ラフィエル「天使と悪魔とチョコレート」 (24)
ラフィエル「えーと、焦げない様に鍋をかき回して……」
ラフィエル「こんなもんでしょうか?」
ラフィエル(明日はバレンタインデー。自分が好意にしている人にチョコレートを手渡す日……)
ラフィエル(かく言う私も……)
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ラフィエル「型に入れて冷やした物を取り出して……と」
ラフィエル「ふぅ、ようやく出来ましたね」
ラフィエル「ちょっと味見をしてみましょうか」
ラフィエル「うーん、流石に既製品とまではいきませんね」
ラフィエル「普段あまりお菓子作りとかしませんからね……」
ラフィエル「サターニャさん喜んでくれますかね……」
ー翌日ー
ラフィエル(ついにこの時が来ましたね……)
ラフィエル(いつも通りに普通に話しかけて、さりげなく渡すだけ)
ラフィエル(そうすればきっと受け取ってくれるはずです」
ラフィエル「それなのにどうしてこんなにドキドキするんでしょう―」
ガヴリール「私らの教室を覗きこんで何独り言呟いてるんだ」
ラフィエル「ガ、ガヴちゃん!?」
ラフィエル「私、声に出ていましたか?」
ガヴリール「ああ。何を言っていたかは聞こえなかったが」
ラフィエル「そ、そうですか」ホッ
ヴィーネ「あっ、ガヴ!ラフィ!こっち来てよ!」
サターニャ「どうしたのヴィネット、今日何かテンション高いわね」
ヴィ―ネ「さていきなりですが問題です!ガヴ、今日は何の日か知ってる?」
ガヴリール「平日」
ヴィーネ「ちょっとふざけないで、正解はバレンタインデーよ!」
ガヴリール「そういえばそんなのあったな」
ヴィーネ「天界や魔界でもあったけどね、人間界では友チョコという文化があるみたいなの!」
ヴィーネ「という訳で、私もチョコレートを作ってきました。皆食べてみて!」
サターニャ「美味しそうじゃない」
ガヴリール「おお、綺麗に出来てるじゃん」
ラフィエル「本当、売り物みたいに綺麗ですね……」
サターニャ「早速頂くわよ!」パクッ
ガヴリール「うん、甘すぎず苦すぎず流石だな」モグモグ
ラフィエル(私が作ったチョコよりも全然美味しいですね……)
サターニャ「本当に良く出来てるじゃない、これならウチの店にも出せるわよ」
ラフィエル「店?」
ヴィーネ「あれラフィ知らなかったの?サターニャの実家、洋菓子屋なのよ」
ラフィエル「えっ……」
ガヴリール「なんだよ、実家が洋菓子屋なのに味覚音痴なのかよお前」
サターニャ「何よ!私のどこが味覚音痴な訳!?」
ヴィーネ「確かにサターニャは辛い物とかに対する味覚は変だけど、甘い物に関しては一流よね。前にサターニャが紹介してくれたスイーツのお店すっごく美味しかったもの」
ラフィエル(サターニャさん洋菓子屋の子だったんですね……)
ラフィエル(それならきっとチョコレートへの舌も肥えているはず……)
ラフィエル(ヴィーネさんのに比べたら全然レベルの低い初心者の私が作った手作りチョコなんて喜んでくれませんよね……)
ラフィエル(そう考えたら急に渡すのが怖くなってしまいました……)
ラフィエル「すみません、ちょっとお花を摘みに……」
ガヴリール「……」
ガヴリール「すまん、私もトイレ」
ラフィエル(このチョコをあげてサターニャさんに嫌われたらと思うと……)
ラフィエル(もし渡さなければ、今まで通りに過ごせるのでは……)
ラフィエル(どうしましょうか、このチョコレート……)
ガヴリール「ラフィ」
ラフィエル「ガヴちゃん?」
ガヴリール「私もお花を摘みにな」
ラフィエル「……心配してくれたんですか?」
ガヴリール「……何のことだ?」
ラフィエル「……ありがとうございます」
ガヴリール「……」
ラフィエル「……」
ラフィエル(どうせ渡さないのなら……)
ラフィエル「ガヴちゃん……チョコレートはお好きですか?」
ガヴリール「……何だよ唐突に」
ラフィエル「さっきヴィーネさんも言ってましたが、人間界では友人にチョコを渡す友チョコという文化もあるみたいですね……」
ガヴリール「……」
ラフィエル「せっかくなんで、このチョコレートをガヴちゃんにあげちゃいます」
ガヴリール「……」
