橘ありす「サプライズパーティ」 (36)
朝。
今日は、目覚ましが鳴る前に目が覚めた。
ベッドから起きて、立ち上がる。
眠たい目をこすりながらのろのろと歩いて、壁にかかっているカレンダーの前へ。
今日の日付に視線をやると、そこは赤い丸で囲ってある。
私にとって、一年で一番大事な日だから。
―――7月31日
今日は私、橘ありすの12歳の誕生日だ。
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***
事務所の扉の前まで来て、私は立ち止まる。
ありす「さて、どうリアクションしよう……」
思えば、気付かないふりをするのに苦労した。
最近、事務所のみんながみんな、私に訊いてくるのだ。
『ありすちゃん、最近欲しいものとかある?』
『ありすって、何が好きなんだっけ?』
『ありすちゃんって、この雑誌に載ってるケーキの中なら、どれが好み?』
あからさまにもほどがある。
どう考えても、私に探りをかけてきていた。
うずうずして何度、『もしかして私に誕生日プレゼントくれたりするんですか?』と訊こうと思ったことか。
でも違ってたら恥ずかしいし……それで結局訊けなかった。
だけど、十中八九間違いないと思う。
今日、事務所のみんなが私のために、サプライズの誕生日パーティを計画している。
ありす「……ふふっ」
思わず、口元が緩んだ。
ありす「―――はっ!? べ、別に頼んでないですけどね、そんなこと!」
誰に咎められたわけでもないのに、つい言い訳してしまった。
……何してるんだろう、私。
ありす「というか、パーティをやるにしても、こんな朝からやらないんじゃ……?」
やるとしたら……帰り際?
今日一日、誕生日を祝う気がないと見せかけて、最後にどんでん返しのサプライズ誕生日パーティ―――おそらく、そういう算段だろう。
ありす「……うん、きっとそうだ」
やれやれ、鋭すぎる自分が嫌になる。
全部分かっていては、それはもうサプライズじゃないのに。
でも、驚いたふりをしてあげよう。
せっかく私のために(バレバレだったけど)隠れて準備してくれたんだ。
その労に報いるくらいには、驚いてあげないと。
もう私は12歳。
大人の優しさは、とうに持ち合わせているのだから。
私は、ゆっくりとドアノブに手をかける。
そして、開ける前に心の準備を。
無いとは思うけど、もしかしたら朝からパーティタイムかもしれない。
……よし、準備OK。
私は、一思いに扉を開いた。
ありす「おはようございますっ!」
モバP(以下P)「おう。おはよう、ありす」
プロデューサーが普通に挨拶を返してきた。
ありす「……」
P「……?」
部屋を見渡す―――特に装飾とかはされていない。いつも通りの事務所だ。
……うん、やっぱりね。朝からは、やらないよね。予想通り。別に期待とかしてなかったし、私。
P「ありす、どうかしたか?」
ありす「ど、どうもしてないですけど? いつも通りの橘ですよ?」
P「そっか、ならいいけど。ありすは確か、今日はレッスンだけだったよな?」
ありす「はい、そうです」
P「ん、了解。……あ、そういえば」
ありす「なんですか?」
P「確かありす、今日誕生日だっけ? おめでと」
ありす「……………………は?」
イマ、ナンテ?
今、この男……世間話のような軽さで、なんて言った?
P「あれ? 違った? 誕生日じゃなかったっけ?」
誕生日だけど……。誕生日だけど……!
ありす「……い、いえ、そうですその通りです。今日誕生日です、私」
P「やっぱそうだよな」
プロデューサーはそれだけ言うと、デスクに体を向けて、書類仕事を始める。
……。…………。………………えっ、終わり?
私の誕生日のくだり、今ので終了なの? 嘘でしょホントに?
べ、別に期待してたわけじゃないけど……いくらなんでもこんな……こんな……。
ありす「……プロデューサー。私、ちょっとお手洗いに行ってきます」
P「ん」
***
ありす「はぁああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
トイレの個室に籠り、私は心の底から湧いてくる魂の叫びを上げた。
ありす「なんですかあの男! 今日誕生日だっけ!? 誕生日じゃなかったっけ!? そんなものですか! あなたの担当アイドルへの想いは、その程度ですか!」
誕生日だよ? もっとこう……ほら! あるでしょ!?
