢(内野ゴロにしたいけど、さすがに打球が鋭い…!)

中沢「サードぉっ!!」

 バシッ

<しまっ…!?

中沢(こぼしかけ…!?)

 ビシュッ
 バシイッ

<セーフ!


<うおっしゃ、佐野がまた出たぁー!! ここまで連続安打だぞ、あいつ!?

<佐野すげええええっ!!



中井(佐野はさすがだな…。だけどここから、俺はどうするべきだ…)

中井(得点圏へ進める一打で、松坂へ繋ぐか…。それとも、佐野をホームへ返せるほどの長打を狙うべきか…?)チラッ

松坂「…」

中井(………あいつの勝負強さは、本物だからな。だったら、ここは…)

中沢(ここで気負うのが、中井という選手のはず。打たせて取る…!!)

 ビシュッ

中井(チームのために…!)スッ

中沢(バントっ!? 5番に降格された、彼が――!?)

 カツンッ…

<おおおっ、中井、バントもそつがねえ!?

<お前もいいぞ、中井ー!!


中井「松坂、1点を取ってこい」

松坂「っ…う、うん…」

松坂(取ってこい、って言われても…)



 下1 ハングリーバッター!!!+1

 1~3 犠牲フライ…に結果的になっちゃった…
 4~6 敬遠…された…?
 7~9 さす松



松坂(と、とにかく…一死だし、佐野くんを返せるような…大きい一発を打てれば………)

松坂(打てるかな…? いやでも…ホームラン打てたし、前の試合で…! また、一発を…!)ギュッ

中沢(バットを長く…。それならインコースだ!)

 ビシュッ
 キイインッ

松坂「あっ…!」

松坂(高くなりすぎ…でも飛距離も出てる…!?)


 タタタッ
 パシイッ

<佐野、ゴー!

佐野「ワシを走らせてばっかで楽しいんか、お前らはぁっ…!!?」ダッ

中沢「バックホーム…!!」

 ビシュウッ

佐野「うおおおおおおおっ!」

 ズザアアアアッ
 バシイイッ

<………セーフ!

<いよっしゃ、佐野が走れたー!!

<猪みたいだったな!?

<猪突猛進の佐野ランか!

佐野「誰が猪じゃあっ!?」


阿部「………言い得て妙だね」

田中「いwwwwのwwwwwwしwwwwwwwwしwwwwwwwwwww」

中井「お前…」

松坂「あと一打で…!!」



 下1 あと一打が、出るかっ!? 下位打順になっちゃうけど…

 1~3 ぬぐわー!!
 4~6 惜しかったのにぃー!!
 7~9 きたぁぁー!!


中沢(二死三塁…)

中沢(下位打順とは言え…この場面は厳しい)

中沢(でも…ここで、このピンチを乗り越えられなくてどうする)

中沢「…」チラッ

中沢(監督に動きはない…。新摂を下して、春大会県本戦のベスト4へ…)

中沢(そして、関東へ)

中沢(俺達に派手な武器はない。それでも、全国のどこよりも必死にオフを過ごしてきた)

中沢(誰よりも汗をかいて、誰よりも悔しさを飲み込んで、誰よりも勝利に飢えてきたんだ)

中沢(去年より弱いチームさ。でも、それでも、俺達だって羽生なんだ。負けられない、意地がある)

中沢「こんなところで、負けられは、しない…!!」

 ビシュゥッ
 バシイッ

<ストライーク!!



阿部(…球威が、戻ってきた…? それに堂々の中間守備)

阿部(さすがに名門だね。こういう場面で、セオリー通りに、堂々と自分達のプレーを貫こうとする…)

阿部(打撃の強烈さは確かに比べてしまえば劣る。それでも…去年以上に、攻略しがたいチームになりつつあるか…)


 ビシュッ
 ギインッ

<よっしゃ、当たった!

<いやっ、ダメだあれじゃ…!

 バシッ

<アウト!


松坂「っ……ここにきても…」

久遠「延長か…?」

田中「まあ松坂のスタミナならいけるだろ!」

佐野「それに、あっちのピッチャーのスタミナは松坂ほどあるはずもないしのう」

中井「気を取り直していこうぜ」

阿部「…」

長島「…阿部」

阿部「はい」

長島「久遠が必要な場面があれば、お前の判断に委ねる」

阿部「っ……分かりました」



 下1 ここまで打ちあぐねる相手もなかなかいなかった

 1~3 9回表で松坂、ピンチに…
 4~6 そして延長戦へ…
 7~9 中沢、まだ投げんのかよ…根性だなあ… へろへろになりつつあるけど



┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃羽┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻


松坂「…8回裏になっても…まだ続投…?」

阿部「凡庸な投手っていうのは、撤回するしかなさそうだね」

阿部「恐ろしく根性のある投手だよ。回を増すごとにピンチの回数も増えてる…」

阿部「それなのにただひたすら、バックを信じて投げ抜いてる。味方のエラーがあっても、それでもね」

佐野「根性があるんはええが、自滅するんじゃしようのないドアホじゃのう」

田中「佐野って実は、気に入ってるやつにしかドアホって言わないから、気に入ったみたいだな」

佐野「あん?」

中井「ま、確かに…単なるノーコンデッドボールピッチャーじゃないな」

久遠「お前は根に持ちすぎじゃないか?」

田中「まあまあ、中井はデッドボールやられたしな! つーわけで、こっから俺らで取ろうぜ、点を」


中沢(1番打者…田中…)

中沢(ここまで、どうにかこうにかだったけど……今の、俺のコントロールで…彼を打ち取れるか…?)

田中「っしゃこーい!!」

中沢「ふぅ…はぁっ…」

田中(実際、すげえよなあ、こうして戦ってると。ここまで粘れるのかよって思うぜ、マジで)

田中(だけど、そんなへろへろになってまでマウンドに上がるのが、チームのためってかあ?)

中沢(…………証明するんだ…。俺達も、羽生だって…。そのためなら、俺は――!!)



 下1 根性ですな

 1~3 徹底してますのう…
 4~6 っしゃ、田中が出たぁー!
 7~9 いよいよ試合が動くのかっ!?


田中(やっぱもう、降りるべきだろ!!)

 キインッ

中沢「っ…!?」

<よっしゃ、田中が打ったぁー!!

<綺麗なセンター返しっ! 二遊間飛び越えてちゃんと落ちてんぜ!


田中「っしゃ、阿部、頼むぜぇっ!

阿部「はいはい…っと」


中沢(……もう、ボールに力が乗らない…?)

中沢「それでも、まだ…まだこんな、ところでっ…!」



 下1 阿部ェッ!!

 1~3 羽生、投手交替!?
 4~6 これが気迫か…
 7~9 フォアボール出塁


 ビシュッ
 バシッ

<ストライーク!

阿部(………際どいよ、ほんとにゾーン?)

阿部(ま、いいや…。ランナーを出して開き直ってきたのか?)


中沢(あと、ストライク2つ…!)

中沢(冷静に投手と配球から、狙い球を絞る打者…。でも反面、コントロールの荒い投手は、苦手)

中沢(今の、俺のコントロールで…力いっぱい、投げきれれば…!)

 ビシュッ
 バシイッ

<ストライク、ツー!


阿部(…………インコースかと思ったら…全然違う…。セオリー無視をこの場面でするようなバッテリーでもなさそうだし…)

阿部(これはまさか…)


 ビシュッ
 バシッ

<ボール!

阿部(……荒れてきてるのか。スピードはそうないにしろ、まだフォークは投げられるのか? あれがきたら…)

 ビシュッ
 クイッ
 バシッ

<ボール、ツー!


阿部(っ……ちゃんと落ちるか、まだ)

阿部(これはちょっと…やりづらいな)

 ビシュッ
 ブンッ
 ギインッ

阿部「っ…!」

中沢「う、お、おおっ…!」ダッ

<ピッチャーが飛びついて!?

中沢「踏ませる、かあっ!」

<グラブトス!?

 バシッ

<アウト!


阿部「………いい投手だね…」

阿部(本当に…野球に根付いてる精神論を肯定するような、いい意味での意地と根性だよ)

阿部(でも、あと少し…。あと少しで、打ち崩せる)



 今夜はここまでっす
 あざっした

すまんの、遅れてしもた
今からちょびっとだけ今夜はやろーと思いますやで


久遠(一死二塁か…。この場面ならば、一撃で打ち崩せば試合の勝敗もつくだろう)

久遠(だが、あの投手は粘りに粘っている…。このまま素直に打ち崩せるかどうかは分からないな)

久遠(今は試合の趨勢よりも、あの投手を打ち崩す。それを念頭に置いて打席に立つべきか)


中沢「ハァッ……ハァッ…」

中沢「っ……まだ、まだだ…」

久遠(満身創痍…とはああいうことを言うのだろうな)


中沢「フゥッ…フゥゥッ……」

中沢「……勝負」ギロッ

久遠「…」ギュッ



 下1 久遠!!

 1~3 え、羽生が投手交替? さすがに?
 4~6 こんな場面でも徹底して打たせて取るか…。それも三遊間に打たせてランナーも進ませないという…
 7~9 四球か…


<中沢っ!!

中沢「っ……?」

中沢「伝、令…?」

 タタタッ
 ザザッ…

伝令「中沢…」

中沢「ハァ………ハァ……何…?」

伝令「……交替だ」

中沢「っ……ま、まだ投げれる…」

伝令「そう言って降りようとしないだろうから、って。監督から伝言だ」

伝令「お前の気持ちは、すでに選手全員に伝わってる」

伝令「この試合ですでに、誰もお前達を弱い羽生とは言わなくなってる」

伝令「試合に勝ちたいのか。ただマウンドで投げたいだけか、ハッキリしろ。――って」


中沢「っ……!」

<中沢…

<大丈夫だ

<ちゃんと俺達で守って、ちゃんと打ち勝つ!

<誰もお前を番号だけのエースなんて言わないさ

<つーか安め! 次の試合も、お前がいなきゃ戦いにならねえだろっ!

中沢「み…んな…。だけど…………っ…」

中沢「……勝てよ…。絶対に……お前ら、勝ってくれ…!」

<ああっ!

<任しとけ!

<つか泣くな、まだ終わってねえだろっ!

中沢「泣いてねえよ…っ……汗だって…」



 『羽生高校、選手の交替をおしらせします――』

久遠「………ピッチャー、交替か…」


<中沢、よく投げたぞー!

<お前のド根性は羽生そのものだー! 落ち込むなよ!

<パチパチパチ…


久遠(……これを好機と見るべきか)

久遠(あるいは……)


阿部(この終盤で、まだ見ぬ投手の登板か…。データはほとんどない…)

阿部(間違いなくここがターニングポイント。流れを掴んだ方が勝つ)



 下1 意地と根性のエース・中沢と替わった投手…

 1~3 エースの力投に続くとばかりの、気合いと気迫で久遠を打ち取った
 4~6 粘りに粘った末、久遠がシングルヒットをもぎとった
 7~9 しかし現実は非情なり…(羽生目線


 ビシュッ
 ギインッ

<ファール!

<これで何球目だよっ!?

久遠(打ちづらいな…。低めばかりによく集める…)

久遠(それに見逃せばゾーンに入りそうな、際どいところへばかり…)


 ビシュッ

久遠(外か、いや――)

 ギインッ

<ファール!

久遠(粘るな…。だが、打てないほどのボールではない)

久遠(落ち着いて、冷静に振り抜けば)


 ビシュッ

久遠(これだ!)

 ブウンッ
 ククッ
 キインッ

久遠(これも変化球――些細な変化だが、打ちどころが…!)ダッ


 バシッ
 ビシュッ

<アウト!

久遠「……叩ければ良かったんだがな」

佐野「下がっとけ、久遠。投手が打撃でまで欲出さんでええわ、ドアホ」

佐野「さて…お手並み拝見じゃ。のう、羽生さんよぉ?」ゴゴゴ



 下1 佐野っちぃ!!

 1~3 運が羽生を味方しているのか…?
 4~6 佐野っちをもってしてもまだ得点ならず…
 7~9 さす佐野っすわ。試合を決定づけるのは4番の一振りってやつかね


佐野(変化球の種類は多いようだが、どれもこれも微妙じゃのう)

佐野(手元で変化するわけでもなしの、微妙極まりないもんばっか…)

佐野(じゃがその分、久遠も見極められんで振らされたような印象じゃった)

佐野(ほなら、――パワーでぶっ飛ばしゃあええだけじゃ)ゴゴゴ


 ビシュッ

佐野「ぬうんっ!!」

 ギイインッ

<初球打ちぃー!!?

<佐野にしては珍しいけど詰まってんぞ!

<いやっ、レフトが前に出てる…!


 ズザァッ

<セーフ!


佐野「ちぃっ…」

佐野(しょっぼいシングルヒットか。さすがにあれじゃ田中の足でもホームまで走れんわ)


中井「……熱い展開だな」

中井「ここで打てなきゃ………って思うと、打てねえし」

中井(気楽に、ただし集中して。一振りずつに、全力を乗せる)



 下1 一死一三塁のチャンスやで!?

 1~3 スクイズ失敗でやんすか…
 4~6 ぬぬぬ…! 羽生の堅守っぷりがここへ来て…
 7~9 中井ィッ!!! お前5番ええやんけ!!


中井(球種がいくつだろうが、関係ねえ)

中井(問題はコース。投手が替わっても打たせて取るピッチングが徹底されてるのは、中沢がマウンドに残してった置き土産か)

中井「……っし、勝負だ」ギュッ


 ビシュゥッ
 バシイッ

<ボール!


中井「…次」

中井(集中しろ、ゾーンに投げ込まれれば打てないボールはない)


 ビシュッ
 ブンッ
 キイイイイインッ

中井「~っ…!」ダッ


<中井、いいぞぉー!

<ナイバッチ、中井ぃー!!

<中井ィッ!!

<イケメン中井ィッ!!

<俺を抱いていいぞぉっ!!


田中「よぉーし、よく打ったぞ中井ぃー!!」ズザァッ

田中「待望の、せんせいてぇーん!! いえええええ――――――――――いっ!!」

<いぇえええええええ―――――――――――――いっ!!


中井(何で俺が打った時ばっかこう盛り上がるんだっての…)

中井(……って、しょうがないのか…? いや、しょうがなくねえだろ?)


<そしてぇっ、ここで我らが!!

<エース!! 松坂ぁああああああああ――――――――――――っ!!

<うおおおおおおおっ!!


松坂「も、盛り上がりすぎじゃ…?」←先制点で嬉しいけど引いて冷めた

松坂(一死一三塁…。1点リード…)

松坂(阿部くんは1点が大事になる試合って言ってたけど、投手が交替したタイミングでの連打…)

松坂(ここで追い討ちをかければ、勝利の確実性が増す…!)



 下1 松坂ァッ!!

 1 トドメを刺すとばかりに長打を狙って
 2 か、確実にね? 当てていくバッティングで
 3 スクイズしましょ。佐野くんの猪突猛進を期待して

あれ?久遠アウトになったんなら二死一三塁じゃないの?


松坂「ふぅーっ…」

松坂(よし、打つ…! ……………ってあれ、この試合、全部こういう感じだったような…?)

松坂(………ま、いいや)


松坂(中井くんが先制点くれたんだし…)

松坂(ここで失敗しちゃっても、別に…別に良くはないか……でも、1点あれば、守り抜ける)

松坂(だからここは、思いきり、振っていく)

松坂(佐野くんの豪快なホームランみたいに…!)



 下1 松坂ァッ!!! ※投手替わったからハングリー使えず

 1~3 あーうち…
 4~6 結果として犠牲フライ
 7~9 中井くん、足速いからね。ランナーを一掃しちゃったよ

>>245 おうふ…すみませぬ…

ちょいと>>242の選択肢からやり直しますんで…しばしお待ちを…申し訳ないっす


<そしてぇっ、ここで我らが!!

<エース!! 松坂ぁああああああああ――――――――――――っ!!

<うおおおおおおおっ!!


松坂「も、盛り上がりすぎじゃ…?」←先制点で嬉しいけど引いて冷めた

松坂(二死一三塁…。1点リード…)

松坂(阿部くんは1点が大事になる試合って言ってたけど、投手が交替したタイミングでの連打…)

松坂(ここで追い討ちをかけられば、勝利の確実性が増す…)

松坂(でも2アウトだし…大振りはよした方がいいのかな…?)

松坂(だけど、長打が成功すれば…勢いがつくだろうし…?)



 下1 松坂ァッ!!

 1 トドメを刺すとばかりに長打を狙って
 2 か、確実にね? 当てていくバッティングで
 3 こう…投手の出方を見ながら、打てるところでがんばる…みたいな方針で


松坂(い、いやっ…)

松坂(ただ強く振り抜くだけが勝負じゃないし…)

松坂(確実に、当てていくようなバッティングを意識して…)

松坂(繋ぐ…。あわよくば、点を取る。三塁に佐野くんがいるんだから…!)

松坂「ふぅーっ…」ギュッ

松坂(勝負…!!)

 ビシュゥッ


 下1 松坂ァッ!!

 1~3 アウトー
 4~6 いっぱいバットに当たりました。…当たっただけ…
 7~9 さらに1点追加ァッ!!


 下1 0コンマ判定

 偶数 当ててくってつもりだったんじゃないの、松坂くん? きみ打撃上手ね?
 奇数 0奇数をもってしても…単にアウトっすわ


松坂(当てる…!)

 キィンッ

松坂(当たった――けど、あちゃー…)ダッ

 バシッ
 ビシュッ

<アウト!


<まぁつざかぁーっ!!

<何いいよーに打たされてんだよぉっ!?

<お前それでも6番かぁっ!?

松坂(非難囂々…!?)


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃羽┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃1 ┃ ┃┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻


長島「松坂、お前、今の打席…どういうつもりだった?」

松坂「え? あ、えっと…あ、当ててく…つもりでした…」

長島「……そしていいように振らされたか」

松坂「…」

長島「…ふむ」

松坂(ま、まさか…降板…? させられる…? 打撃で不甲斐なかったから…!?)



 下1 まさかね?

 1~3 最終回だったのにぃー!!
 4~9 続投…ほっ…
  0   ええっ、加賀投入しちゃうん!?


 『新摂高校、守備の変更をおしらせします――』

久遠「先発して、最終回でも登板…」

久遠「………不思議と悪い気分じゃない」

松坂(やっと投げさせてもらえたと思ったら…)

松坂(レフトに、また下げられた…)


阿部(監督、厳しいなあ…)

阿部(シード枠はもう獲得してるようなもんだから、公式戦でもばっさりと勝ちを使い捨てるつもりかな…?)

阿部(いや…松坂くんだからないだろうけど、天狗になるのを予防して、気を引き締めさせるためにあえて…?)


久遠「さあ締めるぞ、阿部」

久遠「全員、三振でな」

阿部(この自信満々で、堂々の態度だからなあ)

阿部(まあ、徹底的に久遠くんをマークしてくれる分にはかまわないんだけどね)

阿部(どれだけ研究されようが、それを正面から叩き潰せるだけの力が久遠くんにはあるんだから――)


 ビシュッ
 ズッバアアアアンッ

<ストライーク!

阿部「~っ…さらに球威上がってない?」

久遠「やっぱり今日は、調子が良かった」



┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃羽┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃1 ┃× ┃1┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻



 今夜はここまでっす
 あざっした


 【オマケ・仁義ある女マネの戦い?】

夕実(最近何だか…光ちゃんが…)チラッ

光(夕実先輩が…まるで松坂先輩が好きみたいに錯覚しちゃうことがある…)チラッ

夕実「あ、光ちゃん、ボール拾いお願いできるかな?」

光「すみません、ユニフォームのお洗濯するつもりだったんですが…」

光(ブルペンが近いから…)

夕実「ついでにタオルとか洗って干したりで意外と重労働だからさ、今はみんなの練習の手伝いにもなるし球拾いからお願いできるかな?」

夕実(ブルペン近いし)

光「そ、そんな大変なら…先輩にさせられないです」

夕実「いいのいいの、どんどん頼ってもらっていいんだから。ね?」

光「…」

夕実「…」

 ゴゴゴゴゴゴ…


<じゃ松坂くん、今、フリーバッティング中みたいだからそっち行こうか

<うん

光「!?」

光(ブルペンじゃなくなった…!?)

夕実(球拾いの方が…それなら、洗濯なんて丸投げして…!)

夕実・光「「あ、じゃあ球拾いをや…」」

夕実「…」

光「す、すみませんっ…あの…何ですか…?」

夕実「……そ、そんなにお洗濯したいなら、わたしが球拾い――」

光「いえっ、わたしの方こそ…遠慮しちゃって、夕実先輩が折角、やさしくしてくれてたのに…わたしが球拾いしますから」

夕実「…」

光「…」

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ…


<あっ、そうだ、松坂くん、右手の経過も見たいからやっぱブルペン戻ろうか?

<え? うん


夕実「!?」

光「!!」

夕実・光「「それならお洗濯…あ」」

 ~以下、無限ループ~



田中「――いやー種田も宮野も仲いいよなぁ~、俺、あん中に入っていちゃいちゃしたい…」

中井「お前なあ…」

松坂「でも今日、ずっと2人で言い合い……ていうか、迫力のある、譲り合い…? してた感じだよ…? 何かちょっと怖かったし…」

加賀「マジすか、松坂先輩っ!?」

久遠「それにたまに、獲物を探す野獣のような眼光でブルペンにも現れるからな」

松坂「分かる…。普段は怖いなんて思うことないのに、たまにこう…背筋がゾッとね…」

久遠「そこまではないがな」

松坂「え」

ぼちぼちやりまひょか


<羽生、良かったぞぉー!

<中沢ぁっ! お前のガッツ見届けたぞー!


松坂(負けたチームへの声援の方がすごい…)

松坂(でも…すごかったし…実際…。8回まで無得点…それもたった1人で…)

松坂(ちゃんと見習って…………先発して最終回まで投げたいなあ…)



 下1 羽生戦後…

 1~3 特に何もなっし!
 4~9 中沢と交流発生?


阿部「県本戦もあと2回…。ベスト4入りだね」

佐野「今、残っとるんはどこじゃ?」

阿部「波動、大東、唐栗」

田中「どこと当たっても燃えるな!」

久遠「ああ。特に波動と唐栗だ」

中井「大東はやりづらかった記憶しかねえ…。阿部のお陰で失点したり、逆転したり…」

阿部「いやー、あの試合の後、一晩ぐっすりどころか、翌日の朝もぐっすり眠りこけたよね」

松坂「珍しく大遅刻してたよね、練習に」

中井「そんなこともあったな…」

田中「なのにしれっと練習混じっててな!」


佐野「波動の佐川は今年も4番か?」

阿部「もちろん。佐野くんが同じチームにいないとあの人を4番から引きずり降ろすなんてできないよ」

中井「確かにな…。あれがさらにオフでパワーアップしてるとか考えたら…」

久遠「燃えるな」

中井「炎上はするなよ?」


松坂「か、唐栗は…?」

阿部「もちろん、あの3人がクリーンナップ」

中井「羽生に借りも返したことだし、今度は唐栗との雪辱戦もいいな」

佐野「どこじゃろうが、もう負けはせんがのう」

田中「いいこと言った! 佐野いいこと言った!」

松坂「………それで…当然のように阿部くん以外、トーナメント表見てないっぽいけど…次、どこなの…?」

加賀(えっ、先輩達全然トーナメント表見ねえの!? マジで!?)



 下1 次は?

 1~3 唐栗や!!
 4~6 大東でい!!
 7~9 波動だぜぃ!


阿部「大東なんだよねー…」

中井「おい」

田中「お前さっき、もうやだとか言ってただろ!?」

阿部「前回のことがあったし、どこまでリード予測が通用するか未知数なんだよね…」

阿部「試合になってみないと、どうなるか…」

久遠「本来はそういうものだ」

佐野「阿部の指示に操られるんもつまらんからのう」

阿部「言うよね」

中井「ま、でも佐野の言うことも一理あるしな。やれることをやるだけだ」

松坂「きっと嫌なコースをガンガン突いてくるだろうから、できることと言えば苦手なコースを克服するための特打くらいだと思うな、キャップ」

佐野「そうじゃのう。ほなら、今から自分の苦手と思うとるコースと、阿部が指摘する苦手なコースが合致したやつから、投手ども使うて特打じゃ」

田中「はいはい、俺、アウトローへの変化球!」

久遠「緩急」

中井「チャンス」

松坂「田中くんと久遠はオーケー。だけど久遠くんはバッピだって言うし、セーブしながら投げてあげてね」

中井「何でだっ!?」



 下1 そんなわけで、お次は精密機器の黒木擁する大東高校でした

 1~3 ネームド増えてやがるし! 黒木のピッチングもパワーアップしてるし!
 4~6 黒木がシンカーに加えてスローカーブまで習得してたことが判明…。コントロールに緩急かよ…
 7~9 復讐に燃える黒木!?


黒木「新摂高校…」

黒木「秋の屈辱、今日こそ雪がせてもらうぞ…」ゴゴゴ

<黒木が最初からおかしいぞっ!?

<いや、おかしいのは元々だ!


黒木「ふっふふふ…阿部ぇ…」

黒木「今日は貴様を血祭りに上げる準備をしてきてやった…」

黒木「とくと味わえ、そして俺の前で跪いて許しを乞うがいい」

黒木「ふふふふ…ふはぁっはっはっは!!」



 下1 ネームド!?

 お名前をおなしゃす!!


白井「黒木せんぱぁい…」

黒木「何だ!?」バッ

白井「ひとりで笑ってるとか…しょーじきキモいっす…」

黒木「」

<白井が言いやがった!?

<あいつ1年のくせに黒木怖くないのかっ?


白井「エロいことでも考えてたんすか…? 白昼堂々? うわぁ…」

黒木「埋めるぞ、白井…」ゴゴゴ

白井「部内暴力はんたーいっす」



 下1 白井くん、1年生

 1~3 1年ながら捕手としてスタメン!?
 4~6 食えない性格の野手みたいですが…?
 7~9 一体、どんな投手なんだ…? 阿部殺しの秘策という、ことは…?


阿部「あれ、1年生が1人…スタメンに入ってるね。前の試合までは出てきてなかったみたいだけど…」

佐野「ワシらとの試合で取り出してきた1年坊ってことか?」

中井「何か、策でもあるのか…?」

田中「ないない、どーせ策士策に溺れるってやつだって!」

松坂「まったく根拠がないのに言い切れるのがすごい…」

久遠「誰だろうがねじ伏せればいいだけだ」

加賀「先輩達かっけえーっす!」


佐野「ほなら、サクッとぶち殺して決勝いくぞ、ボケどもがあっ!!」

 『うおおおおおおおおおおおっ!!』



┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃大┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻



 下1 先発は!?

 1~3 また、久遠…?
 4~9 前回途中登板だったからね! 先発だよ!
  0   加賀かぁー…


田中「いよっしゃあ、まためったんめったんに打ち崩してやるぜぇっ!」

黒木「勝手にがなっているがいい、たかが足と打力と生還力と守備力だけの選手風情でっ!」

 ビシュッ
 バシイッ

<ストライーク!!

田中「め…めっちゃ誉められた!?」


阿部(1年生はショートか…。よっぽど守備がうまいのかな? センターラインで、しかもショートに置けるなんて…)

阿部(それにグラウンドの立ち振る舞い…ただ打球を待っているだけの野手って雰囲気でもないような…。すごく集中してる…?)



 下1 田中ァッ!

 1~3 ちくしょーめ
 4~6 ショートの守備範囲おかしない?
 7~9 さす田中


黒木(抜かりはない、油断もない、慢心もない)

黒木(あるのはただ、復讐心。新摂高校、そして阿部博を、血祭りに上げることだけだ!)


 ビシュッ
 バシイイッ

<ストライク、ツー!


田中(おいおいおい…秋よりヤバいんじゃね、これ?)

田中(コースの際どさは変わらないけど、そこに球威と、何だこの…圧力――気迫ってえのか?)

田中(これを打てとか指示されたとこで、ちっと対応できなさそうなくらいだぞ…!?)

 ビシュッ
 ブンッ
 バシイッ

<ストライク、バッターアウト!!

田中「うっはぁー…やべえわ、あれは」

阿部「みたいだね…」



黒木「阿部ぇ…この時を待っていたぞ」

黒木「貴様はこの試合、1度として出塁することはない。絶対だ――!」

 ビシュゥッ

阿部(アウトロー!?)

 ブンッ
 バシイッ

阿部(届かない…。まさか、俺のバットのリーチまで見極めて…?)

黒木「ふふ…ふははは…。序の口だぞ?」ゴゴゴ

阿部(うーん、前にちょっと煽りすぎたか…な?)



 下1 阿部ぇっ!! 黒木の復讐心:-1

 1~3 三振
 4~6 打たされた
 7~9 腹黒さでは負けてないのさ!


黒木「死ねぇっ!」

 ビシュッ
 キイイイインッ

黒木「!!?」

阿部「おっ、いいとこ落ちたっ!」ダッ

 バシッ

<セーフ!!


黒木「っ…な、何故…何故だぁっ…?」

黒木(打たれるはずのないコースだったぞ…?)

黒木(手も出せず、見送り三振というプランだったはずなのに…)



阿部(黒木先輩さあ、自分の最高の武器を単にコントロールの良さだけって思ってただけなら大間違いだよ?)

阿部(どんな場面でも、そのコントロールを信じて投げ分けることのできる勝負強さと、それに徹する精神力じゃない)

阿部(敵視してくれてるおかげで、その辺、ものすごーくおざなりになってるんじゃないかなー?)




 下1 一死一塁、久遠!

 1~3 ゲッツーかよ
 4~6 三振
 7~9 チャンスを広げる3番の鑑


 下1 0コンマ判定

 偶数 久遠、スリーベース打つってさ。3番の貫禄つきすぎとちゃう?
 奇数 白井…


黒木(何故だ、何故打たれた…? まさか、読んだのかっ?)

黒木(だがセオリーを踏襲しつつも、対新摂のためだけに3ヶ月を費やして考え抜いた配球だぞっ!?)

黒木(マグレだ、マグレに決まっている…! 3番久遠を、仕留めれば…!)


 ビシュッ

久遠「――!」

 カッキィイイイイインッ

黒木「なぁ、ぜ、だぁっ…!!?」


<うおーっ! 久遠がでけえの打った!?

<阿部、回れぇっ!!


<中継、ボール3つだ! ホームは諦めろっ!

<サードで仕留めろぉっ!!


久遠「っ…!」ダッ

 ズザァァァッ
 バシィッ

<セーフ!!


<うおーっ、久遠のスリーベース! 1点先制ぃー!

<くーおーんっ! くーおーんっ!



黒木「何故…何故だ、俺の計算がぁっ…!!」



 下1 黒木、あっさり攻略? まさか…

 1~3 いえいえ、白井の出番っすわ。てかきみ、何でマスク被るのん…?
 4~6 白井の出番って…そういう…?
 7~9 黒木が狼狽したまま、vs佐野っち


白井「すんまっせーん、タイム! タイムっすー」

黒木「邪魔をするな、白井ぃっ!」

白井「え、じゃあ負けたいんすか?」

黒木「俺が負けるはずがないだろうがっ!」

白井「秋負けてるのに?」

黒木「っ!!?」

白井「守備交替でおなしゃーす。ショートがキャッチャーに」


<ざわざわ…

<おい、ショートがキャッチャーに交替してるぞ…?

<あの選手、1年だろ?



