杏「はたらかないひとてきかぐやひめ」 (29)
仁奈「杏おねーさん! ……むー、奈緒おねーさん、杏おねーさん知らねーでごぜーますか?」
奈緒「あれ? さっき居たと思うんだけどな……ウサギで待ってれば戻ってくるんじゃないか?」
仁奈「しかたねーですね、座って待つでごぜーます」ポスッ
ウサギ?「グュッ」
奈緒「は?」
仁奈「えっ」ペラッ
杏「」
奈緒「何やってんだ……」
仁奈「杏おねーさんはダンゴムシのきもちでごぜーますか?」
杏「びっくりさせようと思ってウサギの下に隠れてたんだけど出てくる前に座られてしまった」
仁奈「大丈夫でやがりますか?」
杏「押されて漏れそう」
仁奈「はやくおといれに行ってくだせー」
杏「面倒だから奈緒代わりに行ってきて」
奈緒「いや代わりにってなんだよ、行けよ」
杏「しょうがないなぁ……どっこいしょ」
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デレマスなんですよ
今回も杏が仁奈にご本を読んだり読まなかったりします
仁奈「奈緒おねーさんは何してやがりますか?」
奈緒「ああ、課題やってた。ほら」
仁奈「え……これ算数でごぜーますか……」
奈緒「数学になるとこうなるんだよ」
仁奈「何で英語が混ざってやがりますか」
奈緒「酢豚のパインみたいなもんだな」
杏「杏はアレ結構嫌いじゃないよ」
奈緒「お、お帰り」
仁奈「間に合ったでごぜーますか?」
杏「なんとか人権を失わずにすんだ」
奈緒「どんだけ切羽詰ってたんだよ」
杏「人権失いかけるぐらい」
仁奈「それはいけねーでごぜーますね」
杏「ほんとほんと。で今日はどうしたの」
仁奈「今日も文香おねーさんに貸してもらったでごぜーます!」ペッペケー
杏「おー、かぐや姫かー。じゃあ読んでいこうかねー」
仁奈 ワクワク
『昔々、あるところに竹取の翁と呼ばれるおじいさんの群れが住んでいました』
仁奈「何人ぐらいでごぜーますか?」
杏「何人がいーい?」
仁奈「400人!」
杏「じゃあ400人で」
奈緒「は?」
『400人のおじいさんの群れは400本の光る竹の群れを見つけては切り倒し400人の女の子の群れを「待て待て」
杏「何かな」
奈緒「何で全部群れなんだよ!」
仁奈「いっぱいだと楽しいでごぜーますからね」
奈緒「にしたって多すぎるだろ! 一学年分の生徒ぐらいはいるぞ!」
杏「戦争は数だよ兄貴」
奈緒「誰が兄貴だ」
仁奈「奈緒おにーさんだったでやがりますか……」
奈緒「誤解だ!」
杏「杏は最初からおにーさんだって信じてたから」
奈緒「なんでさ!!」
杏「ていうか奈緒課題は良いの?」
奈緒「良くないよ……課題やってる時に面白いこと言うなよなー。気になるだろ」
杏「めちゃくちゃ言い出した」
仁奈「宿題頑張ってくだせー!」
杏「さてじゃあ気を取り直して」
『ある日の事、おじいさんが山へ行くと、老婆を見つけました。
その老婆はよく見ると死体から髪を抜いています』
仁奈「えっ」
『おじいさんは刀を突きつけ何をしていたか問いただすと、老婆は
「この髪を抜いてな、この髪を抜いてな、鬘にしようと「ちょっとまってくだせ―」
杏「はい」
仁奈「どんなおばあさんでやがりますか……こえーですよ……」
未央「羅生門の読み聞かせとか硬派だね」
杏「でしょ」
仁奈「ちげーですよ……かぐや姫でごぜーます……」
未央「え? 杏ちゃん何見えてんの?」
杏「紙」
仁奈「紙」
杏「あとインク」
仁奈「インク」
未央「杏ちゃん……病院行こ?」
杏「杏が可哀想だから真面目な顔で言うのやめて」
未央「自業自得だと思うんですけどー」
仁奈「杏おねーさんはかわいそうな人でごぜーますから」
杏「えっ」
未央「仁奈ちゃんの言うとおりだ」
杏「いや仁奈はそういう意味では言ってないから。未央ちゃんだけゲスっててよ」
未央「ゲスゲス」
仁奈「仲良くするでごぜーます!」プンスコ
杏「はい」
未央「はい」
杏「それじゃ続きね」
