櫻井桃華は病的に愛してる (22)
風邪を引いて休んでいるなか書いているので初投稿です。
目をさますと、そこは大きな部屋だった。
P「ここは…」
部屋の大きさ、家具、カーテン、壁紙、どれを見ても一目で高級品だとわかる。そして、それらは全て薔薇の柄で統一されていた。
P「ていうことは、桃華の家か…」
なぜ自分はここで寝ていたのだろうか。確か、桃華が珍しく家まで送って欲しいと言ってきたのは覚えている。送迎の執事が急用でこれなくなったようで、二つ返事で了承した。
それからほどなく、桃華の豪邸まで車で来てそこから…
「あら、起きましたのね」
がちゃり、と大きめの扉から桃華が顔を出す。桃華の背丈も合間って、より扉が重そうだ。
P「桃華…これは一体」
桃華「あら、Pちゃま、覚えていませんの?」
P「ああ、覚えていないな…桃華を家まで送ったのは覚えてるんだが」
クスッとそこで、桃華が笑う。その笑みには、少女特有の、イタズラに成功したようなあどけなさが見えた。
桃華「ふふっ、Pちゃまは日頃の疲れが溜まっていたご様子でしたから、お家までご招待して、紅茶を飲みましたのよ」
P「そうだった…か?」
桃華「そうでしたの」
桃華そう言われると、なんだかその通りのように思えてくる。
P「…ところで、なんで俺はベットで寝てるんだ?」
桃華「それは、Pちゃまが紅茶を飲んだら寝てしまったらですの」
P「…もうひとつ聞いていいか?」
桃華「もちろんですわ」
P「…なんで縛られてるんだ」
俺の手足は、それぞれベットの支柱に、くくりつけられていた。
ベット?ベッドじゃないの?
桃華「ふふ、うふふふふ」
そう問うと、桃華は急に笑い出す。可笑しくてしょうがない様子だ。
桃華「ふふふ…ごめんなさい、これからのことを考えると楽しくなってしまって」
P「これからのこと?」
桃華「ええ、わたくし…Pちゃまを買いましたの」
P「…えっと、冗談だよな?なら、もう外して貰いたいんだが…」
桃華「冗談ではありませんわ」
そう言いながら、桃華は懐から一枚の紙を取り出した。
P「ヘッド…ハンティング?」
桃華「そう、ヘッドハンティングですわ」
どことなく得意気に桃華は言う。こういうところは、年相応で可愛らしい。
P「つまり、どういうことだ?」
桃華「わたくし、Pちゃまを買いましたの」
P「…桃華、あんまりふざけてると怒るぞ」
桃華「ふざけてなんかいませんわ。ほんとはもっと早くこうしたかったんですの。ようやくお父様に認められて叶ったんですわ」
桃華はかつてないほど機嫌よく話はじめた。
桃華「ずっと、ずぅーっとPちゃまを一人占めしたかったんですの。もちろん、Pちゃまは桃華の担当プロデューサーですからよくお話してくださいましたけど、他にも小梅さんや拓海さんのプロデュースもしていましたし、最近ではまた新しい娘を担当するお話まであがっていたでしょう?」
P「な、なぜその話を」
桃華「なので、わたくしは実力行使に出ることにしましたの!お父様に相談したら、『桃華のプロデューサーが桃華のものになって相応しいか見定める』って言って大変でしたわ。ここ数ヶ月、Pちゃまの生活を全部監視してましたし」
P「か、監視?」
桃華「そのおかげで、晴れてお父様の許可も出ましたし、お年玉でヘッドハンティングさせていただきましたわ!」
P「お年玉で…」
桃華「どうですか、Pちゃま!うれしいでしょう!」
P「桃華…」
桃華「はい!なんでしょう!」
P「…一体何を考えているんだ!」
桃華「えっ…」
P「こんなこと許されるはずがないだろう!ヘッドハンティングじゃなくてただの拉致だ!それに、明日は拓海の取材対応、明後日は小梅が恐怖バラエティの仕事もある!とにかく、ここから出してくれ!」
桃華「わたくしは、Pちゃまの為を思って…」
P「…桃華、俺の仕事はなんだ」
