P「四条最大の侵略」貴音「でゅわっ」 (108)

―765プロ事務所―

貴音「はぁっ……はぁっ……」

P「貴音! 動いちゃ駄目だって!」

貴音「し、しかし……ライブ……が……」

P「何が何でも今日は休むんだよ! 何だよ、熱が90度って! 体温計の故障かと思ったぞ!
  おまけに脈拍360、血圧に至っては400!」

貴音「くぅ……っ……! っはぁ……はぁ……!」

P「ライブなら、春香に代役を頼んだ! 春香の実力なら、美希と響にも十分合わせられるはずだ」

貴音「うぅっ……あなた様……ですが……!」

P「安心しろ! 体が治ったら、またフェアリー3人でステージに立てる! だから、今日はゆっくり休むんだ! いいな!」

貴音(……ですが……私は……もう……!)


  『765プロ、そしてアイドル業界の平和を守るため、歌い続けてきた四条貴音!』

  『しかし、度重なる961プロとの戦いにより、彼女の肉体はすでに極限状態に達していた!』

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?『――様、貴音様……どうかお気づきに、貴音様……!』

貴音(!? 何奴!?)

?『……お久しゅうございます、貴音様……。私です、じいやにございます……』

貴音(! じいや……どうしたのです、貴方は古都に……)

じいや『貴音様のお命が危ういと感じ、いてもたってもいられず……。
     貴音様! もう舞台に上がってはなりません! すぐにその星を離れ、我らが故郷へお帰り下され!』

貴音(!)

じいや『貴女様の、その星でのお身体は……もはや限界まで消耗しております。
     これ以上、歌や踊りで力を消費すれば……そのお身体ごと、消滅してしまいますぞ!』

貴音(じいや……ですが、私はまだ……!)

じいや『民のことならば、お気に召されますな! 我等のために戦いぬいた貴女を、責める者などございません!』

貴音(……961プロの妨害が、日に日に過激になっているのです。このままでは……きっと、恐ろしい事が……!)

じいや『!? な、なりませんぞ! こんな惑星の住人のために、お命を危険に晒すなど!』

貴音(無礼者!)

じいや『!』

貴音(……765プロの皆は……私を孤独から救ってくれた、かけがえのない友人……!
    たとえあなたの言葉であろうと、彼女達への侮辱は許しません!)

じいや『し、失礼いたしました……で、ですが貴音様!』

貴音(せめて……せめてあと一回だけ……! 何としても、961プロを止めなくては……!)

じいや『――っ! もう時間が……! 
     貴音様! よいですか貴音様! くれぐれもご自愛くださいませ! 貴音様!』

貴音(じ、じいや!?)

貴音「じいや!?」ガバッ

P「!? ど、どうした、貴音? どっか痛むのか!?」

貴音「……? い、いえ……」

貴音(……ゆ……夢……?)

P「何か欲しいものがあったら、何でも言ってくれよ。大丈夫だ、今日は付きっきりで看病するからな」

貴音「……あなた様……」

P「ん?」

貴音「…………申し訳、ありません……」

P「気にするな。アイドルの健康管理だって、そもそもプロデューサーの――」

貴音「……違うのです」

P「え?」

貴音(…………違うのです……私は……私は……!)

―ライブ会場―

響「は、はいさーいっ! みんなー、今日は来てくれてありがとーっ!」

美希「今回は特別に、春香と一緒に歌っちゃうのー!」

春香「よっ、よろしくお願いしますねっ!」


 「えーお姫ちんはー?」
 「フェアリー3人が見たかったのにー」
 「なんでお姫ちんいないんだよ! 詐欺だぞ!」
 「お姫ちん見るために四国から来たのに……」
 「響ちゃんペロペロ」


春香(うぅ……分かってはいたけど……)

美希(……やるしかないの。貴音、すっごく苦しそうだったし……)

響(貴音、大丈夫かな……)

美希「え、えっと、それじゃあ一曲目! プロジェクト・フェアリーで、『オーバーマスター』――」

…ウーソーノーコートーバーガーアフーレー

春香「……!?」

響「えっ、ちょ、ちょっと待って! この曲……!」

美希「ちょ、ちょっと音響さん!? どうなってるの!?」

音響「」

響「ひっ!? た、倒――」

?「……要望を聞き入れてもらえなくてな。少しばかり、眠ってもらったのだよ」

春香「! く、黒井……社長……!」

黒井「ウィ、いかにも!」

美希「じゃ、じゃあやっぱり……!」

北斗「チャオ☆ 客席のエンジェルちゃん達、元気かな?」

翔太「今日は、最後までめいっぱい歌って踊っちゃうからね!」

冬馬「…………」

翔太「……ほら、冬馬くん」

冬馬「っ! あ、ああ……悪い。……盛り上げていくぜ! お前ら、ついてこい!」

キィィィィン…

 「…………」
 「……ォォォ……」
 「オオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
 「ジュピター! ジュピター! ジュピター! ジュピター!」

響「あ……あぁ……そん、な……」

春香「このイベントまで……そんな、何で……!」

黒井「フハハハハ! 見たか高木! 見たか765プロ! 我が961プロの科学の結晶、『洗脳音波放射スピーカー』!」
   
黒井「単体でも十分に効力のある洗脳音波を、ジュピターの歌に乗せて放射することで、深層心理に直接沁み込ませる!」

黒井「もはや観客席のブタどもは、貴様らのことなど覚えてはいまい! 全員、961プロの……いやこの私の忠実な奴隷となったのだ!」

美希「なんで……なんで!? こんな卑怯なことまでして……!!」

黒井「卑怯? ヒキョウだと? ……フハハハハ!! 卑怯もラッキョウもあるものか!
    使うべき物を使い、負けるべき者を負かす! すなわち勝者の方程式! 恥じ入ることなど何も無いッ!」

冬馬「…………」

黒井「まあ、貴様らには分からんだろうがな。
    いい歳こいて団結だの友情だの抜かす、馴れ合い弱小事務所には、な!
    ……奴隷たちよ! この女どもをひっ捕らえろ!」

 「オオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

美希「きゃっ、は、離して! やだっ!」

響「や……やめてよ……目を覚ましてくれ、みんな!」

黒井「……おっと、そこの華の無いリボンは放っておけ」

春香「え、えっ!?」

響「うっぎゃぁぁ――! 離せぇ――!!」

北斗「……なんかゴメンね。美希ちゃん、響ちゃん」

翔太「……こっちも、色々あってさ」

美希「助けて! 助けてハニー! ハニぃぃぃぃぃぃぃ!」

春香「! 美希! 響!」

黒井「高木に伝えろ。『貴様の大事なアイドル2人は預かった。素直に負けを認め、二度と私に逆らうな』と!
    奴が直接、この私に謝罪するならば……」

春香「しゃ、社長が謝ったら、美希と響を返してくれるんですね!?」

黒井「ん~~……」

春香「ど、どうしよう……早く事務所に……! そうだ、善澤さんにも……」

黒井「あぁ、一応言っておくが、マスコミや警察に垂れこんでも無駄だからな。
    めぼしい重役は全てジュピターで洗脳した! もはやこの地球上に、お前たちの味方などいないのだ!」

春香「そ、そんな……!」

黒井「分かったらとっとと高木に連絡するがいい。なに、時間ならたっぷりくれてやる。
    己のプライドか、己のアイドルか……好きなだけ悩むことだ、高木! ハーッハッハッハッハ!!」

―765プロ事務所―

プルルルルッ プルルルルッ
ガチャッ

高木「はい、もしもし……おお、天海君! ライブはもう終わったのかね?」

高木「――うん? ちょ、ちょっと……ゆっくり、もう少しゆっくり頼むよ」

高木「うん…… !!? な……何だって……!?」

高木「そ、それで! 我那覇君と美希君は!? ……そ、そうか……」

高木「…………ああ。分かっている。すぐに皆に伝えるよ」

高木「……すまない、私がもっと奴を……いや、いいんだ……ああ」

高木「また追って連絡する……何かあったら、すぐに……いいね? ああ……」

高木「……それじゃあ」ガチャッ

P「? 社長? 春香からですか?」

律子「どうしたのかしら……何か忘れ物とか?」

貴音「……?」

高木「……君。それと律子君。すぐに皆を集めてくれ」

律子「え?」

高木「……我那覇君と美希君が……誘拐された」

P・律子「……え……!?」

貴音「!」ダッ

P「!? あ、ちょっ……貴音!?」

高木「四条君!? どうしたんだ!?」

貴音(美希……響……!)

