一夏「俺、デブは嫌いなんだ」 (27)

【学食】

セシリア「え、えぇっ⁉︎」ガタッ

一夏「……? どうしたんだ?」

セシリア「今なんとおっしゃいまして⁉︎」

一夏「いや、[ピザ]は嫌いだって」

お相撲さん(TV)「どすこーい! どすこいどすこーい!」

一夏「見てみろよ。あれ。暑苦しいったらありゃしないよな」

セシリア「そ、そうだったんですの。テレビに映ってらっしゃる力士の方の」

一夏「女の子だって太ってるのは嫌だけどさ」

セシリア「……!」ガタッ

一夏「おわっ⁉︎ さっきからどうしたんだ? 様子が変だぞ!」

セシリア「い、一夏さんっ! 女子に軽はずみな体重の話は厳禁ですわ!」

一夏「いや、でもセシリアはそんな心配」

シャルロット「なんの話?」ヒョイ

一夏「ああ、なんだ。シャルも昼飯か」

シャルロット「うん。ボクもご一緒させてもらっていいかな、えへへ……セシリア、どうしたの? 座ったら?」

セシリア「けっこうです! ちょっと、その、食欲がありませんので失礼します!」ガチャン コツコツ

シャルロット「え、まだ半分も食べてなかったのに……一夏、セシリアになんか言った?」

一夏「いや、思い当たる節はなにも」

シャルロット「ほんとかなぁ」

一夏「なんだよ。テレビを見ながら、[ピザ]は嫌いだって言っただけだって」

シャルロット「はぁ……。いちかぁ……女の子の前でそんなこと言っちゃだめだよぉ~」

一夏「どうしてだめなんだ?」

シャルロット「体重は気にするからね。それで? 一夏は痩せてる子がいいの?」もぐもぐ

一夏「あぁ、[ピザ]は嫌だな。でも、シャルも――」

シャルロット「ごちそうさま」カチャ

一夏「お、おい。まだちょっとしか」

シャルロット「な、なんだか今日はお腹いっぱいになっちゃってさぁ~」

一夏「体調でも悪いのか?」

シャルロット「心配してくれるの……?」

一夏「ああ、もちろんだ」

シャルロット「え、そ、それって、どして……?」

一夏「もちろん! シャルは大切な仲間だからな!」

シャルロット「な、仲間……。そ、そうだよね……あは、あはは……」ショボン

一夏「悩みがあったらなんでも聞くからさ!」ポン

シャルロット「ありがとう」

一夏「それで、体調は本当に平気なのか?」

シャルロット「うん。大丈夫。問題なのは、恋する病、なんちゃって」

一夏「……?」

シャルロット「もぉ! どうして聞いてほしいときに聞こえてないんだよぉ!」バンッ

一夏「おわぁっ⁉︎」

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【トレーニングルーム】

セシリア「――どうして、だめなんですのぉっ⁉︎」

シャルロット「やっぱり、ここにいた」

セシリア「シャ、シャルロットさん、なぜここに」

シャルロット「一夏から経緯を聞いたから。もしかしたらと思って。スーツ、なにしてるの?」

セシリア「こ、これは、その……」

シャルロット「それ、どう見てもワンサイズ小さいよね」

セシリア「去年までだったら着れていたんです! 「もうちょっ、と。ふっ、ふっ、よっ! とおっ! はぁっ!」

シャルロット「無理だよ」

セシリア「「いやっ! いやいやいやっ! 太ってなんかっ! 太ってなんかいませんわっ! ……ちょっと増えてましたけど……」

シャルロット「発育があるから、当たり前――」

セシリア「そうですわっ! わたしが太ったんじゃありませんっ! きっと洗濯してしまったから縮んだ、服の方が縮んだんですわっ! 流石わたくし、貴い一夏様に嫌われないように」

