【たぬき】依田芳乃「よよよよよりた」 (34)

 モバマスより小日向美穂(たぬき)と依田芳乃の事務所のSSです。
 独自解釈、ファンタジー要素、一部アイドルの人外設定などありますためご注意ください。


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P「芳乃、誕生日おめでとう」

芳乃「ほー?」

P「これ、ささやかだけどプレゼント。これからもよろしくな」

芳乃「ほほー……わたくしの誕生日でしてー?」

P「うん……? どうした? 歯に何か詰まったような顔をして」

芳乃「いえー。お祝いいただくことは、大変うれしいのですがー」




芳乃「わたくしの誕生日は、昨日だったのでしてー」

P「あ、そっか! ごめんごめん、すっかり勘違いして……」



P「…………いや今日じゃね?」

芳乃「昨日でしてー」

P「いやいや、三日だろ? 七月三日! カレンダー見たらほら三日だって! 時間的にもギリで!(メタ発言)」

芳乃「いえー……わたくしの誕生日は、七月の二日なのでしてー」

P「えぇえ……!? ここに来てプロフィールに間違いが……!!?」


「そなたー」


芳乃「しかしながらー、そなたのお気持ちはうれしく思いまするー」

P「お、おう……。まずいな、色々修正しておかないと……」


「そなたー?」



P「ん、何だ? ……あ、芳乃だ。聞いてくれよ芳乃。芳乃の誕生日なんだけどさ」

芳乃「わたくしの誕生日が何かー?」テコテコ

芳乃?「ふむー」

芳乃「ほー?」

芳乃?「はてー」

P「」


芳乃「そなたー」

芳乃?「いかがされましてー?」


P「…………芳乃が二人いる!!!?」ガビーン


   〇


  ―― しばらくして


P「…………まあ話は大体わかった」

芳乃「はいー」

芳乃B「困ったのでしてー」


P「つまり、並行世界の芳乃がこっちに紛れ込んじゃったんだな?」



芳乃「間違いないかとー。おそらく、世界線に何らかの乱れが生まれ、この世界に収束したのでしょうー」

P「さらっと世界線って単語が出てくるんだもんな」

芳乃B「わたくしが一日早く生まれた芳乃なのでー」ミギミミ

芳乃「そういうことでしてー」ヒダリミミ

P「あっあっあっバイノーラル芳乃やめてのうみそとける」

芳乃B「すなわち、わたくしがお姉さんなのですー」

芳乃「むむー?」

芳乃B「文字通り一日の長がありましてー。発育もそれなりとー」

芳乃「還りたまえー」シュポッ

P「芳乃Bが次元の狭間にーっ!?」

芳乃「これでもう安心でしょうー」

P「お、おう……意外と容赦ないなお前」

芳乃「わたくし自身なればー、遠慮も無用とー」


  ゴゴゴ……


P「ん?」

芳乃「むむー?」


  ズモモモモ……!!


芳乃「ほほー……これはいささか、難儀なことになってきた様子ー」

P「な、なんだ? 何が始まるんです?」

芳乃「今の送還で、次元がまたほころびー……」



芳乃「わたくし『たち』が、こちらへ雪崩れ込むでしょうー」



  ポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポンッ!!!




