勇者「お前が魔王か」  魔王「ふはははは、よくきたな」 (43)


勇者「はじめまして」 深々

魔王「うむ、はじめましてだな」

勇者「実際問題、初対面で武器を向けあうのも礼儀がないので一応顔を合わせに来ました」

勇者「これつまらないものですが、お土産です」 勇者印煎餅

魔王「ああ、ご丁寧にどうも」

魔王「メイドさん、緑茶いれてください あとゴーレム屋のヨウカンお出ししてー」

メイド「はーい」




戦士「いや、おかしくね?なんで挨拶してんの俺ら」

勇者「まあまあ」



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魔王「ふむ、接近型が勇者と戦士で、遠距離攻撃が魔法使いと僧侶、と」

勇者「そちらは四天王とかいらっしゃらないんですね」

魔王「祖父の代には居たそうだが、当時の勇者がきっかけで炎と雪のボスが結婚したのでな」

魔王「で、まあ…結局そのまま廃止になった」

勇者「それは知らなかったです、いいお話ですねぇ」

魔王「うむ、異種族婚に抵抗が無くなりつつあるのは良いことだ」

魔王「属性による優劣から差別が多々あったのだが、おかげさまで改善の兆しとなった」

勇者「こちら人間側からすると、属性攻撃がしずらくなりますから、たまったもんじゃないでしょうね」

魔王「困った風な言い方しつつニコニコするのやめい」

勇者「いやー、参っちゃいますよー」 ニコニコ

体調は今のところ大丈夫です
ありがとう、続きます


魔王「…それで、本音は?」

勇者「めんどくさいんで、両者干渉しないって方向にもっていきたいですね」

魔王「やっぱりそうだよなー、でも人間の王様とか皇帝とかが問題だよな…」

魔王「代々悪役担ってきたといえ、こっちから先制攻撃はしてないんだけどね」

勇者「歴代勇者は英雄扱いですけど、俺的には強盗じゃないか、って」

魔王「自分で言っちゃうんだ」

勇者「他人の家のタンスとか壺とかあさっていいなんて誰が言い始めたのやら…」

勇者「あ、俺はやってないよ?」

魔王「え、なにそれ詳しく」


戦士「それどころじゃないだろ、勇者!」

戦士「宿敵魔王が目の前にいるのになんで悠長にお茶してんの!?」

魔王「温度差が激しいな」

戦士「勇者が出掛けるって言うから護衛でついてきたけど、魔王城にくるんならあいつらも呼ぶべきだった!」

勇者「すいません、彼だけが妙にヤル気満々で…他の二人は」


『魔法使い「魔族特有の魔術について研究したいぜ」』

『僧侶「魔界にも神官職があるらしいので、信仰について議論してみたいですね」』


勇者「…ってな感じで一緒に来てくれたんだよね」

勇者「あ、ヨウカン美味しい」

魔王「その二人もつれてくればいい、魔神官たちも人間の神職に興味持ってるしな」

魔王「煎餅も旨いな、紋章の部分がちょっとピリピリするけど面白い」

勇者「ああごめん、焼き印でも反応しちゃうんだね」

魔王「これ、案外ウケそうだな…もしよかったら魔界にも販路広げてほしいな」

勇者「オヤジさんに相談してみr                  あ、はい」
                戦士「だーかーらーーーー!!」



戦士「なんでそんなに和気あいあいと!!」

勇者「なんでって…」

魔王「戦士よ、何がそんなに気にくわない?」

戦士「そんなもの、全部だ! 貴様ら魔族のせいで、俺の家族は殺された!」

戦士「一緒の孤児院にいた連中も、みんな同じような境遇だ、魔族を恨んでいない奴なんか居なかった!」

魔王「………それは、おかしいな」

戦士「ああっ!?」

魔王「ここ40年間、魔族同士の殺害事件はあったが、人間を手にかけた魔族はいないはずだ」


勇者「うーわ、絶対それやばいよ戦士」

魔王「魔界には常時結界が張ってあるからな、人間を傷つけたものには必ずマーカーがつく」

魔王「殺害となればマーカーは絶対に目立つ、直ぐに通報されて投獄だ」

魔王「魔族同士でもマーカーがつくが、種類が違うけどな」

勇者「なあ戦士…なんで人間を殺すのが魔族だけって言えるの?」

勇者「人間のほうが、人間同士で傷つけあってると思うよ?毎日のように何かしら事件起きてるじゃん」

戦士「そんなはずない!!だって、保護してくれた貴族たちがそう言ってたんだ!」

勇者「それこそ、きな臭いんだけどねぇ…」



戦士「そんなはずない、そんなはず、ない、そんな、わけがない……」

勇者「…影使い、戦士の保護、頼んでいい?」

