女児「ありがとうございます、ご主人さま」(14)

怯えたとび色の瞳が部屋の隅から俺を見る。
遮光カーテンの隙間から潜り込んだ日光に照らされたブロンドヘアは
かつては収穫前の小麦畑を彷彿とさせる輝きをもっていたが、
手入れを怠ってすっかりくすんでしまっていた。

(腹が減ったな……)

腹が減ったので冷蔵庫の中を確認しようと立ち上がると、
女の子が反射的にびくりと体を震わせた。

寝食を共にしはじめてから早一ヶ月。

そろそろ俺のいる生活に馴染んできてもらいたいのだが、
日に日に深みが増す関係というのは創作という枠内に限った話しらしい。


ある意味でこれも強情のうちに入るのではないか、と考えながら
一番上の棚で冷やしていたチーズを手に取る。

女の子供は予想以上に食が細いので、育てている俺はそれだけで心配事が増える。
無理して胃に詰め込めたくなるが、それで吐かれてしまったら
掃除の手間が余計に生まれてしまうだけでなにもいいことはない。

6ピースのうちの1つを取り出し、そのまま与えようとして手を止めた。
俺の無愛想に恐怖をしていたならば、中途半端な親切心は仇になる。

銀紙を剥いて出てきた乳白色を小皿に乗せる。
そして食べやすくなるように上から同色のジェルをかけてやる。
ここまで手間をかけて、ようやく親切が視認できるようになった。

「これで食えるだろ?」


それを女児の目の前に置いてやると、
唇を噛み締めて双眸から涙を流した。
食べ物を渡しただけで泣かれるのは気分が悪い。

感謝を言葉で表すのが不得手な子は、
ときにそういう風にして表現するとは聞くが、
俺にはそのよさがいまいち理解できなかった。

緊張させないように俺は女児から距離を置いて読みかけの本を開く。
ときおりに聞こえてくる嗚咽を耳にしながらページを進めていると、

「ごちそうさまでした」

完食の合図は蚊が鳴いたかと誤解してしまう程の小声だった。


「美味しかったか?」

「ご、ご主人……さまの子種ごはん……とてもおいしか、んんっ」

女児の口元に付着していたほんの僅かな白濁の汁を指で掬い、咥内にねじ込む。

食べ残しは許さないので、頬壁や舌の裏、歯茎を指でなぞり
最後に舌の上に飲み込めなかった小さな欠片を乗せてそれを飲み込ませた。

それでようやくに全てを食べ終えた女児にご褒美として頭を撫でてやると、
これにもまたうれし泣きをするのだった。

しきりに嗚咽をあげて泣いてしまうのは幼さのせいだ。
些細な気遣いにも感謝の言葉を口にできるように俺が大切に育てる必要がある。
親と離れて長いこの子を正しく躾けられるのは、
他の誰でもなく俺だけにしかできないことなのだ。

書き溜め疲れたからゆっくりやる
女の子虐めるとか良心の呵責に苛まれて夜は眠れないわ

宣言通りか
気絶した後も責め続ける描写とか出てくるなら毎日④お供えに来る

*

年端もいかない子供を見つけたのは、明りも薄い深夜の路地裏だった。
流行りに興味のない俺はガラケーで時間を確認する。
現在は午前2時。
目測に間違いがなければ小学生の低学年が出歩いていい時間ではない。

よっぽどの事情がない限りは、布団の中で夢を見ている時刻だ。
大人でさえも特別な用事がない限り出歩くのを控える真夜中に、
あてもなく徘徊してしまう子供を育てる親にロクなやつはいない。

過去の男を忘れるべく新しい男と肌を重ねるのに子供が疎ましく追い出したか、
もしくはその逆で、男が次の女を抱え込んでいる最中か。
育児放棄をされていて数日の間に食料が切れてしまい、
食料を求めて屋外をさ迷い歩いている可能性もある。


他にも考えればいくつも可能性が浮かんでくるが、
どれもこれも共通するのは、親がロクデナシということだった。

最初のうちは面倒事に巻き込まれるのは嫌で
見てみぬふりをするつもりでその場を通り過ぎることにした。

もう一度時間を確認して、きまぐれで地図アプリを起動した。
交番が近くにあれば届けてやろうというせめてもの情けのつもりだった。
検索結果は幸か不幸か、最寄と呼べそうな交番はなかった。

安堵と罪悪感が混じった溜め息をついて顔を上げると、
女の子が少し離れた家の外壁に右手をついてじっとこちらを見ていた。
なにかをねだるような瞳に、俺は空を一度仰いでから仕方なしに声を掛けた。


「お家に帰らないの?」

「お家、いまは帰っちゃいけないの」

悲しげに呟いて顔を俯けてしまった。
子細までは訊ねなかったが、俺の予想は概ねにして当たっていた。

この時間で帰宅を許されない。
子供以上に大事なことに親はハマっているのだろう。
子供を外に放り出してすることなので、健全な行為ではないことは確かだ。

顔を伏せて落ち込む女児を見ていられず、差し伸べた手に
込めた感情は、そのときまでは善意だけだった。


顔の前にさし出された手の意味を十数秒かけて理解した女児が
握り返した手は、季節が夏の始まりにも関わらずとても冷えていた。

「家に帰りたいか?」

俺の問いにふるふると首を左右に振る。

「怒れちゃう。いい子にしてないといらないってされちゃう」

「そうか……」

俺の顔をとび色の目が見上げる。
最初に視線があったときよりも温度を含んでいた。
最悪、警察の厄介になるときは名も知らぬ女児の親も道連れにすればいい。

世間的には悪と見なされる行動であっても、
女児は俺のことをそうとは見ないはずだ。
そう無理矢理に肯定をしなければ、俺は女児の手を引いて歩けなかった。


女児には申し訳ないけれど、俺も女児も運が悪かったと思う。
女児の親が親としての振舞い方を知らないように、
俺もまた幼い女の子に対しての優しさを知らなかった。

そしてそれに気付くのが遅すぎた。

大通りと人目を避けて俺は女児をアパートまで案内すると、
女児は何も言わずに頭を下げた。
ただ深々と黙したまま一言も発しずに。
それを見たそのときの俺は、きっと笑っていたと思う。

>>6
ありがと
ただしハードなエロはないからがっかりすると思う

酒持って来たぜ
飲んで頑張ってくれ

ごめ
書き溜めてからまたスレ立てるからこれ落とすは
読んでる人少ないだろうしまたリベする

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