白井「よっし、金玉カップも装着かんりょー」

白井「んじゃ黒木先輩、ひとりよがりの独断偏見スタンドプレーの1失点は今だけ水に流して、切り替えてくださいねー」

黒木「…!」ゴゴゴゴ


佐野(何じゃ、この1年…? 捕手じゃったんか?)

佐野(ならどうしてショートなんぞ守っとった…? 意味が分からんわ…)

佐野(じゃが投手は炎上しかけて、プライドも刺激されとるからのう…。ここで打ち崩して、とっとと降板させたるわ)



 下1 白井のリードで何か変わるのか!?

 1~3 佐野っちが、三振しただとぅ…?
 4~6 黒木が変化球をっ…? 捕れるのが白井だけってやつ!?
 7~9 さす佐野っすわ


黒木(何故監督は、白井なんかにリードをさせる…! こいつは“打撃だけ”で充分だろうが!)

黒木(っ…だが監督命令…気に食わないが、点を取られるまでは従ってやる…。1失点したその時は、俺が配球を組み立てる!!)

 ビシュッ
 バシイッ

佐野(……何ぃ? ワシへの初球に、ストレート、ど真ん中じゃあ?)

佐野(ナメとんのか…? それともワシが初球から手を出すタイプとは思うとらんかったのか…?)


黒木「全員死ね…!」

 ビシュゥッ

佐野(内角攻め――!)

 クイッ
 ガィインッ

<ファール!

佐野(ちぃっ…シンカーか。直球と見間違うたわ…)


白井(んじゃあ、黒木先輩が大好きの、遊びなし、3球三振ってことで)スッ

黒木(佐野を相手に、そんな配球で…!! クソが、調子に乗りやがって。傷がつくのは俺の記録だと分かってるのかぁっ!?)

 ビシュゥッ

佐野(インハイ…! じゃが…!)

 ブゥンッ
 バシィッ

<さ、佐野が三振になったぁー!?

<しかもランナーは三塁にいて、前に中井が打ったわけでもないのに!?


佐野(アカン…完全に振らされた…。黒木のボールは全部、直球ならゾーンすれすれかっちゅうもんじゃったはず…。変化球かと待ち構えたら、直球じゃったか)

佐野(この1年、阿部並に腹ぁ黒いんとちゃうか…?)


白井「さー、次の打者に集中でいきましょーか」

黒木「こいつめ…!!」ゴゴゴ


中井(佐野が三振…。それに黒木の投球にしては、何か印象が違ったな…)

佐野「中井、コントロールはそのままに…やらしい配球でくるようになったわ。気ぃつけろ、ドアホ」

中井「…ああ、分かった」


 下1 中井ィッ!!

 1~3 中井までっ!?
 4~6 打たされたぁーっ!?
 7~9 5番の貫禄ついてきたんとちゃいまっか? 追加点やで!


中井(やらしい配球か…。ひねくれてるなら、それでヤマ張って打つ)

中井(とにかく振り抜いてく姿を見せといて…内角を打ち込む!)ギュッ


 ビシュッ
 ブンッ

<ストライーク!

中井(外角に初球…。それなら、内角で揺さぶりにくるか? それを打つ…)

中井(いや…普通、こういう場面で変化球は早いのかもしれねえけど…やらしいってんなら、出し惜しみなしでシンカーがきてもおかしくないな)

中井(インコースへのシンカー狙い…!)


白井(ゾーンから出ていいんで、当てるつもりのシンカーを内角で)

黒木(そんな遊び球…! ゾーンだけに投げて三振を取る…! それが投手としての実力の見せ方だ…!)

白井(さっさと投げてくんねーかなー? 睨むばっか…)

黒木(相手にするつもりはないとばかりの目をしやがって…!)

黒木(いいさ、打たれた時は主導権は俺が取らせてもらう…!)

 ビシュッ

中井(きた、インコース! シンカーのつもりで、打ち抜く!)

 クイッ
 キイイイイインッ


<うおおおー!?

<佐野が打てなかったのに中井が打ったぁー!?

<久遠が生還! 中井は一塁かっ!


中井(っぶねー…。危うくゴロだったぜ…)

中井(けどこれで2試合連続得点…!!)



<松坂ぁー!

<チャンスに続けよぉー!!

松坂「……2アウト…一塁かぁ…)

松坂(すでに2点も取ってるし…最悪、どうなっても大丈夫だよね…?)

松坂(リードがあった方が投げやすいっていうだけで…うん…)



 下1 松坂ァッ!!

 1 無難に…
 2 当てる打撃を
 3 かっ飛ばす打撃を


松坂(ダメでもともと…)

松坂(一打でランナーがホームに帰れるっていう場面でもないし、ここは長打狙いで…!)


黒木「白井ぃっ! …こい」ゴゴゴ

白井「……すんません、タイムで」


白井「何すかぁー?」

黒木「お前のサインで打たれたんだ、今度は俺が配球を組み立てる…!」

白井「いや、それはないっしょ」

黒木「何だと?」

白井「つーか、黒木先輩、頭に血ぃ上りすぎなんで? 普段ならともかく、今日は1球も先輩の意見通りに投げさせられないっすよね」

黒木「ぶち殺すぞ、白井ぃ…」ゴゴゴゴ

白井「お好きにどーぞぉ?」

黒木「っ…!」ピキピキッ

白井「…文句がもう出てこないってことは、俺のサイン通りってことでいいんすか? いいっすよねー? んじゃ、戻りまぁーす」

黒木「………この試合が終わったら、お前とは二度とバッテリーなんか組まないぞぉっ!!」

白井「そりゃありがたいっすよー…」ボソ


松坂(……………何か…すごく仲が悪そうなバッテリーだ…!!?)

松坂(えええっ…? どうして? 黒木さん、すごい投手なのに…捕手とうまくいかないの…? すごいから…?)

松坂(でも1年生の捕手と3年生の投手って……よく成立できるなあ…)



 下1 松坂、長打狙い

 1~3 フライを打ち上げた
 4~6 三振した
 7~9 ツーベース!


松坂「ふぅーっ…」

 ビシュッ
 ブウンッ

 カキイイインッ


<松坂が、打ったぁー!

<いいぞ松坂ぁーっ!!

<お前いつから野球偏差値そんな高くなったんだー!?

松坂(やった…マグレ当たりで二塁打…! 中井くんはホームに帰れなかったけど…)



 下1 そしてこの回、さらなる追加点はいけたのかっ!?

 1~6 ノン
 7~9 1点追加や
  0  2点追加された… 初回にして大幅リードやな!?

>>314
0の文が何か松坂が2点入れられたみたいな文体なってるんですが……。
この場合こっちが攻撃で押せ押せだからされたじゃなくてしたじゃね?

>>317 すまんの、日本語むずくてまちがったわ



┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃3 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃大┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻


黒木「白井ィッ!」ガンッ

白井「あーあ、ベンチ蹴っちゃって。それで健全な高校球児っすかぁー?」

黒木「黙れ、いますぐお前はベンチに引きこもれ! お前の指示通りに投げて2失点だぞ? この俺がっ!!」

白井「だーかーらぁー…何で分からないんすか。そりゃ、先輩が逆上しまくってるからっしょ?」

黒木「何ぃ…?」

白井「キレて力任せになって甘いとこ投げて?」

白井「それを打たれて俺のせーにして、逆球投げて打たれてキレて?」

白井「あーあ、もっとマシなコントロールの投手いないんすかねえ? うちって」

黒木「」ブチブチィッ

黒木「白井てめえこらぁっ!!」

<うおっ、やめろ黒木!

<黒木をとめろぉっ!!

白井「ねえ、黒木せんぱーい…」

黒木「フゥーッ…フゥーッ…」

白井「もっとドライになんなきゃ、ダメだって分かりません?」

白井「去年までの先輩で、俺がリードだったら、新摂なんて瞬殺っすよ?」




 下1 大東ベンチは緊張感MAXなようです

 1~3 そして松坂、お前は何故っ!? ピンチにならないと始まらぬ!?(てほど最近ピンチにもなってないような…?
 4~6 いいよいいよぉー。多少打たれたって安定感抜群だよー
 7~9 最近、すこぶる調子いいよねー


 カキィンッ

 ギンッ

 カンッ

松坂「あれー…?」ダラダラ

阿部(松坂くんさあ…)

田中「だぁっはっはっはー! いいぞ、松坂っ! お前らしいのが戻ってきたな!?」

佐野「そのまま打たせてええぞ、ドアホぉっ!」

久遠「俺の出番だな…」ウズウズ

中井「くおーん! うずうずすんな、早すぎだ!」


松坂(一死一二塁…)

松坂(それで…4番に、エースの……黒木さん)

黒木「…」ゴゴゴ

黒木(何が、ドライになれ…だ…。この俺の、煮えたぎるような怒りを、忘れろというのかあ…!!)


 下1 怒りの黒木… ±0

 1~3 あっさりゲッツー。ラッキー…
 4~6 あっさり奪三振…良かった…
 7~9 うおー、満塁だよぉ…

しまった判定表まちがえた…

判定…やりなおす…?
それとも…振り直しチャンス+1にしとく…?

ふむ…
では選択肢を用意しましたので、意見をくださった方でもそうじゃない方でもお好きに取ってくだされ


下1 判定表間違いの末路をば…

1 本来ゲッツーだから、ゲッツーってことで
2 判定そのものからコンマ振り直しで(悪くなってもオラ知らぬ
3 振り直しチャンス権1個ゲットで、満塁で…


松坂「ふぅーっ…」

阿部(頭に血が上ってるからね…。利用させてもらおう。ド真ん中、チェンジアップだ)

 ビシュッ

黒木「っ…チェンジアップ――」

 ブゥンッ
 バシッ

黒木「クソがあっ…!」

黒木「次だ…次こそ――!」


阿部(でもって、今度はきっちり見てきてくれるからね)

阿部(打たせてあげよっか。ゲッツーにならざるをえないゴロをさ)

松坂「ふぅーっ…」

 ビシュッ

黒木「死ねえっ!」

 ブンッ
 ギインッ

阿部(おおー、ピッチャー返し――でも)

 バシッ
 ビシュッ

<アウト!

田中「ハッハァーっ!!」

 ビシュッ
 バシィッ

<アウトー!


阿部「よし、一丁上がり。ピンチになっても凌ぐ。これが松坂くんだね」

松坂「誉められてる…のかなあ……?」



┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃3 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃大┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻



白井「ね、言った通りでしょ? 黒木先輩」

黒木「っ…!」ギロッ

白井「怒りの超パワーで覚醒しちゃっていいのは、バトル漫画のキャラだけなんすから」

白井「スポーツやってるんすよ? 負けた悔しさのひとつも飲み込めないで、何がエースなんすか?」

黒木「……っ」

白井「んで、マウンドいきます? やめときます? どっちでもいいっすよ、俺は」



 下1 大東バッテリー!

 1~3 怒りを克服した黒木…!?
 4~6 噛み合ってきやがった…?
 7~9 まだチグハグか…イケるかの?


黒木(………クソが、1年にいいように乗せられてたまるか…)

黒木(ここから立ち直るのは、あくまで俺の力だ…)

黒木(調子に乗るんじゃねえぞ、白井ィッ!)

 ビシュッ
 バシンッ

<ボール!


<またボール先行…!

<黒木はまだまだ立ち直れそうにねえな!

黒木(わざとだ、バカどもが!)

黒木(俺の美意識からは程遠いリードだが、大口叩いたんだ、結果を出してみろ、白井ィッ!!)

 ビシュッ
 バシインッ

<ストライーク!

白井(まだ荒れてるな、いつもに比べると…)

白井(まあでも…軌道修正はできたって感じっすかねー…?)

白井(プライドの高い投手とか、ほんっとめんどくせー…)

白井(いーいなあー、新摂…。どっちの投手も、素直そうで…)



 下1 はて、2回の攻撃は…?

 1~3 結果、三者連続凡退…
 4~6 打者出てたのに田中が打ち取られてチェンジか…
 7~9 ランナーでてきたとこで阿部がきたでぇ


 ビシュゥッ
 ブンッ
 カクッ
 バシインッ

<ストライク、バッターアウトぉっ!!

白井「ねえ黒木せんぱーい…何でそこまで怒りぽっぽなんすかぁー?」

黒木「何でだと?」

白井「バカにされて悔しかったんすかぁー?」

黒木「…黙れ」

白井「そんだけムカつくんなら、押し殺して勝ちましょーってば。エースのくせに感情のコントロールもできないとか、どーなんすかねえ?」

黒木「っ…」



┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃3 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
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┃大┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻



松坂(2回裏の先頭打者は…)

白井「いいなぁー、いいっすよねー、そっちの投手って」

阿部「でしょー?」

白井「首振ってるとこ見たことないっすもん。どーやってそんな信頼勝ち取ったんすか? こーがくまでに教えてくれないっすかー?」

阿部「んー、黒木さんが引退したらいいよ」

白井「引退前じゃないと意味ないんすけどねー…」


松坂「ふぅーっ…」

 ビシュゥッ



 下1 vs白井!!

 1~3 こいついきなり!?
 4~6 センスある打撃っすな…
 7~9 よっし、アウト


 バシンッ

<ストライーク!

白井「いーなぁー…」


 ビシュッ
 バシィッ

<ストライク、ツー!

白井「松坂さんもいいしー…」


 ビシュッ
 バシッ

<ボール!

白井「久遠さんも申し分ないしー…」

阿部(打つ気、ゼロ…?)


 ビシュッ
 バシィッ

<ストライク、バッターアウト!

白井「加賀って選手も悪くないっすよねー…」

阿部「………三振だよ」

白井「あれ、いつの間に? こんなに球速早い選手でしたっけ?」

阿部「…」

阿部(何だこの子…?)



 下1 松坂ええやん!

 1~3 尚、下位打順にまた打たれちゃった模様…
 4~6 しっかり(打たれつつも)無失点でね
 7~9 ばっちり無失点さ!


 バシッ

<ストライク、バッターアウト!


松坂「ふぅっ…」

阿部「ナイピッチだね」

久遠「いつ崩れてもいいぞ。俺がいる」

松坂「す、スタミナは自信ある方だし…」


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃3 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃大┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻


白井「んじゃ、そろそろ調子戻してくださいよー?」

黒木「黙れ。でないとお前の指示なんか聞かねえぞ」

白井「ういーっす」



 下1 黒木、調子を戻しつつありますが…

 1~3 ヤバくなってきたんとちゃいまっか…?
 4~6 新摂クリーンナップ相手に凌ぎきりやがった…
 7~9 ランナーを背負って佐野か…


 キインッ

<また久遠が打ったぁー!!

<一死ランナー一二塁で佐野だぁっ!!


白井(こっからっすよ、黒木せんぱぁーい)

白井(ここで佐野さん打ち取らないと、実質もう負けみたいなもんっすから)

黒木(こんな場面だろうがそうやって不抜けたような面してるから、ムカつくんだよ)


佐野「こい…」ゴゴゴ

白井(そろそろ調子も戻りつつあるんすから)

白井(いつも通り、針の穴を通してくれりゃあいいんすけどー?)



 下1 佐野vs黒木!!

 1~3 佐野を完全に手玉に取った…?
 4~6 惜しかったけど、佐野出塁ならず…
 7~9 さす佐野っすわ


白井(この人は打者としての自分の能力を完璧に把握してるんすよねー)

白井(でもって4番としての役割を完璧に果たそうとする。だから一死一二塁のこの場面、長打を狙う)

白井(小難しく一球ごとの配球なんか考えるくらいなら、場面に対する想定をしていった方が頭の消耗も少ないってもんなんすよ)

黒木(場当たり的なサインばかり…! それでランナーを出しているのを分かっているのかっ!?)

白井(早く投げてくれないっすかねー?)

黒木「クソが…!」

 ビシュゥッ
 バシッ

<ストライーク!


佐野(…内角)

佐野(さっきはしてやられたが…今度はそうはいかんぞ)ゴゴゴ


黒木(また内角、直球だと? ふざけてるのか、佐野に2球同じコースになるんだぞ!?)

白井(俺のミット、さっきよりもゾーンすれすれに構えてるでしょ? 投げれるでしょ、黒木せんぱぁーい?)

黒木(上等だ、クソが!)

 ビシュッ

佐野「!」

 ブンッ
 ギインッ

<ファール!

佐野(2球続けて同じかとも思うたが…違ったのう。僅かにじゃが、さらに際どいとこへ投げてきおった)

佐野(こりゃあ、もう黒木はほぼ復活したっちゅうもんかのう?)


白井(さ、ここに投げてくださいねー)

黒木(シンカーを、真ん中へ…? だがそれは、さっきストレートで投げ込んだところと同じになるぞ…!?)

白井(いいから投げてくんないっすかねー? ほらほら、そーれーとーもー、投げ込める自信とかないんすかねー?)

黒木「……っ……生意気な1年がぁっ!」

 ビシュッ

佐野(真ん中――いや)

 カクッ

佐野(シンカーじゃろう、これはっ!)

 ギイインッ

佐野(しもうた…!?)

白井(この人の弱点はバッティングをパワーだけでも、テクニックだけでもしないってとこっすよ)

白井(力だけで飛ばすつもりだったなら、長打にされた。テクニックだけで打とうとしてれば、ビミョーに異なった似たコースへの球でも惑わされずに打ててた)

白井(けど両方信じて、両方を発揮するからこそ、どっちかを崩せば、打撃が不振になる)


<アウト!

<佐野が、またアウトになったー!?

白井「やればできるじゃないすか、ナイピーっす、黒木せんぱぁーい」



 下1 中井ィッ!

 1~3 ここまで当たってたのに!
 4~6 中井まで攻略されてるのかっ!?
 7~9 さす中


中井(また佐野が、打てなかったか…)

中井(だけど4番が返し損ねたランナーは、5番が返す。それが役目…!)ギュッ


白井(5番になってからの打率がすげえ良くなってんすよねー、この人…)

白井(それにこの人、打者としての悪癖がない…。何でもそつなく、何でも高いレベルでこなす)

白井(他の打者に埋もれてるだけで、この人がいるといないじゃチームが大違いになる…)

白井(だから、ここもやらしく攻めますよー)


黒木(こいつにはさっき打たれてんだぞ…!)

白井(この場面で初球から勝負にくるほどの度胸はないっすからね。カウントをまずは稼いどきましょ――)

中井(初球から打つ。来た球全てを打つ勢いで…!)


 ビシュッ
 キイイイインッ

白井「ありゃっ?」

黒木「っ――!!?」



<田中回れぇーっ!!

田中「うおっしゃ、ホームに生還っ!! 4点目ェッ!!」

<うおおおおおおおっ!

<佐野が打てなうても、こっちには中井がいるんだよぉっ!

<中井マジイケメン!

<キャ―――――――! 中井くぅ―――――――――んっ!!

<中井死ね、イケメンっ!!


松坂(二死一三塁…かあ…)

松坂(できるなら、三塁ランナーの久遠くんを返したい…けど)




 下1 そして、松坂…

 1 短打狙いでも打っていく
 2 長打でいこーよ
 3 シンカー、狙って打てれば投手に精神的ダメージを与えられるかな…?


松坂(………そうだ)

松坂(この場面でなら、普通は確実に当ててもう1点取ろうって考えるんだろうし…)

松坂(あえて長打を狙っていくっていうのはどうだろう…? 最初の一球で、当てるぞっていう姿勢を見せておいて…)

 ビシュッ
 ブンッ
 バシッ

<ストライク!!


松坂(あれ…今ので、そう見せられたのかな…?)

松坂(きちゃったから振っちゃったけど…)

白井(この人、意味わかんないんすよねー…)



 下1 松坂ァッ!!

 1~3 三振
 4~6 あ、打上げちった
 7~9 松坂、ツーベースで1点追加


 カキィィインッ

松坂「あっ…」

白井「ラッキー」

松坂(打ち上げちゃった…センターフライ…。せめて二死じゃなかったら…)


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
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┃新┃3 ┃0 ┃1 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃大┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻


白井「んで、黒木せんぱーい」

白井「そろそろ、調子戻りましたぁー?」

黒木「てめえのリード通りのつもりだが…?」ギロッ

白井「そっすねー。ま、9割くらいは要求通りっす。誤差は5センチ以内ってことで」

黒木「……並の投手じゃこういかねえつもりなんだけどな」

白井「だって先輩は並じゃないっしょ?」

黒木「……何が言いたいんだ、白井ぃ?」

白井「…俺、思うんすけどね。黒木先輩の打者の分析力と、俺の配球が合わさったら、最強だと思いません?」

黒木「……思わないな」

白井「バカなんすねー、先輩」

黒木「っ…!」



 下1 3回裏は?

 1~3 まあ似たようにピンチになったけど切り抜けたさ
 4~6 セカンドベースまでしか踏ませなかったさ
 7~9 一塁も踏ませなかったよ!


松坂「ふぅーっ…」

 ビシュッ
 ギンッ

田中「だぁらっしゃーい!」バシッ

 ビシュッ
 バシッ

<アウト!


田中「うおっしゃー! ナイピー、松坂っ!」

松坂「田中くんもっ」

田中「とーぜんだろうっ!?」


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
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┃新┃3 ┃0 ┃1 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
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白井「そろそろ得点しないとヤバいっすねー」

黒木「お前がバットで取り返せ、捕手ならな」

白井「あれ、俺のことちゃんと捕手って認めてくれるんすか?」

黒木「てめえがこの試合を負け試合にしなかったらな!」

白井「へー…。やる気出るっすねー、それ。先輩実は投手よか、捕手の方が向いてるんじゃないすかー?」



 下1 この回の大東バッテリーは?

 1~3 だだハマりじゃないすか、このバッテリー? 手が出せんよ…
 4~6 黒木が歩み寄る形か…
 7~9 まだ…髪の毛先ほどの隙間はある…はず…


 ビシュッ
 バシッ

<ストライク、バッターアウト!


阿部「…下位打線とは言え…三者凡退…」

阿部(黒木さんの投球が変化してる…。あの1年生捕手のおかげか…?)

阿部(でも、黒木さんの真骨頂は、迷いなく打者ごとの弱点を攻める投球間隔の短さ…)

阿部(あのクイックのハイテンポ投球にはなってないし…これはまだ、つけこめる隙があるはず…)

阿部(だけどいつまで…? 次の回、田中くんからの打席で勝負をかけにいかないとな…。佐野くんが打たせてもらえてないのが、1番怖い…)

阿部(その分、中井くんは打撃好調だけど…。しっかり守っていかないとな。4点リードに胡座はかけない)



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松坂(4点リード…)

松坂(だけど1点もあげるもんか)

松坂(無失点でも久遠くんは6回で降板させられたし…僕もいつまで投げさせてもらえるか分からない…)



 下1 大東、そろそろ反撃くるか…?

 1~3 大東必殺(!?)の配球推理打撃が開始された模様…ここにきてかぁー…
 4~6 ランナーが出たとこで、とうとう牙を剥いてきた白井…?
 7~9 大丈夫、松坂はまだまだ好調だよ


白井「やっと黒木先輩が打ってくれたし…俺もやらないとダメっすかねえ」

阿部(ここまで大した打撃をしてない彼だけど…)

阿部(打者として、まったくもってデータがないからなあ…)

白井(チェンジアップもあるし、カットとシンカーまで備えてる…)

白井(いいなあー、こんな投手が自分のリードにうんうんって従ってくれるなんて)

白井(何打たせてもらおっかなー)


阿部(慎重にいこう)

松坂「ふぅーっ…」


 ビシュッ

白井(初球――ストレート、膝元、外れ)

 バシッ

<ボール!

阿部(あれ、クサいとこつけたと思ったのにバットを動かしもしなかった…?)

松坂(何だろう…のほほんとしてそうなのに、この緊張感…?)



黒木(やっと本気になったか、白井…)

黒木(お前の打撃能力だけは全面的に認めてやる…)

黒木(パワーも並、足も並、それでも5番に選ばれたのはお前の、その頭脳と――)


松坂「ふぅーっ…」

 ビシュッ

白井(2球目――チェンジアップ、アウトロー、ゾーン)

 ブンッ
 カキイイイインッ


黒木(常人離れした、動体視力と判断力…!)ダッ

阿部(惑わされずにチェンジアップを打ち抜いた…!?)



 下1 白井こえーわな

 1~3 二死一三塁か…
 4~6 一死一二塁ね…
 7~9 あ、フライだ。ラッキー。ランナー飛び出してるし


松坂(一死一二塁…)

阿部(異質なバッターだな…白井くん、だっけ…? 夏でも要注目だ)

白井(もーちょっと引きつけとけば良かったかもなー)

黒木(素振りをサボるからしょぼいシングルヒットしか打てないんだ…クソが)


松坂(ゲッツーで終わらせることもできるし…これはまだ、ピンチじゃない)

阿部(最早この程度をピンチと思わないんだよねえ、松坂くん…。いいことなのか、馴れすぎって意味で良くはないのか…)

阿部「さあ、気を取り直していこー!」

田中「打たそうぜぇー!」



 下1 あとアウト2つ!

 1~3 ぬっ…満塁…
 4~6 満塁になったけど大丈夫だった。さすが松坂
 7~9 さすがエース!!


 キインッ

<ここにきて松坂が満塁に…!?

<大丈夫かよっ、一発なんか打たれたら…!


 キインッ
 バシッ

<アウト!!

 ビシュッ
 バシィッ

<アウト!


<いつもの松坂だぁーっ!

<つか新摂、ゲッツー率高くねえかっ!?

<松坂の場合さらにな!?


松坂「良かったぁー…」

阿部「だからってピンチになるのはよそうねー」


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 下1 さあ、スキップタイム…!

 1~3 ぬぬっ、7回裏でとうとう試合が動いちゃうのか…? ちなみに大東バッテリーは噛み合ってる
 4~6 7回裏、いまだ試合は動かず… しかし、黒木からの打順です
 7~9 7回裏、また白井っす。このまま守りきれるかのう?


阿部(また白井くん…)

白井(今度こそ打ちたいんだけどなー…)

松坂(この子、何かおかしいんだよなあ…。捕手としても、打者としても…)

松坂(油断できない…)

阿部(慎重にいこう)


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 ビシュッ
 バシッ

<ボール!


阿部(ボール球と見極めた瞬間、もう打たなくなるのか…?)

阿部(それなら、一球、シンカーで外から内へ入れてみよう。それで見極める)

阿部(ランナーなしの状況なら、スリーベースまで打たれたって大丈夫。4点リードなら、1点失っても最悪いいんだ)



 下1 阿部くん、見極めにかかった模様

 1~3 ひえっ、スリーベース…
 4~6 おおう…ツーベースもってかれた…
 7~9 シングルヒットか…うん、まあ
  0   阿部くんすげー、白井の特性をほぼ見抜いた



 ビシュッ
 キイイイイイインッ

中井「長打っ…!?」ダッ

<すげえデカいぞっ!?


白井(あっちゃ、これじゃ三塁まで走らないと監督にどやされる…!)ダダダッ

白井(走るのはそこまでっ、好きじゃないのにぃー!)ダダッ


阿部「ボール3つ!」

中井「中継なんざ、いらねえぞぉっ!」ビシュゥッ

佐野(中井の肩と、捕球の上手さなら刺せるか…!)サッ

白井(ま、でもっ、黒木先輩のためなん、だしぃっ…!!)ダンッ

 ズザァァアアアッ

<白井がヘッスラ!?

 バシッ

<セェーフ!!


<おおおおおっ!?

<ここでまたチャンスに!?


松坂(一打で、三塁まで走っちゃった…)

阿部(ヤバいな…とんでもないセンスじゃない、あの子…?)

白井「ああ…泥だらけ…。母さんに文句言われるからなあ…ユニフォーム汚すと…」

佐野(この期に及んでユニフォームの洗濯の心配かこいつ…!)



 下1 ちなみに、無死なんすよね…

 1~3 1失点でピンチは続く…
 4~6 スクイズで1点取られた
 7~9 ここを乗り越えられるから松坂


 下1 【0.00】コンマ判定

 偶数 特能:窮地の極み 取得
 奇数 試合の中で、チェンジアップが進化した?

 ※単に00じゃないからね、さらに0がついたから偶数で特能取得や! 奇数も悪いのじゃないのにしといたよ!!



松坂(無死三塁…)

阿部(失点するなっていう方が難しい場面…だけど)

阿部(松坂くん、ここで切り抜けられればまた久遠に差をつけることになるよ)

松坂(失点してもいいやなんて考えじゃ、ダメだ…)

松坂(ここからホームには、絶対に返さない…!!)


阿部(スクイズあるよ、警戒して)

阿部(その上で、強気の勝負…。まずは初球、チェンジアップ…!)


 ビシュッ
 ブルンッ

阿部(よしっ――って!?)

 カクッ
 ボロッ

<阿部がこぼしたぁっ!?

<いやでも後逸はしてない…!!


阿部(……今、チェンジアップが…?)

松坂(珍しいっていうか…阿部くんが、捕りこぼしたなんて、初めて…? どうしたんだろう…?)

阿部(………ちょっと怖いかもな、チェンジアップを投げさせるのは)



 下1 チェンジアップ進化!

 1 ガンガン投げていこう、実践でね
 2 ランナー三塁で後逸怖いから…チェンジアップなしで…ね?
 3 ちょいちょい、試す程度でさ…?


阿部(でもまたとない、実践の機会…)

阿部(ここでがっつり、試させてもらうよ!)


 ビシュッ
 ブンッ
 カクンッ

<ストライク、ツー!

阿部(このチェンジアップ、打者の手元で球に落ちてくるんだ…)

阿部(緩急に加えて、この落差…。初見で捕るのはできなかったけど、そうと分かるのであれば…!)


 ビシュッ
 ブンッ
 ギインッ

阿部「セカンド!」

田中「あーらよっ!」バシッ

 ビシュッ
 バシ

<アウト!


阿部(チェンジアップと分かる3球目であっても、あの落差では、打者だってついていくのは難しい)

阿部(これはすごい武器になってくれたな…)



 下1 チェンジアップよ、唸れぇぃ!

 1~3 と、思ったら投げさせすぎて…あ、ランナーいたんだった…1失点した
 4~6 でもまだ落差に幅があって、変化量が安定しないかも…
 7~9 よし、実践練習完了でチェンジやで


 キインッ

阿部(さすがに連続で投げさせすぎた…!?)

松坂(だからちょっと怖かったのに…!!)

白井(投手が試合中に成長なんかしちゃったら、分かるわー)ズザァッ

<セーフ!


阿部「……めんごっ、松坂くん!」

松坂「謝罪が軽い…」



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 下1 ところで、最後まで投げさせてくれるのん…?

 1~3 ええーっ、加賀と交替!? てことは、ベンチ!?
 4~6 久遠と交替させるって…
 7~9 続投!


 下1 0コンマ判定

 偶数 完投させるって…!
 奇数 次に得点圏までランナーを進められたら加賀と交替て言われた…


長島「松坂」

松坂「っ……は、はい…?」

松坂(まさか…1失点で、交替…?)

長島「次に得点圏までランナーを出したら、加賀と交替させる」

松坂「っ…は、はい」

加賀(俺の出番っ!?)


阿部(んー…めんご、俺のせいかも…?)

阿部(できるだけランナーを出させないようにしてあげよう…)



 下1 で、8回表の攻撃は?

 1~3 黒木、手がつけられない…
 4~6 ランナー出たと思ってもこれだもの…
 7~9 久々に、三塁までランナーが…! えっと、本日無安打の佐野っち?


