ほむら「ついにこの日がやってきたわ」 (56)
ほむら「誕生日パーティ?」
まどか「うん。明日、私の誕生日パーティやるんだ。それで、ほむらちゃんが迷惑じゃなければどうかなって」
ほむら「...ごめんなさい。明日は、少し用事があるの」
まどか「そっか...」
ほむら「後日改めてプレゼントを渡すから、楽しみにしておいて」
まどか「うん!」
さやか「......」
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放課後 屋上
ほむら「わざわざ呼び出してなんの用かしら」
さやか「あんた、どうしてまどかの誘いを断ったの?ぶっちゃけ大概の用事なんていつもの掌パンッで片付けられるでしょ」
ほむら「...まあ、否定はしないわ」
さやか「あたしのことは気にかけなくていいよ。確かにあんたとは敵対してるけどさ、まどかの誕生日を祝うことにイチャモンなんてつけないって」
ほむら「別にあなたにどう思われようが知ったこっちゃないわ」
さやか「あんた相変わらずあたしにはキツイのな」
ほむら「強いていうなら、そうね。あなたが私に気を遣うことで、存分に楽しめないあなたを気遣ってまどかの気持ちが萎えてしまうのが嫌だから、といったところかしら」
ほむら「とにかく、私が求めるのはまどかが楽しく過ごせる誕生日。そのためには、あなたが思い切り愉しむことが必須だと思ったのよ」
さやか「またメンドクサイ考えをお持ちのことで...そこまで言うならもういいよ。だったらあんたの言う通り、あたしは目いっぱいまどかを祝って、あんたが嫉妬するくらい楽しんでやるからね!」
ほむら「そうしてくれると助かるわ」
教室
さやか「やっぱりどうしても無理だって」
まどか「そっか、残念だな...でも、無理強いするのはいけないよね」
まどか(ほむらちゃんも気を遣ってくれてるだけで本当は嫌なのかもしれないし...)
さやか「おっ?なんか困り顔になりましたな...そういう時は」ダキッ
まどか「ひゃっ!?」
さやか「ほらほら笑え~い!笑ってあの悪魔が来たくなるくらい見せつけてやれ~い!」
まどか「アハハハ、やめてよさやかちゃん~!」キャハハハ
切り立った崖
ほむら(まどかの誕生日。それは、この世界で最も尊い行事)
ほむら(彼女の誕生日パーティーは必ず成功させなければいけない)
ほむら(そのためなら―――私は手段を択ばないわ)
ほむら「あなたたち」
ドールズ「」ザッ
ほむら「この街にある使えそうなもの、ありったけ持ってきなさい」
ドールズ「ハッ!」コクリ
ほむら(腐っても私の分身たち...普段は私への反骨心の塊だけれど、まどかの為になることならちゃんと言う事を聞いてくれそうね)
「ホムラサン!」
ほむら「用意ができたみたいね」
ほむら(随分早かったわね。確かにこの街には何故か大量の兵器が格納されているくらいなんでもあるけれども)
「なにかニ括りつけられそうな、ロープがありましタ!」
ほむら「でかしたわ」
「ロープと組み合わせれば便利そうナフックがありましタ!」
ほむら「よし、でかしたわ」
「ホムラサン。すっごいいい感じの丸太がありました!」
ほむら「......」
「ホムラサン!」「ホムラサン!」「ホムラサン!」
・
・
・
ほむら「だいぶ集まったわね」
ほむら「昔使ってた兵器類に、打ち上げ花火、ロープやフック、その他諸々...できる限りの備えはできたわ」
ほむら「まどか...必ず、私はあなたの誕生日を成功させてみせる」
翌日
鹿目家
まどか「ふわぁ~」
タツヤ「まろか、おはよー」
まどか「おはよータツヤ」
タツヤ「たんじょーび、おめでとー!」
まどか「ありがとう」クスッ
まどか(うーん、やっぱり寝起きだとあまり誕生日って実感が湧かないなぁ)
ピロン
まどか(あっ、メール...わっ、みんなからお祝いメールがきてる!)
