―学校 教室―
教師「それでは今日はここまで」
委員長「起立、礼! ありがとうございました!」
「したぁー」
教師「気を付けて帰れよー」
ガヤガヤ……ガヤガヤ……
オタク「……」ゴソゴソ
オタク(帰ってゲームでもしよう)
不良「おい!!」
オタク「ひっ」ビクッ
不良「俺たち、大会が近いから部活の練習に集中したいんだけどよ」
オタク「う、うん……」
不良「掃除当番、代わってくれるよな?」
「いいだろ? どうせ、お前帰るだけだろ?」
オタク「う、うん……わ、わかりました……」
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不良「よろしくな」
オタク(なんだよ……)
委員長「ちょっと」
不良「あぁ?」
委員長「掃除当番、今週は貴方達でしょ。すぐに箒と塵取りをもってくる」
不良「部活で忙しいんだよ」
委員長「対して練習にも参加してないくせに?」
「試合前は真面目にやってるって」
不良「それにこいつが代わってくれるって言ってくれたんだぜ」
オタク(納得はしてないけど……)
委員長「ホントに?」
不良「そうだよなぁ?」
オタク「……うん」
不良「じゃあなぁ」
委員長「ちょっ……。もう……」
オタク「いい、です。僕がやるんで」
委員長「それじゃあ、窓際から掃いて。私は廊下側からやってくから」
オタク「あれ。委員長、掃除当番でしたっけ……?」
委員長「一人だと帰る時間が遅くなるでしょ」
オタク「別にいいですけど。先に帰ってくれても」
委員長「いいから、やる」
オタク「は、はい」
委員長「あいつらが真面目に掃除してくれてたら、私だってもう帰ってるのに。くそ!」
オタク(あの委員長と二人で掃除なんて……)
委員長「明日は絶対に掃除させてやるんだから」
オタク(ちょっと得した気分かも)
委員長「手が止まってるけど?」
オタク「あ、ご、ごめんなさい」
委員長「早く終わらせて帰るからね」
オタク「は、はい。がんばります」
―共同玄関―
委員長「さぁ、さっさと帰らないとー」
オタク「なにかあるんですか?」
委員長「塾があるの。来年は受験だしね」
オタク(きっと僕なんかじゃ到底受からないところに行くんだろうな)
委員長「それじゃ、バイバイ」
オタク「あ、はい」
委員長「そうだ!」
オタク「はい?」
委員長「明日、もし掃除を押し付けられたら全力で逃げるように」
オタク「い、いえ……そんな……」
委員長「男でしょ。根性見せればあんな奴らビビッて何も言わなくなるから」
オタク(委員長みたいにかっこよくは振る舞えないよ……)
委員長「約束だからね。また明日ー!」タタタッ
オタク(初めてこんなに喋ったなぁ……。委員長、相変わらず綺麗でかっこいいなぁ)
―夜 自室―
オタク「……」カチャカチャ
オタク「ここでセーブしよっと」
オタク「もう9時か……。明日の準備でもして寝ようかな」
オタク(委員長と一緒のところ、受けたいけど……今からじゃ間に合わないよな……)
オタク(それに一緒のところ受けたからって何が変わるわけでもないし、僕がストーカーみたいになるだけだし)
オタク(遠くでみてるだけで十分だもんな)
オタク「さ、寝よう……」
オタク「あっ!? しまった! 今日、ゲーム雑誌の発売日だった!!」
オタク(明日にしようかな……けど、確か、今週号はソシャゲで使えるシリアルコードがついてたような……)
オタク(明日の放課後だと売り切れになってる可能性もあるし……)
オタク「行こう。自転車なら3分もかかんないし」
オタク「おかーさん、ちょっとコンビニいってくるから」
母「んー。お土産よろしくぅ」
オタク「息子にたかんなよ」
―コンビニ―
店員「いらっしゃいませー」
オタク「ええと……。あった、これだ」
オタク(あとはお土産か……。ミルクティーかなんかでいいよな)
オタク「ん……」
委員長「……」
オタク(あの雑誌コーナーの隅にいるのって……もしかして……。いや、帽子被ってるし、よくわかんないけど……とりあえず女の人ではあるよな……)
委員長「……」スッ
オタク(あ、あれってアダルト雑誌じゃあ……女の人も買うのか……)
委員長「……」
委員長「ちっ。ここもダメか」
オタク(そうそう。立ち読み防止のためにテープが貼られてるんだよなぁ。それにしてもやっぱり委員長に似てるような……)
委員長「買うしかないっていうの……」
オタク(もう少し近くに行ってみようかな……)
委員長「けど……バレたら……むぅ……」
オタク「……」ソーッ
委員長「折角遠出してきたんだし……ベッドの下あたりに隠せば……」ブツブツ
オタク(な……。ま、間違いなく……委員長だ……!! あ……あぁ……)
委員長「持ち帰れるのは1冊が限界ね。どれにしようかしら……」
オタク(委員長が……あの……委員長が……?)
委員長『そこ!! しっかり係の仕事をするように!!』
委員長『あはは。そんなことないよー。毎日、予習と復習をしてるだけだってばぁ』
委員長『大丈夫? すぐに保健室に行きましょう』
オタク(僕の知ってる委員長は……真面目でかっこよくて……美人で……こんな……こんな……アダルト雑誌を吟味するような人じゃないはずなのに……)
委員長「王道の純愛系か、それとも露出系か……凌辱系も捨てがたいし……悩むなぁ……」
オタク(声をかけるべきか……? けど、もし声をかけたら……どうなるんだ……?)
オタク『委員長。何をしているのかな?』
委員長『え!? あ、あぁ!? ど、どうしてここに!?』
オタク『いけない子だ……。こんなものを買おうとして』
委員長『だ、誰にも言わないで!! お願い!! なんでもするから見逃して!!』
オタク『なんでも……?』
委員長『あ……』
オタク『それじゃあ、なんでもしてもらおうかな。フフフ……』
委員長『くっ……好きにして……』
オタク(なるわけないじゃないか!! ふざけんな!! そんな勇気があるなら友達の一人ぐらいは居るはずだ!!)
委員長「二冊買っちゃう? ダメ。ダメよ、私。欲は身を滅ぼすもの」
オタク(ど、どうしたら……普通に注意すればいいのかな……未成年は買えませんとか……そんな感じで……)
委員長「……ん?」チラッ
オタク(しまっ……!? 目が合っちゃった……!?)
委員長「……」
オタク(な、なんて言おう……なにか……ええと……)
オタク「き、奇遇、ですね」
委員長「……」
オタク「あの……」
委員長「家、近いの?」
オタク「あ、うん。自転車で3分ぐらい」
委員長「そう……。自分の部屋はある?」
オタク「あ、あるけど? 一人っ子だし」
委員長「ちょっと外にいかない?」
オタク「う、うん。こ、これだけ買ってもいいかな?」
委員長「もちろん。私、外で待ってる」
オタク「……」
オタク(なんだろう。動揺している感じはないけど……)
オタク(見られても平気なのかな……)
店員「ありがとうございましたぁー」
オタク「お、おまたせしました。これ、ジュース、よかったら」
委員長「え? いいよ」
オタク「き、気持ちだから」
委員長「そう? ありがとう。いただきます」
オタク「……」
委員長「んぐっ……んぐっ……。ぷはぁ」
オタク(どうしたらいいんだろう)
委員長「私の家、あんまり裕福じゃなくてさぁ。自分の部屋なんてないし、自分専用のパソコンやケータイなんてもっての他」
委員長「月のお小遣いだって1000円だけ。でも、塾に通わせてくれてるし、お母さんにはすっごく感謝してる」
委員長「だからね、国公立の良いところに進学したい。それで学費も免除してもらえるように勉強だけはしっかりやって、いい会社にはいって、早いところお母さんを楽させてあげたいの」
オタク(きゅ、急になんで身の上話を……?)
