盗賊「悪党でも勇者様になれる時代ってサイコーすぎる」 (21)

―城下町―

兵士「捕まえたぞ!」ガシッ

盗賊「はなせ!! こらぁ!!」

衛兵「最近、この街で盗みを繰り返していたのがこんな子供だったとは……」

兵士「同情の余地はあるが、犯罪は犯罪だ。こっちにこい」

盗賊「うるせえ!! はなせ!! おらぁ!!」

兵士「ええい! 大人しくしろ!!」バキッ

盗賊「ぐっ!?」

衛兵「おい。やりすぎるなよ」

兵士「クソガキにはこれぐらいがいいんだよ」

盗賊「[ピーーー]!」

兵士「おまえ……」

衛兵「いいから連れて行け」

兵士「分かってる。ほら、自分の足で歩けっ」グイッ

盗賊「引っ張るなよ! 糞野郎!!」

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―城内―

側近「――報告は以上です」

国王「そうか……」

側近「深刻な人材不足ですな」

国王「もはや、勇者になど誰も期待しておらんからな」

側近「そのようで」

国王「困ったものだ」

側近「新たな兵を指名いたしますか」

国王「ふむ……」

兵士「さっさと歩け!!」

盗賊「歩いてるだろ!! これいじょう、はやくあるけませーん」

兵士「いちいち生意気だな……」

国王「あれは?」

側近「近頃、城下町で盗みを繰り返していた者が捕まったようです」

国王「あの少年がか……?」

牢屋

ガチャン!!

