マスオ 「えぇー!?サブロウくんが連続殺人犯だって~!?」 (95)

マスオ 「冗談にしては笑えないよサザエ~。
    サブロウ君に限ってそんなことあるわけないじゃないか~」

サザエ 「マスオさん!私見たのよ~!先週裏のおじいちゃんが遺体で
    発見された時の朝サブちゃんがバイクで家から走り去るのを!」

マスオ 「サザエ~、サブロウ君は配達の時に死体を見つけた第一発見者だけど、
    いくらなんでも証拠もなしに疑うのはひどすぎると思うな~」

サザエ 「私がサブちゃんを見たのは朝の6時なのよ!
    通報があったのは2時間後の朝8時!おかしいと思うでしょー!」

マスオ 「えぇー!!本当かい!?なんで今まで黙ってたんだい?」

サザエ 「黙ってなんかいないわ~!その次の日サブちゃんに問い詰めたの!
    でもその時間はまだ店にいたの一点張りよー!三河屋のおじさんも
    サブちゃんは確かに店にいたっていうし私が悪者扱いされちゃったわ~」

マスオ 「ということは三河屋さんがグルの可能性があるって事だね~!」

サザエ 「そうなのよ~!警察にこれから相談に行こうか迷ってたから
    マスオさんに相談したの!」

ガラガラ……!

ノリスケ 「サザエさん~。なんだか面白い話をしてるじゃないですかー!」

マスオ 「の、ノリスケ君!!聞いていたのかい!?」

ノリスケ 「はいー!最初から聞き漏らさず全部聞かせてもらいましたよ~!」

サザエ 「呆れた~!ノリスケさんこの話は内密にお願いね!」

ノリスケ 「はいー!もちろんですとも!それでさっきの続きなんですが…」

サブロウ 「ちわー!!三河屋でーす!!」

一同 「!!???」

サザエ 「さ、サブちゃん!お疲れ様!今日は早いのね!」

サブロウ 「あれ?そうすか?それより三人で台所にいるなんて珍しいすね~!
     なにかあったんですか?」

ノリスケ 「いいいいやあ~!サザエさんに秘伝のレシピでも
     お、教えてもらおうかな~と思ってね!アハハハ!」

マスオ (動揺しすぎだよノリスケ君~)

サザエ 「そ、そうなのよ~!今日のイクラちゃんの誕生会で
    作ってあげるのよね~?ウフフフ!」

サブロウ 「そうなんすか!いや~!お父さんの手料理ってのも
     たまにはいいですよね!アハハハ!」

サザエ 「サブちゃんも早く素敵なお嫁さん見つけて
    子供に手料理作ってあげればいいじゃな~い!」

サブロウ 「あんまり急かさないでくださいよ!あはは!
      あっ、そういえばサザエさん!この前の話なんですが・・・」

サザエ 「え!?何かしら!?」

サブロウ 「朝早くに僕が裏のおじいさんの家から出てきたって話なんすけど
     サザエさんあの時間にあそこにいたんですか??」

サザエ 「え!?あーそうね!タマの散歩でたまたま通りかかったのよー!」

サブロウ 「そうなんすか!でも前も言った通りその時間は店にいましたので
     見間違いだと思うんですけどねー!あはははは!」

マスオ 「そ、そうかもしれないよサザエ~!サザエはおっちょこちょいな所があるからね~!
    悪かったよサブロウ君!」

サブロウ 「お気になさらずに!ただサボってないか
     監視されてるのかと思っちゃいましてねー!アハハハ!」

サザエ 「ほんとごめんなさいね~!私ったら寝ぼけてたかもしれないわ~」

ノリスケ 「アハハハ!サザエさんらしいですね!」

マスオ (の、ノリスケ君…)

