ｶﾞﾗ

男「よっ、やってる？」

営業「ああ、いらっしゃいませどうぞ」

男「今度さー、この辺に引っ越す事になってさ」

営業「ああ、左様でございますか」

男「でもあんまりさ、住むところに金かけたくないんだよね」

営業「ああ、なるほど」

男「だからさ、多少難ありでいいから安くていい物件紹介してくんないかな？」

営業「はい、承知しました」

営業「では･･･。こちらなどはいかがでしょう」

男「ほう、どんなの？」

営業「多少、工事の時に問題があったようで」

営業「あと、地盤の少々弱い所に建っておりまして」

男「ああ、よくあるよなそういうの」

男「ちなみに、何て名前？」

営業「ハイツ　ブレルでございます」

男「何だか潰れそうな名前だな」

男「地震が来たら潰れそうでやだなそこ」

男「もっと違うとこないの？」

営業「お気に召しませんでしたか」

営業「では、こちらなどはいかがでしょう」

男「ほう、どんなの？」

営業「築三年、駅から５分で敷金礼金ナシの物件でございます」

男「へぇー、悪くなさそうだな」

営業「多少住人の質が悪いようですが。なに大したことはございません」

男「ふーん、住人の質ねぇ･･･。ちなみにそこ、何てとこ？」

営業「カーサ　ガナクナルでございます」

男「住人の手クセが悪そうな所だな」

男「それ、傘だけじゃなく色んな物取られそうだな。知らない間に」

男「ほかにないの？」

営業「これはご不満でしたか」

営業「では、こちらはどうでしょう」

男「ん？これどんな物件？」

営業「ドイツの方が多く入居されてまして」

男「周りがドイツ人だらけかー。近所づきあい困りそうだな」

男「ちなみに、何て名前の物件？」

営業「ハイツ　ヒトラーと申しまして」

男「ハイルヒトラーかよ！」

男「やだよそんなナチスの秘密基地みたいな所」

男「もっと違う所紹介して」

営業「そうでございますか」

営業「それでは、こちらはいかがでしょう」

男「ん？これどんな所？」

営業「お医者様がたくさん住んでいらっしゃるそうで」

男「え？医者？まぁ、何かあったら助かるかもな」

営業「こちらにお決めになられますか？」

男「うーん、どうすっかなー。ちなみに何て名前？」

営業「ハイツ　ギノカタでございます」

男「ああ、医者がよく言うわそれ」

営業「ちなみにお医者様専用でございます」

男「じゃあダメじゃねーかよ。俺が医者に見えんのかよ」

営業「フフッ･･･いえ」

男「ブン殴るぞこのヤロー」

営業「では、こちらなどいかがでしょう」

男「どんな所だよ」

営業「宗教関係の方が大家さんで、その関連の方が多く住んでるようです」

男「宗教関係？何だか不安だな」

営業「それは偏見ですよ。悩み苦しむ人を救おうと活動されているようですから」

男「ふーん･･･まぁ、何て名前の所？」

営業「ハイツ　ボカエと申します」

男「壷買えって、霊感商法かよ！インチキ宗教だろそれ」

男「んな所住んだら勧誘とかされまくるに決まってんだろ」

男「もっとまともな所紹介しろよ」

営業「ご不満でございましたか」