吉良「はい。……もしもし、川尻ですが」メリーさん「私、メリーさん」 (24)

【川尻宅】

吉良「メリーさん? どちらさまですか?」

『今、亀友マーケットの屋上にいるの』

吉良「亀友……だと? 誰だね、君は?」

プツゥ~――

吉良「……切れたか」


「もぉう! 『行ってきます』くらい言ったらどうなのッ! 可愛くない子ね」バタンッ


しのぶ「あら、あなた。どうしたの?」

吉良「ああ、ただのいたずら電話みたいだ。まったく、朝っぱらから暇な輩もいるものだね」

しのぶ「え。ああ……そう。ほんと、迷惑よねぇ」

吉良「それじゃ、そろそろ出ないと会社に遅刻するから。行ってくる」

しのぶ「行ってらっしゃい、あなた」

バタンッ

しのぶ(いたずら電話?)

しのぶ(電話なんてあったかしら。ベルの音なんて聞こえなかったのだけど)

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【路上】

吉良(さきほどの電話、ただのいたずら電話だとは思うが)

吉良(気になる点がある)

吉良(『メリーさん』と名乗った女は『亀友マーケットの屋上にいる』と確かに言った)

吉良(亀友は私が『川尻浩作』に成り変わる前に、『吉良吉彰』として勤めていた会社だ)

吉良(私の正体を知っている何者かが、あえて『亀友』という言葉を口に出して、私の反応を窺った)

吉良(そういう可能性があるのではないか)

吉良(……いや、さすがに考えすぎか)

吉良「おっと、もうこんな時間か。本当に会社に遅刻するわけにはいかない」

吉良(川尻浩作のやつ、出世するために勤務態度は真面目だったらしいからな)

吉良(しばらく様子を見るか。また家にあの女から電話がかかってきたら、今度は捨て置けないがな)

【会社】

上司「川尻、手が空いたらこの書類を片付けておいてくれ。頼むよ」

吉良「承知しました」


プルルルルルッ プルルルルッ

吉良(電話だ。さきほど取引先の担当者が不在だったから、その折り返しか)

吉良「はい、OO社△△部□□係の川尻です」

『私、メリーさん』

吉良「!!」

『今あなたの家の前にいるの』

吉良「お前ッ! 何者だッ」

プツゥ~――

吉良(また切れたか)

吉良(同じ声だ。抑揚のない、単調な言葉。それでいて妙に耳に残るうすら寒い女の声)

吉良(やつは川尻の家の電話番号も会社の番号も知っている)

吉良(私のことを調べているッ!)

吉良(どこまで知っているんだ? 『メリー』とかいう女は私のことを)

吉良(仮に私の正体を……知っているとするならば)

上司「お、おい。どうした川尻! 急に大声を出しおって、クレーム電話か? それにしたって顧客に向かって『お前』とは――」

吉良「すみません。今日は朝から体調が優れませんで――今日のところは早退させてもらいます」ガタッ

上司「何だって?」

吉良「勝手な理由で仕事に穴をあけてしまい……たいへん心苦しいのですが……。この埋め合わせは必ずいたしますので。本当に……まことに申し訳ありません。失礼いたします」

スタスタ

上司「お、おいおい……」

部下「どうしたんです、川尻さん? もう外回りですか」

上司「いや、電話口で急に大声を上げたかと思ったら、体調不良で早退したいと。クレーム電話でもかかってきたのか?」

部下「電話ァ? 鳴ってたかなあ?」

【路上】


吉良(この吉良吉彰)

吉良(『植物の心』ように平穏で静かな暮らしを望んでいたのだが、あのクソッタレどものせいで私の日常は台無しにされてしまった)

吉良(これ以上、私の静かな暮らしを邪魔だてしようとする者は……必ず排除する)

ピピピピピピピピッ

吉良「! 携帯電話ッ」

吉良(どうする? 出るか? いや、あえて出ないか?)

カチィッ

吉良「なにッ!」

『私メリーさん』

『今あなたの会社の前にいるの』

プツゥ~――

吉良「………………」

吉良(私は今、通話ボタンを押していない。だのに、ボタンが『何者かに押されたかのように作動』して、勝手に『通話状態になった』)

吉良(そして聞こえたのは――やはりあの女の声)

吉良「うすうす感じてはいたが、これはただの電話じゃあないッ!」

吉良「スタンド攻撃だ。キラークイーン!」


KQ「――――――」┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨ ┣¨┣¨

吉良(幸い、周囲に人影は見当たらない)

吉良(こんな真っ昼間に屋外で戦うなど、私の本意ではない。だが、不確かながら敵意を表し、私の素性を何らかの方法で掴んでいる能力者となれば話は別だ)

吉良(『メリーさん』を名乗るあの女がスタンド使いなのか)

吉良(あるいは『メリーさん』自体がスタンドで、本体はどこか別の場所から遠隔操作をしているのか)

吉良(いずれにせよ、敵スタンドを捕捉できれば――このキラークイーンの能力をもってして、必ず始末する)

ジリ……

吉良(こちらから動く必要はない)

吉良(亀友、川尻家、会社前――敵スタンドは確実に私に向かって近づいてきている)

吉良(まるで怪談『メリーさんの電話』と同じようにな)

吉良(怪談の最後はどうなるのだったかな。諸説あったと思うが、オーソドックスなのは対象者の『死』)

吉良(私はどんなことがあろうとも、生き抜いてみせるぞ)


シィ――――――――――ン

吉良(どうした?)

