surprise!世界中が初投稿です
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比奈先生が家に来る話です
荒木比奈「バイクと花火と握った手」
荒木比奈「バイクと花火と握った手」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1499702978/)
↑の続きのようなものですが読んでいなくても大丈夫です
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1504015070
墓場まで持っていくと、心に決めている秘密が私にはある。
その一、ペンネーム。
その二、原稿。
その三、…は、まだない。というか、出来ることならこれ以上は増えないでほしい。
―・―・―
季節の変わり目は体調を崩しやすい。だから体調管理にはより一層注意してくれ、と担当のプロデューサーさんに言われたのはつい先日のこと。
「プロデューサーさん、今日は体調不良でお休みです」
まあ季節の変わり目ですからね、とちひろさんは付け足し、私の『どうしてPさんがまだ出勤していないのか』という疑問に答えた。
「あー…そうっスか、分かりました。ありがとうございました」
私はちひろさんに礼を言って、部屋を後にした。言った本人が、という気持ちもある。けれども、彼のいつもの激務を見ている身からすると、まぁしょうがないなという気持ちや、むしろゆっくり休んでほしいという気持ちが湧いてくる。
「…体調不良っスか」
私の中にある考えが浮かんだ。そして背負ったリュックから様々なモノを取り出す。
財布の中を確認。大丈夫、今月はまだ無駄遣いしていない。今日のスケジュールを確認。大丈夫、レッスンだけ。時間を確認。これはちょっと正午を過ぎそう。
諸々のことを確認した後、よし、と一息入れてレッスン場に向かった。途中ばったり奈緒ちゃんと出会った。「なんでニヤってしてるの?」と尋ねられた。「これから色々やることがあるんスよ」と答えた。
今日のレッスンは、なぜかいつもよりも長いように感じた。きっと、楽しみにしていることが後に控えているからだろう。
―・―・―
高熱の時の夢は、どうしてこうも荒唐無稽で訳の分からないものなのか。
見上げている天井が、どんどんと落ちて来るような、押しつぶしてくるような錯覚。
今寝ている場所に穴が空いて、どんどんと落ちて行くような、閉じ込められていくような幻覚。
何度か経験しているから分かる。こういう夢の後、目覚めたとき、俺は汗だくになっているだろう。
◆◇◆
「…あ゛ー」
ふらふらと痛む頭を抱えながら体を起こす。案の定汗だくになっていた。濡れた半袖のTシャツの感触が心地悪い。
体を動かすのもダルい。空腹だけど、何か食べ物を冷蔵庫まで取りに行くのもおっくうだ。まったく、かなりひどい状況になっている。先日、比奈に忠告したことを思い出すと同時に自分の事がバカらしくなる。
「…どの口が言えたことだよ」
頭を抱えた。頭が痛いからだけではない。気をつけろと偉そうに講釈垂れた張本人がこんな有様になっていることへの情けなさも、頭を抱える要因だ。
「…………はぁ」
『咳をしても一人』ではないけれど、独り言だけが虚しく口をつく。一人暮らしの弊害というか、こういうときに誰かがいないのは心寂しいし、やはり不便だ。病院行くにも、必要なものを買いに行くのも一苦労してしまう。
こういうとき、誰かがいてくれたらこの心細さも軽減されるのだろうか。そんなことを考えているときだった。
ピンポン、チャイムの音。誰か来たようだ。宅急便か?しかし、ここ最近は何かを注文した覚えなんかない。だったら実家かどこかから何かが送られてきたのだろうか。それとも、そもそも宅配なんかじゃなくて例のあの放送局か?
