モバマスP「それはある朝、突然に」 (27)

ふと、周子のことが好きだという事に気付いた。

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特に理由やきっかけはない。

目が覚めたら、周子の顔が頭を過ぎり「好きだ」という言葉が出て来た。

それから、今まで共にしてきた周子の様々な表情を急に思い出して、なんとも言い難い幸福感が胸の中を満たした。


P「……」


今まで仕事をしてきて、こんな経験は初めてだ。

今日もLiPPSのメンバーと打ち合わせがあるのに、どうしたものか。

などと悩んでいても、仕事の時間はやって来る。

極めて平静を装って仕事に励むつもりだったが、様子がおかしいとちひろさんに指摘されてしまった。


ちひろ「プロデューサーさん? どうかしましたか?」

P「い、いえ? 何も……」

ちひろ「じー……」

P「……」

ちひろ「本当、何にもないですか? 何か、悩みとか」

P「ええ、まぁ」

ちひろ「ならいいんですけど……何か困った事があったらすぐに言ってくださいね?」

ちひろ「みんなに心配かけちゃダメですからね」

P「……はい」

付き合いの長いちひろさんには直ぐに見抜かれてしまった。

流石に、悩みの中身まではバレていないが……果たして、他のアイドル達に隠し通せるだろうか?

特に周子は一番付き合いの長いアイドルだ。一時期は同棲していた事もある。

いつも通りに接する事ができるだろうか?


周子「おっはよー」

ちひろ「おはようございます」


そして、ドアの向こうからやって来た彼女。

何度も見ている筈の顔なのに、妙に落ち着かない。


周子「んー? どしたん?」


挨拶を返さない俺を、不思議そうに覗き込む周子。

とりあえずはいつも通り、そう、いつも通りに。

自分にそう言い聞かせて、挨拶を返すべく口を開く。

P「好きだ、結婚してくれ」

周子「は、へ?」

ちひろ「プロデューサーさん?」


ポカンとした表情を浮かべる二人。

そりゃそうだ、何故朝一から愛の告白なんぞを聞かされなきゃいかんのだ。


周子「P、Pさん? どしたん……?」


困ったように眉根を寄せる周子。

そんな顔も可愛いなぁ、なんて思いながらどう状況を修正するか考える。

幸いにも、この場にはまだ俺達三人だけ。


冗談だ、おはよう周子――その一言で、いつも通りの俺達に戻れる筈だ。

フレデリカ「カキ氷ってさー、シロップの味全部おなじらしーよ?」

美嘉「え、マジで? アタシブルーハワイ好きなんだけど」

奏「ブルーハワイ味……って冷静に考えると謎よね」

志希「作ったげよーか? 志希ちゃん特製――」

美嘉・フレデリカ・奏「いらない」



廊下から、他のメンバーの声も聞こえて来た。


周子「ぷ、プロデューサー?……なんか、言ってよ……」


俺は周子の目を見詰めながら頷く。

LiPPSのメンバーが部屋に足を踏み入れるのと同時に口を開き――

「愛してる。俺の子を産んでくれ」

――え゛っ


異口同音に、絶句するLiPPSメンバー。

あの志希ですら引いている。

そりゃそうだ、打ち合わせに来たらユニットメンバーがセクハラ紛いの事をされているのだから。


ちひろさん「じょ、冗談! 冗談ですよね、プロデューサーさん!」

周子「あ、ああ……そ、そういう……?」

ちひろさんが慌ててフォローに入る。

周子もパチパチと瞬きを繰り返し、自分を落ち着かせようとしている。


そうだ、彼女たちを安心させて、早く仕事の打ち合わせを始めよう。


P「目の形が好きだ。サラサラの髪が好きだ」

周子「は、」

P「信頼して無防備な姿を見せてくれるのが、好きだ」

周子「へ、」

P「白い肌も好きだ。頬擦りしたくなる」

周子「ふ、」

P「その寝顔を、毎日見ていたいんだ」


言ってしまった。

小学生並みの語彙だが、溢れる言葉が止められなかった。


周子「え、えと」


周子はというと、ペースを乱されまくって目をグルグルと回している。

追い詰められた時の輝子や乃々に似ている。

彼女のこんな姿を見る機会なんて、これから先、一生ないだろう。


P「周子」


彼女の肩に手を置き、回っていた目をこちらに向けさせる。

P「大好きだ。一緒に暮らそう」

周子の目が忙しなく左右に泳ぎ、やがて俺と目線を合わせる。

言いたい事があるようだが、上手く言葉にならない。

そんな様子で口を開けたり、閉じたり。

深呼吸を繰り返して、漸く周子が返事をした。


周子「本気、なの?」

P「ああ」

周子「あたしで、いいの?」

P「お前が、いいんだ」

周子「……」

周子「なら」


周子「頷くしか、ないやん。こんなの」

周子「よろしくお願いします……できれば末永く、ね?」

周子は、白い顔を見事に赤く染めて頷いた。

俺の想いが通じたのだ……勢いで押し切った、ともいう。


P「というわけで。ちひろさん」

ちひろ「は、はい……?」

P「俺たちは、これからのことがあるので」


周子の肩を抱き、二人で部屋から出る。

背後で「えんだー?」「いやああああ」とか、LiPPSのメンバーが妙に騒がしいけど、ちひろさんが何とかしてくれるだろう。

色々やらかしたような気がするが、幸せだから問題ないのだ。多分。

なお、この後の俺達を待ち構えていたのは幸せな未来――ではなく。

打ち合わせをすっぽかした俺達に対する、地獄の鬼もかくやとばかりの説教であった。

また、この告白がきっかけで宵乙女、トラプリ、LMBG、LiPPS、メロウイエロー、Masque:Rade、PCSに火が付き会社全体を揺るがす騒動を巻き起こす事になるのだが……それはまた、別の話だろう。


愛されあればどんな困難も越えられるのだ、きっと。


周子「なんか、テキトーすぎない?」

P「嫌いじゃないだろ、そういうの」

周子「ま、そーだけどさ」



終わり

周子に告白したかっただけ
終わりです

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