喜多見柚「東京の雪はふたりきりの言い訳」 (28)
モバマスの喜多見柚ちゃんのSSです。
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柚「だと思うんだけど、どうカナっ?」
P「……正座」
柚「Pサンっ!?」
P「正座」
柚「えーっと……ハイ」
P「そこじゃなくて」
柚「ン? 正座と言えば床の上じゃないの?」
P「ソファーの上です」
柚「さっすが、Pサン。やっさしいねっ♪」
P「はやく」
柚「な、なんかPサンが怖いよー」
P「それで……なんで事務所に戻ってきたんだ?」
柚「Pサンに会いたくて!」ペカー
P「……」
柚「あの、えっと、うん。雪降ってるなーとは思ったんだヨ?」
P「この! 大雪の中で! 公共交通機関の人とかが大変な思いをして! 頑張ってるときに!」
柚「ハイ」
P「ちひろさんも迅速に連絡を出してくれて、アイドルが帰れなくなる前に手を回してくれたのに!!!」
柚「ハイ」
P「なんで柚は戻ってきちゃうの!!!!!」
柚「……」
P「……」
P「申し開きがあれば聞こうではないか」
柚「あ、ありがたきしあわせー。えっとね、うんとね、ラジオのお仕事終わって」
P「うん」
柚「今日はPサンに会ってないなーって。急いで帰ればPサンの顔が見れるカナーって」
P「……」
柚「それであんまり考えずにバスに飛び乗って……気づいたら着いてた!」
P「……ちひろさんがラインしたはずだけど」
柚「今見たよ!」ドヤァ
P「……」
柚「どきどき」
P「柚があほの子だってことは分かった」
柚「ひどいっ、Pサンは柚にやさしく!」
P「もう多分家まで帰れないから……めっちゃ寒い事務所に泊まりだぞ?」
柚「えへへ。Pサンと一緒だったらそれもまたよしっ♪」
P「まったくもう」
柚「……め、迷惑かけちゃった……よね?」
P「どうせ俺も泊まりだしな。今さらひとりもふたりも変わらないよ」
柚「わぁっ、へへっ」
P「でも柚が手のかかる子だってのは絶対に忘れてやらない」
柚「あれれっ」
◇
P「とりあえず腹ごしらえするかー」
柚「おぉー♪ お腹がペコちゃん!」
P「ということで取り出したるはカレーメシ」
柚「……」
P「文句ある?」
柚「これ柚のお仕事で貰ったヤツだよっ! たくさん余ってたやつでしょっ」
P「インスタントは素晴らしいなぁ」
柚「あぁー、アタシも食べる、食べるってば」
P「お湯を入れて」
柚「入れましてー」
P「5分待ちます」
柚「ゆーず、ゆーず、ゆずゆずゆずっ♪」
P「うわ、ボーカルレッスン増やそ」
柚「うわーん!」
P「5分経ったら、ぐるぐる混ぜる!」
柚「まぜまぜー♪」
P「そんでがっと食べる」
柚「もぐもぐ」
P「うまい」
柚「美味しいっ」
柚「そういえば、Pサンはどうして泊まりなの?」
P「アイドルを全員無事に送り届けて、それを確認する人が必要だからな」
柚「プロデューサーってたいへんなんだね……」
P「柚のせいでますます帰れないんですが」
柚「ゆ、柚が労ってあげよう♪ Pサン、とってもエライ!」
P「ありがとな。まぁ、よくあることだよ」
柚「よくある……。ね。ね。も、もしかして」
P「ん?」
柚「ずっとこんなゴハン食べてたり?」
P「コンビニ弁当とインスタントにはいつもお世話に」
柚「……次、夜遅くなる時は教えてねっ」
P「? なんでだ?」
柚「柚がお料理作ってあげるよっ♪ フード☆メイドの本気を見せる時だー」
P「え、怖いっ」
柚「ちょっと!」
P「冗談だよ、柚もあのお仕事で成長したもんな。じゃあ楽しみにさせてくれ」
柚「ん。えへへ、まかせろーっ」
◇
P「さて、お風呂には入れないので……」
P「すまんけど、レッスンルームのシャワーで我慢してくれ」
柚「全然いいよー」
P「着替えとかは?」
柚「レッスン用に置いてるのがあるよっ」
P「じゃあ、良かった。お先にどうぞ」
柚「はーいっ」
――――――
―――
柚「ふん、ふん、ふーん♪」
柚「Pサンとお泊り、お泊りっ」
柚(戻ってきちゃったときはやらかしたーってなったけど)
柚(たまにはこんな日があってもいいよね? 神様に怒られないよね?)