委員長「今は色んなことを我慢しなきゃいけない時期なの。私にとっては」
オタク(あ……。わかった。やっぱり黙っててほしいってことなんだろうな……)
委員長「あの雑誌だって女の子が手にするものじゃないことぐらい理解してるし、学生が購読して良い物じゃないこともわかってる。そもそも目を向けちゃいけないものだし」
オタク「うん。大丈夫です、僕は誰にも……」
委員長「けどね、どうしても最近、我慢できなくて……」
オタク「……え?」
委員長「周りの友達なんて、普通にああいう本読んでるし、男子と付き合ってる子だっている」
委員長「色んな話を聞くたびに、年相応の欲求が溜まっていくわけ。分かる?」
オタク「わ、わか、るけど……?」
委員長「だから、決意したの。今日、絶対に買うって」
オタク「そう、なんですか」
委員長「塾帰りに自転車で30分かければ流石に知ってる顔とは出くわさないだろうって高を括ってたのが間違いだったわね」
オタク「僕、喋るつもりはないけど?」
委員長「口止めしようとは思ってない。私は悪いことをしているんだから、言いふらされても仕方ない。自業自得なの。それぐらいの覚悟はあるわ」
オタク(すごい……アダルト雑誌を買うだけで人生を賭けてる感があるぞ……)
委員長「私があの雑誌を買う理由は分かってくれた?」
オタク「う、うん」
委員長「ありがとう。それじゃ、止めないでね。私、買ってくるから」
オタク「あ、あの」
委員長「止めないでって言ったでしょ。私の決意は固いの」
オタク「ぼ、僕が買ってきてもいいですけど」
委員長「え?」
オタク「女の子がレジにもっていく雑誌じゃないし」
委員長「嬉しいけど、貴方の買い物じゃないから。自分の手を汚さずに、他人の手を借りるのは間違ってる」
オタク(あ……。やろうとしてることは最低だけど、この委員長……僕の知っているカッコいい委員長だ……)
委員長「貴方に見られたことで迷いは消えたわ」
委員長「露出系の雑誌にする」
オタク(何を言いだすんだろう。もしかして、本当はとっても焦っているのかもしれない)
委員長「ふぅ……ふぅ……」
オタク(本当に露出系のアダルト雑誌を手にした……)
委員長「……」
オタク(レジに向かってる……本当に買っちゃうのか……)
委員長「この日の為に貯めた1500円……。買う……絶対に買う……。夜、トイレでこっそり読むんだから……」
店員「いらっしゃいませー」
委員長「これ、くだ、しゃい!!」ダンッ!!!
オタク(緊張してる。手が震えてるのがここからでもわかる)
店員「……」
委員長「ふぅ……ふぅ……」
店員「身分証の提示をお願いできますか?」
委員長「み……ぶっ……!?」
オタク(ああ!? やっぱり挙動がおかしくて怪しまれた!?)
委員長「あぅ……それは……その……これ……は……」
委員長「おとうさんにたのまれたものなんです!!!」
オタク(酷い言い訳だ……)
店員「身分証の提示をお願いします」
委員長「う……くぅぅ……」
委員長「ごめんなさい!! その雑誌! 元の位置に戻しておいてください!!!」ダダダッ
オタク「委員長!?」
―外―
委員長「はぁ……はぁ……」
オタク「あの……」
委員長「ふふっ……笑っていいよ……」
オタク「いえ……そんな……。委員長はがんばったと思いますけど」
委員長「くっ……!! 買うって……決めたのに……!! 3か月、この日の為にお小遣い、貯めたのに……!!」
オタク(やっぱり、僕の知っている委員長じゃないかもしれない)
委員長「今日はこれまでにしよう。これ以上は流石にお母さんに心配させちゃうし」
オタク「送って、いくけど」
委員長「いいの? 家、遠くなるんじゃない?」
オタク「か、構わないです」
委員長「なら、お願いします。夜道って結構怖いからね」
オタク「そうですね」
委員長「はぁ……。買えなかったなぁ……」
オタク(目的はともかく、委員長って何事にも真剣だよなぁ……)
委員長「自分の部屋、あるって言ってたよね」
オタク「うん」
委員長「パソコンやテレビあるの?」
オタク「あ、あるよ」
委員長「パソコン、ネットに繋がってるの」
オタク「うん。パソコンでやることはネットぐらいだから」
委員長「はぁ。いいなぁ。ネットがあれば、あんな雑誌を買うこともないのになぁ」
オタク(何とも言えない……)
委員長「……」
オタク(なんだろう。何か言いたげだけど……)
委員長「ううん。やっぱり、ダメ。そんなの」
オタク「な、なにが?」
委員長「気にしないで」
オタク(どういうこと? 絶対、何か考えてたように見えたけど)
委員長「あー、どっかに落ちてないかなぁ」
委員長「ここまででいいよ。ごめんね、ジュースまで奢ってくれた上に、送らせちゃって」
オタク「僕が言い出したことだから」
委員長「じゃ、また明日。おやすみ」
オタク「お、おやすみ……」
委員長「あぁ……明日、明日は別のコンビニに行こう……」
オタク「あ、あの」
委員長「なに?」
オタク「僕、今日の事、絶対、誰にも言いません! 約束します!」
委員長「共犯になることないのに」
オタク「そんな、いや、えっと……」
委員長「ありがとっ。でも、罪悪感を持っちゃうぐらいなら、きちんと生活指導の先生に報告してね」
オタク「で、できるわけ……」
委員長「バイバイ」
オタク「あ、バイバイ……」
オタク(不思議な日だ……。まさか、委員長のあんな一面を知っちゃうなんて……)
―自宅―
オタク「……」
母「おかえりー」
オタク「ただいま」
母「んっ」
オタク「……あっ。ごめん。忘れてた」
母「えー!?」
オタク「ごめんって」
母「たのしみにしてたのにっ!」
オタク「自販機で買ってくるよ」
母「ミルクティー!」
オタク「うん……」
母「よろしくぅ」
オタク「いってきます」
オタク(明日、また買いに行くって言ってたな……)
―翌日 学校―
「おっはよー」
委員長「おはよう」
「ねえねえ、今日現国の課題あったじゃない? よかったら……」
委員長「いいけど、参考にする程度にね」
「ありがとぉ!! ちょーたすかるぅ」
オタク(委員長はいつも通り……。当然か……)
「それでさぁー」
委員長「えー? ほんとにぃ?」
オタク(昨日のことが嘘みたいだけど、現実なんだよなぁ)
委員長「あははは」
「ちょっとわらいすぎぃ」
委員長「ごめんごめん」
オタク(委員長が夜にあんなことしているなんて、きっと誰も夢にも思ってないんだろうなぁ)
オタク(知ってるのが僕だけっていうのが、ちょっと優越感だったり……)
―放課後―
オタク(帰ろう……)
不良「おい」
オタク「うっ……」
不良「今日も頼むぜ」
オタク「きょ、今日は……ちょっと……」
不良「はぁ?」
「こっちは試合があるんだよ」
オタク「……」
不良「んじゃ、頼むからな」
オタク「……はい」
不良「な? あいつはなんでもやってくれるんだって」
「ホントだな」
オタク(まぁ、いいか。やろう)
委員長「あれ!? なんでまた貴方が掃除してるの!?」
オタク「あ、ごめんなさい。断れなくて」
委員長「むぅ……。わかった。昨日と同じように窓側から掃いて」
オタク「う、うん。でも、僕一人でも……」
委員長「当番でない人に丸投げなんてできないでしょ」
オタク(やっぱり、優しいなぁ)
委員長「早く終わらそう」
オタク「はい」
委員長「あーあ。明日は目を離さないようにしないと」
オタク「あの……」
委員長「んー?」
オタク「……」
委員長「なに?」
オタク「なんでもないです」
委員長「あっそ」
オタク(今日も買いに行くの? なんて、冷静に考えたら言えるわけないじゃないか)
委員長「よしっ。これでおしまいっと」
オタク「ありがとうございます。手伝ってくれて」
委員長「いいから、いいから。それよりも、あいつらは明日も多分貴方に言ってくると思うから、ちゃんと断るように」
オタク「でも、断ったら何されるか……」
委員長「大丈夫だって。そんな度胸ないない。あったらあんないつも群れてないだろうし」
オタク「そ、そうなのかなぁ」
委員長「万が一、何かされたら先生に報告すること。先生に言いにくいなら私でもいいよ」
オタク(委員長のほうが言い難いな。殴られたとか言うの恥ずかしいし)
委員長「おっと。早く帰らないと」
オタク「そ、そうだね」
委員長「家は真逆だよね」
オタク「うん。そう、なるかな」
委員長「君の家の近所にコンビニってどれくらいあるの?」
オタク(行く気だ……! 絶対、今日も行くんだ……!!)