 キインッ

 バシッ
 ビシュッ
 バシィッ

久遠(ランナーは阿部か…)

久遠(佐野、まだ今試合は打てていないようだが…大丈夫か?)


佐野(そろそろ打たんとのう…)

白井(また来た、4番…)

黒木(今度はどうするつもりだ、白井ぃ…?)

佐野(二死三塁…。ここで打たんと、4番が廃るのう…)



 下1 佐野vs大東バッテリー!

 1~3 大東バッテリーやべえっすわ…
 4~6 うおお…どうなるどうなる?
 7~9 さす佐野ォッ!


白井(この打者はもう攻略している…)

白井(黒木先輩のコントロールがあれば、微々たる差を気づかせずにバッティングフォームを崩して打ち取れる)

白井(だからもっと、怒りよりも楽しく投げてくれないすかあ、黒木せんぱぁーい?)


佐野(ここまで全部、初球はゾーンに放ってきとるが…)

白井(そろそろ、それも見抜く。それがこの打者の恐ろしさ)

佐野(だから際どいとこへ、お得意のゾーンと見せかけたボール球)

白井(と思わせておいて、シンカー!)

黒木(少しだけ、理解してやる。お前のそのリードを…!)

 ビシュッ

佐野(こいつをぶち抜く!)

 ブゥゥウウウンッ

白井(フルスイング――!)

黒木(だとぉっ――!?)



 下1 さす佐野ォッ!!

 1~3 阿部生還
 4~6 ツーベース
 7~9 猪突猛進スリーベース
  0   ツーラン


<うおっ、ライトのグローブを弾いたっ!?

<行っちまえ、佐野ォ―ッ!!


佐野「おおおおおおおおっ!!」

松坂(猪突猛進ベースラン…!!)

田中「佐野ぉーっ! だぁっはははー!」

中井「佐野の走りおもしれえ!wwwww」

久遠「あの巨体が意外と速いからな」

加賀「佐野先輩、超カッケぇー!!!!」

 ズザァァッ
 バシッ

<セェーフ!


佐野「見たか、ゴラァッ!」

白井(さすが…4番か)

黒木(あのボール球を、ライト方向に流しながらあの飛距離だと…?)

白井(こっちの想像以上にテクがあった…。正しくあれが、怪物スラッガー…)



 下1 続けよ、中井ィッ!!

 1~3 ここでか…
 4~6 いやでも大東バッテリーやばいしね?
 7~9 中井ィッ!!


黒木(白井のリードの意味は分かってきた…)

白井(次は5番…けっこう打たれてるんだよなあ、この人って…。どうしよっかなあ…)

白井(こんなもんで――)スッ

黒木(違う)

白井(あれ、首振ってきた…? じゃあ………ああ、こうかな)

黒木(それだ――。それでいい)

白井(あんだけ否定してたくせに、これじゃあまともなバッテリーみたいじゃないすかー)

白井(ま、こうやって言うこと聞いてくれた方が楽しくなるんだけどねー?)


中井(今日はいけるぞ、佐野を返せれば…)

佐野(中井、打ったれ。お前ならいけるじゃろう)


 ビシュッ
 キインッ

中井「っ――!」

黒木(そうだ、この球は前へ飛ばせない――)

 パシッ

<アウト!

中井(っ…今の、感じは…?)

阿部(まさか…白井くんのリードと、黒木さんの打者分析が…?)

白井(おおーっ…案外いけるもんじゃん)

白井「ナイピッチっすよー、黒木せんぱーい」


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松坂(得点圏にランナーが出たら降板…)

阿部(かと言って、それを悟られたら狙い打ちされちゃうからね)



 下1 松坂ァッ!

 1~3 いきなり、一塁ランナーがががが…
 4~6 あとアウト1つで、ランナーがあ…
 7~9 よし…切り抜けられた…


 カキインッ

松坂「あ」

阿部「あ」

加賀「ああっ!?」←ブルペン

久遠「…」ゴゴゴ


松坂(や、ヤバい…これ以上、打たれたら…!?)

阿部(どころか、バントを成功させられてもアウト…!)

松坂(ダメだ、打たせちゃいけない…。打たれちゃいけない…!)

阿部(俺のせいで1失点食らったようなもんだし…試合よりも今は、松坂くんを優先させてあげたい…)



 下1 おうおう、危ういんとちゃうかい?

 1~3 送りバントされた…無念の降板…
 4~6 三振
 7~9 松坂の守備力が光る!! 松坂と言えばこれよ、これ


松坂(当然、送りバントの構え…)

阿部(守備シフト…バントあるよ…)

松坂(ここで…)

阿部(あえてバントを成功させるよ? 覚悟はいい?)

松坂(バントをゲッツーで仕留めにいく…! あえて…!!)


 ビシュッ
 カツンッ…

松坂(想定よりもボールの勢いが死んでるけどっ!)ダッ


加賀「うおっ、松坂先輩、出るの速いっ!」

加賀「しかも捕球から送球までの流れが――ってファーストに投げないっ!?」



松坂(ゲッツーを!)

阿部「狙える!」

 ビシュッ
 バシッ

<アウト!


 ビシュッ
 バシィッ

<アウト!



加賀「すっげえっ!?」

加賀「さっすが松坂せんぱーい!」

加賀「かっけえっすー!!」


松坂「ふぅっ…」

阿部(これで二死走者なし)

阿部(さあ、あとは長打を打たれなければいいだけだよ)




 下1 いけるよな、松坂ァッ!?

 1~3 あ…ツーベース…
 4~9 余裕ッ!!


 ブンッ
 バシイッ

<ストライク、バッターアウト!

松坂(あって良かった、チェンジアップ…)

阿部(すごいなー、このチェンジアップ…)

松坂(これで最終回も、投げられる…!)

久遠「…」ムスッ

阿部(あっ、久遠がくんが静かにむくれてる…)


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白井「黒木せんぱーい、もうこれが最終回になっちゃうかもなんすけど」

黒木「そんなの分かってる」

白井「負けるつもりはまだないんすよね?」

黒木「当たり前だ」

白井「んじゃ、球数抑えてくんで。延長戦も、しっかり投げてくれないと嫌っすからねー」


松坂(先頭打者…)

松坂(それに…佐野くんには打たれたけど、中井くんを打ち取った時のは…何だか、ヤバそうだった)



 下1 どうするか…

 1 意表を突くセーフティで
 2 佐野くん見習って力ずくで
 3 当ててこう、うん


松坂(ここは堅実に、当てていく…打撃を)

白井(こうっすかねー?)

黒木(違うだろうが…)ゴゴゴ

白井(んー、これも違う…? でも、ここはやっぱ、こうでしょー?)

黒木「ちっ…」

松坂(やっぱりこのバッテリー怖い…)

松坂(いやいや…ボールに集中で)



 下1 松坂ァッ!

 1~3 三振…
 4~6 打たされたよぅ…
 7~9 松坂ァッ!!

あ! ハングリー発動で+1ね!


 カキインッ

松坂(ちゃんと打てた――気がする!)

松坂「あとは、走る、だけ…!」ダダダッ

黒木(こいつの勝負強さは…!?)

白井(本物っすよねー)


 バシィッ
 ビシュッ

松坂(ファーストはヘッスラより、駆け抜ける…!)

 ダンッ
 バシッ

<セーフ!


<うおーっ!

<いいぞ、松坂ぁー!

<最終回でも攻めてこうぜぇー!!



 下1 でも下位打順なんよねー

 1~3 続く打者が連続奪三振…ここで大東が勢いづくのか…?
 4~6 粘ったんだけどな…
 7~9 惜しくも追加点ならず…


 ブンッ
 バシィッ

<ストライク、バッターアウト!


 バシッ

<ストライク、バッターアウト!


 クイッ
 ブンッ
 バシィッ

<ストライク、バッターアウトぉっ!!

松坂「3連続…三振……」

阿部(初回からあんなだったら、かなりヤバかったな…)



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松坂「最終回――」

阿部「久しぶりの完投には、得点圏にランナーを出さないこと…」

阿部「燃えてくるよね」

松坂(しょーじき、不安です…)

松坂(でも、やるんだ。やれるんだ。阿部くんのリードと、バックを信じれば…!)



 下1 松坂ァッ!

 1~3 一死一塁、打者は黒木
 4~6 二死一塁、打者は白井
 7~9 完投勝利


黒木「うおおおっ!」

 ブンッ
 ギイインッ

松坂「っ――!」

阿部(最終回にして、この気迫…!)


中井「オーライだ、任せろっ!」バシッ

<アウト!


黒木「~っ……白井、打て…。死んでも、打て…!」

白井「…っす」

黒木「お前また、腑抜けた――っ…」

白井「……打ちますってば。だってまだ、先輩とバッテリー組んでたいですし?」


阿部(白井くんが最後の打者…)

阿部(この子のセンスは恐ろしい…けど、アウトをあと1つ)

松坂(怖がることなく、しっかり、投げ抜く…!!)

 ビシュゥッ

白井(ゾーン、内角、まっすぐ――!)

松坂(打たれる…!?)

 キイイインッ

黒木「白井ぃっ!!」

<デカいっ…!? まさか、一発…!?

<いや…レフト方向に切れる…!

<ファール!


白井(クロスファイアがここでこうも威力を…すごいな…)

白井(それにちょっと振るのが遅すぎた。もう少し速めで――)

松坂「ふぅーっ…」

白井(もう次の投球――)

 ビシュッ
 ブンッ

白井「あ――」

阿部「チェンジアップだよ」

 バシィッ

<ストライク、バッターアウト!

<ゲェームセット!!!!


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┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
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 下1 大東バッテリーと…?

 1~3 阿部くんなんで敵に塩を送るようなマネを!?
 4~6 夏が恐ろしいバッテリーになりそうですね…
 7~9 何もなし!


黒木「白井ぃ…てめえ、負けさせたな、俺を?」

白井「せんぱーい、キャラぶっ壊れ中でいいんすかー?」

黒木「何て言ったか覚えてるのか?」

白井「俺物忘れよくないんでー」

黒木「っ…やっぱりもうてめえとバッテリーなんざ組むかっ!」

白井「えー? じゃあ夏はまた、負けますねー」





阿部「いやー、終わってみれば危うげなかったのかな?」

久遠「次の先発と完投は、俺だな?」ゴゴゴ

阿部「いやそれは監督に言ってもらわないと…」

松坂「完投できた…」ホクホク

佐野「おう中井、今日はちゃんと打てたのう」

中井「当たり前だろ。4番が打てなきゃ、俺が打たねえと」

田中「ところで阿部ぇっ! 次の相手はっ!?」

加賀「決勝っすね!!」

阿部「んー、次はねー」


 下1 次は…?

 偶数 唐栗高校
 奇数 唐栗を制した波動ですか…


阿部「唐栗高校ですよー」

佐野「唐栗か…。羽生に続いて、雪辱戦じゃのう」

松坂「今度こそ、最後まで…」

久遠「次こそ先発…」ゴゴゴ

中井「後味の悪い試合になっちまってたしな」

田中「今度はきっちり、勝ってやろうぜ」

加賀「先輩達、気合い充分っすね!」



新摂高校
松坂修一 投手 両投/両打 右:スリークォーター 左:サイドスロー

球速:142キロ
制球:C(62)
持久力:S(98)
カット:C(52)
チェンジアップ:C(65)
シンカー;C(65)

打力:C(65)
筋力:C(62)
走力:C(63)
肩力:C(球速換算)
守備:A(86)

特能
四刀流:どちらの手で投げようが、どちらの打席に立とうが一切能力が衰えない
ハングリーバッター:狙い球を絞ることで打席を重ねる度、その狙い球をめちゃくちゃ打ちやすくなる
クロスファイアー:左投げ時、対角線への投球で球威と制球力がグンと上がる


チームメイト(の一部)

2年
田中太郎 二塁手
久遠康宏 投手 ★☆☆
○阿部 博 捕手
◎佐野誠一 三塁手 ★★★
中井 薫 外野手

1年
加賀茂雄 投手

長島貞治 監督
種田夕実 女マネ



 今夜はここまでなのだー
 あざっした

今日もまたーりやりまっせ~


坂上「再戦だな、時任」

時任「おうよ、ちゃんとした決着をつけないとなあ」

遠野「もうピッチャー返しで怪我をさせるなよ」

坂上「それは運だろ――」

時任「二度とすんなよ」ゴゴゴゴ

坂上「まあ、狙いはしないさ」

時任「たりめーだ!」


遠野「……けど、あの試合以来、右投げは封印してるんだよな、松坂」

坂上「みたいだな」

時任「……致命傷負わせてんじゃねえ、それじゃあ完璧な勝利に近づけねえだろうが!」

遠野「あえて、封印してる可能性もあるぞ?」

時任「何っ!?」

坂上「で、ここぞで使って追い詰めるのか…。あり得るぞ」



 下1 相変わらずのトリオのようですが

 1~3 なに、新摂に偵察にくるだと?
 4~9 どこもかしこもいつも通りかよ…さっさと試合しよーぜ


時任「あり得るのか…」

坂上「試合とかを見ていた限りだと、投手陣はともかく…捕手が切れ者だ」

時任「てことは…罠にかけてくる可能性があるのか」

遠野「右投げのフォームも変わっている可能性があるぞ」

坂上「新たな変化球を隠し持っている可能性も…」

時任「何ぃっ!? そんなのいきなりぶつけられたら、たまったもんじゃねえぞ!?」

時任「っしゃ、ここはひとつ、偵察だぁっ!!」

坂上「練習は?」

時任「…………………後でやるっ!!」

遠野(よし乗った)

坂上(絶対に遠野は面白がってるだろうな…)




 ビシュッ
 バシッ

阿部「明日も試合だし、もうちょっと投げておしまいにしておこうか」

松坂「え、もう…?」

久遠「俺が投げる」

加賀「俺も阿部先輩に捕ってほしいっす!!」

阿部「えー? じゃあ…順番ね?」



 下1 偵察されてるなう…

 1~3 阿部くん、策士…!?
 4~6 わんこの嗅覚?
 7~9 気づかず…


久遠「まずはストレートでいいな?」

阿部「いいよー」

加賀「ちぇ~…松坂せんぱぁーい、キャッチボールしましょ、キャッチボール!」

松坂「いいけど…」

加賀「んじゃ、投げまぁーっす! ピッチャー、振りかぶってぇっ!!」

松坂「キャッチボールじゃないのっ?」

加賀「投げたぁーっ!!」

 ビシュッ

松坂「うわっ!?」

 ガスンッ

<うおっ…?

加賀「おお、暴投…。すんません、先輩!」

松坂「いいけど…」

加賀「ボール、ボールぅっ」

<ガササッ

加賀「ん…?」

加賀「あれ、今何か…茂みで何か動いたよう、な…?」

加賀「…」ジィィッ

<わんわん

加賀「なぁんだ、犬かぁー」

松坂「加賀くん、どうかした?」

加賀「って、犬じゃないっしょっ!? 誰だぁーっ!?」


<うわバレた、逃げろっ!

<あ、待てっ!

<逃げるのか…

加賀「松坂先輩、くせ者っす!」

松坂「く、くせ者って…」



 下1 くせ者…

 1 じゃあ追いかけよう
 2 放っとけば…?
 3 いけ、わんこ


加賀「ほらほらっ、逃げちゃいますよっ!?」

松坂「わ、分かったって…! どっち?」

加賀「あっちっす! 行きましょ!」ダッ

松坂(元気だなぁー)


坂上「遠野、乗れ」ブゥンブンブン

遠野「いつの間にお前バイクの免許…?」バッ

時任「俺はっ!? おいっ!!」

坂上「じゃあな、時任。あ、ピッチャー返しの件謝っといて。これ手土産」ポイッ

時任「ちょっと待てコラァッ!!?」

 ブロロロォォン…

時任「あんにゃろー!?」

時任(つか、後ろ振り返ったら追いかけてきてる…!?)

時任(逃げきれるか、オイっ!?)



加賀「ぬぅおおおおおおおっ! おおおおおっ! おおおおおぉぉぉっ…! ぉぉぉっ…!」

松坂「失速すごいね」

加賀「お、俺はここまでっす…先輩、くせ者をお願いしゃーす…!!」

松坂「ええー…?」



 下1 追いつけるのかっ?

 1~3 クソ、足速いな、おい!
 4~9 スタミナの勝利


時任(クッソ、もうそろそろ、追いかけてくんなよっ…!)

時任(つーか、ダッシュで引き離したと思ったのにしつこく追いかけてくるし…ペースとか変わってなくねっ!?)

松坂(足速かったけど、追いつけそう…! ペース落ちたっぽい…!?)


 ダダダッ

時任(クソ、追いつかれるぅっ…!)

松坂(あ、追いつけちゃう…!?)

松坂(でも追いついてどーすればいいのっ!?)

時任(こうなりゃあ…!!)



 下1 追いつく!!

 1~3 逆ギレされた…
 4~6 シラを切り通すらしいっす
 7~9 見舞いだって…言われた


時任「っ…!」バッ

松坂(い、いきなり振り返って、足止めっ…!?)


時任「よう久しぶりだな、新摂のエースぅっ!!」

松坂「うぇっ…?」

時任「秋はピッチャー返しで怪我させたみたいで悪かったと思って、見舞いにきたぞぉっ!!」

松坂「……………っ…あ、はい…どうも…」

時任「…ゼィ……ゼィ……」

松坂「……」


時任「ふぅ……これ、手土産」つ土産

松坂「ありがとうございます…」

時任「…」

松坂「…」

時任「何か喋れよっ!?」

松坂「ええっ…?」



 下1 なんか喋れて言われても…

 1 い、いいお天気ですね…?
 2 た、立ち話もなんですから…学校きます?
 3 明日の試合は…よろしくお願いします…?


松坂「明日の試合は…よろしくお願いします……?」

時任「ああよろしく。………………で、右手は大丈夫かよ?」

松坂「え、ああ…うーん…」

時任「ダメか? ダメなのか? 慰謝料か、そんなら坂上、家が開業医だからふんだくれるぞ?」

松坂「え、お医者さんってこと…?」

時任「そう、そう。俺もガキんころから世話になってんだけど、ひっでえ手当てするんだぜ。めっちゃガサツにガーゼ貼りつけて、痛えの何の…」

松坂「幼馴染…?」

時任「あれが女の子なら勝ち組だってのに、つっまんねえことこの上ねえの」


松坂(何か、前の試合の時は怖い印象だったけど…割と…親しみやすい方?)

時任「ま、それはいい。……つか、冗談抜きで右手再起不能かよ? スイッチしねえの? できねえの?」

松坂(あれ、これ言っちゃってもいいのかな…?)

松坂「……………ど、どうだろう…? キャッチャーにダメって言われてるし…」

時任(てことは、土壇場で投げさせる可能性はなきにもあらず…?)


松坂「と…時任くん、だよね…? 名前…」

時任「おうそうだ」

松坂「………す、すごい豪速球だったけど、コントロールは…良くなった…?」

時任「ああん?」

松坂「」

松坂(地雷踏んだぁっ!?)

松坂「で…デッドボール……気をつけろって……言われるから…」

時任「……………デッドボールん時は、謝るだけだ」

松坂(てことは治ってないっ!?)

時任「んじゃ、とりあえず元気そうならもういいわ。明日よろしくな」

松坂「あ、はい…」

時任「…デッドボール、避けろよ?」

松坂(やっぱりノーコンのままっ!?)



 下1 そんな感じでした

 偶数 で、試合は先攻です
 奇数 後攻で試合でっせ~


佐野「雪辱戦じゃあっ!」

佐野「デッドボールと、ピッチャー返しにゃ気ぃつけろ」

佐野「じゃがもう、秋までのワシらとちゃう。替えはおるんじゃ、自己責任じゃぞ?」ゴゴゴゴ

阿部「サード強襲しまくりますよーに!」パンパン

佐野「阿部ェッ!!」

田中(真正面からおちょくれる阿部ってやべーな! 尊敬するわ!)

佐野「ほいじゃ、ぶっ飛ばすぞドアホどもぉっ!!」

 『おおおおおおおおおっ!!』



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┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃唐┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
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時任「右投げがダメだろうが、遠慮することぁねえってことで!」

時任「ガンガン投げて、ガンガン打って、今日も勝とうぜぇいっ!!」

遠野「で、ガンガン打たれるのか」

坂上「いや、ガンガンフォアボールを出すんだろ」

時任「茶々入れんなそこォッ!!」



 下1 さあ、初回、時任の立ち上がりは…?

 1~3 久遠よりもヤバい豪速球じゃね…?
 4~6 スピードだけなら久遠と似たようなもん…
 7~9 おっ、田中にフォアボール


田中「っしゃオラ、松坂の右手の恨みぃー! 晴らさでおくべきかぁーっ!!」ブンブンッ

時任「上等だ、その気合い、ねじ伏せぇーるッ!」

 ビシュゥッ

田中「!?」

 バッシィィィンッ

時任「どーよ、オラ」

<ボール!

時任「何ィッ!?」

田中「ほっ…」

田中(にしても…やっべえわ、マジで…)

田中(何だこの速球? 唸りを上げて迫ったかと思えばもう通り過ぎてるみてーな…)

田中(手ぇ出なかったしなあ…。まあでも初回だし…まずは目と体を慣らしとくかあ…?)


時任「考えごとしてる間はねえ、ぜぇっ!!」

 ビシュゥッ
 ズッバアアアンッ

<トーライク!

時任「うっしゃあ、オラァッ!!」

田中(速っや…)



 下1 田中ぁっ!!

 1~3 手も足も出ず…
 4~6 セーフティ!
 7~9 フォアボール! ラッキー!!


時任「オラボケカスがぁっ!!」

 ビシュゥッ
 ズッバアアアンッ

<ストライク、バッターアウト!!

田中「まぁじでかー…」


田中「阿部、あれヤバい」

阿部「知ってる…」

阿部(超絶苦手…)

阿部(だけど、いつまでも苦手とか言ってらんないよね、さすがに…。粘るか…)


 下1 阿部、粘れるの?

 1~3 超絶苦手やし…
 4~6 粘るだけ…
 7~9 フォアボール!


 ビシュゥッ
 ズッバアアアアンッ

<ボール、スリー!

阿部(うわ、カウント3-2…。待ってればボールもきそうだけど、割とゾーンにも入ってきてるよーな…)

阿部(コースに関係なく、とりあえず振ってみようか…?)


時任「どぅりゃあああっ!」

 ビシュゥッ
 ブンッ
 ギィィンッ

阿部「っ…」

<ファール!

阿部(重い…!)

阿部(こんなん、うちじゃクリーンナップくらいしかまともに前へ飛ばせないんじゃ…?)


時任「これで死ねぇっ!」

 ビシュッ
 ブンッ
 ギンッ

<ファール!

阿部「~っ…」

時任「チィッ!」

阿部(何球も打てないってか…これ、打った方の手がおかしくならない…?)


 ビシュッ
 ブンッ
 ギンッ

阿部(やば、フェアグラウンド…!)

時任「っしゃ、ラッキーボール!」バシッ

 ビシュッ
 バシッ

<アウト!


阿部「久遠くん、あれヤバい」

久遠「燃えるな」ゴゴゴ




 下1 久遠くん、いける?

 1~3 久遠でも初打席じゃいけぬか
 4~6 チィッ、ゴロになったか…
 7~9 シングルヒット!


久遠「こい」ゴゴゴ

時任(きたきたきたぁっ!)

時任(新摂のクリーンナップ! 波動に続いて、新摂も、ぶち抜いてやるぜぇっ!!)

 ビシュゥッ
 ギインッ

<ファール!


<おおおっ! 初球から振って当てたぞ!?

<やっぱ久遠すげえっ!

久遠(重いな…)

時任「ハ、ハ、ハハハッ! そーこなくっちゃ、面白くねえよなあっ!!?」

 ビシュゥッ
 ブンッ
 ギィイイインッ

<ファール!


阿部「あっちゃー…ボール球まで手ぇ出してるよ…」

田中「気持ちは分かる。あれは勝負したくなる」


久遠(重い上に速い…。自分の球と比べるのはできないけど…俺のはこれに比べてどうなるんだ…?)

久遠(いや…今は勝負に集中か…)

時任「これで死ねェ!」

 ビシュゥッ

久遠(直球…!!)

 キィイインッ

時任「ぬゎにいーっ!!?」

久遠「よしっ…!」ダッ


<セーフ!

<うおおおおおっ! やっぱ久遠すげー!

<佐野、打ってくれぇー!!



佐野「ちったあ荒れ球もマシになったんかのう?」ゴゴゴ

時任(来た、親玉ァッ!!)


 下1 佐野ォッ!!

 1~3 ぬぬ、佐野対策に変化球をっ!?
 4~6 うげえ、佐野がこの試合初打席とは言え打ち負けた?
 7~9 さす佐野です


時任(オフを乗り越えて、さらに増した俺の球威にどこまで食いつける?)

時任(どこまで俺は通用する?)

時任(はからせてもらうぞ、親玉ァッ!!)

 ビシュゥゥッ
 ズッバアアアアアンッ

<ストライーク!!


佐野(速いのう)

佐野(手応えはどんなもんじゃ…?)


時任(あの親玉め、余裕で見送りやがってぇ…!!)ゴゴゴ

時任(手ぇ出せ、そして打ち負けろォッ!!)

 ビシュゥッ

佐野「ぬんっ!」

 ギィィイインッ

<うおー! 佐野ぉー!

<大好きだ、佐野ぉー!

<でも詰まってるぞ!?

 パシッ…

<アウト!


佐野「ちぃっ…」

時任「ふっふふふ…フハァッハッハッハー! どーだ、これが俺の実力だぁっ!!」



┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
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┃新┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
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┃唐┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
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阿部(まあ、得点はなかなかできそうにないか…)

阿部(これは想定内。だからこそ、この試合は投手戦だね)



 下1 ところで、新摂の先発は?

 1~2 加賀!? てことは松坂…ベンチスタート?
 3~7 前試合、まったく投げなかった久遠っすね
 8~9 もちろん松坂ァッ!!


久遠「松坂がいる。初回から、フルスロットルでいくぞ?」

阿部「いいね、その感じ!」


松坂(いいなー、先発…)

松坂(投げたかったなあー…)

中井「松坂、レフトだからって気ぃ抜くな?」

松坂「う、うん…」


阿部「しまってこーぜぇーっ!!」

<おおーっ!!



 下1 久遠!

 1~3 ちょいちょい? 久遠くん?
 4~6 こいつら、速球に馴れてやがる?
 7~9 絶好調やんけ… 松坂の出番がぁ…


 下1 0コンマ判定

 偶数 絶好調の上って何やねん…? とりあえずすげえ絶好調や。頼もしすぎるやで…
 奇数 久遠て、天然だからねえ… ばっちり時任の投球にあてられてスピード狂になった挙句ですか…?


久遠「……ふっ!」

 ビシュゥッ
 ズバアアアアアンッ

<ストライーク!!

阿部(うっはぁー……今日はいつに増してすごい力入ってるな)

阿部(でも、コントロールが犠牲になってるわけでもない。よっぽど、前の試合で投げられなかったフラストレーション溜まってるんだな)


時任「何じゃあいつはぁっ!?」

時任「すっげえぞ、おいっ!? グラウンドだと余計に速く見えるってやつかっ!?」

坂上「うるさいぞー」

遠野「…時任より制球がある分、手強そうだな」

時任「ぬゎにいっ!?」

坂上「とりあえず俺には打順回るだろうし、確かめるか…。一巡目は」



 バシィッ

<ストライク、バッターアウトぉっ!!

阿部(これで二者連続奪三振…。でもって、クリーンナップ――)

坂上「さて…」ギュッ

阿部(真っ向勝負でいくよ、久遠くん)

久遠(ああ、燃えるな!)



 下1 久遠っ!!

 1~3 当てられたけど超絶好調の久遠勝利や
 4~6 打たせて取ることもできるで
 7~9 1回時点で投手力は(無失点ていう意味で)互角かな?


 ビシュッ
 ギインッ

阿部「ファースト!」

 パシッ

<アウト!

阿部(飛ばすつもりだったみたいだけど、力で勝ったね)

阿部「ナイピッチ、久遠くん」

久遠「ああ」

田中「こら久遠! 打たせないとつまんねーだろっ!?」

佐野「そうじゃ、ボケが」

久遠「ああ。悪い」

中井「こいつ悪びれてねえっ!?」

松坂「さすが久遠くん…」


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┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
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┃唐┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
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中井(俺からの打順か…)

中井(先頭打者として、出ておきたいな)

時任「きたなぁっ、3番から5番のやぁーつ!」

中井「っ…!」

時任「だが俺は負けねえぞっ! 3番から5番のやーつ!!」

中井(あの野郎…!)



 下1 中井ィッ!!

 1~3 中井さえ手が出ないとはな…
 4~6 ぐぬぬぅっ!
 7~9 中井ぃーっ!! 抱いてぇー!


時任「行くぞオラぁー!!」

 ビシュゥッ
 ズッバアアアアンッ

中井「っ…!」

中井(こいつ、やっぱやべえな…)

中井(速すぎるし…これが当てりゃあ、重すぎるんだろ?)

中井(つか阿部、よく当てまくったな…? これ、当てるのも至難の技だろ?)


時任「死にさらせゴラァッ!!」

 ビシュゥッ
 ブンッ
 ギンッ

<ファール!

中井(手が痺れるんじゃね、これ…?)プラプラ


時任「だぁらー!」

 ビシュゥッ
 ズッバアアアアンッ

<ボール!

中井(もうけっ!)

時任「死ねぇっ!!)

 ビシュッ
 ズッバアアアアアンッ

<ストライク、バッターアウト!

中井「っ…」



松坂(一死ランナーなし…)

松坂(まともに打てたのは、久遠くんだけ…)

松坂「…」

時任「殺す気でいくぞぉっ、デッドボールになんなよぉっ!?」

松坂(殺す気っ!?)

 ビシュゥッ
 ズッバアアアアアアンッ

<ボール!

時任「何でだぁーっ!?

松坂(手が、出なかった…)



 下1 vs時任!!

 1 フォアボール、狙う
 2 当てられるかなあ?
 3 力負けしちゃしょーがないから、強振で…



松坂(と、とにかく…当てたところで、生半可じゃ力負けしちゃうだろうし…)

松坂(思いきり振ってこう…)

時任「うおらぁっ!!」

 ビシュッ

松坂(振る!)

 ブンッ
 ズバアアアアアンッ

<ストライーク!


<松坂ぁーっ、思いきりボール球だぞー!?

<スイングだけはいいぞ、スイングだけはー!

<思いきりいけー!


松坂(やっちゃった…)

松坂(み、見ていかなきゃ、ダメだよね…)



 下1 vs時任!!

 1~3 思いきり振ったのに、サードフライ…
 4~6 二遊間に止められた…
 7~9 やったぞ! シングルヒットだけど打てた、ちゃんと!


時任「打ってみろやァッ!!」

 ビシュゥッ
 ブンッ
 ギィイイインッ

松坂(重いっ…! 振り切れなかった…!)

時任「サードぉっ!!」

 パシッ

<アウト!


松坂(すごい、重かった…)

松坂「やっぱりすごい…」

時任「見たかぁーっ!? エース松坂、打ち取ったりぃっ!!」

<勝ち誇るの早いってえの!!




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┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
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┃唐┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
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 今夜はここまでっす
 あざっした

おはよーごぜーます
やりませうか? おるかいのう?


