工藤忍「ゆめであえたら」 (40)
・モバマスSS
・微ホラー
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忍 (アタシはこの頃、おかしい)
忍「…………」
すすす……
小梅「忍……さん」
忍「わっ!? こ、小梅ちゃん」
小梅「だいじょぶ? 何だか、とっても眠そうだけど」
忍「あはは、だめだね。ぼーっとしてるところ見られちゃうなんて」
小梅「わ、私も、ぐたー……ってしてる時、あるよ」
忍「……ふふ。ありがとう。励ましてくれてるんだよね」
小梅「ん、えっと、私でよかったら……力になりたくて」
小梅「そうだ。よかったら、私のベストホラー映画でも観て、元気出して」
忍「そ、それは遠慮しておくよ」
小梅「無理しないでね……?」
忍「うん。ありがとう」
小梅「…………」
忍「…………」
小梅「忍……さん」
忍「ど、どうしたの? なんか小梅ちゃん、ホラーのこと話す時の真顔になってるよ」
小梅「夢に取り込まれないように……気をつけてね」
忍「……どういう意味?」
忍 (アタシが気づいた時には、小梅ちゃんは音も立てずに消えていた。外は雨で、事務所もみんな出払っているので、ひどくどんよりしているように見えた)
忍「あは、小梅ちゃんは雰囲気出すのが本当に得意だな~~……」
忍 (本人がいないのに言っても何だけど)
忍 (今日のスケジュールはレッスンで終わったし、あとは帰るだけだ)
忍「早く、ステージに立って、お仕事したりしたいなぁ……」
忍「……帰ろ」
忍 (どんよりした気分のまま、事務所を後にした)
忍 (最近、変な夢ばかり見ている。青森の故郷を思い出してしまう、どこか懐かしい夢)
忍 (浜辺で海を眺めながらぼーっとしているだけ。何もないのに、アタシがすごく安心できる場所)
忍 (そりゃ、青森のことは大好きだよ。自然がたくさんで、思い出もいっぱいで)
忍 (だけど、今は集中しなくちゃいけないことがたくさんある。歌にダンスに、レッスンだって、経験を積まないといけないのに)
忍 (アタシは、アイドルになるために来たはずなのに、何で故郷のことが夢にまで出て来るんだろう)
忍 (もしかして、心の中で本当は帰りたいなんて思っているの?)
忍「……そんなこと、考えている暇なんてないのに」
忍 (夢を叶えるまでは、帰れないよ)
忍「…………あ」
忍 (土を踏んでいる。周りは木々に囲まれて独特の匂いが香っていた)
忍 (ひどく懐かしい気持ちになる。ここは、昔、登った山だと分かった)
忍 (この服も、昔に着ていた服で、自分でこれが夢の中だとはっきり理解できた)
忍 (そういえば、よくこんな山とか登ってたっけ)
忍 (倒れこむと、土が顔に付着して、毛虫がのろのろと蠢いているのが見える)
忍 (それは、まるでアタシを取り囲むように蠢いていた)
忍 (あ、あ、あ、気持ち悪い…………)
忍「うぁぁぁぁぁぁ」
?「…………さん」
忍「……え?」
小梅「あ……忍さん。おはよう」
忍「あ、あれ。小梅ちゃん」
小梅「忍さん……今日も何だか疲れてるみたい、だね」
忍「あはは……このやり取り、何かデジャブを感じるんだけど」
小梅「この前も、だったね」
忍「そうだよね」
小梅「……忍さん。まだ、悩み事解決してない……のかな」
忍「いや、悩み事っていうか……妙にリアルな夢を見てるせいか、起きた時に変な感じになるんだよね」
小梅「怖い夢、とか……? ゾンビとか、出てくる?」
忍「ゾンビとか怖い夢ではないけど」
小梅「じゃあ、歯が抜けるとか、自分だけ裸ん坊になってるとか……?」
忍「現実っぽいっていうか、アタシの実家の夢を見ちゃうんだよね。海があって、浜辺を歩いていて……あ、ここ知ってるって、分かっちゃうくらいの」
小梅「そうなんだ……」