プレゼントが無いのはまだいいにしても、もっとかける言葉とか、あるでしょ!?
それが『おめでと』の4文字って! ふざけろ!
ありす「せめて『おめでとう』ってちゃんと言えーーーーーーーーーーっ! ……はぁ、はぁ」
思いっきり叫んで、息切れしてしまった。
落ち着こう、クールになるんだ……私はクールタチバナ、クールな女。
ありす「ふぅ……所詮あの男と私は、プロデューサーと担当アイドル。ビジネス上のドライな関係だったというわけですね」
好感度が可視化できるなら、私のプロデューサーへの好感度は今、0を振り切ってマイナスに達していることだろう。
もう今後、目を合わせて話すことはない。
プロデューサーの件はそれでいいとして……憂慮すべきことが、一つ。
ありす「もしかして誕生日パーティ……やらないの?」
急激に不安になる。まさか、私の早とちりだった……?
ありす「そ、そんなはず……ないと、思うけど……」
ここ最近のみんなの態度は、明らかに私の誕生日を気にしているそれだった。
だから今日は、みんなで誕生日をお祝いしてくれるんだって……楽しみにしてたのに……。
ありす「……。……う、ううん、きっとやるはず!」
そうか、分かった。
プロデューサーは、パーティに参加しないんだ。
うん。それならさっきプロデューサーが、サプライズを台無しにする発言をしたのも頷ける。
他のみんなはきっと、今日が私の誕生日であることには、触れてこないはずだ。
ありす「……よしっ」
***
凛「ありす、おはよう」
ありす「凛さん、おはようございます」
事務所に戻る途中で、凛さんとばったり会った。
ありす「……」
凛「な、何?」
ありす「い、いえ、すみません何でもないです」
凛「そ、そう」
私としたことが、警戒して、じろじろと見つめてしまった。
凛「あ、そういえば――」
ありす「!?」
シュタンッと、後ろに飛び退く私。
凛「なんで距離取るの!?」
ありす「あっ! す、すみませんつい……」
離した距離をおそるおそる縮める。
ありす「そ、それで、『そういえば』の続きはなんですか?」
凛「そういえばありす、今日はレッスンだけだよね?」
ほっ……。
ありす「はい、そうですよ」
凛「私もそうだから、今日は一緒にお昼でもどうかな?」
ありす「いいですね。ぜひ一緒に食べさせてください」
凛「良かった。ありすは今日誕生日だよね、おめでとう。だから昼ご飯は私がおごるよ」
ありす「あ、それはどうも………………………………は?」
イマ、ナンテ?
今、この女……流れるように、なんて言った?
凛「どうしたの?」
ありす「……い、いえあの、いいですよ、奢りとか、そんな」
凛「気にしなくていいよ。誕生日なんだから」
また誕生日って言われた。……もう、認めるしかない。
ありす「すみません、私、ちょっとお手洗いに行ってきます……」
凛「うん、分かった」
***
ありす「パーティやらないんだパーティやらないんだパーティやらないんだパーティやらないんだパーティやらないんだパーティやらないんだパーティやらないんだパーティやらないんだパーティやらないんだ―――」
トイレの個室に籠り、私は虚ろな目で延々と呟き続けた。
……5分ほど経ったところで、ようやくクールダウン。
ありす「……はあ」
たかがパーティをやらないだけ―――なのに、ここまでショックを受けるとは、我ながら思わなかった。
ありす「う、ううんっ。パーティなんてやらなくても、お祝いしてもらえるだけでいいじゃないですか!」
そうだ、私は何を贅沢なことを考えていたのだろう。
みんな忙しいんだから、パーティなんて準備出来るはずないのに。プレゼントだってそうだ。
