乙倉悠貴「貴女の特別」 (30)

悠貴(小さくて可愛くて自由な貴女は、初めて見た時から私の特別でしたっ)

悠貴(そんな貴女から可愛いと言われると嬉しくて、いろんな人に同じことを言ってると知って悲しくて)

悠貴(でもやっぱり嬉しくてっ!)

悠貴(いつか貴女からも特別と思ってもらえる私になるために)

悠貴(憧れの先輩の隣を目指して、今日も私は走っていますっ)


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悠貴「愛海先輩、おはようございますっ!」

愛海「おはよう悠貴ちゃん。今日のロケ頑張ろうね」

悠貴「はいっ!」

悠貴(おはようございますっ。乙倉悠貴ですっ)

悠貴(今日は愛海先輩と二人で街ロケに来ていますっ。ちゃんとお仕事できるといいなっ)

悠貴(でもお仕事とは別に、私は今日ある目標があるんですっ。それは)

悠貴(愛海先輩にお山を登られることっ!)

悠貴(きっかけは昨日。くるみちゃんとほたるちゃんとお話していた時のことです)

悠貴「話というのは何でしょうっ?」

くるみ「悠貴しゃん、明日愛海ちゃんとロケに行くって本当?」

悠貴「はいっ。といってもすぐ近くの街中ですけど」

ほたる「二人だけで街を散策するということですか?」

悠貴「え、スタッフさん達がいるから、二人きりというわけでもっ」

くるみ「だ、大丈夫でしゅか」

ほたる「せめてプロデューサーさんがいてくれれば……」

悠貴(何を二人はそんなに心配して……はっ!)