忍「その夢に引っ張られて現実とのギャップに悩んでる、みたいな」
小梅「……」
忍「こ、小梅ちゃん……また怖い話する時の真顔になってるよ。怖いよ」
小梅「夢って、誰かがその人のことを強く想っていたり、そういう想いの影響もあるって聞いたことがあるけど……」
忍「へぇ。小梅ちゃん、詳しいね」
小梅「分かんないけど、忍さんは……誰かを想って、想われてるのかも、ね」
忍「おもわれる?」
小梅「それが、忍さんの青森の実家の夢を見る一因……?」
忍「こ、小梅ちゃん?」
小梅「ふふ、ふふふ」
忍「え?」
忍 (小梅ちゃんはくすくすと笑いながら、にたりと口角を上げていた。素直に怖かった)
小梅「ふふふふ……すごいねぇ。忍さん」
忍「な、何が」
小梅「だって、その夢って、とっても蠱惑的だよ。私もそんな夢に、呑まれてみたいなぁ……ふふ」
忍「えっ」
小梅「忍さんが……とっても、羨ましい」
忍 (嬉々としながらアタシを見上げる小梅ちゃんが少し奇妙に思えて、アタシは生唾を飲み込んだ)
小梅「呑まれちゃったら、きっと、引き返せないくらい……恐ろしくて、イイ、よね」
忍 (小梅ちゃんは目をぎらぎらとさせながらアタシの腕を掴んだ)
忍 (そして、興奮気味になりながら部屋から去っていった)
忍 (まるで、アタシが怖い体験をしたみたいに言うものだから、変な気分になってしまった)
忍「また雨だ……」
忍 (事務所を出ると、雨が降っていた)
忍 (ずきずきと頭が痛いのも、雨のせいだろうか)
忍 (アタシはこの頃、自分の世界が危うげになっているように思えてならない)
忍 (アタシがこんな暗い気持ちになっているからなのか、どこかふわふわとしておぼつかないような気がする)
忍 (集中しないといけないのに、少し衝撃を与えられたら崩れてしまいそうだ)
忍 (自分をしっかり保っていかないと、って強く思うたびに、足元がゆらゆらと揺らいで見えて)
忍 (アタシ、少しおかしくなってるのかな……)
忍 (今日もスケジュールはレッスンで終わった。珍しく事務所にPさんがいた)
忍 (珍しくというか、アタシとPさんのいる時間が被っただけなんだろうけど)
忍「…………」
忍 (Pさんのことを考えると、どうしても活躍できていない自分と他の子を比べて見てしまう)
モバP「よ、忍」
忍 (何ともいえなくて、アタシがうろうろとしていると、姿に気づいたのかPさんはアタシに声をかけてきた)
忍「……Pさん」
モバP「お疲れ。レッスン終わったんだろ。トレーナーさんも頑張ってるって褒めてたぞ」
忍 (疲れているだろうに、アタシなんかを気遣ってくれた心遣いに、自分の気持ちがじわりと暖かくなるのを感じた)
忍 (Pさんは黙ったままのアタシを不思議そうに見ている。こんな仏頂面、アイドルとして失格なのは分かっているけど)
忍 (Pさんに、これ以上迷惑なんて掛けられないのに)
忍「だめだな……アタシ」
モバP「忍?」
忍「アイドルの卵なのに、笑顔も作れないなんて、アイドル失格だよね」
モバP「……」
忍「ねぇ、Pさん。アタシ、いつステージに立てる? ライブなんてできるの? CDとか、いつか出せるの? もしかして、一生レッスンばっかりで、終わっちゃうの?」
忍 (思わずPさんのスーツを掴むと、Pさんは驚いたようにこちらを見たが、すぐに宥めるような口調でアタシを諭してきた)
モバP「忍……焦りは禁物だ。忍は、今はレッスンに集中してくれ。裏方はこっちに任せて」
忍「あ……」
モバP「大丈夫か?」
忍「あ、アタシ……」
忍 (心配そうにアタシを見るPさん。それを見ると、ますます悲しくなって、自分の身勝手な言動に嫌気が差した)
モバP「忍」
忍「このままだったらって、思うだけで……アタシ、怖いんだよ。怖くて、たまらない」