サブロウ 「ここ最近物騒な事件続きでみんな警戒心強くなってますから
     仕方ないっすよ!僕も死体を見つけた時の事は未だにショックですし…」

マスオ 「誰だってそうだよサブロウ君!とりあえず犯人が捕まるまで気が抜けないね~」

サブロウ 「そうですね!あっ!まだ配達あるんで僕はこれで!」

サザエ 「お、お疲れ様~!」

ガチャ!・・・・ブゥーーーン

一同 「ふぅーーー……」

マスオ 「行ったようだね~話は聞かれていなかったとは思うけど・・・」

ノリスケ 「大丈夫ですよマスオさん!でも聞かれていたら
     僕達皆殺しですかね?アハハハ!」

サザエ 「この状況で笑えるなんて呆れてモノも言えないわ~」

ノリスケ 「まあまあ!どっちにしろ前向きにいかないと!
     おっと!そろそろ会社に戻らないと!」

マスオ 「ノリスケ君も家族があるんだし今は気を引き締めたほうがいいと思うけどな~」

ノリスケ 「マスオさんは心配症だな~!じゃ遅れるんでまた夜のイクラの誕生会で!」

サザエ 「くれぐれもこの話は内密にお願いね!」

ノリスケ 「わかってますわかってますとも!それじゃ!」

サザエ 「あの脳天気さを分けてもらいたいわね~」

マスオ 「僕もだよサザエ~」

その日の午後……

「とぅるるるるるる!!」

マスオ 「はい!もしもし?…あっ!ノリスケくん?」

ノリスケ 「あーマスオさん。今日のイクラの誕生会の話なんですけど…」

マスオ 「あーはいはい。いったいどうしたんだい?」

ノリスケ 「プレゼントも買い終えたので今から向かうんですが
     まだ二人は来ていないですよね?」

マスオ 「サプライズかい!?まだ来ていないよ~!」

ノリスケ 「それは良かった!!今電車来たところなので向かいますね!」

マスオ 「ノリスケくん~浮かれて線路に落ないようにね~」

ノリスケ 「そんな!笑い事じゃ済まないですよ!アハハハ!あっ!はっ!!えっ…!」

「ドガっ!!!ゴトゴトゴトゴトっ!キキッキーーッ!!」

ノリスケ 「う、うわああああ!!うがごっ!!……」

マスオ 「えぇー!?ノリスケくん!?ノリスケくーーん!!!」

電話のこうでは客の悲鳴だけが鳴り響いていた・・・

30分後---------

ガラガラ!

サザエ 「ただいまー!さあ!とびきり美味しいケーキ作るわよ~!」

ダッダッダッダッダダ!

マスオ 「サザエ……ノリスケ君が……ノリスケ君が!!

マスオは今起こった事をサザエに話した・・・

サザエ 「まあ!!大変じゃな~い!!タイコさんは?」

マスオ 「さっき到着して居間にいるよ~。話せるような状態ではないね…」

サザエ 「そう……誕生会どころじゃなくなったわね~…」

ガラガラ!

波平 「ただいまー。いやーワシの乗った電車の次の電車が
   事故で止まったらしくてな!危なく帰れんところだった!」

マスオ 「お父さん…その話なんですが……」

波平 「な、なんだと!?の、ノリスケェ……ワシが同じ電車に
    乗っておれば助けられたかもしれんのに……」

フネ 「お父さん……。サザエ、タイコさん落ち着いたみたいですよ。」

サザエ 「そう…きっとサブちゃんだわ!あの時話を聞かれてたんだわ!!」

マスオ 「まずはノリスケ君という事なのかい!?いずれ僕達も……」

波平 「サブロウ君がどうかしたのか?駅で少し話たが?」

マスオ、サザエ 「えぇー!?」

波平 「うむ、何やら慌てた様子でサザエを探しておったぞ。」

サザエ 「わ、私!?」

マスオ 「サザエ~きっと警察に行く話を聞かれていたんだよ~!」

サザエ 「しまった!ノリスケさんはきっと見せしめのつもりなのね~」

波平 「いったい何の話だ!こんな非常時に!」

フネ 「そうですよサザエ。それにマスオさんまで。ちゃんと説明しなさい。」

サザエ 「わかったわ…みんなを呼んできてもらえるかしら?」

サザエは居間でみんなにこれまでの事、サブロウについて包み隠さず話した……

タイコ 「そ、そんな……!口封じのためにノリスケさんを!!許せない!!」

イクラ 「バブー!!」

カツオ 「それじゃ家にこのままいるのもまずいんじゃないの?」

ワカメ 「私怖いわー!」

マスオ 「カツオ君の言う通りだね~お父さん!警察に行きましょう!」

波平 「うむ!とりあえず警察に連絡せんとな!」

フネ 「今日は空が荒れるらしいですから早いうちに行ったほうがいいですよ。」

サザエ 「あっ!いけない!寝室の窓開けっ放しだったわ~!」

ダッダッダッダッダダ!