委員長「立ち読みオッケーのところとかない?」
――共同玄関――
オタク「立ち読みは少年誌とかゲーム雑誌ならできるよ」
委員長「もう。わかってるくせに。意地悪」
オタク「ご、ごめんなさい」
委員長「ま、いっか。今日もそっち方面に行こうと思ってるから、もし見かけても止めないでね」
オタク「あ、う、うん」
オタク(止めても止まらないような気がするけど)
委員長「……昨日のこと誰にも言ってないんだ」
オタク「え? あ、はい。誰にも言ってません」
委員長「私は口止めしてないからね」
オタク「うん。僕が勝手に黙ってるだけだから」
委員長「言いたかったら言っていいんだよ。悪いのは私なんだし」
オタク「別に言う必要もないと思います」
委員長「そう。じゃ、またねっ」
オタク「う、うん。さようなら」
―夜 自宅―
オタク「……」カチャカチャ
オタク「あ、やられた……。くそ……ゲームに集中できないな……」
オタク(もうすぐ9時だ。昨日と同じように塾の帰りに行くんだったらそろそろ……)
『コンティニュー?』
オタク(いや、コンビニなんて近所に5店舗ぐらいあるし、全部見て回るには時間がかかりすぎる)
オタク「なにより、そんなのストーカーみたいじゃないか」
オタク「いくら、委員長に憧れてるからって、そんな付けまわすような真似……キモすぎる……」
オタク「……」ピッ
オタク(もうちょっとゲーム進めようっと)
オタク(これでいいよ。委員長だってホントは購入する瞬間を同級生に見られたいとは思ってないだろうし)
オタク「……」カチャカチャ
母「ねー。ちょっと喉乾いたんだけどー? 飲み物かってきてくれない?」
オタク「なんでだよ。めんどくさい」
母「お金、あげるからぁ。いってきてよぉ」
―コンビニ―
店員「しゃいませー」
オタク(つい、昨日とは別のコンビニに来てしまった。何を期待してるんだ。僕は)
オタク「……」チラッ
オタク(いないよな。いるわけないよ。そんなことあるわけないんだ)
オタク(さっさとミルクティー買って帰ろう)
オタク「ええと、ミルクティー……ミルクティー……」
店員「しゃいませー」
オタク「ん……?」
委員長「……」キョロキョロ
オタク(い、委員長……!?)
委員長「……」サササッ
オタク(迷わず雑誌コーナーに向かったけど……)
委員長「……」ジーッ
オタク(やっぱり成年向けコーナーを凝視してる……)
委員長「うーん……純愛系……凌辱系……SM……どれがいいかな……」
オタク(今日こそ、買うのか……?」
店員「あー。マジだりぃ。おにぎりぐらい消費期限過ぎても食えるってーの」ゴソゴソ
オタク(この店員はテキトーそうだし、身分証の提示とか求めなさそうだけど……)
委員長「やっぱり、露出系で行こう」
オタク(昨日もそういう雑誌を手にしてたけど、委員長っておかしな願望があるのかな……)
委員長「ふぅ……ふぅ……」
オタク(あぁ……やっぱりガチガチに緊張してる……あんな状態だと流石に無理があるんじゃあ……)
委員長「……」キョロキョロ
店員「これも廃棄っと」ゴソゴソ
オタク(店員さん、気づいてあげて)
委員長「す、すみませーん」
店員「はぁーい」
委員長「ふぅ……ふぅ……」
オタク(委員長、大丈夫かな……鼻息荒そう……)
店員「おまたせしましたぁ」
委員長「こ、これ、ください」スッ
店員「はぁーい」ピッ
委員長「ふぅ……! ふぅ……!!」
オタク(おぉ……買えちゃうんじゃないのか……!?)
『年齢確認にご協力ください』
委員長「……!?」ビクッ
店員「画面をタッチしてください」
委員長「が、がめんをですか……」
オタク(アダルト雑誌でもタッチパネルの年齢確認ってあるんだ……)
委員長「ふぅー……ふぅー……」プルプル
委員長「ふぅー……! ふぅー……!!」
店員「あの、身分証とか持ってたら見せてもらえます?」
委員長「み、ぶっ……!?」
オタク(やっぱり、ダメだったかぁ)
―外―
委員長「うわぁぁぁん」ダダダッ
委員長「はぁ……はぁ……」
委員長「もうすこし……! もうすこしだったのに……!! くそ!! くそっ!!」
オタク「あの……」
委員長「え? なんでいるの?」
オタク「ちょっと買い物で……」
委員長「そうなんだ。もしかして、今の見てたの?」
オタク「ごめんなさい……」
委員長「恥ずかしいところを見られちゃったね」
オタク(恥ずかしいところって、成年誌を買おうとしたところなのか、それとも身分証を提示してほしいと言われた瞬間に猛ダッシュで逃げたところなのか)
委員長「今日もダメだった。あの年齢確認、人の良心に問いかける上手い仕掛けね」
オタク「え? ど、どういう意味?」
委員長「学生の私がアダルト雑誌を購入するために、自分は未成年ではないと嘘を吐かなくちゃいけないわけでしょ。まさに悪事に悪事を重ねる行為。罪悪感を無理矢理に覚えさせる二段構え。コンビニも侮れないわ」
オタク(成年誌を買うなんて無理なんじゃないかな、委員長)
委員長「ごめんね。今日もまた送ってもらっちゃって」
オタク「気にしないで。夜道、危ないから」
委員長「ありがと。はぁーぁ。どうしよう。あのコンビニももう行けなくなっちゃた……」
オタク「あの、コンビニじゃなくて古本屋とかじゃだめなの? 古本屋なら安いし、年齢確認もそこまで厳しくないと思うんだけど」
委員長「うーん。塾帰りの時間ぐらいしか買うチャンスがないからなぁ。近所の古本屋は9時にはしまっちゃうし」
オタク「休日は?」
委員長「休日は妹の面倒見なきゃいけないんだ」
オタク「妹さんがいるんだ」
委員長「うん。土日ぐらいはお母さんをゆっくり休ませたいの」
オタク(委員長……ホントに良い人だなぁ……成年誌を欲しがってるけど……)
オタク「あ、そうだ。友達のを借りるとかは?」
委員長「そんなの口が裂けても言えないって。これでも私は品行方正で通ってるんだから」
オタク「あ、そ、そっか……。もしそれで変な噂がたってもダメだもんね」
委員長「学校内での評判を自分から落とそうとは思ってない。けど、他人からの評価で落ちるのは構わない」
オタク(私のことを無理して黙っておくことはないって言ってるのかな。でも、僕は絶対に誰にも言わない。そう決めてる)
委員長「じゃ、送ってくれてありがとっ」
オタク「う、ううん。お礼なんて……僕が勝手にやってるだけだし……」