『ある日の事、おじいさんが山へ行くと、一本の竹の根本がぼんやりと光り輝いてました。
「何と不思議な竹だろう」
おじいさんは、その光る竹を切ってみましたが中には何もありません』
仁奈「あれっ」
『ふと手に持った竹に目をやると、そこには……張り付いた光るしゅうまいがー!!』
仁奈「……」
杏「……」
仁奈「おなかペコペコでやがりますか?」
杏「昼ごはん食べたんだけどな……」
仁奈「何食べたでごぜーますか?」
杏「サブウェイ」
仁奈「仁奈は中に入ってる黒いやつが苦手でごぜーます……」
杏「オリーブねー、杏も好きかと聞かれると微妙」
仁奈「仁奈は拓海おねーさん里奈おねーさんとラーメン食べにいったでごぜーます!」
杏「あー、ラーメンもいいなー。食べたくなってきた」
仁奈「おなかペコペコでやがりますか?」
杏「お昼ごはん食べたんだけどな……」
仁奈「飴あげるでごぜーます」
杏「あ、梅味だ。渋いなぁ」コロコロ
仁奈「美嘉おねーさんにもらったでごぜーます。すっぱいですよ」コロコロ
杏「そこが梅のうめーところでごぜーますよ」
仁奈「おぉ……」
杏「はい次読みまーす」
『竹の中には、大きさが三寸ほどの光り輝く可愛くて小さな女の子が入っていたのです。
子供の居ないおじいさんは、大喜びでその女の子を家に連れて帰りました。
女の子を見てお婆さんも大喜びで、一緒に育てることにしました』
仁奈 フンフン
『三日後、近隣住民の通報により、おじいさん、おばあさんは逮捕されました』
仁奈「えっ」
『容疑者は「天からの授かり物だと思った」などと供述してお「ちょっとまってくだせ―」
杏「はい」
仁奈「捕まっちまいやがったですか……」
杏「世は相互監視時代……通報されたものから順に警察に捕らえられてゆくのだ……」
仁奈「え……警察こえーですよ……」
早苗「ちょっとちょっとー! 仁奈ちゃんに嘘教えないの!」
仁奈「捕まえるでごぜーますか……?」
早苗「捕まえないってばー。ほらー怖がられちゃうじゃないの、嘘つきは泥棒の始まりよー?」
杏「アイドルは心を盗まないといけないから……」
早苗「殊勝な心がけだけどね」
仁奈「泥棒はどうするでごぜーますか?」
早苗「そりゃもちろん捕まえるわよ」
仁奈「やっぱり……」
早苗「あっあ、違うのよ、違、もー!」
杏「自爆なんだよなぁ」
仁奈「続きを読んでほしいですよ」
杏「ほい、じゃあ読むねー」
『女の子がお家にやってきた次の日から、不思議な事がたびたび起こりました。
おじいさんが竹を取りに行くと、中に黄金がぎっしりと詰まっていることが何度もあったのです。
おかげで、おじいさんとおばあさんは、たちまち大金持ちになりました』
仁奈 フンフン
『三日後、近隣住民の通報により、おじいさん、おばあさんは逮捕されました』
仁奈「えっ」
『容疑者は「天からの授かり物だと思った」などと供述してお「ちょっとまってくだせ―」
杏「はい」
仁奈「やっぱり捕まっちまいやがったですか……」
杏「なんもかんも警察が悪い」
早苗「だからー! やめなさいってばー!」
仁奈「ええ……警察こえーですよ……」
光「そんなことないぞ! 警察官は街の平和を守ってくれる身近なヒーローなんだ!」
仁奈「仁奈、捕まえられねーでごぜーますか……?」
光「仁奈ちゃんは悪い事なんかしてないだろ?」
仁奈「うー……ちゃんといい子かなぁ?」
杏「いい子いい子」ナデ
光「じゃあ大丈夫!」
仁奈「えへへ~♪ よかったー!」
早苗「光ちゃんもいい子だわー」
光「なっ、早苗さん! 警察官の時の聞かせてくれないか?」
早苗「あら、お姉さんの話が聞きたいの? 変身はしたことないけど良ーい?」
光「変身できなくても、早苗さんはヒーローだよ! 変身できる人なんて珍しいしね」
杏「ふぅ命拾いした」
早苗「杏ちゃんは覚えときなさいよ」
杏「オイオイオイ死んだわ杏」
杏「それじゃ続きだー」
『女の子は不思議な事に、僅か三月ほどの間ですくすくと育ち、それはそれは美しい娘になったのです。