  ◆◆◆◆


   デシテーデシテーデシテーデシテー

  ソナターソナターソナターソナターソナター

     ブオオーブオオオーブオオオオオオーブオオオオオオーーーー


周子「…………あちこち芳乃ちゃんだらけなんやけど」ポカーン

美穂「こ、こ、これはどういうことなんですかぁ~っ!?」ポコーッ

P「あっ、ちょうどいいところに!」


 ~かくかくしかじか~

美穂「な、なるほど……」

周子「大体わかったわ」

P「お前らのそういう順応性高いとこ好きよ」

周子「大概慣れちゃってっからねまあ」

美穂「芳乃ちゃんが増えるくらいは、あるのかなぁって……」

芳乃「申し訳ありませぬー」


P「芳乃を元の世界に返せるのは芳乃だけらしいんだ」

P「そこで、俺と芳乃は散らばっちゃった芳乃たちを追いかけなくちゃならない」

周子「てことは、あたしらはここでお留守番しとけってこと?」

P「理解が早くて助かる。時間がかかりそうだしな」

美穂「わ、わかりましたっ。プロデューサーさんも芳乃ちゃんも、気を付けて……!」


P「まあ、とはいっても相手は芳乃だからな。みんな物分かりがいいだろう」

芳乃「わたくしとこの者に万一のことあらば、事務所を頼みまする」

P「そんなハードな仕事なの!?」


  ◆◆◆◆


P「さて、芳乃を探さないと……お?」


芳乃C「ほー……」


P「いた! おーい芳乃……芳乃?」

芳乃C「はー……」

芳乃「ふむー」

芳乃C「ぴりぴりー……」

P「な……なんだ? ずいぶんボーッとしてるんだな」


芳乃C「すぱいしぃ……」

芳乃「これは、どうやらー……」

芳乃「『昨日のおやつ、やはりカレーおせんべいにした方がよろしかったか』と思っているわたくしでしょうー」

P「分岐条件細かすぎない?」

芳乃C「いんどのかほりー……」

芳乃「それほどまでに、カレーおせんべいは美味なるものでしたゆえー」←食べた方


芳乃「ということで、お帰り願いましょうー」シュポッ

P「あ、消えた」

芳乃「次に参りましょうー」


芳乃D「しゃらんらーでしてー」

芳乃「ごすろりに目覚めしわたくしでしてー」

P「えっやだめっちゃかわいい。芳乃もこっち試してみない?」

芳乃「……ぽっ」

P「あ、それはまだ恥ずかしいのね……」

  シュポッ


芳乃E「ぽこぽんでしてー」

芳乃「たぬきのわたくしでしてー」

P「芳乃が化け狸だった世界線もあるのか……」

  シュポッ


芳乃F「こんこんでしてー」

芳乃「きつねのわたくしでしてー」

P「そっちパターンもあるのかよ!」

  シュポッ


芳乃G「今やすべての魂がわたくしに集まりー漆黒の太陽が天高く昇りしときー現世を統べる魔界の王がー」

芳乃「熊本弁履修済みのわたくしでしてー」

P「芳乃が言うと色々シャレになってない気がするんだよな……」

  シュポッ


  ~中略~


芳乃USA「Japanese OSENBE taberu desite」

芳乃「亜米利加生まれのわたくしでしてー」

P「やたら流暢な英語と見せかけて日本語が!?」

  boom!!