誕生日おめでとうって、それを言ってもらえるだけで、十分嬉しい。
ありす「むしろ、なんでパーティとか期待してたんだろう、私」
馬鹿なことを考えていた、さっきまでの自分が恥ずかしくなる。
ありす「……レッスン行こう」
***
午前のレッスンが終わって、昼。
一緒にご飯を食べる約束をしたので、私と凛さんはカフェテラスにやってきた。
奈緒「あ、来た来た」
加蓮「こっちこっちー」
見ると、加蓮さんがこちらにむけて手を振っている。
ありす「奈緒さんに加蓮さん?」
凛「私、2人も一緒って言わなかった?」
ありす「多分、言ってなかったような……」
凛「ごめん、伝え忘れてたみたい」
ありす「いえ、大丈夫です」
奈緒さんと加蓮さんが一緒でも、特に何の問題もないし。
私と凛さんは、加蓮さんたちのいるテーブル席へ向かった。
そして、席につくと。
加蓮「ありすちゃん、誕生日おめでとう!」
奈緒「おめでとう、ありす!」
ありす「ありがとうございます」
朝とは違い、もう自然にお礼の言葉を返せるようになった。
午前のレッスンの際も、一緒にレッスンしたみんなが、私にお祝いの言葉をくれたから。
嬉しいけど……少し複雑な気分。
やっぱりパーティは、やらないみたい。
加蓮「それでね? アタシ、ありすちゃんにプレゼントがあるんだ」
ありす「えっ?」
加蓮さんの台詞に、思わず目を見張る私。
プレゼント?
ありす「か、加蓮さん、プレゼント用意してくれたんですか?」
加蓮「そうだよ。だって誕生日なんだから」
嘘……プレゼント、私にくれるの?
もはや何の期待もしてなかったから、プレゼントが貰えるなんて、思ってもみなかったのに……!
加蓮「はい、ありすちゃん、誕生日おめでとう♪」
そう言って、スマイルと共に渡されたのは―――
【マ○クポテト(M)のクーポン券】
キレそうになった。
……が、グッと堪える。
プレゼントをもらっておいてキレるとか、最低にもほどがある。
どんな物だろうと、これは加蓮さんが私の誕生日のお祝いにくれた物なんだ。
感謝で返すのが、礼儀というもの。
ありす「あ、あああり、ありがととう、ごございます、か加蓮さん」
加蓮「いいって。大したものじゃないし」
ええ、本当に―――いや何も言うまい。
これはポテト好きの加蓮さんが、心をこめて、私にくれたものなんだ。
決して、『あ、バッグにちょうど入ってたし、これでいっか』なんてお粗末な理由でくれたものじゃ、ないはずなんだ。
奈緒「それじゃ、あたしからも」
ありす「な、奈緒さんもプレゼントくれるんですか?」
奈緒「もちろん!」
奈緒さんまでプレゼントを用意していてくれたことに、嬉しさがこみ上げてくる。
……でもなぜだろう。嬉しさと同じくらいに、不安が募っているのは。
奈緒「誕生日おめでとう、ありす!」
にっこりと笑って、私に手渡してきたのは―――
【じゃが○こサラダ味】←開封済み
せめて未開封のものを渡せぇええええええええええええええええええええええええええ!
凛「ちょっと奈緒、それはないでしょ」
奈緒「え、そうか?」
ありす「!」
私の言いたいことを、凛さんが代弁してくれた。
凛「誕生日なんだから、もっと特別なのをあげなよ。……ほらありす、私からもこれ、プレゼント」
そう言って凛さんが取り出したのは―――
【期間限定品―――じゃ○りこ枝豆しおバター味】←開封済み
結局じ○がりこなんですけどぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
しかもまた封開いてるし!
凛「それでありす、お昼は何を注文する?」
え、もう話題逸れるの!? 冗談抜きで、これが誕生日プレゼントなの!?