「あぁーい…」
うだうだと考えても仕方がないので、最低限身だしなみを整え玄関へ向かう。その間に二回目のチャイムの音が響いた。すいません、今こんな状態なんで遅れますと心の中で謝りながら鍵を開ける。
「…比奈?」
「ども。お見舞いに来たっスよ」
そこには全く想定に入れてもいなかった人間が、レジ袋を片手に立っていた。
今日はここまです、続きはまた
本当は初投稿じゃないんです、許してください
再開します
短めだけどお兄さん許して
◆◇◆
目の前の彼は、私の急な来訪に驚いている。
「な、なんで…」
「ちひろさんに聞いたんスよ、『具合悪い』って。で、お見舞いにと」
私は手に持ったレジ袋を持ち上げ、彼に見せつける。これは先ほどドラッグストアで諸々と購入したものだ。
「とりあえず、お邪魔します」
戸惑っている彼を横目に、私は家に上がり込んだ。
彼をベッドに寝かせ、おでこに冷却シートを貼り付ける。
「ぁあ゛~…ありがとう…」
とても気持ち良さそうだ。私も作業中に何度もお世話になっているからその気持ちよさは分かるし、貼り付けた瞬間のひんやり感に敵うものはないとも思っている。
「熱はどのくらいあるんスか?」
ふと彼の枕元の体温計が目に入り、さっき少し体に触れたときから気になってた疑問を投げかける。
「…37度くらい」
「本当は?」
「………8度5分」
「やっぱり」
「…ごめん」
「気なんか遣わないでほしいっスよ」
「…ごめん」
「謝らないでもほしいっス」
全くこの人は。この人のことだから、強がりとかじゃなくて私を心配させまいと言った嘘だろうけれども、そう言う無粋なことはしてほしくない。仕返しにと、私は彼のほっぺたをぷにっと指先で押す。
ぷにぷにぷにぷに。やってみると意外と楽しいことが分かった。ハマりそう。
「あの…比奈…そろそろ…」
彼に言われて、つつきすぎたと気づいた。人差し指をほっぺたから離し、ごほんとわざとらしく咳をする。
「…で、何かしてほしいこととかないっスか?」
「何か…」
「遠慮とかはなしで」
さっきみたいに気を遣われても困るので、先手を打ち、条件付きで彼にしてほしいことを尋ねた。彼は少しだけ思考を巡らせ、答えてくれた。
「……お腹が空きました」
どうしてか、敬語だった。
「食べ物っスね」
彼の要望を受けた私は、レジ袋から三つのゼリーカップを取り出し彼に見せる。
「みかん、パイン、イチゴ、どれがいいっスか?」
いつもおやつ用に買っているものより少しだけ贅沢したゼリー三つ。彼は三つを右から左へ、左から右へ見比べ、
「みかんで…」
と答えた。
「分かりました、ちょっと待ってください」
私はみかんを寝床の縁に置き、パインとイチゴのカップを持ち冷蔵庫へ向かった。冷蔵庫に二つのゼリーを入れて、その足でスプーンを食器棚から拝借する。ついでにコップも借りた。かなり汗をかいていたし、水分補給もしなければならないだろう。幸い、スポーツドリンクも買ってきてる。
「お待たせしました」
スプーンとコップを片手ずつ携え、再び彼が寝ている場所へ。まだフィルムを剥がしていないみかんゼリーの上にスプーンを置き、スポーツドリンクをレジ袋の中から取り出す。キャップを外して注いで、彼に差し出す…前に、ゼリーがなくなってることに気がついた。
「…いただきます」
彼の方を見ると、フィルムを既に剥がし終えていて、合掌し、ゼリーを少しずつ口に運ぶ彼の姿がそこにあった。カップの上にスプーンを置いたから「これでどうぞ」と言う意味に捉えたのだろうか。
私はスポーツドリンクを注いだコップを、零れないように手に持って、彼の食事姿を眺める。空腹だったのか、少しずつではあるけれどもがっつくように食べる彼。その姿を見るだけで、なぜか嬉しかった。
出来れば「あーん」ってしたかったけど、それはまた今度の機会にと言うことで。今はこの食事する姿だけで、私は十分。
食べ終えたあとの容器とスプーンを受け取り、スポーツドリンクの入ったコップを手渡す。のどを鳴らしてスポーツドリンクを飲む様を見ると、やはりキツかったみたいで。一気飲みに近い形で飲み干した。
「…ごちそうさま、ありがとう」
「いえいえ、まだ他にご要望はないっスか?」
コップを受け取りながら二回目の質問を投げかける。
「着替えと…タオルを持ってきてくれないかな?」
「分かりました」
彼もお願いすることに慣れてきたのか、さっきまでよりもあっさりとしてほしいことを教えてくれた。カップをゴミ箱に、コップとスプーンを台所に持って行き、タオルと衣服のあるタンスへ向かった。
しかしここで想定外のことが。いや、衣服が見つからなかったことじゃなくて、というかそれ以外のものが見つかったというか何というか。
「あ…」
タオルを一枚取り出すと、その下から本が、大人になってからでしか買えないような本が、顔を見せた。
「あちゃぁ…」
見てしまった。見つけてしまった。
とても大きな罪悪感が、私にやってきた。
今日はここまで、続きはまた
みかんゼリーじゃなくてオレンジゼリーにすればよかった
再開します
ダディヤーナザン!?ナズェキテルンディス!
