提督「妙高と初風のいる生活」 (59)
E-2で初風がやっと来てくれました!
一応『提督「妙高は空を見る」』、『提督「妙高との新婚生活」』と世界観を共有しています。
妙高とケッコンしていることだけわかっていれば大丈夫です。
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提督(今日、うちに初風が着任するという報を得たときから鎮守府はお祭り騒ぎだった)
『着任』
妙高「ついに、ついに初風ちゃんが着任しますよ!」
提督「少しは落ち着け、いつもの冷静さはどこにいったんだよ」
羽黒「新しい子か、仲良くできるかな……」
提督「羽黒は心配性だな」
那智「そうだ、羽黒は駆逐艦たちに好かれるからいいじゃないか……」
提督「那智はいつも最初、怖そうって駆逐艦に避けられるもんな」
足柄「私は別に心配してないわ」
提督「足柄は平常運行だな」
提督「というか秘書艦の妙高はわかるけどなんで他の三人はいるのかい?」
那智「流石にこんな姉さんを放って置けなくてな」
提督「その気持ちは良くわかる」
足柄「なんか面白そうだから」
提督「ようするに野次馬か」
羽黒「足柄姉さんに無理やりつれてこられました」
提督「いつも通りだな、可哀想に……」
提督「とりあえず妙高はいち早く落ち着く努力をしときなさい。那智は今日限定で第二秘書艦に、足柄はすみっこでおとなしく、羽黒は足柄を見張ってて」
足柄「ちょっと、私の扱いが雑だわ」
羽黒「まあまあ、姉さん。あんまり人が多いと初風ちゃんが萎縮しちゃいますし」
妙高「ひっひっふー、ひっひっふー。はい、落ち着きました」
那智「それは落ち着いていない証拠では……」
コンコン
大淀「初風ちゃんをお連れしました」
提督「おお、入ってくれ」
初風「ただ今着任いたしました、陽炎型7番艦、初風です」
提督「そう固くならなくていい。君の事は妙高から聞いているよ」
妙高「いらっしゃい、初風ちゃん」
初風「妙高姉さん!」
提督「鎮守府へようこそ。これからの活躍を期待しているよ」
初風「はい!」
『二人の関係1』
提督「妙高から聞いたが妙高と初風は訓練所で一緒だったのか」
初風「はい、妙高姉さん……あ、妙高さんが私の教育係でした」
提督「いつも通りでかまわないよ」
妙高「そうですよ。なんならたまに言っていたお姉ちゃんでもいいですよ」
初風「あーあーあー!」
提督「なんだ、艦のころの記憶から二人の関係性を少し憂いていたが問題なさそうだな」
妙高「ふふ、だから要らぬ心配だと言っていましたのに、信用しないから」
提督「妙高はなんだかんだでずれてるとこがあるからな。なあ、初風」
初風「えっと……」
妙高「あら、ひどい言われようですね。そんなことないですよね。ねえ、初風ちゃん」
初風「えっと……えっと……」
那智「二人とも新人をからかうのはやめないか」
足柄「ほんとほんと、妙なところで息ぴったりなんだから」
初風「か、からかわれてたんですか!」
羽黒「ごめんね、初風ちゃん。ほら、二人とも謝って下さい」
提督「すみませんでした」
妙高「ふふ、ごめんなさい」
初風「妙高姉さん少し会わない間に変わりました?」
妙高「そうだとしたら提督から悪い影響を受けているのが原因ですね」
提督「俺のせいにするな」
『二人の関係2』
妙高「あら、初風ちゃん。今暇かしら」
初風「はい、暇です」
妙高「ちょうどよかったわ。一緒に間宮に行かない?ちょうど用があるの」
初風「ご一緒させていただきます」
妙高「それじゃあ行きましょう」
初風「間宮に用事ってどんなことですか?」
妙高「提督がね……冷たいお菓子が食べたいけど間宮に行くのは恥ずかしいってお使いを頼まれて。余計に間宮券を取ってきたから一緒に食べてくれる人をちょうど探してたのよ」
初風「ははは……提督さんの見方が変わりそうです」
妙高「全くあの人は変なところでこどもっぽいんだから。……普段はちゃんとしている人なんですよ」
初風「あの、妙高姉さんは提督とケッコンしているんですよね」
妙高「そうですけど、どうかしました?」