しかし、おじいさんとおばあさんも負けじとすくすく成長し、三人はどんどん大きくなりました』
仁奈「えっ」
『そしてあまりにも大きくなりすぎたかぐや姫は月をつかむとよっこらしょと帰っていきましたとさ。
めでた「ちょっとまってくだせー」
杏「はい」
仁奈「すげーむりやり帰りやがったですね……」
杏「杏もこんぐらいパワープレイで帰りたい」
仁奈「おっきさもよくわかんねーです。月ってどのぐらい遠くにありやがるですか?」
アナスタシア「ゼムリャー、アー、地球から月は大体38万キロメートルですね」
杏「キロメートルとか分かるっけ」
仁奈「学校で習ったけどおっきすぎてよくわかんねーです……」
杏「富士山10万個重ねてもちょっと届かないぐらい」
仁奈「ほあぁ……」
アナスタシア「ほあぁ?」
杏「ほあー」
仁奈「それじゃなかなか行けねーでごぜーますね」
アナスタシア「ニナは月、行ってみたいですか? アーニャと同じですね」
仁奈「月の上でうさぎさんの気持ちになりてーです! うさぎさんの気持ちになって、おもちをつくですよ!」
杏「玉兎だねぇ」
アナスタシア「カニ、ライオン、ワニとかロバに見えるという国もありますね」
仁奈「そんなにいっぱい居るでごぜーますか?」
杏「多分奏ちゃんもいる」
仁奈「月は賑やかでごぜーますね!」
杏「続きを読んでこー」
『その美しく不思議な姫を、世の男たちがほうってはおくわけがありません。
多くの若者たちがひと目でも見たいと押しかけます。
そこでおじいさんはCDに握手券をつけるという作戦に打って出ると、見事大ヒット。
かぐや姫は見事トップアイドルとして「ちょっとまってくだせー」
杏「はい」
仁奈「アイドルデビューでごぜーますか……」
杏「同業者になってしまった」
仁奈「レッスンとかしてるでごぜーますかね」
杏「じいちゃんばあちゃんがトレーナーだよ」
仁奈「仁奈も一緒に歌って踊ってみてーですよ!」
杏「杏は見てるだけでいいやー」
仁奈「そんなこといってたら月に帰っちゃうですよ?」
杏「かぐや姫もいつかは解散コンサートで普通の女の子に戻るのだ」
小梅「私にも聞かせて……」ヌッ
仁奈「ひゃああ!?」ビクッ
杏「わぁ」
仁奈「び、びっくりしたー……」ドキドキ
小梅「ふふ、びっくりさせちゃった……ごめんね……」
杏「かぐや姫違いなんだよなぁ」
仁奈「続きを読んでほしーですよ」
杏「あいよー」
『中でも熱心に結婚を申し込んだのがこの五人の王子でした。
彼らは名前を、
アナスタシア、
速水奏、
木村夏樹、
二宮飛鳥、
上田鈴帆、(敬称略)
と言いました。』
仁奈「えっ」
『選びかねたおじいさんが、姫に相談しました。
すると、姫は「おいしいから大丈夫だよ」の一言で五人を婿に「大丈夫じゃないよ!」
かな子「全然大丈夫じゃないよ!」
仁奈「かな子おねーさんおはよーごぜーます」
かな子「あ、うん、おはよう仁奈ちゃん」
杏「顔のいい女を取っ替え引っ替えしてるかな子ちゃんだ」
かな子「してないよ!?」
仁奈「取っ替え引っ替えってどういうことでごぜーますか?」
杏「えっちなこと」
仁奈「わ、わぁ……おとなだぁ……」ドキドキ
かな子「仁奈ちゃんに変なこと教えないでよ!」
奈緒「何騒いでるんだ?」ヒョコ
仁奈「かな子おねーさんが顔を取っ替え引っ替えしてるでごぜーます……」
奈緒「アンパンマンかな?」
杏「スタンドかな?」
奈緒「シンデレラってそういう……待て、包丁はやめよう、な?」
杏「オイオイオイ死んだわ杏」
かな子「ちがうよ!? タルトを切ろうと思ったんだよ!?」
仁奈「わーい! かな子おねーさんのおかしは美味しいでごぜーますからね!」
かな子「仁奈ちゃんはこんなにいい子なのに……」
奈緒「ごめんなさい」
杏「ごめんなさい」
仁奈「わー……りんごだー!」モグ
奈緒「すごいな、キャラメルアップルタルトかな」モググ
杏「奈緒課題は良いの」モグググ
奈緒「ちゃんと味わわないとかな子とタルトに失礼だろ」
杏「味覚分布地図とか信じてる?」