盗賊「いつ出してもらえるんだよ」

兵士「お前が改心したらだ」

盗賊「もう盗みなんてしませーん。だしてくださーい」

兵士「……」

看守「ほら、お前さんは仕事に戻りな」

兵士「頼むぞ」

看守「はいよ」

兵士「くそっ!」

盗賊「死ねっ」

兵士「おい!!」

看守「いちいち腹を立てるな。ハゲるぞ」

兵士「うるせぇ!! むしゃくしゃするぜ」

盗賊「こっちの台詞だっつーの」

看守「さてと、運がなかったな、糞坊主」

盗賊「は?」

看守「しばらくは出られないぞ」

盗賊「なんでだよ。ガキが金と食い物を盗っただけじゃん」

看守「時期が悪い。今はお前みたいな小物を相手にしているほど国は暇じゃねえんだ。最悪、お前のことなんて忘れ去られる可能性もある」

盗賊「なら、捕まえんなよ」

看守「だから、運がなかったんだよ。普通ならこそ泥のためだけに兵を割いて捜査なんてしない。現行犯、しかも兵士の目の前で犯行が行われない限り、捕まえようとしねえよ」

盗賊「……」

看守「兵士の前で盗んだんだろ」

盗賊「家から出たら、目の前に居やがった」

看守「ハッハッハッハ」

盗賊「笑うな!!」

看守「ま、干からびることはないだろうから安心しろ」

盗賊「……一か月ぐらいで出られるだろ?」

看守「さぁな。下手をしたら1年以上はここにいるかもしれねえな」

盗賊「ざっけんな!! すぐに出せ!! オラオラオラ!!」ガシャンガシャン

看守「元気いいなぁ。まぁ、ゆっくりしてけよ」

盗賊「……クソっ。ホント、ついてないな」

看守「すぐに国が落ち着けばいいんだけどな。望みは薄いが」

盗賊「兵士たちは殺人犯でも追ってるのかよ」

看守「知らねえのか? 今、この国は戦争の準備に追われている」

盗賊「戦争?」

看守「流石にお前も魔王のことは知っているだろ」

盗賊「魔王……。あの最低最悪の王様のことだろ」

看守「そうだ。その最低最悪の王様が遂に攻めてくるんだとよ」

盗賊「おいおい。だったら、国内は混乱して、盗みたい放題じゃねえか。早く出せ」

看守「できるわけねえだろ。ま、そういうわけだから、お前さんに構っていられるやつは俺以外にいない。俺はお前を出してやれるだけの権限がない」

盗賊「つかえねぇ……」

看守「なんとでも言え。どーせ、お前は当分出られないんだからな」

盗賊「ちくしょう……」

―数日後―

側近「陛下。やはり勇者は現れません」

国王「無理もない……か……。勇者の役割は、既に知れ渡っている。加えて相手があの賊国ではな……」

側近「候補者は全て首を横に振りました。こちらとしても無理強いはできませんので」

国王「分かっておる。有能な者をこの時期に失くしてしまうほうが、痛手となろう」

側近「はぁ……面目ありません……」

国王「だが、このままでは奴の侵攻をただ待つだけになるか」

側近「何分、魔王の情報統制は完璧でありますから、勇者がいなければ何も耳に入りません」

国王「……仕方あるまい。今いる囚人は何名だ?」

側近「陛下、何を仰って……」

国王「それしか方法はあるまい。現状維持では何も変わらぬ」

側近「しかし、囚人に任せたところで成果など期待できません。途中で逃げ出すどころか、牢から出した時点で行方をくらませることも」

側近「勇者が居らぬ現状では、見張り役になる兵士すら集めることはできません」

国王「故に、調べてほしいことがある」

側近「はい?」

―牢屋―

盗賊「くっそ……。まだ出られないのかよ……」

盗賊「早く帰らないといけないのに……」

盗賊「……」

盗賊「だせーだせだせー」ガシャンガシャン

「うっせーぞ!! ガキィ!!!」

盗賊「ひっ」ビクッ

「静かにしてろバカ野郎!!!」

盗賊「んだよぉ……」

盗賊「ったく……。どうなるんだ……俺……。もしかして一生、このままなのか……」

盗賊「それは困るぅ……」

盗賊「かえりてぇ」

「なら、どうして罪を犯したのですか?」

盗賊「あぁ? 誰だよ」

「隣の者です。罪を犯さなければ、ここに来ることはなかったはずです。何故、そのように愚かなことをされたのですか」

盗賊「お前だって捕まってるじゃねーかよ。説教すんな」

「私は……その……無実の罪で捕まっているだけでして……」

盗賊「疑われるようなことをしたのが悪い」

「疑われるようなこともしていません」

盗賊「そんな奴が牢屋に入れられるかよー」

「うぅ……」

盗賊「ふんっ」

盗賊(正直、他人と話してる余裕もないしなぁ)

盗賊「はぁ……だしてくれぇー……たのむよー……」

看守「今から番号を呼ばれた者は外に出る準備をしろ!!」

盗賊「え?」

「おっほぉ!! ついに出してもらえるのかよ!!」

「イヤッホッォォ!!」

看守「喜ぶのは番号を呼ばれてからにしろ。まず……」

盗賊(呼ばれろ……呼ばれろ……!!)

看守「――以上だ!! 準備が整い次第、報告しろ!! ただし、いつまでも待つわけじゃないからな!! 急げよ!!」

「自由だー!!!」

「オラオラ!! 準備なんてとっくにおわってんだよぉ!! だせおらぁ!!」

盗賊「おい!! なんで俺が呼ばれないんだ!!!」

看守「しらねえよ」

盗賊「ふざけんな!! 出せ!! だしてくれぇぇ!!」

「うるせぇんだよ!!! 黙ってろクソガキぃ!!!」

盗賊「ひっ」

「あのぉ……きちんと裁判を……私が冤罪であることはすぐに分かるはずなので……」

看守「行くぞ」

「「おぉぉぉ!!!」

盗賊「待てって!! おい!!」

「あぁ……はなしを……はなしをきいて……」

「諦めろってーの。どうせ、クズどもが外に出たって、また戻ってくるだけなんだからよ」

盗賊「お前も同じクズだろ!」

「お前、俺が先に出たらぶん殴ってやるからな」

盗賊「上等だ、こらぁ!!」

「うぅぅ……おうちにかえしてくださぁい……」

「おめえも泣くんじゃねえよ!! 鬱陶しい!!」

「うぅぅ……おぇぇ……」

盗賊「おい、吐いたのか?」

「はぁ……はぁ……うっ……おえええ……」

盗賊「おいおい……」

「神経が細い野郎だな。囚人に向いてないんじゃねえのか?」

盗賊「向いてない奴が牢屋に入れられるわけないだろ」

「だから、わたしは……えんざ……ふっ……おえぇ……」

「くせえんだよ、ゲロ野郎。それ以上、吐いたらぶっ殺すぞ」

「そんなぁ……」

盗賊「はぁ……」

盗賊(どんな形でもいいから、出してほしい)

―数週間後―

盗賊「……」

盗賊(何日たったんだ……。もう……一か月ぐらいはいるんじゃないか……)