初風「手紙で聞いていたのですが直接言っていないと思って、妙高姉さん、提督。ごケッコンおめでとうございます」
妙高「あら、ありがとう。初風ちゃんに祝ってもらえて嬉しいわ」
初風「なんかいいですよね……ケッコンって」
妙高「……そうね。いいものですよ」
初風「あ、つきましたよ」
妙高「なんでも好きなもの注文してもいいわよ。なんせ間宮券ならたくさんあるのだから」
初風「はい、たくさんいいものがあって目移りしちゃう」
妙高「じゃあ全部頼んで二人で半分こしましょう」
初風「はい!それがいいですね」
提督「……でだ。俺のことを放置した挙句全部の間宮券を使ってしまったと」
妙高「すみません」
初風「ごめんなさい」
『執務室でのやりとり』
提督「暑い……どうしてこんなに暑いんだ」
妙高「夏だからですよ」
提督「くそ、こんなに暑いとなにもやる気がでない」
妙高「冬は冬で寒いからやる気がでないって言ってましたよ」
提督「春と秋は頑張っていただろ」
妙高「そこまで頑張っていなかったような……」
提督「なあ、提案があるんだがいいか」
妙高「なにか良からぬことを思いつきましたね」
提督「鎮守府もクールビズにするべきだと思うんだ」
妙高「具体的には?」
提督「提督も含めて全員水着」
妙高「……はぁ」
提督「せめてなにか言ってもらえませんかね」
妙高「いや、夏の暑さにやられてしまったのかと」
提督「いや、だって一部の子達はもうすでに水着じゃん。だからいっそ全員水着にして俺も水着になったら少しは涼しくなるかと」
妙高「本音は?」
提督「妙高の水着がみたいです」
妙高「……はぁ」
提督「その目線で涼しくなりそうです」
妙高「じゃあしばらくこの目で接しましょうか?」
提督「そんなことしたら俺は死んでしまう」
妙高「……まったく、仕方ない人ですね」
提督「え、見せてくれるのか?」
妙高「今度のお休みが被った日に目の前の海岸にでも行きましょうか」
提督「……ありがとうございます。ありがとうございます」
妙高「本当に調子いいんですから」
『前夜』
妙高「ねえ、あなた」
提督「どうした?」
妙高「いえ……、なんでもありません」
提督「そうか……」
妙高「はい……」
提督「なあ、おまえさんや」
妙高「どうしました?」
提督「いや……、なんでもない」
妙高「変な人」
提督「それはあんたもでしょ」
妙高「ふふ……」
提督「はは……」
提督「なあ、明日の夜。散歩にでもでないか?」
妙高「……はい。晴れるといいですね」
提督「星が綺麗に見えるといいな」
『星月夜だから』
提督「ちょうどよく晴れてくれたな。今日はいい天気だ」
妙高「満天の星空です」
提督「去年の今日もこんな日だったな」
妙高「はい、まるで昨日のことのように思い出せます」
提督「一年という歳月は長いようで短かったな」
妙高「それほど密度が濃かったということですよ」
提督「夏も、秋も、冬も春も。思い出にはいつも隣にお前がいてくれたな」
妙高「ええ、私の記憶にもあなたがいらっしゃいますよ」
提督「俺はお前とケッコンできて本当によかったと思うよ」
妙高「ありがとうごさいます」
提督「だからさ……。これを受け取って欲しい」
妙高「これは……指輪ですか」
提督「ああ、俺と結婚してください」
妙高「……はい」
提督「去年に比べてずいぶん落ち着いてるじゃないか」
妙高「あなたこそ」
提督「受け取ってもらえるとほぼ確信してたからな」
妙高「あなたと添い遂げる覚悟は出来ていますから。これからも、ずっと……」
提督「……ありがたいことだ」
妙高「月が綺麗ですね」
提督「ああ、死んでもいい」
妙高「それは困ります」
提督「誘導尋問だったじゃないか」
妙高「ロマンチックなセリフは嫌いなんじゃなかったんですか?」
提督「今日ぐらいいいだろう」
妙高「今日ぐらいはいいのかもしれませんね」
提督「さあ、そろそろ戻ろうか」
妙高「少しだけ待ってください」
提督「どうした?」
妙高「夏の夜の紫玉の中にやすらへり白鷺のごと美くしき月」
提督「綺麗だな。誰の詩だ?」
妙高「与謝野晶子さんです。もう少しだけ月を見ていたくて」