影使い「はい」  スゥッ…

魔王「おわっ!?」

勇者「戦士の妙な雰囲気が不安でね、実はずっとついてきてもらってたんだよね」

影使い「……魔界を悪役にしておきたいのは、王族だけではない、お気をつけください 魔王殿…」

影使い「帰りますよ、戦士…」

戦士「ブツブツブツブツ…」



勇者「あーぁ、やっぱり戦士はつれてこない方がよかった… 湿っぽい空気になっちゃったよ」

魔王「うーん……私としては、来てもらってよかったけどね、結界になにか不備があるのかもしれないし」

勇者「あんな話、はじめて聞いたからちょっと困ったな…とりあえず一回帰るね」

魔王「ああ、他のお仲間によろしく」

勇者「うん、じゃまた」


~人間界、どこぞの宿屋~

魔方陣用紙『ミュィーーーン』

勇者「ふぅ、到着っと」

魔法使い「あ、おかえりー」

僧侶「おかえりなさい、影使いさんから聞きましたよ…戦士さんがなにかおかしくなった、と」

僧侶「念のため治療院へつれていってもらいましたけど、それでよかったでしょうか」

勇者「そう、たぶん大丈夫 ありがとう」

勇者「一応、お見舞いには行っておこうか」

魔法使い「ええー、めんどくさい、ようやく買えた希少本読んでるのにー」

僧侶「いきますよ、まったく…」

魔法使い「ちえー」


僧侶「はあ!?戦士さんの家族が、魔族に殺されたって?」

勇者「本人はそう言ってるけど、魔王が否定してた 仕組みはわからないけど、すぐわかるようになってるらしいよ」

僧侶「なんてこと…いったいどれ程の恨みを抱えて私たちと行動していたのでしょう…」

僧侶「そしてそれが誤りであったとしたら、彼の恨みは何処へ向かうのか…ああ、なんてことだ…」

魔法使い「あたしはそういうのどうでもいいんだけどなー、魔族は研究対象だし」

僧侶「不謹慎ですよ!」

魔法使い「別に人体実験したいわけじゃないしいいじゃん 魔体実験か?」

僧侶「止めなさいと言うのに!」

勇者「あははは」




影使い「申し訳ない、勇者殿」 ヌゥッ

僧侶「わっ」

魔法使い「きゃあっ」

勇者「影使い、どうしたの」

影使い「戦士が、治療院から逃走した模様 今、《影》たちに捜索させております」

勇者「うっそぉ…あの状態で脱走はまずいんじゃ…」

影使い「いかがなさいま……  勇者殿!?」

僧・魔法「「勇者!!」」

勇者「え、あ…」  ゴポッ




戦士「魔王……まお、う、マゾク、  ゆう、しゃ、いら、な、い」


魔法使い「うっひゃーー、なにこの呪い! えげつない!!」

僧侶「回復呪文連続詠唱!」 シュワワワ…

勇者「う、うぅ… やば…腹に穴とか、はじめてなんだけど… ゲホッ」

僧侶「喋るんじゃねえバカ野郎!」

魔法使い「うわキショイ! 勇者のお腹、キモい!」

魔法使い「あと、戦士の呪いわかったよ!!」

魔法使い「信念…こいつの場合は、植え付けられた魔王が敵っていう概念が崩れ出す直後に発動するタイプよ!!」

影使い「くっ、《影》が引きちぎられそうだ、早く回復してくれ勇者殿…!」

戦士「がああ、ぁぁああああ」 ジタバタ

勇者「よっしゃぁ、ふっかーーーーつ! そいやぁ!!」  ドガーーンッ

戦士「グハッ」 ドサッ

勇者「ふっ、鞘でも痛かろう! ゲフッ」

僧侶「このバカ!まだ動くんじゃねえ!」 スパーンッ



すいません、急な頭痛で吐き気が止まらなく…
明日につづきます、すいません
それでは


僧侶「ゴホンッ 失礼いたしました… それで、戦士さんの呪いはどうしましょう?」

僧侶「私、呪い関連は専門外なので、治療院のほうがいいのでしょうかね」

魔法使い「うーん、あたしも呪いを判別できるだけだしなー、しょーがない、連れていくか」

戦士「キュゥ…」 気絶中

勇者「あ!忘れてた! 良いものあったんだ!」 モソモソ手袋ポイッ

魔法使い「え゛…  勇者、なにその手のひらの模様…」

勇者「まあいいからいいから……力加減気を付けないと…そーっと…せーのっ」

  ヒュッ ベチーーーーン!!

僧侶「ひーーーー!!?」

魔法使い「わー、きれいな紅葉が…」

影使い「……手加減できてませんよ、勇者」

勇者「てへ★」



戦士「………」 瀕死状態

僧侶「か、回復呪文!回復呪文!」 シュワワワ…

すいません、今気がついた
13の二行目、「魔方陣用紙」、になってますけど、正しくは「魔法陣用紙」でした
誰か、修正の仕方、知りませんかね… 脳内補正で宜しくお願いします
すいませんでした