阿部(2回裏の先頭打者は、唐栗の4番遠野――)

阿部(まあでも、今日の久遠くんはかつてないほどの好調っぷりだし、深く考えないでもいいか)

阿部(…いや、あっちは速球には馴れてるだろうしな)

阿部(ミットで受けたわけじゃないから比べたことはないけど、ボールの重さだけは久遠くんが負けるだろうし…)

阿部(慎重にいっておいた方がいいか)


遠野(県本戦ではあまり投げさせてもらえなかった印象だが…)

遠野(まさかこの試合のために温存?)

遠野(…投手としての能力なら、エースナンバーはこれのはずだが、何か抱えてるのか…)

遠野(それとも秋の関東大会まで登板できなかった理由と関係があるのか…)


久遠(何でもなげてやる)

久遠(打たれるつもりは、毛頭ない)

阿部(それじゃ、やろうか)



 下1 久遠!

 1~3 唐栗の4番しゅごいの…
 4~9 超絶好調ですからね!


 ビシュゥッ
 ズバアアアアアンッ

<ストライク!

阿部(うん、この回でも調子はキープできてる)

阿部(さすがにこれなら、そうそう打たれはしないはず…と思いたいけど)チラッ

遠野(速さは時任と似たようなもんだけど…コントロールがある分、厄介か?)

遠野(だが裏を返せば捕手の思う通りに投げてくる。意味分からんとこにいきなり投げ込まれることはない…)スッ


阿部(ベースに寄ってきた…)

遠野(これでインコースへ投げられるか? それとも…)


久遠「…」

 ビシュッ

遠野(インコース――)

 ズバアアアアアンッ

<ストライク、ツー!!


遠野(強気リードと、それに応じられる自信と能力)

遠野(いいバッテリーだが…怖さは時任の方が上だ)

 ビシュゥゥッ
 バッシィィィインッ

<ボール!

遠野(でもって、やっぱり2球続けてのストライクから、際どいとこを狙ってボール球)

遠野(次はカーブか、ストレートでゴリ押すか?)



久遠「…」

 ビシュゥッ

遠野(直球!)

 ブォンッ
 ギィイイイイインッ

<打ったぁー!?

田中「どぅらあああっ!!」バッ

 パシッ

田中(よし、捕っ――て何だこの打球の強さ!?)

 ボロッ…

<田中が捕りこぼしたぁー!?

<セーフ!

田中「ちぃっくしょー!?」

阿部(やっぱり、この打球の鋭さ、速さは脅威か…。無死でランナー一塁…でもって、ここで――)

時任「っしゃ来い、オラァっ!!」



 下1 久遠vs時任!!

 1~3 エンドランだとぅっ!?
 4~6 打たせてとりました
 7~9 空振り三振でっせ


時任「うおりゃああっ!」

 ブンッ
 バシィイイイインッ

<ストライーク!


時任「そぉーい!」

 ブンッ
 ズッバアアアアアンッ

<ストライク、ツー!


時任「クソったれボケカスゥッ!!」

 ブンッ
 ズバアアアアアアアアンッ

<ストライク、バッターアウトぉっ!

時任「っ…!! っ…! っ!!!!?」

阿部(投げるのと一緒で豪快なスイングだけど、そんなの久遠くんのコントロールならかわせるよーっと)



 下1 このままこの回いけちゃうか

 1~3 うおっと、足にちょっと翻弄された
 4~6 阿部くんの肩が光った
 7~9 余裕だぜぃっ!


阿部(さあ、ここからもどんどん三振狙おうか)

久遠「…」ゴゴゴ

遠野(…揺さぶれるか?)ジリ


阿部「…」

久遠「…」ゴゴゴ

 ビシュゥッ
 ダッ

<ランナー!

 ズバアアンッ

<ストライーク!

阿部(左打者邪魔っ…!)ブンッ

 ズザァッ
 バシッ

<セーフ!


<うおおっ!?

<阿部が間に合わなかった!?

阿部(カーブだったから尚更ね…。しかしあの4番、走れるなあ…。もうちょっと遅ければ刺せたのに)

久遠(盗塁か…。だがファーストランナーよりかは、気にしないで済むからな…)


 ビシュッ
 ズッバアアアアアンッ

<ストライク、ツー!

遠野(微塵も動じないか…。時任ならボロが出る場面だったが…)


 ズバアアアアアンッ

<ストライク、バッターアウト!

久遠(三盗はなかったか…。だが、4番が走ってくるとなると…ここからも警戒した方がいいのか…?)

阿部(うーん…左打者が絶妙に邪魔だったからなあ…。刺せたのに。刺せたのに…)


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┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
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┃新┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
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┃唐┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
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 下1 下位打順!

 1~3 んー、やっぱ時任やべーわ
 4~6 おおっ、四球でランナー出た場面で田中か
 7~9 いいぞいいぞ、2連続四球で田中や!


 下1 0コンマ判定

 偶数 3連続四球ですか、そうですか!? でも打順的に阿部くんなんよね…
 奇数 当てても飛ばない、当てるのもむずい豪速球…。加えて変化球を投入ですか…?


 ギインッ
 バシッ

<アウト!

<何だよ全然飛ばねえし!?


 バシィッ

<ストライク、バッターアウト!

<そもそも当たらねーしぃっ!?


田中(っしゃ、二巡目…。こっからなら、いけるだろ)

田中(ただ速いだけ、ただ速くて重いだけ。タイミングさえ掴めればいける!)ギュッ

 ビシュッ
 ズバアアアアアンッ
 ブンッ

田中(振り遅れた…! 恥ずかしい!?)


 ビシュゥッ
 ズッバアアアアアンッ

田中(よし、よし…タイミングは分かってきた)

田中(あとは力負けしねえように振り抜いて…レフト方向へ)ギュッ


 ビシュゥッ

田中「んんっ――!?」

 グィンッ
 ズッバアアアアアアアンッ

田中「曲がっ…スライダーっ!?」

時任「どーだ見たかオラボケカスがぁっ!!」


田中「マジでかー…」

田中(あんなん阿部も言ってなかったし…ここまでとっておいたのかあ?)


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┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
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┃新┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
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┃唐┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
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阿部(下位打順、余裕! ……とは思わないよね、久遠くん?)

久遠(下位打順…奪三振を稼げるな。全力だ)ゴゴゴ

阿部(……うーん、こっちの意図とは違う部分で燃えてそう)

阿部(ま、いいんだけどね)



 下1 奪三振大好き久遠くん

 1~3 ちぃっ、奪三振1つか
 4~6 奪三振2つな
 7~9 3者連続ですかそーですか…


 ズバアアアアンッ

<ストライク、バッターアウト!


 ズッバアアアアンッ

<ストライク、バッターアウトぉっ!


 グンッ
 ブンッ
 バシィイイイッ

<ストライクバッターアウとぉっ!!


阿部「ナイピッチ」

佐野「打たせろ!」

田中「つまんねーだろっ!?」

久遠「悪い」

中井「やっぱ悪びれてねえ、こいつ」

松坂(投げたいなあ…)


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┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
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┃新┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
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┃唐┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
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阿部(試合に動きはないけど、もう4回表になっちゃったのか…)

阿部(さーて、粘れるかな? 春からは6回まで投げきりってスタイルではなくなってきてるし…スタミナも多少はつけてるんだろうな)

阿部(だからこそ、少しでも多く投げさせて早めの降板をさせたいけど…)

時任「死んどけぇっ!」

 ビシュゥッ
 ズバアアアアアアアンッ

<ボール!

阿部(…速いなあ、相変わらず)



 下1 阿部ぇっ!!

 1~3 苦手やし…
 4~6 粘るまではね、できるんよ
 7~9 さす阿部なのか、そーなのか?


 下1 0コンマ判定

 偶数 四球選んでから、さっき刺せなかった分とばかりに単独スチールを成功させちゃいました
 奇数 その時、阿部の右手に衝撃奔る!?


 ビシュゥッ
 ブンッ
 バシイイイイイインッ

<ストライーク!


時任「オラオラ、まだいくぜぇっ!! ボール返せぇっ!!」

阿部(速いよ、やっぱ…。あと2球、見たい。スライダーもあったけど、緩急の変化球じゃないからな)

時任「うおらあっ!!」

 ビシュゥッ
 ブンッ
 ギイインッ

<ファール!

阿部(重い…! けど、今のでもまともに飛ばない…)

阿部(リストだけじゃなくて、体重を使って、重心を意識して振り抜く…)


 ビシュゥッ
 ズバアアアアンッ

<ボール、ツー!

阿部(……スライダーがくるか? でも彼の性格的に直球で押し切りたいはず)

阿部(ここまでずっとスライダーを投げなかったのは、何か問題があるって可能性もあるし…)

阿部(直球に絞って、打ち抜く)


 ビシュゥッ

阿部(直球!)

 ブンッ
 ガギィイインッ

阿部「~っ…!?」ダッ

<オーライオーライ!

 パシッ

<アウト!

阿部「っ…」

阿部(……痛い…。手首が…。でもこれくらいなら…隠し通せるはず)

久遠「大丈夫か、阿部? 手」

阿部「え?」

久遠「ぷらぷら振ってたろ」

阿部「うーん、力入りすぎちゃってね」

久遠「そうか」



 下1 久遠vs時任!

 1~3 ぬぬぅっ
 4~6 スライダーか…
 7~9 また打ちよったぞこいつ


 ビシュゥッ

久遠(直球!)

 ブンッ
 ギイインッ

<また久遠が打ったぁー!!

<けど、あれはサードフライ!? …だった!?

久遠「ふむ…」

時任「見たかゴラァッ!」

時任「でぇもって、親玉来いオラぁっ!」

佐野「誰が親玉じゃ…頭わいとるんか」ボソ


佐野(スライダーは田中に投げた1球こっきり…)

佐野(久遠め…。こんだけ荒れとる投手じゃっちゅうんに、初球から打ちにいくやつがおるか、ドアホめ)

佐野(こういうタイプの投手は阿部がやろうとしたように粘って空回りさせんのがええんじゃ)


時任「いくぞ親玉ァッ!」

 ビシュゥゥッ
 バシイイイイインッ

<ストライーク!

佐野「ストライク先行ができるたあ、ちいとは進歩したようじゃのう?」

時任「ぬゎんだとぉ…?」

佐野「ええわ、ええわ。ほなら怖くないからのう」ゴゴゴ

時任「っ!!?」カチン


佐野(ほれ、力入ったじゃろう。四球でも、甘い球でもええぞ。空回りせえや、ボケが)ゴゴゴ

時任(舐めやがってぇ…!!)



 下1 佐野vs時任!!

 1~3 ぬぐぐ…
 4~6 佐野、四球を選ぶ
 7~9 さす佐野


 ビシュゥッ
 ズバアアアアアンッ

<ボール、スリー!

佐野(おうおう、あっちゅう間に1-3か。ド単純じゃのう)

佐野(でもって5球目、ここで弱気になる投手とちゃう。いっちゃん自信のあるストレートを、打てるもんなら打ってみいとばかりに投げやすいとこへ放る)

佐野(――てえ、とこじゃろう? 阿部じゃのうても、読めるわ!)


時任「クソったれ親玉ぁっ!!」

 ビシュゥッ

佐野(きよったわ、こいつ――)

 ブゥウウウウンッ
 カキイイイイイインッ

時任「んなぁぁっ……!?」

<佐野が打ったぁー!

<しかも今度はちゃんと飛んでるぅー!?

<さすが佐野だぜぇー!

<見たか、うちのキャップをっ!!



佐野(ちぃっ…柵越えにはならんか…)

佐野(じゃが、中井なら一打で返せる確率も高い)

佐野(最悪、松坂に回ってもどうにかするじゃろう、あのドアホなら)



中井(佐野が作ったチャンス、俺が打つ)

中井(俺が作ったチャンスで佐野に打ってもらったのは少なかったけど…!)

時任「ぐぅんぬっぬぬぬ…ガルルルル!」

中井(唸ってる!?)



 下1 中井ィッ!!

 1~3 ちくせう
 4~6 手堅く送った
 7~9 中井が活躍してるよぅ…


 下1 0コンマ判定

 偶数 お、崩れかけてるのか? 中井に四球や
 奇数 ピンチになって時任のギア上がった…?


時任「ガァルルルル…!!」

中井(…猛獣?)


坂上「藤二、唸るな。お前が弱いから打たれてんだよ!」

時任「なぁんだとぉっ!!?」

坂上「投げるのに集中しとけっ」

時任「ぐぬぬぬ…! おうおう、そーですかあ、お前らにファインプレーなんざさせねえ、から、なあっ!」


 ビシュゥゥッ

中井「っ!?」

 ズバアアアアアアアンッ

<ストライーク!!

中井(おいおい…何だ、今の?)

中井(前の打席よりも圧が強いっつうか…)


時任「死ねボケイケメンがぁっ!」

 ビシュゥゥッ
 ズバアアアアアアアアンッ

<ストライク、ツー!


中井(しかも2球続けてのストライク…!? こいつ、佐野との勝負で崩れかけてなかったか!?)

中井(見れるか、でも――)

 ビシュゥゥッ
 ズバアアアアアアアアッ

<ストライク、バッターアウトっ!

中井「っ…!」

中井(おいおい…見る時間もねえ速さってどうよ…?)



松坂(佐野くんが二塁にいたのに、中井くんが見送り三振…?)

松坂(……何だか…さらにすごくなってるような気がする…)

時任「さあ、勝負だ。ブッ潰れろぉっ!!」



 下1 松坂ァッ!

 1 四球狙いでさ
 2 打とう、打たなきゃ
 3 当ててこう


 ビシュゥッ

松坂(打たなきゃ――!)

 ブンッ
 ズバアアアアアアンッ

<ストライーク!

松坂「っ…」


松坂(速いからって、早いタイミングで振りすぎた…)

松坂(ちゃんと見つつ…)

 ビシュゥッ
 ズッバアアアアアアアアンッ

<ボール!

松坂(………速い)

松坂(振らなきゃ当たらないけど…タイミングが…)


時任「オラオラオラァッ!」

 ビシュゥッ



 下1 松坂ァッ!

 1~3 空振り三振…
 4~6 飛ばなかったよ…
 7~9 あ、四球


 ギインッ

松坂(重いぃっ…! 内野フライ…!)

時任「どーだ、見たかぁっ!?」パシッ

松坂(ピッチャー、フライ…)


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┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
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┃新┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
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┃唐┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
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長島(やはり、投手戦か…)

長島(松坂が控えている分、久遠はのびのびと調子良く投げられている…)

長島(投手の交替で変化をつけるか…? しかし、唐栗クリーンナップを抑えきれている久遠をレフトへ下げるのは賭けになるな)

長島「…」


阿部(……まだ、右手の痛みがまだひかないな…)

阿部(できるだけランナーを走らせたくはない…。久遠くんの希望通り、三振狙いで振らせていくか…)

阿部(でもこの回、3番の坂上までは回る…)

阿部(そろそろ唐栗も、久遠くんを捉えてくるかも知れないけれど…)



 下1 まだまだイケるって!

 1~3 しかし徐々に捉え始められてるような…?
 4~6 大丈夫、クリーンナップ以外はまだ
 7~9 何せ超絶好調ですから



 ズバアアアアンッ

<ストライク、バッターアウト!


 ブンッ
 ズッバアアアアアンッ

<ストライク、バッターアウトぉっ!


阿部(さすがだね)

久遠(まだまだいける。スタミナは気にしない)ゴゴゴ

坂上「さあって…攻略しにいきますか」

阿部(出たなぁー、ピッチャー返しくん)

坂上「…」チラッ

阿部「ピッチャー返しはよしてね?」

坂上「…まあ、当てるつもりではな」

阿部(いい子ではない、か…。いい子なら、ピッチャー返しすまいと変なバッティングしてくれるかと思ったけど。ま、そうだよね)



 下1 久遠vs坂上!

 1~3 初球打ちっ!?
 4~6 粘ってきやがったか…
 7~9 さす久遠


 ビシュゥッ
 ギインッ

阿部「!?」

<でかいぞ、ライト…!?

<落ちるなぁー!?


<ファール!


阿部「ふぅ…」

阿部(初球から打ちにきて、キレてくれはしたけどライト方向へ流し打ち…)

阿部(目が馴れるのはさすがに速いし、さすがに速球慣れしてるのかな…?)


坂上(速すぎたか…)

坂上(コントロールがいい分、ヤマは張れる)

坂上(けどその分、待ってるのと違うコースだと難しくなるな)

坂上(時任と違って重みはそこまでじゃない。時任と同じように、反射的に打ち返すしかないか)


阿部(カーブを混ぜるか…。いや、まだストレートでいけるはず)

阿部(久遠くん、コーナー突くよ)

久遠(ああ)



 下1 ま、まだ攻略には速いさ…

 1~3 ツーベース打たれた…
 4~6 辛くもアウトにできた
 7~9 さす阿部なのか?


 ビシュゥッ
 ギインッ

<ファール!

久遠(また…。今度は引っ張ってきたか)

阿部(ファールで打ち分けるってどうなんだか…)

阿部(でも、やっぱり速さには馴れてきてるようだね)

坂上(荒れまくりの速球と、コントロールのある速球と…。どっちが面倒なんだかな…)

坂上(だが次は打てそうだな。あとはコース次第。どうくる?)

阿部(低めに今度は外すよ)


 ビシュゥッ
 ズバアアアアンッ

<ボール!

坂上(低め…低すぎのボール球か…)

坂上(読みにくい…。やっぱこの捕手、いいリードをするな…。次はどうくるんだ?)


阿部(今度はアウトハイいっぱい、ゾーンに!)

 ビシュゥッ
 ギイインッ

<またまた当ててきたー!?

<綺麗なセンター返しっ…!?

阿部「大丈夫――。そこはイケメンのテリトリーだから」

中井「うおおおおおおっ…!」ダダダッ

坂上(足が速いな、やっぱ…!)ダダッ

 パシッ

<アウト!

<なーかーいーっ!!

<愛してるぞぉーっ!

中井「よし、チェンジ!」

松坂「中井くんすごいね、やっぱり…」

中井「お前の方がすげえよ。胸張れ、レフト」

松坂(レフト…)ズゥーン


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┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
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┃新┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
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┃唐┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
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 下1 新摂は下位打順から

 1~3 連続凡退
 4~6 四球は出始めてるけど…
 7~9 四球2つから田中でっせ! そろそろいいとこをさ


<ストライク、バッターアウト!

<ああ~っ…

<やっぱ時任やべえな…!


阿部(大丈夫、次のこっちの打撃で…そろそろ田中くんが出塁してくれるはず)

田中(打・ち・て・ええええっ!!)


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┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
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┃新┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
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┃唐┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
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阿部(得点も大事だけど…4番遠野、5番時任が続くこの回の守備…)

阿部(坂上があれだけ馴れてきてたってことは、4番の遠野はもう…?)

久遠(いける)

阿部(投手がやる気満々なのに、捕手が弱気にはなれないよね)

阿部(さぁって、攻めてくよ)



 下1 久遠vs遠野!

 1~3 うげえっ!?
 4~6 打球が強烈すぎんよ…
 7~9 よしよぉーし


阿部(カーブはあえてここまで少なめにしてきた…)

阿部(直球だけでこれだけ三振を稼いできてる)

阿部(だからこそ、ここで初球――カーブ!)

 ビシュゥッ
 グインッ
 ブンッ
 バシィィッ

<ストライーク!

遠野(初球カーブか…!)

阿部(それも内から膝元へ入っていく絶好のね)

阿部(しっかり軌道は見てもらえたかな? 体に染みついた、その軌道を利用させてもらう!)


 ビシュゥッ
 ズバアアアアアアンッ

<ストライク!

遠野(アウトロー、いっぱい…)

遠野(今のは手が出ない…)

阿部(さあ、ここだよ。高めへボール球。打ち上げろ――!)


 ビシュゥッ
 カキイイインッ

阿部「よしっ、レフト!」

松坂(こっちきた…!?)タタッ

中井「いいぞ、そこだ…!」

松坂「っ…!」パシッ

<アウト!

松坂「ふぅっ…ちゃんとフライ捕れた…」


時任「なっさけねえなあ、うちの4番はよぉっ!」

時任「ここは一発、俺様が流れを作ってやるよォッ! 死ぬ覚悟はできてんだろーなあっ!!?」

阿部(大丈夫、得点圏にランナーのいる場面では恐ろしいけど…そうじゃなければ…)



 下1 久遠vs時任!

 1~3 嘘んっ!?
 4~6 ゴロでアウト
 7~9 三振だぜぃ


 ビシュゥッ
 カッキイイイイインッ

阿部(嘘っ、今のアウトローのボール球だよっ!?)

時任「絶好球だぜぇ、おおーい!?」ダダダッ

阿部(右中間――)

<落ちたぁっ!?

中井「クッソ…!」ダダダッ

<中井、ボール2つ!


中井「死んどけぇっ!」ビシュゥッ

時任(センターの肩は強い、にしろぉっ…!!)ダダダッ

 ダンッ
 ズザアアアアアッ

<セェーフ!

時任「どぉーだ、オラぁっ!? 腑抜けはガンガン代打出すぞぉっ!?」

<調子乗るな時任!

<お前に代打出せる権利ねえよっ!



阿部(まさか、考えなしで打ってきたのかな…?)

久遠(ツーベースか…。だが、マグレだな。俺には分かる。あれは考える打者じゃない。振り抜いたバットが、偶然当たった)

阿部(にしたってボール球を綺麗に打ち返してきたからなあ…)

久遠(阿部、サインを出せ)

阿部「…」



 下1 一死ランナー二塁ですが…

 1~3 久遠がピンチを
 4~6 阿部くん、慎重になりすぎた…?
 7~9 クリーンナップ以外は恐るるに足りず!


阿部(……うん、大丈夫)

阿部(投手を信じてサインを出すのが、俺の役目)

久遠(それでいい――)

 ビシュゥッ
 ズバアアアアアアンッ

<ストライーク!


時任「オラ、打てぇい! 打たねえと俺が帰れねえだろーが!!」

 ビシュゥッ
 ブンッ
 ズッバアアアンッ

<ストライク、ツー!

時任「何でそう打つっ!? こうだろ、こうっ!?」


阿部(いいよー、その煽り。センスだけじゃ打てない選手の方が多いんだ)

阿部(ただ振り回すだけで打てるもんなら――)

久遠(打ってみろ…!)

 ビシュゥッ
 ブンッ
 ズッバアアアアアアンッ

<ストライク、バッターアウトっ!


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┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
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┃新┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
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┃唐┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
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長島「田中」

田中「っす!」

長島「お前の役目は何だと思っている?」

田中「役目…? 打つことっす!」

長島「違う」

田中「違うんすかっ!?」

長島「塁へ出ること。それがチームで1番うまいから、お前は1番打者に置いている。結果を出せ」

田中「! ……うっす」



 下1 田中、そろそろ…

 1~3 ぐぅぬぬぬぬん…!
 4~6 惜しかった…
 7~9 た・な・かぁーっ!


田中(速くて重い…。打ちづらいことこの上ねえし…)チラッ

田中(見た感じ、バント警戒もかーなーり、強い…)

田中(だからセーフティはやべえって思って、控えてたけど…やっぱ俺はこれだな)スッ

時任「バントなんざぁっ!」

 ビシュゥッ
 カツンッ…

<ファール!

時任「させるはずが、ねえーんだよぉっ!!」

<ああっ!?

<田中がバント失敗かよ…!?


田中「…」スッ

<またバントの構え!?

<大丈夫かよ、田中ぁっ!?


田中(知ってんだよ、バントもむずいってのは…)

田中(だけど、だからこそやるしかねえだろ? 俺は不動の1番打者、やるしかねえんだ)ゴゴゴ

時任「ハッ、いーいぜえ? やってみろ、相手してやんよぉっ!!」

 ビシュゥゥッ
 ググッ

田中(スライダー!)スッ

 ギインッ

時任「なっ、バスター!?」

<スライダーを狙い打ちかっ!?

<しかもバスターでぇっ!?


田中「だぁーっはっはっはー!! 直球よか断ぜん軽いぜぇっ!!」

<セーフ!

<田中ぁーっ!

<いいぞ田中、すげえぞー!!


阿部(さすが田中くん…。スライダーに狙いを絞って、最初からバスターのつもりで…)

阿部(……監督から、盗塁のサイン? それも初球でか。ま、確かにここからやってかないとね)

阿部(でも…)ズキッ

阿部(俺にやれることは…)



 下1 いけるかっ!?

 1~3 送りバント失敗? 田中の盗塁警戒が超厳しくなったし…
 4~6 盗塁は成功! あとは阿部だが…?
 7~9 エンドランが大成功!? 狙い打ちは阿部くんも得意だしね


 下1 0コンマ判定

 偶数 うお、エラー絡んで先制点きちゃった
 奇数 阿部が2連続奇数て… アカンぞぃ…?


田中(初球…)

阿部(田中くんが走る…エンドランを、絶対に成功させる…)

時任「死ねぇっ!!」

 ビシュウッ

阿部(重心で、打ち抜く!!)

 キイイインッ

時任「ぬゎにいいっ!!?」

<阿部が打ったぁー!?

<しかも綺麗にっ!

<でもセンター真正面じゃねえかっ!?

阿部(ヤバいか、あそこは…!?)

田中(戻るべきか、でもっ…!? クサいけど落ちたんなら、一気にいけるようなぁっ…!?)


<センター飛びついたぞっ!?

<いやっ…捕れてねえっ、いける!

田中「うおっしゃああオラぁああああああ―――――――――――――――――っ!!」


中井「うおぉっ! 田中、いけいけぇーっ!!」

加賀「阿部せんぱぁーい! すげえっすー! あと田中先輩の足もやべぇーっ!!」

佐野「エラーだがの」

松坂「でも、帰れるかもっ…!」


<ランナー三塁蹴ったっ!

<センターがまごついた隙にいけぇっ!

田中「俺をセーフティだけの、男とぉっ…!」ダダダッ

<バックホォーム!

 ビシュゥッ

田中「おーもうなぁあああああっ!!」

 ズザアアアアアアアッ
 バシィッ

松坂(どっち…?)

<セェーフ!

加賀「うおおおおおおおおっ!?」

中井「エンドランから、エラー絡んでっ、一塁ランナー帰還っ!?」

松坂「な、何か運が回ってきたっ…!?」

佐野「エラーじゃがのう」

田中「どーだ、これが俺の実力でぇい!!」

時任「くっ…ぐ、ぬ、ぬぬっ…ガルルルル…!!!」



 下1 久遠vs時任!!

 1~3 追加点をやるかっちゅう執念ピッチングよ…
 4~6 劣勢になったのにこれか
 7~9 打ち込め、やったれぇい!


久遠「さらに追加点、いけるな」

時任「…ハッ、燃えるなあ?」ゴゴゴ

久遠「こい」ギュッ


時任「どぅらあっ!!」

 ビシュゥゥッ
 ギインッ

<ファール!

久遠(よし、当てられる)

時任「チィッ…」


時任「死ねぇっ!」

 ビシュゥッ

久遠「っ…!」ピクッ

 ズバアアアアアンッ

<ボール!


久遠「ふぅー…」

時任「振れよ、オラ…。追加点なんざ、やらねえけどなあっ!!」

 ビシュゥッ
 ギイインッ

<くおーん!!!

<引っ張ったぁーっ!!?

時任「ガァルルルルル…!!」


<無死一三塁っ!

<ここで佐野だぁっ!! 打ってくれぇーっ!


佐野(確かにこれとないチャンスじゃが…)

阿部(この投手はここで、ガンガン投げられる。そういう強みがあるよ)

佐野(まあ…その方が楽しめそうなもんじゃがのう)ゴゴゴ

時任「ここで親玉か…。面白えじゃねえかよ、おい」



 下1 佐野vs時任!!

 1~3 ゲッツーだとぅっ!?
 4~6 佐野っちが打てへんか…
 7~9 さす佐野。追加点


時任「親玉さえ殺しちまえばいいだけだぁっ!!」

 ビシュゥゥッ
 ズッバアアアアアアアンッ

<ストライーク!

佐野(やっぱ…こっからが強いタイプじゃのう)

佐野(じゃがストライク先行そのものは珍しいことじゃあない。次も見極めるか)


 ビシュッ
 ズバアアアアンッ

<ストライク、ツー!

佐野(…開き直ってるか?)

佐野(相変わらずコースはバラついとるが、球威はある)

佐野(むしろ増しとるくらいか? スライダーもあったのう。何でくる?)


 ビシュゥッ
 ブンッ
 バッシィィィッ

<ストライク、バッターアウト!

佐野「ちぃっ…」

時任「ハハハ、どーだよ、オイ? 親玉ぁ…」ゴゴゴ



中井(佐野が打てなかったか…。一死一三塁…。タッチアップになってもいい、振り抜いていくか)

中井(それともスクイズ? 監督は…)チラッ

中井「…よし」



 下1 中井ィッ!

 1~3 ちくしょ、三振…
 4~6 あ、死球…
 7~9 スクイズ成功


中井(犠牲フライでもいい、長打狙い…)

中井(監督は俺なら、時任相手でも長打を狙えるって期待してくれてるか…)

中井(そんなら、応えるだけだ)

時任「来たなぁ、イケメン?」

時任「そのきれーな顔面、ぐっちゃぐちゃになっちまえぇっ!!」

 ビシュゥッ
 ズバアアアアアンッ

<ボール!

時任「マァジでかっ!?」


中井(速いけど、体は馴れてきてる…大丈夫だ)

中井(いける)

 ビシュゥッ
 ギンッ

中井「っ…」

<ファール!


中井(阿部はあのガタいで飛ばせたのに、俺はダメだってか…?)

中井(畜生、余計な力は抜け。でもって、集中――)

時任「ぅおらああっ!!」

 ビシュゥゥッ
 ブンッ
 ズバアアアアアアンッ

中井「~っ…」

時任「触れるとか思ったかあ?」ゴゴゴ

中井(破格の投手だな、やっぱ…)


中井「松坂、二死だけどチャンスだ。いけよ」

松坂「う、うん…」



時任「追加点はやらねえぞ?」ゴゴゴ

松坂(圧すごい…)

松坂(けど…ここで、と1点あれば久遠くんも楽になれる…。あわよくば、登板くるし…)

松坂(ここは、打ちたい…!)



 下1 松坂!

 1 ご自慢の速球に狙いを絞って
 2 スライダーこい、スライダーこい、スライダーこい
 3 ノーコンピッチャーなんだし…冷静に、見ていこー


松坂(あの豪速球は、どうすれば打てるんだろう…?)

松坂(中井くんは当てたけど飛ばせなかった…。田中くんはスライダーを狙い打った…)

松坂(でも阿部くんはセンター返しができた…)

 ビシュゥッ
 ズバアアアアンッ

<ストライーク!

松坂(阿部くん、背も高くないし…体も細い方なのに、ちゃんと打ててた…)

松坂(…腕力じゃないんだ。腕力じゃなければ…体の使い方?)

松坂(体の使い方…)

 ビシュゥッ
 ズバアアアアアンッ

<ボール!

松坂(スイングの重心移動…?)

松坂(あとはタイミングさえ合えば…)

 ビシュゥッ
 ズッバアアアアアアアンッ

<ストライク、ツー!


松坂「え、ストライクツー?」

松坂(いつの間にっ…? ていうか、もう3球もっ…?)

阿部(あれれー…松坂くん、大丈夫…? 打撃に集中して欲しいんだけどなあ…)

松坂(と、とにかく、タイミングを合わせて、腕力じゃなくて重心で…直球を、打ち抜く!)