―街中・路地裏―

貴音「はぁっ……はぁっ……」

貴音(……こ、ここならば……人目には付きませんね……)

貴音「…………」

『これ以上、歌や踊りで力を消費すれば……そのお身体ごと、消滅してしまいますぞ!』

貴音「……それでも……それでも私は……!」

貴音「……でゅわっ!」パキッ

ドヒュゥンユンユンユンユンユンユン!




  『異星人・四条貴音は! 普段はその超能力をセーブし、肉体への負担を極力抑えている!』

  『だがしかし! 自分や仲間たちに、どうしようもない危機が迫った時には!』

  『マイ割り箸を割ることで、一瞬で専用衣装・ビヨンドザノーブルスを着装し!』

  『異星人本来の力を取り戻した、ミラクルウーマンへと変身するのだ!』


貴音「美希、響……待っていてください!」キーン


―ライブ会場―

春香(しゃ、社長……まだかな……)

黒井「ん~~……随分悩んでいるようだなァ~、高木の奴……。
    仲間だの絆だの謳っている割には、少々悩みすぎなんじゃあないかね?」

春香「そ、そんなことは……!」

美希「なんで……なんで……やだよ……ハニー……」

響「放せー! はーなーせー!」ブンブン

北斗「……黒井社長。そろそろ、どっかの部屋で休ませてあげたら……」

黒井「バカ者! こいつらは人質であっても、客人ではない! 丁重に扱う義理がどこにあると言うのだ、ええ?」

翔太「そ、そうだけどさ……でも……」

黒井「いいか奴隷ども、決して拘束を緩めるな! いつ隙を突いて逃げ出すか分からん、765プロとはそういう奴らだ!」

 「サー! イェッサー!」

冬馬「……くそっ」

?「――くつーもーの虹がー……かーさなーりー合うーとー……♪」

美希「……?」

北斗「……あれ? この歌……」

?「風を受ーけーて……ひとーりのー意ー味をー……♪」

響「……! こ、これって……」

春香「か、"風花"……! ま、まさか……!」

黒井「ば、バカな……お前は今日、休養のハズ……! 何故、何故ッ!」

?「――ファンの皆様を無理矢理操るばかりか、我が友人達までも手にかけるなど……」

?「黒井社長……いえ、黒井崇男。その罪、もはや許せません」

?「愛と正義の星の使者……四条、貴音っ! 今、参じょ――」

美希「貴音!? 身体は大丈夫なの!?」

貴音「…………ええ、はい、ご心配なく」

響(言わせてあげなよ……)

黒井「ぐむむ……おのれ四条! またしても邪魔立てするか!」

貴音「あなた方がいくら、『洗脳音波すぴぃかぁ』とやらを使ったとしても……私の歌声の前には無力。
    まだ分からないのですか、黒井崇男」

響「そ、そうだぞ! 貴音が一発ドーンと歌えば、みんな正気に戻るんだからな!」

黒井「……フン。ああ、そうだろうな。その通りだったよ……今までは。……だがな!」パチンッ

 「サー! イエッサー!」グイッ

響「うぐっ……!」

美希「きゃっ!」

貴音「……っ!?」

春香「! 響! 美希!」

黒井「フハハ……さぁ四条、どうした? 歌いたいなら歌うがいい。
   大事な大事なお仲間がどうなっても構わなければ、な! フハハハハ!!」

貴音「……貴方と言う人は……どこまで……っ!」ギリッ

黒井「んん~~……いい顔だ……その絶望に醜く歪んだ顔!
   その顔を見たかったぞぉ、四条貴音! フハハハハハハ!」カチッ

春香(! り、リモコン……?)

黒井「さて、ジュピター! これで邪魔は無くなった! スピーカーも衝撃波モードに切り替えたぞ!
   お前達の歌で、あの目障りな銀髪も粉々にしてやれ!」

冬馬「ぐっ……」

北斗「……冬馬」

翔太「……しょうがないじゃん。黒ちゃんには……」

冬馬「分かってる……分かってんだよ! 畜生……!
   恨むなら好きなだけ恨みやがれ! 765プロぉ! ちくしょおっ!」

ジュピター「こーっえーのぉー! 届かない迷路を越ーえーてーっ♪」キィィィン

貴音「ぐぅ……っ!」

ジュピター「手ーをー伸ーばーせーたぁーらぁーッ♪」ギュオオン

貴音「ああああああっ!!」ドゴォンッ

春香「たっ、貴音さぁん!」

黒井「おや~? どうした四条? 今日は随分脆いじゃあないか……。
   ガタが来ているというのは本当だったようだな! フハハハハ!」

貴音(……っ……やはり……力が……!)

春香「やめて……もうやめてよぉっ!」

響「……た……かね……!」

貴音「!」

響「自分たちのことは……いい……! 歌って……歌って! みんなを……!」

美希「こ……これぐらい……へっちゃら……なの……だから……! 貴音!」

貴音「響……美希……!」

黒井「ほーぉ……まだ痛めつけられたいらしいな、この低俗アイドル共が!
   ジュピター! ついでにこの2人も叩きのめせ!」

翔太「え――で、でもいいの? 拘束は……」

黒井「話をちゃんと聞いていたのか? ……その奴隷達ごと吹き飛ばせ」

北斗「!?」

貴音「な――!」

黒井「元々、765プロのライブなぞに来るようなノータリン共だ。
   1人や2人、いや10人や100人犠牲になろうが、私の知ったことではな――」

貴音「…………」 スゥゥゥゥ

冬馬「! おい……おっさん、おっさん!」

黒井「何だ、人の話は最後まで…… !?」

貴音「過去がぁぁぁぁ明日にぃぃぃぃ変わりいいぃぃぃぃぃ!!!」ドギャァァン

黒井「んぐぁぁ!」

北斗「ぐっ……」

翔太「かはっ――」

冬馬「あォッ」メキョッ

貴音「吸い込まぁぁぁれーるぅみらぁぁぁいいぃぃぃ!!」ボグォォン

黒井「お、おのれ……ジュピター! 何をしている、反撃しろ!」

響「いいぞー貴音ぇ!」

美希「貴音! これを!」ブンッ

ヒュルルルル…パシッ

貴音「ミキスラッガー……感謝します、美希」

  『ミキスラッガー! 貴音の盟友・星井美希の頭部から分離した、ブーメラン状の万能カッター!』

  『貴音の念力によって自由自在に飛び回り、あらゆる敵を両断する!』

  『もっとも所詮はアホ毛だし、一回使うとボロボロになるぞ!』

美希「――」ガクン

響(夏だし、30分ぐらいで再生かな……)

春香「貴音さん! あのリモコンを狙って下さい! もしかしたら、あれがスピーカーの……!」

貴音「! 成程……」

ジュピター「ぐっ……つーみーとぉー! 罰をすべて受け入れ――」キィィン

貴音「ひぃぃかぁぁりぃぃのぉーなぁーかぁーへぇぇー!!」バギョォォン

ジュピター「てぇぇっ! い……いーまー君に裁かれ――」キィン

貴音「こぉぉーこーろぉは向かってゆぅぅぅぅくぅぅぅぅぅ!!!」ドギュゥゥン

ジュピター「よぉおおぉぉぁおあああああ!!」ボグシャァッ

黒井「! ば、バカな……私のジュピターが!」

翔太「っててて……相変わらず、すっごい歌だなぁ……」

北斗「ぐ……と、冬馬……しっかりしろ、冬馬!」

冬馬「て、手が……あと脚も……」ヒクヒク

 「う、うぅ……な、何だ、さっきの歌……?」
 「あ、あれ……響ちゃん!? あれ!? 何で俺響ちゃんと……」

黒井「! し、しまった……洗脳が!
   おのれ……な、ならば……! さらに出力を!」カチッ

貴音(好機!)

貴音「でゅわっ!」ブンッ

 キィィィ――ン…ブスッ!

黒井「ぎょぉぉああぁ!?」グシャッ

春香「や、やった! リモコンをっ!」

貴音「黒井崇男……これで、貴方の策は尽きました。美希、響! 今のうちに――」

黒井「……さ……させるものか……!」カチッ

 プシュゥゥゥゥゥ!