盗賊(どうしてんだろうな……)

看守「今から番号を呼ばれた者は外に出る準備をしろ」

盗賊(もう何度も聞いたセリフだな……。俺が呼ばれることはないんだ)

看守「22番、54番」

盗賊(ほらなぁ)

看守「61番」

盗賊「あぁ……」

看守「おい」

盗賊「なんだよ? あぁ?」

看守「61番」

盗賊「はぁ?」

看守「お前だよ。早く、起きろ」

盗賊「おれ!?」

看守「自分の番号も忘れたのか」

盗賊「出られるのか!? やったぜえ!!!」

看守「さっさとしろ」

盗賊「もう準備はできてるっつーの!! 早く出しやがれ!!!」

看守「分かった分かった」ガチャンッ

盗賊「よぉし……!! ついに!! ついに!!」

看守「ついてこい。今から陛下に謁見してもらう」

盗賊「はぁ? 王様に? なんで?」

看守「外に出られるんだから、いいだろ」

盗賊「まぁ、そうだなぁ。うへっへっへっへ」

看守「……」

盗賊「なんだよ?」

看守「いや。坊主、真面目に生きろよ。これからは、な」

盗賊「真面目に生きてもいいことないだろ?」

―謁見の間―

側近「この三名が今回の候補者になります」

国王「ふむ……。こやつらはどういった経緯で捕まったのだ」

側近「右から、窃盗を犯した盗賊。民家に押し入り、金品と食料を盗み出すことを繰り返しておりました」

国王「そうか。このような子供がな」

盗賊「そうしないと腹が減るからなぁ」

側近「次が国家転覆を計った鍛冶師です」

国王「おぉ……例の……」

鍛冶師「ち、ちがいますぅ……誤解ですぅ……」

盗賊「女なのにすげえことしてたんだな」

鍛冶師「だから、頼まれて武器を作っただけでぇ……うぷっ……」

盗賊「あ、お前が隣の牢屋にいたゲロ野郎なんだ」

鍛冶師「野郎じゃないんですけど……」

側近「最後が人身売買を行っていた者です。主に子どもを対象にした売買をしていたようで」

大男「誰でもやってんだろうがよ、それぐらい」

国王「調べもついておるのか」

側近「ええ。こちらに」

国王「……」

大男「どうでもいいけど、さっさと終わらせてくれねえか? もう自由の身なんだろ」

国王「これより、お前たちを勇者に任命する」

大男「は?」

鍛冶師「ゆ……うしゃ……?」

盗賊「ゆうしゃってなんだよ」

国王「勇者としての務めを果たした者には全てを罪を取り消すことを誓おう」

国王「更に、それならに報酬も用意させる」

鍛冶師「あの……わたしは……冤罪ですので……取り消すとかじゃなく……裁判を……」

国王「そのような暇はない。勇者として旅立ってもらう」

鍛冶師「えぇぇ……」

盗賊「んだよ、それ。意味がわかんねーよ」

大男「放棄するのが分かってて言ってんのか? バッカじゃねえの」

>>14
国王「更に、それならに報酬も用意させる」→国王「更に、それなりの報酬も用意させる」

国王「罪人よ。お前にはどうやら、最愛の娘がいるらしいな」

大男「……」

国王「分かるな」

大男「国が人質をとるのかよ」

側近「お前は罪人だ。人権などあるものか」

大男「やろぉ……」

国王「次の者」

鍛冶師「は、はいっ」

国王「随分と両親を大切にしておるそうだな」

鍛冶師「え……。まぁ、その私に鍛冶師の何たるかを教えてくれたのが父であり、ここまで健康に育ててくれたのが母ですから」

国王「では、逃げだせば、二度と親孝行はできぬものと思ってよい」

鍛冶師「はい!? 陛下、それはどういうことですか!?」

国王「そして……」

盗賊「な、なんだよぉ」

国王「両親を失い、窃盗を繰り返すことで今日まで生きてきたようだな。血の繋がっていない弟妹のために」

~どこか~

????「(やべえ……やばそうな言動の盗賊野郎がいたからちゃっちゃと成敗して去ろうかと思ったが)」

????「(こいつら早いうちから正統派勇者パーティになるパターンだ俺にはわかる)」

????「(とりあえず続きを頼む)」サッ

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