まどか「ティヒヒ。やっぱりこういうのは嬉しいなって」
まどか(でもほむらちゃんからは...来てないや)
通学路
杏子「よーまどか。誕生日おめでとうな」
仁美「おめでとうございます、まどかさん」
さやか「まどかぁ~!誕生日おめでとー!!」ガバッ
まどか「ありがとう」ティヒヒッ
さやか「ん~、まどかぁ、気のせいかちょっぴり大人びたんじゃないの?」
まどか「そうかな?」
さやか「こうやって密着してるとわかるけど、フェロモンっていうの?なんか良い匂いするし...う~ん、セクシー、エロイッ!」
杏子「中年オヤジかお前は」
仁美「私も抱きしめますわ」ギュッ
まどか「ムグッ」
仁美「本当...大人の女性の匂いに近づきましたわね。少し胸も大きくなったのでは?」
さやか「おやおや、恭介という者がありながら浮気ですかな仁美さん?」ニヤリ
仁美「まどかさんやさやかさんは別腹ですわ」
さやか「この欲張りさんめ。けどまどかはあたしの嫁なのだ!渡さないぞ仁美ィ!」ギュッ
まどか「ふへぇ?」
さやか「ほらほらまどかぁ、嬉しいダルルォ!?」
まどか(ふ、ふたりの胸に押しつぶされて...柔らかい...)
仁美「あら、聞いてませんでしたか?さやかさんも別腹だと」
さやか「え、ちょっ、なんであたしの腰に手をまわして」
ペロッ
さやか「んヒィ!?」
仁美「さやかさん...また一段と大人の味になりましたわね」
さやか「く、首に舌を這わせないで...あふぅ」ピクリ
まどか(仁美ちゃんもさやかちゃんもイイ匂い...)トローン
杏子「朝っぱらから盛ってんじゃねーぞ、三馬鹿」
仁美「おっと失礼」
さやか「ひ、仁美には敵わないなぁ...」ハァハァ
まどか(やっぱり、まだまださやかちゃん達に比べたら子供だなぁ、わたし)
教室
和子「誕生日の朝には『おはよう』と『誕生日おめでとう』、どちらを優先すべきですか、ハイ中沢くん!」
中沢「え?えっと、どっちでもいいんじゃないかと」
和子「その通り!女子の皆さんは、その一言の選択で勝手に幻滅するような器の小さい男とは交際しないように!」
さやか「早乙女先生、最近三日に一片は新しい彼氏との破局話してない?」
杏子「毎度毎度、どっからその人脈は湧いてくるんだろうな」
さやか「その頻度で寄ってくる男たちもどうかと思うけど...パッと見、魅力はあるんだろうねぇ」
まどか「先生、美人だし可愛いし、当然だよ」
和子「もういっそ鹿目さんが嫁にもらってくれないかしら...ハイ、気を取り直してそれでは出席をとります。暁美さん...は、休みのようね」
さやか(あいつは今日は休み、か...ハハーン、さては大事な用ってのは、明日にプレゼントする予定の奴をなにか仕上げてるってとこかな?)