シャルロット「とうとい一夏さまぁ?」ピクッ

セシリア「そうと分かれば次の服です! シャルロットさん! そこの袋に入ってる服を!」ビシ

シャルロット「ん~どれだろぉ。これかなぁ~、はい、どうぞ」ニコ

セシリア「はやくよこしなさい!」バシッ

シャルロット「おお、こわ」

セシリア「うんしょ、よいしょ、あ、あら? これも? よっ、ふっ、ふっ、ふんっ!」

シャルロット「お腹に力いれてるの丸わかりでみっともないよぉ~?」

セシリア「~~~~ッ!」ブチンッ

シャルロット「あらら。ボタンとれちゃった」

セシリア「ど、どうして。わたくしともあろうものが。このような事態に」

シャルロット「あぁ~あ。一夏に嫌われちゃうねぇ~」

セシリア「……!」ビク

シャルロット「食べすぎなんじゃない?」

セシリア「馬鹿食いの中国娘と一緒にしないでくださる⁉︎」

シャルロット「それで、何キロ増えてるの?」

セシリア「ご、ごき……」もごもご

シャルロット「ん?」

セシリア「5キロですっ! あぁん、もう! わざわざ言わせないでください!」

シャルロット「そんなに? 見えないけど……」

セシリア「ウエストサイズは変わらないんですけど。その、お尻と、お胸に少し脂肪がついたようで」

シャルロット「そ、それって」ヒクヒク

セシリア「どうしましょう⁉︎ このままでは一夏さんに嫌われてしまいますわ!」

シャルロット「はぁ……」

【数時間後 同トレーニングルーム】

セシリア「ダイエットですわ!」

鈴「唐突に呼び出されたかと思えば、なんでこうなってるわけ」

シャルロット「さぁ~」ポリポリ

セシリア「協力してください!」

箒「と、言われてもなぁ」

ラウラ「訓練があるし暇なわけじゃないんだが」

鈴「はっはーん。要するに、太ったってわけ?」

セシリア「きーーーーっ!」

ラウラ「気にするほどでもないだろう」

箒「そうだな。それに、突然の申し出を了承も得ずに決められていては困る」

セシリア「もろろん! 力を貸していただく上でタダとはいたしません! これを見てください!」ピッ

鈴&ラウラ&箒「そ、それはっ⁉︎」

セシリア「そうです! ネズミーランドの三ヶ月フリーパスチケットですわ! 本国に連絡して特別に支給していただきました!」

鈴「三ヶ月⁉︎ ほんとなの⁉︎」

ラウラ「ネズミーランドというのは、かわいいマスコットがいっぱいいるところなはず」ソワソワ

箒「うーん……」

セシリア「どうです?」

鈴「ペアチケットよね」

セシリア「へ?」

鈴「どうなの⁉︎」ダンッ

セシリア「そ、そうですわよ!」

鈴「乗った!」

ラウラ「ペアチケット……それなら、嫁と一緒にいける……」

箒「ま、まぁ、たまには息抜きが必要だよな。一夏も」もごもご

シャルロット「はぁ……簡単なんだからぁ~」

鈴「なによ、じゃああんたはいらないの?」

シャルロット「そ、そう言ったわけじゃ!」

鈴「ほしいならほしいって素直に言えた方が可愛げがあるわよ?」

シャルロット「う、うぅ……」

ラウラ「しかし、発育過程で脂肪を溶かすのはあまり感心できんぞ」

セシリア「いいんです! だって、一夏さんが……」

鈴「一夏が?」ラウラ「嫁が?」箒「あいつが?」

セシリア「と、とにかく! 協力するんですの⁉︎」

鈴「はぁ、なるほど。そういうことね」

ラウラ「ふむ。わかった。協力しよう」

箒「まったく、どうせあのバカがよからぬことを……私も、協力する」

セシリア「恩にきますわ!」

鈴「メニューどうしよっか。まずは軽めからはじめる?」

箒「そんな必要はないのではないか? 私達は基礎訓練を積んでいるし、体力に問題はないだろう」

シャルロット「あ、それならラウラに考えてもらえば?」

ラウラ「私か?」

シャルロット「うん、ドイツにいた頃は軍属だったんでしょ? それなら適切なメニューを組めそうだし」

鈴「(スパルタじゃないの?)」

ラウラ「しかしだな……」

セシリア「わたくし、頑張ります!」

ラウラ「そ、そうか。それなら……いや、しかし、やはりいきなりは……ちょっと待ってくれ」ゴソゴソ

箒「電話? どこに電話するんだ?」

ラウラ「すぐ済む。……もしもし、クラリッサか。私だ。ああ、すこし聞きたいことがあってな」

鈴「ほんとに、大丈夫なんでしょうね」

シャルロット「た、たぶん」

