磯野ボム兵「……」ジジ… サザエ「父さんが爆発したらおしまいよ」カツオ「うん!」 (41)

ボム兵「……」ジジ…



サザエ「いい? カツオも分かってると思うけど、父さんが爆発したらおしまいよ!」

サザエ「絶対怒らせちゃダメよ!」

カツオ「うん、分かってるよ!」

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カツオ(ぼくのお父さんは普通の人と少し違う)

カツオ(首から下は普通の人と同じで、和服やスーツを着てるんだけど)

カツオ(首から上は黒い球体に白い目が二つついてるだけ、という顔をしている)

カツオ(そして、頭のてっぺんには導火線のような毛が一本だけ生えてる)

カツオ(お父さんの機嫌が悪くなると毛に火花がつき、どんどん短くなる)

カツオ(ただし、お父さんの機嫌がよくなれば、火花は消え、毛の長さも元に戻るというわけ)

ボム兵「……」



カツオ「こっちこっちーっ!」タタタッ

ワカメ「お兄ちゃん、待ってよー!」タタタッ

タラオ「わーいですー!」タタタッ

ドタバタ… ドタバタ…



ボム兵「……」ジジ…



カツオ「ハッ!」

カツオ「ワカメ、タラちゃん! 静かにするんだ!」

ワカメ「どうして?」

タラオ「もっと走るです!」

カツオ「だってほら、お父さんが……」



ボム兵「……」ジジ…



ワカメ「怒ってる!」

タラオ「まずいですぅ!」

カツオ「さて、勉強しようっと!」

ワカメ「そうね!」

タラオ「ぼくはお昼寝するでーす!」



ボム兵「……」フッ



カツオ(よかった、火が消えてくれたみたいだ……)

マスオ「どうぞ、お義父さん」トクトク…

ボム兵「……」

マスオ「あれ? サザエ、このビールあまり冷えてないな」

サザエ「ごめんなさい、冷蔵庫に入れるの忘れてたのよ~」

フネ「あれほどいっておいたのに、そそっかしい子だねえ」

ボム兵「……」ジジ…

サザエ「ハッ!」

マスオ「お義父さん! 落ち着いて下さい!」

ボム兵「……」ジジジ…

カツオ「うわぁぁぁ!」

ワカメ「爆発しちゃう!」

タラオ「ぼくたちおしまいですぅ~」

マスオ「サザエ! 早くなんとかしてくれ!」

サザエ「すぐ三河屋さんに電話して、冷えたビール持ってきてもらうわ!」

駅――

ボム兵「……」

マスオ「あ、お義父さん、奇遇ですねぇ!」

ボム兵「……」クイッ

マスオ「屋台で一杯ですか! いいですねぇ~!」

マスオ「だけど、すみません! 今日はサザエに早く帰ってきてくれといわれてて……」

ボム兵「……」ジジ…

マスオ(お義父さんの導火線に火が!)