芳乃V「ふがふがーでしてー」

芳乃「わたくしより生まれが100年早く、大変老いたる姿でしてー」

P「老い……えっ? なんも変わんなくね?」

芳乃V「お若いそなたーくれぐれも行く先にお気を付けなされー」

P「何か不吉なこと言ってるけど!?」

芳乃「そやーっ」

芳乃V「ふがふがー」

  シュポッ


芳乃P「あいどるになりなされー」

芳乃「そなたの職を継いだわたくしでしてー」

P「顔面に名刺が押し付けられてるゥ!?」グイイーッ

芳乃P「なりなされー理由(わけ)あってあいどるになりなされー」グイグイグイ

芳乃「なりませぬー」

  シュポッ



  ~中略~


芳乃Ω「滅びよ」

芳乃「そなたに出会わなかった世界線のわたくしでしてー」

P「それだけでこんなんなっちゃうの!!?」

  カッ
  ドドドピシャーン ドガラシャーン
  ズゴゴゴゴゴゴゴ

  シュポッ



  ~またまた中略~


P「はぁ……はぁ……今どれくらいだ?」

芳乃「ようやく半分といったところでしょうかー」

P「お、多いな……日が暮れちまうぞ……」


芳乃Y「そなた♡」

P「んん!? 声色が一段と甘いが……!?」

芳乃Y「そなたは今宵、いつごろ帰られましてー?」

P「え、帰宅時間? いつも通りなら結構遅くなるけど……」

芳乃Y「承知いたしましてー。それでは夕餉はそなたに合わせますー」

P「んん? 芳乃が晩飯作ってくれんの?」

芳乃Y「はいなー♡ いつものごとく、腕によりをかけて作りますゆえー♡」

P「お、おう……え? 俺んちいるってこと?」

芳乃「そいや」シュポッ

P「ノーコメント強制送還!?」

芳乃「次に参りましょうー」スーーーッ

P「ねえさっきの何!? 何芳乃だったの!?」


   ○


芳乃「ふむー……だいぶ減ってきたころでしょうー」

P「はぁ……ふぅ……。も、もうちょっとなんだな?」

芳乃「然りー。そなた、もうひと頑張りでしてー」

P「そうか……よしっ。いっちょ気合入れていくか!」


Pb「おう! その意気だぜ、俺!!」


P「…………芳乃」

芳乃「はいー?」

P「俺の隣に……俺がいない?」

芳乃「たしかに左様でしてー」

Pb「よう兄弟!! 元気そうだな!!!」

P「いやお前は誰だ!!?」

Pb「俺の中の俺!!!!!」

P「そういう意味じゃねーよ!!!」


芳乃「ふむー……どうやら、並行世界のそなたも紛れ込んでしまった様子ー」

P「俺こんなか!? 傍から見てこんな暑苦しい男なのか!?」

Pb「バッカヤロウ!! 男たるもの熱くなけりゃどうすんでい!!!」

芳乃「これは、ぱっしょん属性のそなたでしょうー」

Pb「いいねぇパッション!! 情熱的にいこうぜ!!!!」

P「そういや心なしか黄色いなこいつ」

茜「情熱ですか!!!?」ニュッ

P「遠くから猛スピードで茜が!?」

芳乃「かようなそなたも良きものですがー。ここはやはりお帰り願わねばー」

  シュポッ


Pc「フ……さあ見せつけてやろうぜ。ファンの心に、決して消えぬ蒼の傷跡を……!」

P「さっきのがパッションならこれはアレか、クールか」

凛「ふーん。今日のプロデューサー、いつもよりいい目してるね」

P「呼び寄せられんの早いな凛!」

芳乃「こちらもあるべきところへー」

  シュポッ


Pd「よーしっ☆ 今日もたっくさん社畜しちゃいますよぉっ☆」

P「キッッッツい……キュート成人男性マジキッツい…………」

??「ナナはこういう路線もアリだと思いますよぅ!」

P「カフェのウェイトレスさん!?」

芳乃「宇宙の果てまでー」

  シュポッ


Pe「ハァハァ」

芳乃「助平薄型書物時空のそなたでしてー」

Pe「おっぱい」

P「限界野郎すぎる……」

Pe「おしり」

P「こいつ大丈夫なの? IQがミジンコ並になってない?」

芳乃「ちのうしすうを捨て去らねば助平には及べぬということでしょうー」

P「我が身ながら見るに堪えねぇ」

Pe「けもの」

  シュポッ


芳乃「途中からぷれすてに乗り換えたそなたでしてー」

Ps「やっぱFFだわ」

P「生かしちゃおけねェェエエーーーーッッ!!!」

芳乃「そなたー、殿中にてー。殿中にてございますー」ガシーッ

P「放せっ放してくれ芳乃ォ!! こいつだけはこの手で!!」ジタバタジタバタ

芳乃「そいやー」【封印】

P「グワーッ金縛り!!」ピキーン

Ps「セガなんてだっせーよなー!」

P「くそう! お前が、お前のようなやつがいるから!!」

  シュポッ


  ◆◆◆◆


 ~やがて日は暮れて~


P「終わったか? 今度こそ終わったな!?」

芳乃「しばしお待ちくださいませー……」

芳乃「よしのん・さーちー」ピピピ

P「何その技!?」

芳乃「ほうほう……ふむふむー」

芳乃「どうやら、あまたのそなたとわたくしはみな送還できたようでしてー」

P「ほっ……」


   ○


芳乃「そなた、すみませぬー。このようなことになるとはー」

P「いや、いいんだ。芳乃が何かしたわけじゃないんだろ?」

芳乃「しかしながら、そなたにご迷惑をー……」

P「いいって。そっちこそ、せっかくの誕生日にこんな……」

P「あ、そうだ誕生日だよ! 芳乃、誕生日だよな?」

芳乃「いかにもー。この世界の芳乃は、七月三日が誕生日でしてー」

P「だよな。うん、色々あったけど、改めて……」


P「誕生日おめでとう、芳乃」

芳乃「……ふふ。ありがとうございまするー」


P「ということで、プレゼントを用意してたんだ。ささやかだが……ん? あれ?」

P「………………あ」

芳乃「そなたー?」

P「芳乃への誕生日プレゼント……芳乃Bに渡しっぱなしだった」

芳乃「……」

P「…………」

芳乃「…………」

P「……………………」


芳乃「今一度、次元を開きまするー」ズオオオッ

P「待って待って待って芳乃待って! 買うから! 新しいの買い直すから!!」


  ~おわれ~

○オマケ


 依田芳乃に関して言えば、実は結構わからないことが多い。


 実家は鹿児島の離島。諸々のプロフィールは記述の通り。
 いつもおっとりしていて心優しく、失せ物探しが得意。仕事でも異変でも頼りになる、当事務所の最古参アイドル……。