吉良(最後の電話から5分ほど経つが、まだ次の電話は無い。私のスタンドに対して警戒しているのか)

ジリリリリッジリリリリッ

吉良「来た。携帯じゃあないッ」

吉良「どこだ? あれか! 無人の公衆電話がひとりでに鳴っている!」

吉良(いや、待て)

吉良(今まではすべて、私の手元にあった電話機に対して電話がかかってきていた)

吉良(今回は少し距離のある公衆電話。もしかしたらこれは誘導なのではないか?)

吉良(あの公衆電話の受話器を取れば、その行為が引き金となって私に対する何らかの攻撃が発動する)

吉良(そういう可能性があるならばッ!)

吉良「キラークイーン、500円玉を接触弾に変えて放てッ! 電話ボックスごと爆破しろッ!」


ドシュゥゥン!!

吉良「ふん」

吉良(電話に繰り返し出るという行為自体が相手のスタンド攻撃の発動条件だったのかも知れない)

吉良(ならば、公衆電話による通話を断ったことで敵スタンドの追尾を逃れたことになるか?)

『私、メリーさん』

吉良「ぬぅ!?」

『今コンビニ』ドォン!!

吉良「またしても携帯から音声が。着信音は鳴らなかった。携帯は放り投げて爆発させたが……」

吉良(どうやら……敵スタンドの追尾は途切れていない。公衆電話を消し去ることによって同じ行動パターンの連鎖を断った。それなのにまだ『メリーさん』はついてくる)

吉良(自動遠隔操作型のスタンドならば、ここまで臨機応変に対応することはできまい。だとすれば、いるはずだ……この近くに本体が)

吉良(やつの最後の電話。コンビニは…あるッ! 目と鼻の先にッ!)

吉良「シアーハートアタック!」


爆弾戦車「コッチヲ見ロォ~!」ギュゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ


吉良(本体は生身の人間。幸い今、コンビニの周りに人影はない。確実に近くに潜んでいる本体を――遠隔操作で爆発させる)

【コンビニの裏口】


コンビニ店員「プハァ~。休憩中のタバコはうめェぜ~」

爆弾戦車「コッチヲ見ロォ~!」


\BOMB!!/

吉良「手応えがあった――片付けたか」

プルルルルルップルルルルルッ

吉良「なにィ!?」

吉良「どこだ! どこから鳴っている! もう私の身近に電話機などないというのにッ……!!」

吉良「な……これは……左手ッ! 私の『左手』がまるで『電話機』のように鳴っているゥーッ!!」

『私、メリーさん』

『今コンビニ脇の小道にいるの』

プツゥ~――

吉良「ぐぅぅ! 左手が……ぐあああああッ!」グギギギギ

吉良(この激痛ッ! シアーハートアタックが攻撃を受けている……あの小僧の時のような重力攻撃か……?)

吉良(いや、違う。下へ押しつけられる圧迫じゃあないッ! 特殊な力で捻じ曲げているような……圧倒的な頑丈さを誇るシアーハートアタックを……どうやって……)

吉良「やつはッ……!」

吉良「私のシアーハートアタックを生け捕りにし!」

吉良「あまつさえ、シアーハートアタックを電話機に変えて私の左手に受信させたというのか……?」

吉良「これが敵スタンドの『能力』なのか……?」

プルルルルルルルッ

吉良「どこだ……今度はどこだ!」

プルルルルルルルップルルルルルルルッ
プルルルルルルルップルルルルルルルッ
プルルルルルルルップルルルルルルルッ
プルルルルルルルップルルルルルルルッ
プルルルルルルルップルルルルルルルッ

吉良「聞こえる! 聞こえてくる! そこらじゅうから……? 頭の中にッ!」

吉良「耳を塞いでも電話の音が……止らない――――――ッ」

吉良「ぐ……あああああああっ……!」

プルルルルルルルップルルルルルルルッ
プルルルルルルルップルルルルルルルッ
プルルルルルルルップルルルルルルルッ
プルルルルルルルップルルルルルルルッ
プルルルルルルルップルルルルルルルッ

吉良「おのれぇ……!!」

吉良「コンビニ脇……の……小道……ここか……お前は……ここにいるのかッ……!!」

【小道】

プルルルルルルルップルルルルルルルッ
プルルルルルルルップルルルルルルルッ
プルルルルルルルップルルルルルルルッ
プルルルルルルルップルルルルルルルッ
プルルルルルルルップルルルルルルルッ

吉良「どこだ……どこだァ……どこにいる……」ジャリ……ジャリ……

吉良「この……吉良吉影……」

吉良「ここまで愚弄された覚えはかつてないッ!」

プルルルルルルルップルルルルルルルッ
プルルルルルルルップルルルルルルルッ
プルルルルルルルップルルルルルルルッ
プルルルルルルルップルルルルルルルッ
プルルルルルルルップルルルルルルルッ