加蓮「遠慮しないで食べてね」
奈緒「あたしたちの奢りだからな」
ありす「……ありがとうございます」
昼食を取っている間、私の誕生日のことは、もう話題にすら上がらなかった。
***
午後のレッスンが終わり、更衣室。
その部屋の隅で私は、体育座りをしながら、じゃ○りこをカリカリとかじっていた。
午後のレッスンを思い返す。
なんと、レッスンの合間に、みんなが次々とプレゼントを渡してくれたのだ。
……全部、じゃが○こだったけど。
死んだような目で、足元を見やる。
そこには、チーズ味、じゃがバター味、たらこバター味、塩とごま油味、エトセトラ―――多種多様な味のじゃがり○が積まれていた。
しかもご丁寧に、全て開封済みである。
誕生日プレゼントって、○ゃがりこをあげるものなんだっけ……?
もしかしたら、私の中の常識が、間違っていたのかもしれない。
不意に、窓から差し込んでくる夕陽が目に染みて、涙が出そうになった。
おかしいな……なんで私、落ち込んでるんだろう。
みんな、お祝いしてくれたのに。プレゼントまでくれたのに。
……思えば、去年の誕生日は一人きりだった。
お母さんもお父さんも外せない仕事で、家にはいられなくて。
夏休みだったから、学校の友達にも会わなくて。
一人で、一日をすごした。
それに比べて、今年はみんながお祝いしてくれた。
プレゼントを用意してくれた。
一人じゃなかった。
ありす「だから、落ち込むことなんて……何もない……」
それでも、気分は沈んだまま。
今日という日に、期待しすぎていたのだ。
私にとっては特別な日でも、みんなにとってはそうじゃないのに。
―――ガチャ
突然の扉の開く音に、私は顔を上げる。
ありす「文香さん……?」
文香「…あ、ありすちゃん? そんな部屋の隅で、何をしているんですか…?」
ありす「あ、いえその……じゃが○こを食べていただけで」
文香「なぜわざわざ、そんな位置で食べる必要が……?」
ありす「そ、それより文香さん、どうして更衣室に?」
文香「…仕事から戻ってきたら、ありすちゃんが事務所にいなかったので、探しに来たんです」
ありす「私を探しに……?」
文香「…ありすちゃん。誕生日、おめでとうございます」
ありす「あ……。……ありがとうございます、文香さん」
やっぱり、言葉でお祝いしてもらえるだけで……おめでとうって言ってもらえるだけで、嬉しい。
もうこんな風に落ち込むのは、おしまいにしよう。
文香「…それでですね。事務所に、プレゼントを用意してあるんです。ですから、一緒に来てもらえませんか?」
ありす「はい、分かりました」
頷いて、立ち上がる。
プレゼント……今度は何味のじゃ○りこかな? 地域限定品とかだったらいいな。
***
事務所の扉を開けた途端、けたたましいクラッカーのような音が鳴り響いた。
『ありすちゃん、誕生日おめでとーっ!』
ありす「……えっ?」
突然のことに、困惑する。何が起きたのかが、分からない。
プロデューサーがいる。凛さんがいる。加蓮さんが、奈緒さんが、桃華さんが、薫さんが、卯月さんが、未央さんが、藍子さんが―――みんなが、いる。
そして、見渡してみると、事務所の中が装飾されていた。まるでパーティ会場のように……。
ありす「これ、いったい……」
文香「…ありすちゃんの、誕生日パーティですよ」
ありす「!」
P「ふふ、油断してただろ? もうみんなに祝ってもらったから、パーティなんてやるはずないと。だが考えが甘かったな……パーティやるんです! 一年に一度の誕生日、あんなテキトーなお祝いで済ますわけないだろ!」
ありす「え……」
凛「ごめんね、ありす。プロデューサーがサプライズにしようって言い出して」
加蓮「でも普通にやったら勘付かれそうだから、2段階のサプライズにしようってことになったの。お祝いしたように見せかけたけど、ホントのお祝いはこのパーティでしたー♪」
奈緒「この反応を見るに、どうやらサプライズは上手くいったみたいだな」
ありす「……ぅ……ひっく……」
P「お、なんだ、嬉し泣きか? ふふ、存分に泣くといい―――」