~宿屋~

戦士「すぴー…」 頬に紅葉クッキリ

魔法使い「はぁぁぁぁ、なんか無駄に疲れた… さて、本を読まねば!」 ワクワク

勇者「あとにしなさいー、明日の予定なんだけど! 戦士が目を覚まして正気に戻ってたら、全員で魔王城に行くってことで良いかな?」

影使い「そうですね、今から私たちを派遣した国の王様に会いに行くにも時間かかりすぎます」

魔法使い「あー、魔法陣用紙は、距離がありすぎると複数回に分けて移動しなきゃいけないんだからたくさん書くのメンドクサイよー」

勇者「たぶんその辺は魔王に聞けば、効率いい方法とか教えてくれそうだよね」

魔法使い「うん、ぜったい聞きたい! 人間の使う魔法は恋率悪いんだよ、燃費悪いー 是非とも教えを乞わねば!」

影使い「わ、わたしは、その…ネクラを治したい…どうしたら闇を纏っても強気でいられるのか、聞いてみたい…」


勇者「そ……そうか、頑張れ! (いや、君はネクラじゃなくて物静かな性格ってだけじゃん…そこがいいんだ!)」

魔法使い「え、っと…参考になるといいね… (影ちゃんってば、勇者の好みにドンピシャなのに、気がついてないんだよなーこの娘…)」


影使い「あ、あの!僧侶殿は、や、やはり神職についての議論…を…… 僧侶殿…?」

勇者「あれ?」

魔法使い「え、あ……  げ、なんかヤバいんじゃ…?」

勇者「今のさっきで、もう次の事件かよ!?黙っていなくなるやつじゃないじゃん!確実にヤバい!」

魔法使い「もーーー!あいつ、一番体力無いんだから!普通拐われるのって女の子でしょ!あたしとか!!」

勇者「今その話、関係無くね!?とにかく探知魔法使ってくれ!あと《影》にも頼む!」

影使い「は、はい!!」

魔法使い「アイアイサー! 僧侶の持ち物何かなかったかなーっと…」

ありがとうございます、やっぱ無理なんすね…
今日中に完結させたい、頑張ります 続きをどうぞ




~どこかの部屋~

僧侶「  い、たぁ…」

僧侶「うぅ…ああそうか、勇者さんたちと引き離されましたね…」

僧侶「うわー… オカルト系なタペストリーに家具に怪しい道具だらけ…確実に関わっちゃいけない分類の方に捕まりましたねこれは…」

僧侶「あいたたた… 回復呪文…あれ、発動しない…? ん、なにこれ…手錠?」 ジャラッ


白服の男「目が覚めましたか、救世主殿」

僧侶「それは勇者さんに言ってやってください、私はしがない修行中の僧です」

白服の男「いえ、勇者など偶像でしかないのです… 我らは貴方様を待っていました、救世主殿」

白ローブの男「ただ唯一なる神を信仰する我らは、唯一なる神より賜りし御声を届けに参りました」

白服の男「さあ、唯一なる神と同じ色を持つ、神よりおくられし誉れ高き僧へ、神の御声を!」

白服の集団「「神の御声を!!」」


僧侶「(あちゃー…強引系の唯一神信仰か…他の宗教を弾圧してどんどん範囲を広げてるっていう、やばいほどでかくなりすぎたオカルト集団でしたか…)」

僧侶「…神と同じ色ってことは、私の銀髪ですかね…だとすると、あなたがたは《銀の鳥籠》、ですか」

僧侶「まあ、残念ながら普段は剃髪してますし…今は軽く生えてますけどまあ置いといて、それにローブをかぶっていますので、眉毛の色で判断なさいましたか? よく気がつかれましたね」