貴音「なっ! こ、これは……」

 「え、何これ、スモーク?」
 「何だ、さっきからどうなってるんだよ、このライブ!」
 「畜生、さっぱり見えやしねえ! 美希ちゃんが目の前にいたのに! 畜生!」

黒井「『リモコンは1つだけ』などと、誰が言った? ……まあ、こちらは舞台装置用だが……
   フハハ……こんな所で役に立つとは……!」グイッ

響「げほっ、えほっ……うぁっ、は、放せぇ……!」

美希「…………」グッタリ

黒井「北斗、翔太! げほっ、そこの毛虫と冬馬を……うぇほっ! くそ、出し過ぎたか……」

北斗「冬馬! しっかりしろ、大丈夫だからな!」

冬馬「あ、あぁ……あだだだ……」

翔太「ねぇ、美希ちゃん全然動かないんだけど……」

響「げほっ、あ、また生えてきたら元気になるから。大丈夫だぞ」

翔太「へ? あ、うん。……よいしょっ、と」

貴音「くぅ……美希! 響!」

黒井「フハハハハ! いいだろう、非常に不本意だが……この場は戦略的撤退と行こうじゃあないか。
   だがな、先程の要求を引っ込めるつもりは無いぞ! くれぐれも高木によく言い聞かせておけ!
   アデュー、弱小765プロ! フーッハッハッハッハッハ!!」

貴音「ま、待っ……ううっ……!」フラッ

 バタッ…

春香「! た……貴音さん!」

 「げほ……あれ、貴音様……?」
 「! お、おい……」
 「た、倒れ――」
 「何なんだよ……一体何が……」

春香「貴音さん! 貴音さん! 貴音さぁん!」

貴音「――――」




 パーンパラッパーン バン!
  『後編に続く』

ウルトラシジョー 次回・最終話『四条最大の侵略 後編』

一旦終了 後編は近日中に



  『悪魔のような業界人たちから、アイドル界を守るために闘ってきた四条貴音にも……』

  『最期の時が近づいていた』

  『もう二度と、再び立ち上がることはできないのだろうか?』

  『死んではいかん! 地球は、アイドル界は、765プロは……まだ君を必要としているのだ!』

  『頑張れ、四条貴音! 生きるのだ、四条貴音!』

―病院・廊下―

P「…………」

律子「…………」

ガチャッ

医師「…………」

律子「!」

P「せ、先生……貴音は!?」

医師「……発作は収まりました。しかし、体温と血圧は依然として異常値のままです。
   ……手術の必要があるかもしれません」

P「! そ、そんな……」

医師「確認のため、レントゲン写真の撮影を行いたいのですが……よろしいですか?」

P「え、あ、はい……お願いします」

医師「それでは……君。X線室の準備を」

看護師「は、はい」

律子「……プロデューサー」
  
P「…………」

律子「……プロデューサー?」

P「! あ、ああ……すまん。どうした?」

律子「あ、いえ……その、私はこれから事務所に戻りますけど、プロデューサーは?」

P「…………」

P「……ああ、俺も戻るよ。……大事な"会議"なんだ……出ないわけには」

律子「……分かりました」

P「…………」

P(貴音……何でだよ? 何で……)

―病室―

貴音(…………)

貴音(……ここは……)

貴音(……ああ……そうでした……私は、あの後……)

  「――手術の必要が……」

  「そ、そんな……」

貴音(! あなた……様……?)

  「……確認――レントゲン……よろしいですか……」

貴音「!」

貴音(い、いけない……!)

貴音「……っ……!」ムクッ

 ヨタッ… ヨタッ…
 ズルッ…ドサッ!

貴音(……お許しください、お医者様……あなた様)

貴音("れんとげん"などを撮られては……このままでは……皆に、知られてしまう……!)

貴音(それだけは……それだけは、何としても……!)

 ガラガラガラッ…

貴音(……ふふ……)

貴音(今宵は……優美な月夜ですね……)

―961プロ事務所―

響「こんのぉーっ! 放せっ! 放せよヘンタイ社長ー!」ガタンガタン

美希「いたいけな女の子を十字架にかけるとか、フェミニスト団体が黙ってないの!」ガタンガタン

黒井「……うーむ、ふと思い立って磔にしてみたが……やはり三流アイドルでは絵にならんなァ。ワインもヌルい。
   翔太! 高木からの連絡はまだか!」

翔太「いや、全然……あの、それよりもさ、クロちゃん」

黒井「何だ」

翔太「……さっきから冬馬くんがいないんだけど……どこ行っちゃ――」

 「ぎぃゃああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

翔太「!?」

響「ひっ……!?」

北斗「と……冬馬!?」

黒井「……いやなぁ、私は気が進まなかったんだがな?」

 「ひぎいいぃぃえええぇぇぇぇぇぇ!!」

黒井「冬馬の奴が、やれあの2人を解放しろだの、正々堂々実力で戦わせろだの……
   何というのか、私の高度な野望と戦術を……1%も理解せずに、ほざいたものだからな」

 「殺せえぇぇ! 殺してくれえぇぇぇぇぇ!!! なぁぁぁあぁぁぁぁあぁ!!!」

黒井「丁度、左手と右足も負傷していたことだし……治療がてら、ちょっとした『手術』を受けさせている」

翔太「しゅ……手術……?」

黒井「次に目が覚めた時……奴は心身ともに、我が961プロの忠実な下僕となっていることだろう!
   そう! 手足どころか脳ミソの汁まで改造された、新生・天ヶ瀬冬馬にな!」

 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛―――――――!!!」

北斗「と、冬馬ぁっ!」ガタッ

 「来るなああぁ! 来るんじゃねええっ!!」

北斗「っ!?」ビクッ

 「ぐっ……おぉぉ……ほ……北斗……翔太……! お前達は……社長には、絶対に……!!
  いいなっ……俺みたいに……なりたくない、なら……うぐおぉぉぁぁぁああぁあぁ!!!」

翔太「とっ、冬馬くんッ!」

黒井「……フン……」

 「はぐぉぉぁあぁぁ……っ……た……頼む……! ジュピ…ター……は……お前ら、2人……
  頼ん……だ…ぜ…… ! ががあぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁ!!」

北斗「冬馬! 冬馬ぁぁぁっ!!」

翔太「ぐ……ううっ……!」

黒井「まぁ安心しろ……死にはせん。それどころか、さらなる能力を秘めた改造アイドルに生まれ変わるのだ。
   冬馬の奴も、さぞ本望だろうよ」

翔太「! こ、このっ――」

北斗「翔太!」

翔太「う……」

黒井「フハハ……そうだ、それでいい。黙って私に従っておけ。……それが互いの為と言うものだ。ハハハハハ……!」

―病院・病室―

 ガチャッ

看護師「四条さん、お待たせしました。レントゲン室の準備が……」

看護師「…………え……?」

 ヒュォォォォォ…

看護師「……!! せ、先生! 大変です、四条さんが……!」

―765プロ事務所―

律子「……亜美、伊織、あずささん、真美、雪歩……」

P「やよい、千早、真……春香」

小鳥「……社長。ひとまずは、これで全員です」

高木「……うむ。それでは、みんな。今から私が話すことを……どうか、落ち着いて聞いてほしい」

やよい「……っ……ひっく……ううっ……」

伊織「……やよい」

高木「……つい2時間前……我が765プロの星井美希君、我那覇響君の2名が……961プロによって、誘拐された」

真「……っ……!」

千早「…………」

高木「黒井……社長の要求は1つ。『2人を返してほしいなら、二度と961プロに逆らわないこと』……」

真美「さ、逆らうって……真美たち、フツーにアイドルしてるだけじゃん!」

高木「……奴にとっては、私達が芸能事務所として存続していること自体が……許し難い反逆なのだろう」

雪歩「そ、そんな……!」

亜美「何それ……ムチャクチャだよ……」

あずさ「……じゃ、じゃあ……その、『逆らうな』っていうのは……まさか」

高木「……ああ。奴が要求しているのは……我々765プロ、および所属アイドルの……永久的な活動停止。
   早い話が……事務所の解体と、君達の引退だ」

全員「――!!!」

高木「…………」

伊織「ちょ……ちょっと待ちなさいよ! いくら何でも飛躍しすぎじゃない!?」

真美「そ、そうだよ! 黒井社長がハッキリ『引退しろ!』って言ったわけじゃないんでしょ? だったら……」

律子「21件」

真美「え?」

律子「……21件。今月に入って、それだけの数の仕事やミニライブで……961プロによる妨害が入ったわ」

P「……今月なんかはまだ少ない方だ。先月は61件、先々月は58件……ほぼ毎日、何らかの仕事で……961の妨害工作が起こっている」

伊織「……う、嘘でしょ……何なのよ、それ……!」

高木「……確かなのは、黒井が本気で私達を潰そうとしている、ということだ。
   無論、私達だって、可能な限りの抵抗はしてきたつもりだ。……だが、今となっては、もはや……」

律子「……今までは、貴音の歌のお陰で一進一退だったけど……貴音は、もう……」

雪歩「……し、四条さん……うぅっ……」

P「……この状況で黒井社長が要求しているのが……単なる降伏宣言だとは到底思えない。
  俺達が二度と961プロへ抵抗しないよう……事務所を解散させ、アイドルを全員引退させること。少なくとも……」