マスオ「分かりましたっ! 飲みに行きましょーっ!」

磯野家――

ワカメ「お父さーん!」

ボム兵「……」

ワカメ「あたしのお友達の堀川君よ! 家に遊びに来てくれたの!」

堀川「こんにちは!」

ボム兵「……」ジジ…

ワカメ「え!?」

ボム兵「……」ジジジ…

ワカメ「堀川君、帰って!」

堀川「えっ、どうして……!?」

ボム兵「……」ジジジジジ…

ワカメ「お父さんは堀川君が気に入らないのよ!」

ワカメ「あなたがこれ以上ここにいると、爆発しちゃう!」

堀川「でも、ぼくなにもしてないのに――」

ワカメ「いいから、早くっ!!!」

堀川「わ、分かったよ、ワカメちゃん」

小学校――

カツオ「ってわけでさ。毎日毎日生きた心地がしないよ」

中島「磯野も大変だなぁ」

花沢「だけどいいじゃない、スリル満点で!」

花沢「うちの父ちゃんもそのぐらいスリリングな人になって欲しいわぁ~」

カツオ「他人事だからそんなことがいえるんだよ……」

花沢「ところで、満点といえば……磯野君、こないだのテストはどうだったの?」

カツオ「……」ピラッ

花沢「あれま10点!」

中島「こりゃあ、まずいんじゃないか? おじさん激怒するぞ、きっと」

カツオ「そうなんだよ、どうしよう……」

カツオ「なんとか見せないで済む方法を考えてるんだけど……」

中島「テストのことはおじさんも知ってるだろ? 絶対バレるだろ」

中島「いっそ、0を一つ足して100点にしちゃえば?」

カツオ「あ、それいいかも! ナイスアイディア!」

花沢「ダメよ、答えの欄見られたらすぐバレちゃうじゃない」

花沢「そもそも磯野君がいきなり100点取るってのも怪しすぎるし」

カツオ「それもそうか……」

花沢「下手に隠そうとするより、正直に打ち明けた方が絶対いいわよ!」

カツオ「う、うん……」

磯野家――

カツオ「ごめんなさいっ!」

ボム兵「……」

カツオ「こんなひどい点数を取っちゃって、本当にごめんなさいっ!」

ボム兵「……」ジジ…

カツオ(やっぱりダメだ……怒ってる……!)



ワカメ「お兄ちゃん……」

タラオ「カツオ兄ちゃん、かわいそうです」

サザエ「な、何とかならないの、母さん!? このままじゃ爆発しちゃうわよ!」

フネ「こればかりはどうしようもないねえ……」

タマ「ニャ~ン」

ボム兵「……」ジジジ…

ボム兵「……」ジジジジジ…

カツオ(爆発する……! ここまでか……!)

ボム兵「……」フッ

カツオ「え!?」

ボム兵「……」サササッ

カツオ「へ……?」

フネ「お父さんはね、テストの点数が悪かったのはよくないことだが」

フネ「きちんと正直に話したことは立派だ、といってるんだよ」

カツオ「お父さん……」

フネ「だけど、これからはもっと勉強頑張りなさいって」

カツオ「うん、ぼく頑張るよ!」

ボム兵「……」コクッ



タラオ「よかったですぅ~」

サザエ「父さんだっていつも怒ってばかりの人じゃないのよ」

ワカメ「お姉ちゃんが一番おびえてたくせに~」

タマ「ニャ~ン」

フネ「……」ペタペタ

カツオ「あれ、お母さん、何作ってるの?」

フネ「おはぎだよ。お父さんがカツオが正直に話した記念に食べたいっていいだしてね」

カツオ「やったーっ!」

ワカメ「おはぎ楽しみ~!」

タラオ「楽しみですぅ~」

マスオ「お義母さんのおはぎは絶品ですからねぇ」

サザエ「父さんも心なしか待ち遠しそうだわ」



ボム兵「……」ソワソワ

フネ「できましたよ」

ボム兵「……」ニコニコ

サザエ「じゃあ、まず一個目は……」

カツオ「お父さんからどうぞ!」

ボム兵「……」コクッ





「お、いい匂いがすると思ったら、おはぎですかぁ~!」

ワカメ「この声は……」

マスオ「ノ、ノリスケ君!」

ノリスケ「いやぁ~、ちょうどいいところに来ちゃったなぁ~」

サザエ「ノリスケさん、まずは手を洗って――」

ノリスケ「おや? まだ誰もおはぎに手をつけてないですね」

ノリスケ「じゃ、僕からいただいちゃお! いただきま~す!」モグモグ

ボム兵「!?」

ボム兵「……」ジジ…

ノリスケ「あれ? どうしたんですか、皆さん? 食べないんですか?」

ノリスケ「じゃ、もう一つ」モグモグ

ノリスケ「うん、うまい!」

ボム兵「……」ジジジジジ…

カツオ「あ、あああ……」

マスオ「火花がどんどん大きく……」

ボム兵「……」ジジジジジジジジジジジ…

タマ「ニャ~ン」タタタタタッ

タラオ「あ、タマが逃げたです!」

ボム兵「……」シュボボボボボボボボボ…

サザエ「もうダメだわ! 爆発するわ!」

マスオ「お義父さんっ! 頭を冷やしてっ! おはぎはまだありますからっ!」

フネ「人数分の救急車と家を直す大工さんの手配をしておこうかねえ」



ボム兵「バッカモーーーーーーーンッ!!!!!」



ドゴォォォォォォォォォォォンッ!!!!!










~おしまい~

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