雪緒「私たちは極道、なんですよ」ロック「……何故だ?」 (13)

日本 神社

レヴィ「ふーん、これが日本のカーニバルか。全員、アホ面下げて菓子を食うのはどこでも変わらねえな」

ロック「祭りのときぐらいは、疑念も怒りも持ちたくないだろ」

レヴィ「言えてるな。おっ。なあ、ロック。あれなんだ? 銃が置いてあるぞ」

ロック「射的だね。射的は向こうにだってあっただろ」

レヴィ「日本のそれは今初めてみたんだよ。んっ」

ロック「なんだい、その右手は」

レヴィ「300ドルとはどこにも書いてねえだろ、ボケ」

ロック「一回の射的で300ドルも取る夜店なら、見てみたい気もするよ。ほら、大切に使うように」

レヴィ「サンキュー!! おっしゃー!! 見てろよ、ロック!! どの景品が欲しいんだ? 言ってみろ」

ロック「なんでもいいよ」

レヴィ「なんでもいいが一番困るんだよ」

ロック「店丸ごと欲しいって言ったらどうするつもりだ」

レヴィ「あぁ? んなこと、いちいち聞くなよ。くれてやるにきまってんだろ」

ロック「……オーライ。たこ焼きでも食べながら、応援してるよ」

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レヴィ「ほらよ。釣りはいらねえぜ」

店番「5発だ」

レヴィ「けっ。シケてんな。これだけしかくれねえのかよ。ま、いいけど」キュッ

レヴィ「まずは一番高価そうな、上段の人形だな。へへっ。この店、あたしだけで大損させてやるからな」

ロック(レヴィ、すまないが日本の縁日は甘くないんだ)