僧侶「ですが、重ねて残念ながら、私は一つの宗教にとらわれず、様々な教えを学ぶため旅をしております、勇者と出会ったのもその途中です」

僧侶「お話は聞きますけれど、あなた方の考えだけを受け入れる訳じゃありません」

僧侶「神々がたくさんおられる、という考えもまた受け入れておりますからそこは覚えておいて欲しいのですよ?」


白服の男「なにを仰っておられるのかちょっと分かりかねます」

白服の男「神は我唯一のみ、その他の偶像にすがるものどもなど、ひとにあらず これが我らに与えられた最初の御声ですよ」

      ワーーーパチパチパチパチ

僧侶「(なんの拍手!?そしてどんだけ自己中な神様!?)」

白服の男「さあ、唯一なる神の御声をお聞きください そして、我らのために、貴方様の聖なる血を分け与えくださいませ」

白ローブの男「お待たせいたしました皆様、これより儀式を行います」

        ワーーーパチパチパチパチ!!

白ローブの男「事前にお知らせしました神の御声を大きな声で御唱和くださいませ、そして、救世主殿より血をお分けいただきましょう」

白ローブの男「それでは…いちにのさんはい!」

僧侶「なにそのデカイナイフ!明らかに腕一本は切り落とす勢い!ヤーメーロー!!」

白ローブの男「ちょっと!!邪魔してはいけません救世主殿!はい皆様、頑張ってもっと大きな声で!」

僧侶「うっわーーーーっ!!勇者ーーーー!みんな助けてぇぇえええ!!」



      シュルンッ!


魔王「はー、危ないな! 悪魔でも召喚するつもりかこやつら…」

僧侶「……ふぇ?」 グスン

魔王「ふーむ、勇者のところに転移する予定だったが間違えたな」

魔王「まあ、とんでもないことにならずに済んだし、人命救助だな、うむ」

魔王「その姿から察するに、勇者の仲間の僧侶か」 ヒョイッ

僧侶「は、あ、はい!!助けてくださってありがとうございます!?」

魔王「ああ、勇者も近くに来てるか、合流しよう」 スタスタ

僧侶「あ、あのー、おろしてくれませんかー」

魔王「おお、すまぬ ついうっかり」

僧侶「えーと、あとどなたでしょ        うか、って、魔王さん!?」
           白服の男「ま、魔王だああああああ!!!」

魔王「うむ、いかにも」
             ドカーーンッ
           勇者「助けに来たぞーーー僧侶ーーーー!」

魔王「勇者よ、僧侶ならここだ」

勇者「あ、魔王!協力サンキュー!」

魔王「なに、仕事のついでだ」

魔法使い「うわーん僧侶ーーーー無事だったーーー!!」

影使い「そうりょーーー!」

僧侶「うわぁぁーーーん皆きでぐれだぁぁぁぁ!!」 号泣



白服の男「ま、待て!我らが救世主殿をかえ            ベバヴッ!?」  ズボッ
               魔法使い「ギリギリ呼吸ができる土砂魔法」

勇者「よく頑張ったな、僧侶!よく耐えた!」

影使い「うんうんっ」

魔法使い「ああーもう、魔王さんに協力依頼するの思い付いたあたしをもっと誉めていいと思うよ!」

僧侶「ありがどぉぉぉぉおお」 まだ号泣

魔王「うむ、それで正解だったな」

白ローブの男「ま、まて!!魔王よくも我らが救世主殿をたぶらか           ごぼばばば」 ドボボボ
                           魔法使い「ギリギリ助かる水没魔法」