さやか(ああ見えてピュアなところあるし、案外お手製に拘って丸一日かけて作ってるのかもね)
―――――――
放課後
さやか「よーし、今日の授業も終わりー!」
杏子「パーティだパーティ!さっさと帰って準備するぞ!」
仁美「それではまた後で」ペコリ
まどか「うん!」
まどか(楽しみだなぁ。なんだか初めての時みたいに舞い上がってる気がするよ)
鹿目家
ピンポーン
知久「おっ、まどかの友達が来たみたいだよ」
まどか「!」
タタタ ガチャリ
マミ「こんにちわ、鹿目さん」
なぎさ「なのです!」
まどか「いらっしゃいマミさん、なぎさちゃん!とりあえず入って、どうぞ」ホワホワ
マミ(あらあら、ものすごくハシャいじゃって)フフッ
―――――――
崖
ヒュゥゥゥ
ほむら(そろそろ彼女たちがまどかの家におじゃました頃ね)
ほむら(本当はまどかが円環の記憶を取り戻さないよう見張っていたいけれど、そうも言ってられないもの)
ほむら「私は私のやるべきことをやるだけ...誰にも、彼女の誕生日を穢させはしない」
―――――――
鹿目家
詢子「おーし、全員揃ったな」
知久「ハイッ、じゃあ早速...」ゴトッ
杏子「うおっ、なんだこのケーキ、めちゃくちゃデケェぞ!」
詢子「この人、愛娘の誕生日だから張り切って作ってたからねえ」
さやか「しかも手作り...スゲェ!」
仁美「では、ケーキの準備もできたので...上条くん」
上条「うん」スッ
~♪
詢子「いい音色だねぇ」
知久「噂には聞いていたけれど、心が洗われるようだ」
さやか「よし...じゃあ、みんないくよ。せーの!」
――――――
崖
ほむら「ハッピーバースデートゥーユー、ハッピーバスデートゥーユー」
ほむら「ハッピーバースデーディアまどか」
ほむら「ハッピーバスデートゥーユー...」
QB「そんなことをしていて空しくならないのかい?」
ほむら「あら、いたのね」
QB「いたもなにも、僕がまどかに近づけないように監視しているのはきみじゃないか」
QB「暁美ほむら。感情のない僕らだけれど、きみの行為は不可解だ。なぜまどかの誕生日を祝う気がありながらパーティには参加しないんだい?」
ほむら「あなたには関係のないことよ」
ほむら(変に喋って隙を突かれるのはもうこりごりだもの)
QB「そうかい。まあいいさ。下手に刺激してまた虐められるのは勘弁したいからね」
ほむら「そういうことよ。理解しているのなら私の視界から消えなさい」
QB「やれやれ、わかったよ」
QB(きみのその様子を見れば、なにかを待っていることくらいはわかっているのだけれどね)
―――――
鹿目家
詢子「よーし、それじゃあ、蝋燭を吹き消しな。景気よくいってくれよ」
杏子「景気よく...ケーキだけn」
さやか「そこ!触れるの禁止!」
まどか「えへへ、それじゃあ...」スーッ
フーッ
知久「誕生日、おめでとう」パチパチパチ
オメデトー パチパチ
まどか「ありがとう、みんな」
杏子「さっ、早く切り分けよーぜ」ワクワク
マミ「ガッつかないの。今日の主役は鹿目さんでしょ」
詢子「焦らなくてもケーキは逃げないって。さっ、まずはまどかから」
まどか「うんっ!」
――――――――
崖
ほむら「......」
ほむら(もうすぐ今日という日が終わる...誕生日ケーキはオーソドックスにショートケーキかしら)
ほむら(プレゼントは...百江なぎさはチーズでしょうね。巴さんはティーカップ、他は...案外思いつかないわね)
ほむら(思えば、もう飽きるほど顔を突き合わせているけれど、彼女達については何にも知らないのね。別に関係ないけれど)
ほむら(...まどか。どうか、今日という一日があなたにとって幸せなもので終わりますように)
ピリッ
ほむら「ッ...!そろそろのようね」
ほむら(予感はしていた。片割れを失った彼女が、このまま見過ごすとはとても思えなかった)
ほむら(まどかは、本来、どの時間軸からも消失し痕跡さえ遺されていないし誰もその存在を認識すらしていないのが正しい在り方であり世界でもある)