タオルは二つに分かれて積まれていて、左のブロックはタオルだけが積まれて収納してあったけど、右のブロックは一番上だけがタオルで、それから下は全部「そういう本」だった。
『For Adult Only』の文字が躍る、ピンクと肌色の比率が大きい表紙の本が目に飛び込む。
「どうしよう…」
私はコレを見つけたことを後悔した。こういうものを持っているからって、彼を軽蔑なんかしたりしない。男性である以上、こういう本は持っているだろうとある程度想像はついていた。
問題は、見つけてしまったこと。私も似たようなものを持っているから分かる。絶対に他人に見られたくないもの。それが他人に見られたと分かれば最後、待ち受けるのは絶望。
それにしては、隠し場所がわかりやすいような…男の人って皆そうなのだろうか?
まあともかく。私はこれは見つけてしまったと正直に言わない方がいいだろう。私はタオルをその本の上に置き直し、左の積み上げられたタオルから一枚とり、タンスを閉じた。
ふぅ、と一息つく。よし、これで私は何も見ていない。
「…」
立ったまま、少しだけ考え事をしてしまった。
今年の夏のこと。
私が告白して、彼がそれを受け入れて、アイドルとプロデューサーでありながら、一応私達は恋人同士、の関係になった。
だけど。
二ヶ月は経ちそうになっているけれど、そういうことは一切していない。と言うか、そういうことはおろか、キスもしたことがない。あるのは手をつないだことと、一緒のバイクに乗ったこと、一緒に花火と星を見たこと。
彼も、恋人であってもプロデューサーだから、そういうことは一切、話題にも出さない。…いささかプラトニックが過ぎる気がする。でも私だって、今やアイドルの端くれ。納得できなくても納得して、我慢したくなくても我慢しなければならないことがある。
これでいいんだ、と私は一人心の中で呟き、勝手に納得した。
でも、本当は………。
ううん、これ以上は考えないでおこう。彼が待ってる。私は着替え一式と、ちゃんと左側から取り出したタオルを持って彼の元に戻った。
「お待たせしま…」
しかし、アレを見つけてしまい、考え事をして、少し時間をかけ過ぎてしまったのか。
彼は眠ってしまっていた。
◆◇◆
比奈に頼み事してからしばらくして。口の中には、さっきのみかんゼリーの味が少しだけ残っていた。
してほしいことを聞いた後、比奈は今タオルと着替えを取りに行っている。こうも至れり尽くせりだとなんだか申し訳ない。今度何か埋め合わせをしよう。
…何だろう。俺は何か大切なことを見落としている気がする。取り返しのつかないことをしてしまったような、でもそれに気がついていないような。
頭が働かない。何だろう、何だろうと痛む頭を働かせるが思い出せない。体調不良の時はどうも、こうなってしまっていけない。
頭をひねっていると、気づかないうちに視界がどんどん暗くなって、狭くなってきた。こくりこくりと頭を降り始める。さっきまで寝ていたと言うのに、睡魔が襲いかかってきた。
どうしよう、このままだと寝てしまう。せっかく比奈が来てくれているというのに。せめて比奈が着替えを持ってきてくれるまでは耐えなければ。この感触の悪いTシャツを脱がなければならないし、なにより比奈にお礼を言いたい。
でこの冷却シートを押さえつけるように触れる。ふらり、ふらり、こくり、こくりと頭を振りながら睡魔と戦う。
耐えろ俺、がんばれ俺、がんばれがんばれ。まだだ、まだ。眠るわけにはいかな
◆◇◆
彼はすぅすぅと寝息を立てて寝ている。近づいてのぞき込むと、首元に汗をかいていた。私はそれを持ってきたタオルで拭う。
「…ぅ…ぅん…」
汗を拭われた彼は少しだけ声を出した。なかなかに苦しそうだ。私はとりあえず拭けるところの汗を拭く。
…しかしまぁ、何というか、こう弱った彼というのは新鮮かもしれない。汗を拭きながら私はそんなことを考えていた。事務所ではいつも健康で、こんな姿を彼は一切見せない。
ギャップ萌え、のようなものなのだろうか。いつもの元気な姿とは違った彼の姿を、少し胸を高鳴らせながら私は見続ける。
不意に彼の唇が視界に入る。何でだろう、錯覚か何かじゃなくて、本当にそこに引き寄せられるような。
さっき見つけた本のことが頭をよぎった。あういうこともキスもしてないなと考えたことを思い出す。
どうしてだろう。こういうことはしない方が良いって、ダメだと納得して、分かっているのに、我慢できなくなって。自分の意志ははっきりとしているのに、その動きを止めようとせず、体は勝手にそこを目がけて進む。