提督「お前は本当に好きなんだな」
妙高「ええ、艦の記憶では空はこんなに穏やかに眺めていられるものではなかったですから」
提督「そうか。次は平和な海も手に入れないとだな」
妙高「はい、いつか必ず」
提督「約束するよ」
瑞鳳「卵焼き」
翔鶴「ワイン」
瑞鶴「七面鳥」
鳳翔「空母部隊からのお祝いです」
『終わり』
提督「ああ……ああ……」
妙高「大体予想がつきますけど奥さんなので一応聞いてあげます。そんなに頭抱えてどうしたのですか?」
提督「ありがとう。ついに……ついに恐れていた事態になってしまった」
妙高「なんでしょうか?」
提督「今日は8月31日だ。夏が終わってしまう」
妙高「暦の上ではとっくに終わってますよ」
提督「そんな昔に勝手に決めた時代錯誤の暦なんてあてにならん」
妙高「勝手に決めたわけではないと思いますが……。それなら気温を当てにするならまだまだ夏ですよ」
提督「違うのだ。8月31日が区切りなのだ。夏休みもそうだっただろう」
妙高「今の子は25日辺りから学校が始まるみたいですよ」
提督「……可哀想」
妙高「その代わり教室にクーラーがついてたりするそうですよ」
提督「可哀想じゃないな」
妙高「まあ言いたいことはわかりました。夏が終わることを憂いているのですね」
提督「辛い」
妙高「秋も秋で楽しいことがありますよ」
提督「夏は特別なんだよ!」
妙高「なにが特別なんですか?」
提督「夏が終わるときは線香花火を見ているときのように、あるいはヒグラシの声を聴いているときのように胸が締め付けられるんだ」
妙高「夏らしいワード並べて同情を誘っても無意味です」
提督「時間は斯くも残酷に過ぎ去っていくものなんだな」
妙高「少年時代でも流しますか?」
提督「それだけはやめてくれ」
『そしてはじまり』
提督「今日も元気にお仕事頑張っちゃうぞー」
初風「なんか今日の提督のテンション高くないですか?昨日は世界の終わりみたいな顔してたのに」
妙高「ああ、初風ちゃんは今日が初めてですね。季節の変わり目の提督はいつもあんな感じですよ……」
初風「妙高姉さん大丈夫ですか?なんか疲れた顔をしていますね」
妙高「ええ……昨日……少し……」
初風「でも確かに9月にはいるともう秋だなって思いますよね」
妙高「初風ちゃんは秋は楽しみかしら」
初風「ええ、まあ。気候も涼しく待ってきて体動かすにもちょうどいい季節になりますから」
妙高「スポーツの秋ね」
初風「妙高姉さんはなにか楽しみなことでもありますか?」
妙高「そうねえ、せっかくだし紅葉狩りでもしてゆっくりしたいわね」
初風「風情がありますね」
提督「おお、二人とも。なに話ているんだ?」
妙高「秋になにをしたいかですよ」
提督「そうだな。また秋刀魚漁とかあるかもしれないし、おいしいものでも食べたいな」
初風「食欲の秋ですね」
妙高「まあ提督ならそうですよね」
提督「なんだよ、文句あるのかよ」
妙高「ないですよ。ねえ、初風ちゃん」
初風「ええ、ありませんよ」
提督「そうだな。あとは紅葉狩りでもしてゆっくりしたいな」
初風「え!」
提督「そういうのが好きな奴がいるんだよ。そいつでも誘って行きたいなと」
妙高「全く誰なんでしょうね」
初風「え?!」
提督「さあ、誰なんだろ」
初風「えっえっ!」
提督「どうした初風。喉になんか詰まったか?」
初風「いや……あの……」
妙高「ふふ、早く紅葉の季節になるといいですね」
『大規模作戦』
提督「ふーっ」
妙高「遅くまでお疲れ様です。コーヒーでも淹れましょうか?」
提督「すまない。お願いする……」
妙高「ずいぶん疲れていらっしゃいますね」
提督「此度の大規模作戦、あと少しだ。あと少しで終了させることが出来るのだ。だがその少しが果てしなく遠い」
妙高「最終作戦には私は参加しておりませんが激しい戦いみたいですね」
提督「ああ、途中の撤退も多く最深部に到達しても撃破が叶わない」
妙高「そうなのですか……」
提督「まあ俺自身が戦場に出ているわけではない。俺が出来ることは作戦を立てることと見守ることだ」