 下1 松坂ァッ!! ハングリー:+1

 1~3 三振
 4~6 ゴロか…
 7~9 さす松


時任「死ぃねえええええっ!!」

 ビシュゥッ

松坂「ふっ…!」

 ブゥンッ
 カキイイイイイインッ

時任「っ…!?」

<ま・つ・ざ・かーっ!!!

<いいぞ松坂ぁーっ!

<お前サイコーだぁっ!!


松坂(打てたっ…ちゃんと打てた…!!)

<松坂、二塁いけっ!

松坂(二塁っ…!)ダンッ


<セーフ!!

<うおしゃあああああっ!!

<さらに追加点、二死二三塁ッ!!


松坂(打ったバットの感触が、快感…)ホクホク

松坂(それにこれなら、登板させてくれるかも…!)バッ

松坂「…」キラキラキラ

長島(松坂の目が、輝いている…)

長島(アピールか、アピールなのか…?)



 下1 アピール届く!?

 1~6 監督の鬼、悪魔、勘違いダンディー!!
 7~9 届いた


 下1 0コンマ判定

 偶数 あと1イニングで交替って!! やる気、高まってきました
 奇数 でも久遠が超絶好調なんだもの… 失点したらね、って


松坂「…」チラチラッ

長島「…何だ、松坂?」

松坂「え、ええと…あの…」

阿部「投げたいそうでーす」

長島「そうか」

松坂「!!」

長島「……だが、久遠が今日はかなり調子いいからな」

松坂「!?」

長島「久遠が失点したら上げるぞ」

松坂「っ…」

阿部「かと言って、エラーしたら怖いよぉ~?」

松坂「」


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃2 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃唐┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻


久遠(失点したら、か…)

久遠(裏を返せば無失点なら完投)

阿部(完投となれば久遠くんのスタミナは、やや不安だけど…2点リードだからね)

阿部(大丈夫、いけるよ。松坂くんには悪いけど)



 下1 久遠!!

 1~3 む、ピンチ…
 4~6 捉えられてきてるものの
 7~9 よゆう!!


 キィンッ

田中「うおっしゃ!」バシッ

<アウト!


阿部(当ててきてるな…)

田中「いいぞー、久遠! これぞチームプレー!」

佐野「サードにも打たせろドアホ!」

久遠「いや、打たせない」ツン

阿部(打たせて取った方が長く投げれるかもなんだけどねー)

松坂(レフトにきてほしいような、きてほしくないような…)


 ビシュゥッ
 ギンッ

<ファール!

 ビシュッ
 キインッ

<ファール!

阿部(当ててきてるな…)

久遠(押し切れる…!)


 ビシュゥッ
 キインッ

松坂(レフトきたっ…!?)

中井「落ち着け、単なるフライだぞっ!」

 パシッ…

<アウト!

松坂「ほっ…」

松坂(あっ、今の捕れてなかったら投げれるチャンスだったかも――いやいやいやいや、ダメダメダメ、そういう考えダメ…)

松坂(久遠くんだって僕が投げてる時、ちゃんとレフト守ってくれてたんだから…うん。しっかり集中して、守ってあげないと)


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃2 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃唐┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻


阿部「いよいよ7回か…」

佐野「時任は替わるかのう?」

阿部「さて…?」


 下1 替わるのか?

 1~3 替わった…! 時任の陰にかくれがちだけど悪くない投手やで
 4~6 うーん、まだそう制球も球威もそう落ちてないしなあ…続投か
 7~9 そろそろ崩れそうなもんだけど続投か…どう響くもんか…


阿部「…あ、時任出てきた」

佐野「ちぃっ。あれの後ならちょっと速い程度は打ちごろかと思ったんじゃがのう」

中井「スタミナ、鍛えてきてんのかもな…」

阿部「そりゃね。オフはどこの学校も体作りはするでしょ」

田中「そのついでにスタミナアップてか?」

佐野「手応えあってええじゃろう」


 下1 下位打線だかんね…

 1~3 時任早く崩れろよぅ…
 4~6 ちょいちょい、四球も出てんのにな…
 7~9 よしよし、フォアボール多いぞぉー


 ビシュッ
 ズバアアアアアンッ

<ボール、フォア!

阿部「お、2連続だっ」

中井「一死ランナー二三塁で田中か…」

佐野「替え時間違うたのう、唐栗は」

久遠「…だが、ここから見てる限り球威は衰えてないからな」

阿部「一気にいきたいとこだね…」



時任「ガルルル…」

坂上「唸るな、ノーコン! もともとだろっ」

時任「うるせえっ!!」


田中「っしゃ、来い!」

時任(思った通りに全然投げらんなくなってきた…)

時任(ボールに力は乗ってんのに、コントロールがさらに…)

時任(畜生め、こうなりゃド真ん中でも球威で押し切るか…!)



 下1 田中ァッ!!

 1~3 ゲッツー食らった…
 4~6 開き直りかよ…
 7~9 追加点ッ!


田中「ぅおらあっ!!」

 ギインッ

田中(まだ重いのかよっ!?)

 バシッ
 ビシュッ

<アウトっ!

田中「ちっくしょ――!」


<ゴー!

<三塁ランナーがスタートしたっ!?

<いっとけぇっ! エラー出るぞぉっ!!


 ビシュッ
 バシィッ

 ズザッ

<アウト!


松坂「ああっ…」

阿部「んー、リードしてるし、攻めておきたかったけどうまくいかないか…」

佐野「今のは無茶じゃろう…」

中井「ハマれば一気に崩せた可能性はあるけどな」

久遠「大丈夫だ。こっからも打たせない」

松坂(失点したら、交替…)


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃2 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃唐┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻


時任「意地で打て、意地でぇっ! あと根性とか、気合いとかぁっ!!」

坂上「そんだけで打てりゃいいよな」

遠野「どっかのバカは打てるんだろうがな…」チラッ

時任「何だその視線はあっ!? つーかお前ら、この回、打てよ?」ゴゴゴ



 下1 好打順でっせ、唐栗は

 1~3 うお、ランナー出て坂上…
 4~6 二者連続ヒットか…で、坂上と
 7~9 二死で坂上なら…


 キインッ

阿部(とうとうクリーンナップ以外に綺麗に打たれた…)

阿部(塁が埋まってれば、守りやすい場面だったけど…)

阿部(逆にやりづらいな、これは…。ここで3番坂上…)


坂上「…」ギュッ

阿部(久遠くん、ここから勝負だよ)

久遠(一死二塁でクリーンナップか…)

阿部(さあ、勝とう)



 下1 久遠vs坂上!

 1~3 1失点…
 4~6 一死一三塁に…
 7~9 坂上はアウト


 ビシュゥッ
 ギインッ

佐野(速い!)ダッ

<佐野がっ!?

<抜かれたぁーっ!!?


阿部(とうとう、捉えられてきた…)

阿部(いや、ここまで無失点だったのが良かったんだ。さすがに久遠くんでもスタミナ削られてるだろうしな…)

遠野「…一打逆転か」

阿部(ここで、4番遠野。依然、一死の状況なら、犠牲フライだろうがスクイズだろうが、5番の時任に回る…)

阿部(ゲッツーを狙いたいけど…そんな欲を出していい相手じゃない…)


阿部(一死一三塁…)

阿部(タイムリーなら同点…)

阿部(ホームランなら逆転…)

阿部(ここ、大事にね)


遠野(佐野、佐川…はまあ当然の注目度)

遠野(でもって俺は、そこから1個落ちる打者か…)

遠野(まあいいけど…長打だけがもてはやされるのは面白くない)



 下1 久遠vs遠野!!

 1~3 打たれて1失点した…
 4~6 タッチアップかよぉ…
 7~9 遠野アウトだぜ


遠野(4番のやるべきは、確実に点取って、確実にチームを勝利に導くこと)

遠野(ホームランで勢いづける場面ならそうする。だが一死一三塁なら、確実な1点を取る)

 ビシュゥゥッ
 カキイイイインッ

<ライト!?

<しかも深い…!

<間に合いそう――だけどっ!?


 パシッ

<アウト!

<ゴー!!

<中継してたら間に合わないだろっ!?

<でも中井ほどの肩もねえから中継しないと…!?


 ズザァッ
 バシィッ

<セェーフ!!

<1点返したぁー!!!


久遠「……っ…」

阿部(1点返された…しかもここで、5番時任)

阿部(二死一塁か――)


松坂(失点した…!! じゃ、じゃあ、出番――?)チラチラッ

長島「投手、交替だ」

加賀「えっ、久遠先輩下げちゃうんすかっ?」




松坂「久遠くん…」

久遠「…………まだ投げられる」

阿部「…」

久遠「…だから次にお前が失点されたら、俺がまたマウンド上がる」

松坂「えっ」

阿部「だってさ。この場面、切り抜けないとね、松坂くん」



時任「出てきたなあ、エース松坂ァッ!!?」

時任「さあ、久遠に続いてお前もぶっ飛ばしてやるッ!! 覚悟しろよぉっ!!?」

阿部(この場面で時任は怖い…。けどまだ1点リード。弱気になっちゃダメだよ)

松坂(打席でも、圧あるなあ…)



 下1 vs時任!!

 1 クロスファイアで押し切る!
 2 スピード勝負したら久遠が投げてた分見極められやすいからね、緩急使って惑わしてくよ
 3 得点圏じゃない時任なんて…さっき打たれたけど、翻弄してけばいいのさ


阿部(久遠くんがさんざん投げてたんだ)

阿部(球速で劣る松坂くんが、直球で押し込んでいくのはキツい)

阿部(だからその分、緩急主体に惑わすよ)

時任「オラ、ビビってんのかさっさと投げろォッ!」ゴゴゴ

松坂(緩急主体で…)

阿部(あとは俺のミットに、投げ込んできて!)


田中「打たせてけっ!」

佐野「2アウトじゃあっ!」

松坂「ふぅーっ…」


 ビシュッ

時任「うおっ…!?」

 ブンッ
 バシィッ

<ストライク!

時任「初球で…!?」

松坂(よ、良かったぁ~…チェンジアップ初球って怖いよ…)

阿部(いやいや、今の松坂くんのチェンジアップは怖いからね。スピードに対応しても凡打にできたよ)

阿部(むしろ空振りされたことの方が損かな)



 下1 松坂ァッ!!

 1~3 ピンチになってからが松坂やから…(震え声
 4~6 ははは、松坂のチェンジアップをひっかけおったで
 7~9 ばっちり緩急ハマったやで


阿部(でもって、2球目もチェンジアップいくよ)

松坂(またっ…!? だ、大丈夫…?)

時任「さっさと来い、ぶち殺ぉーすッ!!」


松坂(信じて…投げるしかないッ!)

 ビシュッ

時任(またかよ…!)グッ

阿部(待った――!?)

 ブンッ
 カクッ
 キインッ

阿部「サード!」

佐野「おうっ!」バシィッ

 バシッ

<アウト!

松坂「ふぅっ…」

時任「小癪なマネをぉっ…!!」

阿部「ナイピッチ。たった2球だったね。さすが松坂くん」

松坂「え、あ、うん…ありがとう…」

田中「何でこっちに打たせねんだよっ!」

松坂「ごめんなさい…」


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃2 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃唐┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃1 ┃ ┃ ┃ ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻



 下1 さて、唐栗は投手交替するのか…?

 1~3 さすがに交替されたか…
 4~6 うへえ…まだ投げんのかい…
 7~9 うわ、むこうベンチの言い争いすごい…あ、出てきた


阿部(続投かな…?)

佐野(いい加減降板じゃろうが…)

中井(あの強気だからな…)

松坂「…投手、やっぱり交替かな…?」

加賀「ふつーはそうなんじゃないっすか?」



<投げる投げる投げる投げる投げる投げるぅー!!

<バカアホ間抜けカス死ね身の程わきまえろ

<投げなきゃ死ぬ人殺し畜生監督

<死ね死ね死にまくれ


松坂「…何か…すごい言い争い…」

加賀「すっげー! 監督とめちゃくちゃ怒鳴り合ってる!?」

阿部「我が強いなあ…」

佐野「続投かの、こりゃあ…」

中井「っぽいなー」

阿部(まあ、そろそろ崩れてくれるだろうから続投の方がありがたいかな…)



 下1 阿部vs時任!

 1~3 荒れまくっちゃってもう、阿部くんが…
 4~6 フォアボール出塁
 7~9 よし、球威も落ちてきてる!


時任「うおおらあああああっ!」

 ビシュゥッ
 ズバアアアアアアンッ

<ボール、フォア!

阿部「ごちそうさまー♪」タタタッ

時任「お粗末だ、クソがあっ!!」


久遠(荒れてるな、かなり…)

久遠(デッドボールには気をつけないとか…)

時任「ちぃっ…」

久遠(気持ちは分かる。最後まで投げたい欲求はある)

久遠(だが、傍から見れば滑稽にも見えてくるものだな…)

久遠(…………まあ俺はまだ投げられたが)



 下1 時任vs久遠!!

 1~3 うぎゃあ、ゲッツー…
 4~6 しかし衰えぬ球威
 7~9 またまたフォアボール!?


 ズバアアアアアンッ

<ボール、フォアっ!

久遠「…」タタタッ


時任「クソったれめえ…」

<マウンド降りろっ! 試合壊す気かっ!?

<時任、啖呵切った分投げぬけっ!

時任(分かってるっつーの…!)


佐野「ハッ…呆気ない幕切れじゃのう…」

佐野(つまらんわ、こんな勝利じゃあのう)

佐野(粘らんかい、ドアホめ…)



 下1 久遠vs佐野!

 1~3 うお、強打者に燃えて力出したのか。佐野っちが打ち取られてもうた
 4~6 フォアボール…3者連続やぞ…?
 7~9 佐野ヤバす。走者一掃タイムリーだ


 ズバアアアンッ

<ボール、フォア!

佐野「やっぱつまらんわ…」

時任「っ…!」

時任(あの鬼畜監督に突きつけられた条件は、失点したら交替…)

時任(満塁かよ…。こっから、トリプルプレー? いくしかねえなあ…!!)


中井(3者連続でのフォアボールで降板しないか…)

中井(ここからなら、慎重に投げてくるか…?)

時任(全力で投げて、ゾーンにぶち込む)

時任(打てるもんなら、打ってきやがれぇっ…!!)


 下1 中井vs時任!!

 1~3 ノーアウト満塁で開き直ったか
 4~6 げえっ、ここにきてド直球勝負で中井を打ち取った
 7~9 押し出しフォアボール… そして時任は降板した…


時任「うおらあああっ!!」

 ビシュゥッ
 ズッバアアアアアアアンッ

<ボール、フォア!!

時任「な、あああ、が…」ピクピク

中井(引き際さえしっかりしてりゃあ、怖いチームだったな…)


<フォアボールで押し出し1点追加ァッ!!

<っしゃもう勝ったろう、この試合は!


時任「……」

坂上「降りろ、時任。ダメピー」

時任「っ…!!」ギロッ

坂上「事実だろ?」

時任「…………っ」



松坂(さすがに、降板しちゃった…)

松坂(でもあんなにゾーンに入らないんじゃ、しょうがない…よね)



 下1 もらったね、この試合

 1~3 と、思ってたのに…
 4~9 もらったよ


 下1 0コンマ判定

 偶数 松坂が替わったばかりの投手からタイムリースリーベース打ったよ。で、試合はしっかり勝ちました
 奇数 8回裏で失点しちゃって、9回裏で加賀に取って替わられた… 試合は勝ったけど


阿部(さ、加賀くん。県本戦、最後の一球はきみのものだよ)

加賀(久遠先輩と、松坂先輩の後のマウンド…。あと、アウト1つ…)

加賀(てか、いいの、俺が投げてて!?)


松坂「いいなあ…」

長島「油断して失点したお前へのペナルティーだ」

松坂「」

松坂(久遠くんはレフトに残ってるのに…。リードあったのに…監督厳しい…)


 ビシュッ
 ギインッ

 バシッ

<アウト!


長島「整列だ、走れ」

松坂(それでも、とうとう…県大会、制覇)

松坂(今度こそ、関東大会――!!)


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃2 ┃0 ┃3 ┃0 ┃5 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃唐┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃1 ┃1 ┃0 ┃2 ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻


阿部「勝ったね」

中井「……勝っちゃったな」

佐野「勝ったのう」

田中「何でお前ら喜ばねえのっ!?」

加賀「そうっすよ、県大会制覇っすよ!? やべーっすよ!?」

松坂「でも何か……最後、自滅みたいな感じになって勝っちゃったからね…」

阿部「そこがねー。それに松坂くん、失点するし」

松坂「」

阿部「反省会だね」

松坂「はい…」

阿部(まあ、加賀くんに経験積ませたかったんだろうなー、監督は…)

阿部(1イニングとは言え、ちゃんと投げきれたし)


阿部「関東大会かあ…」

中井「どうした、阿部?」

阿部「………帝央と当たるかなー、って」

久遠「勝てば当たるだろう」

佐野「そうじゃの。どこが相手だろうが勝つだけじゃ」




 QKしまっす

ぼちぼち再開やで~


松坂「ねえ、阿部くん…」

阿部「ん、どしたの?」

松坂「か、関東大会は…先発できるよね?」

阿部「………まあ、多分ね?」

松坂「……多分…」

阿部(エースナンバーだけじゃなくて、先発への欲も出てるんだね)

阿部(俺としては…そういうところ、もっともっと闘争心にして、剥き出しになってもらいたいかな)

阿部(ピッチングに影響さえ出なければ…)


松坂「多分かあ…」

阿部「さ、練習、練習。関東大会あるんだし、気合い入れようね」

松坂「うん…」

阿部「バッチリ気合い入れて練習してるとこを監督が見れば、先発しかないなって思うかもよ?」

松坂「ストレートからでいいの?」

阿部「いいよー。その切り替え方すごくいいよー」



 下1 関東大会なんですが…

 新摂高校は何県か決めようと思います。
 何県? (東京都除く関東でお願いします


阿部「神奈川からは県準優勝だった唐栗も出るだろうけど…」

阿部「………あんな決勝戦になっちゃって、時任くんは出てくるのかな?」

佐川「どーでもええわ。すでに倒したんじゃ」

田中「関東かぁ…。まだ見ぬ強豪がたくさんなんだろうなあ…。そして、かわいい女マネや、プロのスカウトも!!」

田中「でもってファンになってくれる女の子達もいっぱい!!」

中井「欲望に忠実だな、お前は本当に…」

久遠「次も俺が先発だな」

松坂「えっ…」

阿部「はいはい先発の話は置いといてー」


阿部「やっぱ、関東大会で1番注目なのは東京都の帝央大付属高校」

佐野「帝央か」

田中「二軍とは練習試合で勝ったよな!」

加賀「勝ったことあるんですか!?」

中井「練習試合で、二軍相手だったけどな…」


阿部「とにかく、負けなしの最強。絶対王者」

阿部「全員チート。実力至上主義」

阿部「強すぎな学校」

佐野「燃えるのう」

阿部「そんな東京でも、全国でも絶対的覇者の高校と戦えちゃうのが、関東大会」

阿部「いやー、組み合わせが楽しみだね。4回勝てば関東最強だからね」

田中「うおっしゃ、俺らもとうとう全国デビューだな!」

佐野「ほなら、とっとと練習じゃ」

中井「そうだな」



 下1 気合い充分! イベント時間?

 1~3 ふつーに練習しよーぜ
 4~6 阿部イベしよっ
 7~9 久遠イベやろう


阿部「あ、もうこんな時間…。久遠くん、そろそろ?」

久遠「ああ。悪いな」

松坂「何かあるの?」

久遠「ああ、少し。つまらない用事だ。じゃあな。また明日」

加賀「何すかねー、つまらない用事って」

松坂「……阿部くん、知ってる?」

加賀「何すか、つまんない用事って!?」


阿部「んー、病院とは聞いてるけど」

松坂「え、どこか悪いの?」

阿部「久遠くんじゃなくてさ…」

松坂「あっ…ああ…」

加賀「何すか? その納得?」

松坂「うーん……言っていいのかなあ、プライベートなことだし…」

阿部「まあねー。本人に尋ねてみたら?」

加賀「えー、気になるっすよぅ…」


阿部(しかし病院か…。やっぱ、お母さんのことだろうけど…)

松坂(部活に復帰してからは、練習休んだり、早上がりすることもなかったと思うのに…)

阿部(久遠くん、あんまり言わないしなあ)

松坂(……もしかして…)

阿部(もしかしちゃって…)

松坂(久遠くん、お母さん良くないのかな…?)

阿部(………うーん…)

加賀「あれー? 先輩達、どうかしたんすか?」



 下1 気になってきた…

 1 ちょっち病院とやらへ行ってみよっか?
 2 電話とかしてみちゃう?
 3 練習後に久遠くんチいってみる?


松坂「ねえ阿部くん、久遠くんって…もしかして…?」

阿部「んー、はっきりとはしないけど…野球大好きの久遠くんが、練習を早上がりするわけだし…?」

加賀「先輩ってばー! 何なんすかさっきからー!」


松坂「……びょ、病院ってどこのかな?」

阿部「久遠くんチの近くの病院だと…ここかな?」

松坂「………れ、練習中だけど、大丈夫かな?」

阿部「身が入らない練習じゃ意味ないからね!」

松坂「!」

阿部「行こうか」

松坂「うん」

加賀「先輩? どこ行くんすかっ?」

阿部「あ、加賀くんは走り込んでてね」

阿部「そのあとにこのメニューをどうぞ」ドサドサッ

加賀「愛あるスパルタぁっ!!」





 下1 病院にて久遠くんは…?

 1~3 これ出ていける空気じゃないよ…
 4~6 ああ、お母さん入院中…
 7~9 あれれ? 想像とちょっち違う?


看護士「久遠さん…? ああ、それなら――」

阿部「ありがとうございまーすっ」

松坂(阿部くんのコミュ力がうらやましい…)

阿部「看護士さんっていいよねぇ…」

松坂「…阿部くん…」

阿部「おっ、あそこの病室かな…?」

松坂「相部屋だけど…い、いきなり入っちゃってもいいのかな…?」

阿部「…んー、様子だけちょっと見てみようか…?」コソッ

松坂(バレないかな…?)コソッ



久遠「着替えに、身の回りのものに…。これで必要なものは全部か…?」

久遠ママ「ええ、ありがとう」

久遠ママ「今日は練習はいいの?」

久遠「……ああ。関東大会が近いからって早めに」

久遠ママ「そう…。ごめんね、手間をかけさせちゃって」

久遠「いや…別に。大丈夫だから気にしないでいいよ」


松坂(何だか久遠くんが…)

阿部(お母さんとの会話だと、普段のみんなとの話口調と変わるもんなんだねぇ…)




 下1 そうか入院してるのか…

 1 親子水入らずは邪魔せず、病院出たところで声をかけようか
 2 こんにちはー、って
 2 水菓子でも用意してから突撃しよか


久遠「…」

久遠(帰ったらネットに投げ込みをして、素振りをして…)スタスタ


阿部「くーおーんくん」

松坂「お、おつかれさま~…」

久遠「っ……どうしたんだ、お前達?」

阿部「いやー、病院って聞いてから胸騒ぎがして気になっちゃってね。来ちゃった」

松坂「ごめんね…。お母さん、入院してた…んだね」

久遠「……ああ、今日からな」


阿部「今日から?」

松坂「あ、だから荷物持ってきてたの?」

阿部「もしかして、体が良くないの…? 大丈夫?」

久遠「……今回は、手術のための入院でな」

松坂「手術っ?」

阿部「……も、もしかして、失敗したら……とか、あるの…?」

久遠「大失敗をすればな。…プロの医者だから、そんなこともないだろうとは思うが」

松坂「手術って、いつ…?」

久遠「…関東大会の、前日だな」

松坂「前日っ?」

久遠「………ああ。だから、試合は大丈夫だ」

阿部(大丈夫って…)

松坂(もし…その手術で何かあったりしたら…? それに、久遠くんでもそんな状態で練習集中できるの…?)



 下1 久遠くんさあ…

 1~3 大丈夫かいな…?
 4~6 強がりか、そうじゃないのか…
 7~9 これが久遠の決意か…


阿部「……手術なら、その日はお母さんのそばにいた方がいいんじゃない?」

久遠「試合前とは言え、チームを離れたくはないんだ。もう」

松坂「でもっ…」

久遠「それに俺は…すでにお前らに迷惑をかけてるだろう」

久遠「今度こそ、ちゃんとチーム全員で関東大会へ出て戦いたい」

久遠「俺と松坂で投げて、関東大会を制覇するんだ」


阿部(とは言え、まだ春大会だよ…)

阿部(そりゃあいい結果を出すことに文句はない)

久遠「だから心配しないでくれ」

松坂「…」

阿部「…そう言われちゃうと…」



 下1 松坂ァッ!

 1 何も言えないし…久遠くんだし、きっと大丈夫だよね…?
 2 大会のためにも、手術の日はそばにいるべきだよ
 3 野球より家族の方が大事に決まってるじゃないか



久遠「さあ、早く帰るぞ」

阿部「……うん…」

松坂「く、久遠くん…」

久遠「何だ?」

松坂「……大会のためにも、手術の日は…お母さんのそばにいるべき…………だと思う…」

久遠「…俺がいると投げられないからか?」

松坂「違うよっ」

松坂「……その…ただ……そんなこと、僕と阿部くんが知っちゃったら……言っちゃうだろうし…」

松坂「そしたらみんな、集中できなくて、逆効果だろうし…」

松坂「だ、だからっ……とにかく、そばにいた方がいいよ…」

久遠「松坂…」

阿部「……そうだね」

阿部「じゃ、そういうわけで、久遠くん、その日は練習きたらダメだよ」

阿部「絶対に病院にいることっ!」

久遠「…いや、それだと調子が悪く――」

阿部「そんなの当日に取り戻してくださーい」

松坂「そ、そうだよっ。ちょっとくらい調子悪くても、みんなでカバーできるから」

久遠「…」

阿部「そういうことね。いいね?」

久遠「……………すまない」





佐野「――ほんで、今日か…久遠のお袋さんの手術っちゅうんは」

中井「でももう放課後になっちまったし、そろそろ終わったころか?」

田中「大丈夫だといいな」

阿部「んー、そうだね…。どうなるか…」

松坂「き、きっと、大丈夫だよ…」

加賀「久遠先輩にそんな事情があったなんて…。だから秋も関東大会からしか出られなかったんすねぇ…」


 prrrrrrr

松坂「っ!?」

中井「久遠からかっ? 出ろ、松坂」

松坂(な、何で僕の携帯…? き、緊張する…)pi

松坂「も…もしもし…? 松坂ですけれど…」

久遠『松坂か。俺だ』

松坂「う、うん…。そ、それで…?」

久遠『………無事、成功した』

松坂「成功っ?」

田中「うおーっ、やった! すげえ! おめでとーっ!!」

佐野「ふんっ、これで久遠が忌引で試合に出ないっちゅうことにはならんようじゃな」

阿部「うんうん。でも引き続き、今日は練習でちゃダメって言っといてね。術後経過もあるだろうし」

中井「んじゃ、俺らも練習すっか。明日はいよいよ、関東大会だからな」


久遠『松坂』

松坂「あ、うん…? 阿部くんが、練習は来ちゃダメって――」

久遠『それなら夜、悪いが俺の家まで来てくれないか?』

松坂「え…?」

久遠『……待ってる。それじゃあ。……ありがとうな』

松坂(な、何だろう…?)




松坂(1人でくるの、初めてだなあ…。もう帰ってきてる…? よね…? 明かり点いてるし…)

松坂(ちょっと緊張…)

 ぴんぽーん…

松坂「…」

 ガララッ

久遠「松坂、来てくれたか…」

松坂「う、うん…。それで、どうかしたの…?」

久遠「いや…。手術が成功して…もうしばらく安静にすればもう、大丈夫だろうって医者に言われててな」

久遠「正直、練習でもしてた方が気が紛れるかとも思ったんだが………近くにいられた方が良かったと思ってる…。何かできたわけじゃないにしろ」

久遠「だから、その礼を何かしようかと思ったんだ」

松坂「お礼なんて、別に…。ち、チームメイトだし…?」

久遠「…だからこそだ。頼りっぱなしじゃ格好がつかないだろう?」

松坂「格好なんて気にするんだ…」ボソ

久遠「ん?」

松坂「あ、う、ううんっ…でも本当にお礼なんて…」

久遠「大したことはできないが…お前の力になればと思うことがある」



 下1 久遠イベ終了ボーナス

 1 特能:奪三振の鬼/三振狙いの投球が上手くなる
 2 球速3アップ
 3 カーブ習得(D)


久遠「これくらいでいいだろう…。あとは、お前次第だな」

松坂「な、何か…ありがとう」

久遠「礼はこっちが言うことだ」


松坂「………その…正直ちょっと、久遠くんがいると、エースも危ういし…出番も取られちゃうし…複雑な、気持ちあったんだよね…」

松坂「…こんな僕でも…エースナンバーもらえるくらいには、認めてもらえてるけど…やっぱり久遠くんは、すごいから…怖いっていうか…」

松坂「…あ、ははは…。何でこんなこと、言っちゃうんだろう…ごめん…」

久遠「…いや。当然だろう」

松坂「えっ…?」

久遠「お前はいい投手で、俺も悪くない投手だ。だからエース争いをするし、出番を奪い合う」

久遠「どんな御託を並べても投手は試合中に1人で、交替をしないとマウンドに2人は立てない」

久遠「だから、競い合える。お前のお陰で刺激になってる。また負けるつもりはないが、俺とお前はそういうライバルなんだろう? ただそれだけだ」

松坂「ライバル…。久遠くんと…?」

久遠「それとも俺は眼中にないか?」

松坂「そっ、そんなことっ…! ただ……でも、何か――」

久遠「お前はエースだ。謙遜するな。俺や加賀への侮辱にもなるぞ」

松坂「っ…」

久遠「貪欲になればいい。競争して、試合になれば助け合う。俺達は、いいライバルでいよう」

松坂「………うん」


新摂高校
松坂修一 投手 両投/両打 右:スリークォーター 左:サイドスロー

球速:142キロ
制球:C(62)
持久力:S(98)
カット:C(52)
チェンジアップ:C(65)
シンカー:C(65)

打力:C(65)
筋力:C(62)
走力:C(63)
肩力:C(球速換算)
守備:A(86)

特能
四刀流:どちらの手で投げようが、どちらの打席に立とうが一切能力が衰えない
ハングリーバッター:狙い球を絞ることで打席を重ねる度、その狙い球をめちゃくちゃ打ちやすくなる
クロスファイアー:左投げ時、対角線への投球で球威と制球力がグンと上がる
奪三振の鬼:三振狙いの投球が上手くなる


チームメイト(の一部)

2年
田中太郎 二塁手
久遠康宏 投手 ★★★
○阿部 博 捕手 ☆☆☆
◎佐野誠一 三塁手 ★★★
中井 薫 外野手

1年
加賀茂雄 投手

長島貞治 監督
種田夕実 女マネ
宮野 光 女マネ



 下1 そして関東大会… 初戦の相手は!?

 1~3 エースで4番でキャプテンですか…
 4~6 機動力&機動力&機動力ですか…?
 7~9 堅守&巧打なチームでっせ!


