モバP「世の中上手くいかない」 (11)
全く無茶苦茶な話だ。1週間で新しいアイドルを3人も、それも部長のお眼鏡に敵う娘なんてそうそう居ない。結局1人もスカウトできず今まで説教されていたが本当に馬鹿馬鹿しいと思う。これも前任が急に失踪したせいだ。八つ当たりは本当にやめて欲しい。
千川ちひろ「お疲れ様です。相当叱られたようですね」
モバP「ええ、できっこない事指示する方もどうかと思いますが」
ちひろ「それだけ期待されているって事は…」
P「まさか、入社2ヵ月目にしてはやり過ぎですよ。ベテラン先輩の穴埋めなんて無理です。こんな事なら転職しなけりゃ良かった」
ちひろ「もう…そんな悲しい事言わないで下さいよ。あ、そうです…」
ちひろ「これ、疲れに効きますので是非飲んでください」
P「何ですこれは? こんなモンでこの気持ちは晴れませんよ」
ちひろ「まぁまぁ飲んでみてから言ってくださいよ」
P「そうですか…」
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ドリンク剤、こんな物でストレスが発散できるのなら人生楽だが現実はそうはいかない。ドリンクを飲んでみるとまぁ味は悪くない。それに心なしか苛立つ気持ちが晴れたような気がする。
P「これは不思議ですね…あれだけ苛ついてたのが嘘のようだ」
ちひろ「ね? 一服ってとても大切ですよ」
P「ですね。先ほど生意気言いましてすみませんでした」
ちひろ「いえいえ」
ちひろ「部長から何か言われたんですか?」
P「いえね、1週間で3人スカウトできなかったでしょ? もう1週やるから1人でいいから見つけてこいと。そして出来なけりゃクビだって」
ちひろ「へぇー」
P「他人事ですね…」
ちひろ「いえ、今のプロデューサーさんなら大丈夫だと思いますよ」
P「そうですかねぇ…」
翌日
ちひろさんが言った通りに事になった。ティンときた娘にスカウトを持ち掛けたら上手く行った。ティッシュマンと間違われたぐらいどうって事ない。部長からも『何だちゃんとできるじゃないか、お前は俺に似ている。だから厳しくあたる。まぁすまんな』とも言われた。悪い気はしなかった。
P「いやぁちひろさんに言われた通りになりましたよ」
ちひろ「うふふ。今まで色んなプロデューサーさんを見た事があるんです。あなたはとても向いてますよ」
P「照れますね…」
ちひろ「そうだ、上手くいった祝いじゃありませんが昨日のドリンクもう一本飲みますか?」
P「ええ、それ飲みたかったんですよ。もっとありませんか? 売ってる所教えてくださいよ」
ちひろ「ふふふ、これは貴重な物ですし非売品ですよ。なんせ私が作っていますので」
P「いや、凄いですよちひろさん」
ちひろ「褒めても沢山渡せませんよ、はいどうぞ」
P「ありがとうございます!」
ドリンク…自分自身ワクワク感が高まっているのが分かる。味は大したことないのに不思議と飲みたくなる。重ねるようだけど本当に不思議だ。
ちひろさんのドリンクを飲んだせいかどうか分からないがその後の事は万事上手くいっている。好きなアイドルをスカウトできたり、オーディションをすればアイドルはミスすることなくパーフェクトで入賞。更にはゴリラのような体格の強面に因縁をつけられ殴られたのだが全く痛くも痒くもない。むしろ相手が痛がっていた。これだけの力があればもう独立しても大丈夫じゃないかとさえ錯覚する。
P「只今戻りました」
ちひろ「遅かったですね」
P「いえ、先程変なのに絡まれまして」
ちひろ「災難でしたね。今日も飲みますか?」
P「もちろんです」
ちひろ「ではどうぞ」
P「ありがとうございます」
ちひろ「そうそう、この後お時間ありますか?」
P「何かありましたか? まぁちひろ様のお頼みでしたら何でも聞きますが」
ちひろ「ええ、ではこちらへ」
???
P「へぇ、こんな所あったんですね。あれ、円柱水槽っていうんですか? 初めて見ますよ」
ちひろ「まぁ誰にも言ってませんし。ではこの中入ってくれますか?」
P「水槽の中にですか? ちひろ様の言う事なら聞きますけど」
ちひろ「お願いしますね」
空っぽの水槽の中に入ると液体が充填されてきた。妙な気分だが心地良い。次第に意識が遠のく。
ちひろ「ふう、優秀なプロデューサーさんを作るのも大変ですね。ジュエル集めも大変ですし」
彼女の手には七色に輝く石、傍の水槽には何十リットルというドリンクの原液が残った。
彼女は千川ちひろ。当事務所の美人で優秀なアシスタントである。
短いけどおしまいです。
賢者の石とか液体人間とかのキーワード好きです。
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