高木「ああ。……少なくともそれぐらいのことをしなければ、2人は帰ってこないだろう」

伊織「…………」

真「そん……な……」

千早「……逆に言えば……」

亜美「え?」

千早「……我那覇さんと美希を見捨てれば……私達は、アイドルのままでいられる、と?」

春香「っ……!」

伊織「ち、千早っ! アンタ……!」

千早「誤解しないで! ……そういう選択肢もある、というだけの話よ……。
    ……それに、仮に2人を見殺しにしたとしても……」

律子「ええ。……妨害はたぶん収まらない。それどころか、もっとエスカレートするかもしれないわ。
    今回みたいな事も、また起こるかもしれない。……そんな状況で仕事なんて……」

高木「……黒井の要求を呑むか、撥ねつけるか……この選択は、私の一存で決めていいようなことではない。
   ……我那覇君も、美希君も含めた……君達全員の未来が掛かっているんだ。
   だからこそ……私達全員で考えて……決めたいと思う」

全員「…………」

亜美「……な……何黙っちゃってんのみんな! ミキミキもひびきんも……大事な友達じゃん!」

真美「そ、そうだよ! そりゃ……真美だって、アイドル続けたいよ? でも……」

伊織「……そうよ……た、助けるに決まってるじゃない! こんなことで蹴落としたって、全然……!」

やよい「あ……うぅ……で、でも……! アイドル辞めちゃったら……私……! 
     長介とカスミの…給食費だって……い、家の塀も……でも……でも、美希さんたちが……!」

伊織「……っ!」

真「……ずっと……可愛いアイドルになりたかったけど……い、いや、でも……」

千早「…………私には、歌しか……歌しか無い、のに……!」

あずさ「…………」

雪歩「…………」

春香「……っ……わっ……私……!」

律子「? は……春香?」

春香「ひくっ……わ、私……あそこにっ……いた、のに……えっぐ……
    何も……できないで……わっ、わたしの、せいで……みんな……うぅっ……あぁあぁぁぁ……!!」

P「は……春、香……」

春香「ううっ……こんなの……こんなの、やだよぉ……っ……! 
    みんなで……ずっとっ……アイドル……うぁぁっ……ああぁぁあぁぁぁ……っ!!」

やよい「な……泣かないで……春香さ………うっ…うぁっ……うぅぅぅぁ……!」

伊織「やっ、やよい……止めてよ……ねぇ……! お願い……!」

真美「…………」グスッ

亜美「っ……」

千早「…………」

真「……何でだよ……何で……!」

高木「…………」

 プルルルルッ プルルルルッ

P「!」

小鳥「あ、私が……」ガチャッ

小鳥「……お電話ありがとうございます。765プロダクションで―― あ、はい……先生。先程は……え?」

小鳥「……!!? な――」

P「……?」

春香「ひっく……ぐすっ……うぁっ……」

小鳥「そ、そんな――い、いえ、こちらには全く……! はい、はい……!」

小鳥「……かしこまりました。こちらもすぐに……はい。……ご迷惑をおかけして、申し訳ありません」

小鳥「はい、はい……それでは。……申し訳ありません、失礼いたします……!」ガチャッ

高木「こ、小鳥君……?」

小鳥「たっ……たっ、たっ、大変です……! 貴音ちゃんが……貴音ちゃんが!」

P「!! ま、まさか……!」

小鳥「いっ、いえ……そのっ、びょ、病院から……いなくなったって……!!」

全員「――――!!?」

―公園―

かすみ「浩太郎……もう帰ろうよ」

浩太郎「だって……ボール……兄ちゃんのボール……」ウロウロ

かすみ「もう暗くなってきちゃったよ……ね、浩太郎。お兄ちゃんに謝ろう? わたしも謝るから」

浩太郎「やだ……まだ探す……!」グスッ

かすみ「……ほんとうにここで失くしたの? ……もしかしたら、もう誰かが拾っちゃったのかも」

浩太郎「あるし! 絶対ここにあるし…… ! あっ、ここ……!」ガサガサ

かすみ「え! あったの」

浩太郎「うん、なんか白っぽいの……が……え?」

かすみ「? どしたのこう……た、ろ……」


貴音「……っ……はぁ、はぁ……」ゼェゼェ

浩太郎「」

かすみ「」

貴音「――! あ……」

浩太郎「!」

かすみ「!」

貴音「…………」

貴音「……あ、あの……こ、こんばんは」

かすみ「こ、こんばんは……」

浩太郎「……おねーちゃん、どしたの」

貴音「い、いえ、その……す、少し休んでいたのです。体調が優れないもので……」

かすみ「え……だ、大丈夫なんですか? お医者さんを……」

貴音「か、構いません……もう少し休めば……っ……!」

 バタッ… コロッ

かすみ「! お、おねえさん……」

浩太郎「……! あ、兄ちゃんのボール!」ヒョイッ

貴音「はぁ……はぁ……そ、それは……あなたの……?」

浩太郎「うん! よかったー……うち、ボールこれしかねーもん。ありがとな、おねーちゃん!」

貴音「い、いえ。たまたまそこに……むしろ、知らずに下敷きにしておりました。……申し訳ありません」

かすみ(……あれ? このおねえさん、どこかで……)

浩太郎「なーなーおねーちゃん! うち来なよ! お礼したい!」

貴音「え? い、いえ、それは……その、ご両親にもご迷惑では……」

浩太郎「あー、今日な、ふたりともヤキン? とかでいない」

かすみ(……! そ、そうだ……たしか、お姉ちゃんとおんなじアイドルの……!
     でも……なんで?)

浩太郎「それになー、外でねてたらな、カゼひいちゃうってねーちゃんが言ってた!」

かすみ「……そ、そうですよ……お、お家なら……おふとんもあるし、電話も……」

かすみ(……よくわかんないけど……やっぱり、お姉ちゃんとかプロデューサーさんにれんらくして、お迎えに……)

貴音「…………」

貴音「……ありがとう。……それでは、お言葉に甘えましょう。ほんの数分で、構いませんので……」

浩太郎「よっしゃぁ! ほら、こっちこっち! はやく!」

かすみ「浩太郎! す、すみません……」

貴音「いえ……」クスッ

浩太郎「……あ、そーだ。おねーちゃん、なんていうの?」

貴音「名前ですか? ……私は――」


―765プロ事務所―

伊織「…………」

やよい「…………」

 キラメキラリーズットチュチュットー

雪歩「!?」ビクッ

やよい「あ! すみません、私です……」ゴソゴソ

やよい「……? 家から……?」ポチッ

やよい「はい、やよいで――え? 長介?」

やよい「うん、うん…………――えっ!? た、貴音さん――!?」

真「!!」

伊織「え……!?」

やよい「う、うん、うん……! 携帯は? ダメ? そっか……分かった、すぐにプロデューサーに……!」

―高槻家・居間―

長介「うん、うん……ありがと、姉ちゃん。貴音さんはちゃんと……うん、大丈夫」

長介「それじゃあね。一応、こっちでももう一回かけてみるから……うん。それじゃ」ガチャッ

浩太郎「たかねーちゃん! これ、これ見てー!」ブンブン

貴音「まぁ……これは……ええと、怪獣、というものでしょうか? ふふっ、愛嬌のある紋様です」

浩太郎「こいつねー、こう、シッポまいてさ、電気出す!」

貴音「何と! そのような凄まじい異能力が!?」

浩太郎「うん! それでさ、こいつ宇宙人がつれて来たんだけど、オレねー、うちゅーひこーしになってね、宇宙人に会うの」

貴音「まあ、宇宙飛行士に……」

かすみ「た、貴音さん。麦茶、よかったら……」

貴音「おや……ありがとうございます、高槻かすみ」

長介「身体の方は大丈夫ですか? さっきはすっごい汗だったし……」

貴音「いえ、休ませて頂いたおかげで、すっかり……。   
   ……本当に、ありがとうございます。流石は、やよいの御家族ですね。彼女と同じ、溢れんばかりの優しさと温もりを感じます」

かすみ「そ、そんな……」

長介「い、いやいや……こっちこそ、姉ちゃんがいっつもお世話になってるみたいで……。
   ……それに、浩太郎たちとも遊んでくれたんですよね? すみません、ご迷惑を……」

貴音「遊ぶ……? はて……」

浩太郎「! ……あ、あー……」

貴音「……後で、正直に話すのですよ?」

浩太郎「…………」コクッ

長介「あ、そうだ貴音さん。さっき、プロデューサーさんに電話しようと思ったんだけど、繋がらなくて……。
   姉ちゃんに連絡して、代わりに伝えてもらうように頼んでおきました」