ほむら(つまり、鹿目まどかが存在するこの現状は、彼女にとっては歪みであり世界の歯車を狂わす元凶になりうる)
ほむら(彼女はその歪みを必ず矯正しにくる。鹿目まどかが誕生した、まどかの誕生日という特異点を消し去ることによって)
ほむら「そんなことは決してさせない。例えあなたでも、まどかが生きることを邪魔するというのなら容赦はしないわ―――円環の理」
――――――――――――――――
鹿目家 まどかの部屋
さやか「さあさあやってまいりました。23時も30分を回ったところで、親や男子には言えないガールズトークの時間でございます」ヒソヒソ
杏子「いくら泊まらせてもらってるとはいえ誕生日会でやるもんでもねーだろ」
さやか「なに言ってんのよ。女子が集まったら時も場所も問わずコレでしょうよ。てか、大概の迷惑かからない遊びはやりきっちゃったし」
なぎさ「あのバイオリン男はどうしたのです?」
仁美「まどかさんのお父様と気が合ったみたいで、下の階でお喋りしていますわ」
マミ「ガールズトークとはいうけれど、なにを話すつもりなの?」
さやか「まあ、特には決まってないんだけどね」
マミ「となると...やっぱりまずは恋バナ?」
さやか「えっ、それいっちゃう?...このメンツで?」
マミ「...あっ」
杏子「あたしらみんな恋とは無縁な連中だしな。そこのお嬢様くらいしか話の種がなさすぎる」
なぎさ「惚気話は勘弁なのです。チーズのつまみにもなりゃしない」
杏子「チーズってむしろつまみじゃないか?」
なぎさ「チーズはメインディッシュなのです」
さやか「じゃあ、お題は『ここでしか言えない秘密の話』で!」
杏子「また唐突だなこりゃ」
さやか「順番はこのくじ引きで...さあ、引いた引いた!」
杏子「しょうがねえな...まどか、あんたから引きなよ」
仁美「そうですわ。今日の主役ですもの」
マミ(さりげなく最初に話すリスクを回避しようとしてるわね)
まどか「ウェヒヒ...それじゃあ」ガサガサ
―――――――――――――――――――
崖
ほむら(この辺り一帯には強力な防音用の結界を張ってある。だから外でいくらドンパチやろうと中に聞こえることはないし壊れない限りは被害も無い)
ほむら(けれど、彼女にかかればあんなものは紙切れ同然。彼女が結界に近づく前に片をつける)
ズズズ
ほむら(空間が歪む―――くるッ!)
ほむら「先手必勝!姿を現すと同時に、これで仕留める...言葉を発する暇も与えない!まずはバズーカ砲×500!」
まどか部屋
さやか「よーし、全員引いたね。それじゃいくよ、せーの」
マミ『1』
なぎさ『2』
杏子『3』
さやか『4』
仁美『5』
まどか『6』
さやか「はい、結果は以上となりました。じゃあまずはマミさん!」
マミ「秘密の話と言われても...あっ」
なぎさ「なにかあるのです?」
マミ「...実は、その、最近体重が少し増えちゃって...」モジモジ
さやか「おっといきなり乙女には強烈なものが」
マミ「原因はわからないのだけれど、何故だか胸の部分だけ少し苦しくなっちゃって...」
杏子(デカくなったんだな)
さやか(デカくなったんだ)
なぎさ(デカくなったのです)
まどか(大きくなったんだね)
仁美(大きくなったんですわ)
さやか「はい、じゃあ次はなぎさ」
マミ「えっ、もっとこうリアクションみたいなのは...」
さやか「マミさんのは弄るよりも羨ましさが勝っちゃうんで」
なぎさ「なぎさは特に隠していることなどないので...クラスの友達には話せないチーズの知識についてひとつ」コホン
なぎさ「カース・マルツゥを知っていますか」
さやか「次!」
―――――――――――――――
外
ほむら(駄目、バズーカだけじゃなくミサイルも全部使ったのに全く止まらない...!)
ほむら(私が裂いた時は、確かに概念的存在である彼女にも物理的手段が通じていた)
ほむら(だからこうして純粋な火力で勝負したのに...足りない...圧倒的火力不足...!)
