比奈「飛ぶ事の意味」 (19)
どうして鳥は飛べるの?
どうして僕は違うの?
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昼下がり、遅めのお昼ご飯を買いに描き掛けの原稿を置き去りにコンビニへ向かった。
夏は嫌いだ陽射しが強く蒸し蒸しして基本ジャージの私には辛い。
ダラダラとした足取りでコンビニに到着、自動ドアが開き涼しい風が私の頬を撫でる。
「うひゃー」
入店音に紛らわせ小さく声を漏らした。
暑い場所から涼しい空間に入る瞬間が堪らなく気持ち良い、自宅の扇風機だけの生温い空気とは段違いである。
(偶にはしっかり食べるっスかねぇ)
そう思い幕の内弁当を手に取る、隣のサラダうどんに気が揺らいだが最近は麺ばかりだったのでズボラな私もさすがに不味いと思いそのままレジに進んだ。
会計を済ませて外に出ると今度は逆にジトジトした熱風が吹き付ける。
それと同時にスーツの男性が横切り店内に入って行く、夏なのにスーツなんてリーマンは大変っスねーなんて呑気に思いつつ家を目指し歩き始めた瞬間
「あの!」
後ろから不意に声を掛けられる。
振り向くとそこにはさっき私を横切った男性、その男性は私の返答を待たずに次の言葉を発した。
「アイドルに興味ありませんか?」
「はぁ、え?」
こうして私と言う雛は殻を破り今、空を目指し始める。
屈託のない笑顔なら良いが、なんでだか上手くいかないMy Venus
一体いつ飛ぶ時が来る?何時か何時かと息が狂う
話し掛けてきた男性はあのシンデレラプロダクションのプロデューサーだった。
なんで私?と思ったがどうやらプロデューサーから見たら私には魅力が有るらしい、私自身も知らない魅力、気付けてない魅力、でも決め手は最後の可愛い、綺麗な衣装の話だった。
次の日から私の生活が少し変わった。
事務所に行きテレビでよく見るアイドル達に会い、宣材写真を撮り、レッスンをして、正直私はワクワクしていたこれからどのような大空を翔るのかと。
雛は大きく大きく育って翼を手に入れた!
でも!!!
でも!!
でも!
でも…
空は飛べなかった
私は翼を手に入れたけどそれはそれは飛べない翼、私はペンギンだった。
勇気出ないよ怖すぎて震えるそれでも誰より飛び込みたい
吹っ切れないけどやって後悔さ飛ぶ事の意味に恋をした
デビューして少し経つ位から私はLIVEバトルに負けてばかりだった。
最初はまだまだこれからなんて自分に言い聞かせてたけど最近ではアイドルをやるのが億劫だ。
しかしプロデューサーだけは違った。
何時までも私を励まし相談にも乗ってくれた。
そして私はプロデューサーに話した。
私には大空を翔る翼が無いんだと、でもプロデューサーはそれは違うと言った。
何で?私のは羽の生えてない翼なのに?
違う。
「じゃあどうすれば良いか教えて欲しいっス!!」
私は大声で泣いた。
人生でここまで悔しいと思ったのは初めてだから。
「勇気を持つんだ、恥ずかしがらずに、勇気を出して踏み出すんだ」
そう言って私の眼鏡を外した。
「ほら、可愛い顔が台無しだぞ?比奈の笑顔はな凄く可愛いんだ、だから俺に、いや皆にその可愛い笑顔を見せてくれ」
「誰も気付かない自分の背中の翼にそれじゃどう頑張ってみたって浮かない」
「だから俺が翼を見つけよう、見つける手伝いをしよう、だから失敗を恐れず勇気を持って踏み出そう」
そう言って私の涙を拭き取る、本当にこの人は卑怯だ。
「ふふっ本当、ホストに転職した方が良いんじゃないっスか?」
不思議と笑みが溢れる。
「じゃあしっかり私が飛べるまで導いてくださいっス!」
何もしないで只々立ってた氷蹴り出すファーストペンギン
今や見違える位にFly Away雲の上より高く高く飛んでる
私は何事にも恐れずに頑張った、どんなに失敗しても何度挫けそうになってもあの人が支えてくれたから。
そして今日、私は人生で一番の大舞台を迎える。
「皆ー!今日は来てくれてありがとうっス!」
キャーヒナチャーン!
アラキセンセーイ??
エメラルドスプラッシュ??
「今日!最後の曲になるっス!聞いてください!」
「飛ぶ事の意味!」
どうして空は青いの?
どうして君は飛びたいの?
おいで空泳いでみよう今から!
おしまい
なんか地の文ばかりになってしまった…
えぇっとこの作品はらっぷびとさんの飛ぶ事の意味と言う歌を題材に舞台と言う空に飛ぶ的な比喩的解釈で書きました。
御眼汚し失礼しました。
申請してきます。
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