勇者「いや、あの、チョイチョイ恐ろしい魔法発動すんのやめて、怖い」

魔法使い「アラ、ナンノコトカナー」



魔王「さてと、茶番はここまでにしよう 仕事に取りかからねばならん」

勇者「さっきも言ってたな、仕事って…そういや、魔王の仕事って結局どういうのなのさ」

魔王「簡単に言えば、悪魔の召喚を妨害することだな」

勇者「あ、悪魔!? それって、おとぎ話じゃ無かったのか!実在するのか…っ」

魔王「そうともさ  そこで埋まってるやつと溺れかけてるやつ以外は、自覚してすらいなかったろう…」

魔王「神につかえる神職者の血液と肉片を召喚陣に捧げ、まじないを一定時間絶えず唱えることで、悪魔は召喚されるのだ」

魔王「僧侶が全力で抗ったことで未然に防がれた、よくぞ希望を捨てなかったな」

僧侶「うう…だって、まだ学ばなくちゃいけないことは山ほどあります、死ぬわけにいくかーって…うわーあんなに泣いて恥ずかしい…」

勇者「ほ、本当によく頑張ったな!!」

魔法使い「…あれー?でもさ、悪魔?ってやつはもう呼び出されないんでしょ?だったらもういいんじゃないの?」

魔王「いいや、この場所に溜まりにたまった負の魔力を全部回収して、召喚陣も壊さねばならん」

勇者「お、おいまてよ!負の魔力を吸収できんの!?そんなことして何ともないのか、魔王って職業は!」




魔王「…いいや、無事ではすまんさ」



魔王「《魔王》とは、悪魔の召喚を防ぎ、万が一すでに召喚されてしまった悪魔の進撃を阻害するもの」

魔王「そして、悪魔に関わるあらゆる負の魔力の一時貯蔵庫だ」

魔王「ゆえに…勇者が必要になる」

勇者「俺…?」

魔王「溜め込んだ負の魔力は、順繰りに魔王の身体を蝕み続けるからな… 勇者に浄化してもらうことでようやく役目を終えるわけだ」

勇者「…………はぁぁ!?」

魔王「魔族たちが掃除した負の魔力も受けとるし、勇者一人で破壊して回るのは負担が大きいからな」

魔王「《魔王》と《魔族》とで、一斉に掃除したほうが早いし、勇者がほふるのは魔王ただ一体のみですむ」

魔王「効率を考えればこのほうがいいからな」

魔王「まあ、そう言うわけだ… 人間と魔族の和平は、うちの息子の代に任せたいと思っている」

魔王「それじゃ、あとのことはよろし       ぐゴフッ!?」
               勇者「バカ野郎!!」 ドガッッ



勇者「そうやって…そうやってずっとずっと!世界を守ってたくせに、どうして最後の最後に!諦めちまうんだ!!」

勇者「やっとわかった… 歴代の勇者たちが皆、英雄扱いされるのを嫌がってきた理由…っ」

勇者「ホントの英雄を殺すために用意された、ただの木偶じゃねえか俺ら!!」

勇者「王族が異常なほどこぞって魔族と魔王を悪者扱いしてたのも、全部全部…演技だったからか!王様たちは、知ってたんだな!」



勇者「なんで…っ 『助けてくれ』って、いってくれないんだよぉぉぉおおおお!!」



勇者「俺は、《勇者》なんだぞ!!助けを求められたら、絶対助けるんだよ!」

勇者「俺は! 今、《勇者》をやってる俺は!!過去の勇者達みたいに、絶対絶望してやんねえ!!諦めてやんねえ!!」




勇者「おれに、あんたを、助けさせろ!!!!!!」




魔王「……っ!」

勇者「だいたい事情は察したよ… 《聖剣》だろ? 魔王を倒せる剣っていうやつ」

勇者「たぶん、魔王を浄化する方法が、これであんたをぶった切ることなんだろ」

魔王「あ、ああ…それ以外の方法は…無い、はず…」

勇者「やっぱりそうか…… でもさ、俺は《聖剣》に選ばれなかったんだよな」

魔王「…は? いや、しかし…お前は間違いなく勇者のはずじゃ…」

勇者「勇者なのは間違いないよ、ただし、滅茶苦茶レアケースなんだとさ」

       モソモソ… 手袋ポイッ

勇者「勇者候補者の中で唯一《聖剣》が触れることを許してくれたのが俺だ  …だが、《聖剣》は剣の形を失ったんだよ」



勇者「俺は《聖拳》の勇者だ」

勇者「拳じゃ流石に、殺せねえだろ?魔王サマ?」




魔王「……く、くはははははは!! な、なんて規格外な…!あ、あはははははは!!」



魔法使い「あー、なるほど… 勇者の手のひらに刻まれてた謎の模様は《聖剣》に刻まれてたはずの模様なわけか…ってそんな馬鹿な!」

僧侶「うーん…逆に納得してしまいましたよ…なんで食事中も就寝中も手袋はずさないのか不思議だったんですよね はー…」

影使い「(勇者殿…カッコいい…)」



魔王「く、くっくっく… そうか、ははっ 死ななくてすむのか、我は…」

勇者「おう!       …まあ、多分だけどな」

魔法使い「ちょ、勇者!あれだけタンカ切っておいて多分なのかよっ!!?」

勇者「うーん、なんか冷静になって考えてみると、拳でぶん殴っても辺りどころ悪かったら死んじゃうよね…?」

魔法使い「そこはなんかこう!!気合いで頑張ってよ!」





魔王「勇者、助けてくれ… 出来れば、まだ死にたくない」

勇者「よっしゃぁ!!任せろ!」 バシッ!