阿部「おさらいしまーす! 初戦は、エースで4番でキャプテン!! な選手を中心に結束してる強豪チームです!!」

佐野「ほおーん?」

阿部「スタミナあるよー、スライダーとカーブもあるよー、スピードもあるよー」

田中「すげえな!?」

阿部「でもって県大会じゃ5本塁打!!」

中井「おいおい、完璧かよ…?」

阿部「弱点があるとすれば…」

松坂「ごくり…」

阿部「彼はチームに1人しかいないってことだね!」

佐野「それのどこが弱点じゃ?」

阿部「こっちには頼れる投手が2人もいるよ! さらに加賀くんも控えてる!」

阿部「それにそれに、キャップの打力は関東大会でだって頭抜けてるはずだよ!」

佐野「そら当然じゃのう」

阿部「あと、ここ大事!」

中井「何だ?」

阿部「エースで4番でキャプテンだけど、彼………顔が怖い。はい、写真」

田中「うおっ、ガマガエルみてえっ!?」

中井「ひでえこと言うな、お前…」

阿部「これが笑顔の写真」

松坂「ひっ…」

久遠「……男前だな」

中井「え?」

田中「は?」

佐野「あん?」

久遠「…ん?」

阿部「………人の容姿をとやかく言ったらいけません!」

中井「いやお前が顔怖いとか言ったんだろ?」



 下1 そんなこわぁーい選手がいるようでっせ…

 1~3 しかも、全体的に選手達も鍛えられてますから
 4~6 上位打順はどこもかしこも油断はならないようで
 7~9 まあでも他の選手は、並というか…結束力はあるようだけどね


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃敵┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻


阿部「すぅぅーっ…」

阿部「しまってこーぜぇーっ!!」

<うぇーい!!


松坂(先発…させてもらえた…)

松坂(1回表のマウンドだけど…先発できないより、できる方が嬉しいな…)

阿部(さあ、松坂くん。関東大会デビューだね。どこもかしこも強豪校、思いきりいこう)

松坂(思いきり…!)

阿部(気合いも入ってるようだし)

阿部(さあ、まずはストレートだ)

松坂(まずは、ストレート!!)

 ビシュゥッ
 バシンッ

<ストライーク!


阿部(うん、悪くない…)

阿部(さてさて、どこまで通用できるかな――)


 下1 松坂、関東大会デビュー!

 1 まずは打たせて取ってこう
 2 ガンガン三振を狙ってこー!
 3 阿部くんのリードに従うやで!


阿部(まずは松坂くんの実力を見せつけていこう)

阿部(さあ、三振をどんどん狙っていこうか)

阿部(関東にきみの名を響かせる時がきたんだ)


松坂「ふぅーっ…」

 ビシュゥッ
 バシィッ

<ストライーク!

松坂(2連続…!)

阿部(さあ、三振は遊びなしのチェンジアップで決めるよ)

松坂(チェンジアップ…!)

 ビシュッ
 ブンッ
 バシィッ

<ストライク、バッターアウト!

松坂「三振…1つ目…!」

阿部(よしよし…)

田中「打たせろーい!」

佐野「打たせい! つまらんじゃろうが!」



 下1 打たせろって言われても… 奪三振の鬼:+1

 1~3 あ、3番に打たれちった…
 4~6 ま、まあ結果的に打たせて捕ったし
 7~9 奪三振の鬼のデメリットはスタミナ消費がやや多いこと(松坂なら問題なし?


松坂(2連続で、奪三振してるし…)

阿部(3番の彼は粘るようだけど、松坂くん相手にそれはほとんど意味がないよ)

阿部(チェンジアップだ)


 ビシュゥッ
 ググッ…

阿部(反応しかけて、持ち直した…!)

 キンッ

松坂(打たれて――!?)

田中「まぁかせろーい!!」バシィッ

 ビシュッ

<アウト!

松坂「田中くん…!」

田中「っしゃ、いいぞ、松坂っ。その調子でいいんだっ! だぁっははははー!」

佐野「サードにも打たしてけ、つまらんわ!」


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃敵┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻


久遠「ナイピッチだな、松坂」

松坂「う、うん…。久遠くんのお陰かも…」

久遠「お前の実力だ」


田中「っしゃ、行くぜぇー!」

田中(マウンドだと体もでけえし、迫力ある投手だな。けど、ビビんねえぜぇ?)

田中(俺の役目は、塁へ出ること! そしていの一番に、ホームへ帰ることだ!!)




 下1 田中ァッ!!

 1~3 おい、走りすぎ。いいとこ見せようとしすぎ
 4~6 さす田中
 7~9 セーフティからの盗塁ってね


 ブンッ
 バシィッ

<ストライク、ツー!

田中(俺をただ関東大会でいきって長打狙いしようとしてるバカだと思うなよぉ?)

田中(通として、2ストライクからの意表を突くセーフティで出塁してやんぜぇっ!!)

 ビシュッ
 カツンッ…

<田中が、2ストライクからのセーフティ!?

<しかも絶妙ぉー!!

 ダダダダァッ

<セーフ!

<うおーっ、足速えぇーっ!!

田中「だぁーっははははーっ! 俺はセーフティが超とっくいなんだぜぇーい!!」



阿部(さっすが、田中くん)

阿部(バントはしないと見せかけておいてのセーフティか)

阿部(実際これまで色んな方法で出塁してる分、どう出るかを研究しても絞りきれないんだよね)

 ビシュゥッ

田中「うおおおっ!」

<ランナー出た!!

 バシィッ

<ボール!

 ビシュッ
 ズザァッ

<セーフ!


田中「どーだ、見たかぁっ!? バントだけの男と思うなよぉっ!?」

阿部「ははは」

阿部(さっすが田中くん、ツーベースにしちゃったよ、セーフティで。さて、2番としてここは…)



 下1 阿部!

 1~3 堅実送りバントで
 4~6 やらしく粘ってフォアボール出塁
 7~9 お、打った


阿部(田中くんを確実にサードへ進める)

阿部(そしてクリーンナップへ繋げる!)

 カツンッ…

<阿部もバントだ!

<しかも勢い殺してる上、絶妙なとこに!

<あいつ何でも地味に上手いんだよっ!!


 バシッ

<アウト!

田中「よぉーし、よくやった、阿部! それでこそ、ゴールデンワンツーコンビだ!」

阿部「はいはいもうそれでいいよ」

阿部「てことで久遠くん、頼んだよ」

久遠「任せろ」



 下1 久遠!

 1~3 緩急に実は弱い久遠くん
 4~6 おお、久遠は意欲的に得点するね
 7~9 ちゃんと得点圏へ進んで佐野に繋げるんだね さあ、ランナー二塁で佐野っち!


 カキイインッ

<うおーっ、久遠ー!!

<中井に次ぐイケメンいいぞー! 天然だけど!


田中「余裕で1点目ぇーっ!!」

久遠「よし、二塁…。佐野なら追加点だな」

佐野(こいつらは度胸だけはあるのう)


佐野(確か、相手は…関東大会初出場じゃったか)

佐野(エースで4番でキャプテンで…か)

佐野(恐らく、あの投手に頼りきりながらチームが結束してきたんじゃろうが、見とるとどいつもこいつも緊張しとるようじゃな)

佐野(……この回で一気に叩いて、初戦突破をはかるかのう)



 下1 佐野っち!!

 1~3 おい佐野っち?
 4~6 おおっと佐野っちとしたことが…得点はできなかったのか。得点は、ね
 7~9 またもやタイムリーで1点追加して佐野っち二塁

わかりにくい書き方をしてごめんよ…


 カキンッ

佐野(ぬっ…!?)

阿部「あー、佐野くんが打ち損じてるぅー」

加賀「え、そうなんすかっ!? ばっちりシングルヒットすよ!?」

阿部「ちっちっち、加賀くん。佐野くんはね、打てば必ずツーベースくらいじゃないと物足りない打者になってるんだよ」

加賀「なるほどっ!! さすが佐野先輩っすね!!」


中井(一死ランナー、一三塁)

中井(この勢い、途切れさすわけにはいかねえな)

中井(さあ来い――!)



 下1 中井ィッ!

 1~3 イケメンに憎しみでもあるのか、エースで4番のキャップさん…
 4~6 おお、満塁
 7~9 ガンガン打ってますのう、大量得点ですのう、松坂はランナー一二塁で回ってくるよ


 キィンッ

久遠(進めないか、これは…!)

<ファーストランナーを刺せ!

<佐野の猪突猛進を食らえぇーい!!


佐野「ぬぅううううっ!」ドドドッ

 ズザアアアアアアッ

<豪快だー!!

<セーフ!

<そしてセーフ、満塁!

<いいぞ、中井ー!!


中井(ら、ラッキーか…?)

中井(どうせなら返したかったけど……ま、次は松坂だからな)チラッ


松坂(ま、まままっ、まんっ…満塁、きちゃった…)

松坂(一死満塁…1点リード…)

松坂(……無死満塁は意外と点が入らないっていうけど…一死だからな…)

松坂(こ、ここは…)チラッ

松坂(監督からのサインは………打っていけ…?)

松坂(そ、そうだよね…。この場面なら、打ち上げたってタッチアップで三塁ランナー帰れるし、ゴロの間に点を取れるかもだし…)

松坂(せ、積極的に…)



 下1 松坂ァッ!!

 1 ま、満塁ホームランとか……狙えるかなあ…?
 2 とりあえず、長打で…
 3 確実に当てていけば繋がってくはず…


松坂(とにかく当てれば、点は取れるはず…!)

 ビシュゥッ
 グイッ
 バシィッ

<ストライーク!


松坂(スライダーか…)

松坂(できれば直球が打ちやすい…かな?)

松坂(いやいや、振っていこう)


 ビシュッ
 グンッ
 バシィッ

<ボール!

松坂(今のは…カーブ?)

松坂(すごい軌道だったな…)



 下1 松坂ァッ!!

 1~3 あ、ゲッツー…
 4~6 ちゃんと当ててさらに追加点だよっ!
 7~9 2点追加ァッ! 松坂、野手転向しても充分いけるよ…


 ムリして奇数で悪いことにするのが難しいのだ…
 だから、うーん…偶数に比べると、ちとがっかり感くらいに今回はしちゃうのだ…


 下1 【00コンマ判定】

 偶数 満塁本塁打。え、松坂くんはエースで6番で副キャップですが? きっとファンがいっぱいできたね!
 奇数 松坂、1点追加!


 キインッ

松坂(打てたっ…! センター前、シングルヒット堅い…!)

 ズザァッ

<さらに1点追加ぁーっ!

<3点目ぇー!!

久遠「ナイバッチだな」


阿部(依然、満塁…)

阿部(何かこうなると、送りバントしたのがバカっぽく思わされるような…?)



 下1 下位打順もいっとけ!

 1~3 あかんかったか…
 4~6 さらに1点追加でね
 7~9 おうおう…満塁のまま田中にまで回ったよ…


 バシッ

<ストライク、バッターアウト!

阿部「4点か、いいね」

松坂「4点あれば…勝てる気がする」

阿部「慢心しないようにね。関東大会だから。ひっくり返されることも充分ありえるよ」

松坂「う、うん。慎重に、だね」

阿部「時に大胆にね」

松坂(時に大胆に…!? 何その注文…?)


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃敵┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃4 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻


阿部(さ、4番からの打順。どいつもこいつも、一発ありえるよー)

松坂(慎重に…時に、大胆に…)

松坂(でも…大胆にっていうのは、阿部くんのリードの話になるんじゃ…?)



 下1 松坂いったれ!

 1 引き続き三振狙いじゃーい!
 2 強打者にはクロスファイアで攻めてくぜぃ!
 3 打たせて捕るのだ、守備の士気あがるし…



阿部(さあ、プレートの端へ)スッ

松坂(クロスファイアーで)スッ

阿部(勝負にいこう!)


 ビシュッ
 ズバアンッ

<ストライーク!!


阿部(よし、今日もエグいよ、そのコース)

阿部(でもこの選手は、顔の通りに怖い人だからね…)

阿部(エースで4番でキャプテンは伊達じゃないから、よくよく注意していこう)

阿部(その上で、大胆に、勝負へ出る…!!)



 下1 唸れクロスファイアー!!

 1~3 詰まらせたと思ったのにぃっ!
 4~6 佐野っちの希望通り、サードゴロっすよ
 7~9 奪三振の鬼ィッ! チームの精神的支柱から三振奪うって快感!


 ビシュゥッ

阿部(チェンジアップに惑わされない――!?)

 ギンッ

阿部(打球が速い――けどっ!)

阿部「サード!」

佐野「おおおおうっ!」

 バシィッ
 ガスッ

<取り損ねたっ!?

<イレギュラーバウンドで体にぶつかってんぜ!?

佐野「~っ――やらせるか、ボケがぁっ!!」

 ビシュゥッ
 バッシィィィッ

<アウト!


<おおおおっ!

<さすが佐野っ!

<痛そうだったのにきっちり送球した!!


松坂「佐野くん、大丈夫っ…?」

佐野「自分の心配せえっ! ワシじゃなかったらセーフじゃったわ!」

松坂「あ、はい…」

阿部(うんうん、打球は体を張ってでも止める。つよーい打球でも。サードの鑑だね、佐野くん)ニタニタ

佐野(阿部の笑顔がうぜえ…)ゴゴゴ



 下1 続く打者もいけえい!

 1~3 あれ、クロスファイア対策でもしてきたのかっ?
 4~6 打たせてったぜぃ!
 7~9 奪三振の鬼ィッ!


 ガィンッ

田中「でええーい!!」

 バシィッ

<アウト!!


 キインッ

松坂(捕れる――)

 パシッ

<アウトー!


阿部「ナイピッチ」

田中「ちゃんと俺んとこに打たせたな、いいぞっ」

佐野「ワシんとこにもよう打たせたのう。誉めちゃるわ」

中井「俺のとこはまだか?」

久遠「俺にも」

松坂「え、ええっ…?」

阿部「はいはい、順番ねー」

松坂「シートノックじゃないよっ!?」


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃敵┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃4 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻



 下1 そして新摂の攻撃や!

 1~3 うおっ、ギア上げてきた? 打たれて開き直って調子出てきたのか?
 4~6 おろろっ… 初回ほど打たせてくれなくなった?
 7~9 またもやガンガンですなあ…


田中「よっしゃ、いくぜぇー!!」

田中「セーフティだけの男と思うなよぉっ!!?」

 ビシュゥッ
 グンッ

田中「うおっ…!?」

田中(やべ、手を出し――)

 ギンッ…

田中(ぼってぼての内野ゴロぉっ…!?)

 ビシュッ
 バシッ

<アウト!



阿部「あちゃー…」

田中「…すげえ、キレだったぞ…?」

阿部「4点負けて弱気になるようなチームは、ここまで勝ち上がれないんだよ」

田中「なるほどなっ!?」



 下1 阿部ぇっ!

 1~3 アカンかってん
 4~6 尚、阿部はセーフティ成功させる模様
 7~9 狙い打ち♡


阿部(決め球はカーブ)

阿部(それを狙い打つ――)

 ビシュッ
 グンッ

阿部(きたぁー!)

 ブゥンッ
 カッキイインッ


<阿部が打ったぁー!

<しかもでっけー!! 阿部にしては


阿部「よぉっし、ツーベース!」ズザァッ

阿部「さ、この回もドンドンいこー!」


久遠(さて…気合いが入ってきたようだが、どうくるか…)

久遠(阿部が打てたのはいつもの狙い打ちだろうからマネはできないしな…)



 下1 久遠!

 1~3 おう、三振か…(とられたほう
 4~6 あ、ゴロ
 7~9 ランナー一三塁で佐野っちやでー!


 ビシュッ
 バシィッ

<ストライク、ツー!


久遠(いいとこに投げ込めるな…)

久遠(それに変化球もキレがある。いい投手だ)

久遠(特にその闘志の宿った目…いい目だな)


 ビシュゥッ

久遠(カーブか――ゾーンに入る…!)

 グンッ
 ブンッ
 バシィッ

<ストライク、バッターアウト!

久遠「…やるな」



佐野(二死二塁か…)

佐野(ええ場面じゃ。こんくらいが調子出るっちゅうもんじゃのう)



 下1 佐野っち!

 1~3 お、おお…佐野っちまで…さすがエースで4番でキャプテン…
 4~6 二死一三塁へ!
 7~9 佐野、ツーベース!


佐野(確か、阿部は二遊間が堅い言うてたのう…。センターラインがしっかりしとる…とかじゃったか)

佐野(じゃったら、そこをぶち抜いてやるかのう)


 ビシュゥッ
 グンッ

佐野(スライダー!)

 キィインッ


<うおー、二遊間!?

<けど佐野の打球だぜっ!!?

<抜けろぉー!!

 ダンッ

<抜けたー!!

<いいぞ、佐野ぉー!!


佐野(何じゃ、力ずくで破れる程度か。つまらんのう)

佐野(中井、やったれ、ドアホ)


中井「よし…」ギュッ

中井(二死一三塁なら、攻めるしかねえな)



 下1 中井、いったれ!

 1~3 おうふ…さすがはエースで4番でキャプテンやで…。この場面で堂々したもんで
 4~6 くっ、中井をもってしても得点できなかったのか…
 7~9 よっしゃ、中井ー! いいぞー! ランナーが一二塁で松坂や!


中井(とにかくきた球、ぶち抜く!)

 ブンッ
 キインッ

<な、か、いーっ!

<いいぞいいぞ、イーケーメン!

<死ーね、死ーね、イーケーメン!


 ズザァッ

久遠(中井の安定感が頼もしいな)

佐野(何で3番じゃった時にこういかんかったんじゃ…)

中井「何で打った俺に死ねイケメンってコールが飛んでくるんだよ…」

中井「嫉妬か、嫉妬だな。ふっ…」


松坂(またこういうチャンスがきちゃう…)

松坂(でも、さっきも打てたんだし…満塁よりかは、やれそう!)



 下1 さあ、二死一三塁!

 1 当ててこ!
 2 長打を!
 3 い、一発とか…打てるのかなぁ…?


 ビシュッ
 バシイイッ

<ストライーク!

松坂(うわ…今のすごいコースだった…)

松坂(でも、速さなら時任くんの方が上だし…コントロールなら黒木さんの方がすごかったし…一球への執念は中沢くんの方が…)

松坂(これなら…大丈夫そう…)

松坂(打てるイメージが、なくはない…!!)



 下1 松坂ァッ!!

 1~3 尚、緩急…
 4~6 あ、打ち上げちゃった…フライ…
 7~9 ランナー一掃、ツーベースヒット!


 キインッ

松坂(あっ…!)

佐野(ま・つ・ざ・かぁぁっ…!!)

中井(さすがにあんなフライの捕球をミスるような選手は、関東大会には…!)

 パシィッ

<アウトー!!

松坂「」


阿部「ドンマイドンマイ、松坂くん」

田中「もっと飛べば良かったな!」

佐野「腰入れて振らんかい」

中井「ま、そんくらいでいいんだよな、本来。お前投手だし」

田中「そーいやそうだよな!?」

 『わはははっ』

久遠(俺は?)



┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃敵┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃4 ┃1 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
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松坂(5点リード…。それにこの回は下位打順からだし…)

松坂(有利は変わらないし、勢いはこっちにある…)

松坂(慎重、かつ大胆に…)

松坂「ふぅーっ…」

阿部(さあ、思いきり!)



 下1 松坂ー!! 奪三振の鬼:+1

 1~3 おっとと…? ピンチがとうとうきたか
 4~6 好調ですねー! いいですねー!
 7~9 奪三振の鬼ィッ!!


 キインッ

松坂「!?」

中井「ライトぉー!!」

阿部(思いきり引っ張ってきた…! さすがに関東大会のチームか…!)

<セーフ!


松坂(一死、一二塁…)

松坂(ここで打者は、一巡して1番…)

阿部(さて…面白くなってきたね)


久遠(俺をマウンドに…!)ゴゴゴ

加賀(あっ、レフトで久遠先輩が燃えてる!)

松坂(まだまだ、投げられる…)



 下1 松坂、こっからだぜ!

 1 強気に三振狙っていきましょ!
 2 クロスファイアー!!
 3 打たせてくんだぜぃ!



阿部(ランナーを背負ってる場面…)

阿部(打たせて捕った方が、楽でいい)

阿部(でもね、こういうピンチでガンガン三振取っていったら…強い投手と思わせられる)

阿部(大胆に)

松坂(かつ慎重に――)

阿部(三振、狙うよ!)

松坂「ふぅーっ…」


 ビシュッ
 クイッ
 ガインッ

<ファール!


松坂「ふぅーっ…」

阿部(うん、いいボールがきてるよ)



 下1 奪三振の鬼ィッ!! +1

 1~3 うおおお… 満塁になってもうたか…
 4~6 久遠の肩よ
 7~9 三振ッ!!!


阿部(にしても、随分大きなスイングをするなあ…)

阿部(5点負けしてるからか、得点に焦ってるか…。にしても、これ、当たったらけっこう飛びそうだな)

阿部(でもま、投げるしかないよ!)


 ビシュッ
 キイインッ

阿部「あっ…!?」

<お、ちたぁっ!?

阿部(レフト――久遠くんか)

<回れ回れー!

阿部(二塁ランナーが、三塁を蹴った…!)

阿部「バックホームぅっ!!」バッ


久遠(阿部のミットなら、外野からだろうが――!!)

 ビシュゥゥッ

<うおっ、すげえっ!?

<低弾道レーザービームぅっ!?

阿部(間に合う…!)


 バシィィイイッ
 ズザアアッ

<アウト!


阿部(ランナーはっ――?)バッ

阿部(っ…飛び出ないか。それでも、アウトだ)

松坂「久遠くんさすが…」

久遠(刺せた…阿部のミットに投げられた…)ホクホク


阿部(ランナーはまだ一二塁だけど、これで2アウト。いけるよ)

松坂(いける)

田中「打たせろーい!」

佐野「久遠にばっかええかっこさせてられるかボケぇっ!」

中井「外野は俺の縄張りだー!」


 下1 奪三振の鬼ィッ!! +1

 1~3 おう、満塁…
 4~6 セカンドゴロ
 7~9 完璧な三振!!


 ビシュゥッ
 ブンッ
 バシイッ

<ストライーク!


 ビシュッ
 ブンッ
 バシッ

<ストライク、ツー!


阿部(よし、ストレートからチェンジアップで、完全にタイミングを狂わせた)

阿部(つり球で仕留められる…!!)


 ビシュッ
 ブンッ
 バシイッ

<ストライク、バッターアウトぉっ!

松坂「やった…!」


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃敵┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃4 ┃1 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻



 下1 3回裏の新摂は下位打順なのだ

 1~3 三者連続凡退…
 4~6 二死一塁で田中か…
 7~9 一死一二塁、田中ァッ!


 下1 0コンマ判定

 偶数 崩れたか、エースで4番でキャプテン…!
 奇数 うげげっ、これがエースで4番でキャプテンというチームを背負ったやつの強さか…? 迫力ドンドン出てるよ…


 ビシュゥッ
 ズバアンッ

<うおお…

<何か迫力増してねえかっ!?

<いくら下位打順だからって…初回に4失点とは思えねえよ!

 バシィッ

<ストライク、バッターアウトぉっ!

阿部(完全に持ち直してきたかな…?)


<よぉっし、このまま攻めるぞっ! 逆転できる!

<おおっ!

<キャプテンにばっかいいカッコさせらんねえからな!


阿部(それにチームも活気づいてきてる…この勢いで、彼が回ってくるのか)

阿部「松坂くん、気を抜けないよ、5点差だからって」

松坂「分かってる。がんばる」

阿部「うん、その意気っ」


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃敵┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃4 ┃1 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻


阿部(4番からの打順…)

阿部(投球の勢いを打撃に持ち込まれるのは厄介だけど…裏を返せば、ここで黙らせれば士気は下がる)

松坂(守備の回でも、攻めていく…!)

阿部(さあいこう!)



 下1 松坂、いったれーい!

 1 打てるもんなら打ってみろクロスファイア!!
 2 奪三振の鬼ィッ!!
 3 打たせて捕ぉーる!!



 ビシュゥッ
 ガインッ

<ファール!

阿部(かなり強気に振ってきてる…)

阿部(実際、タイミングさえ合えば打たれるだろうな…)

阿部(でもだからこそ、こういう時は…)

松坂(カットボール…!)

阿部(さあ、打ち取るよ!)



 下1 vsエースで4番でキャプテン!!

 1~3 なにぃっ、パワーで!?
 4~6 うひょへえ…田中ありがとう
 7~9 松坂の守備しゅごいのぉ…


 ビシュゥッ

阿部(コースがっ…!?)

 クイッ
 カキイインッ

阿部(カットを強引にパワーで引っ張った!?)

<うおおおおおおおっ!

<さすが4番でエースぅっ!!


中井「久遠っ…!」

久遠「これはっ…!」ダダダッ

 ダンッ…

<よおっし、落ちたぁー!


松坂(カットボールをあんなに飛ばした…)

阿部(さすがにセンスに溢れてるよ…。プレーでチームに活気を取り戻して、自らその戦端を開いていく…)

阿部(エースで4番でキャプテン…納得しかできない選手だね)


松坂(二塁打になっちゃった…)

阿部「さあ、切り替えていこー!!」

松坂(大丈夫、打ち込まれたって5点差…。それに、打たせるつもりもないんだから…)

松坂(阿部くんのリードを信じて、全力で…!)



 下1 勢いづかせてたまるものかー!

 1~3 うぐおーっ!? 無死一三塁ィッ!?
 4~6 よぉーしよし…二死二塁まで持ち込めた…
 7~9 松坂いいよ、松坂っ!


 下1 0コンマ判定

 偶数 三者連続奪三振でシャットダウン! 奪三振の鬼効果っすよ!
 奇数 キャプテンの与える影響って、すごいんですね… 連打で1失点しちゃったよ… 勢いあげちゃったなあ…


松坂「ふぅーっ…」

阿部(バックのみんなには悪いかもだけど、ここは三振をガンガン取っていく)

阿部(この勢い、与えられないよ…!)


 ビシュゥッ
 バシイッ

<ストライーク!


 ビシュッ
 ブンッ
 バシッ

<ストライク、ツー!


 ビシュッ
 ブゥンッ
 バッシィッ

<ストライク、バッターアウト!


<松坂すげー!

<いいぞ、松坂ー!!


松坂「ふぅーっ…」

阿部(ランナーも気にならないくらい集中しちゃってるかな…? ま、でもいいよ。このままいこう!)


 バシッ

<ストライク、バッターアウト!

<3者連続三振きたぁーっ!!

<松坂っていつからこんな、三振取れるようになったっけ!?


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃敵┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃4 ┃1 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻



 下1 中盤は、スキップ!!

 1~3 エースで4番でキャプテンだけあって粘るけど、依然リードだよ!
 4~6 よーしよしっ、1点さらに追加しといたぜー!
 7~9 7回までにさらに2点追加したったぜぃ!



 今夜はここまでっす
 あざっした

さ、はじめましょーかい


 グンッ
 キインッ

 バシッ

<アウト!

三橋「さすがは新摂高校。関東大会でもこの試合内容なら、最早本物の強豪校よね」

広田「そっすね。投手不足からも解放されて、二枚看板の松坂と久遠…。どっちもこっちも厄介さは変わらず」

広田「ただ関東大会には帝央がいますし…彼らにどこまで食いつけるかで、全国での強さというのがはかれるってとこでしょうか」

三橋「何でいちいちそう貶すのかしら、あなたは?」

広田「貶してるつもりはないっすよ。けど…何か、創設2年目の高校がこれって、すげえなあとも思いつつ、できすぎじゃねえかとも思うわけっす」



┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃敵┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃4 ┃1 ┃0 ┃0 ┃1 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻


阿部(さて、7回表…。普通の投手ならスタミナを心配してくる場面だけど松坂くんなら問題なし…)

阿部(あとは監督が継投を考えているかどうか…かな。まさか、また1失点したら交替なんてことはないだろうけど…)

阿部(……松坂くんなら、余裕で完投できちゃうんだよね。それにあと1点を取ればコールドゲームだ)

松坂(この回は先頭打者からの好打順…。4番の人には何度も打たれてるけど、他の人にはあまり打たれてはいないし…)

阿部(さあ、強気にいこう)



 下1 松坂!!

 1 三振狙いで
 2 クロスファイアで
 3 打たせて取ってく


松坂「ふぅーっ…」

阿部(中盤になってから、どんどんバットを振ってくるようになってるからね)

阿部(打たれてもいいように、かつ三振を狙えるように配球するよ)

松坂(初球、シンカー!)

 ビシュゥッ
 カクッ
 ギインッ

<ファール!


阿部(ファールなんてストライクも同然)

阿部(テンポよくいくよ!)

松坂「ふぅーっ…」

 ビシュッ
 バシィンッ

<ボール!


松坂(遊び球も交えつつ、三振を狙う)

松坂(投手のスタミナガン無視の配球は、僕への信用の賜物…!)

 ビシュッ
 ブンッ
 バシィッ

<ストライク、ツー!



 下1 松坂ァッ! 奪三振の鬼:+1

 1~3 おおっ、二死二塁で4番に回った…
 4~6 よし、4番の前に三者連続凡退だ
 7~9 7回表で三振2つ稼いだよ!


 キンッ…

松坂(3番打者がバントで…!?)

 パシッ

阿部「ちっ…」

松坂(ランナーを得点圏に運んで、4番に回す…。やっぱり信頼されてるんだ…)

阿部(でも、だからこそここでしっかり抑えるよ。敬遠なんてしなくていい実力が松坂くんにはあるんだからね)


松坂「ふぅーっ…」

阿部(さあ、投げて)



 下1 松坂ー!! 奪三振の鬼:+1

 1~3 うお、さすがエースで4番でキャプテン…
 4~6 三振は奪えなかったか…
 7~9 奪三振!!


 下1 0コンマ判定

 偶数 松坂強いよーいいよー
 奇数 げえっ、狙い打ちで一発を…2失点か…


 ビシュゥッ
 ギインッ

<ファール!


阿部(当ててきてるし…チェンジアップにも惑わされない…)

松坂(4球続けてのファール…。いつフェアグラウンドに飛ぶか…)

阿部(だからこそ…)

松坂(攻める姿勢――)

 ビシュゥッ
 ギィンッ

<ファール!


松坂(カウントはこっちが有利、ボール球でも振ってきてくれてるんだから…!)

阿部(怖がる必要はないよ!)

 ビシュゥッ
 カクッ

 バシィンッ

<ストライク、バッターアウトぉっ!!


松坂「やった…!」

阿部「ナイピッチ、松坂くん」


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃敵┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃4 ┃1 ┃0 ┃0 ┃1 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻


佐野「この回、あと1点取ればコールドじゃ」

佐野「だらだら9回までつきあわんでも、試合はまだ残っとる。ここでケリぃつけて、コールド発信じゃあっ!!」

 『おおおおおおおおっ!!』



 下1 コンマ

 1~3 しかし下位打線からなもんで…あっさりと8回に
 4~6 二死二塁で田中に回ってきましたぜ。田中がヒーローになるのかっ?
 7~9 田中からの好打順ならね、1点くらいね、きっとね!


<田中ぁーっ!

<あと1点でコールドだぞっ!!

<決めてくれー!


田中「俺をセーフティだけの男と思うなよぉ?」ニヤリ

松坂(田中くん、今度はどういう出塁するんだろう…)

松坂(二死の状況だから打つしかないだろうけど、長打を打つ時はいつも短打狙いに見せかけてたし…)

松坂(逆に、短打狙いって見せかけて長打を狙うパターンもあったけども…この場面じゃ、バントだけはないから守りやすいはず…?)