悠貴「大丈夫です二人ともっ!確かに私はまだ事務所に入ったばかりで経験浅いですけど、愛海先輩は頼りになる人だって信じてますからっ」

くるみ「うーん」

ほたる「そうじゃないんです」

悠貴「あ、あれ?」

くるみ「あのね、悠貴しゃん。愛海ちゃんに気を付けて」

ほたる「彼女が味方とは限りませんから」

悠貴「えっ、なんですかこの身内にスパイがいるみたいな会話はっ!?同じ事務所の味方ですよねっ!?ねっ!?」

くるみ「……」

悠貴「も、もしかしてこの事務所、派閥争いとかあったりするんでしょうかっ?そういうの学校でもやったことないんですけどっ!」

ほたる「あ、そういう心配は不要です。ここは人は多いですけどその分色んなユニットがあって、派閥とかそういうの作るのは難しいですし」

くるみ「みんな、くるみにも優しくしてくれりゅいい人ばかりだよ」

悠貴「ですよねっ!安心しましたっ!」

ほたる「アットホームな職場です」

悠貴「なんで不穏な言葉付け足したんですかっ!?」

くるみ「問題は愛海ちゃんなんでしゅ」

ほたる「二人だけのロケなんて、悠貴ちゃんのお山を確実に狙ってきますよ」

悠貴「え、愛海先輩がですか?」

くるみ「でしゅ!」

悠貴「あははっ、それはないですよっ!」

くるみ「えっ!?ありましゅよ!」

ほたる「もっと危機感を持って生きましょうよ」

悠貴「愛海先輩が女の子のお山、柔らかい部分が好きって話ですよねっ。なら心配することないじゃないですかっ」

くるみ「???」

ほたる「???」

悠貴「だって私、今まで愛海先輩とレッスンとかで二人きりになったことありますけど、一度もそういうことされたことないですからっ」

くるみ「……ふぇ?」

悠貴「色々と言ってるけど、実際にはやらないんですよねっ」

ほたる「……んん?」

くるみ「……んー?」

悠貴「……あれ?」

ほたる「初対面で、可愛い女の子が好き、という自己紹介とともに背後からお山に登られました」

悠貴「えっ!?」

くるみ「くるみも、事務所に来たばかりで更衣室の場所を教えてもらった時に、着替えも手伝ってあげるって言われて……」

悠貴「そんなことがっ!?」

ほたる「まあ、事務所で最初に登られたのは私なんですけど」

くるみ「一番いっぱい登られたのはくるみだと思いましゅ」

ほたる「いえ、たぶん一番は私です。私は不幸ですから」

くるみ「でも愛海ちゃんはくるみの大きなお胸大好きだから、不幸とか関係なくくるみが一番じゃないかなあ」

ほたる「愛海ちゃんは大きいのも小さいのも好きだから、それこそ関係が」

悠貴「待ってっ!待ってくださいっ!なんで口論になってるんですかっ!?」

悠貴「とにかくわかりましたっ。言葉だけでなく実行もするとっ」

くるみ「うん」

悠貴「それなのに私は一度も登られていないとっ」

ほたる「そうなりますね」

悠貴「……小さいからですか」

くるみ「そ、そんなことないでしゅよ!愛海ちゃんは大きさじゃないって言ってりゅから」

ほたる「愛海ちゃんが好きな私のお山も特別大きなわけじゃないから、大きさじゃないって言葉は本音だと思います」

悠貴「何事にも規格外ってありますよね。小さすぎるとか」

くるみ「だ、大丈夫でしゅよ」

ほたる「きっと悠貴ちゃんのお山にだって登りたいはずです」

悠貴「そうでしょうか?」

くるみ「うん!」

ほたる「自信を持ってください!」

悠貴「……わかりましたっ!今回のロケで証明しますっ!愛海先輩は私のお山も登るってっ!」

くるみ「その意気でしゅ」

悠貴「明日は絶対に愛海先輩に登られてみせますっ!」

ほたる「頑張ってください」

悠貴「二人とも今日はありがとうございましたっ!私、必ず登られるよう頑張りますっ!」

くるみ「頑張ってねえ」

ほたる「……あれ?」

悠貴(そんなわけで、今日は愛海先輩にお山を登られるという目的もある乙倉悠貴ですっ)

悠貴(とはいえ、まずはお仕事をちゃんとするのが先ですよねっ)

愛海「ここが本日紹介する喫茶店だよ」

勇気「お洒落なお店ですねっ。私が入っていいんでしょうかっ?」

愛海「もちろん。大人な雰囲気だけど、ケーキが絶品で近所の女子中学生にも人気なお店なんだって」

悠貴「中学生がこんなお洒落なお店にっ!?……最近の中学生ってすごいんですねっ」

愛海「悠貴ちゃんも最近の中学生だよ」

愛海「中も落ち着いた雰囲気でいいね。……悠貴ちゃん?」

悠貴「わーっ……あ、ごめんなさいっ!内装に見とれてしまってっ。なんですかっ?」

愛海「ううん、なんでも。そんなに喜んでもらえるならお店も嬉しいよね」

悠貴「えへへっ。本当に綺麗なお店ですよねっ」

愛海「でもね、このお店のすごいところはそれだけじゃないよ」

悠貴「まだあるんですかっ?」

愛海「うひひ。すいませーん」

店員「はい。お待たせしました」

愛海「ウェイトレスさんの制服が可愛いんだよ!」

悠貴「今日一番の反応ですねっ」

愛海「メイド服だよ。メイド喫茶じゃなくてお屋敷にいる方の」

悠貴「こんなウェイトレスさんにお世話されたら本当にお嬢様になった気分ですねっ」

店員「ありがとうございます」

愛海「だよね。こんな素敵なメイドさんのお山に登りたいよね」

悠貴「よね、と言われてもっ!」

愛海「目の保養もできたことだし、さっそく注文しようか」

悠貴「はいっ。ウェイトレスさん、オススメはありますか?」

店員「今は苺のショートケーキや苺のタルトがオススメとなっております」

愛海「苺がオススメなんだね。悠貴ちゃんは何にする?」

悠貴「私は苺のショートケーキにしますっ」

愛海「じゃあ私はタルトにしようっと。ウェイトレスさん、苺のショートケーキと苺のタルトを一つずつ、あとお山を二つお願いします」

悠貴「今変な注文しませんでしたかっ!?」

店員「かしこまりました」

悠貴「かしこまっちゃったっ!?いいんですかっ!?」

店員「お山はケーキの後にご用意いたしますね」

愛海「えっ、あ、はい」

悠貴「圧されてるじゃないですかっ」

愛海「……くるのかな、お山」

悠貴「きたらどうするんですかっ?」

愛海「もちろん登るよ。あのウェイトレスさん、いいお山してたよね。うひひ」

悠貴「……」

悠貴(大きかったですっ。やっぱり大きい方がいいんでしょうかっ)