カツオ 「姉さんはこんな時でもマイペースなんだな~」

サザエに続き波平が警察に連絡、マスオが外の確認をするため居間を出る・・・

ゴゴゴゴゴ……

ゴロゴロ……ピカっ!!ドがーつ!!

磯野家の居間に轟音が轟く

ワカメ 「キャーーー!!!」

カツオ 「か、雷!?」

タラオ 「おへそ取られるでーす!」

豪音と共に居間は暗闇に包まれた

タイコ 「て、停電!?こんな時に!」

イクラ 「バーブ~!!」

タイコ 「イクラ!よしよし怖くないわよ~」

ダッダッダッダッダ!

ガラガラ!

波平 「こりゃいかん!電話が繋がらんぞ!!」

マスオ 「お父さん!!外はものすごい嵐ですよ!!雨が強くて目も開けられません!!」

サザエ 「そんな~これじゃうちに閉じ込められたも同然じゃな~い!」

カツオ 「天候はサブロウさんの味方になっちゃったか~」

波平 「バカもーん!!こんな時にふざけるヤツがあるかー!!」

フネ 「お父さん!イクラちゃんが怖がってるじゃありませんか!」

波平 「おっと!すまんすまん……」

マスオ 「今日のところはうちから出ないでじっとしてるしかありませんね~」

波平 「そうだな……マスオ君!ワシらがこの家を守らんとな!」

マスオ 「はい!お父さん!」

波平 「サザエ!家の戸締りを頼む!」

サザエ 「任せて~!」

ダッダッダッダッダっ!

10分後・・・

サザエ 「お父さん!戸締まりしてきたわ~!」

波平 「よし!後は電気がくるまでじっとしておれ!」

フネが台所からロウソクを持ってくる

フネ 「ロウソクの光でそれまでもてばいいのですけれど…」

フネがロウソクに火を灯す

カツオ 「これでみんなの顔がよく見えるよ~!あれ!?ワカメは?」

一同 「え!?」

タラオ 「さっきタマを探してくるって言ってお庭に行ったでーす!」

マスオ 「えぇーー!?タラちゃん黙っていたのかい!?」

タラオ 「いい子にしてたでーす!」

タイコ 「ごめんなさい!暗くて私も気づかなくて……」

サザエ 「タイコさんは休んでて!カツオ!縁側から庭を見に行くわよ!」

カツオ 「え!?僕!?」

サザエ 「いいから来なさ~い!!」

カツオ 「痛い痛い!耳引っ張らないでよ姉さん!!」

ダッダッダッダッダ!!

カツオ 「ワカメ~!あれ?いないみたいだよ姉さん!」

サザエ 「もしや!!戸に鍵をかける前に外に出ちゃったのかしら~!?」

ガチャ!ガラガラ!!

戸の鍵を開け二人は嵐で視界が悪くなった庭を見渡す

サザエ 「ワカメ!!ワカメー!!雨が強くてよく見えないわ~!」

カツオ 「ん!?姉さん!!物干し竿に何かぶら下がってるよ!!」

サザエ 「え!?あっ!風が少し弱まってきたわ!どれどれ~?」

風、雨が少し弱まり視界が開けてくる・・・・

カツオ 「う、うわああ!!わ、ワカメーっ!!」

サザエ 「ヒャーーー!!なんて事ー!ワカメっ!ワカメ!」

カツオ 「僕マスオ兄さん呼んでくるよ!!」

ダッダッダッダッダ!!

サザエ 「サブちゃんがすでにこの家のどこかに……!?」

数分後・・・・

マスオ 「これは…後ろから物干し竿で一突きだよサザエ~!
    そのまま雨の中吊るすなんて酷すぎるじゃないか~」

カツオ 「サブロウさん本気で僕達を殺しに来てるんだ!どうしよう姉さん!」

サザエ 「ワカメ・・・とりあえずお父さんの寝室に寝かせて置いてあげましょう。
    マスオさん!みんなは?」

マスオ 「みんな動揺していたけどいまは落ち着いたよ~
    疲れが限界まできてるみたいだね。」

カツオ 「ただタイコおばさんがショックで倒れちゃって今母さんが台所で看病してるみたいだよ!
    軽い脱水症みたい!」

サザエ 「そう…台所…脱水症……はっ!!もしや!!」

サザエ 「母さんは最近ミネラルウォーターにハマってるのよ~!」

マスオ 「えぇー!!そのミネラルウォーターってまさか!?」

ダッダッダッダッダ!!!