ありす「うわぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああんっ!」
P「思ったよりも大分泣いてる!?」
文香「あ、ありすちゃん!?」
凛「どう見ても嬉し泣きってレベルじゃないよ! ありす、号泣してる!」
ありす「みんな、お祝いの言葉がそっげなぐで……ブロデューザーなんで、たっだ四文字で……っ」
P「あ、ああそうだな、四文字はないよな! すみませんでした!」
ありす「ブレゼンドぐれるっで言われで……嬉じかったのに、グーボン券で……っ!」
加蓮「ご、ごめんね、あんなのあげて! ちゃんとした別のプレゼント用意してあるから!」
ありす「ぞれにみんな……食べかけのじゃ○りことか、渡してぎてっ……私、嫌がらせざれでるのがって……!」
奈緒「ごめん悪かった!」
凛「悪ノリしすぎたよね! 本当にごめん!」
ありす「今年の誕生日っ、ごれで終わりだっで……思っでだのに……っ!」
文香「お、落ち着いてください、ありすちゃん……!」
ありす「うっくっ……うぁああああああああああああああああああああああああああああああんっ!」
嬉しいのか、悲しいのか。なんで泣いてるのか、もう自分でも分からない。
ただただ、涙が溢れて、止まらなかった。
とりあえずここまで
急いで書いたけど間に合わなかった…
***
―――30分後
P「えー、ではありすも泣きやんだことだし、これよりありすの誕生日会―――改め、ありすへの贖罪会を始めたいと思います……」
ありす(……どうしてこうなった)
凛「私たち、サプライズで喜ばせることしか考えてなくて、それでありすが寂しい思いをすることには目を向けてなかった……最低だよっ!」
ありす「あ、あの……別にもういいので」
奈緒「号泣するほど傷つけるとかさ……もういじめと変わらないだろ……ホント、なんてことをあたしたちは……」
ありす「い、いえ、泣いたのは傷ついたからというよりは、その……う、嬉し―――」
加蓮「ごめんね、ホントにごめん。サプライズなんて、所詮やる側の自己満足だよね……」
ありす「ですからもういいですから! なんですかこのお葬式みたいな空気! 誕生日会でしょう!? 祝ってくださいよ! 謝罪でなく、私を祝ってください!」
P「こんな罪悪感を抱えたまま、どの面下げて祝えと言うんだ! どの面下げてハッピバースデーとか言えばいいんだ! 教えてくれ、ゼロは俺に何も言ってはくれない!」
ありす「なにゼロシステム起動してるんですか! 私もう気にしてませんから! みなさん、善意でやってくれたって分かってますから!」
奈緒「善意とは、そう名乗った時点で悪意! あたしたちがやったことは、善意のトレスパスなんだよ!」
比奈「チェーンソー振り回す用務員さんに、追っかけられてしかるべしっス!」
菜々「この喋るボ○太くん人形を差し上げますから、何卒ご容赦を!」
○ン太くん人形『ふもっふ!』
ありす「わぁ、喋った♪ ―――じゃないですよ! そこの虹色ドリーマー、フ○メタ4期が待ち遠しいからって何ふざけてるんですか! 罪悪感なんてホントは感じてないんじゃないですか!?」
加蓮「アタシは心からありすちゃんに贖罪したいって思ってる! その誠意を分かってもらうために、アタシ今からポテト断ちするよ!……こはっ!?」
美嘉「加蓮が決意を固めただけで倒れた!」
唯「メディック! メディック!」
ありす「いや別にポテトとか食べてもらっていいですから! 何ならこのじゃが○こ全部持っていってくれていいですから!」
凛「ありす、何をすれば許してくれる? 今なら私たちなんでもするよ」
ありす「だからもう許してますって! なんでもとか―――」
ありす(…………なんでも?)
ありす「……では、ちょっとプロデューサーさん、そこの椅子に座ってくれますか?」
P「え? あ、ああ、分かった」
ありす「よっこいせっと」
P「へ? なんで俺の膝の上に乗るの?」
凛たち『!?』
ありす「プロデューサーさんには、この誕生日パーティの間、私の椅子になってもらいます」
P「? ま、まあいいけど」
ありす(……く、くくく……はーはっはっはーーー! ついに来ましたよ! 私の時代が!)