レヴィ「バァン!」カチッ

ポスッ

レヴィ「あぁ!?」

店番「残念だったな、お嬢ちゃん」

レヴィ「ちっ……。当たり所が悪かったのか……」キュッ

レヴィ「次は眉間に風穴開けてやるぜ……」

レヴィ「ファイア!!」カチッ

ポスッ

レヴィ「あぁぁ!? どうなってんだよ!! 今のは確実に落ちるだろうが!!」

店番「残念。あと3発だよ、ガイジンのお嬢ちゃん。ククク……」

レヴィ「ちくしょう……!! あたしを本気にさせやがったな……」

レヴィ「――これで、ジ・エンドだ。ドール」チャカ

レヴィ「バイバイ」カチッ

ポスッ

レヴィ「……」

店番「残念っ。いやー、いいとこいってんだけどなぁ」

レヴィ「ざっけんなぁ!!! おらぁぁ!!!」カチッ

ポスッ

レヴィ「ぎぃ……!! おらぁ!! てめえ!! あの人形、どーなってんだよ!!! ケツの中に鉛でもこさえてんのかよ!!! えぇぇ!!!」

店番「なにいってるかわかんねえよ。ほら、それよりも残り1発だぞ、ガイジンのお嬢ちゃん」

レヴィ「ガイジン、ガイジン、うっせーなぁ!! ふんっ。一発ありゃあ、十分だ!! ファック!!!」カチッ

ポスッ

レヴィ「ヘイヘイ!! ロック!!!」

ロック「なんだい、レヴィ」

レヴィ「さっきの倍額よこせ!! はやくしろ!! オラ!!」

ロック「倍額って、どうするつもりだ」

レヴィ「てめえは今まで、何を見てきたんだよ。あたしがいつも両手に握ってたのは、花束でも男のナニでもないぜ」

ロック「そういうことか。おじさん、600円ね」

店番「あいよ」

ロック「どうぞ、レヴィ」

レヴィ「今夜だけのスペシャル・ショーだ。特等席で堪能しやがれ。トゥーハンドをなぁ!!!」カチッカチッ

ポスッポスッ

レヴィ「……」

店番「おしい! もうちょっとで落ちたよー」

レヴィ「ヘイ、ロック。そこのヤポンスキーはなんだって?」

ロック「非常に惜しいってさ」

レヴィ「そうか……。だったら……」

レヴィ「全弾、ドールの胃袋に撃ち込んでやるぜ!!! オラオラ!!!」

ロック「レヴィ……」

レヴィ「おちやがれ!!! ファッキンドール!!!」

レヴィ「弾切れか。ロック。んっ」

ロック「その差し出された右手に、銀貨が乗ることはもうない」

レヴィ「なんでだよ」

ロック「無駄なんだよ、レヴィ。あの人形は取れない」

レヴィ「あと1発で取れる」

ロック「無理なんだよ、レヴィ」

レヴィ「なんでてめえにんなことがわかるんだよ」

ロック「いいかい、よく見ているんだ」チャカッ

レヴィ「おい、ホワイトカラーのお前がハンティングの真似事か? ハハッ。ジャムって笑われるのがオチ――」

ロック「……」カチッ

パーンッ

レヴィ「な……」

店番「大当たり。はい、ラムネ」

ロック「……これが、答えさ。レヴィ」

レヴィ「その菓子、くれるのか?」

ロック「高価な商品を落とすには、圧倒的に火力が足りないのさ」

レヴィ「ほーふうほっは?」モグモグ

ロック「景品が重すぎるんだ。この豆鉄砲じゃあ、どうにもならない。仕留められるのは、10円以下の駄菓子だけ」

レヴィ「……」

ロック「300円使って、儲けはたった10円。祭りもカジノも日本の夜店も、客は勝てない。世界共通さ」

レヴィ「ロック、お前は言ったよな。祭りのときぐらい疑念や怒りは持ちたくないって」

ロック「ああ」

レヴィ「だったら、今のあたしが腹に抱えてるのはなんだ? 答えてくれよ、ロック」

ロック「……」

レヴィ「トカレフでも、簡単だぜ? 事を済ます程度のことはよぉ」

ロック「やめるんだ、レヴィ。これが、日本なんだ」

レヴィ「腐ってやがるぜ……。ロアナプラとどっこいだな。だったら、別にいいよな。ロアナプラの流儀でもよぉ」

ロック「レヴィ!!」

レヴィ「あのドール、文字通りぶち抜いてやるぜ……」

ロック「やめるんだ!! レヴィ!! おさえろ!!」

レヴィ「抑えてたもんを向こうが勝手に引っ張り出しただけだろ」

ロック「レヴィ!!」

レヴィ「おい!! こらぁ!!! てめえ!!! あの景品よこせ!!! 全弾命中したんだから、いいだろ!!!」

店番「なにいってんだよ。日本語で喋れ」

レヴィ「あぁぁ!! ファッキンジャップが!!!! 表にでろ!!!」

ロック「レヴィ!!」

「お客さん、すまねぇが……」

レヴィ「あぁん? 誰だ、テメェ。関係ねえ奴はすっこんでろ」

銀次「松の内じゃあねぇですか。皆楽しくやりましょうや」

雪緒「銀次さん……」

銀次「どうか悋気をお治めなすってくださいよ」

レヴィ「おい、デカイの英語わかるか? アーユー、スピーク、イングリッシュ」

銀次「……お、おー、いえす、いえす」

雪緒「銀次さん、無理はしないで」

銀次「しかし、お嬢。相手はどうも日本人じゃねえようです。こちらの仁義が通じるかどうか……」

ロック「あの風貌……。まさしくって感じだな」

レヴィ「どういう意味だ」

ロック「俺たちと同じ側にいる人間ってことだ。傍にいる女の子は違うかもしれないけど」

レヴィ「それなら話ははええな。ロック、通訳頼むぞ」

ロック「え!?」

レヴィ「ヘイ、デカブツ。てめえはこの店と繋がってるのか? それとも、そこの小娘とできてるだけか? だったら、こんな寒空でファックすることもねえだろ。とっととベッドでも探しにいけよ」

雪緒「……」

銀次「この娘さんはなんと?」

ロック「ええと。このお店の関係者ですかって」

銀次「ええ。正確には、この店も、ですがね」

ロック「この店も?」

銀次「ここらの高市は、あたしらの庭みてえなもんだ。顔は効くほうでさぁ」

ロック「……堅気じゃないってことですか」

銀次「そちらの娘さんも、犬のような眼をしてる。同類ってところじゃねえですかい、お客さん」

レヴィ「あ? 今、悪口いったか?」

ロック「いや、犬みたいで可愛いって言ったんだよ」

レヴィ「誰が犬だよ!! ざっけんな!!!」

銀次「洋物の犬はよく吠えていけねえ」

レヴィ「てめえ!! また犬っつったろ!!!」

雪緒「銀次さん、そのあたりで」

銀次「すいやせん、お嬢。つい……」

雪緒「いけませんね。やはり、癖は中々直りませんか」

銀次「こればっかりは、あっしの血と肉に染み込みすぎちまってますから」

雪緒「ここは、私が」

銀次「いいんですかい」

雪緒「これも、総代としての務めです」

銀次「……頼みます」

ロック「総代……?」

雪緒「詳しいお話を聞かせていただきませんか。火種はどちらにあるのでしょうか」

レヴィ「何、しゃしゃりでてきてんだよ、ガキ。雪降る街でマッパになってみるか? 暖を取るには抱かれるしかねえぞ?」

雪緒「……」

ロック「ええと、彼女は、その、関係ないなら下がっていてほしいって……」

雪緒「取り繕う必要はありませんよ。その程度の英語ならわかりますから」

銀次「流石、お嬢。伊達に受験生していやせんね」

ロック「そうだったのか」

レヴィ「なにいってんだよ。あたしにもわかるように言えよ」

雪緒「私はこの縁日を取り仕切る鷲峰組総代、鷲峰雪緒と申します」

ロック「な、んだって……。だって、君、受験生って……」

雪緒「はい。高校三年生です。もうすぐ、センター試験もあるんです」

ロック「そんな君がどうして、こんな場所にいるんだ」

雪緒「受験生だって、息抜きぐらいしますよ」

ロック「そういうことじゃない。だって、君は普通の……」

雪緒「普通? 普通とはなんでしょう? 私の日常は、ここにありますよ」

ロック「……」

レヴィ「なぁ、ロック。あいつ、なんて言ってんだよ。教えろよ」

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