柚(うわ、みんなお気に入りのシャンプーを置いておくからごちゃごちゃ)
柚(まぁ、アタシのもあるからヒトのことは言えないっ)
柚(あ、これ……いいこと思いついた♪)
――――――
―――
柚「浴びてきたよ―!」
P「おう。じゃあ俺も浴びてくるのでちょっと事務所見といて」
柚「ん。らじゃー♪」
P「よろしくなー」
柚「あっ」
P「なに?」
柚「パステルイエローのボトルのシャンプーを使うといいよっ」
P「えっと? まぁ、分かった」
柚「えへへ、柚の大作戦スタート!」
――――――
―――
P「黄色、黄色……これか」
P(なんか違うのか……? 自分じゃ良く分かんないな)
P(大雪って聞いてちひろさんと大騒ぎしたわりには、とりあえず何とかなりそうで良かった)
P(柚が戻ってきたときは心臓止まるかと思ったけど……)
P(あいつ、普段は周りをよく見てるから暴走はしないくせに、たまにわざとやるからなぁ)
P(ふふっ、次やったらひとりでサイコロの旅に放り込んでやる)
P(……俺、なんだかんだひとりの時より楽しんでるな)
――――――
―――
P「ただいまー」
柚「Pサン、おかえりー」
P「見といてくれてありがとう」
柚「いえいえっ。あっ、でもゴホービは貰うから♪」
P「え?」
柚「わしゃわしゃー、すりすりー」
P「ち、ちょっと。柚、近い、近い! なんで撫でられてんの!!」
柚「えへへ、Pサンからおんなじ香りがする」
P「あっ。シトラス……柚子の香り?」
柚「そうだよー♪ 柚お気に入りの柚子シャンプーを使ってもらった!」
P「なんでまた」
柚「ナンカおんなじ匂いがするって嬉しくない?」
P「えっ、なんかいかがわしく感じる」
柚「それはせ、せくはらだよっ」
P「だって」
柚「あとは柚がハスハスしたかった!」ペカー
P「もう……好きにしてくれ」
柚「にへー。そうするっ♪」
◇
P「残ってる仕事片付けちゃうから、てきとーにくつろいどいて」
柚「はーい」
P「えーっと、この書類はシュレッダー。こっちはちひろさんの承認待ち」
柚「うずうず」
P「せめてもうちょっと待てないの!?」
柚「んー、ムリかもっ」
P「元気良く言ってもダメ」
柚「ザンネンっ。しょうがないからPサンがお仕事するの眺めてるねー」
P「邪魔しないなら何でもいいよ……」
パシャ
柚「マジメに仕事するPサンの図」
P「さっそく気が散るっ」
柚「フリスクのLINEに送っとくねっ♪ 事務所にお泊りだーって」
P「頼むからフリスクで止めといてくれよ」
柚「ん。なんで?」
P「俺が社会的に抹殺される可能性がある」
柚「えへへ。それはタイヘンだっ」
P「……次のライブは、こっちの箱を抑えて、衣装はあっちに依頼して」カタカタ
柚「かたかたー、かたかたー♪」
P「なにそれ?」
柚「かたかたの歌! アタシもかたかたしたいなって♪」
P「柚にパソコンは無理そうだな」
柚「なにおう」
P「でもなんかかわいい」
柚「おっ、かわいいかな!?」
P「許せちゃうくらいかわいい」
柚「てれるよっ」
P「かわいい」
柚「へへー、うれしいなー」
P「そのまま大人しくしといて」
柚「ご、ごまかされるとこだったっ。もうっ、構ってよー」
P「まぁ、柚が楽しければ……」
柚「楽しければ?」
P「俺も……あっ」
バチッ
柚「ああっ」
P「停電したな」
柚「まっくらだー♪」
P「……」
柚「……おしごとのデータは大丈夫?」
P「多分、きっと、めいびー」
P「何にも見えん……ちょっと懐中電灯探してくる」