カツオ 「ね、姉さん!ちょっとどうしたんだよー!!」

一方台所では・・・

タイコ 「ごめんなさい・・・こんな時に・・・」

フネ 「何言ってるんですか。あれから何も飲まず食わずで倒れるのも当たり前ですよ。」

イクラ 「ハーイ!バブー!」

タイコ 「あら?イクラも喉が渇いたのね。すみません、イクラにもお水お願いします。」

フネ 「分かりましたよ。私も喉が渇いたしついでに飲んでおこうかね~」

ドボドボ・・・

フネは三杯のコップに今朝届いたばかりのミネラルウォーターを注いだ・・・

フネ 「はい、どうぞ。まだたくさんあるから一日は余裕で持ちそうだねー」

ゴクゴクゴクゴク・・・・

その頃居間では・・・

ガラガラガラガラ!!

サザエ 「と、父さん!母さんは!?」

波平 「なんだ騒がしい!こんな時くらい静かにせんか!ワカメぇ……」

マスオ 「い、イクラちゃんはどこだい?」

タラオ 「イクラちゃんお水飲みたいって言って台所に行ったでーす!」

サザエ 「しまった!!なんてことかしら!!」

ガラガラっ!!

サザエ 「母さん!!タイコさん!!」

マスオ 「大丈夫です……か?……えぇー!!」

ダッダッダッダッダ!!

カツオ 「待ってよマスオ兄さん!!台所がどうしたの!?ってう……うわああああ!!!」

サザエ 「3人とも死んでるわ…やっぱり三河屋さんの水を飲んだのね~」

マスオ 「今日配達されてきた水じゃないか~やっぱりあの時話を聞かれていたんだ…」

カツオ 「全員すごい量吐血してるよ!尋常じゃないくらい毒を入れられたみたいだね!」

波平 「どうした!さっきから騒がしい!!!」

マスオ 「お父さん!!来ちゃダメです!!」

波平 「なんだマスオ君!!ん!?母さん?母さんなのか!?」

テュルルルルン!

そこに場違いな陽気な足音が駆け寄る・・・

タラオ 「みんなお昼寝してるでーす!」

波平 「う、う、うわああああ!!!母さん母さあああん!!」

サザエ 「た、タラちゃん!これはお昼寝じゃないの!!」

波平 「サブロウ君……流石にワシは堪忍袋の緒が切れた!!
    あのバカもんを成敗してくる!!」

スっ……

波平はテーブルの下から何かを手にした

マスオ 「お父さん!!それは模擬刀じゃ?」

波平 「バカもん!!これは正真正銘の日本刀だ!!母さんの仇討ちだー!!」

サザエ 「と、父さん!落ち着いて!!」

「ガゴ!!ガタガタガタガタ!!」

一同 「!!??」

マスオ 「な、なんの音だい!?」

サザエ 「お風呂場の方よ!!」

波平 「何ー!!?待っておれーっ!!」

浴室・・・

ガラガラ!

波平 「ここかー!!バカもーん!!」

脱衣室にカツオが遅れてやってくる

ガン!ガチャガチャ!

カツオ 「父さん!浴室を開けてよ!父さん!」

波平 「バカモン!カツオは居間でタラちゃんと待っておれ!!」

サザエ 「カツオ!私は何かドアを壊すものを持ってくるわ!
     マスオさんは居間でタラちゃんと待ってて~!」

マスオ 「分かったよサザエ~!タラちゃんいい子にしてるんだよ~」

タラオ 「はーいでーす!」


ダッダッダッダッダ!!

「ガタガタガタガタ!!」

波平 「浴槽に隠れって!今仇をとってやるぞ母さん!!」

ガラガラガラガラ!