鈴「はぁ、推薦した本人が自信なくしてどうすんのよ」

ラウラ「――なるほど! わかった!そのようにすればいいのだな!」ピッ

箒「お。終わったのか」

ラウラ「メニューの件は私に一任してくれ」

セシリア「はいっ!」

ラウラ「どうする? 今からはじめるか?」

鈴「少しでもやってみた方がいいんじゃない?」

セシリア「そうですね……。ラウラさん、よろしくお願いします」

鈴「私達は見学しておくから」

セシリア「どうしてそうなるんですの⁉︎」

鈴「へ?」

セシリア「協力というのはそういう意味ではございませんっ! 一緒にダイエットしていただかないと困ります!」

箒「そうなのか?」

セシリア「ダイエットというのはマラソンランナーと同じ。孤独で辛く、地道な努力。その仲間がほしいのですぅ!」

鈴「めんどくさっ!」

シャルロット「まぁ、まぁ。僕たちも着替えてこようよ」

【数十分後】

ラウラ「整列ッ! 気をつけ!」

鈴「はいはい」

ラウラ「はいは一回だ! 醜く卑しい太った豚どもめ!」

箒「……」

ラウラ「貴様らの教官を務めるラウラ・ボーデヴィッヒだ! 語尾には必ずイエス・サーをつけるように! わかったか⁉︎」

シャルロット「い、いえす、さー」

ラウラ「声が小さいッ!!」

セシリア「イエス・サー!」

ラウラ「もっと腹から声をださんかッ!ダイエットをしたいという気持ちはその程度か!」

セシリア「イエス・サーッ!!」

鈴「はぁ……」

ラウラ「よし、いい発声だ。休めの姿勢をとれ」

鈴「メニューは?」

ラウラ「軟弱な貴様らにピッタリなカリキュラムを用意した。絶対に痩せられる方法だ」

セシリア「ぜ、絶対に、痩せられる……」ゴクリ

鈴「とどのつまり、動いて燃焼させてカロリー制限をすれば誰だって痩せ――」

ラウラ「無駄口を叩くなッ!」

鈴「はいはい」

箒「ふぅ、なんでもいいからはじめよう」

ラウラ「まずはもも上げからだ。各個、両手をめいっぱい広げて間隔をとれ……うむ、そうだ。私がかけごえをかけるから、合わせて足をあげるんだぞ。準備はいいか?」

鈴「いつでもどーぞ」

【また数十分後】

ラウラ「はい、膝をあげてー、そこ! 足がさがってるぞ! ちゃんと一定の角度まで上げろと注意したばっかりだろうが!」

鈴「はぁっ、はあっ、ちょっと、いつまで……」

セシリア「す、すこし、休ませて、ください、まし」

箒「くっ」

ラウラ「この程度で根をあげてダイエットになるか! 脂肪の燃焼は身体が温まってきた三十分後からはじまる! これからが本番だぞ!」

シャルロット「うぅ、最近トレーニングをサボってたから思ってた以上に、くる」

ラウラ「軟弱なやつらめ! よし、だいぶ汗をかいてるな」

鈴「きゅ、休憩?」

ラウラ「クールダウンするにはまだはやい! すぐに寝そべって仰向けになれ!」

箒「……ふぅ、こうか」

ラウラ「鈴、少し失礼するぞ。他の者はよく見ておくように」ガシ

鈴「へ? いたっ! あいだだだだッ!」

ラウラ「このように、体を捻って腹筋をするんだ」

シャルロット「そ、それは、ちょっとねじりすぎじゃ」

鈴「いだだだっ! 皮膚がちぎれる!」

ラウラ「実演する時はわかりやすさが第一だからな。オーバーにしてある」

セシリア「ちょっと休憩しからでも」

ラウラ「ほう……。言い出しっぺが真っ先に休みたいと?」

セシリア「そ、そうは言ってませんけど、みなさんもお疲れでしょうし」

ラウラ「ぶくぶくに太った豚」

セシリア「ひっ」ビク

ラウラ「浮き輪」

セシリア「だ、だれのお腹が浮き輪なんですのっ⁉︎」

ラウラ「デブ」

セシリア「う、うぅ」

ラウラ「いいか、さっきも言ったが中途半端が一番意味がない。やっていないのと同じになってしまうんだ」

セシリア「そうなんですか……」

シャルロット「うん、ラウラがいってることは間違ってないよ。苦しいけど、頑張ろう?」

セシリア「わかりました」

【同時刻 ロビー】

のほほん「おりむー。おーい」

一夏「ん?」

のほほん「こっちこっちー」

一夏「おわぁっ! そ、そんなところでなにをしてるだ?」

のほほん「ぬふふん。私は今、壺になりきってる最中なのだよ~」

一夏「はぁ」

のほほん「ところでおりむー。つかぬことをお伺いしますが、学園祭の出し物なににするか聞いた?」

一夏「いや、なんにするんだ?」