貴音「――!」

長介「もう少ししたら、プロデューサーさんが迎えに来てくれると思いますよ。……貴音さん?」

貴音「あ、いえ……お気遣い、感謝いたします……」

浩太郎「あ……ねーちゃーん! テレビつけていいー?」

かすみ「え? あ、えーと……」チラ

貴音「ああ、お気になさらず。……何か見たいものがあるのですか、浩太郎?」

浩太郎「うん、ねーちゃんたち出てないかなーって」ピッ

TV『ミュージックステッカー! 本日のゲストは、現在大・大・大ブレイク中の、ジュピターの皆さんで――』

浩太郎「あーあ、またジュピターじゃん……」

長介「最近、ジュピターばっかりだよな」

かすみ「……お姉ちゃん…………」

貴音「…………」

浩太郎「えいっ、えいっ、えいっ!」ピッピッピッ

TV『へー、じゃあ冬馬くんってアニメとか――』

TV『こっ! えっ! のぉー! 届かない迷路をこーえーてぇー!』

TV『貴方のくらしを俯瞰する、ブラックウェルカンパニーが――』

かすみ「……やってないね」

長介「ジュピターも、別に嫌いじゃないけどさ……ここまでごり押しされちゃうと、ちょっとな……」

浩太郎「……みんながいっぱいいる方がいいのに」

貴音「…………」

かすみ「…………お兄ちゃん」コソッ

長介「? 何だよ、かすみ?」

かすみ「……貴音さん、どうして公園なんかで倒れてたのかな……」ヒソヒソ

長介「……姉ちゃんに聞いたんだけどな。貴音さん……病院から抜け出してきたらしいんだ」ヒソヒソ

かすみ「え、ええ!?」

貴音「……?」

長介「ばっ……! しーっ、しーっ! ……やっぱり、お医者さんも呼んどいたほうがいいのかな?」ヒソヒソ

かすみ「……うん……さっき、すっごくきつそうだったもん……あ、でもね……」ヒソヒソ

長介「ん?」

かすみ「……貴音さんね、その、もしかしたら……お医者さんに行くの、嫌なのかも」

長介「へ? ……何で?」

かすみ「わかんない……でも、なんとなく……」

貴音「…………」ソワソワ

浩太郎「……? たかねーちゃん、病院イヤなの?」

貴音「! え、ええと……」

浩太郎「ちゅーしゃとかイタイもんね。オレもきらい」

貴音「! そ、そうですね。……私も、少しだけ苦手です。……だから、できるだけ病院には」

浩太郎「ふーん……」

貴音「…………それに」

浩太郎「?」

貴音「……どうしても、行かねばならない場所があるのです。……やらねばならないことがあるのです」

浩太郎「どこ? なにするの?」

貴音「……秘密にしていただけますか?」

浩太郎「うん」

貴音「……耳をお貸しなさい、浩太郎」

浩太郎「……?」スッ

貴音「……実はですね。これから、悪い人をやっつけて……仲間を助けなくてはいけないのです」ヒソッ

浩太郎「へー、たかねーちゃんもヒーローごっこ好きなんだ」

貴音「え? ……あ、はい。……そうなのです。だから、早く外に行かなくては……」

浩太郎「おくれちゃう?」

貴音「はい。……これ以上、待たせるわけにはいきません」

浩太郎「オレもなー、あそぼうって言ったのに、ぜんぜんこなかったりしたらヤだもんな」

貴音「でしょう?」

浩太郎「そっかー……おくれちゃうかー……」

貴音「…………」

浩太郎「……じゃあさ、ダッシュツしちゃう?」

貴音「え……?」

浩太郎「裏にね、ヘイがこわれて穴があいてんだ。けっこーおっきいし、たかねーちゃんも……」

貴音「ま、真ですか……!?」

浩太郎「プロデューサーさんがくるまで待てないんでしょ? オレもねー、お迎えがおそいとヤダしね」

浩太郎「……にーちゃーん!」

長介「?」

浩太郎「たかねーちゃんにお花みせたい! 裏のやつ!」

長介「花? 裏に? ……なんか咲いてたっけ」

浩太郎「いい?」

長介「うーん……貴音さん、大丈夫ですか? 体調、まだ優れないんだったら……」

貴音「……いえ、私でしたら大丈夫です。……休ませていただいたおかげで、すっかり気分が良くなりました」

長介「そ、そうですか? ……んー、だったら……浩太郎、貴音さんにご迷惑かけるなよ?」

浩太郎「うん! いこ、たかねーちゃん!」

貴音「…………」

かすみ「……? 貴音さん?」

貴音「高槻長介、高槻かすみ。……ご厚意は、決して忘れません。
   ……やよいにも、どうか宜しくお伝えくださいね」

長介「……?」

浩太郎「たかねーちゃん、早く早く!」

貴音「……それでは。……お2人も、どうかお元気で」

 タッタッタ…

長介「ど……どーしたんだろ、いきなり……」

かすみ「う、うん……」

 ジリリリリリーン、ジリリリリリーン…

長介「あ……はい、もしもし」ガチャッ

長介「――! プロデューサーさん……!」

―高槻家・物置付近―

 ガサガサッ…

浩太郎「ほら、ここ。だまって遊びにいくときとか、いっつも通るんだー。……通れる?」

貴音「……ええ。おそらくは」

浩太郎「……ほんとに?」

貴音「……き、鍛えておりますから……たぶん」

浩太郎「たかねーちゃん、でっかいもんな」

貴音「……女性の身体について、とやかく言うものではありませんよ」

浩太郎「ふーん……」

貴音「んん……っとと……ほ、ほら、御覧なさい、何とか……」グイグイ

浩太郎「……たかねーちゃん。たかねーちゃんってさ、アイドルだよね」

貴音「……? はい」

浩太郎「うちさ、いっつもやよいねーちゃんのテレビしかロクガしてなかったけど……
     こんどから、たかねーちゃんのもロクガする」

貴音「! …………ありがとう。……でも……」

浩太郎「?」

貴音「……できれば、他の765プロの皆も応援してあげて下さいね。皆、すばらしい才能の持ち主ですから」

浩太郎「……? うん」

貴音「……ありがとうございます、浩太郎。……あなたのご助力、決して忘れません。
   どうか……いつまでもお元気で。立派な宇宙飛行士になるのですよ」

浩太郎「また会えるよね」

貴音「ええ、きっと。……あなたが、夢を持ち続けていれば。……それでは」

浩太郎「……ばいばい。……またね。ゼッタイまたね」

貴音「…………」ニコッ

 ガサッ、ガサガサッ …スポンッ
 タッタッタッタッタ…

浩太郎「…………」

長介「貴音さーん、もうちょっとでプロデューサーさん来るそうですよー!」

浩太郎「…………」グスッ

長介「……? 貴音さーん? おーい、浩太郎ー! おーい!」

浩太郎「! ……ちょっと待ってー! いま、えっと……いいとこだからー!」グスッ

長介「? どしたー浩太郎? 転んだのかー!?」

浩太郎「ちがうー! ちぃーがぁーうー!」

長介「……まったくもう……」タタタタッ

 ピンポーン…

長介「あ……はーい! あ、プロデューサーさん! すみません、わざわざ……」

P「た……貴音は!? 長介くん!」

長介「すみません、今、裏で浩太郎と……おーい、浩太郎ー!」

P「た、貴音ぇー! お前、お前どうして……!」ダダダダダッ

 シィィィーン…

浩太郎「…………ひっく……」グスッ

P「……え?」

長介「あ……あれ……?」

―空き地―

貴音「……はぁ……はぁ……」タッタッタ

貴音「…………」キョロキョロ

貴音(……人の目もありません……ここならば)

貴音「…………」スッ

 『お止めなさい! ……お止め下され、貴音様!』

貴音「……!?」

じいや『今度こそ、本当に消滅してしまうのですよ!』

貴音「……じい、や……」

 ブロロロロ…キキィーッ!
 バダン! 