波平は浴槽のフタを開けた・・・

一方居間では・・・

「ぱちっピカっ!」

マスオ 「あれ!電気が着いた!」

タラオ 「パパー!この黒い線は何ですかー?」

マスオ 「んん~??お風呂場の方に続いているね~」

波平 「はあ、はあ、ん?電気が戻ったか!ん?
   こ、これはタラちゃんの動くおもちゃ……!?」

波平が浴槽で見たもの、それはタラオの動くサルの人形だった・・・

かち……かち……かちかち

波平 「ん?この音は目ざまし時計か?
   それになんだ?電源コードかこれは・・・?」

サルの人形の隣にコードで繋がれた時計のようなものが置いてあった。
そのタイマーはすでに1秒を切っている・・・

カチカチカチカチピピピピ!!!

波平 「こ、これはいかん!!サザっ……!!」

ドゥゴオオオオォオン!!!


カツオ 「うわああああ!!ばごっ!!」

マスオ 「カツオくーん!!大丈夫かい!?」

カツオ 「いててて……ちょっと背中を打ったけど平気だよ…」

ダッダッダッダッダ!!

サザエ 「いったい何の騒ぎなの??ひゃ!?と、父さん!?」

カツオ 「え?父さん……?」

マスオ 「うひゃああぁぁあ!!」

カツオ 「う、うわああああ!!父さああん!!!」

テュルルルルン!

絶望する三人に場違いな陽気な足音が駆け寄る・・・

タラオ 「何してるですかー?あっ!うわあああ足だけお化けでーす!」

サザエ 「た、タラちゃん!!見ちゃダメでしょ!!」

マスオ 「も、もうここにはいられないぃ!!家を出ようサザエ~!」

サザエ 「そうね!堂々と玄関から出るのは危険だから私達の寝室の窓から出ましょう!」

カツオ 「雨も上がってきたしこれなら交番まで行けるはずだよ!!」

マスオ 「そうだね~!じゃ急いで寝室に向かおう!!」

ダッダッダッダッダ……!!

ガラガラガラガラ!

4人はマスオとサザエの寝室に転がり込んだ

マスオ 「はあ、はあ、はあ、やっと助かるよサザエ~!
     さあ先にサザエ!タラちゃんと一緒に逃げるんだ!」

マスオは寝室の窓を開けようとした

ガゴ!!ガタガタガタガタ!!

マスオ 「えぇー!!窓が開かないじゃないか!!えぇい!!」

ばごっ!!ばごっ!!

カツオ 「椅子で叩いても割れないよ!?まるで強化ガラスだ!」

サザエ 「ウフフ!!やっぱり備えあれば憂いなしね~」

予期しない人物の予期しない言葉に二人は耳を疑う

マスオ 「さ、サザエ?」

カツオ 「マスオ兄さん!あれなんだろう?」

マスオ 「うん?えぇー!!なんでこんな所に電子レンジが何台も!」

マスオが目にしたのはコンセントに刺さる無数の電子レンジ。
わざわざタップを使ってまで数を増やしている。

カツオ 「こんなの一気に使ったら停電になっちゃうよ~!……え!?まさか姉さん!?」

サザエ 「天候はサブちゃんじゃなくて私に味方してくれたわね~。
    停電を雷のせいにできたんですもの!」

ダッダッダッダッダダダ!!
「グサッ!!」

マスオ 「う!?な、なんだいさ、サザエ!?」

マスオの腹部には果物ナイフが深く突き刺さっていた

「バタっ!!」

サザエ 「これで残すはカツオだけね~覚悟なさ~い!!」

カツオ 「うわあ!!マスオ兄さん!!姉さんどうしたんだよ!」

サザエ 「どうしたもこうしたもないわ~!それ!えい!」

ブゥン!ブン!

カツオ 「うわ!危ない!いつものけんかとはワケが違うよ~」

マスオ 「う、うおりゃあああ!」

「ドスっ!!バタっ!!」

マスオがサザエを渾身の力で吹き飛ばす

サザエ 「ひゃ~!うっ!!」

サザエはタンスの角に頭を打ち付け気絶した

マスオ 「なんでこんな事に~!カツオ君今のうちに逃げよう……!うっ!」

カツオ 「マスオ兄さん!急所は外れたみたいだけど早く手当をしなくちゃ!」

ガラガラ!

カツオ 「よし!廊下に出たのはいいけどどこから逃げれば・・・」

マスオ 「か、カツオ君!玄関が!玄関が空いているよ!!」

カツオ 「あー!本当だ!!でも一体誰が・・・」

マスオ 「こ、これで助かるぞ~!早くここからでないと~!」

ダッダッダッダッダ!!