モバP「落ち着いて。深呼吸、できるか」
忍「お願いPさん。お願いだから、何でもいいからさ、安心させて。アタシ、あたしはッ…………」
モバP「……大丈夫だ。忍の努力は絶対に無駄にはならない」
忍「……ほんと?」
モバP「あぁ」
忍 (Pさんがそう言って肩を叩いてくれたことにどれだけ助けられたか、分からない)
忍 (Pさんは黙ったままで、アタシもしばらく顔を上げることができなかった)
忍「……アタシは、アイドルを目指してよかったんだよね?」
忍(正直、そんなに甘くはないってことは分かっていた)
忍(他の子はどんどん先に行ってるのに、自分だけ置いてかれてるようで、虚しい)
忍(Pさんが頑張ってくれてるのは分かってるのに)
忍「……ただいま」
忍 (おかえりと返ってこないことにも慣れたけど、どうも一人でいるのが虚しくなってしまう)
忍 (ぐらりと目の前が揺れる)
忍「…………うぅ」
忍 (家に帰ると、すぐに眠くなってしまう)
忍 (疲れてるのもあるんだろうけど、アタシは、眠ることを求めているのかもしれない)
忍 (夢を見て実家のことを思い出していると、ほんの少し、安心できるような気がするから)
忍 (それも、気休めなんだろうけど)
忍 (早く本当のアイドルにならないと……)
忍 (頑張らないと……)
忍「……ハッ」
柚「忍チャン? 大丈夫?」
忍「柚ちゃん……?」
柚「レッスン終わった後に、急にお人形みたいに動かなくなっちゃうんだもん。心配しちゃったよ~」
忍「えっ?」
柚「何か、心配なことでもあるの? アタシでよければ相談に乗るよ!」
忍「ご、ごめんね。心配させちゃって……大丈夫だよ」
柚「ホントに~?」
忍 (…………怖い)
忍 (どうしてだろう。一瞬だけ、自分が何をやっているのか分からなくなった)
忍 (柚ちゃんも、長く一緒に頑張っている友達なのに……)
忍 (また、ぐらぐらと目眩がする)
柚「忍チャン?」
忍「はは……疲れてるのかな。ちょっとトイレ行ってくる」
柚「あ、うん……無理しないでね!」
忍「うん。ごめんね」
忍 (まるで、昔に逆戻りしたみたいだ……)
忍 (何も知らなかった子供みたいに、昔に戻ったように感じるなんて)
忍 (しっかりしないと、アタシ……大丈夫だよね?)
忍 (お手洗いの鏡の中の自分は、とてもアイドルとは言えないひどい顔をしていた)
忍 (こんな顔をして柚ちゃんと話していたなんて、申し訳ないな)
忍 (……この鏡の中にいる自分は、一体誰なんだろう)
忍「…………」
小梅「忍……さん。雨、ひどいね」
忍「そうだね」
忍 (自宅へ帰ろうと事務所を出た先に、小梅ちゃんが傘を差しながらこちらへ歩いてきた)
小梅「偶然……だね」
忍「うん」
忍 (何も聞かなかったけど、小梅ちゃんと会ったのは偶然とは思えなかった)
忍 (確証も何もないのに、こんなことを言っては悪いんだけど)
忍 (……小梅ちゃんと会う時は、いつも雨降りだなぁ)
小梅「……忍さんは、すごく、頑張ってるんだね」
忍「え?」
小梅「アイドルになるために、とっても……努力、してるから」
忍「そりゃ、アイドルになるためにここに来たんだから。頑張るのは当然だよ」
小梅「……そんなに、頑張りたいって思えるものがあるって、幸せだね」
忍「うん。大変だけどね」
忍 (小梅ちゃんに変な夢の中の話をするのは、少し怖いので避けた)
小梅「……きっと、叶うよ。忍さんの、想いは、とっても強いからね……」
忍「うん?」
小梅「きっと、頑張りたいって気持ちが、夢の中に影響してるんだと思う……!」
忍「わ、分かったよ。分かったから、小梅ちゃん」
忍 (小梅ちゃんは自分が雨に濡れるのも気にせず、ずんずんとこちらに距離を詰めてきた)
忍 (何かに取り憑かれたように、必死になってこちらに向かって話しかけてくる……)