  「貴音ぇ!!」

貴音「!?」

P「はぁ……っ……た、貴音……!」

貴音「あ……あなた様……どうして」

P「ハハ……う、裏から出たんだろう、って聞いたからさ……こっちの方向かな、って……」

貴音「…………」

P「……なぁ。……どうして逃げたりなんかしたんだ? ただでさえ……お前の身体は、その……」

貴音「…………」

P「……ま、いいや。ほら、事務所に戻ろう? みんな……お前を心配してる」

貴音「……駄目なのです」

P「え?」

貴音(……もう、限界なのです。あなた様)

貴音(アイドルとして歌い、闘う事も……あなた様を、皆を、欺き続けることも)

貴音(……だから……だから、もう……)

貴音「……あなた様……」

P「……? 貴音…?」



貴音「……私は……私は、人間ではないのです。B90星雲から来た、ウルトラシジョーなのです!」



P「――!!!」



 ジャジャン! テテーン! デデンデデンデデンデデンデデーン…

ttp://www.youtube.com/watch?v=nTWfjkCTYVs

貴音「…………」

P「…………」

 …チャラララチャラララ~ラ~

貴音「……驚かれたでしょう? ……私は、この星の住人ではありません」

貴音「文化衰退のために民が散り散りになった、我が故郷を救うために……この星の『アイドル』という文化を学びに来た、異星人なのです」

P「…………」

貴音「……でも、私は……皆を、守りたくなった」

貴音「どこの生まれとも知れぬ、こんな私を……仲間だと認め、親しく接してくれた、765プロの皆を……」

貴音「……私の持てる力、その全てを尽くして守ろうと……そう、思ったのです」

P「! じゃ、じゃあ……あの、何かよく分かんないうちに961プロの妨害が収まる、あの歌も……!」

貴音「使命のためとはいえ……身分を偽り、真実を隠して……ずっと、あなた様方を欺いておりました」

貴音「……いかなる謝罪でも足りないのは、重々承知しております。……ですが、それでもどうか、言わせて下さいませ」

貴音「……ご迷惑をお掛けしました。……本当に、申し訳ございません」

P「…………」

貴音「……今から、響達を助けに参ります。……全てが終わったら、私はもう――」

P「……迷惑なもんか」

貴音「――え?」

P「誰が……誰が迷惑なもんか。人間だろうと、宇宙人だろうと……貴音は、貴音に変わらないじゃないか。
  たとえ、ウルトラシジョーでも……お前は俺の、大事なアイドルだ……!」

貴音「!! あ……あなた……様……!」

P「……帰ろう、貴音。美希と響を助け出して……それで、もう一度、みんなとアイドルを……!」

貴音「……駄目なのです……! 私が『力』を振るえるのは、あと一回限り……
   そうなれば、私は……故郷に帰るしか……」

P「! な――だ、駄目だ! 絶対に駄目だ!」

貴音「しかし……!」

P「なあ、貴音! まだ……まだきっと、何か手があるはずだ! 響と美希を救う手立てが!
  お前があの何か凄い感じの衣装に着替えなくても、2人を助けられる方法が!」

貴音「……分かって下さい、あなた様。事は一刻を争います。……これが、最も確実で……最も手早い方法なのです」

P「た……貴音っ……!」

貴音「……あなた様……いえ、プロデューサー。最後のお願いです。
    ……2人が連れ去られた、あの屋外ステージに……自動車を用意して、待っていて下さい。
    必ず……2人を助け出してみせます」

貴音「……そして……全てが終わって、西の空に明けの明星が輝く頃……
    1つの光が宇宙へ飛んでゆくのが見えるでしょう。……それが、私の最後の姿です」

P「! た、貴音! やめろ……行くな! 行かないでくれ……!」

貴音「美希と響がぴんちなのですよ!」

貴音「……でゅわっ!!」パキッ


 ドヒュゥンユンユンユンユンユンユン!

P「!! あ……あ……」

貴音「……プロデューサー。今まで……本当に、ありがとうございました」

貴音「この星で……765プロの皆と出逢えてよかった。孤独な私を受け入れてくれて……本当に、嬉しかった」

貴音「…………さようなら。あなた様」


 シュバッ! キィィィ――ン…


P「た……貴音! 貴音ぇぇ―――っ!!」

P「……ば……ばかやろぉ……ばかやろぉぉ――――!」




P「明けの明星は東だぞぉぉ! 貴音ぇぇぇぇぇ!!」

―961プロ事務所―

響「……お腹すいたな……」

美希「……くかーっ……」zzz

響「……よく寝られるなあ、こんな状況で」

美希「……!!」ピクッ

響「ん?」

 キィィィ―――ン…!!
 ガシャァァァァン!!!

響「!? えっ、わっ、わ、なっ、なに――」

貴音「…………」シュゥゥゥ

響「……!! た……貴音ぇぇぇ!」

貴音「……響、美希。……遅くなって、申し訳ありません」

美希「貴音……ミキ、信じてたの……!」

貴音「……ああ……2人とも、なんて酷い仕打ちを……! 動かないでください、今……でゅわっ!」

 パキンパキンパキンパキンパキン!

響「わわっ!」スルッ

美希「ふわぁー……やっと手首が回せるの」クルクル

貴音「拘束は外しました。……さぁ、帰りましょう。美希、響……私に掴まって下さい」

響「へ?」

 バタバタバタッ
 「何だ、何の騒ぎだ!」
 「人質の部屋だぞ、急げ!」

貴音「――! 2人とも、早く! 私に掴まって!」

響「え、え? じゃ、じゃあ……」ギュッ

美希「……あ! もしかして、えっと……あ、あれなの! テレポート!?」ギュッ

貴音「いいえ、飛びます。物理的に」

美希「なーんだ」

響「えっ――」

 ダンッ!!
 キィィィ――――ン!!

響「うわぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁ!?」

美希「ひゃっほぉぉぉぉなのぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 ガチャッ!

黒井「な――こ、これは……!」

翔太「あっちゃー……逃げられちゃったね」

黒井「言っとる場合かァ! おのれぇ四条……!
    おい、大至急ヘリを出せ! そうだよ屋上にあるアレだ!」

北斗「あの、社長……」

黒井「何だ!」

北斗「……やっぱり、俺達も行かなきゃ駄目ですか」

黒井「当たり前だ! ……ククク、待っていろ四条! 我が961プロの最終兵器で、今度こそ貴様を葬ってくれる!」


?「……ピポポポポポポ……」

―ライブ会場―

響「……ぁぁぁあああああああ」

貴音「でゅっ!」スタッ

響「あがっ!」

美希「あふぅ……あれ、もう着いちゃったの?」

貴音「はい、まっは7ですから」

響「なっ! な、なぁっ、なんでそんなに余裕あるんだよー!」

 キキィ――ッ!!

美希「?」

響「! ま、まさか追手が……!?」


 バダン!

P「美希! 響!」タッタッタ

律子「よ、よかった……3人とも無事よ、みんな!」

 「いよっしゃぁー!」 「やったぁー!」 「もうっ! し、心配かけさせてっ……!」

美希「は……ハニぃ――っ!!」ギュゥッ

響「プロデューサぁぁ――――っ!!」ギューッ

P「ごめん……ごめんなぁ美希……響……怖かったろう……」

貴音「…………」

P「……貴音……」

貴音「…………」ニコッ

P「! …………」

亜美「ミキミキー!」

真美「ひびきーん!」

雪歩「し、四条さぁん……よかった……よかったよぉ……!」

律子「……よかった……本当……もう、どうしよう、って……ううっ……」

高木「……秋月君」

美希「! わ……すっごいお宝映像なの。あの律子が泣いて――あたっ!」ペチン

律子「り・つ・こ・さ・ん! ……もう……!」

春香「響ぃっ!!」ダダダッ

千早「あ、春香! こんな暗いのに走ったら……!」

やよい「ひ゛びぎざぁ゛~ん゛~~!! み゛ぎざぁ゛~~ん゛~!!」

あずさ「やよいちゃん……鼻水……」グスッ

真「よかった……よかったぁ……っ!」ヒッグ

美希「み、みんな……」

響「でも、プロデューサー……それに、みんなまで……なんでここが?」

P「……貴音が教えてくれたんだ。ここに、2人を連れてくるって。……それを社長に電話したら……」

高木「うむ。何せ、こんな状況だ。バラバラに行動して、また黒井の奴にさらわれては大変だからね。
    ……だが……良かった……」

響「え?」

高木「……彼女達に、残酷な選択を強いることなく……2人を救いだすことができたのだ。
    四条君。……本当にありがとう。……全て、君のおかげだよ」

貴音「……高木殿……」

律子「……さて、と! 貴音。……正直ね、言いたいことはたっっっくさんあるけど。
    ……小言は、事務所に戻ってからね」

伊織「……全くよ……こっちがどれだけ心配したと――」

貴音「…………」

美希「……貴音?」

P「…………」

貴音「……お許しください、律子嬢。……私には、まだ……」

貴音「……やるべきことが、残っています」

 バラバラバラバラバラ…

高木「!?」

響「……! な、何アレ……ヘリコプター?」

黒井『フハハハハ! 追いついたぞぉ、四条貴音!』

美希「げっ……」

律子「く、黒井社長……!」

黒井『ううん? ほーぉ、貧相な面がワラワラいるかと思えば……弱小765プロ勢揃いとはな!
    いいだろう! 私の切り札、"改造ジュピター"で……一網打尽にしてくれる!』

響「か……改造ジュピター?」

黒井『行けぃ! 北斗ォ!』トンッ

北斗「うぉぁぁあああ! ぱ、パラシュート! パラシュートぉ!」ヒューッ 

黒井『出番だ、翔太ァ!』トンッ

翔太「ねぇこれ開く!? ちゃんと開くよね、ねぇ!?」ヒューッ

 パッ パッ

北斗「うぉぉぉ……ひ、開いた……」スタッ

翔太「あぁー……ああぁ~~……」スタッ

黒井『そして……さぁ、思う存分暴れるがいい! サイボーグアイドル・改造冬馬!』

改造冬馬「――――」ダンッ!


