提督「ほら、これだ。書類と指輪」
叢雲「ふーん。海軍は結婚相手の斡旋もはじめたわけ?」
提督「いや、これは艦娘相手に使う装備らしい」
叢雲「艦娘に?」
提督「ほら、ある程度以上に艦娘の錬度が上がらなくなる現象あるだろ」
叢雲「あるわね。私もそうだし」
提督「その上限を、これを使うことで……よくわからんが、絆の力とかなんとかで突破できるらしい」
叢雲「本当によくわからないのだけど」
提督「軍事機密だそうだ。どうでもいいところばかり隠したがる……いつものことだ」
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叢雲「それにしてもケッコンカッコカリってネーミングはどうなのよ」
提督「俺もそう思う」
叢雲「大丈夫なの、この戦争」
提督「もうだめかもしれないな」
叢雲「みんなで大陸のほうに逃げましょうか」
提督「いよいよダメになったらそうするか。俺はドラム缶の中にでも入れて運んでくれ」
叢雲「はいはい。何なら浮き輪に掴まっていてもいいわよ。ひっぱってあげるから」
提督「ま、そうなることのないよう、もう少し現場でがんばるとしよう」
叢雲「そうしましょ」
提督「というわけで、とりあえず使ってみよう。叢雲でいいか」
叢雲「いいわよ」
提督「これが指輪だ。あと書類にサインしてくれ。俺はもうしたから」
叢雲「はいはい。指輪をはめて、サインっと」
提督「おっ、叢雲の身体が光り始めたぞ」
叢雲「……」
提督「……」
叢雲「……」
提督「……」
叢雲「……なんかちかちかして、うっとうしいんだけど」
提督「何か変わったところはあるか?」
叢雲「別に……。このままだと、夜戦で一番に狙われそうね」
提督「おかしいな。ちょっと説明書読むか……。えーと……あ、最後のページ同士がくっついていた」
叢雲「で、どうすればいいのかしら?」
提督「んーと……あ、これか。叢雲、指輪の箱の中を見てくれ。そこに入ってる紙の、叢雲用の項目を読みあげるらしい」
叢雲「これ? ……艦娘の名前がずらっと書いてある……どこ? ……あ、私の名前があるところ。これ?」
提督「そう、そこだ」
叢雲「『……あんたのこと、まあ、嫌いじゃないっていうか。別に命令聞いてあげても……いいかなって』」
提督「急に何言ってんだ?」
叢雲「そう書いてあるの。『何よ。べ、別にそんな意味じゃないし』」
提督「どういう意味だって?」
叢雲「だから書いてあるまま……あ、光が消えた」
提督「さっぱりわからなかったが、これでケッコンカッコカリは終わりだな」
叢雲「ふーん……。確かに錬度が上がるような気がしてきたわね」
提督「わかるのか……。じゃあ早速出撃……」
吹雪「…………ちょっと! 二人とも!」
白雪「…………いくらなんでもそれはないんじゃないですか」
提督「な、なんだよ」
叢雲「な、なによ」
吹雪「仮にも結婚ですよ結婚!」
白雪「もう少しムードやそれなりの反応というものがあるべきでしょう」
吹雪「それなのに、私たちがいる前でそんなことをはじめて……!」
白雪「二人とも恥ずかしくはないのですか」
提督「何を怒られているのかさっぱりわからん」
叢雲「た、単に錬度が上がるようになるだけじゃないの……」
吹雪「違う、違うよ叢雲ちゃん!」
白雪「そう、結婚というものはもっとこう……愛と豊かさに溢れた……」
提督「いや、だから結婚じゃない……」
吹雪「そんなことはありません! これを見てください!」
叢雲「な、なにこれ。……説明書の裏側?」
提督「……ケッコンカッコカリをした後、本人同士が望むならば配偶者としての法的保証を申請できる、か」
吹雪「そうです! つまり、カッコカリといえど実質結婚なんです!」
提督「でも、本人同士が望んだらの話だろ」
叢雲「私たちは別に……ねえ」
提督「なあ」
吹雪「そ、そんなわけないでしょう! いつもあんなに二人で仲良さそうに……」
白雪「まってください、吹雪」
吹雪「え?」
白雪「この二人……もはや、そういった段階は通り過ぎてしまっているのかもしれません」
吹雪「それって……そ、そっか! 司令と叢雲ちゃんは、すでに実質夫婦……!」
白雪「そうです。しかも、長年連れ添った熟年夫婦の域」
提督「言われ放題だな」
叢雲「だれが熟年よ」
吹雪「夫婦には特につっこまないあたり、やっぱり……!」
提督「妙な話になってきたなあ」
叢雲「こういう話に飢えてたのかしら」
白雪「でも、配偶者扱いにはしておいたほうがいいと思います。色々と便利な制度があるので」
叢雲「そうなの? じゃ、一応なっておく?」
提督「ああ、かまわない」
叢雲「それじゃ、そうしましょ」
吹雪「軽い! なにこの会話!」
白雪「……何の盛り上がりもないのに、おそろしくあてられます」
提督「はいはい、いいからそろそろ出撃してくれ」
叢雲「そうするわ。行くわよ、二人とも」
吹雪「うー、なんだか納得いかないんですけど」
白雪「叢雲と提督にはこれ以上、何を言っても無駄ですよ。行きましょう」
吹雪「はーい」
提督「……」
提督「ふむ」
提督「結婚、か」
提督「……」
提督「くく」
叢雲「叢雲、出撃するわ」
吹雪「吹雪、出ます」
白雪「白雪、同じく」
吹雪「……どう、叢雲ちゃん。出撃して、何か変わったこととかある?」
叢雲「んー、特には。さっきも言ったけど、錬度が上がりそうな気がするくらいかしら」
白雪「事前に聞いた時は、もっと劇的な変化があるものだと思っていたのですが」
叢雲「そういうものなんじゃないの」
吹雪「そうなのかなあ……」
白雪「……そろそろ深海棲艦の出現が報告された海域です」
叢雲「そうね。おしゃべりはここまで」
吹雪「うん、いくよ」
叢雲「……あ」
白雪「どうしました?」
叢雲「いや、このまま戦闘すると、指輪無くしそうで邪魔だな……と思って。部屋に置いたままではだめなのかしら」
吹雪「ロ、ロマンがない……」
白雪「……叢雲……」
叢雲「あー、悪かったわ、余計な話して。ほら、集中集中」
吹雪「もう……」
白雪「……まあ、叢雲はこれでいいのかもしれません」
叢雲「いくわよ、二人とも……砲撃開始!」
叢雲「……指輪、か」
叢雲「ふふ」
叢雲はそっと指を、唇に当てる。
おわり
読んでいただいたみなさまありがとうございました
レベル99の初期艦と提督なんてもうこんな感じじゃないの?
と思ってこんな感じでした
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