奈緒「とっくに否定されてるだろ!」
仁奈「食べながらお勉強はお行儀悪いでごぜーますからね」
奈緒「そういうこと。だから気にせず続きを読んでくれ」
杏「はいはい、じゃ読んでみよっか」
『選びかねたおじいさんが、姫に相談しました。
「五人のお方は、みな、それぞれに立派なお方たちじゃ。お前は、どのお方がいいのかね?」
するとかぐや姫は、こう答えました。
「取り敢えず全財産差し出してもらいましょうか」』
仁奈「……」
杏「……」
奈緒「それ杏が欲しいだけだろ」
杏「うん」
仁奈「杏おねーさんがかぐや姫だったでごぜーますか……?」
杏「ウサミン星に帰ろう」
奈緒「自分をかぐや姫だと思いこんでいる一般アイドル」
杏「やめてやめて」
仁奈「杏おねーさんはお金持ちになったら何したいですか?」
杏「今度こそ働かないで暮らすぞー」
仁奈「うー……仁奈はもっと杏おねーさんとお仕事してーですよ……」ショボ
杏「うっ」
奈緒「安心しなって、別にお金持ちになる予定無いから」
杏「なるもん」
奈緒「なるもんて」
杏「印税生活するもん」
奈緒「それに杏が思ってるより杏はアイドル好きだろ」
仁奈「そっかー、よかったー!」
杏「……いいから課題やりなよ」
奈緒「食べ終わったら再開するって」モグ
杏「ほらはやくはやく」グイグイ
奈緒「急かすなって!」
杏「はーもー恥ずかしいから次読も」
『おじいさんは、五人の王子たちにかぐや姫の言葉を伝えます。
「かぐやは、こう申しております。
石作皇子殿には、天竺の《仏の御石の鉢》を、
車持皇子殿には、東の海の《蓬莱の玉の枝》を、
阿部御主人殿には、《梅澤の十手》を』
奈緒「待て」
『大伴御行殿には、《殴打頭蓋》を』
奈緒「待てって」
『そして石上麻呂殿にはこのワシと戦ってもらおう!」
そう叫んで脱ぎ捨てた革ジャンの下には金属のように鍛え上げられたおじいさんの筋肉が「待てって!!」
杏「何?」
奈緒「何? じゃないよ石鍛冶みたいな顔ですーんとして!」
杏「あ、そっち?」
奈緒「取り敢えず頭から突っ込んだんだよ!」
杏「ヘッドスライディングみたいな物言いだ」
仁奈「ええ……おじいさんはムキムキでやがりますか」
杏「青汁飲んでるからね」
仁奈「そういえばムキムキのおばあさんもいたでごぜーますね」
奈緒「また青汁と称するステロイドの仕業か……」
杏「奈緒飲みなよ」
奈緒「奈緒飲まないよ。杏飲みなよ」
仁奈「杏おねーさんもムキムキになりやがるですか?」
杏「えー、ムキムキかぁ……やだなぁ」
奈緒「逆になりたかったらびっくりだわ」
杏「ほんとにさ」
奈緒「さー、課題やるかぁ」
仁奈「がんばってくだせー」
奈緒「おーありがとなー」
杏「じゃー杏も読むかー」
仁奈「わーい」
『まずは石作皇子が鉢を持ってかぐや姫のもとに現れました。
「天竺へ行って、《仏の御石の鉢》を手に入れました」
そう言って偽物の鉢を差し出すと、かぐや姫は布でその鉢をみがいて、
「《仏の御石の鉢》は、みがけばみがくほど光り輝く鉢です。これは、《仏の御石の鉢》ではありません」
と、偽物である事を見破りました。
そして偽物を差し出されたことに腹を立てたかぐや姫は、衝動的に持っていた鉢で石作皇子を殴りつけて殺害してしまいました』
仁奈「えっ」
杏「チャーンチャーンチャァーン↓」
<チャーンチャーンチャァーン↑
杏「さんきゅー奈緒」
仁奈「何事でごぜーますか」
杏「火曜サスペンス劇場」
仁奈「おじいさんとおばあさんよりかぐや姫捕まえたほうがいいでごぜーます」
杏「じじばばもかぐや姫も大っきいから……」
仁奈「大っきいのはつえーですね、仁奈も負けずにおっきくなるですよ」
杏「そうなったら杏運んでね」
仁奈「杏おねーさんがたくさん遊んでくれたらどうしよっかなーって思うでごぜーますよ?」
杏「しょうがないにゃぁ」
仁奈「にゃー」
杏「じゃ未来のために続きを読もうかね」
『次に車持皇子が枝を持って現れました。