柚「よろしくっ♪ スマホの明かりいる?」
P「いや、大丈夫そうだ」
柚「よかっ……わぁっ、Pサン、外、外!」
P「外?」
柚「まっしろだー」
P「雪明かりか……暗いはずなのに明るく感じるな」
柚「なんかフゼイがあるね!」
P「大雪は困ったものだけど……綺麗だな」
柚「ね。ね。わー、なんかすごい嬉しいっ、楽しいっ」
P「懐中電灯見つかった」
柚「これで万事オッケー」
P「それにしても……」
柚「ん。どしたの?」
P「柚は暗闇を怖がらないんだな」
柚「そうカナ? なんか暗いとワクワクしない?」
P「ちょっと分かる」
柚「ね。あっ、Pサン、ちょっと懐中電灯貸して」
P「いいぞ、ほい」
柚「ばぁっー、柚子のおばけだー」
P「かわいい」
柚「へへっ。シーツがあればあずきチャンの真似ができたのになぁ」
P「それにはせくしーが足りないな」
柚「こーらっ。柚もそれはちょっぴり気にしてるからっ」
バチッ
P「おっ」
柚「戻ったね」
P「瞬間的な停電か、お仕事お疲れ様です……どこも大変だな」
柚「わりと遅めの時間で良かった……のカナ?」
P「そうかも。まぁ、さっさと寝ろって言ってるんだろうな」
柚「そ、そうだよっ。かたかたはお終いにして柚に構おう♪」
P「あとでなー。ちょっと電気系統問題ないか見てくるから、寝る準備しといて」
柚「うええん、Pサンのけちー」
◇
P「さて」
柚「ん」
P「暖房よし」
柚「よーしっ」
P「寝間着よし」
柚「よしっ、レッスン着のジャージだ―」
P「寝床よし」
柚「よ……よくない!!」
P「えっ。なんで?」
柚「柚はソファーなのは分かるよっ」
P「うん、大事なアイドルだからな」
柚「えへへ……ってそうじゃなくてっ。なんでPサンは椅子をつなげたヤツなの!」
P「だってこれしかないし、わりと寝れるし」
柚「ゆ、柚と一緒にソファーは?」
P「いや」
柚「がーん。ゆ、柚のことキライ?」
P「大事」
柚「じゃあ問題ないよっ。柚もPサン大事!」
柚「ただでさえお疲れなのに、絶対にそんなんじゃ疲れ取れないよ」
P「それでもダメ」
柚「むーっ」
P「むくれてもダメだぞー」
柚「ゆずーっ」
P「なんだそりゃ。電気消すぞー」
柚「あぁっ……あっ♪」
P「じゃあ、柚、おやすみー」
柚「ね。ね。Pサン、ちょっとソファーのとこ変なんだけど見てくれないカナ?」
P「えー。なんだー?」
柚「ここっ、ここっ」
P「スマホで照らしてるとこ? ちょっと遠いな、よっと」
柚「スキあり、えいやっ」
バサッ
P「うわっ」
柚「うにゅっ」
P「おい柚」
柚「ぴ、Pサン、すっごく重いよっ」
P「……やりやがったな」
柚「柚は一瞬のイタミと引き換えにPサンを手に入れたーっ」テッテレー
P「離して」
柚「絶対イヤー♪ それにほら、くっついてないと風邪引いちゃうくらい寒いよっ」
P「……」
柚「アイドル、大事なんだよねっ?」
P「……」
柚「……」
P「はぁーっ。今日だけだぞ」
柚「ん。柚の勝ちーっ。へへっー」
P「今日の柚はあまえんぼだな」
柚「たまにはね、柚にだってそんな日あるよ」
P「急に来るんじゃなくて小出しにして欲しいんだよなぁ」
柚「だって……フダンはPサンに甘える柚なんてヘンでしょっ」
P「……」
柚「柚はフツウの子だから、せめてみんなの前ではフツウでいないとなーって」
P「そう……かな」
柚「今日だけだから。明日はいつもの柚に戻るからサ♪」
P「……」
柚「うりゃうりゃー。Pサン、あったかいね。それに柚の匂いがする」
