男「オレの彼女はオヤジ臭い」女「どっこいしょ」 (26)


男(オレの彼女はけっこう可愛いし、頭もいいし、性格も悪くない)

男(オレにはもったいない彼女といえるだろう)

男(ただ、あえて欠点をあげるとしたら――)



女「おはよー!」

男「おはよう。昨日は飲み会だったらしいけど、二日酔いとか大丈夫?」

女「うん、花金だったからちょっと飲みすぎちゃったけど、平気平気!」

男「こうして遅刻せず、デートに来てくれたんだから嬉しいよ」

女「そりゃもう当たり前田のクラッカー! 楽しみにしてたデートに遅れるわけないじゃない!」

男「ア、アハハ……そうだね」



男(オレの彼女はオヤジ臭い)

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男「今日は特にプラン立ててないんだけど……とりあえずどっか店入る?」

女「うん、そうだね」

男「じゃあカフェでも入ろうか」

女「そうしよう! 喫茶店行こう! サ店、サ店!」


― カフェ ―

女「どっこいしょ」ドスンッ

女「ふぅ~」フキフキ…

男(おしぼりで顔拭いてる……化粧は大丈夫なのかな)

女「お姉さーん!」

ウェイトレス「はい」

女「コーシー二つね。あ、あと新聞があったら持ってきて。できれば日経」

ウェイトレス「かしこまりました」


女「……」バサ…

女「ふーむ、今度の選挙はどうなることやら……」バサ…

女「って、メンゴメンゴ! せっかくのデートなのに!」

男「いや、いいよ」

男「ところで、飲み会はどうだった? 楽しかった?」

女「うん、楽しかったよ! ビール飲んで、焼酎飲んで……」

女「あたしなんかほら、つい十八番のドジョウすくい披露しちゃったりして!」

男(ドジョウすくいて)


男「それでさー……」

男「……!」ムズムズ

男「くしゅっ!」

男「ん……カゼかな?」

女「……」ムズムズ

女「ヘェーックショイッ!!!」

女「ん……誰か噂してるのかな?」

男(なんてでかいクシャミだ……カトちゃんかよ)


― 公園 ―

子供A「いけっ、オレのモンスター! 必殺攻撃っ!」

子供B「あっ、やべー! やられちゃいそう!」



女「今の子はみんな、外でもピコピコやってるんだねー」

男「ピコピコ?」

女「ああ、ファミコンのこと」

男「あの子らがやってるのは、ニンテンドー3DSだと思うけど……」

女「まあまあ、細かいことは気にしない!」


女「でもさ、嘆かわしいよねー」

女「あたしらが子供の頃は、外で元気に走り回ってたっていうのに……今の子は外でもピコピコ」

女「“子供は風の子”なんて、もう死語なのかしら」

男「まあ、これも時代の流れじゃないのかな? 走り回れる場所も減ってるし」

女「うーん、でもこのままじゃやっぱりよくないと思う!」

女「あたし、新聞に投書してみよっかな!」

男「と、投書!?」

女「だけど、投書ってどうやってするんだろう?」

女「投書するにはどうしょう? ……なーんちゃって!」

男「ア、アハハ……」


女「そろそろお昼だね」

男「どこかファミレスでも入る?」

女「うーん、ファミレスもいいけど……」

男「オススメがあるの?」

女「この近くに、おいしいサバの味噌煮定食を出してくれる定食屋があるんだ!」

男(サバの味噌煮……)

男「じゃ、じゃあ案内してよ」

女「うんっ!」


― 定食屋 ―

モグモグ… パクパク…

女「どぉう?」

男「うん、うまいよ!」

男(マジでうまいわこれ。隠れた名店だな)

女「気に入ってもらえてよかったわ」

女「サバだけに今度からスリーサイズのサバ読んじゃおっかなー……なーんて!」

男(どう反応すりゃいいんだ……)

男「えぇと、君はサバなんか読まなくてもいいんじゃない? いい体してるよ」

女「んもー! あなたったらエッチスケッチワンタッチ!」

男「ア、アハハハ……」


女「あー……おいしかった」ゲェップ

女「……」シーシー…

男「……」

女「……」シーシー

男「あの……あまり堂々とつま楊枝で歯を掃除するのは……」

女「あ、アイムソーリーヒゲソーリー。ちゃんと手で隠すわ」シーシー…

男(注意すると素直に直してくれるあたり、悪い子じゃないんだよなぁ……)


― 街中 ―

男「あ」

女「あ」

友人「オーッス! 奇遇だなぁ、お前らデートかぁ?」

男「ああ、お前は?」

友人「一人寂しくお買い物だよ」


女「いつまでも若くないんだから、あんたも早くコレ作りなさいよ」スッ

友人「え?」

女「コ、レ」スッスッ

男(小指を立ててる……)

友人「お、おう。頑張るよ」

女「女なんて多少強引に迫るぐらいでいいのよ。“嫌よ嫌よも好きのうち”なんだから!」

友人「ハ、ハハハ……」


女「ねえ……」

男「ん?」

女「手、つなごっか」

男「うん」

ギュッ…

男(ひんやりとした、小さな手だ……)

女「こうしてるとさ……あたしたち、いかにもアベックって感じだね!」

男「そうだね(アベック……)」


― カラオケボックス ―

女「ん~……なに歌おうかな~」

女「あたしの十八番の『あずさ2号』にしよっかなぁ~」

女「『サライ』を熱唱するのも悪くないか」

女「しんみりと『神田川』を歌いあげるってのもいいかも……」

男(うーん……渋い)


― ゲームセンター ―

男「レースゲームやろう」

女「よーし、負けないわよ!」


ブォンブォンブォン…! キキキッ! ブロロロロ…!


女「きゃーっ、曲がりきれなーい!」グイイッ

男「体傾けすぎ! 筺体から落ちちゃうよ!」


― 街中 ―

男「土曜だし、今夜はオレんちで映画でも見ない?」

女「いいねー、見る見るー!」

男「駅前のツタヤ寄って、映画のDVD借りようか」

女「そうしよう、デーブイデー借りよう!」

男(そういや、ディスニーランドもデズニーランドって発音してたな)


男「……ん?」



ワイワイ… ガヤガヤ…

店員「さあ、いらっしゃい! タイムセールだよぉ~! 惣菜が安いよぉ~!」



男「ごめん、ちょっと待ってて。あのスーパーに寄ってくる」

女「うん、いいけど……」

男「うおおおおおおおおっ!」シュタタタタタッ


女(ちょっとと言いつつ、一度買い物始めると長いんだよなぁ……)



男「!」

主婦「あら!」

男「奥さん!」

主婦「あなたもタイムセール目当て?」

男「ええ、このタイムセールは逃せませんよ」

主婦「ところで聞いた? ○×さんちのご夫婦、やっぱり離婚するみたいで」

男「あ~やっぱりそうなんですか! オレもうすうすそうなるんじゃないかと……」

主婦「でしょう?」

男「離婚調停は絶対モメますよ。裁判沙汰にならなきゃいいけど……」

主婦「ホントよねぇ~……裁判の費用もバカにならないし……」



女「……」


男「ところで、俳優の△□が書類送検されたとか……」

主婦「DVがひどかったみたいねぇ~……」

ペチャクチャペチャクチャ… ペチャクチャペチャクチャ…



女(あたしの彼氏はけっこう男前だし、頼れるし、性格も悪くない)

女(あたしにはもったいない彼氏といえるだろう)

女(ただ、あえて欠点をあげるとしたら――)

女(あたしの彼氏はオバサン臭い)









おわり

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