小梅「ねえっ!!!!」
忍「ひっ」
小梅「私にも、恐ろしいくらいの気持ちッ、すっごく伝わってるからね!!」
忍「うわっ!?」
忍 (いきなりのことで状況が飲み込めなかった)
忍 (小梅ちゃんはいきなりアタシに飛びつくと、馬乗りになってアタシの顔をまじまじと見つめた)
忍 (そんな状況でも雨はざんざんと降ってくる。小梅ちゃんは瞬きをしていない。人形みたいにアタシを見ているままだ)
忍「こ、小梅ちゃん?」
小梅「はぁー……はぁー……」
忍 (小梅ちゃんがこんな大声を出すのは、初めて聞いた)
忍 (小梅ちゃんは、大声を出して疲れたのか、こちらに身を預けてはぁはぁと苦しそうに息を吐いている)
小梅「はぁー……はぁ、はぁ……」
忍「だ、大丈夫? 立てる?」
小梅「うん。立てるよ……」
忍 (呆然と座り込んだままのアタシに対して、小梅ちゃんはすっくと立ち上がると、アタシの傘を差し出してきた)
小梅「はい……ごめんね」
忍「あ、うん。ありがと」
小梅「ありがとう。忍さん。私には分かったからね……」
忍 (アタシに話しかけているはずなのに、小梅ちゃんはアタシに視えないものに対してうわ言を言っているように思えた)
小梅「ふふ」
忍 (小梅ちゃんが、一体何を考えているのか分からなかった)
小梅「じゃあ、ね……忍さん。またね」
忍「え?」
忍 (いつの間にか家に着いていた)
忍 (小梅ちゃんが何を言いたかったのか、分からないけど)
忍 (きっと、アタシは……)
忍 (その後は何事もなくいつもの日常が続いた)
忍 (そして、その日は突然訪れた)
忍「えっ! デビューが決定って……えっ?」
モバP「あぁ、忍。おめでとう。これも忍の努力が実を結んだんだよ」
忍「うそ……!!」
モバP「本当だよ。おめでとう」
忍 (涙がこみ上げてしまって、顔を覆ったら、Pさんが肩をぽんと叩いてくれた)
忍 (やっと、一歩目を踏み出せたんだ)
忍「夢みたい……」
モバP「夢じゃないさ。今起こってることが本当なんだから。現実に、忍は頑張ってチャンスを掴んだんだぞ」
忍 (涙が止まらない。Pさんを見ると、何故かPさんも涙を浮かべながら笑っていた)
忍「何でっ……Pさんが泣くことないのに」
モバP「こ、これは、汗だ。暑いだろ。事務所の中は……ううっ」
忍「……あは、ははっ」
忍 (それから、デビューライブに向けてレッスンが始まった)
忍 (今までよりも厳しくトレーナーさんから指導が入ったけど、それでも嬉しくてたまらなかった)
忍 (だって、念願だったステージに立てるんだから)
忍 (アイドルになるって夢が実現しようとしてるのに、へばってなんかいられないよ)
忍 (それからは、あっという間に日々か過ぎていった気がする)
忍 (どれだけ精度を上げられるか、自分がどれだけやれるかが、自分を高められることにつながるってことを教えてくれた)
忍 (そんなPさんに恩返しするため。そして、アタシの夢を叶えるためにもこのステージは絶対に成功させないとって考えていると、どんなことでも乗り越えられるように思えた)
忍 (そして、その日が来た)
忍「Pさん!」
モバP「あぁ。忍。自分を見せてこい。自分の納得がいくようにな」
忍「うん! 頑張ってくる!」
忍 (ステージに立つと、歓声が返ってきた)
ワーワー
ワーワー
忍 (サイリウムの光の海が、とても眩しくて、涙が溢れてくる)
忍 (今までのことが、全部報われるような気がした)
忍「みんなーっ!! 今日はアタシのステージを楽しんでいってねーっ!!」
忍 (ステージが、終わった)
忍 (何とも言えない溢れそうになった気持ちが抑えられなかった)
忍 (それくらい、アタシには幸せすぎる時間だった)
忍「Pさん!」