P「そりゃ同じシャンプーだし」
柚「へへ、おんなじってうれしい。ほらっ、もっとあまやかしてもいいんだよ?」
P「俺が捕まる」
柚「そのときは柚が守ってあげるよっ」ニパー
P「まったく……大雪のせいだからな」ギュッ
柚「えへへ。雪はふたりきりで甘える言い訳だねー♪」
P「……それから、変じゃないぞ、誰だっていつだって甘えたくなるときはあるもんだ」
P「元気でニコニコ分かりやすい柚じゃなくたって、望まれる自分とは違ったって、周りはきっとあったかいよ」
柚「……」
P「しんどくなったらいつでもおいで。みんなの前でも、ふたりのときでも」
柚「そっか」
P「そうそう」
柚「ね。Pサン、手出して」
P「これでいいか?」
柚「小指を合わせて、約束のぴっ!」
柚「やっぱり照れるけど嬉しいから、またこうやってふたりで甘えさせてほしいなー」
柚「みんなの前は……ちょっぴりだけ甘えてみるっ」
P「おう」
柚「へへーっ。簡単に言うと……Pサンはトクベツ♪」
P「俺も……多分トクベツだ。いまは柚で手いっぱいだよ」
柚「もーっ。そこは……素直に……」
P「ふふっ。おやすみ、柚」ナデナデ
柚「えへー……撫でてくれて嬉しい……おやすみ……Pサン」
◇
チュンチュン
P「……ん」
P「んんーっ、朝か。雪はなんとか止んだかな」
柚「すーっ…んんっ」
P「がっちり抱きついてやがる。しょうがないなぁ」
P「……ふたりだと寒くないな、柚」
柚「ん……えへ……」
ガチャッ
忍「御用だよっ、Pサン!!!」
あずき「問答無用だよっ、逮捕大作戦だー!」
穂乃香「おはようございます、Pさん」
P「うわっ、なに、なに。なんでみんなこんな朝早くから」
あずき「昨日、柚ちゃんが事務所に泊まるって」
穂乃香「フリルドスクエアのLINEにメッセージを流していたんです」
忍「だから、ここはきっちり現場を抑えなきゃなくちゃと思いまして!」
P「横暴だ―、不可抗力だー、手は出してないぞー」
忍「ふふっ。ちゃんと分かってるよ、Pさん」
P「ん?」
あずき「ぱしゃりっ。穂乃香ちゃん、カメラで証拠抑えたよっ」
穂乃香「珍しい瞬間ですからね、大事にしましょう♪」
P「えっと? どういうこと?」
穂乃香「Pさん、ありがとうございます」
忍「柚ちゃんはいつも私たちのこと良く見てくれてて。まぁ、いたずらしたりはするけど」
あずき「あずきたちが甘えちゃうことはあっても、甘えられることって少ないなって」
穂乃香「だからこうして本当にゆるんでる柚ちゃんが見れて嬉しいんです」
あずき「柚ちゃんのリラックス大作戦、成功だね♪」
P「ははっ、みんな気づいてたんだな。……いい親友持ったなぁ、柚」
柚「んんっ……ふぁぁーっ」
P「おはよう、柚」
柚「わぁっ……Pサンだぁっ、やほー。あとちょっと、ちょっとだけー」
P「柚、うしろ、うしろ」トントン
柚「んー? うしろー?」
パシャ
あずき「寝ぼけ柚ちゃんとプロデューサーのツーショット、いただきっ」
柚「……あ……あ」
忍「Pさんに堂々と甘えるなんて珍しいね?」
穂乃香「ふふっ。おはようございます、柚ちゃん」
柚「……これは……その、違うカラ」テヘ
あずき「何が違うのかなー??」
柚「……あああああああっ」
柚「ちょっと、ソコに全員正座!!!!!」
おしまい。
限定を引くために書いていたら投稿する前に引けました。
書けば出る、出ても書く。柚はもちろん可愛い。
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