委員長「そんなこと言わない。感謝してるから、マジで」
オタク「そうなら、嬉しいけど」
委員長「また明日ね」
オタク「あ、うん。明日」
委員長「バイバーイ! 帰り道、気を付けてねー!!」
オタク「うん。気を付けます」
オタク「……」
オタク(今日も会えた……。やっぱり嬉しいな)
オタク(委員長が成年誌を漁ってる光景はあんまりみたくないけど……)
オタク(明日は、どうするんだろう)
オタク(って、また明日も夜に出歩くつもりなのか、僕。それじゃあ、ホントにストーカーじゃないか)
オタク(明日はやめよう……)
オタク「帰ろう。お母さんも待ってるだろうし」
―翌日 学校 放課後―
オタク(今日も誰とも話すことなく、終わったな……。委員長……)
「ねえ、駅前のショッピングモールでバーゲンやってるんだって。今週末、どう?」
委員長「ホント!? ちょっと考えてみる、けど、お小遣いが……」
オタク(服とか買ったら雑誌は諦めなきゃいけないだろうな)
オタク(って、盗み聞きなんてやめよう。早く帰らないと、また――)
不良「おう」
オタク「ひっ」
不良「今日も頼めるか?」
「監督が遅刻はグラウンド10周追加とか言ってるからよ」
オタク「えと……今日は……」
不良「頼むぜ、なっ?」
オタク「う……うん……」
委員長「ちょっと嫌って言ってるじゃない。今日は交代なし。貴方達が掃除。ほら、箒と塵取りもってくる!」
オタク(い、委員長……)
不良「なんだよ。こいつは頷いたぞ。なぁ? 嫌じゃないよな?」
オタク「そ、れは……」
委員長「嫌だって言ってるの!! 掃除!!」
不良「だから、こいつは嫌がってねえって!」
委員長「嫌じゃないの!?」
オタク(正直、委員長と二人きりになれる時間だし、嫌っていえば嘘になるかもしれないけど……)
オタク「い、いや、です」
委員長「ほーら、嫌だってさ。いいから、やりなさい」
不良「ちっ……」
「これで俺たちが遅刻したら殴るぞ」
委員長「監督って数学の先生でしょ? 私から説明しておいてあげるけど」
不良「しなくていいって。うぜえから帰れよ」
委員長「言われなくても帰るわ。ほら、今日は早く帰れるよ。やったね」
オタク「あ、うん。ありがとう」
委員長「いいよ。お礼なんて、私が勝手にやってるだけだしね」
―共同玄関―
委員長「バイバーイ」
「バイバーイ」
オタク(はぁ……。結局、助けてもらったなぁ。かっこわるいなぁ)
オタク(こんな僕にでも優しくしてくれる委員長って、ホント天使だなぁ)
委員長「バイバイ」
オタク「え?」
委員長「ん? バイバイ」
オタク「あ、あ、バ、バイバイ」
委員長「またねっ」
オタク「あぁ……」
オタク(たとえアダルト雑誌が好きでも、夜な夜な変装してコンビニにいても、やっぱり素敵だ)
オタク(今日もコンビニにいくのかな……)
オタク(い、いや、行かないって決めたじゃないか)
オタク「今日はあのゲーム最後まで進めたいし……」
―夜 自室―
オタク「……」カチャカチャ
オタク「……もう9時か」
オタク(委員長、今頃コンビニかな)
オタク「……」
オタク(お母さんがまたジュースを頼みにくるかもしれないし、待ってみよう)
オタク(おつかいを頼まれたら、行こう。理由もなく外にいくのは、やっぱり、なんか嫌だし)
オタク「……」カチャカチャ
オタク「あ、くそ……ここでこうしたらいいのか……」
オタク「あ、ああ……やられた……」
オタク「セーブしとこ」
オタク「……」
オタク(風呂入ろうかな……)
オタク(そう都合よく、お使いを頼まれたりしないよな)
オタク(ギャルゲじゃないんだから、上手くいくわけないよ)
―翌日 学校 教室―
「おっはよー」
委員長「おっはよー」
「昨日言ってた、バーゲン、行けそう?」
委員長「うん。なんとかなるかも」
「マジ!? よっし、約束だよ。何、買おうかなー」
委員長「ワンピースみたいなの欲しかったんだよねー」
「えー? ちょー似合いそうじゃん。私が選んであげるよー」
委員長「いいの? やったー」
オタク「……」
オタク(リア充してるなぁ、委員長)
オタク(昨日はコンビニ行ったのかな。買えたのかな)
オタク(気になるけど、聞けるわけないし……)
オタク(もう忘れよう。十分、委員長とは話せたし)
オタク(帰ったら、ゲームの続きしよう。今日こそクリアしないと)
―放課後―
オタク(帰ろう……)
不良「……」
オタク「うっ……」
オタク(ま、また言われるのか……)
不良「とっととやろーぜ」
「おー」
オタク(あ、あれ、真面目にやるんだ……)
委員長「私、職員室に寄ってから帰るから」
「そっか。じゃねー」
委員長「うん。バイバーイ」
オタク「……」
オタク(委員長が言いくるめてくれたのかな)
オタク(これですぐに帰れるし、いいか)
オタク(早く行こう)
―数日後 学校 放課後―
オタク(終わったー。さ、帰ろう。今日からはあのゲームを始めたいしな。ふふふふ)
オタク(最速クリアしてネットで自慢してやろう)
「ゴミ、捨ててくるよー」
委員長「ありがとー」
オタク(今週から委員長が掃除当番なんだ)
オタク(そういえば、あれからどうなったんだろう。雑誌、買えたのかな。バーゲン行くって言ってたけど、もしかしたら諦めたのかもな)
オタク(月のお小遣い1000円だって言ってたし)
オタク(まぁ、僕には何も関係ないけど)
委員長「あ、待って」
オタク(ゲーム、とことんやろう)
委員長「待ってってば」
オタク「え?」
委員長「時間ある? あるなら、掃除終わるまで待っててほしいんだけど」
オタク「え? え?」
―校舎裏―
委員長「ゴメーン、お待たせ」
オタク「あ、うん。全然、いいんだけど。こ、こんなところで話って……?」
委員長「うん……その……あのね……」モジモジ
オタク(人気のない場所……それに委員長の態度……これって……まさか……)
委員長『あのね……その……私……私……!』
オタク『皆まで言うな、子猫ちゃん。全部、分かってるからさ』
委員長『え……?』
オタク『俺も、君のことが好きだったんだ』
委員長『う、うれしい……!!』
オタク『これから、どこに行く?』
委員長『今日は、家に誰もいないんだけど……』
オタク『やれやれ。まいったね、どうも』
オタク(そんな展開もありえるのか……? そんなギャルゲみたいなことって起こり得るのか……!?)