妙高「それともう一つありますよ」
提督「なんだ?」
妙高「みなの帰りを待つことです。誰も沈まなければ次がありますから」
提督「……そうだな。誰も沈ませやしないさ」
『大規模作戦終了』
提督「ただ今の時刻をもって大規模作戦を終了とする」
妙高「お疲れ様でした」
提督「あとは頑張ってくれた皆を迎えるだけだな」
妙高「それまで少しだけゆっくりしましょう」
提督「今回の大規模作戦はきつかったな」
妙高「ええ、私も出撃したときにそれは思いました」
提督「敵が力をつけている。俺達は本当に勝てるのだろうか」
妙高「勝てますよ。何回でも撤退しても最後まで諦めなければ勝てます」
提督「そうか……そうだよな……。悪い、らしくないことを言った。忘れてくれ」
妙高「はい、確かに今のはあなたらしくなかったです。聞かなかったことにしておきます」
提督「ありがとう」
妙高「大丈夫ですよ。どうしても辛いときには私達艦娘を信じてください。それでも辛いならあなたの横にはいつも私がいますから」
提督「……ああ。肝に銘じておくよ」
『ゆっくりとした時間』
初風「あ、妙高姉さん」
妙高「どうしたの初風ちゃん」
初風「私まだ知らなくて、遅くなりましたがこの前はケッコン記念日おめでとうございます」
妙高「ええ、結婚記念日だったわ。ありがとう」
初風「そういえば提督さんって不思議な人ですよね。真面目そうなのにたまにふざけてたり」
妙高「あの人はただただ子どもっぽいだけですよ」
初風「子ども……ですか」
妙高「この前執務室にあった風鈴を片付けようとしたらセミが鳴いているうちはまだ片付けなくてもいいのでは?とすごい駄々をこねられたわ」
初風「それはなんというか……ご愁傷様です」
妙高「全く、困ったものですよね」
提督「……それ執務室で、しかも俺の目の前でする話じゃないよね」
妙高「今は休憩時間ですし、初風ちゃんが来ても問題ないじゃないですか」
提督「いや、話す内容が半分俺の陰口じゃん」
初風「だって見えないところで言ってたら本当に嫌な奴じゃないですか」
提督「陰口だって自覚はあったのね」
妙高「私は半分褒めているんですよ」
提督「半分は貶してんじゃん!」
妙高「いえ、半分は諦めてます」
提督「なんかすみません」
初風「あまり妙高姉さんに迷惑かけないようにしてくださいね」
提督「わかりました……」
『兄さん』
初風「失礼します、あれ?妙高姉さんは……?」
提督「ちょっと買出しに行ってもらってるよ」
初風「はぁ……、妙高姉さんいないのか……」
提督「お前妙高大好きだな」
初風「もちろんですよ」
提督「すぐ帰ってくるだろうし待ってるか?」
初風「そうさせてもらうわ」
提督「……いや、悪いことじゃないんだけどさ」
初風「どうしたのかしら」
提督「妙高がいないと大分砕けた感じになるよな」
初風「しっかり敬語使ったほうがいいかしら?」
提督「いや、今のままのほうがいいよ」
初風「那智さんから提督は打ち解けた口調のほうが好みだと聞いたもので」
提督「そうだな」
初風「それにしても聞いたわよ。那智さんとか足柄さんとか羽黒さんから義兄さんと呼ばせてるって」
提督「誤解だ!いや、誤解じゃないけど多分勘違いをしている」
初風「私も兄さんと呼んだほうがいいかしら」
提督「……ちょっと試してくれ」
初風「……冗談だったのに」
提督「妙高姉さんの夫なんだ。兄さんでもおかしくないだろ」
初風「それは妙高姉さんはなんというか、特別だし」
提督「いまだに恐れているぐらいだもんな」
初風「恐れてはいないわ!畏怖の念を抱いているだけで」
提督「恐れているんじゃないか」
初風「尊敬してる部分も多いし」
提督「それよりはやく、妙高が帰ってくる前に……」
妙高「私が帰ってくる前に、なんですか?」
提督「妙高さん……、帰っていらっしゃったのですか……」
妙高「はい、私が帰ってきたら不都合なことでも?」
初風「私に自分のことを兄さんと呼べと強要してきました」
提督「あ、てめぇ。違うんだ、妙高。誤解なんだ」
妙高「初風ちゃん、せっかく来てもらったところ悪いけど今日は帰ってもらっていいかな?」