のほほん「えっとね~、候補がいくつかあってぇ~有力なのはホストクラブカフェかなぁ~」

一夏「そうなのか? でも、クラスに男子は」

のほほん「そこなんだよねぇ~問題は。おりむーとシャルロットくんしかいないから」

一夏「そうだよな」

のほほん「なんかいいアイデアないかなぁ~?」

一夏「アイデアって言われても」

のほほん「うーん、そうだよねぇ~困ったなぁ。生徒会にそろそろ報告しなきゃいけないんだけどぉ」

一夏「ホームルームで決めないのか?」

のほほん「決まらないと思うんだけど~。そうだ! おりむーを景品にしたダーツなんかどうかなぁ~」

一夏「いっ⁉︎ 俺を⁉︎」

のほほん「そうそう~。きっと人気でると思うよぉ~」

一夏「そ、それなら、ホストクラブの方が……」

のほほん「でもでもぉ。おりむーとシャルロットくんに指名が集まっちゃうし」

一夏「男装カフェなんかどうだ?」

のほほん「男装?」

一夏「箒とか似合うと思うし。宝塚みたいに化粧とカツラを被ればなんとかなるんじゃないかと思うんだが」

のほほん「いいかもぉ~。クラスのみんなで話あってみるねぇ~」

一夏「あぁ、だけど、今日はもう授業は」

のほほん「女の子ネットワークを甘くみたらいけないよぉ~。寮だっておんなじなんだし、すぐに連絡つくから~」

一夏「そうか。それなら、俺からのアイデアはそれってことで」

のほほん「あいあい~。おりむーからのアイデアはしかと受け賜わりましたぁ~」

【数時間後 またトレーニングルーム】

ラウラ「腰を落として腕を水平に振るんだ! いいか、一、二、一、二」

鈴「やってらんないわよッ!!」ビターン

ラウラ「む。タオルを叩きつけてどうした」

鈴「いくらなんでも初日からぶっとばしすぎでしょ!」

ラウラ「いや、しかしクラリッサが……」

セシリア「」

鈴「ぶっ倒れてんじゃないの!」

シャルロット「ぜぇ、ぜぇ……す、水分補給しないのは、ぜぇ、ぜぇ、ちょっと……」

箒「ふぅ、いい汗をかいた。どうした?」

ラウラ「箒は平気そうだが」

鈴「日頃から鍛錬してるやつと一緒にしないで! それぞれに合ったメニューにしないと!」

ラウラ「甘えは厳禁だぞ。その内ついてこれるようになる」

鈴「はぁ……あのねぇ、最初からこれじゃ潰れちゃうの。ダイエットなんか継続しなきゃ意味ないんだから、続けられるメニューにするのが第一よ」

ラウラ「しかし、辛さを乗り越えた先に栄光が」

鈴「どこの軍だ! あんたは!」

シャルロット「あ、あはは。ちょっと休憩しよう? ね?」

箒「おい、セシリア」パチパチ

セシリア「……はっ! ここは……?」

箒「水だ。ゆっくり何口かに分けて飲め」

セシリア「そうでしたわ……わたくし、景色が歪んで」

鈴「脱水症状おこしてるかもしれないから。横になってな――」

セシリア「こうしてはおられませんっ!」ガバァ

鈴「な、なに?」

セシリア「もっと痩せなくては!」

シャルロット「少し、休んだ方がいいよ」

セシリア「いいえ! 頑張りが無になってしまいます!」

ラウラ「よくぞ言った! セシリア! 貴様はただのブタではない! 見所のあるブタだ!」

セシリア「ブタって言わないでくれません⁉︎」

ラウラ「さぁ、一番きついセシリアがこう言っているぞ! 残りのお前たちは根性なしかァッ!」

鈴「だぁ……」

箒「まぁ、落ち着け。これ以上はオーバーワークになる危険性がある」

シャルロット「アドレナリンがでてるだけだと思うから。ね? ラウラ」

ラウラ「そこまで言うなら仕方ない」

シャルロット「セシリア、また明日にして今日はシャワーを浴びて戻ろう?」

セシリア「うぅ、わかりましたわぁ」

【ロッカールーム】

セシリア「す、すこしは痩せたはず」ソォー

鈴「そんなに簡単に痩せるわけ――」

セシリア「2キロ減りましたわぁ~!」

鈴「あのねぇ……」

シャルロット「水分をとればすぐに戻るよ。今は、汗をかいた分だけ減ってるから」

セシリア「そうなんですの?」

鈴「さっきから思ってたけどさぁ、セシリアってダイエットしたことないの?」

セシリア「はい」ケロッ

鈴「マジ……? 一回も?」

セシリア「だって、太ったことありませんもの。ダイエットなんてデブがするものでしょう?」

鈴「こ、こいつ……!」

シャルロット「凄いんだねぇ~セシリア。デブのくせに」