委員長「うん。ここでちゃんと言わなきゃ……前に進めないし……。あのね」
オタク「は、はい」
委員長「こんなこと、貴方にしか頼めなくて……」
オタク「ど、どど、どんなこと……?」
委員長「あれから貴方の家の近所にあるコンビニ、全部回ったんだけどね。結局、無理だったの」
オタク「え?」
委員長「買えなかったの。レジまでは持っていったの。でも、やっぱりどのコンビニでも年齢確認を求められて……」
オタク「そ、そうなんだ」
委員長「私、一人では買えないってことがよーく分かった。だから、助けてほしいの」
オタク「た、助けるって? どういう風に? 僕が買ってくるとか?」
委員長「ううん。そんなこと貴方にはさせられないし、させたくもない。ただ、私が逃げ出しそうになったら止めてほしいの」
委員長「逃げるな! お前には夢があるんだろう!って感じで行く手を塞いでほしい」
オタク(その程度で逃げるのを思い留まれるなら、もっと早く買えてると思うんだけど)
委員長「ダメかな!? どうしても買いたいの!! アダルト雑誌!!」
オタク(大声でなんてこと言うんだ、この人)
―夜 コンビニ前―
オタク(ここであってるよな……。自転車で20分ぐらいのコンビニなんて絶対に利用しないし、同じようなコンビ二もあるから自信ないけど……)
委員長「いたいた!」
オタク「お、お、こ、こんばんは……」
委員長「はぁ……はぁ……。ごめんね。無理にここまで来させちゃって」
オタク「ぜ、全然。どうせ、することもないし」
委員長「雑誌と一緒にジュースも買っちゃうから。ちゃんとお礼させてね」
オタク「い、いいよ、別に、そんな……僕が……」
委員長「勝手にやってるだけだから、貰って。ね?」
オタク「お……」
オタク(委員長、可愛いなぁ……。こんな綺麗で可愛い子と夜に会ってる俺って……リア充か……?)
委員長「もうね、買う雑誌は決めてるの。今週発売の『露出調教アカデミー』っていう雑誌!」
オタク(リア充ではないかもしれない)
委員長「店から出ようとしたら、私を止めてね。約束だから」
オタク「あ、はい。がんばってください」
店員「っさいませー」
委員長「ふぅ……ふぅ……」
オタク(いつもながら挙動不審だなぁ……)
委員長「買う……買うのよ、私……絶対に買うんだから……ふぅ……ふぅ……」
オタク(今回も無理なんだろうなぁ)
委員長「……あった、これをさりげなく籠にいれて……」プルプル
委員長「あっ」
バサバサバサ!!
オタク(あぁ!? 雑誌をいくつも落としちゃった!?)
委員長「あぁ……あぅ……」オロオロ
店員「……」ジーッ
オタク(店員が怪しんでる……!! い、行こう!!)タタタッ
店員「っさいませー」
オタク「……」スッ
委員長「あ、あの、わたしが拾うから……」オロオロ
オタク「ど、どれにしようかなぁ」
委員長「……」
オタク「(はやく、レジに)」
委員長「……」コクッ
委員長「あー、のどかわいたなー。どれにしようかなー?」
オタク(そんなこと口に出さなくていいと思います。棒読みだし)
委員長「これとか、どうかな?」チラッチラッ
オタク(なんでもいいです。僕の好みとか気にしないでください)
委員長「こっちかな?」チラッチラッ
オタク(早く行ってください)コクッ
委員長「おっ。よし、これに決めたっ。あとは……」
委員長「ふぅ……ふぅ……」
オタク(絶対にダメだぁ……)
委員長「ふっ……ふっ……」
店員「っさいませー」
委員長「こ、これ……くださ――」
店員「年齢確認ができるものをお持ちですか? 免許書等のご提示をお願いします」
オタク(あれを言われたら終わりだよなぁ……どうしようも……)
委員長「……」
オタク(あれ? 委員長、逃げる気配がないけど……)
委員長「見えますか? この私が18歳未満に」ファッサァ
オタク(おぉ……。余裕を見せてる……!)
委員長「ふふ……」プルプル
オタク(足が震えてるけど、店員からは見えないし、いけるか……?)
店員「はい。見えます」
委員長「ぶっ……!?」
店員「年齢確認にご協力ください」
委員長「……このジューしゅだけくだしゃい!!!」ダンッ!!!!
オタク(あー!! 諦めたー!!)
店員「138円になりまーす」ピッ
―外―
委員長「うぅぅ……また買えなかった……」
オタク「あの、やっぱり僕が買って……」
委員長「……いいの?」
オタク(か、かわいい……! けど、やろうとしてることは褒められないんだよなぁ……)
委員長「ダメ。そんなの貴方の手を汚すことになるだけだもの」
オタク「別に成年誌買うだけだし」
委員長「慣れてるの?」
オタク「え? いや、その……慣れてるわけじゃないけど……」
オタク(中学のときに買った経験あるし、もう抵抗はないっていうか……。確かに最初はドキドキしたけど)
委員長「いいよね、男子は。ちょっと顔が幼くても怪しまれないし」
オタク「そんなことないんじゃないかな。お店の店員によるところも大きいし」
委員長「私は全部のコンビニで年齢確認されるんだけど。私ってそんなに幼く見える?」
オタク(挙動が怪しすぎるだけだと思う)
委員長「はぁ……。やはり奥の手を使うしかないっていうの……?」
オタク「奥の手?」
委員長「雑誌と雑誌の間に挟んで買う、サンドイッチ作戦」
オタク(行き付く発想は男女に差がないのかな?)
委員長「ジャンプとマガジンの間に露出調教アカデミーを挟んで更にサンデーまで一緒にもっていくの」
委員長「そしたらメインで買うのは少年誌で成年誌はあくまでついでだって自分を誤魔化せるでしょ?」
オタク(店員は誤魔化さないのか)
オタク「あ、でも、それだとかなりの大金になるんじゃあ……」
委員長「そう。少年誌三冊に成年誌一冊でしょ。軽く2000円は超えるのよね。というか露出調教アカデミーは結構するから3000円近くなる」
オタク「お小遣い3か月分だね」
委員長「うん。かといって、お母さんに前借なんてできないし……」
オタク「あの、前に聞いちゃったんだけど、バーゲンにいくとか……。それは大丈夫なの?」
委員長「うん。平気だよ。友達と一緒にいくけど、良いのがなかったって言うし」
オタク(健気だなぁ、委員長。服を我慢して成年誌買おうとしてるけど)
委員長「はぁ……。あと半年は待たなきゃいけないかも」
オタク「お金、貸そうか?」
委員長「えっ」
オタク「3000円ぐらいなら全然……」
委員長「やめてっ。いくらなんでも、こんな理由では借りれない」
オタク「けど、いつまで経っても買えないし」
委員長「半年、半年まてば……!!」
オタク「その間、何も買わないつもりなの? 服だって一回は良いのがなかったで切り抜けられるかもしれないけど、二回目、三回目ってなれば……」
委員長「くっ……」
オタク「毎月100円でもいいよ」
委員長「100円!? あの、利子はなし!?」
オタク「な、ないよ」
委員長「どうしよう……世の中、そんな甘い話はないってお母さんがいつも言ってるし……」
オタク(家庭環境、複雑なのかな)
委員長「……100円……100円だと……ええと、30ヶ月払い……はっ……卒業しちゃうけど……?」
オタク「え?」
委員長「に、逃げちゃうかもしれないけど、いいの? 踏み倒す可能性は考えないの?」
オタク「踏み倒すって、そんなこと絶対にしないと思うんだけど」
委員長「なんでそう思うの? 私ってもしかしたら魔性の女かもしれないのに」
オタク(魔性の女が成年誌買うだけでこんなに苦労しないと思う)
オタク「むしろ、踏み倒す委員長が見てみたい気がする」
委員長「そこまで信頼を得ていたなんて。私、貴方に何かした?」
オタク「あ、えと、別に……ただ、そんなことをする人には見えないだけで……」
委員長「悪い女に騙されないように注意したほうがいいわね」
オタク「き、気を付けます」
委員長「……それじゃあ、あの……」モジモジ
オタク「あ、うん。どうぞ」
委員長「……ホントに、いいの?」
オタク「うん」
委員長「……」
オタク「違うコンビニに行かない? ここではもう買えないし」
委員長「……うんっ」
訂正
>>52
オタク「毎月100円でもいいよ」→オタク「返済は毎月100円からでもいいよ」
―コンビニ 店前―
委員長「じゃ、行ってくるね。もし私が逃げそうになったら、止めてね」
オタク「あ、うん」
オタク(無理だろうなぁ……)
委員長「ふぅー……。よしっ」
オタク(今度はちゃんと買えるかな。でも、冷静に考えれば委員長にそんな本買って欲しくないよな)
オタク(憧れていた女の子が実は成年誌を買い漁ってたなんて、知りたくもない情報だし)
委員長「……」ゴソゴソ
オタク(少年誌を手に取ったぞ。今のところ緊張してる様子はないけど)
オタク(止めるべきなのかなぁ)
委員長「……!!」ビクッ
オタク(なんだろう……? 委員長の動きが止まったぞ)
委員長「……」オロオロ
オタク(かなり狼狽えてる。何があったんだ? 行ってみよう)
オタク(成年誌を置いてないコンビニだったのかな?)