愛海「あ、二つ頼んだから悠貴ちゃんも登っていいよ」

悠貴「わ、私はいいですっ!」

愛海「そう?じゃああたしが二つともいただいちゃうね。うひひ、楽しみ」

悠貴(愛海先輩はやっぱり大きいのが好きなのかな?)

店員「お待たせしました。苺のショートケーキと苺のタルトです」

悠貴「わあっ、すごいっ!大きな苺が何個も入ってますよっ!愛海先輩、見てくださいこれっ!」

愛海「うひひ、このタルトも美味しそうだねえ」

悠貴「愛海先輩っ!顔っ!顔が緩んじゃってますっ!」

愛海「っと、いけないいけない。この後のお山を思ってにやけちゃった」

悠貴「今日のメインはケーキなんですからねっ」

愛海「そうだね。ちゃんと食レポしないと」

店員「こちらのお皿お下げさせていただきます」

悠貴「はいっ、ありがとうございますっ。とっても美味しかったですっ」

愛海「なかなか難しかったね、食レポ」

悠貴「はいっ。私、美味しいって言うばかりで全然それっぽいコメントできなかったですっ」

愛海「それっぽいコメントって?」

悠貴「こう、口の中でまろやかに、まるで、まるでスポンジのように……、みたいなっ」

愛海「いいんじゃない?そういう作ったようなコメントしなくても、悠貴ちゃんが美味しそうに食べてる姿は可愛いかったし」

悠貴「そ、そうですかっ。ありがとうございますっ」

悠貴(可愛いって言ってもらえましたっ)

店員「お客様。すぐに次の注文をお持ちしますね」

悠貴「次の、ということはっ」

愛海「お山だね!」

悠貴(愛海先輩の顔が一瞬で緩んだっ!?)

ドンッ

店員「こちらご注文のマウンテンパフェとなっております」

愛海「……え?」

悠貴「す、すごく盛られたパフェがきましたよっ!?座った私たちの首の高さぐらいありますっ!」

愛海「え?え?あの、あたしが頼んだのはお山」

ドンッ

店員「マウンテンパフェ。二つ目となります。ご注文は以上でよろしいでしょうか?」

悠貴「そういえば二つ頼んでましたっ!」

愛海「あの、お山……あたしのお山は……?」

店員「ごゆっくりどうぞ」

愛海「あたしのお山ー!!」

愛海「ひどい……美味しい……美味しいけどひどい……」

悠貴「あ、あははっ」

愛海「あたしはどこで間違えたの……?」

悠貴「お山を注文したところじゃないですかっ?」

愛海「強く握りしめすぎて大事なものを壊してた……」

悠貴「変なこと言ってないで、はやく食べないと溶けちゃいますよっ」

悠貴(スタッフさん達ぜんぜん動じてないし、これたぶんプロデューサーさんの仕込みですよねっ)

悠貴(愛海先輩ならお山を頼むだろう、って予想してこのお店選んだのかなっ)

愛海「美味しいけど減らない……。悠貴ちゃん、もう一個の方食べて?」

悠貴「二つともいただいちゃうんじゃなかったでしたっけっ?」

愛海「意地悪しないでー!」

悠貴「ふふっ」

悠貴(パフェは二人で美味しく食べましたっ!)

悠貴(その後も私と愛海先輩のロケは続きましたっ)

悠貴(途中で同世代のファンと会ったり)

ファン「私、愛海ちゃんのこと大好きで、応援してます!」

愛海「ありがとう!お山登ってもいい?」

ファン「それはちょっと」

悠貴(背は愛海先輩と同じくらい。それぐらいが登りやすかったりするのかなっ?)