「これが蓬莱山より持ち帰りし《蓬莱の玉の枝》でございます」
かぐや姫はその見事な輝きに目を奪われます。
しかし、車持皇子を追いかけてきた職人たちが現れ、口々にお代を要求しだしました。枝は職人に作らせた偽物だったのです。
騙されたことに気がついたかぐや姫は、偽物を差し出されたことに腹を立て、衝動的に枝で車持皇子を殴りつけて殺害してしまいました』
仁奈「えっ」
杏「チャーンチャーンチャァーン↓」
<チャーンチャーンチャァーン↑
杏「さんきゅー奈緒」
仁奈「またやっちゃったでごぜーますか……」
杏「鉢より殴りやすそうだよね。ぼっこだし」
仁奈「ぼっこ?」
杏「あー、棒」
仁奈「ぼっこって言うでごぜーますか」
杏「北海道の方言かな」
仁奈「へー」
楓「ぼっこでぼっこぼこですね」
仁奈「おぉ……」
杏「神谷くん座布団全部持ってって」
楓「あら、厳しい」
杏「気を取り直して次だ次」
『そして、阿部御主人を《火鼠の裘》ごと燃やし、大伴御行を《龍の頸の玉》ごと砕いたかぐや姫。
ついに四天王最後の一人、《燕の子安貝》石上麻呂との対決に望みます。
かぐや姫の戦いはこれからも続く!
完』
仁奈「えっ」
杏「えっ」
仁奈「おわりでごぜーますか」
杏「おわりでごぜーますよ」
由里子「んんー、アタシの記憶だと竹取物語は完結してたハズ」
杏「アンケの順位下がっちゃったから……」
由里子「うあー、諸行無常だー」
仁奈「やっぱりかぐや姫はたたかうでごぜーますか」
杏「四天王最後にして最強の敵だからね。三戦とかしてくる」
由里子「それただ構えてるだけじゃない?」
杏「無視して先に進むのが吉」
仁奈「え、5人いやがりますよ」
杏「4=5だから」
仁奈「ちげーですよ」
由里子「世紀の大発見だじぇ」
杏「既存の理論こわれる」
杏「さーじゃあ続きだー」
『さて、この話しがついに、帝の耳にも届きました。
そしてかぐや姫の美しさに心を奪われた帝が、かぐや姫を宮廷に迎えると言ったのです。
おじいさんとおばあさんは大喜びですが、かぐや姫は宮廷に行くのを断りました。
そこで、帝は「てかLINEやってる?」と「ちょっとまってくだせー」
杏「はい」
仁奈「帝はそんなチャラチャラしてやがりますか」
杏「やっぱノリがよくないと」
仁奈「え? 偉い人でごぜーますよね?」
杏「ノリでなんとかなるよ大丈夫大丈夫」
仁奈「絶対だいじょうぶじゃねーですよ。偉い人はしっかりしてくれないと困るでごぜーます」
杏「もっともだ」
仁奈「ていうかLINEがありやがるですか」
杏「聖徳太子だって10人といっぺんにLINEしてたし」
仁奈「マメでごぜーますね」
杏「恐竜の化石と一緒にLINEの化石も出土してるから」
仁奈「LINEの化石……? 何がどう化石になりやがるですか……?」
杏「なんだろう……」
仁奈「ええ……」
杏「しょうがないから次よも」
『三年ほどたったある時、かぐや姫は月を見ては涙を流すようになりました。
しかし、心配したおじいさんとおばあさんがかぐや姫にたずねても、何も言わず涙をはらはらと流すばかりでした。
そしてある夜、かぐや姫は泣いている訳を話し始めました。
「ガシャに10万溶かした……「ちょっとまってくだせー」
杏「はい」
仁奈「それ紗南おねーさんでごぜーますよね」
杏「はい」
紗南「待って待って、先月は溶かしてないよ?」
杏「待って待ってじゃないよ」
仁奈「いつやらかしたでごぜーますか……」
紗南「……やらかしてないよ?」
仁奈「あっ、嘘の顔でごぜーます」
紗南「嘘じゃないよー超少食になっただけだよー」
仁奈「ご飯はちゃんと食べねーとだめでごぜーますよ」
紗南「はい」
杏「モヤシすら買えないとかやめようね」
紗南「はい」
杏「寝る子は育つからね」
紗南「はい」
杏「花の魔術師引けた?」
紗南「宝具5にしたよ!」
杏「正座」
紗南「はい」
仁奈「なんか叱ってる杏おねーさん、菜々おねーさんみたいだったでごぜーます」
杏「杏は17歳ですからね! キャハッ」