店員「しゃせー」
オタク「(どうしたの?)」
委員長「(あ……。その……なくて……)」
オタク「(え? ないって……。成年誌コーナーはちゃんとあるけど……?)」
委員長「(でも、ないの……。露出調教アカデミーが……)」
オタク「あぁ……」
オタク(コンビニによって仕入れる雑誌は違うだろうしなぁ)」
委員長「(どうしよう?)」
オタク「(でも、目的は成年誌を買うことじゃないの?)」
委員長「(そうね。この際、王道の純愛系でいくわ)」スッ
オタク「(あとは買うだけだね)」
委員長「(貴方に借りた3000円、絶対に無駄にはしないから)」
オタク「(うん)」
委員長「(レジへ、行きましょう)」
オタク(あぁ……。同じ側の手と足が動いちゃってる。ナンバ歩きっていうんだっけ)
店員「しゃせー」
委員長「こ、これ、くださいっ」ドンッ
店員「はぁーい。えー260円が一てぇん」ピッ
委員長「ふぅー……ふぅー……」
店員「260円がいってぇん」ピッ
委員長「ふぅー! ふぅー!」
オタク(次、くるぞ……!!)
店員「……」ピクッ
オタク(手が止まった……!?)
委員長「ふぅー!! ふぅー!!」
店員「1200円がいってぇん」ピッ
オタク(おぉ! 通った!)
委員長「ふぅー!!! ふぅー!!! ふぅー
>>59
投下ミス
店員「しゃせー」
委員長「こ、これ、くださいっ」ドンッ
店員「はぁーい。えー260円が一てぇん」ピッ
委員長「ふぅー……ふぅー……」
店員「260円がいってぇん」ピッ
委員長「ふぅー! ふぅー!」
オタク(次、くるぞ……!!)
店員「……」ピクッ
オタク(手が止まった……!?)
委員長「ふぅー!! ふぅー!!」
店員「1200円がいってぇん」ピッ
オタク(おぉ! 通った!)
委員長「ふぅー!!! ふぅー!!! ふぅー!!」
店員「年齢確認画面をタッチしてください」
委員長「ふぅー!!! ふぅー!!! ふぅー!!!」ピッ
店員「四点で1980になりまぁす」
委員長「こ、こ、これで……」
店員「2000円お預かりします」
委員長「んふぅ……んふぅ……」
店員「20円のお返しになります。レシートはご利用ですか?」
委員長「い、いいです」
店員「ありがとうございましたぁー」
委員長「んふぅ……んふぅ……」
オタク「い、委員長……」
委員長「んふぅ……んふぅ……」
オタク(すごく興奮しているみたいだ)
委員長「か、買えちゃった……」
オタク「おめでとう、委員長」
委員長「くっ……。胸が苦しい……。罪悪感で吐きそう……」
オタク「そ、そこまでなんだ……」
委員長「はぁ……」
オタク「とりあえずは目的達成したんだし、いいんじゃないかな。はい、これ」
委員長「え? なに?」
オタク「飲み物、買っておいたから。飲んで。喉乾いてると思って」
委員長「いいのに、そんな! 私はお金まで借りてるのに!!」
オタク「こ、これは、あの、委員長ががんばったご褒美ってことで……」
委員長「ありがとう。そういうことなら、貰うね」
オタク「うん」
委員長「んくっ……。ふぅ……。あ、そうだ。これ、あげる」
オタク「そっか。少年誌のほうはいらないもんね。なら、ええと780円分はこれで返済したってことで」
委員長「ダメ。3000円、きっちり耳揃えて返すから」
オタク(耳揃えてって……。やっぱり家庭の事情は複雑なのかな)
委員長「今日は本当にありがとね。こんなことに付き合わせちゃって」
オタク「全然、気にしてないし。こっちこそ、楽しかったから」
委員長「楽しかったの? ふぅん。男子って女の子と一緒にアダルト雑誌買うのが楽しいの?」
オタク「そ、そういうわけじゃないから……!!」
委員長「ま、いいけど。それじゃ、帰ろっか」
オタク「あ、うん。送っていくよ」
委員長「いつもごめんねー」
オタク「いや、これぐらいは……」
委員長「はぁー……。帰ったら読まなくちゃ……」
オタク(どこで読むんだろうか……。妹さん居るって言ってたし、トイレとかでこっそり読むのかな……。って、何を想像してるんだ!! キモ過ぎだろ!!)
委員長「どうかした?」
オタク「な、なな、なんでもないよ」
委員長「それにしてもこれ、結構安かったよ。1200円だったもん」
オタク「本当に欲しかったのはどれぐらいするの?」
委員長1800円ぐらいだったはず。今発売中のやつはDVD付きで少し値上がりしてるみたいだけど」
オタク(委員長がそこまで調べてることにちょっとショックだ)
委員長「貴方がいなかったら絶対に買えなかっただろうけどね。ふふっ」
オタク(けど、この笑顔を見れて、ちょっと幸せだ)
委員長「ここまででいいよ。ありがとう」
オタク「ま、また、明日」
委員長「うん。そうそう。返済なんだけど、ホントに30ヶ月払いでいいの?」
オタク「も、もちろん。いつまでも待つから」
委員長「そう。それじゃあ、甘えるね」
オタク「うん。あ、甘えてください」
委員長「それじゃあ、バイバーイ! 気を付けて帰ってねー!!」
オタク「う、うん! バ、バイバイ!」
オタク「……」
オタク(これで終わりだな)
オタク(委員長も満足そうだし、これでいいんだよな)
オタク「帰ろう。少し遅くなっちゃったし、お母さんになんか買って帰ろうかな」
オタク(もう委員長と話すことなんてないかもな)
オタク(あの委員長と夜に二人きりで出歩けだけでも、十分か)
オタク「……あれ? そういえば委員長の買い物、総額で1980円だったような……1000円札丸々残ってるんじゃあ……? まぁ、いいけど」
―翌日 学校 教室―
「おっはよー!」
委員長「おはよー」
オタク「……」
オタク(なんだか委員長が遠くの存在に戻っちゃった気がする)
オタク「はぁ……。早く家に帰りたい……」
委員長「おはよ」
オタク(あのゲーム、今週中にはクリアしたいな)
委員長「おはよー」
オタク「え? え?」
委員長「おはよう」
オタク「あ、おはよう」
「ねーねー、先生がよんでるよー」
委員長「わかったー」テテテッ
オタク(な、なんだ……!? なんで急に挨拶を……!?)