カツオ 「ま、マスオ兄さん!まず廊下の電気をつけて周りを確認した方がいいよ!
    ……ん!?なんだこれ~?」

廊下はまだ暗いままだったためカツオが電気をつけようとしたその時

カツオは足元に何かが数本壁伝いに伸びている事に気づいた

マスオ 「よ~し!これで助かるぞ~!カツオ君も早く来なよ~!」

カツオ 「こ、これは延長コード!?ま、マスオ兄さん!ちょっと待ってー!」

マスオ 「やっと助かるぞ~!」

ダッダッダッダッダダダ!

マスオは玄関に裸足のまま踏みこんだ

「ジャポンっ!!バチバチバチ!」

その音は普通玄関では聞くことのない水音、

さらに火花が弾ける音、そこにマスオの断末魔が重なる。

マスオ 「えぇー!?びゃあああぁあああああ!!!!!」

カツオ 「ま、マスオ兄さあああん!!うわああああ!!」

「シューーーー……ドサっ!!」

マスオは黒焦げになり後ろに倒れ込む

ダッダッダッダッダ!

カツオ 「これは……タラちゃんのビニールプールに延長コードが
    銅線剥き出しのまま何本も入ってる……!ってあれ!?」

カツオは玄関の扉に目をやると絶句した

カツオ 「暗くて分からなかったけどこれは有刺鉄線じゃないか~!外の方から張り巡らされている!」

カツオ 「これじゃ出られないよ~!もう父さんに物置に閉じ込められてたほうが100倍マシだね!」

「かちっ!ピカー」

カツオは廊下の灯りをつける

カツオ 「あ!電気が復活したなら電話も使えるじゃないか!今日の僕は冴えてるよ~!」

ダッダッダッダッダ

カツオは受話器をとり助けを呼ぶためダイヤルを回す

カツオ 「とりあえず警察に連絡して助けが来るまで押し入れにでも隠れよう!
    ってあれ!おかしいな?かからないぞ!!」

カツオは受話器の下へと視線を落とす……

カツオ 「あー!!線が切られてる!!姉さんの仕業か!!」

「ガラガラガラ!!」

カツオ 「!!??」

開け放たれた寝室のドアの前には姉がそびえ立っていた

サザエ 「カツオ~!やってくれたわね~」

カツオ 「突き飛ばしたのはマスオ兄さんじゃないか~!僕は無実だよ~!」

サザエ 「言い訳無用!覚悟~!」

ダッダッダッダッダ!!

サザエはナイフをカツオに向け全速力で向かってくる

カツオ 「う、うわああああああああ!!!!」

ブウウウウウウウウン・・・・!!ウインウイーン!!!

その時玄関の向こうで何かが雄叫びを上げた・・・

ブウウウウウウウウン!!ドッガッシャアアアアアン!!!

それは玄関を突き破り腰を抜かせたカツオの頭上を通りサザエに向かう

サブロウ「ちわー!三河屋でーす!」

サザエ 「さ、サブちゃん!!うがごぐっ!!!」

カツオ 「う、うわ!!サブロウさん!?」

キキーっ!