勇者「《聖拳》!!なんかうまいこと、浄化だけやってくれよ、ヨロシクゥ!」




僧侶「もうちょっと考えろ単細胞勇者ーーー!」





         オリャーーー   ガハァァァッ     ドカーーーーンッ









。。。一週間後、魔界病院。。。


勇者「誠に申し訳なかった」

魔王「おう、まったくだな! わはははは」  ミイラ男風グルグル巻包帯

僧侶「本当に申し訳ありません…私の回復呪文も魔族には効かないことが分かっただけでしたし、なんのお力にもなれず…」

魔王「なあに、無事ではないが生きてたんだ、感謝こそすれ恨みなどしないさ! ふはははは あいたたた…」

魔王「まさかの拳一振りで、我の浄化だけでなく、あの場にうずくまっていた負の魔力を全部浄化してしまうとはなー…」

魔法使い「まあ、さすがに召喚陣は壊せてなかったけど、力を失ってただの絵になってたから、物理的に叩き壊せたし結果オーライかな」

影使い「あの場にいたオカルト集団はきっちり騎士団につきだしたし、更正施設に強制送還されるらしい」

僧侶「邪気は勇者さんの拳で祓われましたし、無理矢理他人を引きずり込むような勧誘はもうしないでくれると信じたいです」





勇者「ふへへへへ」

魔王「なんだ、気持ち悪い笑い方を…」

勇者「いやぁ、今後は《聖剣》じゃなくて《聖拳》の勇者を優先的に選んでもらえるように、王様とか神官とかを説得するのが楽しみだな、とね」 ニヤニヤ



戦士「あ、あのぉ…」

勇者「ああっ戦士!」

魔法使い「戦士じゃん!!」

戦士「え、ええっと…すみません、お城から執事さん?がきて言われて、つれてきてもらったんですけど…あの、ぼく…」

戦士「ほ、本当にごめんなさい!記憶がごちゃごちゃしててよくわからないんですけど!お兄さんを剣で刺したような気がするんです!」

戦士「本当にごめんなさい!」

勇者「あ、ああー…うん、もう大丈夫だから、心配要らないよ」

戦士「う、うう…」 ベソベソ


魔法使い「(なんか、一回目が覚めたときもそうだったけど…子供っぽくなってる?)」

影使い「(…どうやら勇者の拳で、呪いを強引に解いたせいかもしれないんだとか…)」

僧侶「(治療院の先生によると、呪いをかけられ始めた10代半ばごろまで記憶がもどってしまってるらしい、って話です)」

僧侶「(銀の鳥籠の上層部と幹部には、キツーーーイお灸が必要ですよね…まったく…)」



全員「「はぁぁぁぁぁ………」」



魔王「くっふふっふふふ…くっくっく…」

勇者「おう、なんだよ魔王だって悪い笑い方してんなぁ…」

魔王「いやぁ、次にあの皇帝やら陛下やらに会いに行くのが楽しみだなぁ、とな」

勇者「へっへっへ、俺と考えてること同じ感じか?」

魔王「くっくっく、おそらくそうだろうさ」






勇者・魔王「「誰も信用できなくなるくらい疑心暗鬼になるほど、ドッキリを仕掛け回してやろうぜ?」」