彼の口元へ。
引き寄せられるように、近づいて、近づいて、触れるくらい近くなって。
そこからまた、近づいて。
彼の寝息が、少しの間止まった。
◆◇◆
高熱の時の夢は、やっぱり荒唐無稽でぶっ飛んでる。
天井は押しつぶしてこなかったし、寝床に穴も空かなかった。
ただ、比奈の顔が、今までで一番近くにあるように感じられた。自分の顔の一部と、比奈の顔の同じ場所がふれあうような夢を見てしまった。
やけにリアルな夢だった。どうしてこんな夢を見てしまったのだろう。
罪悪感と共に目を覚ます。比奈はすでにいなかった。寝床の縁に置き手紙があったので、それに目を通す。
『食べ物と飲み物は冷蔵庫の中に入れておきました。お大事に。 比奈』
急いでいたのか、走り書きの文字だった。置き手紙を読み終えた後は冷蔵庫まで体を運び、中を確認する。ゼリー、栄養ドリンク、スポーツドリンク、その他いろいろなものが入っていた。
…本当にありがたい。そして申し訳ない。これだけでも結構な出費だったろうに。今度のお礼は、とても大きなものにしなければ。
体の調子はというと、かなりよくなっていた。これも比奈のおかげかな。俺はさっき選ばなかったパインのゼリーを取り出す。よく冷えて美味しそうだ。
「いただきます」
がっつくようにゼリーを口に運ぶ。食欲も戻っている。すぐに食べ終え、物足りずイチゴの方も取り出し食べてしまった。
「…シャワー浴びよ」
汗がしみこんだシャツを脱ぎながら風呂場へ向かう。着替え一式、そして左側から取り出したタオルを用意して浴室に入る。
さっき、寝る直前に気にかかってたことが頭をよぎった。でも。やっぱり思い出せなかった。こういうときはもうさっぱりと気にしない方が良いだろう。
それよりも、夢の内容の方が気になっていた。あそこまでリアルな夢は中々ない。匂いや感触も思い返すことが出来る。本当に珍しい。
「…柔らかかったな」
しかし、あまりこういうことを思い返すのもよくないだろう。比奈に申し訳が立たない。この夢は、記憶の奥底に封印することにした。
明日のことに目を向けて気を紛らすことにしよう。今日一日休んでしまった分、明日は少し頑張らなければならないし。
◆◇◆
早足で私は自宅を目指す。彼の家を逃げるように飛び出してから、ずっと心が落ち着かない。
「どうしてあんなことを…」
自分の唇を指先でおさえながら、後悔する。あの本達を見つけたときよりも深い後悔。本の発見は、不慮の事故のようなものだけど、『アレ』は防ぎようのあったことだ。その事実がまた深く私の後悔に拍車をかける。
しかし私は愚かにも、さっきのことをちょくちょく思い出しては頬を綻ばせている。これも私の意志とは関係なく、勝手に私がやっていることで。さっきから思い出さないように心がけているものを、よせば良いのに何度も脳内で再生している。そしてまたにへらと笑って…
何をやっているんだ私は。多分、今が人生で一番自分で自分を信用出来ないときだ。
大丈夫だろうか。すれ違った人たちに変に思われてないだろうか。顔は赤くなっていないだろうか。
「…明日、どんな顔して会えばいいんスかね…」
自らまいた問題の種を思い悩ませながら、私は帰宅した。そのままベッドに直行して、体をベッドの上に投げる。
「はぁ…」
嬉しさと、後悔の混じったため息を零しながら、私は枕に顔を埋めた。眼鏡は先に外しておいたから、思う存分枕に顔を押しつけることが出来る。今日はもうこのまま寝てしまおうかとさえ思った。
でも明日になると顔を合わせないといけなくなって…
「うあ~~~~~~!うぅ~~~!」
枕に顔を埋めたまま、うめいてしまった。本当に、明日どうしよう。
この日、墓場まで持っていくと、心に決めている秘密が増えてしまった。
その一、ペンネーム。
その二、原稿。
その三、今日のこと。
…でも三つ目だけは、いつか、ついうっかり彼に言ってしまいそうだ。それこそ、私がそうしようとは思っていなくても。
~終わり~
ここまでです、ありがとうございました
元ネタはBUMP OF CHICKENさんの「ラフ・メイカー」のつもりでした
な…待つのだ!偉大なる私のジュエルをこの世から消してはならない!!ま、待ってくれ!!落ち着け!!やめろ!!
《イッテイーヨ!!》
うわあああ…あああああああ!!
《フルスロットル!!》
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!
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