 ヒュゥゥゥゥゥ……ズドォーン!


改造冬馬「……ピポポポポポポ……」

P「……え?」

亜美「あ……あれ……あまとう? ホントに?」

あずさ「あ、あらぁ~……け、結構イメチェンしたのねぇ……」

伊織「いやいやいや! イメチェンってレベル!? 左手完全にメカじゃないの!」

真美「右足もだよ……かっちょえー……」

改造冬馬「……ピポポポポ……」ウィーン

北斗「……冬馬……なんで、こんな姿に……!」

春香「ぴ……ピピンくん……」

改造冬馬「ピポポポポ……ピ、ピン……」

翔太「……ああ……もう、名前弄りにつっこむ意思も……!」

黒井『フハハハハ! これぞ究極のアイドルにして、我が961プロの最高傑作!
    特殊合金装甲の手足に、余計な感情を全て取り除いた有機AI!
    オプションパーツ次第で4つに分離飛行したり、自動車を捕食したりもできる! 
    一家に一台改造冬馬! まさに新時代のスーパーアイドルだァ――ッ!』

高木「く……黒井……! 貴様! どこまで堕ちればっ……!!」

黒井『ほざけ高木! ……貴様らのヌルい仲良しごっこも、今夜で全て終いにしてやる。
    我が961プロ、そして改造ジュピターの実力をもってな! ハーッハッハッハッハ!!』

小鳥「実質、改造されたの冬馬くんだけじゃ……」

黒井『さあ行け、改造ジュピターよ! お前達の持つその力を、哀れな765プロに見せつけるのだ!』

貴音「させません! ……ゆーめのーなかでぇー! まぁーたぁーつーつんでぇぇー♪」ドギュォォ

北斗「ぐっ……あーいーしーてるぅ! あいしーてる! いつかーみらーいでぇー♪」キィィィン

翔太「ぼーくがーきみーにぃー! ちーかうーからぁー♪」キィィィン

改造冬馬「ピポポポポ……」バシュゥン!!

貴音「! な――」


 ドガァァァァァァン!!!

P「!?」

北斗「!?」

翔太「!?」

千早「え……な、何……!?」

真美「あ……あまとうの口から……何アレ!? 火の玉!?」

貴音「……ぐ……うっ……!」ヨロッ

黒井『ハハハハハ! どうだ四条! 天ヶ瀬プラズマ火球の味はァ! 一兆度だぞ、一兆度!
    これがサイボーグアイドルの力よ!』

P「あ……アイドル関係ねぇ……」

改造冬馬「……ピポポポポ……トウ、マ……フィギュア……」

春香「――!」

黒井『さぁ、もっとだ! あの憎たらしい銀髪女を叩きのめせ! 改造ジュピター!』

北斗「っ……ゲッチュー! いーこう! さぁいーけるぅ! どんなー今日ーでもぉー♪」ギュォォォ

翔太「ふーたりーならーばぁー! こーいをーはじーめよぉー♪」ギュォォォ

貴音「あぁああぁぁあぁぁっ!!!」ドガァァン

P「たっ……貴音ぇっ!」

貴音「……はぁ……はぁっ……」

P「……駄目だ……もういい! もういいんだ! 俺達が何とかする、だから……っ!」

貴音「…………」ヨロッ…


P「……このままじゃ……宇宙に帰れないどころじゃない! 本当に死んじまうかもしれないんだぞ!」


律子「――!?」

雪歩「え……」

響「ちょ……ちょっと、プロデューサー? な、何を……」

貴音「……っ……!!」

P「……あ……」

伊織「……何、何なの……!? どういう事!?」

P「……宇宙人なんだ。貴音は……いっつも、危ない所で俺達を助けてくれた貴音は……宇宙人だったんだよ。
  どこか、遠い別の星から来て……ずっと、俺達を守ってくれてたんだ……」

一同「 」ポカーン

伊織「な……何よ、それ……」

千早「じゃ、じゃあ……あの何だかすごい感じの歌も……」

響「そ、そうか……だから、時々空とか飛んで……!」

亜美「そう言えば……時々、いきなり背後に立ってたりしたし……!」

真「ラーメン20杯を5分で一気に平らげてたのも……!」

やよい「怖い記者さんをぐるぐる回してギューンって投げたりもしてました! かっこよかったです!」

P「……何で気付けなかったかなぁ……」

高木「だ、だが君……その、宇宙に帰る、というのは……」

P「……貴音は……俺達を守るために、力を使いすぎたんです。だから……この戦いが終われば、貴音は……
  ……もう……故郷の星に、帰るしか……!」

小鳥「そん……な……」

貴音「くぅっ……ねぇいーいかなぁーっ! ……もっとえーがーおー……っ……おーくってぇーみて……!」グォォォン

北斗「あぐっ……!」

P「……あんなに……ボロボロになるまでっ……貴音は……俺達のために……! 畜生……畜生……!」

改造冬馬「ピポポポポポポ……」キュィィィン

貴音「! し、しまっ――」

伊織「たっ、貴音えぇぇっ!!」

雪歩「だめ……四条さん! 四条さぁぁん!!」

春香(! そうだ……一か八か……!)





春香「あぁ――っ!! あんな所にナイスマのフィギュアが!!」


改造冬馬「ピポッ!?」クルッ


 キュィィィ…バシュウッ! ドガァァァァン!!

P「!?」

貴音「! え……!?」

黒井『な……何だッ!? 首がいきなり180度……!?』

春香「や……やっぱり……!」

伊織「な、何よ、何なのよ一体! 春香!?」

春香「みんな、どんどんフィギュアとかクリームソーダとか言って! 適当な方向指さしながら!」

あずさ「え? ど、どういう……」

P「……! そうか……! おーい冬馬ぁ! 足元に今月のホビージャパンが!」

改造冬馬「ピポポポッ!?」バッ

亜美「! あまとーう! 後ろにクリームソーダの2リットルボトルが!」

真美「しかもしかもぉ! 斜め右には執拗にピピンって呼ぶ生意気な後輩が!」

改造冬馬「ピポポ……ピ、ピン……ジャ、ネェ……」グルグル

律子「! い、今……」

P「そ、そうか……! どれだけ改造を受けたとしても、人の本質はそう簡単に変わらない!
  いくらピポピポ言ってても、心の奥底では冬馬なんだよ……! オタカルチャーと炭酸飲料が大好きな、あの天ヶ瀬冬馬のままなんだ!」

北斗「と……冬馬……?」

改造冬馬「ピポ……ポ……ホ、クト……ショウ、タ……」グルグル

翔太「! と、冬馬くん……冬馬くんっ!」

黒井『ば……馬鹿な! こんなことが……!』

伊織「! ま、待って……じゃあ、私達がみんな、てんでバラバラに散らばって煽れば……!」

真「! うん……! もしかしたら、アレを撃たせずにずーっとグルグル……!」

貴音「な――! お、お止めなさい! 皆に……皆にもしもの事があっては……私はっ……!」

伊織「馬鹿にすんじゃないわよッ!!」

貴音「!!」

伊織「何よ……勝手に人の事助けといて、ずーっと1人でボロボロになって……! その上まだカッコつけようってわけ!?
    冗談じゃないわ……こ、これ以上! アンタに活躍なんてさせないからね……っ!
    あ……アンタなんていなくても、私達は大丈夫だって……! お、思い知らせてやるんだらかぁっ!」

 ダッダッダッダッダ…!

