勇者「Lv.1」 (22)

 処女作です。
 まぁ、気ままに見てやって下さい。


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 モンスターが蔓延るこの世界では、役割が与えられた。

 大抵の者は庶民(村人)良くて商人だ。役割が与えられたからには、力が無くとも命を掛けなければならない。無論、例外は存在するが。

 例えそれが、勇者だろうが。Lv.1だろうが。


 王都から離れた小さな農村。

勇者「んぅ~。ねむねむ」

 朝日が昇る前に勇者の目は自然と覚めた。
 大きく背伸びをすると、黄金色の髪が視界に紛れ込む。

勇者「今度、髪切らないと……。邪魔で仕方がない」

 手で髪を視界より退かす。
 寝台より起き上がると、顔を洗うため外へと向かった。
 肌を冷たい風が撫でる。薄暗い故か、寒気が増しているように感じる。

 村共有の井戸から、一杯分水を汲む。それなりの量は入っているが、勇者は軽く持ち上げた。
 顔に水を掛けると、思わず喘ぎ声が漏れた。井戸の水は想像以上に冷たい。肌を突き刺す寒気を我慢しながら、勇者は持ってきた布で顔を拭き上げる。

勇者「さて、と。今日は何をしましょうかねぇ」

 遠く離れた山から太陽が顔を出す。
 淡いオレンジ色が村全体を染め上げた。朝日に釣られ目を覚ました村人が数人。顔を洗うために井戸へと向かってくる。

 今日も、一日が始まる。


 勇者は家へと戻ると、朝食の準備に取り掛かる。
 これと言って献立はない。焼いて、炒めて、茹でて、ぶっかける。男飯に感じるが、この雑さが美味しさを引き立てる。

 台所の中央にある梯子より、地下室へと降りる。
 光が一切当たらない部屋は、寒い、という一言でしか表せなかった。
 急ぐように野菜を籠から抜き取ると、梯子を駆け上る。

 野菜と今回使う調味料を置いたところで、勇者は手をかまどへと向ける。

勇者「ファイア」

 そう呟くと、勇者の手が淡い光で包まれる。
 瞬きをした。刹那という時間で、勇者の手より放たれた炎はかまどに入っていた木材を燃やす。

 かまどの上に敷かれた、鉄板が熱い熱を受け、小さく音を漏らす。

 顔を洗うついでに汲んできた水で、野菜を濯いだ。太陽の光を水が受け、野菜を輝かせる。


 野菜を鉄板の上に敷く。
 触れた瞬間、水が蒸発し、ジュ―と勇ましい音を奏でる。

 塩と醤油を少々かけると、香ばしい香りが鼻を包む。幾度か鼻をクンクンと嗅ぐが、香ばしい香りは依然と変わらない。

勇者「塩と醤油最強すぎ……」

 呟くと、乱雑に皿の上に乗っける。
 箸で一切れ掴むと、醤油が一滴垂れる。手皿を作り、口へと運び込む。
 熱いという感触が先に舌に伝わった。次にしょっぱい、塩を入れすぎたようだ。最後に美味い、何やかんや食べれる。

 朝食は軽くつまむ程度でしか食べない。そのため、皿に乗っかった野菜はすぐさまに無くなる。


 勇者の優遇は、一国の王より良いかもしれない。
 一体なぜ、そこまで優遇が良いのか。考えても見てほしい、勇者と言えど元は庶民だ。勇者故に優遇は良いかもしれないが、それでも王を超える程に優遇される必要はない。
 さて、なぜここまで優遇が良いのだろうか。それは力を誇示させる為だ。

 勇者と言うのは、隣国への牽制にもなる。魔王という共通な敵は存在するが、隣国がいつ戦争を仕掛けてくるか気が気ではない。その為、勇者と言う力を隣国に見せつけ、戦争を回避している。
 優遇の良さは、勇者の機嫌取り。気を悪くし、旅に出ていかないで欲しいからだ。無論、魔王を倒すという命を懸けた仕事故もあるが。