仁奈「菜々おねーさんと同じでごぜーますね」
杏「そ。おんなじ歳おんなじ歳。そんなわけで最後だねー」
『十五夜の夜、月が明るさを増し、空が真昼のように明るくなりました。
そして、雲に乗った月の都の迎え達が、ゆっくりゆっくりとかぐや姫の屋敷に近づいてくるのです。
帝が、かぐや姫を守るために送った軍勢も、どうしたことか石のように身体が動かなくなってしまいました。
月の都の迎えは屋敷の上空でとまると、こう言いました。
「さぁ、姫様。お迎えに参りました」
おじいさんとおばあさんは、かぐや姫の手を力いっぱい握りしめましたが、不思議とその手から力がすぅと抜けてしまいました。
「お父さま、お母さま、これでお別れでございます。これからは月を見るたびに、私のことを思い出してください」
そう言ってかぐや姫は天女の羽衣を羽織ると、そのまま月の都のお迎えたちとともに夜空へと登っていき、月の光の中に消えてしまいました』
杏「おし……あれ、ここで終わりか」
仁奈「? どういうことでごぜーますか?」
文香「実は、もう少しだけ続きがあるのです……杏さんなら、ご存知かと思いますが」
仁奈「どんなですか?」
杏「かぐや姫は月に帰っていく時に、帝に不死になれる薬を置いていくんだよ。でも、帝はその薬を焼いちゃうんだ」
仁奈「え、なんでそんなことしやがりましたか?」
杏「それは帝が詠んだ歌でわかるんだけどー」チラッ
文香「『逢ふ事もなみだに浮かぶ我が身には死なぬ薬も何にかはせむ』……ですね」
仁奈「難しくてよくわかんねーです」
杏「かぐや姫居ないのに死ななくなっても意味ないじゃん! ってことだよ」
仁奈「へぇー……」
杏「そして、その薬を燃やした山だから不死の山、富士山なんだってさ。ってところまででおしまいおしまい」
仁奈「物知りだー……」
杏「ホントかは知らない」
仁奈「えっ」
杏「……ところで文香ちゃん」
文香「はい」
杏「いつからそこに?」
文香「そうですね……ご老人が国家権力のお世話になったところからでしょうか」
仁奈「けっこう最初の方でごぜーますね」
文香「仁奈ちゃんからお話は聞いていましたが、杏さんが実際に読んでいる様子は初めてでしたので……ひっそりと拝聴しました」
杏「なにそれ恥ずかしい」
文香「いえ……お見事でした」パチパチ
仁奈「杏おねーさんはいろんなことを思いついてすげーでごぜーます」
文香「私も杏さんに朗読していただきたいですね……『失われた時を求めて』などどうでしょうか」
杏「杏の時が失われるので要約選手権で我慢してください」
仁奈「仁奈も杏おねーさんに読んでほしいですよ……文香おねーさん、絵本を貸してくれねーですか?」
文香「構いませんが……手持ちに何かあったでしょうか」ゴソゴソ
仁奈「わぁー……本がいっぱいだぁ」
杏「かつて図書館だった鷺沢文香」
文香「あれは実際のところ図書館ではないと思います……あ、1冊だけ有りました」
仁奈「やったー! なんの絵本でごぜーますか?」
文香「『ギャシュリークラムのちびっ子たち』が」
杏「エドワード・ゴーリーさんはちょっと……」
文香「ですね……仁奈ちゃん、また今度で良いですか」
仁奈「むー、しかたねーですね」
文香「すみません……次は何冊か持ってきますから」
杏「あれ、杏の仕事増えた……?」
仁奈 ニコニコ
杏「あーもー、しょうがないなぁ」
仁奈「わーい!」
おしまい
まえのやつ→杏「はたらかないひとてきさるかにがっせん」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1481888578/)
直近のやつ→飛鳥「君の名前を奏でよう」 - SSまとめ速報
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今回も読んでくれた人ありがとう。また次もよろしくお願いしますね。
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