セシリア「ひっ」

鈴「ちょ、ちょっと。シャルロット?」

シャルロット「世の中にはたぁ~くさんダイエットしてる人がいるんだよぉ~?」ニコニコ

セシリア「それがなんですの?」

シャルロット「太りやすい人だっているんじゃないのかなぁ~」

セシリア「そんなもの怠慢ですわ」

シャルロット「あぁ、そう。でも、デブだもんね。セシリア」

セシリア「うっ、ぐす、そんな言い方しなくても」

シャルロット「ごめんねぇ。太りやすい時期が僕もあっからさぁ」

箒「おい、そろそろ門限になる。喋ってないではやく着替えろ」

鈴「そうだった。シャルロット、あんたは一応、男ってことになってるから少し時間ずらしましょ」

シャルロット「ああ、うん。わかった」

ラウラ「別にかまわんのではないか?」

シャルロット「いや、まだ女子用の制服がきてないし。本国には、教官が取り計らってくれてるけど」

箒「そろそろカミングアウトするいい時期ではないか」

シャルロット「わかってる。クラスのみんなを騙し続けるのも気が咎めるし」

ラウラ「そうか。それならば何も言うまい。教官が良いようしにしてくれるだろう」

セシリア「まだ、部屋は一夏さんと同じですしね?」ジトー

鈴&箒「……」ピクッ

ラウラ「そうだな。嫁ならなにも問題ないだろう」

シャルロット「い、いやぁ! そ、そうだねぇ~! はやくしないとなぁ~!」

鈴「部屋だけでも別にできないの?」

箒「あいつだって、そ、その、男子、だからな。男女七歳にして同衾せずとも言う」

シャルロット「私は別に……いいけど……」

箒「……! やっぱり、だめだ! 千冬さんに直訴させてもらう!」

鈴「賛成!」

シャルロット「えぇ~?」

鈴「はやく着替えて行きましょ!」

【職員室】

千冬「――却下だ」

鈴「どうしてぇ⁉︎」

千冬「まったく、緊急の用件だと言うからなにかと思えば。そんなくだらん話とは」

箒「し、しかし! シャルロットが女だとわかればクラスのみんなも不審に」

千冬「気に入らんな。本音はそうじゃないだろう」

箒「うっ」

千冬「心配をせずとも。アレに手をだす度胸はなかろうよ」

セシリア「部屋に空きはないんですの?」

千冬「生憎だがな。シャルロットはまだ男で通っている以上、女と同室にするわけにはいかん」

シャルロット「ご迷惑をおかけします」

千冬「事情が事情だ。仕方ないだろう」

鈴「むぅ~」

千冬「女とカミングアウトするのは、いつにするか決めたか?」

シャルロット「制服が届いてからにしようかと」

千冬「であるならば、二日後には手配が済むだろう。お前たちもそれまで我慢しろ」

鈴&箒&セシリア「はぁ……」

千冬「以上だ。寄り道をせずに――」

ラウラ「教官、ISの登録はどうなりますか?」

千冬「ん?」

ラウラ「男はやはり一夏だけということになるのでしょうか」

千冬「人類初にして唯一の男性操縦者という元の鞘に戻るだけだ。しかし、まだひよっこ。技能については話が別になるだろう」

ラウラ「嫁は各国としても重要なサンプルです。ターゲットにされやすいかと思われますが」

千冬「その通りだ。……アレに足りない部分はお前たちで支えてやってくれると助かる」

セシリア「もちろんですわ!」

鈴「まぁ、しょーがないなぁ」

箒「鍛錬に力をいれてやらないと」

シャルロット「はいっ!」

千冬「どいつもこいつも、素直ではないな」

【寮 部屋】

一夏「シャル。風呂使ってもいいか?」

シャルロット「あ、うん! 私は先に入ったから」

一夏「はやかったんだな」

シャルロット「戻ってくるの遅かったけど、一夏はなにしてたの?」

一夏「あぁ、ゲームセンターに行ってたんだ」

シャルロット「そうなんだ。一人で?」

一夏「たまにはな。新作がでてたから、どんな感じかさわってみたくて」

シャルロット「そっか。あのさ、セシリアなんだけど」

一夏「ん?」

シャルロット「ダイエットしようって気にしてるみたい。少し、一夏から言ってあげた方がいいかも」

一夏「俺が? どうしてだ?」

シャルロット「んもぅ! 一夏から言わなきゃ効果ないからだよ!」

一夏「……? そうか。それで、なにを?」

シャルロット「ダイエットしなくても綺麗だよーとか」

一夏「え、でも、デブは嫌だしなぁ」

シャルロット「へ?」

一夏「ん?」