―放課後―
オタク(終わった……。早く帰ろう)
オタク(朝のあれは何だったんだろう。委員長におはようなんて言われたの、初めてだ。わざわざ僕の傍まで来てくれるなんて……)
オタク(嬉しいけど……とても嬉しいけど……)
「ちょっと机動かすよー」
委員長「うん。おねがーい」
オタク「……」
オタク(挨拶、したほうがいいかな……)
オタク「あ、ぇ……と……。さ、さよな、ら……」
委員長「え? あ、うん。バイバイ! 気を付けてねー」
オタク「あ、ぅん……」
「あれ? あの子と仲良かったっけ?」
委員長「うん。普通に話すけど」
「えぇ? いつから?」
委員長「いつからだろうねー。忘れちゃったな。そんなことより掃除、掃除」
―共同玄関―
オタク(委員長、僕のことどう思ってるんだろう……。友達とか思ってくれてたらいいなぁ……)
オタク「なわけな――」
オタク「ん? 靴箱になにか……。これは……」ガサッ
オタク「て、がみ……? まさか……きっと悪戯……」ペラッ
今日、午後9時30分ごろ、昨日買い物ができたコンビニで待ってます。
都合が良ければ来てください。
オタク(い、委員長から……!? な、なんで。なんでなんで!?)
オタク「な、何があるんだろう……。悪戯……じゃないよな……コンビニのこと、誰にもしゃべってないし……」
オタク(ま、また買うのかな? いや、それだとお金の問題があるし)
オタク(もしかして、僕に出させるつもりで……?)
オタク(って、委員長はそんなことするような人じゃないよな)
オタク(けど、こうしてわざわざ呼び出すってことは僕に相談したいことがあるんだろうし)
オタク(僕に相談ってことは、やっぱり成年誌に関することだろうし……)
オタク(あれ? あんまり嬉しくないような気がしてきた)
―夜 コンビニ前―
オタク(もうすぐ約束の時間だけど……)
委員長「あ!!」
オタク「こ、こんばんは」
委員長「ごめん。急いできたんだけど、待った?」
オタク「う、ううん。いま、来たところだから」
委員長「まさか私より早く着いてるとは思わなかったな。わざわざありがとう。手紙、びっくりしたでしょ」
オタク「す、すこしだけ」
委員長「ケータイがあればあんな風に伝えなくてもいいんだけどね」
オタク「それは、別にいいんじゃないかな」
委員長「で、こうして貴方を呼びつけた理由なんだけど」
オタク「うん……」
委員長「これを預かってほしいの」ゴソゴソ
オタク「え?」
委員長「昨日買ったアダルト雑誌っ」
オタク「ど、どういうこと……!?」
委員長「本当なら、こんなこと頼むべきじゃない。それは分かってるんだけど、でもね、昨日私の浅はかさを知ったら、お願いするしかなくて」
オタク「何があったの?」
委員長「貴方と別れたあと、すぐにトイレに入って、これを読んだの」
オタク「お……!?」
オタク(ダメだ……!! 想像するな……!! というか、委員長もそんなこと言わないでほしい……!!)
委員長「内容的には、ちょっと物足りないかなーって思ったけど、初めてのモノだし、結構興奮しながら読めたの」
オタク(これ以上、委員長に何かを喋らせたらいけない気がする!!)
委員長「そのあと、雑誌を隠そうと思ってベッドの下に持っていったんだけど……」
オタク「う、うん?」
委員長「考えてみたらベッドの下なんて妹がふざけて潜り込む可能性があるし、お母さんが掃除しているときに見つけるかもしれない」
委員長「かといって、本棚に並べるには雑誌の見た目から違和感が強すぎるし、無理」
委員長「服と服の間も発見される可能性が高い」
オタク「机の引き出しの下とかにスペースないの?」
委員長「自分の勉強机、持ってないもん」
オタク「あぁ、そうなんだ。ごめん」
委員長「謝ることはないけどね。だから、最も見つからないであろう場所に隠したんだけど……」
オタク「それは……?」
委員長「通学鞄の底敷きの下」
オタク「ぶふっ……!?」
委員長「今日荷物検査があったら、私の学校生活は終わってた」
オタク(委員長が……あの綺麗で可愛くて……成績優秀で……真面目な委員長が……学校に……学校に……成年誌を……!?)
委員長「それはそれでドキドキしたけど、けど、やっぱりリスクが高すぎるの」
オタク「だ、だろうね……」
委員長「けど、捨てるのも……どうかなって……折角、貴方が貸してくれたお金で買ったんだし……」
オタク「そ、そうだね」
委員長「……あの。図々しいことを承知でお願いします。このアダルト雑誌、預かっていていください!」
オタク「う、うぅん……」
委員長「読んでもいいし、使ってもいいから」
オタク(ホント、可愛い顔して何言ってるんだ、この人……!?)
委員長「ダメ、だよね……。貴方だって、お母さんに見つかったらどうなるかわからないもんね」
オタク「い、いや、いいよ。預かる」
委員長「ホントに?」
オタク「うん。僕の部屋、お母さんが掃除することってあんまりないし」
委員長「そうなの!? えっと、それじゃあ……」
オタク「うん、預かります」
委員長「ごめんなさい。貴方の手は借りないなんて言ってたのに……結局、巻き込んじゃって……」
オタク「いいよ、これぐらい」
委員長「……」
オタク「どうかした」
委員長「……ごめんなさい」
オタク「な、なにもそこまで気にしなくても」
委員長「日曜日、予定ある?」
オタク「へ?」
委員長「もし予定がなければ、貴方の家に行ってもいい?」
オタク「い、いいけど……」
委員長「やった。それじゃ、約束ね」
オタク「いいの? 日曜日は忙しいとか言ってたような」
委員長「午前中に家事は終わらせちゃうし、それに3時ぐらいまでなら大丈夫だから」
オタク(あぁ、午後1時ぐらいから2時間ぐらいしか遊ぶ時間はないってことか。やっぱり忙しいんだな)
委員長「もしよかったら、日曜日はお昼ご飯作っていくけど?」
オタク「えぇ!? い、いや!! だ、だいじょうぶだから!! お母さんが作ってくれるし!!」
委員長「けど、それぐらいの恩返しは……」
オタク「い、いいよ! 全然、きにしないで! うん!!」
委員長「そう……」
オタク「と、とりあえず、待ち合わせはこのコンビニでいい?」
委員長「え? 今から連れて行ってくれないの?」
オタク「け、けど、家とは反対方向じゃあ」
委員長「そっか。確かに、遅くなるね」
オタク「あ、送っていくよ」
委員長「それじゃあ、ここで。いつもありがとう」
オタク「う、うん。あの、それじゃあ、今度の日曜日は……」
委員長「そーだ!! 住所は!?」
オタク「じゅ、住所?」
委員長「家の住所。当日は地図見ながらいく。やっぱり貴方を外に出すなんておかしいわ。こっちがお礼する立場なんだし」
オタク「気にすることじゃないと思うけど」
委員長「気にする!」
オタク「おぉ!?」
委員長「これ以上は、私が罪の意識に耐えきれなくなって、熱が出るかもしれないし」
オタク(真面目すぎる)
委員長「だから、住所」
オタク「うん、メモ帳とか……」
委員長「待ってて! 家の中から持ってくるから!」
オタク「あ、はい」
オタク(なんだかとんでもないことになってきたぞ……)
委員長「これが貴方の家の住所ね」
オタク「はい」
委員長「わかった。ホントに何から何まで頼って、ごめん」
オタク「僕は何も気にしてないから」
委員長「……」
オタク「委員長……?」
委員長「あ、ううん。なんでもない。それじゃ、バイバイ」
オタク「うん。バイバイ」
オタク(時折、何かを考え込んでいるというか、思いつめてるような顔をするんだよなぁ)
オタク(委員長、何か僕に言いたいことでもあるのかな?)