ほむら「ならば...肉体勝負は得意ではないけれど、肉弾戦で無理にでも!!」
円環の理『......』
ほむら「根比べでは負けない...はあああああああ!!」
ガッ グシャッ
まどか宅
杏子「あたしか。なんかあったかな...あっ」
杏子「マミ。先に謝っとくわ。スマン」
マミ「え?」
杏子「実はさ、あたし、この街の半分くらいの飲食店からブラックリスト扱いされててさ」
まどか「ブラックリスト?」
杏子「食べ放題のある店で店のその日の食材を喰い尽くすのを繰り返してたらこの様ってわけよ」
杏子「で、本題なんだが、この前そのブラックリストになってたラーメン屋を通りかかった時にさ、どうしてもその店の餃子を喰いたくなった訳よ」
杏子「ただ、そのまま入っても追い返される可能性が高い。そこであたしは...」
マミ「...私の姿を借りたって訳ね」ピクピク
杏子「悪いと思ってるって。もうあんな真似はしないからさ」
マミ「...フーッ、まあやっちゃったものは仕方ないわね。ここで怒って鹿目さんの誕生日を台無しにしたくはないし」
マミ(けどあとでお仕置きは確定ね)
仁美「次はさやかさんの番ですわ」
さやか「あたしか。...この前さ、部屋の掃除をするついでに荷物の整理をしてたんだ」
さやか「そしたらさ、恭介に買ったCDの山が出てきたの。退院してから返されたのを忘れてたんだね。懐かしいなーと思いつつ枚数を数えてみたの。その結果...」
まどか「その結果?」
さやか「...3桁に突入したところで数えるのを止めました」
マミ「......」
なぎさ「......」
まどか「......」
仁美「......」
杏子「...ひくわー」
さやか「あたしもだよ...」
さやか「...さっ、仁美」
仁美「あっ、ハイ。私の秘密は...実は、最初は上条くんではなくさやかさんのことをお慕いしていましたの」
さやか「は?」
仁美「昔はみんな、身体の凹凸が少なく、特にさやかさんは言動も相まってよりいっそう男の子らしく見えてしまって」
仁美「それでいて女の子に抱き着いてまわるものですから、つい...」ポッ
さやか「おおう、なんという大胆な告白なことで...つか、まどかが今日の主役なのにあたしが一番ダメージがデカイってどういうことよ」
―――――――――
外
ゴゴゴゴゴ
円環の理『......』
ほむら「掴まえた、わ」
ほむら(どうにか彼女の腕にはロープを括りつけられた。けれど、こんなものはすぐに焼ききられてしまう―――その前に、これでケリをつける)ハァハァ
ドスッ
ほむら「ぅぶっ」
ドドドドド
ほむら(ボディーブローの連打...その一撃一撃が私を死へと近づけていく。とても救済の女神がやるようなことではないわね。魔法少女ではない私は救済の対象外。彼女もまた、脅威を排するのに手段は問わないということね)
ほむら(けれど、なにも殴られるために捕まえたんじゃない)
花火「」ヌッ
円環の理『!』
ほむら「この零距離からの打ち上げ花火なら――――!!」
カッ
―――――――――――――――――――
まどかの部屋
さやか「では大トリのまどか...どうぞ!」
まどか「え~っと...」
まどか「...今日の誕生日会、ものすごく楽しかった」
まどか「やってることは今までの誕生日会とそこまで変わらなかったんだけど、不思議なことに今年が一番楽しくて、嬉しかった」
まどか「なにが違うんだろって考えたら、簡単なことだった。みんながいてくれたから、こんなに楽しいんだって」
まどか「だから...」
ポロリ
さやか「まどか?」
――――――――――――――――
外
シュウウウ
円環の理『......』クルッ
ザッ
円環の理『...!』
ほむら「ま、だ、私は、生きている、わよ。あの子の、誕生日、が、終わる、まで、は、逃が、さない」ハァハァ
ほむら(どうにか丸太を支えにして立ち上がれたけど...これ以上...動くことも...)
円環の理『』ギリリ
ほむら(弓...マズイ...!)