ラフィエル「ヴィーネさんのに比べたら出来は悪いですが……、あっ、大丈夫です、もちろん友チョコですよ」
ガヴリール「……私以外にもあげるのか?」
ラフィエル「いえ、これだけしか作ってませんよ。同郷のガヴちゃんだけにプレゼントです」
ガヴリール「……そうか」
ラフィエル「……そろそろ授業が始まるので自分の教室に戻りますね」
ガヴリール「……」
ラフィエル(ガヴちゃん、渡し損ねたチョコなんかでごめんなさい……)
ガヴリール「1個しか作ってなくて」
ガヴリール「綺麗にラッピングされている」
ガヴリール「ハート型のチョコで」
ガヴリール「コウモリのメッセージカード付」
ガヴリール「それが友チョコね……」
ー放課後ー
ラフィエル「もう渡すチョコもないですし、私のバレンタインデーは終わりました」
ラフィエル「私は臆病です……」
ラフィエル「自分に自信が持てなくて、チョコすら渡せない……」
ラフィエル「きっと今後も自分の気持ちを伝える事なんて……」
ヴィーネ「あっ、ラフィじゃない」
ラフィエル「ヴィーネさん……」
ラフィエル「ガヴちゃんやサターニャさんは?」
ヴィーネ「ガヴもサターニャも授業が終わってすぐ教室を飛び出していったの。それで私一人で置いてけぼり」
ラフィエル「そうだったんですか……」
ヴィーネ「ラフィ、今日元気ないじゃない、何かあったの?」
ラフィエル「……」
ヴィーネ「サターニャにチョコレート渡せた?」
ラフィエル「えっ!?な、何の事ですか……」
ヴィーネ「だって、ラフィがさっき持ってたチョコレート、サターニャに作ったんでしょ」
ラフィエル「……どうして分かったんですか?」
ヴィーネ「うーん、乙女の感ってやつかな?」
ラフィエル「……」
ヴィーネ「どうしてあげなかったの?」
ラフィエル「自信が持てなかったんです……」
ラフィエル「料理上手なヴィーネさんと違って、料理の上手くない私が甘い物が得意であるサターニャさんにチョコを渡したとしても喜んでくれないのではと思いまして……」
ヴィーネ「ねぇラフィ。ラフィはきっとチョコレートを作った時にサターニャの笑顔が思い浮かんだでしょ」
ラフィエル「はい……」
ヴィーネ「料理ってね、作ってる時に思い浮かべる人が自分にとって大事な人ほどその料理に愛情が込められるものなの」
ヴィーネ「皆が美味しいって言ってくれた私のチョコレートよりも、ラフィのチョコレートの方がサターニャへの思いがずっとずっと強いはずよ」
ヴィーネ「そんなラフィのチョコレートをあの子が喜ばないはずないわよ」
ラフィエル「そうですかね……」
ヴィーネ「うん、きっとそうよ」
ヴィーネ「それにラフィは直前までサターニャにチョコレートを渡そうと思っていたんでしょ」
ヴィーネ「だったらあと一歩勇気を持って踏み出せば届いていたんだよ」
ラフィエル「あと一歩、勇気を持って踏み出すですか」
ラフィエル「ヴィーネさん励ましてくれてありがとうございます。私頑張ってみます!」
ヴィーネ「頑張って!応援してるわ!」
ラフィエル「あっ、でも、もうサターニャさんは帰ってしまいましたし、それにチョコが……」
ヴィーネ「ふふっ、そんな頑張るラフィにこれをあげるわ」
ラフィエル「えっ、これって……、私がガヴちゃんにあげたチョコレート……」
ラフィエル「あれ、天使の形をしたメッセージカードがついてますね……」
「サターニャさんへ
放課後、屋上に来てください
ラフィエルより
という手紙をサターニャに渡しておいた」
ヴィーネ「ガヴが直接ラフィに渡せばよかったのにね。けど、あの子照れ屋だから」
ラフィエル「ガヴちゃん、ヴィーネさん、本当にありがとうございます!」
ヴィーネ「ほら、早く行かないと寒い中サターニャが待ってるわよ」
ラフィエル「は、はい!」
ヴィーネ「勇気を持って踏み出すね……」
ヴィーネ「あんな強がりな事言っちゃって」
ヴィーネ「本当は自分に言い聞かせてたのかな」
ヴィーネ「……」
prrrr
ヴィーネ「もしもし、ガヴ?」
ヴィーネ「うん、なんとか上手くいったわよ」
ヴィーネ「それでね……」
ヴィーネ「この後、ちょっと会えるかな?」
ヴィーネ「ちょっと渡しそびれた物があるの」
END
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