初風「は、はい!」
妙高「ちょっと提督とお話いたしますから」
初風「し、失礼しました!」
提督「待て、初風。行かないでくれ。助けてくれ……」
妙高「それじゃあお兄さん、お話しましょうか」
『秋刀魚』
提督「"狩り"の時間じゃー!」
妙高「今年もこんな季節ですね」
初風「最近鎮守府全体が殺気立ってるけどなにが起きてるの?」
提督「秋刀魚漁だよ」
初風「へ?」
提督「だから秋刀魚漁だよ」
初風「妙高姉さん、提督さんがまた嘘ついてますよ」
提督「またってなんだよ」
妙高「残念ながら初風ちゃん、今回は嘘じゃないわ」
提督「今回もだよ」
初風「そんな……」
提督「深海棲艦が現れてから漁もまともに行えなくなったからな、漁船の護衛をする代わりに秋刀魚をわけてもらうんだ」
初風「なるほど、それともっていく装備の指定を間違えてましたよ。潜水艦がいないのにソナーと爆雷を指定していましたよ」
提督「それでいい」
妙高「間違ってませんね」
初風「まさか……」
提督「ああ、漁の支援もしてもらう」
初風「いや、ソナーはともかく爆雷は……」
提督「なにもおかしくないよな。なあ、妙高」
妙高「ええ、なにもおかしくありませんね」
初風「えぇ……妙高姉さんまで……」
提督「たまたま潜水艦と認識したものが魚群だってこともあるだろう」
妙高「よくあることですね。熟練見張り員がいても勘違いしてしまいますね」
初風「狂ってる……鎮守府全体が狂ってる……」
提督「時期にお前も染まるさ」
妙高「みんな結局こうなりますよ」
『台風の日に』
提督「はぁーー」
初風「なんだか最近の提督さんいらいらしてないですか?」
妙高「最近雨が続いて今日は台風じゃない。ほら、あの人子どもだから……」
初風「ああ、そうでしたね」
提督「聞こえてるぞ」
妙高「聞こえるように言っているんです」
初風「最近提督さんの扱いが少しわかってきました。それにしても雨でイラつくってどんだけ子どもなんですか」
提督「ほら、俺実は光合成が出来るんだ」
妙高「それじゃあこれから晴れの日はご飯作らなくて平気ですね」
提督「ごめんなさい嘘です」
初風「なんか二人って夫婦って言うより親子みたいですね」
提督「心外な!」
妙高「そうです。こんな息子要りません!」
初風「そこなんですか」
妙高「そうですよ!素直じゃないし、かっこつけだし、わがままだし」
初風「聞けば聞くほどダメ人間ですね」
提督「うるせえ」
妙高「脱いだものはそこらへんに置いたままだし、いまだに寝るとき甚平だし。見てるこっちが寒いんですよ」
提督「布団被ったら案外いけるもんだぞ」
初風「ただの暴露大会ですね。それとやっぱりお母さんじゃないですか」
妙高「全く、旦那としての自覚を持ってもらいたいものですね」
提督「善処します」
初風「完全に尻に敷かれてますね」
『トリックオアトリート』
提督「トリックオアトリート」
妙高「ハロウィンは先週ですよ」
提督「皆思い思いの仮装をしていて可愛かったな」
妙高「あら、妬けちゃいますよ」
提督「お前の雪女が一番綺麗だったよ」
妙高「ありがとうございます。個人的には姉馬鹿ですが羽黒の猫又が一番可愛かったですね」
提督「意外だな、初風のデュラハンが一番だというと思ったが」
妙高「あれはダメです」
提督「え?」
妙高「ダメです」
提督「さいですか」
妙高「確かに可愛かったですよ。でも私が怖いという嘘をあの格好で言いふらしてましたから」
提督「駆逐艦がお前のところにはあんまり来なかったもんな」
妙高「ええ、だからあのあと初風ちゃんとは難しい話をしましたけど」
提督「そういうところだぞ多分」
妙高「うっ、わ、私だってわかってます」
提督「そうかい。それで話を戻すがトリックオアトリート」
妙高「だからどうしたんですか?」
提督「いや、配ってばかりだったから俺もちょっと言っていってみたくなった」
妙高「仕方ないですね。はいこれ」
提督「どうしたこれ」
妙高「駆逐艦の子達からもらったクッキーです」
提督「なんだかんだ慕われてるじゃないか」
妙高「ふふ、そうだと嬉しいです」