勇者「キシシシシシ」

魔王「ふははははは」




魔法使い「あーぁ、敵にまわしたら恐ろしいコンビが完成しちゃったわね…」

すいません寝てしまった…
最後いきます、あとちょっとです、どうぞ


後日、どこぞの王国や帝国では……

防衛システムの動く鎧が踊り出したり(模造品)
城内の置物が浮かび上がったり(贋作)
絵画から髪の長い女がにじり出てきたり(錯覚)
第二皇子が厩舎から連れ出した馬でプチ家出を図ってみたり(翌日帰ってきた)

様々な怪奇現象(一部除く)が発生し、陛下や皇帝がトラウマで引きこもりになりかけたりしたが、まあだいたい平和が続いたらしい

そしてーーー




とある洞窟、《聖剣》の刺さった岩の前。。。

《聖剣》『…キュィィィーーーン…』


勇者「ふーぃ、最後の仕事完了!」

魔王「これでもう、貴様は勇者引退か?」

勇者「いや、次の勇者候補が出てくるまでは、もうちょっと勇者やっとく必要あるらしい」

勇者「この手のひらから模様が消えたら、引退だってさ  ああ、その前に死んだら即終了だけどそれは当然だな」

魔王「そうか… ちょっと寂しいんじゃないか?」

勇者「どうだろうねぇ… 今後の勇者にも、俺みたいな《聖拳》とかそれ以外にもなんか変わった勇者が出てくるようにいじり倒したこの《聖剣・改》が存在する限りは、俺の痕跡残り続けるわけだしな」

勇者「オリジナルの《聖剣》に気がつかれない限りは…こっちを引っこ抜こうとするだろうから、面白くなりそうだぜ」 クスクス

《聖剣・改》『…ミュィィィーーーーン…』

魔王「オリジナルのは神秘っぽい音してたのに、こっちのはなんだか間抜けな音がするな…」

勇者「そこはまあ、ねえ…バレた時用に魔法録音メッセージ付けたら、岩から出てくる障壁の音変わっちまったからなー…まああれだ、オリジナルと区別する目印的な?」

魔王「ふわっとした理由だな…」

勇者「いいんだよ、これで! …付き添い、ありがとうな…」

魔王「気にするな…  それよりこのあと、ゴーレム屋でヨウカンとあんみつ食べにいかないか?」

魔王「うちの息子も紹介したいし、貴様の仲間にもあのヨウカンは是非食べてほしいからな」

勇者「いいじゃーん! 甘党万歳!」

魔王「はっはっは」

勇者「イエーイ!」








終わりまっす!
読んでくださってありがとうございました!
山も落ちもぶん投げたような感じですいません
設定を盛りすぎずに短編に納める技術が欲しい…っ

それでは、またいつか
ありがとうございました!

皇子は怪奇現象の混乱に乗じてプチ家出を決行。
だが、魔王と勇者に見つかって強制帰宅、という裏話がついてます。
ふわーっと終わりたかったので、これで終いとさせていただきます。
ありがとうございました

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