シャルロット「一夏、そんなに、太ってるの嫌なの?」

一夏「ああ」ケロッ

シャルロット「ど、どれくらいから太ってるって思う……?」

一夏「うーん、難しいところだが、掴めるぐらいかな」

シャルロット「どこが?」

一夏「お腹の肉が」

シャルロット「も、もし、付き合ってて、彼女がちょっと太っても、一夏はそんな別れたりしないよね」

一夏「彼女? いきなり話が飛躍したな。うーん、別れるかもな」

シャルロット「えぇっ⁉︎ 別れるのぉっ⁉︎」

一夏「不思議なことか? 許せるラインは個人であって当然だろ?」

シャルロット「そ、そうだけど! 内面とかさぁ!」

一夏「デブは嫌だ」

シャルロット「……!」ガタッ

一夏「シャルロット? どうした?」

シャルロット「走ってくる!」

一夏「今からか? もうすぐ消灯時間……」

シャルロット「いいの! 一夏は先に風呂はいってて! 私はシャワーあとで浴びるから!」

【寮周辺】

シャルロット「ふぅ、ふぅ」タッタッタッ

セシリア「ふぅ、ふぅ」タッタッタ

シャルロット「あれ? セシリア」

セシリア「シャルロットさん。あなたもジョギングですの?」

シャルロット「う、うん、まぁ」

セシリア「やはり、一夏さんが太っている女性が嫌なのを気にして」

シャルロット「や、やだなぁ!たまたまだよ! たまたま!」

セシリア「誤魔化さなくても結構です。同室である貴女がこうしているということは、冗談ではないのでしょうね」

シャルロット「そうだね……」

セシリア「おあつらえ向きにベンチがあります。少し、座ってお話ししません?」

シャルロット「う、うん」スッ

セシリア「一夏さんが、[ピザ]が嫌いだというのは意外ではありました」

シャルロット「うん……」

セシリア「外見で判断するなど。……でも、少しお気持ちがわかります」

シャルロット「……」

セシリア「もし、一夏さんがとんでもなく、その、ブサイクな殿方だったらと思うと、私は好きになっていたかどうか……」

シャルロット「うん、それはそうかも」

セシリア「もちろん、一夏さんの良さは外見だけではありません。優しげな眼差しも、高身長な点も、スタイルもそれらは付加価値であり、心がキレイだからです」

シャルロット「……」

セシリア「でも、そうだとしても一夏さんにとって[ピザ]であることは“最低限クリアしなければいけない条件”なのでしょうね……」

シャルロット「うん……そう考えればしっくりくるね……」

セシリア「シャルロットさん!」ガシッ

シャルロット「な、なに?」

セシリア「協定を結びません⁉︎」

saga入れるの慣れてないとめんどくさいなぁ

シャルロット「協定って?」

セシリア「わたくしたちはいわば痩せるという志をともにする仲間です!」

シャルロット「は、はぁ……」

セシリア「ですから! 痩せるまで一夏さんに想いを伝えないという協定です!」

シャルロット「え、えぇ? でも、私は別に太ってないし、セシリアだって」

セシリア「でももヘチマもありませんわ! 痩せて維持できるサイクルを作るまでが真に痩せたと言えるのです!」

シャルロット「それで、体型が維持できるまでのサイクルを作れたらどうなるの?」

セシリア「そうなれば同じ土俵というお話になります! 抜け駆けはなしで!」

シャルロット「そ、そうかなぁ?」

セシリア「耳をお貸しになってください」

シャルロット「ん?」

セシリア「他のみなさんは知らないんですのよ……」コショ

シャルロット「……!」

セシリア「知っているのはわたくしとシャルロットさんのみですわ」

シャルロット「でも……みんな太ってるわけじゃないし」

セシリア「今は、ですよね」

シャルロット「……?」

セシリア「油断は慢心を招きます。カロリーが高い食べ物をすすめれば」

シャルロット「え、えぇ? まずいよ、それは」

セシリア「そうですか……シャルロットさんの一夏さんに対する想いはその程度なんですね」

シャルロット「むっ。どういう意味?」

セシリア「わたくしたちはライバルですのよ。選ばれるのは一人のみ。それは不変です」

シャルロット「……」

セシリア「蹴落とすチャンスがあるなら積極的に行うべきではありません?」

シャルロット「でも、バレたら……」

セシリア「バレなければいいのです。でも、シャルロットさんは乗り気じゃないようですね」