サザエをスクーターで突き飛ばしたサブロウはカツオに配達の時と同じ笑顔で語りかける

サブロウ「大丈夫かい?カツオ君?」

カツオ 「サブロウさん!?どうして!?」

サブロウ「やっぱりこうなったか・・・」

カツオ 「やっぱり?どういうこと?」

サブロウ「いいかいカツオ君、落ち着いて聞くんだ。」

カツオは緊張のあまり腰を抜かせたまま耳をかたむける

サブロウ「最近多発している殺人事件、その犯人は君のお姉さん、
     そうサザエさんなんだ。」

カツオ 「え!?まさかとは思ったけど姉さんが!?」

サブロウ「最初の犠牲者の中島君が殺された前日に
     僕は中島君の家に配達に行っていてね。そこでサザエさんを見かけたんだ。」

カツオ 「え!?珍しいなー。姉さんが中島の家の近くに行くなんて滅多にないぞ。」

サブロウ「そうかい。そしてその次の日に中島君は殺された。」

カツオ 「姉さんが中島を?ひどいや~!」

サブロウ「そして次のカオリちゃん、堀川君、そして先週の裏のおじいさん。
     この全ての事件の前日の配達の時にサザエさんを見かけているんだよ。」

カツオ 「すごい!サブロウさん探偵みたいだ~!」

サブロウ「裏のおじいさんの家には早起きだから朝6時に配達に行くことになっていてね、
     やっぱりそこでサザエさんを見かけたんだよ。」

カツオ 「あ!その時間は姉さんがタマの散歩に行く時間じゃないか!」

サブロウ「僕も最初散歩だとは思ったけど胸騒ぎがして8時の磯野家の配達のついでに
     もう一度寄ってみたんだ。」

カツオ 「そこで死体を見つけたんだね~!」

サブロウ「それに今日隣町のスーパーでサザエさんを見つけて尾行していたんだけど
     駅周辺で見失ってしまってね。そしたらノリスケさんがあんな事に・・・」

カツオ 「電車で買い物に行くなんて珍しいと思ったらそういうことだったのか~!」

スーーーっ・・・・

サザエ 「サブちゃんよくもやったわね~!カツオも待ちなさ~い!!」

ダッダッダッダッダ!!

サザエは立ち上がりナイフをカツオに向け全速力で向かってくる


カツオ 「えー!体力だけはすごいんだから姉さんは~!」

サブロウ「カツオ君!乗るんだ!」

カツオはサブロウのバイクの後ろにまたがる

ブウウウウウウウウン・・・・!!ウインウイーン!!!
ブウウウウウウウウン!!

バイクはサザエめがけてスピードを上げていく・・・

「テュルルルルン!」

そこに場違いな陽気な足音が響き渡った・・・

「ビュンビューン!シュー!!ドガーン!」

何かが光を放ちながらサブロウの頭上を通過し天井に突撃する

キキーっ!!

カツオ 「うわあ!これはロケット花火じゃないか~!」

サブロウ「この威力!?火薬の量が半端じゃない!!」

タラオ 「おしかったでーす!」

カツオ 「た、タラちゃん!?」

サブロウ「タラちゃん!どこにいたんだ!早く逃げよう!」

カツオ 「タラちゃん!その手に持っているのはなんだい?」

タラオはなぜか手に糸で吊るした五円玉を持っていた

サブロウ「なんだいそれ?まるで催眠術で使う道具じゃないか?」

サブロウの言葉を無視しタラオはサザエの前に行くとサザエが腰を落とした

タラオ 「ママー!見るでーす!ママは強いでーす!」

サザエ 「ウフフフフフフフフフフフ!!」

タラオが振り子をふるとサザエは狂ったように笑い出す・・・

カツオ 「姉さん!?」

サブロウ「カツオ君!つかまってるんだ!」

カツオ 「え!?」

ブウウウウウウウウン!!

スクーターは再び唸りをあげサザエに向かう

ガゴっ!!!ガガガガガガ!!

サブロウ「受け止めた!?なんて力だ!!」

カツオ 「姉さん力だけは人一倍あるからね~」

サブロウ「しかたないか~!!」

スクーターは方向を変え居間へと向かう

タラオ 「まつでーす!」

「ビュンビューン!シュー!!ドガーンドガドガ!」

いくつものロケット花火がスクーターめがけて飛んでくる

カツオ 「うわあああ!危ないよタラちゃん!」

スクーターは居間に突入する

サブロウ「裏口を突き破って出るよカツオ君!」

スクーターはそのまま裏口がある台所へ

サザエ 「ウフフフフフフフフフフフ!!まちなさ~い!!」

カツオ 「うわ!姉さん~!」

後ろを振り返るとサザエがタラちゃんを肩に乗せ笑顔でこちらへ向かってきている

サブロウ「なってこった!!扉の向こうから何枚も板を打ち付けてある!!」

裏口のドアの前でスクーターを止めるとサブロウが叫んだ

カツオ 「えー!?突き破る時間なんてないよ~!」

台所の扉の前に棚でバリケードを作りながらカツオも叫ぶ

サブロウ「こうなったらここで迎え撃つしかないよカツオ君!」

カツオ 「えー!?あんな姉さんに勝てっこないよ~!普段だって勝てないのに!」

サブロウ「じゃあ今日ここで初勝利すればいいじゃないか!」

カツオ 「そんなの出来ることならとっくにしてるよ!!・・・ん?」

カツオは台所のすみであるものを見つけた

カツオ 「サブロウさん!僕やるよ~!姉さんがバリケードを突き破ったら
     思いっきりスクーターで突撃してもらえる?」

サブロウ「カツオ君それは?でも何か策があるんだね!わかっよ!」

カツオの手にしたものに疑問を抱きながらもサブロウは了解する

ドン!!ドガ!!ドガ!!