悠貴(途中スタッフさんに労われたり)

スタッフ「二人とも大丈夫?疲れてない?」

悠貴「ありがとうございますっ!まだ元気いっぱいですっ!」

愛海「ありがとう。あ、でも美人なお姉さんのお山に登らせてもらえればもっと頑張れるんだけど」

スタッフ「ふふっ、それはダメよ」

愛海「えー」

悠貴(美人。やっぱり見た目が大事ってことでしょうかっ)

悠貴(他にも色んなお店をまわって、そのたびに愛海先輩はお山に登ろうとして失敗していたけれど)

愛海「お疲れ様でした!」

悠貴「お疲れ様でしたっ!今日はありがとうございましたっ!」

悠貴(結局、ロケが終了するまで一度たりとも私のお山に登ろうとはしませんでしたっ)

愛海「今日は楽しかったね。こういうお仕事またしたいな」

悠貴「そうですねっ」

愛海「あたしはこの後、ちょっと事務所に寄っていくつもりだけど悠貴ちゃんはどうする?」

悠貴「私も事務所に行こうと思いますっ」

悠貴(事務所に戻るまでに登ってもらうには、どうすればっ?)

愛海「……悠貴ちゃん、どうかした?何だか暗いけど。今日のロケなら大成功だったと思うよ」

悠貴「あ、いえ仕事のことじゃないんですっ」

愛海「でも悩みはあるんだね」

悠貴「う……」

愛海「なんでも言ってよ。相談乗るよ。大好きな後輩の悩みだもん」

悠貴(大好きと言ってもらえましたっ!でも、それなら)