提督「ん?俺そういえばもらってないぞ」
妙高「あっ……なくなっちゃったから言わないでって……」
提督「悲しい」
妙高「明日、多分明日また作ってくれますよ」
提督「哀しい」
『翌日』
提督「へへん、妙高!これを見ろ!」
妙高「あ、もらえたんですね。よかったですね」
提督「これも俺の人望のおかげだな」
妙高「そうですね、昨日はもらえなかったけど」
提督「ぐっ……今日もらえたらよかろう」
妙高「ニヤニヤしてますね。いやらしい……」
提督「ニコニコだ!」
妙高「そんなに鼻の下伸ばさなくてもいいじゃないですか」
提督「いや、流石に駆逐艦の子たちにそれはないぞ!」
妙高「やっぱり若い子がいいんですね……そうですよね……よよよ」
提督「よよよって。言動がおばさん臭いな」
妙高「お、おばさんですって!これはお話案件ですね」
提督「まだ気にするような歳じゃないだろ」
妙高「だって私80歳ですし……」
提督「それで言ったら大半の駆逐艦はお前と同い年ぐらいだよ」
妙高「かわいそうな提督のために私もクッキー作ってきたんですけど不必要でしたね」
提督「え!妙高が!」
妙高「そうですよ。なにかおかしいですか?」
提督「いや、妙高が、俺のためにか」
妙高「かわいそうな提督、のためにです。はいこれ」
提督「ありがとう」
妙高「顔、にやけてますよ」
提督「……ふん」
妙高「鼻の下伸びてますよ」
提督「……ふん」
妙高「否定しないんですか」
提督「うるさい!」
妙高「……全く。少しぐらい初風ちゃんを見習って素直になればいいのに」
『いい子』
コンコン
提督「入れ」
初風「失礼します、何かお手伝いできることはあるでしょうか?」
提督「……いや、ないぞ。どうした、コーヒーでも飲むか?」
初風「いえ、私は大丈夫です。提督さんの分をお入れいたしましょうか?」
提督「ありがたいけどさっき妙高に入れ
てもらったばかりなんだ」
初風「そうですか。それでは何かご用があったらお呼びください。失礼しました」
提督「……なあ、妙高。あの言動はなんだったんだ?」
妙高「多分いい子にしているのだと思いますよ」
提督「いい子?」
妙高「ほら、近いじゃないですか。クリスマス」
提督「あー、なるほど。サンタに来てもらいたくていい子にしてるのか」
妙高「可愛らしいですね」提督「サンタを信じてるなんてなんだかんだ言って駆逐艦だな」
妙高「信じてるのは駆逐艦の子たちだけじゃないですよ」
提督「どういうことだ?」
コンコン
提督「入れ」
羽黒「失礼します、何かお手伝いできることはありますか?」
提督「…………いや、ないぞ」
羽黒「コーヒーでもお入れいたしましょうか?」
提督「……ありがたいけどさっき妙高に入れてもらったばかりなんだ」
羽黒「そうですか。それでは何かご用があったらお呼びください。失礼しました」
提督「……嘘だろ」
妙高「次女、三女は気がつきましたけど四女は全員で隠してますから」
提督「どうすんだよこれ……」
妙高「私たちも真実を告げるタイミングを失ってしまって……。ここまできたら墓場まで隠し通すつもりです」
提督「おう、頑張れよ」
妙高「提督も協力してもらいますからね」
提督「いやだよ」
妙高「羽黒の笑顔を守るためです」
提督「無理だよ」
妙高「クリスマス当日が楽しみですね」
『クリスマス:表』
バァン
初風「妙高姉さん!提督!」
提督「扉はノックしてからゆっくり開けろ」
初風「ごめんなさい。あれ?姉さんは?」
提督「ゆっくり休んでもらって今日は午後から来るよ、特に急ぎの仕事も無いからいいだろ」
初風「パーティーの後片付けで遅くまで起きてたのかしら」
提督「後片付けというか、自らのやらかしたことの後始末というか」
初風「まあいいわ。姉さんが来たら改めてみてもらいましょう」
提督「それでそのマフラーどうしたんだ?似合ってるな」
初風「えへへ、サンタさんが来てプレゼントしてくれたの!」
提督「それはそれは。喜んでくれたなら何よりだ」
初風「提督がどうして?」
提督「あ、いや。今度サンタに俺が代表してお礼しなきゃいけないと思ってな」