 なのだが、彼女がうちに来た過程にはまだちょっと謎があった。
 向こうから来た……あるいは「いつの間にかいた」とでも言うほかないのだ。


   ○


 あれはうちの部署が稼働しだして間もない、春の盛り。
 当初、うちに所属するのは楓さん一人。それに俺とちひろさんとの三人体勢で、毎日あれやこれやしているところだった。
 
 ある日、事務所に内線が来た。

 どうもフロントに客人が来ているらしい。
 俺に会いに来たとのことだったが、アポは当然なし。何か急ぎの用事も、お叱りを受けるようなことをした覚えもない。

 はてどうしたものか――考えながらロビーに降りると、彼女はそこに立っていた。


「やはり、そなたでしたかー」


 海と花の香りがする、着物姿の少女。
 オフィス街ど真ん中の芸能ビルには到底似合わぬ佇まいだ。
 年の頃は15、16くらいだろうか……日本人形のように可愛らしい姿からは、しかし樹齢数千の老木を思わせる不思議な落ち着きがあった。




「ええと、君は……?」
「気脈に動きが生じましたゆえー。人を探し、わたくしを呼ぶ声を追いたるところ、此処にー……」

 当然だが俺は彼女のことを知らない。見たことも聞いたこともない。
 ところが、怪しむ気持ちは自分でも驚くほど無くて。

 ――あ、来てくれたんだな。

 さっぱり何の根拠もなく、自然とそう思っていた。


「って、じゃなくて。オーディション希望の子かな? それなら俺じゃなく、まず応募から……」
「わたくしは、そなたに会いに来たのですー」

 ふんわりとした彼女の微笑みは、見る者を惹き付け、心を安らげる不思議な魅力があった。
 これは天性のものだ。
 職業人としての本能のようなものがそう告げていた。

 からころ――と、軽やかな音がして。

 気が付けば彼女は、すぐ目の前にいた。
 小柄な少女の、かわいらしいつむじがすぐ眼下にある。

 すっと細い手が伸びて、俺の頬を撫でる。


「そなた。お顔を、もう少しこちらへー……」
「顔? こうかな……むぎゅっ!?」

 いきなり抱き寄せられた。

 両腕で頭を抱え、着物の胸元に導かれる。
 あの遠い島の海辺の花のような香りが鼻腔いっぱいに満ちて、途轍もなく優しい声に囲まれる。

「よくぞ、ここまで立派にー……芳乃は嬉しく思いますよー……」
「もがもがふがががが」
「よいこー、よいこー……」

 撫で撫でされている。まるで仔犬にするみたいだ。
 ………………抵抗できない。
 なんか、このままでもいいような気がしてきた。


 当然ロビーには社員が山ほどいる。他部署のアイドルも。
 周囲から突き刺さりまくる視線もその時だけは気にならなかった。
 だが見る人が見れば未成年に対するアレコレで今すぐお縄だ。



「あら――」

 と、聞き慣れた声に正気に戻る。
 楓さんが立っていた。
 さしもの彼女も、少し驚いているみたいだった。

「そうですか……あなたが」

 楓さんは静かに頷き、なにやら合点がいったというように微笑する。
 少女は俺を優しく解放し、楓さんに正対して背筋を伸ばす。


 そして、俺には想像もつかぬ何らかの万感を込めて、深々とお辞儀をするのだった。


   ○


 かくして依田芳乃は、我が事務所の二番目のアイドルとなった。
 扱いとしては俺がスカウトしたことになるんだろうか。いや、逆にこっちがスカウトされたのか? わからない。
 彼女は当然のようにアイドル活動に精を出し、駆け出しだった部署の原動力の一つとなる。

 正式に入所した時の、芳乃の言葉が忘れられない。


「また、会えますね」


 また夏が来る。


  ~おわり~

以上となります。お付き合いありがとうございました。
よしのん誕生日に合わせて少し横道に逸れました。

進行中の楓さん長編は並行して書き溜めております。
すみませんがもう少しお待ちください。

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