貴音「! い……伊織……!」

伊織「こらあまとーう! 真上にアダムスキー型円盤が来てクリームソーダ垂らしてるわよぉー!」

改造冬馬「ピポポポピピピ……!?」バッ

雪歩「四条さん! あのヘンテコなのは私達が引きつけます! だから――!」

真美「……もう、1人でムチャしないでよ。……真美たちだって、やればできるんだかんね!」

亜美「んっふっふ~! あまとう弄りのマエストロ、双海姉妹の底力! とくとご覧に入れてしんぜよう!」

貴音「……雪歩……真美、亜美……!」

高木「よぅし! 行くぞみんな、水瀬君たちに続けぇ!」

一同「おおおぉぉぉ―――!!」ダダダダッ

やよい「冬馬さぁーん! ファンの人が来てます! あっち向いたげてくださーい!」

春香「冬馬くーん! 左斜め後ろにラブレター置いといたよー! 嘘だけどー!」

千早「ジュピターって意外と良い曲多いって、右にいる人が言ってたわー!」

雪歩「お父さんとお弟子さん呼んでおきましたぁ! 背後に結集してますぅ!!」

あずさ「えーっと……あ! あっちむいて、ホイ!」バッ

小鳥「結婚するなら事務員よねぇー!!」

律子「天ヶ崎ー! ヘリ! 上のヘリ狙うのよー!」

高木「来年の恵方は東北東だよー! ほれ、あっちだ、あっち!」

響「危ないあまとーう! 真上からワニ子が回転しながら襲ってくるぞー!」

美希「ぐるぐる首を回すのがすっごくイケてるって、JCの間では大評判なのー! あ、ウソだよ!」

P「新作だー! リボルテックの新作がお前の斜め前右にー!」

亜美「ヘイッ! お・にが・しま! お・にが・しま!」

真美「ピ・ピ・ン! ピ・ピ・ン! あらよっ!」


改造冬馬「ピポポ……ピピッ……ピガッ、ピピ……!!」グルグルグルグル

北斗「と……冬馬の頭が……マブチモーター並の勢いで……!」

翔太「き、キモっ……」

黒井『そ、そんな……こんなアホらしいことで……ハッ!?』

貴音「…………」ザッ

黒井『ま、不味い……! 何をやっている改造ジュピター! 早く――』

貴音(……ああ……本当に……)

貴音(……あなた達のような友を持てた、それだけで……それだけで、私は……)

貴音「…………」スゥーッ

北斗「! え……」

翔太「あ――」

貴音「むぅねのぉぉぉおくがぁぁ! くぅぅるぅぅぅしぃぃいくってぇぇぇぇぇ! えぇぇえええぇ!!」ドギャァァァン

北斗「うぐぇええぇああっ!」ドグシャッ

貴音「もうっ! 花になりたぁぁぁぁぁいいいぃぃぃっ! もっとぉ!」グッパオン

翔太「ふぎゅああああっ!」メキョォッ

貴音「あ! お! ぞ! ら! のふらわぁえんびぃぃ!!」トッコォーン

改造冬馬「ピポポパポパポポ……!!」ガタンガタン

千早「な……!」

伊織「嘘でしょ……あの衝撃波に耐えたの!?」

黒井『ぐぅ……は、ハハハハハ! それっぽっちの歌唱では、改造冬馬はビクともせんわ!』

貴音「ならば、物理ッ!」

美希「貴音ぇっ!」ブンッ
 
 ヒュルルルル……パシッ!

貴音「……受け取りなさい。皆の叫びを、皆の怒りを!
    必殺・ミキスラッガー! でゅわーっ!」

 ブンッ! キィィ――ン

黒井『馬鹿が! そいつは既に対策済みよッ!』

改造冬馬「ピポポポポォ!!」ガシッ

貴音「!」

響「な……」

P「ミキスラッガーを……掴みやがった……!」

黒井『フハハハハハハ! 残念だったな四条貴音ぇ! 頼みの切り札もこのザマではなぁ! ハーハッハッハッハッハ!
    改造冬馬! そのしょっぼいブーメランを、そっくりそのまま投げ返してやれ!』

改造冬馬「ピポポポポ……!!」グイッ

貴音「っ……!」ダッ

律子「!? た、貴音!?」

黒井『ククク……これは傑作だ、まさか真正面から飛び込んでくるとは! 
    万策尽きたか四条! 見苦しくって敵わんぞ! ハハハハハ! やれぇ改造冬馬ァ!』

改造冬馬「ピポポポ!!」ブンッ

 
 
  ヘニョッ …パラパラパラ…


改造冬馬「……!?」

黒井『!? な……何だ!? どういうことだ!? なぜ飛んで行かん! なぜ空中分解!?』

美希「――ミキ……スラッガーは……一度きり……一回使えばボロッボロなの……」

P「あれ!? 美希、お前……!」

黒井『ば……馬鹿な……馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な!』

貴音「せいっ!」ガシッ

改造冬馬「ピポポ……!!」ヨロッ

黒井『こんな……こんなッ! こんな事がぁぁ!!』


貴音(……この一撃に……私の全てを……!)
 
貴音「おおおおおぉぉおぉぉぉぉおおぉぉおおぉおおお!!」グイッ

 
貴音「ウルトラシジョー……ハリケェェェェェンッ!!」ブゥンッ
  

改造冬馬「ピポパポポポパポ――」ドヒュゥゥン

黒井『な……投げ飛ば――』 

改造冬馬「――――」クルクルクルクルクル

黒井『! ば、馬鹿、来るな! やめろ! 来るな! 来るんじゃな――』



 ゴシャッ!

 ……ドッゴォォォォォォン……


P「や……やった……!」


貴音「…………」

 ヨロッ…

貴音「…………」

貴音「……」チラッ

P「……!」

春香「あ……」

伊織「た……たか、ね……」

貴音「…………」



貴音「…………でゅわっ!」シュバッ



  キィィ―――ン……





 『明けの明星が輝く頃……』
    
 『1つの光が宇宙へ飛んでゆくのが見えるでしょう』

 『……それが、私の最後の姿です』



響「…………っ……」グスッ

雪歩「……四条さんは……」

真「……?」

雪歩「この星にいられないくらい、ボロボロになって……だから、四条さんの星へ帰るんでしょう……」

雪歩「……なら……! 四条さんを追い出したのは……! うぅっ……ああぁぁっ……!!」

律子「雪歩……」

雪歩「私たちなんですよっ……! 四条さんを傷付けたのも、追い出してしまったのも、全部! 全部……!」

高木「…………」

雪歩「四条さんが……私のせいで四条さんが死んじゃったら……私……うぁああ……ああぁああ……!!」

P「違う!」

雪歩「っ!?」ビクッ

P「貴音が……あんな凄い奴が、そう簡単に死んでたまるか……!」

伊織「……そうよ。貴音は生きてる。……きっと生きてるわ!」

亜美「……きっと、宇宙のどっかから……亜美たちを見ててくれてるよね」

P「……ああ。そしてまたいつか……元気な姿で戻ってくる!」

千早「…………」グスッ

真「……ですよね。……貴音さんのことだもん……きっと、きっと」

P「……だから、その日まで……765プロは、俺達自身で守るんだ。
  黒井社長のかけた洗脳を解き直すのも……新しいファンを掴むのも。……俺達自身で、一から全部」

真美「お姫ちんが、安心して戻ってこれるように……だよね?」

P「ああ……ああ……!」



P(……貴音。……見守っていてくれよ)

P(765プロは、もっと強くなる。……どんなことにも屈しない、最高の事務所にしてみせる)

P(だから……)

P「だからきっと……絶対に、また……!!」

 
 
  四条貴音の 名を借りて


  ウルトラシジョー アイドル シジョー

  ウルトラシジョー シジョー シジョー

  倒せ 毒吐く 黒井社長

  フラワーガールで ストライク……



   ― ウルトラシジョー ―

       ―終―

――――――――――――――――
――――――――――
――――――

亜美「はい! 以上、ウルトラシジョー、感動の最終回でした!」

真美「来週からは、お姫ちんら『SIRI』のメンバーが怪事件に挑む、『猟奇大作戦』が始まるよ!」

伊織「」ポカーン

雪歩「ううっ……四条さぁん! なんで帰っちゃうんですぁぁ~~!!」ウワーン

P「何やっとんだお前らは」ペシッ

亜美「あだっ! 何すんのさ兄ちゃん! この第二のキンジョーとまで呼ばれた大天才の亜美にー!」

P「なぁーにが大天才だ、勝手に人を妄想に出して遊びやがって……ゴメンな貴音。またこの2人がヘンなこと……」

貴音「いえ……それにしても驚きました。まさか、ここまで知られているとは……」

P「えっ」


おわり

近日中とか言いながらこの体たらく 読んでくれてありがとね

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