――――――――――――
まどかの部屋
まどか「え?」ポロポロ
まどか「あ、あれ?可笑しいな、なんで涙が」グスッ
さやか「感涙するほど喜んでくれるなんて、お祝いしがいのあるってもんだよ。可愛いやつめ、このこの!」ナデナデ
仁美「眼福ですわ」
まどか(みんながいて、わたしの誕生日をお祝いしてくれる)
まどか(本当に嬉しいけど、どうして、涙が溢れてくるんだろう)
マミ「いいのよ鹿目さん。なんであれ、嬉しい時に泣くのは恥ずかしいことじゃないわ...ハンカチ、貸してあげる」
まどか「ありがとうマミさん」グスッ
まどか「...さやかちゃん、仁美ちゃん、マミさん、杏子ちゃん、上条君、ママ、パパ、タツヤ、それにほむらちゃんやみんな...」
まどか「15歳の誕生日、とっても楽しかった」
まどか「ありがとう―――みんな、大好きだよ」
カチリ
パ リ ン
まどか「ひっ!?」
杏子「窓が割れた!?」
ゴトン ゴロゴロ
なぎさ「なにか飛び込んできたのです!」
マミ「みんなひとまず離れて!」
仁美「あれは...黒い、球ですか?」
さやか「いや違う。あれは―――」
カラス型の使い魔「」ピクピク
まどか「...カラス?」
ドタドタ
詢子「なんだなにがあったんだ?」
上条「なにか割れる音がしたけど」
さやか「あぁ、いやなんかカラスみたいなのが窓を割ってきて...」
カラス型の使い魔「」ムクリ
なぎさ「立ち上がったのです」
カラス型の使い魔「カァー」バサッ
杏子「逃げていっちまった...なんだったんだあいつ?」
知久「そんなに気にすることでもないと思うよ」
知久「たまにあるんだ。普段は飛び慣れているはずの鳥が、なにかの拍子でああやって壁やガラスに激突することが」
マミ「そうなんですか」
詢子「とりあえず窓ガラスを掃除しておくとして...もう12時だ。あまりハシャぎすぎて夜更かししないようにな。睡眠不足は美容の大敵だからさ」
詢子「それと、部屋は別のところ空けとくから、今日はそっちで寝な」
一同「はーい」
杏子「そういや、まどかの話、『ここでしか言えない秘密の話』とは趣旨がズレてなかったか?」
さやか「んー、でも聞いてて嬉しかったからよしとしましょう」
まどか(なんだろう...いま、飛び込んできたのがカラスでもの凄くホッとしたような...)
―――――――――――――――――――
外
QB「いやあ凄かったね、円環の理は」
ほむら「......」
QB「まさか悪魔と化したきみがあそこまで手も足も出せなかったとは。彼女の力は僕の予想を遙かに上回るよ」
ほむら「......」
QB「あの力をもし制御できれば―――暁美ほむら、もう聞こえていないようだね」
QB「下半身を全部吹き飛ばされたんだからしょうがないか。せめて死体の残りかすから僅かにでもエネルギーを」
ガシッ
ほむら「」ギロリ
QB「なんだ生きてたのかい」
ほむら(どうにか凌げた、か)
ほむら(...右手は吹き飛んだ。全身の至るところに火傷、骨はほとんど折れて筋肉も大部分が断裂、たぶん内臓もほとんどが潰れてる上に下半身はあの光の矢に吞まれてしまった)
ほむら(悪魔とはいえベースは魔法少女だからこれでも助かってるけれど...咄嗟に丸太を盾にしなければ死んでいたわね)
ほむら(あれが円環の理...私の経験していない時間軸のまどかをも取り込んだ規模の存在...救済の力を、全て敵に向けたモノ)
ほむら(...あれだけやっても、円環の理にはまるで歯が立たなかった。...ワルプルギスの夜に一人で挑んだあの時の様に)
ほむら(悪魔だのなんだのと変身できても、最大の障害には無力も同然なのは変わらないのね)
ほむら(それでも、今回はまどかは生きている)
ほむら(生きて―――未来へと進むことができる)
ほむら「ねえ、まどか...昔の"私"、これで、私はようやくまどかを守れたことになるのかな」
今回はここまでです。
続きはまた後日。
翌日
ドールズ「モッテキタ」ドサッ
ほむら「そこに置いておきなさい」
ほむら(昨夜、円環の理はまどかの誕生日が終わると共に姿を消した)
「」モガモガ
ほむら(思い返せば、円環の理があと数秒来るのが早ければ、まどかは連れ戻され全てが終わっていたはず)
「」ウーンウーン
ほむら(いや、それ以前に誕生日の時間は24時間の期限がある。つまり10月3日を迎えた直後に取り戻しに来るのが合理的なはず)
「」フンガー
ほむら(それをしなかったのはなぜ...?)