シャルロット「うーん」

セシリア「失望しました。一夏さんへの想いの軽さに」

シャルロット「なっ!」ガタッ

セシリア「はぁ……」

シャルロット「私の一夏に対する想いに嘘なんてない! 一夏は私を救ってくれたんだから!」

セシリア「でも、あなたは自分のことを考えているでしょう?」

シャルロット「セシリアこそ見損なったよ!」

セシリア「なんですの! わたくしは間違っていまへんわ!」

シャルロット「正々堂々としなくちゃ!」

セシリア「それで、正々堂々とやった結果、一夏さんが別の女性を選んだら?」

シャルロット「うっ、そ、それは」

セシリア「わたくしたちだけとは限りません。もしかしたらクラスの別の女性を……」

シャルロット「そ、そんなのっ! ありえないよっ!」

セシリア「どうして言い切れましょう? 根拠のない自信をお持ちのようですけど」

シャルロット「一夏に一番近いのは私達じゃない!」

セシリア「そうだとしても、一夏さんには選ぶ権利があります」

シャルロット「……」

セシリア「わたくしは、一夏さんに対するこの恋焦がれる気持ちをなかったことにはできない。したくはありません」

シャルロット「私だって……」

セシリア「諦めたくないのです。誰が選ばれたとしても」

シャルロット「本気、なんだね」

セシリア「最初からそう言っているではありませんか。むしろ意外だったのはシャルロットさんの方ですわ」

シャルロット「……」

セシリア「綺麗事だけを並べていては得られないものがある。正々堂々なんてごめんです。スポーツじゃないんですよ。勝っても負けても清々しい気持ちなんてなれるわけがありませんわ」

シャルロット「……」

セシリア「もう結構です。このお話は忘れてください。言いふらしたければご自由に」

シャルロット「わかった……」

セシリア「なにがですの?」

シャルロット「協定を結ぶよ。やり方は汚いけど、我慢する。それ以上に私が許せないのは、一夏への想いをその程度だって言われたことだから」

セシリア「……」

シャルロット「私が側にいる。一夏のこと全部守ってみせる。そして、結婚する」

セシリア「なっ!」ガタッ

シャルロット「私が同室だって忘れたの?」

セシリア「あ、あと二日間だけでしょう⁉︎」

シャルロット「男と女なんだよ?」

セシリア「きょ、協定を結ぶと今しがた仰いましたわ!」

シャルロット「抜け駆け、ね。でも、シャルロットだって、手段を選ばないとも言ったよ」

セシリア「そ、それは……」

シャルロット「形だけの協定に意味なんかない。いずれは私たちも敵対する。でしょ?」

セシリア「シャルロットさんっ!」

シャルロット「ふぅ……慌てないで。相手は鈍感な一夏だし、二日だけでなんとかできるわけないから。今は協定を結ぶよ」

セシリア「そ、それもそうですね」

シャルロット「でも、私の気持ちを“その程度”だって言ったこと。忘れないから」

セシリア「……!」

シャルロット「そろそろ戻るね」

セシリア「はい。決行は明日の朝食からでよろしいですか?」

シャルロット「わかった。みんなで食べるよう一夏にも伝えとく」

誤字あるんでレスしなおし

セシリア「それで、正々堂々とやった結果、一夏さんが別の女性を選んだら?」

シャルロット「うっ、そ、それは」

セシリア「わたくしたちだけとは限りません。もしかしたらクラスの別の女性を……」

シャルロット「そ、そんなのっ! ありえないよっ!」

セシリア「どうして言い切れましょう? 根拠のない自信をお持ちのようですけど」

シャルロット「一夏に一番近いのは私達じゃない!」

セシリア「そうだとしても、一夏さんには選ぶ権利があります」

シャルロット「……」

セシリア「わたくしは、一夏さんに対するこの恋焦がれる気持ちをなかったことにはできない。したくはありません」

シャルロット「私だって……」

セシリア「諦めたくないのです。誰が選ばれたとしても」

シャルロット「本気、なんだね」

セシリア「最初からそう言っているではありませんか。むしろ意外だったのはシャルロットさんの方ですわ」

シャルロット「……」

セシリア「綺麗事だけを並べていては得られないものがある。正々堂々なんてごめんです。スポーツじゃないんですよ。勝っても負けても清々しい気持ちなんてなれるわけがありませんわ」