松坂(と、なると…?)


田中「にぃっしししし…」ニタニタ



 下1 田中ァッ!!

 1~3 おおお…田中を持ってしてもダメか
 4~6 決勝点は阿部なのかっ?
 7~9 ヒーロー、田中


田中(ここで一発、コールドだけどサヨナラホームラン…!)ブンブンッ

田中(それで明日のスポーツ紙は、超絶俊足超絶イケメン超絶パワー超絶巧打の田中様の文字が飾りつける…!!)ブンブンブンッ

田中「だぁっははははー!!」


松坂(笑ってる…)

加賀「まるで勝利を確信したようっすね! それにあのスイング練習、デカいのを打って自分のバットで決着てイメージすかね!?」

佐野「単なるアホじゃ」

中井「そうだな。バカだ」

加賀「先輩達きびしー!!」


 ビシュゥッ
 ギインッ

田中(あっ…!)

<うおーっ、田中、あれは長打狙いと思わせないための布石だったのか!?

<さすがだぜ、田中ぁー!!

田中(ぐおーっ、俺のバッティングセンスが良かったばかりにぃー!!)


阿部(あれは一発打とうとして、いいのが来たからいつものスイングで振り抜いたって感じか…)

阿部(まあでも、いいと思うよ。お陰でランナー一三塁だしね)



 下1 阿部ェッ!!

 1~3 おい阿部…
 4~6 ま、満塁か…
 7~9 投手を楽させるために捕手が試合を決める。捕手の鑑ですね!


阿部(よーし、俺も最後の打席になりそうだし派手に一発でも――)

 ビシュゥッ

阿部(あ、これいい球っ!)

 ブンッ
 キィンッ

阿部(打っちゃったー!)ダッ

<セーフ!!


<おおおおっ、満塁だ!

<1番、2番がちゃんと仕事して、クリーンナップでケリつける腹かっ!

<いいぞ新摂ー!!


阿部(ま、いっか…。でもそうなると、今日のヒーローは…)チラッ

久遠「まあ…バットでヒーローも悪くない」

田中(ああっ、絶対にあれは持ってかれる! スポーツ紙の一面全部持ってかれる!!)



 下1 久遠!!

 1~3 このピンチを凌ぐとは…さすがはエースで4番でキャプテン… 次の回の佐野っちでソロホームランってことだね!?
 4~6 綺麗なヒットで決めました。遊びはいらない、渋いっす
 7~9 おおお、1点でいい場面でもきっちりクリーンナップとしてツーベースとな?
  0   満塁弾


久遠「…来い」ゴゴゴ

 ビシュゥッ

久遠(初球カーブ…!)

久遠「くっ…!」

 ギィンッ

阿部(久遠がっ…!)ダッ

田中(打ち損じた…!?)ダァッ


 ビシュッ
 バシッ

<アウト!

<おおおおおっ!

<一打で終わる場面でも、きっちり守りきった!

<崩れないな! さすがはエースで4番でキャプテン…!!


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃敵┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃4 ┃1 ┃0 ┃0 ┃1 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻


久遠「…すまない、松坂…」

松坂「あ、だ、大丈夫だよ…。むしろ、もう1回投げられるってくらいだし…」

久遠「俺に替わってもいいぞ」

松坂「それは、ちょっと…」

久遠「…」

松坂「…」

加賀「先輩達、ほらほらっ、守備つかなきゃ!」



阿部(んー、粘るね…。さすがだよ)

阿部(でもあと1回…。凌ぐよ)

松坂(凌ぐ…!)



 下1 松坂ー!

 1 ガンガン三振狙ってこー!
 2 クロォス、ファイア!
 3 打たせて取る!!


 ビシュッ
 ブンッ
 バシッ

<ストライク、バッターアウト!!


阿部(よし…あと1人…)

阿部(それでチェンジして、佐野くん、中井くん、松坂くんで点取ってこの試合は終わりだよ)

松坂(あ…また代打…。ベンチの選手、全員出すような勢いかな…?)

松坂(でも、最後まで全力の投球するのが礼儀…のはず)

阿部(さあ、最後の打者、とりにいくよ)



 下1 松坂ァッ!!  奪三振の鬼:+1

 1~3 うおっ…
 4~9 ばっちり三振!


 キィンッ

松坂「っ…!?」

阿部(ええっ、代打で打っちゃう? さすがに追い詰められすぎて、ガンガン打つ気分になってきてるんだな…)

阿部(でもシングルヒット…。大丈夫だよ、勝ってるのはこっちなんだから)

松坂(……な、何か、さっきも満塁から得点できなかったし…今もあと1人でチェンジなのに打たれるし…)

松坂(全然、油断はできなくなってるんだな…)

阿部(だからって怖がっちゃダメだからね)



 下1 松坂くん…? 奪三振の鬼:+1

 1~3 えええ、二死から一三塁にまでなったの…?
 4~6 だ、大丈夫! 打たせて取った! ランナー出た分ね! ねっ!
 7~9 三振じゃい!


 キィンッ

松坂(連打――!?)

田中「ぬおっ…! ちくしょ、捕れねえっ!」

阿部(これが火事場の何とやら…かな?)

松坂(え、あれ…? 何で…? 調子悪くなっちゃってるわけじゃ、ない…と思うけど…)

阿部(不安にならないでいいよ…。球は悪くないんだ)

阿部(ただ向こうの打力が、一打席ごとの集中力が増してるんだよ…)

阿部(だから勝手にビビらないようにね)



 下1 ま、松坂ぁ… 奪三振の鬼:+1

 1~3 ま、満塁…なの…?
 4~6 打たせて捕ったよ…怖かったね…
 7~9 三振だよ…やっとだよ…


 キィィンッ

松坂(2アウトから…ま、満塁…? 3連打…?)

阿部「松坂くん、弱気にならない!」

松坂「っ…そ、そうだね…」

田中「打たせろー!」

佐野「何をもったいぶっとるんじゃ、ドアホがっ!」

中井「打たせりゃいいんだよ、打たせりゃ!」

久遠(打たれて、守れてないけどな…)


松坂(べ、別に…うん…。ど、土壇場で、追い詰められてるだけ…だよね…?)

松坂(こ、こっちは、いつも通りに…やることをやるだけでいい…はず…だよね…?)

阿部(動揺してきてる…? でもこっからが、松坂くんの本領発揮でしょ、しっかりしてよね)



 下1 松坂!! 奪三振の鬼:+1

 1~3 とうとう1失点…!
 4~6 中井~、ありがとー!
 7~9 追い詰められたかと思えば、3球三振ですからね、意味不明ですね


松坂(深呼吸をして…。後ろにはみんながいる…)

松坂(だから大丈夫…。阿部くんのミット目掛けて投げれば…それで今まで、やってきたんだ)

松坂「ふぅーっ…」

阿部(さ、落ち着いたら投げて)

松坂(大丈夫、投げられる…!)


 ビシュッ
 カクッ
 ギィンッ

<ファール!


松坂「ふぅーっ…」

 ビシュッ
 バシィッ

<ストライク、ツー!


松坂「ふぅーっ…」

 ビシュッ
 ブンッ
 バシィッ

<ストライク、バッターアウトぉっ!!


松坂「っ……! っし、っし…!!」グッグッ

阿部「ふぃー…踏ん張れたね、松坂くん」

松坂「うんっ…!」

阿部(あらー、いい笑顔…)


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃敵┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃4 ┃1 ┃0 ┃0 ┃1 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻



佐野「さて…決めるかのう」

佐野「揃いも揃って、チャンスで打てんで情けないやっちゃのう…」

佐野「点の取り方から覚え直した方がええんとちゃうか…ボケどもが」



 下1 ビッグマウスな佐野っちですが…

 1~3 佐野っち~?
 4~6 ちぃっ、フェンス直撃か…
 7~9 フェンス直撃からの猪突猛進ベースランでスリーベース
  0   ソロホームラン


 ビシュゥッ

佐野(スライダーか!)

 キィイイイイインッ

<でっけぇー!!

<入るか、入れ、入ってくれぇー!!


 ガァンッ…

<ふぇ、フェンス直撃ぃーっ!!

<佐野、爆走中だっ! 三塁まで突っ走れぇー!!

田中「いいぞ、佐野ー! 猪突猛進だぁーい!!」

松坂「すごい…! さっきまでみんな、あんなに打ちあぐねてたのに…!」


 ズザァァッ
 バシッ

<セェーフ!!


中井(やっぱ佐野かっけえわ…)

中井(でもって、ここで俺が打たねえとな…。松坂ばっかにいいとこ取られるのも悔しいし…)



 下1 中井がヒーローか!?

 1~3 久々に気負ったか…?
 4~6 かっこいい
 7~9 イケメン死ね!


 ビシュッ
 バシィィッ

<ストライク、ツー!

中井(疲れてるはずなのに、変化球のキレも、ストレートの球威も衰えてはいない)


 ビシュッ
 グンッ

中井「っ…!」グッ

<ボール、ツー!


中井「ふぅ…」

中井(見送って良かった…。あんな際どいもん、打ったってアウトになるしかならねえよ…)


中井(カウントはこっちが不利…。さあ、どう来る?)

 ビシュゥッ

中井「っ…!」ググッ

 バシィッ

<ボール、スリー!


中井「ふぅ…」

中井(これでカウント、2-3…。こっからが勝負…!)



松坂「中井くん…」ゴクリ

田中「頼むぜぇ、中井~…」

阿部(さすがにエースで4番でキャプテンだよ…。一打で終わりかねない場面で、コーナーへ投げ込むことへの躊躇もない。真正面から勝負するつもりなんだ…)

佐野(打て、中井)

久遠(打て)


中井「さあ、勝負――」

 ビシュゥッ
 カキイイイイインッ

中井「っしゃあ!!」ダッ

<佐野ぉー!

<いっけぇー!!

佐野「おおおおおおっ…!」ドドドッ

 ズザアアアアアッ

<セーフ!!

田中「な・か・いー!!!」ダダダッ

松坂「中井くんかっこいい…!」

加賀「すげえっす! 超かっけえっす!! ただのツーベースなのに!!」


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃敵┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃0 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃4 ┃1 ┃0 ┃0 ┃1 ┃0 ┃0 ┃1× ┃ ┃7 ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻



三橋「キャー!! キャーキャーキャー!!」

三橋「中井くんやっぱり素敵すぎるぅー!」

広田「何はしゃいでんだ、このオバハン…?」

三橋「ふんぬぅっ!」

広田「あだっ!?」




田中「ちぃっくしょぉー…囲み取材されてんのは、松坂と中井かよぉ…。ついでに監督…」

阿部「まあまあ、田中くんは渋かっこいいからさ。見てる人は見てるって」ポンポン

久遠「…」ゴゴゴ

加賀「久遠先輩、静かに闘志剥き出しにしすぎっす!!」

田中「分かるっ、分かるぞぉっ、久遠! 次こそ俺ら、大活躍しようぜ!?」

久遠「ああ」ゴゴゴ




 下1 なに、松坂が囲み取材だって…?

 1~3 取材受けヘタかっ! こりゃファン増えねえわ…
 4~6 自信のなさが謙虚さに取られてる…!?
 7~9 ファンいっぱいできそうね


 パシャパシャァッ

<松坂くん、8回表の時はどういう気持ちで投げてましたかっ?

<プレーをする時に心がけていることはっ?

<ずばり、今の目標は何でしょうっ?

松坂(し、質問が多すぎだよぉ…)

松坂(誰か助けて…)

 パシャパシャッ



阿部(おー、これは松坂フィーバーくるかな?)

阿部(学校に帰ってからどうなるか、気になるね…)



 下1 で、次の試合は?

 1~3 絶対王者、最強の帝央大付属高校
 4~6 選抜ベスト4
 7~9 選抜ベスト8


加賀「にしても、初戦がコールド発進てことはすげえとこまで行けるんすかね!?」

中井「そうかもな。準決勝までは手堅いんじゃないか?」

田中「それな~。俺らもスターの仲間入りか。遅かったけど、ちゃんと順当に!」

久遠「次は投げる」ゴゴゴ

佐野「阿部、次はどこじゃ?」

阿部「朗報ですよ!」

松坂「朗報? まさか、またコールドゲームできそうな――」

阿部「かの、帝王大付属高校です」

 『なにー!?』



 下1 帝王ネームドは…?

 1~3 ま、5人もいりゃええんとちゃうか?
 4~6 4人くらいでええやんけ
 7~9 3人でいいって
  0   6人…?



阿部「高校野球戦国時代とか言っちゃってもいいような、この高校球界において、絶対的覇者として君臨する帝央大付属高校」

阿部「実力至上主義、全員チート、金使いすぎ、全寮制、実力あれば上下関係なし、大会ごとに一軍メンバーがざざっと替わることもある」

阿部「もうね、遥か彼方、格上としか言いようがないくらい、超強いと評判です」

松坂「」

久遠「帝央か…」

田中「てえことは?」

中井「帝央に勝てば、俺らが最強」

佐野「無敗記録に泥つけるチャンスじゃのう?」ゴゴゴ

阿部「そーゆーことです!」

加賀(やっぱ先輩達すげぇー!!)


阿部「でもってー…今回、この春の大会で主軸になってる選手は……4人だね」

阿部「どいつもこいつもすごいよー」

阿部「でも、それ以外も基本すごいからね」


阿部「では紹介しましょう、まずはキャプテン!」

阿部「部員数133人をまとめ上げて、実力でその座を奪い取ったキャプテン!」



 下1 帝央キャプテン!

 お名前とポジションも、おなしゃーす!!

 名前と同時にコンマ判定っす
 偶数 誰かと因縁が?
 奇数 何もないよ~

駿河永久
投手


阿部「緑川晃!! ポジションは、ショート!」

田中「ショートでキャップか!? 超かっけえな、それ!?」

阿部「守備力抜群、肩もよし! あとイケメン」

田中「イケメンなら負けねえぞー!! 中井が」

中井「まあな…」

田中「けっ」


阿部「そしてそしてぇっ、どんどんいくよー!」



 下1~3 どんどんいくよ!

 帝央ネームドを3人ばかし、名前とポジション!

 採用安価でコンマも同時判定
 偶数 誰かと因縁あり
 奇数 何もなし

>>855ー857らへんからまた投下してもいいんで…


阿部「セカンド、中田二郎!」

田中「中田二郎?」

中井「どんな選手だ?」

阿部「守備も上手いし、打撃が上手いよ! 足も速いね!」

田中「…」

松坂「あれ、田中くん?」

田中「なるほどそうくるか…」

松坂「?」


阿部「続いて投手、剣崎盾!」

阿部「この人もすごいよー、本格派って感じ! 2年生! 秋は控えだったみたいだけど、この春大会はエースナンバーだね!」

久遠「本格派か…。燃えるな」

阿部「速球に加えてスプリットもあるし、コントロールも悪くない。いいよー、すごくいいよー」


阿部「さらに捕手、野村敦也!!」

阿部「彼もすごいよー。強肩強打、投手は叱って躾けるタイプ! 3年生!」

松坂「叱って、躾けるタイプ…」

中井「阿部で良かったな」


佐野「ショート、セカンド、ピッチャー、キャッチャー…。内野は充実しとるようじゃの」

阿部「もちろん、どの選手も他の学校なら余裕で主力なくらいの力はあるだろうね」

中井「その中で阿部が、1番マークするのは誰なんだ?」

阿部「んー…まあ、どの選手も恐ろしいね。一概には言えないけど…」



 下1 田中ァッ!

 偶数 なに、ご親戚? 田中の憧れ?
 奇数 色々だだ被りじゃねーか、ってライバル視!?


松坂「田中くん、どうかしたの?」

田中「………………セカンドで、足が速くて、打撃が上手くて、守備が上手い?」

田中「だだっ被りじゃねーかぁっ!!」

阿部「打順は1番です」

田中「さらにじゃねえかあっ!!」

中井「それがどうした?」

田中「どーしたもこーしたも、あるかっ! これは真に、田と中にふさわしいのが誰かを決めつけないとならねえぞっ!!?」

佐野「ドアホじゃ思うとったが、ここまでか」

加賀「田中先輩、気持ちが分かるっす!! 分かるっす!」

田中「分かるか、加賀ぁっ!」

加賀「はいっ!」

田中「でもお前の苗字はそう被らねえだろうが、こんにゃろう!」

加賀「逆ギレっ!?」



阿部「――で、この帝央との試合のやり口なんですけれどもね」

佐野「おう」

阿部「監督とあれこれ相談しておきました」

松坂「仕事が早い…」



 下1 どんな策なんや!?

 1~3 とにかくもう、全ての力を出し切りましょうって
 4~6 松坂と久遠の継投ですって
 7~9 ただただ、堅実に。みんなで点取って、みんなで守りましょうって


阿部「この試合、松坂くんと久遠くんを継投で使います」

阿部「状況によって、レフトに戻した一方をまたマウンドへ戻していくことも考えるそうです」

松坂「継投…」

久遠「投げられる…」

佐野「ほーん、そんで?」

阿部「あとは各自、やれることをやりましょう」

田中「丸投げかよっ!?」

阿部「帝央はこの数年、無敗神話を築いてるからね」

阿部「どんな方法だろうが勝てば、大金星なんだよ」

田中「中田もいるしな!!」

中井「…」

阿部「だからこそ、もう全力でぶつかっていくしかない」

阿部「そういうわけで佐野くん、ミーティング締めて」

佐野「おう」

佐野「ほなら、大金星掴むしかないんじゃ」

佐野「帝央ぶっ殺して、ワシらが最強じゃって日本に轟かせるんじゃ、ええのう!?」

 『おおおおおおおっ!!』

阿部「公共の場だから、大声はちょっとなー…」

 『…おお』



 下1 みんなでお宿に泊まってるんすよ…

 1 さっさと試合始めろや!
 2 誰かと話しましょうか? ※誰と、ての併記してね(女マネ除く
 3 さあ、お風呂だ!!(野郎だらけ…


 ガララッ

田中「いっちばん、乗りぃーっ!!」ザッパァンッ

<こら田中ー! 体洗ってから入れ、バカ!

<バカ田中!

<バ田中!

田中「何をぅっ!?」


佐野「ったく…風呂くらいゆったり入らせいっちゅうに…」

佐野「加賀ァッ!」

加賀「はいっ!?」ピシッ

佐野「背中流せ」

加賀「……は、はい。失礼します…」オソルオソル


阿部「んー…2人の筋肉を見比べると…」ジィィッ

松坂「…」シャカシャカ ←シャンプーなう

久遠「…」シャカシャカ ←シャンプーなう

阿部「……下半身は松坂くんの方が上だね。上半身は久遠くんの方がいいかも…」ジロジロ

松坂「あ、阿部くん…お風呂でじろじろ見るの…やめてくれない…?」


中井「~♪」ゴシゴシ

田中「なーかーいー…」

中井「っ…何だよ?」

田中「俺にもひとつ、イケメンになるコツを」

中井「………まず清潔さだろ。球児だからって教室でも泥まみれなままだったりすると最悪だぞ?」

田中「何っ? でも朝練の後どーすんだよ?」

中井「パン一になって全身を拭く。でもって、サッとだけ制服にシュッシュする。香りは甘めの方がいいぞ。ただし、ごくごく微々たる甘めだ」

田中「その心はっ?」

中井「気合い入れすぎると臭いはけっこう強烈だからな、逆にひかれる」

田中「なるほどっ!!?」

田中「じゃあその八頭身の秘訣はっ!?」

中井「背伸びしろ」

田中「なるほどっ!!?」



 下1 ドキッ!? 男だらけの男湯風呂!?

 1~3 松坂が、アンラッキースケベな目にっ!? トラウマもんですよ…
 4~6 ド変態なお話になったけど松坂が圧勝した
 7~9 疲れがお湯に溶け込んでいくようですよ…またーり…

こんな場面で0が出るのか…


 下1 0コンマ判定

 偶数 ナニがとは言いませんが、松坂は1番だったそうですよ? 自信がつく…のかぁ……?
 奇数 大乱闘!? お風呂場ベースボーラーズ!?


阿部「松坂くん、よく洗うねー…」

松坂「みんながちゃんと洗わなすぎじゃ…? 中井くんもまだ洗って…て、何してるの?」

中井「いや、あんまりムキムキになりすぎてもモテないからな…と思って。んー…」←鏡の前で全裸セルフボディチェック

阿部「…ふむ」チラッ

久遠「ん…?」

佐野「…何じゃ、阿部?」

阿部「ふむふむ…?」

田中「加賀ぁ~…足揉んでぇ~…」

阿部「ふーむ…」

加賀「何で裸でそんなことしなきゃいけないんすかー…」

阿部「ほうほう…」

阿部「松坂くん、ガード堅いね?」

松坂「え、何の話――」

阿部「ていっ」バッ

松坂「あ、タオルっ…!?」

阿部「!!?」

佐野「ん? ――っ!?」

中井「どうした、いきなり静かに――っ!!?」

田中「うおおおっ、松坂…!!?」

加賀「先輩やべーっす!!!!」

松坂「…………っ///」


阿部「……さすが、エース」グッ

松坂「何の、ことかな…?」

田中「何の、って、ナニのだろっ!?」

加賀「直だっ!?」

中井「いや、ギリ直ではなく言ってるだろ…」

佐野「…勝てんわ、ありゃあ」

久遠「…………さすがだな、松坂」

松坂「見ないでよっ!?///」



 松坂は みんなからの 羨望を ゲットした! ▽



 下1 さ、試合じゃ…先発は?

 偶数 もちろん、エース松坂!
 奇数 前の試合で松坂は完投だからね、久遠先発よ


佐野「ようやく、帝央一軍との試合じゃのう?」

阿部「二軍とやったのは1年前かぁー…」

松坂「勝てちゃったのが不思議な試合だったよね…」

田中「いーや、必然だな!」

中井「あの時の連中も、今日の試合相手に入ってたりすんのか…?」

久遠「さあな…。だが、戦って勝つだけだ」


佐野「ほなら、勝つぞぉっ!」

佐野「全国のドアホどもに、ワシらが最強じゃっちゅうて思い知らせるんじゃ! 行くぞぉっ!!」

 『おおおおおおおおおおおお――――――――――――――――っ!!!』



┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃帝┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃  ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃  ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻



緑川「必勝の俺達に、敗北はない」

緑川「いかなる相手だろうが、勝つぞ」

緑川「我ら帝王にあるのは勝利のみ! 栄光の果ての輝きを手に、行くぞぉっ!!」

 『うおおおおおおおおおおおおおおおお――――――――――――――――――――っ!!!』



<プレイボール!!



 下1 帝王からの攻撃!!

 1~3 久遠の球をガンガン打ってきよる…
 4~6 三振大好き久遠くんでも、阿部のつよぉーい指示で打たせて取る配球にせざるをえないのだ
 7~9 通用はしてる…けども全くもって油断はできましぇん!


 ビシュゥッ
 キインッ

<初球打ちぃっ!?

<ファール!


田中「ちぃっ、さすがは中田か…!」

佐野(セカンドからライバル視しとるわ、あのドアホ…)


阿部(初球から振ってきちゃうのか…)

阿部(なら、こっちも出し惜しみはしないでいくよ!)

 ビシュッ
 グゥンッ
 バシィッ

<ストライク、ツー!


阿部(でもって、一球外す…)

中井「…」ギュッ

 ビシュッ
 ズバアアアアンッ

<ボール!


阿部(引っかからないか…)

阿部(それなら、ここで…!)

 ビシュッ
 ギィインッ

<ファール!

阿部(内角へのストレートを…。油断ならないけど、タイミングはまだ合ってない。攻めきろう…!)

 ビシュゥッ
 カィンッ…

阿部(セーフティ…!!)



 下1 セーフティ!?

 1~5 絶妙すぎんよぉ…
 6~9 アウトやー!


<うおおっ、絶妙!?

久遠「くっ…!」パシッ

 ビシュゥッ
 ズザッ
 バシッ

<セーフ!


阿部(先頭打者を出したか…)

阿部(何でこう、田中くんと被りまくるかな…。厄介さも今のとこ、同じようなもんだけど…田中くんより断ぜん静かなのがどう影響するか…)


阿部(ここはゲッツー狙いでいくよ)

久遠(打たれた分だ、打たせて取る策に乗る…)



 下1 久遠!

 1~3 嘘っ、連打食らってクリーンナップ?
 4~6 よしよし、1アウト!
 7~9 ゲッツ! ゲッツゲッツ!!

勘違いだったら申し訳ないんだけど帝央に久遠の知り合いいるとかいう設定なかったっけ?


 ビシュゥッ
 キインッ

<連打ぁっ!?

<久遠が!?

<どんだけだよっ!?


久遠(ランナー一二塁…)

久遠(ここでクリーンナップ…)


阿部(要注意打者、その2――緑川晃)

阿部(正直、3番、4番が続く帝王クリーンナップはまとめて敬遠したいくらいだよ)

久遠(だがそれだけ燃える)

久遠(…勝負だな?)

阿部(勝負だよ)


緑川「…」ギュッ



 下1 久遠vs緑川!!

 1~3 久遠が初回で2失点しちゃう…?
 4~6 1失点で4番に…
 7~9 おおっ、強敵相手にアウト1つとれた!



>>887
あるやで コンマで出てくるかもやで


 ビシュゥッ
 グインッ

 キィイイインッ

<打たれたぁーっ!?

<久遠のカーブを、あんな綺麗に捉えたのかよっ!?


松坂(ダメだ、前に落ちる…! 飛びついて後ろにいかせるわけにはいかないから、すくって…!)パシッ

<ボール3つ!!

松坂「佐野くんっ――!!」ビシュッ

佐野(間に合うかっ…!?)

 ズザァッ
 バシィッ

<セーフ!!


松坂「っ…」

中井「ドンマイ、気にすんな」

中井(いや実際、松坂は外野が本職でもねえのに捕球時に送球する体勢を作ってたんだ…。なのにアウトにならねえって、相手がやべえんだよな)


久遠(ランナーは一三塁…。1失点か…)

阿部(それで4番キャッチャー、野村…)

野村「…悪くねえ投手だな」

阿部(体もおっきいし、まさしく、4番捕手って感じの選手だよね…)


阿部(緑川より、この人の方が怖いのに…これじゃあ…)

阿部(でも久遠くん、投げていくしかないよ)



 下1 久遠vs野村ァッ!

  1   一発…
 2~3 ランナー、一掃…?
 4~6 アウト1つ!
 7~9 ゲッツー!


 下1 0コンマ判定

 偶数 久遠…この状況で燃えてやがる…(炎上という意味でなく
 奇数 久遠…燃えてやがる…(炎上という意味で!?


阿部(久遠くん、大丈夫だよね…?)

阿部(あまり失点をするような投手じゃないんだし、けっこう心理的に動揺したり…?)

久遠「…」ニィッ

阿部(笑ってる…!? しかも見たことない笑顔で!?)

阿部(…頼もしいじゃん)


久遠(帝王を蹴った甲斐があったな…)

久遠(これだけの相手、味方にするよりも敵にした方が面白い…!)


 ビシュゥッ
 ズバアアアアアアンッ

<ストライーク!!

阿部「っ…ハハ」

阿部(いい感じに、力が乗ってきてるよ)


野村(伊達に関東大会出場ではないか…)

野村(だが俺達は、絶対覇者。負けはしないぞ――)


 ビシュッ
 グインッ
 ギンッ

田中「うおらああっ!」

 バシッ
 ビシュッ

<アウト!

<おおおおっ! すげえ、4番野村を打ち取ったぞ!?


阿部(これでアウト1つ…。長いアウト1つ目だったけど…)

久遠(悪いな、まだエンジンが入っていなかったようだ――)

 ビシュゥッ
 ズッバアアアアンッ

<ストライク、バッターアウトぉっ!!



┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃帝┃2 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃  ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃  ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻



田中「久遠が失点スタートなんてするくれえだし、ガンガン打たねえとなあっ!」

田中「中田ァッ、打つぞぉっ!!」

中田「っ…?」

阿部(そりゃ、いきなり指名されたって…相手からすりゃ謎でしかないよ)



 下1 田中ァッ!!

 1~3 ヤバいヤバい…守備もこれなん…?
 4~6 中田がっ…!?
 7~9 たーなかー!!!

てか1失点なのに帝央二点入れたの?


 ビシュゥッ
 ブンッ
 バシィッ

田中(速えっ…!?)

野村(……中田に何かあるのか? それなら、打たせてやる。中田、守れよ?)ギロッ

中田「…」


 ビシュゥッ

田中(打ちごろっ…!?)

 キインッ

田中「うおっしゃ――」

中田「!」

 バシィッ

田中「んなっ…!?」

 ビシュッ
 バシッ

<アウトぉっ!

田中「……ふ、ふっふふふ…それでこそだぜ…」


阿部(変にこだわっちゃって…)

阿部(ていうか今の、絶対に打たされてたよ…。やらしい配球しちゃって…)チラッ

野村「…」

阿部(……うーん、貫禄欲しいなあ、俺も)


 下1 阿部ェッ!

 1~3 三振…
 4~6 打たされたよまた…
 7~9 あーべー!



>>898 ごめんなさい間違いです 変な勘違いしてました

┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃帝┃1 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃  ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃  ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻


 ビシュゥッ
 バシィッ

<ストライーク!

阿部(…うーん、読めない)

阿部(わっかんないなー…狙いが…)


 ビシュッ
 キンッ

<ファール!

阿部(でも…多分、投手は抜いて投げてるんだろうな…)

阿部(いや、抜かせてるんだろうな…。余計なところで力を使うな…みたいな?)

阿部(ちょっと舐められてるみたいで、ヤダね、これは)


 ビシュゥッ
 ギインッ

阿部「っ…!」

 バシッ
 ビシュゥッ

<アウト!!


阿部(俺も打たされたかぁー…)

阿部「やらしいなあ…」



 下1 く、久遠!

 1~3 久遠もいいように…
 4~6 ちぃ、三振…
 7~9 く、くおーん! さすだよぉー!


 バシィッ

<ストライーク!


久遠(……抜いてる、のか?)

久遠「…」

久遠(面白くないな…)

 ビシュゥッ
 ズバアアアンッ

久遠「っ…」

久遠(かと思えば、球にいい球を…)

久遠(それなら――)


 ビシュゥッ
 ブンッ
 バシィッ

久遠「っ…!」

野村「セーブはできてるようだな…」ボソ

久遠(っ…セーブ、だと)



┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃帝┃1 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃  ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃  ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻



松坂(1回で、誰も出塁できずに…。どころか、久遠くんが失点して…)

松坂(やっぱりこれまでの相手とは、何もかもが違う…)



 下1 久遠!

 1~3 また打たれちゃうのっ?
 4~6 いや、打たれつつも無失点で切り抜けた
 7~9 がっつりエンジンかかってきましたぜぃ?


 ビシュゥッ
 ズッバアアンッ

<ストライク、バッターアウトぉっ!!

阿部(ええー? 今までエンジンかかってなかった、てこと?)

阿部(いやはや…捕手として自信なくしちゃうよ?)


 ビシュゥッ
 グインッ
 キンッ

佐野「うおらっ!」バシィッ

<アウト!


久遠(よし、これなら先頭打者へ戻っても大丈夫だろう…)

阿部(でも…9番はちょっと、一筋縄じゃあいかないんだよ?)

久遠(剣崎盾か…)


剣崎「…」ギュッ

阿部(投手だからって9番に置かれてるだけだよ)

阿部(打撃能力は帝央にふさわしい)



 下1 久遠vs剣崎!!