台所の扉にすごい勢いでサザエが突撃する

サブロウ「来た!!」

ブウウウウウウウウン!!

それに合わせサブロウはスクーターにエンジンをかける

シューシューシューシュー・・・・

カツオ 「よし!もうちょっとだぞ~」

ドガ!バリバリ!ドゴーーーーン!!

ついにバリケードを破りサザエが襲いかかってくる

サブロウ「うおおおおおおおおおお!!」

ブウウウウウウウウン!!
ガゴ!!ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

サザエは再びスクーターを両手で受け止める

サザエ 「いい加減にしなさあああああい!!」

サザエが大口を開け叫ぶ

タラオ 「やーるでーす!!」

「ビュンビューン!シュー!!」

ロケット花火がカツオめがけて発射される

「シューシューシューシュー・・・ブシュ!」

カツオ 「よし!いまだ!!」

「ブシャーーーーー!!」

カツオの足元からペットボトルロケットが
発射されロケット花火を撃ち落としサザエめがけて飛んでいく

サザエ 「うがご!!ぎゃああああああ!!」

ペットボトルロケットはサザエの大口に直撃し噴出した水が流れ込む

サザエ 「ひゃー!やったわね!水飲んじゃったじゃない・・・の・・・!?うぐ!!」

サザエはよろめき後ろに吐血しながら倒れた

サザエ 「これは・・・母さん達が飲んだ水ね~・・してやられたわ~!!ガハっ!!」

サザエはそのまま動かなくなった

カツオ 「夏休みの工作がこんなところで役に立つとはね~」

サブロウ「カツオ君!よくやってくれたよ!あとはタラちゃんを・・・」

タラオ 「みーるでーす!!」

タラオが二人の前で振り子を振りはじめる

サブロウ「しまった!体が・・・!!」

「にゃーーー!!」

タラオ 「うわあああ!!」バタっ!

その時白い影がテーブル下から飛び出しタラオの振り子を奪った

カツオ 「タマー!!生きてたのか!!」

タマ 「にゃーーーん!!」

サブロウ「タマ!君は命の恩人・・・いや恩猫だね!」

カツオ 「今日のMVPはタマに取られちゃったよ~」

一同 「わはははははは!」

ウゥ~~~ンウゥ~~~ン・・・・

サブロウ 「おっ!警察が来たみたいだね!行こうカツオ君!」

カツオ 「うん!!もう事件は解決しちゃったけどね~」

タマ 「にゃーーーん!!」


その後の調べでタラちゃんのおもちゃ箱からマスオ兄さんが買った

「催眠術パーフェクトガイド」が見つかりお絵かき帳には今までの

犯行計画が事細かく記されていた・・・

この事件は全て姉さんの犯行だったが裏で糸を引いていたのはタラちゃんだったのだ・・・

タラちゃんはロケット花火の件で保護観察処分となり今頃少年院だろうか・・・

そして僕はというと・・・

事件から数日後--------

花澤さん 「う~ん!今日もいい朝だわ~!」

ガラガラ!

カツオ 「ちわー!三河屋で~す!」

花澤さん 「あら!磯野君おはよう!もう仕事は慣れたの?」

カツオ 「まあね~!でもまだ見習いだよ~!」

花澤さん 「ご家族のことは残念だけど気を落とさないでね!」

カツオ 「僕が落ち込んでたらクラスのムードメーカーが
     いなくなっちゃうだろ~?」

花澤さん 「あはは!磯野くんらしいわね~」

カツオ 「それじゃ!サブロウ先輩に怒られるからまた!」

カツオ 「いくぞタマ~!」

タマ  「にゃーーーん!!」

僕は三河屋としてこれから新しい人生を歩んでゆく・・・
天国のみんなのためにも!
そう心に決めタマを自転車のかごに入れ、僕はペダルを漕ぎ始めた・・・

--------完---------

ここまで読んでくれた方ありがとうございました!!

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