吉良「私は必ず勝つ! 私のこころの平穏を守るためにィ――――!」

吉良「お前は必ず殺す! 出て来い、メリィィィィィ――――!!」


カチッ

「私、メリーさん」


吉良「 ! ! ! 」





「今あなたの後ろにいるの」



吉良「キラークイーン!!」クルッ


ギュォォォォォォオオオオオオォォォォォォォォオオオオオオォォォ

吉良「な……何だこの無数の腕はァ!?」

吉良「キラークイーン! こいつらを爆破しろッ!!」

KQ「――――――」

ギュォォォォォォオオオオオオォォォォォォォォオオオオオオォォォ


鈴美「決して振り返ってはいけない小道」

鈴美「この小道で振り返ったものは――もう逃れることは叶わない。魂があの世へ引きずり込まれるわ」

鈴美「吉良吉彰」

吉良「私の名を知っているッ!!」

吉良「お前か! お前がァ! メリーかァ――――ッ!!」

鈴美「私はメリーなんて名前じゃあないわ。杉本鈴美よ。あんたは覚えていないでしょうけどね。15年前の一家惨殺事件のことを!」

吉良「15年前……? おま……えはッ……」

鈴美「さようなら、吉良吉影――『安心』など微塵もない暗黒の世界へ」

鈴美「もう二度と……この町の人びとが悲しい思いをしないように――」

吉良「うぐああああああああああああああああっ……!」ブチブチブチィッ!!

ギュォォォォォォオオオオオオォォォォォォォォオオオオオオォォォ


―――――――――――――――――
――――

【路上】

康一「鈴美さんがいってしまってから、もうひと月ですか。時間が経つのは早いですね」

露伴「まったくだ」

康一「鈴美さん、天国で元気にしていると良いですね」

露伴「……そうだな。と言っても、成仏した先に行きつくのが天国といえるような場所なのかは想像の域を出ないがね」

康一「もう、露伴先生は相変わらず素直じゃないですね」

露伴「彼女のことはぼくの中でも一応の整理はついたというわけだよ」

露伴「それよりも、一連の出来事において未だに気になって仕方ないのは、吉良を死地に追いやった存在の正体についてだ」

康一「『メリーさん』ですか。鈴美さんの話していた」

露伴「『メリーさん』はいったい何者だったのか。スタンド使いだったのか……あるいは」

康一「あの時、鈴美さんは吉良の斜め後ろにいて、吉良が『メリーさん』の声に反応して振り返ったところを見ていたんですよね」

露伴「ああ。立ち位置的には吉良の背後に鈴美さんがいて、さらにその後ろに『メリーさん』がいたことになる」

康一「鈴美さんは『メリーさん』の声は聞いたけれども、その姿を確認することはできなかった。なぜなら彼女も、あの小道では振り返るわけにはいかなかったから」

露伴「ああ、そういうことだ」

康一「じゃあ、吉良だけが『メリーさん』の正体を見たってことですね」

露伴「吉良は鈴美さんのことを『メリーさん』と勘違いしたと聞いている。それに、振り返れば直ちにあの世へ引き込まれる」

露伴「もし見ていたとしても一瞬だったろうし、気が動転していたようだったというから、視界には入っていたが認識はできなかったかもしれない。いずれにせよ、死人に口なしだ」

康一「でも、吉良が小道まで引き寄せられたお陰で、川尻浩作という会社員に成り済まして潜んでいたことが分かったわけですし。それはよかったですよね」

露伴「ああ。コンビニの中にいた客が、一人で奇妙な行動をとっているサラリーマンを目撃していたこと、そして吉良が小道に入って自ら名前を口にしてしまったことも含めてね」

露伴「出来過ぎなほど上手くいっている。もしほかの場所で『メリーさん』に殺されていれば、ぼくたちはこの杜王町で永遠に吉良の影を追い続けることになっていた」

康一「そうですね……」

仗助「よォ~、康一ィ! げ、露伴も一緒かよ」

億泰「今からメシ食いに行くところなんだけどよォ、康一も一緒に行かねーか?」

康一「仗助くん、億泰くん。そうだね、僕もちょうどお腹が空いてきたところだし」

露伴「ふん。ぼくに構うことはないよ。取材中に立ち話をしていただけだ。勝手に行くがいいさ」

康一「ええ、じゃあ勝手に行きますね。それじゃ、露伴さん。また」


露伴(『メリーさん』が吉良を狙ったのは偶然だったのか。それとも必然だったのか)

露伴(その真相も含めて、ぜひ一度会って取材してみたいものだね)

露伴(もっとも『メリーさん』と顔を合わせたときに、こっちが生きていればの話だが)

【上空】




吉廣「吉彰ェェェ~~~~~~! どこじゃ……どこにいるんじゃあ~ッ!」


ビュォォォォオオオオオォォォォオオオオオオオォォォ――――








プルルルルプルルルルプルルルルプルルルルプルルルル

――ガチャッ




『私、メリーさん 今あなたの後ろにいるの』

『かえして』




『 わ た し の て を か え し て 』




                                              (終)

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