 1~3 うへえっ…
 4~6 エンジンかかってますもん
 7~9 奪三振の鬼(元祖


剣崎(コントロール、並。速さ、良。変化球、並。スタミナ、並…てとこか)

剣崎(あっちゃんから三振てのはスカッとさしてもらったけども…打てないイメージはない)


 ビシュゥッ
 ズバアアアアンッ

<ボール!

剣崎(ボール球からなら、俺に警戒か…?)

剣崎(2球続けてボールなら、3球目はゾーン)

 ビシュゥッ
 グゥンッ
 バシィッ

<ボール、ツー!


剣崎(カーブで外へ…)

剣崎(緩急を使って、ゾーンにくるか)


 ビシュゥッ

剣崎「…」

 ズバアアアアンッ

<ストライク!

剣崎(で、ここから…またボールへくる。ただし際どいところ)

剣崎(だからあえて、その際どさを利用して――)


 ビシュゥゥッ
 キィインッ

阿部(ボール球を振りにきた…!?)

剣崎(よし、ドンピシャだぜ――)


阿部(でも、2アウトだよ)

阿部(中田で切って、次の回、少しでも楽にしよう)



 下1 久遠vs中田

 1~3 中田やばぁ…
 4~6 よーし!
 7~9 奪三振の鬼ィッ!(元祖


阿部(どうあっても打ってくるんだ)

阿部(だから打たせるしかないんだよ!)

 ビシュゥゥッ
 キィンッ

阿部「田中くんっ!!」

田中「今度こそぉっ!!」バッ

<うおおっ、田中際どいっ!

田中「これでぇっ!」

 ビシュッ
 バシィッ

<アウト!!


久遠「よし、もうやらせないぞ」

阿部「この調子でね」

田中「うおっしゃ、っしゃっしゃー!!」


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃帝┃1 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃  ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃  ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻


佐野「さあて、絶対王者のお手並み拝見じゃのう…」

佐野「抜いて投げりゃあ、ぶっ叩くぞボケが…」ゴゴゴ

野村(この男には抜かせられないな…)

剣崎(セーブして投げるのが課題だとか言っちゃといてっすか、あっちゃん?)

剣崎(いいけどさあ、久々の上等な相手なんだし)


 下1 佐野ォッ!!

 1~3 さ、佐野がぁ…
 4~6 ぶっ叩いたはずだったのに、何じゃあの二遊間…?
 7~9 さす佐野ォッ!!


野村(油断するなよ)

野村(甘い球投げれば、こいつはスタンドだって簡単に運べるぞ)ギロッ

剣崎(へーへー、あっちゃんは意外と心配性なんすねー!!)

 ビシュゥッ

佐野「甘いわ――」

 カキイイイイイインッ

剣崎「――っ」


<佐・野ぉおおおおおお――――――――――――――っ!!

<かっけえええええっ!

<でっけえええええっ!


<けど外野、深いとこ守りすぎだろっ!?

<捕られるんじゃ…!?

 ガスンッ…

<フェンス直撃っ!!

<さすが佐野だぁーっ!!



 ズザァッ

佐野「もうちいと上じゃったかのう…」

<佐野のツーベース! 中井、いってくれぇー!!



 下1 中井ィッ!!

 1~3 しかし中井はいいように弄ばれる… 佐野しか敵じゃねえってか!!?
 4~6 食らいついたのにセンターラインやべえよおい
 7~9 無難に送った… 松坂、出番だぜ?


 ビシュッ
 ギインッ

<ファール!


野村(次で締めるぞ)

剣崎(オーケー、あっちゃん)

 ビシュゥッ
 ギンッ

<ファール!


中井「ふぅっ…」

野村(今のをまだ粘れたか…)

野村(うちなら下位打順にはおけそうだな)

野村(だが、それ止まりだろう――)


 ビシュゥッ
 キンッ

中井(よっし――!)ダッ

<中井が打った、ピッチャー横っ、抜けるかっ!?


緑川「ふっ!」バッ

 ビシュゥッ

中井(あれを止めて――!?)

 バシィッ

<アウト!

<ああ~っ…中井でもダメかっ!


中井「ちぃっ…松坂、二遊間は避けろ。その方がいい」

松坂「う、うん…」

松坂(て言われても…ここまで見てる限り、いいように打たされるんじゃ…?)



 下1 松坂!

 1 当ててこう…
 2 ライト方向へ打ち上げられれば、佐野がサードに進めるんじゃ…?
 3 引っ張れば遠くまで飛ばせる…?


松坂(佐野くんを返すためには、やっぱり長打しかない…)

松坂(思いきり引っ張って、レフトを超えるくらいの打球で…一気に佐野くんを…)


剣崎(松坂か…)

剣崎(全然知らねえ選手だけど…打者としてどうなんだっけ? 本職は投手のはずだっけ…?)

野村(油断ならない打者だ…。ここぞで得点に絡む勝負強さを持っている)

野村(だが、佐野ほどではないからな)


松坂(引っ張る…!)

野村(抜いていい。打ち取る)


 下1 松坂vs剣崎!

 1~3 あっさり…
 4~6 佐野の猪突猛進で、結果犠牲フライ
 7~9 いっちゃった♪


 ビシュッ
 ブンッ
 バシッ

<ストライーク!


松坂(あれ…?)

 ビシュッ
 バシィィッ

<ストライク、ツー!


松坂「…」

野村(本当にこれが、データ通りの選手か…?)

 ビシュッ
 ブンッ
 バシッ

<ストライク、バッターアウト!!


松坂「………あれ?」



 下1 二死から佐野は…

 1~6 帰れるはずもなく…
 7~9 惜しくも…


 バシッ

<ストライク、バッターアウト!!

佐野「ちぃっ…」

佐野「さすがにワシだけで点は取れんぞ…?」


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃帝┃1 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃  ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃  ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻


阿部「2番から4番まで回るよ」

阿部「細心の注意を払って投げてね」

久遠「ああ」


長島「松坂」

松坂「っ……は、はい?」

長島「試合展開に関わらず、5回表はお前でいくぞ」

松坂「…はい!」



 下1 久遠vs2巡目の上位打線

 1~3 無死一三塁で4番野村…
 4~6 先頭打者は出さなかったぜぃ!
 7~9 ガンガン投げてるね…抑えられそう



 ギンッ

佐野「ぬっ…!?

<佐野が捕れなかった!?


緑川「ふっ!」

 ギイインッ

<また緑川に打たれたぁーっ!?


久遠「…まあ、いいさ」

久遠「ここからまた、抑えきればいい」

阿部(無死の一三塁…4番野村…)


野村(本調子になってきたか…)

阿部(守りやすい場面なんだ、攻める姿勢でいくよ)



 下1 久遠vs野村!

  1   一発
 2~4 うお…また1失点…
 5~7 久遠くんさあ、それ続けよーよぉ…
 8~9 三振や!!


 ビシュッ
 ズバアアアアンッ

<ストライーク!!

野村(…こいつ)

阿部(久遠くんさあ…)

久遠(…点をやらなければ、問題ない)


 ビシュゥッ
 グンッ
 キィンッ

<ファール!


阿部(…何か今日、不安定かもな)

阿部(ピンチになって、相手が強打者で…そこで力が発揮されてるって…)

久遠(いけるな…!)

 ビシュッ
 ギインッ

久遠「!!」バッ

 バシィッ

<アウト!

<うおおっ、ピッチャー強襲を飛びついて止めた!?


阿部(…もしかして、帝王を意識しすぎてるんじゃ…?)

阿部(久遠に限って…ないとは思ってたけど…それとも今日だけの偶然…?)



 下1 一死一三塁から…?

 1~3 うお、1失点かよ…帝央こえーわ
 4~6 一気にゲッツーで持ってった!
 7~9 三振の鬼ィッ!!


 ギインッ

田中「うおおおおっ!」

 バシッ
 ビシュッ

<アウト!

阿部「ファーストもいける!」

 ビシュゥッ
 バシッ

<アウト!


阿部「よっし…凌いだ」

久遠「…阿部のリードのお陰か」

阿部「………守備のみんなのお陰だよ」


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃帝┃1 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃  ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃  ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻


田中(今度は中田のことは置いといて…ただ出塁するだけだ)

田中(にしても、手え抜いてぽんぽん翻弄してくるからな…)

田中(阿部も絞りきれねえって言ってたし…どうするか…)


 下1 田中っ!

 1~3 立ち塞がる中田…
 4~6 守備力高っけーなあ、おい…
 7~9 さす田中ァッ!!


田中(前の打席…きっと打たされた)

田中(だったらまた、打たせてこようとするんだろう?)

田中(それを逆に狙い打つ。頼むぞ…)


 ビシュゥッ
 ブンッ
 バシィィッ

<ファール!

野村(迷いなく振った…?)

野村(少し様子を見るか…)


 ビシュゥッ
 カクッ
 ブンッ
 バシィッ

<ストライーク!


田中「…」

野村(うるさい選手の印象があったが…)

野村(さっきまでのスイング、アウトコースに積極的に手を出していたな。流し打ちでもしたいのか…?)

野村(それなら――)


 ビシュゥッ

田中(外角――、だけのつもりがねえ!)

 カクッ
 キイインッ

野村(何っ、落ちるボールを狙って!?)

田中「だぁっははははー!!」

田中「俺は新摂の1番バッターなんだぜぇー!!?」

<田中すっげー!?

<佐野に続いてようやく打てたかっ!!



阿部(さっすが~)

阿部(誘導してからの狙い打ち? よくもまあ、そんな博打を考えて、実行できるよね…)

阿部(不安要素が多くて俺はそこまではできないよ…)



 下1 阿部!!

 1~3 送りバントのつもりだったのに、一塁ランナーを刺してきた…よく刺したな!?
 4~6 凡打…
 7~9 堅実な送りバントで


 ビシュッ
 ギンッ

阿部(うわ、クソ…!)

田中(阿部のゴロ――せめて送りバント程度にはしたいぃっ…!!)ダダダダッ

 ズザァァッ

 ビシュッ
 バシッ

<アウト!


<田中はどうにか進めたかっ!?

<危なかったな!

阿部(ら、ラッキー…かな?)



 下1 そして久遠!

 1~3 久遠にも抜いてとかね…
 4~6 三振されてもーたぁ…
 7~9 久遠やったね


 ビシュゥッ
 ブンッ
 バシイイッ

<ストライク、バッターアウトぉっ!

久遠「っ…」


野村(それでいい…。あえて、抜いて投げる)

野村(スタミナを温存しつつ、必要な打者に必要なだけの力配分をするんだ)

野村(その余裕が、相手にされていないと感じた打者をムカつかせ、余計な力を入れさせる)


佐野(田中が二塁か…)

佐野(ほなら、1点は返せそうじゃのう)




 下1 剣崎vs佐野!

 1~3 ぬぐぐ…佐野っちがあ…
 4~6 敬遠…だと…? それが帝央のやり方かあっ!?
 7~9 さす佐野、1点返したァッ!!


野村(ランナーが得点圏にいる場面…)

野村(これは1点を与えかねない状況だな)

野村(……5番と6番なら、抑えられる)スクッ


 ざわっ…

<野村が立ったぞ…?

<佐野と勝負しないのかよっ!?


佐野「…ふんっ」

<ボール、フォア!!



中井(…舐めてるのか…それとも佐野を、それだけ警戒したのか…)

中井(両方、いいとこ取りって線が濃厚かあ…?)



 下1 中井ィッ!!

 1~3 いいように…ゲッツー…
 4~6 いーよーに…三振…
 7~9 中井が、同点にしてくれたぞー!!


中井(でもな、手ぇ抜きながら――その上ナメんじゃねえぞっ!!)

 ビシュゥッ
 カクンッ
 キイイインッ

<イ・ケ・メ・ン~っ!!

<死ぃねええええええええええ――――――――――っ!!

<よっしゃあ、同点だぁー!!!


田中「よっしゃ、中井ナイスだぜぇっ!!」

佐野「それでええわ」


松坂(あれ…?)

松坂(1点返して…同点になった場面で、ランナーが、一二塁…?)

松坂(でもって…二死…?)


野村(……ナメすぎたか)

野村(これ以上、調子には乗らせられないぞ)

剣崎(そんじゃ途中交替されちゃうじゃないすか)

野村(勝利こそが最優先だ)

剣崎(ま、いいっすけど…)



 下1 松坂!!

 1 当てるのだ!
 2 長打をば!
 3 よく見て打てそうなとこで…


松坂(と、とにかく…)

松坂(考えなしじゃ、当てようもないのは前の打席で分かったし…)

松坂(しっかり見て、しっかり打てそうなとこを…)


 ビシュゥッ

松坂「っ――」

 ズバアアンッ

<ボール!

松坂(球威が…)

松坂(もしかして…同点になったから……手を抜くの、やめた?)

松坂(それでもさっきまで、全然打てなかったのに…それじゃ…?)



 下1 松坂!!

 1~3 見逃し三振…
 4~6 またもや、三振…
 7~9 満塁ッ!!


松坂(スプリット…かな)

松坂(この落ちる球…いきなりストンと落ちてくるけど、落ち幅はそこまででもない…)

松坂(気づかれないよう、スイングで一歩踏み出しながら、落ちる前に叩けば…)


 ビシュゥッ

松坂(踏み込んで…!)

 ズザッ

野村(こいつ――)

 ブンッ
 バシィッ

<ストライク、バッターアウト!!

松坂(………落ちなかった…)

野村(…変化球を狙い打とうとしたのか…?)


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃帝┃1 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃  ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃0 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃  ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻


久遠(確か、5回で松坂が登板するんだったか…)

阿部(この1イニング、思いきりいくよ)

久遠(俺の役目は、ここで徹底的に打者を黙らせること)

阿部(でもって、流れを松坂くんに繋ぐんだ)



 下1 久遠!

 1~3 帝王こっえ~…
 4~6 うひょぉぉ…凌げたよぅ…
 7~9 久遠、いい流れだよ!!

スコアボード今度は新摂側の1点抜けてる


阿部(帝央の下位打順は、他校なら上位打線だよ)

阿部(ここまで通用してきてるとは言え、誰もがいいセンスをしてるんだ)

阿部(強気はそのまま、慎重に!)

 ビシュゥッ
 ズバアアアンッ

<ストライーク!


 ビシュッ
 グンッ
 キインッ

<ファール!!


久遠(ここも三振で…!)

 ビシュッ
 キインッ

阿部(打たれたっ…!? ライト前…!)

 バシッ

<セーフ!


久遠(…なるほど、手応えがある)

阿部(久遠くんの調子に今日はムラがある…にしても、今は良かったのにな)

阿部(怖いね、やっぱ…)



 キインッ

久遠(またか――!?)

松坂(深いとこまで…!?)ダダッ

中井「松坂、中継!」

松坂「ふっ!」ビシュゥッ

 パシッ…


阿部(っ…二連打…。無死二三塁…!)


剣崎「おなしゃーす…」

阿部(しかもここで…9番剣崎…)

久遠(望むところだ)



 下1 久遠くんっ!?

 1~3 下位打順だろーが帝央っすわ… 2失点…返せたと思ったのにここで…
 4~6 無死満塁で…中田ぁ…
 7~9 三振! 依然、二三塁…


剣崎(ムリしてフォアボール出そうとしねえから、打てるんだよなー)

 ビシュゥッ
 カキイイイインッ

阿部(デカい…!?)

中井「クッソ、ぽんぽん打ちやがってぇ…!!」ダダダッ

<中井が追ってるけどっ…!?

 ガスンッ…

<フェンス直撃でっ!?

<サードランナーがっ!? 1失点…!?

阿部「バックホーム!!」

中井「いっけ、オラァっ!!」

<出た、中井のレーザービーム!!


 ズザアアアッ
 バシイッ

<セェーフ!

<うあああっ!? 2失点かよぉっ!?

<帝央強すぎんだろっ!?


久遠(……ここまで、まだ、ノーアウト…?)

阿部(強い…)

松坂(これが…絶対王者、帝央…)



 下1 久遠vs中田!

 1~3 打たれる…
 4~6 セーフティでランナーをサードへ…
 7~9 三振!!



>>954 あざっす
┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃帝┃1 ┃0 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃  ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃0 ┃0 ┃1 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃  ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻


久遠(だが、こんなところでっ…!)

 ビシュゥッ
 ズバアアアンッ

<ボール!

久遠(負けるつもりは、ない…!)

 ビシュゥッ
 ギインッ

<ファール!

久遠(点は取り返せばいい、だけだ…!)

 ビシュゥッ
 グィンッ
 ブンッ
 バシッ

<ストライク、ツー!

久遠(このイニング、投げきる…!)

 ビシュッ
 ズバアアアアンッ

<ストライク、バッターアウト!!


阿部(持ち直せたか…? それでも、2点差になった…)

阿部(ここからは、もう失点できないよ…)

久遠(…思った以上に、いつもより消耗している気がするが…)

久遠(次は松坂がいる。全力で投げていけばいい…!)



 下1 いってお願い!

 1~3 ランナー二三塁の…帝央キャプテン…
 4~6 あと1人…
 7~9 三振!


 ブンッ
 バシィィッ

<ストライク、バッターアウト!

久遠「よしっ…!」

阿部(危なかった…)

田中「最初っからそれやれ、それ!」

久遠「分かった…。だったら早めにまたマウンドへ戻すよう監督に言ってくれ」

田中「そこまではしねーよ!」

佐野「松坂、ビビったら負けじゃぞ?」ゴゴゴ

松坂「あ、はい…」

佐野「ワシにビビんな!!」

松坂「ひっ…」


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃帝┃1 ┃0 ┃0 ┃2 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃  ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃0 ┃0 ┃1 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃  ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻


 下1 新摂下位打順!!

 1~6 アカンよな…
 7~9 フォアボール出塁できたランナーで田中に回ったぜ! 二死だけど…


<アウト!!

松坂(切り替えていかないと)

松坂(ビビったら負け…って佐野くんに言われはしたけど……)

松坂(………………………………思い返すとけっこうビビってたような…?)


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃帝┃1 ┃0 ┃0 ┃2 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃  ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃0 ┃0 ┃1 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃  ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻


阿部(松坂くんが、帝央にどこまで通用するか…)

阿部(とにかくクロスファイアで押し切るしかないか…?)

阿部(……右手の調子が…使えるなら……)

阿部(………いや、ダメだ。まだ、使えない、使わせられないんだから)

阿部「さあ、しまってこーぜ!!」


松坂(いきなり…3番、ショートでキャプテン…)

阿部(長打力を買われて野村が4番にいるだけで、この人もバリバリの4番タイプの打者だよ)

阿部(甘い球なんか見逃しようもないんだ。あと5回。松坂くんからすればスタミナは余裕なんだから)

阿部(全球、全力でいってもらう!)



 下1 松坂、登板ッ!

 1 クロスファイア!!
 2 三振狙いィッ!
 3 打たせてこー!!


阿部(こういう時こそ、頭を使って…)

阿部(緑川の今大会でのデータは押し込んできてるんだ…)

阿部(松坂くんのピッチングで、三振を狙うには……)


松坂「ふぅーっ…」

 ビシュッ
 バシィィッ

<ボール!


松坂「ふぅーっ…」

 ビシュゥッ
 カクッ
 ギインッ

<ファール!


松坂(ボール球は見極められて…シンカーはファールにされた…)

阿部(チェンジアップを持ってることは十中八九知られてる…。だからあえて、使わないでいく)

松坂(阿部くんを信じて…投げる)

松坂「ふぅーっ…」



 下1 松坂vs緑川!!

 1~3 ええっ…? いきなりツーベース…?
 4~6 セカンドの田中を狙い打って、ぶち抜いて、出塁した…?
 7~9 三振ッッッ!!!!


 ビシュッ
 ギインッ

<ファール!


松坂「ふぅーっ…」

緑川(投球間隔が短いな、バッテリー間の意思疎通はしっかりできているか)

 ビシュッ
 バシィンッ

<ボール、ツー!


松坂「ふぅーっ…」

 ビシュッ
 ギンッ

<ファール!


阿部(ここでっ…振ってちょーだい!!)

 ビシュッ
 ブンッ
 バシィィッ

松坂「~っ…! っし!」

緑川(……タイプの違う、エースの実力を持った投手が2人か)



野村(2人目の投手…背番号1のエースか)

野村(データを見た限り、こいつは秋の完投大会で故障して投げなかったみたいだが…それまでは全試合で関東してきた…)

野村(スタミナだけなら一級品。久遠を先発させて、粘り強くこいつで俺達に食らいつくって采配か…?)

野村(三振を大量に稼ぐ投手じゃないって前情報だったが…前試合を見た限り、そうでもなさそうなタイプだったな)



 下1 松坂vs野村!!

  1   一発…
 2~4 ツーベース…
 5~7 シングルヒット…
 8~9 打たせてとれた…
  0   三振ッ!!

すまぬ、奪三振の鬼補正忘れてた! だから1+1で、2の判定でっせ…


 ビシュゥッ
 カキイイインッ

松坂「っ…!?」

久遠「やらせる、かっ…!」ダンッ

中井「久遠、無茶すんなっ!?」

 ポトッ…

久遠「!?」

中井「言わんこっちゃ、ねえっ!」パシッ

 ビシュゥッ
 バシイッ

<セーフ!


久遠「…すまない」

中井「いや、フライにできりゃあそれが良かったしな…。松坂に言っとけ」



松坂(一死二塁…)

阿部(中井くんのフォローが早くて助かったよ…)

阿部(それに結果として、帝央の3、4番に一死二塁なら上々だ)

阿部(けど、こっから先も油断は大敵だよ!)



松坂「ふぅーっ…」



 下1 奪三振の鬼! +1

 1~3 おうおう…もうピンチか…
 4~6 よ、よし…かろうじて…無失点…
 7~9 三振ッ!!


 ビシュッ
 ブンッ
 バシッ

<ストライク、バッターアウト!!

<チェンジアップ決まったぁー!!


松坂「はぁ…良かった…怖かった…」

阿部「このこわーいのが、まだまだ残ってるからね」

松坂「はい…」

久遠「松坂、さっきは悪かったな」

松坂「っ…う、ううん、僕も…同じことしたと思うし…」

松坂「バットで、取り返そう……?」

久遠「…そうだな」


┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳
┃  ┃1 ┃2 ┃3 ┃4 ┃5 ┃6 ┃7 ┃8 ┃9 ┃計 ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃帝┃1 ┃0 ┃0 ┃2 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃  ┃
┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋━╋
┃新┃0 ┃0 ┃1 ┃0 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃  ┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻



 今夜は、ここまで!!
 あざっしたー

ほならね、次スレで始めますからね、よろしゅう願いますぅ~
こっちは埋めちゃってもええです


 【オマケ・お弁当】

<いっただきまぁーっす!!

田中「おおっ、今日の俺の弁当、唐揚げ入ってるっ! やりいっ!!」

松坂「いいなあ…。うちなんてよく分からない白和えと、よく分からないののコロッケとひなびかけのサラダなのに…」

田中「だぁっはははー、羨ましいかね、松坂くぅーん? でもよく分からないのと唐揚げ様を交換するわけにはいかねえなー」

阿部「ふっふっふ、甘いね、田中くん…」

田中「何をぅっ!?」

阿部「唐揚げもいいけど、うちのお弁当には唐揚げに、さらに卵焼きまでついてるんだよ?」

田中「なっ、何ぃっ!!? か、唐揚げに、卵焼きもプラスだとぉっ!? あ、味つけはっ…? 甘いやつ? しょっぱいやつ?」

阿部「ダシ巻き」

田中「ま…負けた…」orz

松坂「あ、いいなー、阿部くんのお弁当…」

加賀「そんなら俺っ、ご飯がチャーハンっすよ?」

田中「何だとぉっ!?」

阿部「うわ、ほんとだっ? しかも卵焼きと、唐揚げ完備…!? 負けた……」

松坂「おいしそう…」

加賀「松坂先輩、食べますっ?」

松坂「え、いいの?」

田中「俺にもよこせぇー!」

阿部「俺もっ!」

佐野「うるさいわ、静かに食え、ドアホ!!」

阿部「はいはい万年カップ麺くんは参加できなくてさみしいですね――て、あれ? 何その、かわいいお弁当?」

田中「うお、マジだ。何その水色のかわいい弁当箱っ? しかも彩りいいしっ?」

佐野「よう分からんが、クラスの女子がくれたわ」

 『何ぃぃいいいいっ!?』

松坂「へえー…すごい…」

阿部「さ、ささささっ、佐野、佐野くんにっ…お弁当を作って、きてくれる…女子っ? どんなっ!? 女子プロレス部なんてないよね、うち!?」

田中「女子柔道部とか、女子ウェイトリフティング部とかっ? そういうのだろっ!?」

佐野「ないわ、ボケ」

中井「女子柔道部と、女子レスリング部ならあるな」

久遠「俺も女子からよく、弁当をもらうな…」モグモグ

田中「何ぃっ!? って、お前はいくつ弁当箱抱えてんだっ!? そして全部食うのかっ!? 食っちゃうのかっ?」

久遠「食べるぞ?」

阿部「まあ…久遠くんはね、モテそうだよね…。でもって、けっこうもう、割と休学が金銭的事情って周知されちゃってるんだっけ?」

久遠「中には練習の後、ファミレスでご馳走したいとかいう子もいたが…」

田中「キィエエエエエエエ!!!」

久遠「重そうだからやめておいた」

松坂「お弁当はもらうのに…?」

中井「ところで、俺の弁当は――」

阿部「あ、中井くんはどーせ自分で作ったとか言うんでしょ? 知ってる、知ってる」

田中「はいはいメシは見た目からなー、知ってる、知ってる」

中井「お前らっ…!」


 【オマケ・お弁当~その2~】

松坂「あっ……! お、お弁当…家に忘れた…」

田中「マジかよっ!? そうだ、久遠、お前、いっぱいもらってるんだろ? 分けてやっ――」

久遠「ん?」モグモグ ←まっしろおにぎり1個だけ

中井「そうか、休日の練習だから久遠も佐野も弁当もらえずか…」

佐野「うるさいわ」ズルズル

阿部「それじゃあ、近くのお店で買ってくる?」

松坂「今月もう…お小遣いなくて…」

田中「マジかっ? 何に使った!?」

松坂「…………………っ…」フイッ

田中「黙秘か、黙秘なのかっ!? お前また、R指定じゃねえのに何かすげえ漫画でも見つけたのかっ!? 教えろよぉー!!」

阿部「まあまあ、それは置いといて…。えーと…とにかくご飯は食べなきゃ、午後の練習できないからね。んー、みんなで分け合う…?」

中井「つっても、松坂、戻ってくんの遅かったし…すでにして、全員、残飯みたいな状態だぞ?」

松坂「それに悪いし…」

阿部「そうだよねえ…困ったね」


 バンッ

夕実「偶然聞こえちゃったけど松坂くん、お弁当ないんだって? それなら、これ、食べていいよっ!!」

松坂「うぇっ…あ、ありがと――」

 バンッ

光「松坂先輩のお弁当がないって本当ですかっ? あの、良かったらこれっ…愛情込めて(親が自分に)作ったので食べてくださいっ…!!」

松坂「え、えっ…?」

夕実「…」ジトッ

光「…」ジトッ

 バチバチバチ…

松坂「え、ええっと…?」

夕実「ひ、光ちゃんは若いんだからっ、いっぱい食べなきゃ大きくなれないよっ? それにあたしはほら、合間にささーってどこかでお弁当買ってきて食べるし」

光「そ、そんなの申し訳ないです…! そ、それにもう…そんなに大きくならなくてもいいですし…高校生ですから」タプンッ

夕実「…」ピキッ

光「あ、あれ…夕実先輩…?」

夕実「と、とにかくっ! 光ちゃんはいいのっ!」

光「で、でも…!」

松坂「あ、あの……気持ちはありがたいけど、2人のお昼がなくなっちゃうのは申し訳ないから、ムリしないで…」

夕実「じゃあ半分!」

光「分け合いませんかっ?」

松坂「えええっ…?」

阿部「あ、それいいじゃん」

夕実・光「「えっ?」」

阿部「だからー、2人が自分のお弁当を半分食べてー、松坂くんはそこから半分ずつもらえば、一人前食べられるでしょ?」

夕実(さすが阿部くん分かってるぅっ!!)

光(でも阿部先輩にも松坂先輩は渡しませんから…!)

松坂「あ、あのー…僕の意見は…?」

夕実・光「「さ、召し上がれ♪」」


 【オマケ・頼れる親分、佐野キャップ】

阿部「はいこれ」ドサッ

佐野「……何じゃ、この箱は? 中身も…何じゃ、この紙切れ。二つ折りにして…」

阿部「軽い思いつきで、面と向かって言えない部内での悩みごとその他もろもろを募集してみたらこんなに集まっちゃいました」

松坂「軽い…思いつき…?」

阿部「匿名で書かれてるから、佐野キャップはこれに的確なアドバイスを返すこと!」

佐野「やれるかボケがっ!」

阿部「まあまあまあ…悩める子羊ちゃんが、頼れる佐野くんに悩みを相談したい~って。何か、コルクボード的なの買ってきて張っちゃうから。来週までによろしくー」

佐野「こんのドアホめ…」



中井「――んで…その回答がこれか…? 佐野も律儀に、ちゃんと答え書いたんだな…」

田中「どれどれー? えーと、『どれだけ素振りをしても一軍に入れるほどの自信がつきません』…。アンサーは…『素振りは質と量を両立させろ、ドアホ』…か」

中井「『試験の成績が落ちたら野球を辞めろと親に言われました。どうすればいいか分かりません』に…『その程度で辞められる野球バカはこのチームにいないわ、ドアホ』…て」

松坂「回答になってないような…?」

阿部「いやー、面白いね、意外と。これ。――てことで、第二弾もあるからねー」ドサッ

佐野「」



久遠「ふむ…」

松坂「あれ、久遠くんどうしたの? …あ、それこの間の、佐野くん相談室の…?」

久遠「ああ。返事が貼り出されていてな」

松坂(書いたんだ!? ていうか…どんな相談を…?)

 Q:時折、ブルペンに獲物を狙うような眼光で現れる女マネで、練習に集中できない
 A:直接注意しろ、ドアホ

久遠「目から鱗だな…」

松坂「…それで、いいんだね…?」



中井「――つうか、これ、地味に人気だな…。佐野のこれ、回答になってるかどうか怪しいのばっかなのに」

田中「いやー、俺はこれの人気の理由が分かったぜ?」

松坂「分かったの?」

阿部「聞きたい、聞きたい」

田中「ズバリっ、佐野の答えは投げやりなようで、実際はかなり背中を押す!!」

松坂「おおっ…?」

中井「つーと、つまり……ああ、なるほどな…? 言われてみれば…」

松坂「え、えっ…?」

阿部「うんうん、短い言葉でド直球にああだ、こうだ、って決めつけて答えるから、自己肯定感が得られて応援される気になるってことだね」

松坂「さ、佐野くんすごい…!」

阿部「――てことで、第3弾のお便りでーす」ドサドサッ

佐野「待てコラボケカスっ!!」

阿部「うわっ、佐野っちがキレた!? 部内暴力はんたーい! 佐野くんのキレ癖をどーにかする方法教えてー!」ダダダッ

佐野「てめえが大人しゅうしとけばええだけじゃボケぇっ!!」ドドドッ

中井「意外と、佐野がキャプテンでまとまってるよな…。決めた時はちっと不安だったけど」

田中「佐野だからなー」

久遠「ああ。佐野はすごいやつだからな」

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