悠貴「……どうしてっ」

愛海「?」

悠貴「どうしてお山に登ってくれないんですかっ?」

愛海「……はい!?」

悠貴「お山が小さいからですかっ?背が高いからですかっ?それとも可愛くないからですかっ?」

愛海「ちょ、ちょっと待って!何の話?」

悠貴「愛海先輩は他の人のお山には登るのに、私のお山には登ってくれないじゃないですかっ!」

愛海「登れてないよ!?今日も収穫ゼロだったよ!?」

愛海「えーっと、これは確認なんだけど、悠貴ちゃんはあたしにお山に登ってほしいの?」

悠貴「はいっ!」

愛海「本当に?」

悠貴「本当ですっ!」

愛海「……」

キョロキョロ

悠貴「あの、隠しカメラとかないですからっ」

愛海「そ、そうだよね。うん」

悠貴「……私、愛海先輩のこと好きですっ」

愛海「ええっ!?」

悠貴「小柄で可愛くて自由で、愛海先輩は私が目指してる可愛さを持ってて、とっても尊敬してますっ」

愛海「あ、うん、そっちね。びっくりした」

悠貴「でも、そんな愛海先輩が大好きな山登りを私だけにはしなくてっ。なんでですかっ?」

愛海「……」

悠貴「私、そんな特別は嫌ですっ」

愛海「……ごめん」

悠貴「愛海先輩?」

愛海「あたしが山登りしないせいで、不安にさせてたなんて思わなかったよ」

悠貴「……」

愛海「悠貴ちゃんのお山に登らないのは、悠貴ちゃんが後輩だからだよ」

悠貴「……?どういう意味ですかっ?後輩なら私以外にもいっぱいいますよっ?」

愛海「山登りは触れ合いだから、あたしは本気で嫌がる人のお山には登らないし、本気で嫌なら嫌って言える相手を狙ってるつもりだよ」

愛海「言葉で言えないにしても、不幸にあった時の顔をしたり泣き顔になったり、そういうサインが出せる子と触れ合ってるの」

愛海「山登りの後、暗い空気にはなりたくないし」

悠貴「そうだったんですかっ」

愛海「それで、悠貴ちゃんなんだけど」

愛海「悠貴ちゃんはなんていうか、自分で言うのもアレなんだけど、あたしのこと慕ってくれてるでしょ」

悠貴「はいっ!可愛い愛海先輩のことは目標にしてますっ!」

愛海「あ、ありがとう。でも、だからそんなあたしが何かお願いしたら、悠貴ちゃんは本音では嫌でも頷いちゃうんじゃない?体育会系っぽいし」

悠貴「そんなこと……いや、でも先輩の言うことならっ」

愛海「あたしは先輩命令で登るのは嫌だったの。それはもう触れ合いじゃないもん」

愛海「だから、悠貴ちゃんにだけは気軽に山登りをお願いできなかったんだ」

悠貴「そんな理由がっ」

愛海「でも、そのせいで悠貴ちゃんに余計な心配させてたんだったらゴメン」

悠貴「あ、愛海先輩が謝ることじゃないですっ!私の方こそ気をつかわせちゃって、ごめんなさいっ!」

愛海「……あは。なんかすれ違っちゃってたんだね、あたし達」

悠貴「……えへへっ。そうみたいですねっ」

愛海「でもそうか、悠貴ちゃんのお山は登ってよかったんだ。嬉しいな」

悠貴「はいっ。私も愛海先輩が私のお山に登りたいと思ってくれてて、安心しましたっ」

愛海「それじゃあさ、さっそく登っていいかな?」

悠貴「今ですかっ?」

愛海「うん。善は急げって言うでしょ」

悠貴「善ではないようなっ。でも、せっかく愛海先輩が登ってくれるって言うのならっ」

愛海「うひひ、了承だね!いざ!」

悠貴(よかったっ。これでやっと愛海先輩にお山に登ってもらえる。登って……もらえ……?)

悠貴「……あ、ちょっと待ってくださいっ」

愛海「え、う、うん」

悠貴「……」

悠貴(これで本当にいいのかなっ?)

愛海「悠貴ちゃん?」

悠貴「あの、山登りなんですけど、もうちょっと待ってもらえますかっ?」

愛海「まさかのお預け!?うん、でもいいよ!いくらでも待つよ!」

悠貴「なら私が可愛くなるまで待っててくださいっ」

愛海「……え?」

悠貴「私、思ったんですっ。私がお山に登ってもらえなかったのは、私が後輩らし過ぎたからですよね」

愛海「うん」

悠貴「そして今、私はお願いしてお山に登ってもらおうとしてます」

愛海「うん。あたし的には願ったり叶ったりの展開だね」

悠貴「でも、それじゃあいけないと思うんです。それじゃあ私はたんなる後輩のままなんですっ」

愛海「いけなくはないんじゃないかな!?」

悠貴「私、変わりたいですっ!私の方からお願いしなくても、愛海先輩の方から登りたいと思ってもらえる可愛い女の子にっ」

愛海「思ってるよ!?今、もうすでに悠貴ちゃんのお山に登りたいと思ってるよ!?」

悠貴「だから待っててくださいっ!私が今よりも、ううん、愛海先輩の隣に並べるくらい可愛くなる日をっ!」

愛海「もうじゅうぶん可愛いよ!?」

悠貴「そして、いつか愛海先輩の方から登らせてみせますっ!」

愛海「この後輩、全然先輩の言うこと聞かない。なんであたし達がすれ違ったのかなんとなくわかっちゃった」

悠貴「待っててくださいね、愛海先輩っ」

愛海「いや、だから」

悠貴「待っててくださいっ」

愛海「あのね、悠貴ちゃ」

悠貴「待っててくださいっ」

愛海「……はい」

悠貴「やったっ!約束ですよっ!」

愛海「……まあ、いつか登山する約束ができたわけだし、いいのかな?」

悠貴「えへへっ、特別な約束ですっ。これってなんだか…」

悠貴「……愛海先輩、事務所まで走りませんかっ?」

愛海「え、唐突に何?」

悠貴「なんだか嬉しくなっちゃってっ。先に行きますねっ」

愛海「悠貴ちゃん!?」

悠貴(特別な先輩と交わした、特別な約束。これってなんだか、二人の関係も特別になった気がして)

悠貴(頬にあたる風がいつもより冷たく感じられましたっ)

おしまい!

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