桃華「プロデューサー、ですわ」
P「そうだ、プロデューサーだ。俺は、お前たちをトップアイドルにするまでこの仕事をほっぽりだすわけにはいかないんだよ」
桃華「Pちゃま…」
P「だからここから…出してくれ」
桃華「………」
桃華は懐から、赤いボタンを取り出すと、ポチっと押す。
P「いっってぇ!!!」
後頭部から強い痛みが走る。アイロンで殴られたような痛みだ。
桃華「Pちゃまの後頭部には、電流が流れる装置が付いていますわ。わたくしに逆らえないように。
それと、さっきのお話、もうPちゃまには関係ありませんわ。だって、『ヘッドハンティング』したんですもの。もう346にPちゃまの居場所はありませんわ。
あと、わたくしももうアイドルに興味はありませんわ。だって、Pちゃまがここにいるんですもの」
そう言いながら、桃華は体を預けてくる。
桃華「ああ、Pちゃまの体、胸、心音がこんなに近くに…しあわせですわ」
P「ぐっ…桃華、なんでこんなことを」
桃華「決まってますわ、Pちゃまはわたくしのものになったからですの。ああ、それと」
P「ぎぃぃ!?がぁ!!」
桃華はボタンを2度押した。
桃華「レディの前で他の女の名前を言うなんて、失礼ですわよPちゃま」
こうして、俺は桃華の所有物になった。
>>4
ベッドが日本に入ってきたときはベットと言われていました。
なのでなんの問題もないね?
病的な桃華との生活 食事篇
P「…桃華、そういえばさ」
桃華「なんですのPちゃま」
P「その、桃華をないがしろにするつもりじゃないんだけど…ちひろさんと電話してもいいか」
桃華「…Pちゃま、まだわかっていませんの?」
桃華はボタンを構える。
P「いやいや!違う違う!ただ、ヘッドハンティングってことは書類上のやり取りがあるだろ?俺の判も無しにどこまで進んでるのかなーって」
桃華「…それで、ちひろさんに確認をとると」
P「そうそう!それでちゃんと済んでたら納得するから!」
桃華「…ちゃんと済んでなかったら納得しませんの?」
桃華は悲しげにボタンに親指をかける。
P「あー!!間違えた!ちゃんと済んでなかったら正そうかなって!そういうとこきっちりしたい派なんだよ!」
桃華「…なーんだ、そういうことでしたの!」
パッと明るい表情に変わる桃華。可愛い。じゃなくて、本格的に危うい精神状態だ。
こんな風になるまで気が付かなかったのか、俺は。
桃華「はい、Pちゃま、ちひろさんですわ」
P「ありがとう、桃華」
桃華が俺の胸に馬乗りになりながら、携帯を持った手を耳元に押し付ける。
桃華の心地よい重さと体温が、胸から全身に伝わる気がした。
ちひろ「もしもし?もしもーし!」
P「…もしもし」
文句を言いたいが、既にちひろさんと繋がっているようだ。
ちひろ「その声…もしかしてPさんですか!」
P「そうです、お疲れ様です」
ちひろ「お疲れ様ですじゃないですよ!どういうことですか!ヘッドハンティングって!」
P「いや…こっちも寝耳に水でして」
ちひろ「えっ?ど、どういうことですか?上からは他言無用と言われて極秘に進んでて、本人に了承も得てるって…書類関係を調べたら、全部整ってるし…」
P「…ほ、本当ですか?」
ちひろ「本当なんです!なのでPさんが裏切ったって『みんな』大慌てで!」
P「その、裏切ったと言って錯乱したのって」
ちひろ「?たしか、桃華ちゃんだt」
耳元から携帯が離れる。どうやら通信を切ったようだ。
桃華「どうです?Pちゃま。ご安心しまして?」
P「…ああ、安心したよ」
桃華「ふふ、これでPちゃまは、ずーっと、ずーーーっと一緒ですわ!」
桃華は馬乗りのまま、こちらに倒れこむ。小さな体が、すっぽりと入り込むように。
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