ガバッ
さやか「なんでもいいから早く解けボケェ!」
ほむら「...うるさいわね美樹さやか。もう少し静かにしないと近所迷惑になるわ」
さやか「寝起きにいきなり変な子供に拉致られて騒がずにいられるか!」
ほむら「仕方ないでしょう。こうでもしなくちゃあなたが来てくれるとは思わないもの。部屋に泊まっていた子達に怪しまれないよう書置きは残しておいたから大丈夫よ」
さやか「あっ、そりゃお気遣いどうも...じゃなくて呼び出すにももっと方法が...って、あんたその身体!?」
ほむら「ええ。ほとんどなくなってるわね。一応再生は試みたけれどうまくいかなかったのよ」
さやか「なにがあったのかは知らないけどとりあえず診せてよ。多分粗方は治せるからさ」
ほむら「あらいいのかしら。私はあなたの忌み嫌う悪魔。そんな相手をホイホイと治そうなんて」
さやか「いやそういうのはいいから早くみせな」
ほむら「あっ、ハイ」
シュウウウ
さやか「うわー、酷いなコレ。あんたなにやってこんなことになったのさ」
ほむら「......」
さやか「答える必要はないわってやつ?まあ別にあたしとは仲良しじゃないし話したくないならいいんだけどさ」
ほむら「なら何故あなたは治すと即決したのかしら」
さやか「いや流石にあれだけヤバそうだったら放っておけないって。そもそも治してほしいから連れてきたんでしょ」
ほむら「...否定はしないわ」
さやか「ったく、素直に頼めばいいのに...よし。とりあえずあたしにできるのはここまでかな。形は元通りにしたから、後は数日すれば普通に動かせるはずだよ」
ほむら「...礼は言っておくわ」
さやか「おう。んじゃ、お大事に」スタスタ
さやか(そうだ。ついでに貸しを作っておくのも悪くないかも)つ携帯
ほむら「......」
ほむら(あれだけ敵対していた彼女でも、どんな相手であれ傷ついた者を放ってはおけない心はある)
ほむら(円環の理の一部である彼女がああなら、もしかしたら円環の理も人間部分のまどかがいなくてもそういうものなのかもしれない)
ほむら(まどかが後悔の無い最後の1日を迎えられるよう、限界まで誕生日を楽しませて...そんな彼女なりの優しさだったのかもしれない)
ほむら(だとしたら、今後の戦いに使えるかもしれない。その隙を突けば、もう彼女に遅れをとることも...)
ほむら「...こんな、人の気持ちに付け込むことでしか勝機を掴めない女に守られている世界なんて、あの子が知ったら幻滅するでしょうね」
ほむら(それでも、例え歪んだ想いだとしても、私は...!)
ピンポーン
ほむら(?誰かしら...美樹さやか?)
まどか『ほむらちゃん、起きてる?』
ほむら「まどか!?」
ガチャリ
ほむら「ど、どうしたのかしら」
まどか「えっとね、さっきさやかちゃんから『暁美ほむらが怪我して寂しがってるぞ~』ってメールがあって...」
ほむら(あの青魚...!)
ほむら「...大丈夫よ。私はこの通り平気だから」
まどか(確かさやかちゃんのメールでは...)
さやか『強がるだろうけどそこは無理にでも押し入ってやって。でないと寂しくて泣き叫んじゃうかもよ』
まどか(ってあったから...)