 比べ、彼女の優遇はどうだろう。
 名前も知られていない小さな農村に飛ばされ、戸籍さえも抹消されている。
 勇者としての扱いが、前者と逆になっているではないか。

 理由は簡単だ。
 Lv.1だからだ。これまで、役割にレベルという概念は存在しなかった。今までは、本人の個々の能力が関係していると考えられてきたが、それがすべて否定されるかもしれないのだ。
 レベルがあるという事は、成長がある、という事になる。訓練をし、成長するならまだいい。しかし、彼女の『レベルは上がらなかったのだ』。
 モンスターと幾度として戦った。しかし、レベルは一切として上がらなかった。

 結果として、レベルという概念にはまだ謎が多い。そのため、彼女は小さな農村で身を隠していることになる。
 レベルがあるというだけで、なぜ隠居しなければいけないのか。という考えが彼女の頭によぎるが疑問はすぐに解決した。つまり、人体実験が増えることを恐れているのだろう。
 彼女の場合は、人が行っていい特訓の域を超えていた。何十時間とモンスターを狩り続ける。その結果として生まれたのが、考えがズレた勇者、という訳だ。
 国にとって、彼女は驚異的存在になっているだろう。今いる勇者より、最悪強いかもしれないから。

この場合、意味的に待遇の方が正しかったかもしれません。

脳内修正お願いします。


 勇者の家の扉が、幾度か叩かれる。
 勇者は急げた様子で、扉へと駆け寄った。

勇者「はーい。どちら様で……って、村長さん。どうしたんですか?」
村長「おひさ。ほれ、王都からの手紙」
勇者「あぁ……王都からですか、ありがとうございます」

 勇者は肩を落とした。
 王都にいい思い出はあまりない。

村長「そだ、その手紙さ。速達で来たから急いで言った方が良いかもしれんよ?」
勇者「うぇ、これまためんどうな」
村長「行ってくるついでに、なんかお土産でも買ってきてよ。甘いもんがいいな」
勇者「適当に買ってきますよ」

 手紙を渡し終えた村長は、踵を返し、我が家へと帰っていく。
 一つだけ、周りの家とは違う大きな家だ。流石、村長。金回りが良い。

勇者「準備、しますか」

 思わず息を吐く。気怠さを隠せずにいた。


    勇者殿へ
  
  夏も本格的に近づいて来たこの頃、如何お過ごしでしょうか。
  どうも、魔法使いです。
  此方は、夏の日差しが差し込むようになり毎日が猛暑となり、暑苦しい生活が続くようになりました。
  こんな、決まり文句な言葉は置いておき、簡潔に説明しますと。
  定期検査の時期がやってきました。
  入り方はいつもと同じなんで、安心してください。今回の検査自体は、わりと簡単なものになってますから、前回のようにはならないと思います。
  滞在日数は1週間。観光をしたいなら、それなりに金を持ってくることをお勧めします。



 王都へ向かうべく、勇者は村より少し歩いた街へと向かうことにした。
 美しい緑で囲まれた道を通るのは非常に心地が良い。

 勇者が持っていくのは殆どない。魔法使いの手紙によれば滞在期間は一週間。
 替えの服と金を少しばかり入れておくだけで良いのだ。
 持っている鞄は非常に軽く、勇者から言わせてもらえば羽毛を持っていることと差ほどの変わりはない。

 スンスン、と緑の空気を体に通す。突き抜ける空気に思わず、感傷深い気持ちになる。

勇者「えぇと、街まで大体40分程度歩けば着きますかね……。うちの村は馬とか買わないんですかね。移動が面倒で仕方がない」

 かと言って、勇者(農民)一人が口にしたところで何も変わりやしない。
 勇者は定期的に出かけるが、それ以外の農民は大抵を村で過ごすのだ。


 舗装が行き届いていない道は非常に歩きづらい。
 歩くだけでも足に気を遣う。足に疲れは見えないが、これがあと何十分も続くと考えれば肩を落とすのも仕方がない。

 舗装されてないのがデメリットとするならば、メリットはモンスターが現れにくいという点だろう。
 モンスターが現れにくいというのは、想像している以上にありがたい事だ。護衛を雇う資金が無くなることに加え、物資を安全に運ぶことが出来るのだ。

 まぁ、モンスターが現れにくいと言っても、五十回に一回は現れる確率だが……。しかし、大抵は群からはぐれたモンスターの為、武術の心得があれば倒せる程度である。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2018年03月26日 (月) 08:46:42   ID: nwAmBiIn

出だしから心を掴まれた
頑張ってください

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