シャルロット「……」

セシリア「もう結構です。このお話は忘れてください。言いふらしたければご自由に」

シャルロット「わかった……」

セシリア「なにがですの?」

シャルロット「協定を結ぶよ。やり方は汚いけど、我慢する。それ以上に私が許せないのは、一夏への想いをその程度だって言われたことだから」

セシリア「……」

シャルロット「私が側にいる。一夏のこと全部守ってみせる。そして、結婚する」

セシリア「なっ!」ガタッ

シャルロット「私が同室だって忘れたの?」

セシリア「あ、あと二日間だけでしょう⁉︎」

シャルロット「男と女なんだよ?」

セシリア「きょ、協定を結ぶと今しがた仰いましたわ!」

シャルロット「抜け駆け、ね。でも、セシリアだって、手段を選ばないと言ったよ」

セシリア「そ、それは……」

シャルロット「形だけの協定に意味なんかない。いずれは私たちも敵対する。でしょ?」

セシリア「シャルロットさんっ!」

シャルロット「ふぅ……慌てないで。相手は鈍感な一夏だし、二日だけでなんとかできるわけないから。今は協定を結ぶよ」

セシリア「そ、それもそうですね」

シャルロット「でも、私の気持ちを“その程度”だって言ったこと。忘れないから」

セシリア「……!」

シャルロット「そろそろ戻るね」

セシリア「はい。決行は明日の朝食からでよろしいですか?」

シャルロット「わかった。みんなで食べるよう一夏にも伝えとく」

【翌日 食堂】

シャルロット「あ、これおいしい」

一夏「おっ、それって人気がある角煮だよな」

箒「そうなのか?」

シャルロット「うん、食べてみる?」

箒「む、しかし……」

セシリア「せっかくのご好意を無下にしてはいけませわ」

箒「そ、それもそうか。悪いな」

シャルロット「はい、どーぞ。篠ノ之さんって朝鍛錬してるんだよね?」

箒「あぁ。朝にするのは日課になっている」

鈴「よく飽きないもんね」

箒「日課というのはそういうものだ。やるのが日常だからな」

シャルロット「ふぅん、じゃあ、やらなかったら普通じゃないって感じ?」

箒「そういうことになる。一夏、私の食べるか?」

一夏「え、いいのか?」

箒「あぁ。今朝は、す、少しは鍛錬に身がはいっていたようだから、その、ご褒美――」

ラウラ「嫁。これ食え」ヒョイ

一夏「あむっ、うっうまい」

ラウラ「そうだろう。私もおいしいと思っていた」

箒「一夏ぁっ! 私のはどうなっている⁉︎」

一夏「へ? いや、も、もちろんもらうけど」

箒「せっかく褒めようとしたのに、私がどれだけ気苦労するのか、わかって……!」

鈴「そうムキになることないでしょ。いつもの光景なんだから」

箒「だからと言って……!」

シャルロット「まぁまぁ。ほら、僕の分あげるから。機嫌なおして」

箒「私は食いしん坊さんではないぞっ!」

一夏「箒って太らないよな」

シャルロット「……!」

箒「ん? まぁ、日ごろから動いているからな」

一夏「そうか。そういうのって、なんかいい――」

セシリア「篠ノ之さんっ! わたくしのも差し上げますわっ!」

箒「いや、そろそろお腹がいっぱい……」

セシリア「好意は、無下にするものでは、ありません!」ヒョイ

箒「むぐっ! むぐぐっ!」

シャルロット「さぁさぁ、遠慮しないで」


【朝食後 ロビー】

シャルロット「ねぇ、セシリア」

セシリア「はい……」

シャルロット「昨日はああいったけど、もしかしたら、これって凄く気の長い話になるんじゃ」

セシリア「同じことを考えているところです」

シャルロット「だよねぇ。篠ノ之さんは鍛錬をしているし、すぐに太るってわけにも」

セシリア「たしかに。それに、景品をゲットするためとはいえ、協力していただいてますし」

シャルロット「ますます太らないんじゃ」

セシリア「そうなりますわね」

シャル&セシリア「はぁ……」

起伏なく終わりで面白いものではなかったと思いますが一度書いてみたかったんで
アニメの一期しか見たことがなく原作知識がほとんどないす

ラウラがナノマシンで太らないエンドを予定してましてもっとドタバタして終わらそうかなと思ってたんですが、設定がよくわからないのでボロが出る前に終わっときます
日常の一コマを切り取ったショートストーリーってことでひとつ

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