まどか「でも、お見舞いは駄目じゃないんだよね?」
ほむら「貴重な時間を割いてまで来る必要性はないわ」
まどか「今日は休日だから大丈夫だよ」
ほむら「え、えっと...」
ほむらの部屋
まどか「えへへ、お邪魔します」
ほむら(断る理由がないと押し切られちゃう私の馬鹿!)
まどか「お見舞いに林檎とみかん持ってきたけどどっちがいい?」
ほむら「...林檎で」
まどか「わかった。剥いてあげるからちょっと待っててね」
まどか「~♪」シャリシャリ
ほむら(...この際だから、昨日はなにも異常がなかったか確認しておきましょう)
ほむら「まどか。昨日の誕生日会はどうだったかしら」
まどか「すごく楽しかったよ」
ほむら「それはよかったわ」
まどか「ケーキを分ける時に杏子ちゃんが―――」
ほむら「相変わらずのくいしんぼさんね」
ほむら(まどかから聞く限りでは、特段不審な点はなかった)
まどか「プレゼントはマミさんがティーカップでなぎさちゃんがチーズセットで―――」
ほむら「彼女たちらしいわね」
ほむら(まどかの語る誕生日パーティーは、例年のように滞りなく行われていたことがありありと想像できて)
まどか「仁美ちゃんの大胆な告白にさやかちゃんが顔を真赤にしちゃって」
ほむら「今後のネタに使えそうね」
ほむら(特別だけれど当たり前のように訪れる日の光景がそこにはあった)
ほむら(...円環の理は、いつでもまどかの誕生日を中断させることができたはず)
ほむら(いや、そもそも円環の理は過去や未来も見通せる存在だった)
ほむら(もしかしたら、まどかと円環の理を裂いたあの時、彼女は不覚をとったのではなく、敢えてまどかを一時的に引き離したのかもしれない)
ほむら(私を利用して、ある程度人間としての生を謳歌したら元通りに戻す。それが兼ねてよりの彼女の狙いだったのかもしれない)
ほむら(もしそうだとしたら、私のしたことは...)
まどか「...昨日ね、寝る前にみんなにお祝いのお礼をしようと思ったの」
まどか「けどね、なぜだか涙があふれてきちゃって...その時はよくわかってなかったんだけど、いまならなんとなくわかる気がするの」
ほむら「え?」
まどか「多分、わたしは15歳の誕生日に憧れてたんだと思う。普通に年をとればやってくるのは分かってるんだけど、わたしはそれをずっと夢見てた...そんな気がするんだ」
ほむら「...!」
まどか「って、結局おかしなこと言ってるよね。ごめんね、なんだか変なこと言っちゃって」
ほむら「...いいえ。なにもおかしくなんてないわ」
ほむら(...そうだ。昨日は、まどかにとって訪れる筈の無い誕生日だったんだ)ジワァ
まどか「ほむらちゃん?」
ほむら「...ご、ごめんなさい。なんでもないわ」ゴシゴシ
ほむら(もしかしたら、私は円環の理の用意した舞台で踊らされているだけなのかもしれない)
ほむら「...まどか。少し目を瞑っててもらえるかしら」
まどか「?わかった」
ほむら(それでも構わない。例え好意を踏みにじった悪魔でも、糸に繋がれた傀儡だとしても)
パンッ
ほむら「まどか。目を開けて」
まどか「...!わぁっ、すごい!花束がこんなにたくさん!」
ほむら「今日だけの特別な手品よ。勿論、タネは明かさないわ」
ほむら(彼女が掴めなかった未来を守ることに躊躇うことはしない。折れることもしない)
ほむら「まだ誕生日のお祝いをしていなかったわね。少し遅れてしまったけれど、誕生日おめでとう、まどか」
まどか「ありがとう、ほむらちゃん!」ニコッ
ほむら(どれだけ間違った道を歩んでいようとも、彼女のこの笑顔だけは、作り物なんかじゃないと胸を張って言えるから)
終わり
終わりです
まど誕ssなのにだいぶ日にちが過ぎてしまった
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