初風「提督はサンタさんに連絡出来るんですか?」
提督「初風も欲しいものカード書いただろ?あれをまとめてサンタにお願いしたのが俺だ」
初風「提督!すごい!」
提督「一鎮守府の提督だからな。顔も広いわけよ」
『クリスマス:裏』
提督「よし、パーティーもお開きだ。後片付けはこっちでやっとくからみんな寝ときな」
初風「了解しました。おやすみなさい」
羽黒「お言葉に甘えさせていただきます。おやすみなさい」
那智「それじゃあ、私達も戻ろうか」
足柄「おやすみ~」
提督「おう、おやすみ」
妙高「おやすみなさい」
提督「……帰ったか」
妙高「那智と足柄は羽黒に怪しまれないように帰しました。初風ちゃんは眠そうにしてたので大丈夫だと思いますが羽黒は起きている可能性があるので二人に監視してもらいます」
提督「それで、俺はなにをすればいいんだ?」
妙高「まずはこの服を着てください」
提督「……このサンタ服ずいぶん大きくないか?」
妙高「サンタは体格がいいものだと相場で決まっています。それにもし二人が起きてしまって目撃されても誤魔化せるようにこのサイズです」
提督「本格的だな」
妙高「二人の夢は私が守りますから。さあ、体にタオルを巻いていきます」
提督「付け髭に帽子にダメ押しの伊達眼鏡。これだけ対策していればばれないな」
妙高「提督がプレゼントは用意されたんですよね」
提督「欲しいものカードを書いてもらったからな」
妙高「妙に大きくないですか?」
提督「これもカモフラージュの一種だよ」
妙高「それじゃあ私は後片付けをしていますからお願いします」
提督「おう、一人に任せて悪いな」
妙高「いえ、私こそこんな大役を任せてしまって」
提督「いや、なんだか娘が出来たみたいで柄にも無くわくわくしてるよ」
妙高「まあ」
提督「はは、行ってくるよ」
妙高「いってらっしゃい。あなた」
『クリスマス:表2』
コンコン
提督「入れ」
妙高「失礼します」
初風「妙高姉さん!あっ!」
妙高「初風ちゃん、おそろいのマフラーですね」
初風「姉さんのところにもサンタさんが来たんですか?」
妙高「ええ、いつの間にか来ていました」
提督「そりゃサンタは寝てるときにしか来ないからな」
妙高「まさかカモフラージュってこっちのことだったとは」
初風「何の話ですか?」
妙高「あ、いえ。なんでもないですよ」
初風「提督さんが代表してサンタさんにお礼を言ってくれるみたいです」
妙高「そうですね。ねえ、あなた」
提督「なんだよ」
妙高「ありがとうございます」
提督「サンタにそう伝えとくよ」
妙高「ええ、お願いします」
コンコン
提督「入れ」
羽黒「失礼します」
足柄「私達のところにもきたみたいね」
那智「私までもらえるとは……」
提督「お、羽黒。その髪留め似合ってるじゃないか」
羽黒「ありがとうございます」
妙高「んんっ」
那智「姉さん、どうしたんだ?」
妙高「あの人私がアクセサリを変えても絶対に気がつかないのに」
那智「それは今回は自分がプレゼントしたものだからわかるさ」
妙高「私も似合ってるとか言われてみたいわ」
那智「姉さんも苦労しているんだな」
妙高「ええ、気が利くのか利かないのか良くわからない人だわ」
『おわりに』
提督「もう今年も終わりだな」
妙高「そうですね」
提督「大掃除も終わったし今年やり残したことはないな」
妙高「はい、もうありませんね」
提督「今年も色々あったな」
妙高「初風ちゃんが鎮守府に着任したり」
提督「夏にお前にもう一度プロポーズしたり」
妙高「幾多の作戦を成功させたり」
提督「来年も色々あるかな」
妙高「あるでしょうね」
提督「今年は楽しい一年だった」
妙高「来年もいい年になるといいですね」
以上で終わりです。
初風が着任した勢いのままスレを立てたのでネタが枯渇する、初風の出番が行方不明になるなど大変でした。
また妙高さんのSSを書きたくなったらだらだら始めると思います。
最後に、妙高さんのSSがもっと増えることを心から願っています。
このSSまとめへのコメント
続き楽しみに待ってます
良作
最高でした