凛「あ、ありす? 普通の椅子に座った方が、ほら、座り心地いいんじゃないかな?」
ありす「いえ、中々の座り心地ですよ。私にベストフィットですね♪」
凛「このっ!」
奈緒「お、落ち着け凛! なんでもとか言ったのお前だろ!」
凛「ぐっ……!」
まゆ「……」
美波「みんな、まゆちゃんを抑えて! 目がヤバいわ!」
ありす「それではプロデューサーさん。贖罪会なんてもういいですから、普通に誕生日会をしてくれませんか?」
P「い、いいのか? じゃあみんな、ありすへの贖罪会改め、ありすの誕生日パーティを始めるぞー!」
凛たち『……』
P「おい何か反応しろよ! 始めるぞー!」
凛たち『おー……』
***
ありす「あーんっ♪ ……ん~♪ 美味しいですね、このケーキ! もっと食べさせてください、プロデューサーさんっ」
P「あ、ああうん……なあ、自分で食べたほうが早くね?」
ありす「む……なんですか、私に食べさせるの嫌なんですか?」
P「いや別にそうは言ってないけども」
ありす「ならいいじゃないですか。ね、早く早くっ」
P「分かった分かった」
凛たち『ぐぎぎ……っ!』
ありす(ふ……哀れですね、みなさん。そうやって睨みつけるしかできないとは)
凛(ありす……いつまでも好きにできると思わない方がいいよ)
ありす(凛さん、直接脳内に……!?)
まゆ(うふ♪ ありすちゃん、誕生日だからって、いい気になりすぎじゃないですか?)
ありす(まゆさん!? こいつもニュータイプか……!)
ありす「……ぷ、プロデューサーさん、あとはもう自分で食べます」
P「? どうした急に」
ありす「いえその、後がこわ―――自分で食べるほうが、食べやすいじゃないですか!」
P「俺さっきそう言ったけど!?」
凛「へぇ、さすがに12歳になっただけあるね。ありすは今、正しい選択をしたよ」
まゆ「あれ以上続けられてたら、どうなっていたか分かりませんからね」
ありす(目がやばいって……)
ありす「あの、みなさん、調子に乗っていたのは謝りますから、殺伐とした雰囲気やめてもらえませんか……?」
凛「……そうだね、誕生日会なんだし」
まゆ「これくらいにしましょうか」
ありす「ほっ……」
まゆ「じゃあここからは、この事務所らしくですね」
ありす「この事務所らしく?」
凛「明るく楽しく、賑やかに―――ありすの誕生日を祝おう!」
***
みく『それじゃあ次の出し物はー……杏チャンときらりチャンの、二人羽織にゃ!』
杏『杏そんなの聞いてないんだけど!』
きらり『杏ちゃん、頑張ろうにぃ☆』
杏『ホントにやるの!?』
『あははははっ』
ありす「……なんだか、誕生日会というより、宴会みたいになってきましたね」
P「いいんじゃないか? 楽しければ。……それとも、ありすは楽しくないのか?」
ありす「プロデューサーさんからは、そう見えますか?」
P「いや、全然。めっちゃ楽しそうに見える」
ありす「ふふっ、なら聞かないでください」
P「だな。悪い悪い」
みく『二人羽織完成ー! ではその状態で、おでんを食べてもらうにゃ!』
杏『今、真夏なんだけど! ていうか杏が前だから食べるの杏!?』
きらり『えやっ!』
杏『熱い熱い熱いそこ鼻だからぁあああああああああああああああああああああああ!?』
きらり『あ、ごめんにぃ……』
『あはははははははっ』
ありす「あはははっ」
P「あ、それとさ、ありす」
ありす「くふっ……な、なんですか? 今ダイコンがいいところで―――」
P「いや、そういえばちゃんと言ってなかったと思って。―――誕生日おめでとう、ありす」
ありす「! ……ありがとうございます、プロデューサーさんっ♪」
おしまい
2日遅れとか、もはや…
そして駄文にもほどがあり、お目汚し失礼しました
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