忍 (Pさんはアタシを見ると、笑みを浮かべてタオルを渡してきた)
忍「Pさん、アタシ幸せだよ」
モバP「あぁ。忍が頑張ったからここまで来れたんだ。努力が身を結んだんだぞ」
忍「ありがとう……! よかった。アタシ、死んじゃうかも、嬉しくて」
モバP「そんな演技でもないこと言うなよ。忍は、これからアイドルとしてもっと大成できるんだから」
忍「うん……あはっ。嬉しいのに、泣けてきちゃうよ」
忍 (Pさんだって疲れてるだろうに、アタシの汗を拭いながら激励してくれた)
忍 (思わず椅子にへたり込んで座ってしまい、ぐったりとしてしまった)
モバP「大丈夫か? 忍」
忍「うん……ごめんね」
忍「ご、ごめん……なんかすこし、ねむくて」
モバP「お、おい。忍? 大丈夫か?」
忍「あれ、え……? ごめん、Pさん……」
モバP「忍? しっかり…………」
忍「う、ん……?」
忍 (瞼が重くて、何だか吸い込まれるように意識が落ちてしまった)
忍 (きっと、今までやってきたことに疲れてしまったんだと思う)
忍 (遠くで、Pさんのアタシの名前を呼ぶ声が聞こえたような気がした…………)
忍「……え?」
忍 (暗闇の中でアタシは立ち尽くしていた)
忍 (また、いつもの夢の中なの?)
忍 (何も見えないよ)
忍 (ここはどこなの?)
忍 (額から汗が流れていくのを感じた)
忍「あ」
忍 (足元からズブズブと沈んでいく。暗闇で何も見えないけど、まるで底なし沼の中だった)
忍「ひっ、はぁ、はぁ……! た、たすけて……!」
忍 (抜け出そうとしても足を動かすたびに沈んでいくようで、どんどん深みにはまっていく)
忍 (助けて、助けて……だれか)
忍 (こわいよ、こわいよ、こわい……)
忍 (あれ、どうしよう)
忍 (まるで、誰かに引っ張られていくように、沈んでいく)
?「…………ぶ」
?「……のぶ……」
?「………しのぶ………」
忍「え?」
かえってこい
かえってこい
かえってこい
かえってこい
かえってこい
かえってこい
かえってこい
かえってこい
かえってこい
かえってこい
かえってこい
かえってこい
かえってこい
かえってこい
かえってこい
かえってこい
かえってこい
かえってこい
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忍 (ここはどこ?)
忍 (……誰が、アタシを呼んでるの?)
忍 (アタシはいま、何をしてるの?)
忍 (アタシは、何?)
忍 (アタシの世界が揺らいでいく……)
忍「…………だれ?」
忍ママ「忍。帰るわよ~」
忍「……あ。うん」
忍ママ「どうしたの。ぼーっとして。何か変な夢でも見たの?」
忍「いや……」
忍 (母の声と、鮮やかな緑を見て、我に返った)
忍 (アタシは、工藤忍。なんてことない普通の女の子)
忍 (普通の……どこにでもいる普通の子)
忍「変な夢、見ちゃった」
忍ママ「あらそう。あんまり深く考えない方がいいわよ。変になるよ」
忍「うん……」
忍 (アイドルになる夢、見ちゃうなんて)
忍 (夢の中で……私はアイドルになるために、頑張っていた)
忍 (ありえない夢なのに、何だか心地よくて、現実みたいに感じたのは、どうして?)
忍 (妙な現実味があって、胸が締め付けられるように苦しくなった)
忍「………っ」
忍 (どうしてこんなに、悲しくなるんだろう)
忍 (まるで世界がひっくり返ったみたいだ)
忍 (アイドル……諦めた夢の中の話)
忍 (何だか、自分の足元がおぼつかなくて、揺らいで見えた)
おわり
終了です
忍ちゃんのひたむきな感じが大好きです
あ、そんなホラー感なくてすみませんでした
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