オタク(気にしても分かるわけないだろうけど)
オタク(さて、帰ろう……)
オタク(日曜日か……女の子が……僕の家に……)
オタク(それもあの、委員長が……。でも、あの委員長はこの成年誌を……)
オタク(この成年誌……委員長は既に見たんだよな……で、どうすれば……これ……どうしよう……)
―自宅―
オタク「……」
オタク(委員長がトイレで見たという成年誌……)
オタク(表紙から明らかにソレだと分かる)
オタク(けど、なんだろう……。今、目の前にある成年誌は世界中で最も興奮を覚える成年誌のような気がする)
オタク(委員長が持って帰り、トイレで読んだという付加価値が絶大な効果をもたらしている)
委員長『読んでもいいし、使ってもいいから』
オタク「……」
オタク(委員長は何を思って、あんな発言をしたのか)
オタク「あれが天然にしろ、計算にしろ、委員長は本当に魔性の女かもしれない」
オタク「でも、この雑誌だけは使ってはいけない。綺麗なままで、返したい」
オタク(この感覚はなんだろう。本当に好きなアニメ原作のアダルト同人誌は読みたくないという気持ちに似てるかも)
オタク「まぁ……実際……委員長のことは……」
オタク(アダルト雑誌を必死になって買っている姿を見ても、嫌いになるどころか、もっと惹かれてるしなぁ……)
―日曜日 自宅―
オタク「……」ゴォォォ
オタク「これでいいかな」
母「朝からずっと掃除してるけど、誰か来るの?」
オタク「う、うるさいな。ほっといてくれよ」
母「もしかして、女の子? あらあら。嬉しいわぁ。あんたに彼女ができるなんてね。どんな子? 可愛いの? ねえねえ」
オタク「そ、そういうのじゃないから!」
母「分かったわ。そうよねぇ。恥ずかしいよねぇ。じゃ、今からお母さんは出かけてくるわ」
オタク「え? お昼ご飯は?」
母「んー。お小遣いあげるから、何か食べてきたら? 二人で」
オタク「ちょっ……」
母「そうそう、あとで顔ぐらいはみせてね。ケータイで写真ぐらい撮らせてくれるでしょ、女の子も」
オタク「だ、だから、そういう関係じゃないって」
母「たのしみだわー。いってきまーす」
オタク(好都合かもしれないけど、なんか釈然としないなぁ)
オタク「1時過ぎた……」
オタク「本当に来るのかな」
オタク「ただ揶揄われただけかもしれないよな」
オタク「……」
オタク(そうだよね。委員長みたいな女の子が僕の家に来るわけないよな)
オタク「あの雑誌だってもしかしたら悪戯目的で渡してきたのかもしれないし……」
オタク「今頃、僕はクラスの女子の間で笑いものになってるんじゃ……」
オタク「SNSに顔写真付きで投稿されてたり……」
オタク「いやいやいや。委員長はそんな人を貶めたりするような人じゃないだろ」
オタク「ネットに毒され過ぎ」
オタク「……」
オタク「急な用事ができて、来ることができないだけ――」
ピンポーン
オタク「お……!? き、きたのかな……? は、はーい?」
委員長『すみません。ええと、今日は遊ぶ約束をしていまして。私は同じ学校の――』
オタク「ど、どうぞ」
委員長「お邪魔します。なんとか辿り着けて良かった」
オタク「ホ、ホントに地図を頼りに来たんだね」
委員長「うん。それしかないもん。ところで、ご両親は? つまらないものだけど、お土産用意したんだけど」
オタク「ええ? そんなのいらなかったのに」
委員長「だって、やっぱり、その、罪悪感が……」
オタク(そんなに深刻になるようなことでもないのになぁ)
オタク「母親は今、外出中なんだ」
委員長「お父さんは?」
オタク「いない。僕が小さいときに離婚して」
委員長「そ、そうなんだ。ごめんなさい」
オタク「いや、死んだわけじゃないし。離婚の理由も、父親の浮気が原因らしいから」
委員長「はぁ……。それはダメね。不倫とか絶対に許せない」
オタク(委員長ならそうだろうな)
委員長「そっか。お母さんはいないんだ。このお土産、あとで渡してくれる?」
オタク「うん」
委員長「ありがとう」
オタク「……」
委員長「……」
オタク「あ、あ、飲み物用意するから僕の部屋で待ってて。ええと、僕の部屋はこっち」ガチャ
委員長「失礼します。わぁ。すごく片付いてる。几帳面なのね」
オタク「ま、まぁね」
委員長「ありがとう」
オタク「な、なにが?」
委員長「なんとなく。ふふっ」
オタク(掃除したのバレてるのか……?)
オタク「お、お茶でいい?」
委員長「お構いなく」
オタク「それじゃあ、用意する」
委員長「うんっ」
オタク「お待たせ」
委員長「ありがと」
オタク「……」
委員長「……」
オタク(な、何か喋らないと……)
オタク「あ、ええと、あの雑誌だけど、ちゃんと保管してるから」
委員長「え? 保管してるの?」
オタク「うん。預かったその日にあの鍵付きのケースに入れた」
委員長「普通、隠すのはベッドの下じゃないの? ケースだとあからさま過ぎてすぐに見つかるような気がするけど」
オタク「いや、その、流石に委員長のものを触るのはどうかなって思って」
委員長「それじゃあ、読んでもいないの?」
オタク「うん」
委員長「そう……」
オタク(なんか微妙な表情だな。感心しているようにも、落胆しているようにも見えるけど……。って、落胆はないか)
委員長「そっか。読んでないんだ」
オタク「ええと、それで、何しようか……。ゲームはたくさんあるけど、委員長ができそうなやつはあるかな」
委員長「うん……」
オタク「あ、い、嫌だった? ええと、それじゃあ、漫画は……僕の集めてる漫画は偏ってるし、読まないよね……」
委員長「……」
オタク(どうしたんだろう……。急に俯いて……)
委員長「今日、どうしても話しておきたいことがあって、お邪魔したの」
オタク「はなし、たいこと?」
委員長「うん」
オタク(なんだろう……)
委員長「ごめんなさい!!」
オタク「へ?」
委員長「私は、最初から全部分かってた」
オタク「な、なにが」
委員長「自分の家にアダルト雑誌を隠しておくことはできないって。どこに隠しても絶対にいつか見つかるって。けど、どうしても読んでみたかった。この衝動だけは抑えられなかった」
オタク「あ、うん。でないと、あんな毎晩コンビニで悪戦苦闘しないもんね」
委員長「迷っていた原因の一つでもあったの」
オタク「そうか。見つかるのが分かってるなら、買うのに踏ん切りもつかないか。恥ずかしさだけじゃなかったんだ」
委員長「そうなの。本当は二冊は欲しかったぐらいだけど、一冊でも危険すぎるのにそこまでの勇気は出なかったわ」
オタク「二冊も……」
委員長「そんなときに、貴方に見つかった。正直、終わったって思った。それと同時に心が軽くなって、どうにでもなれって自棄にもなった」
委員長「どうせ破滅するなら好き放題してやれって、あのとき考えてしまったの」
オタク「どういうこと?」
委員長「私、貴方に聞いたでしょ? 家は近いのかって」
オタク「う、うん」
委員長「あと、自分の部屋はあるのかって」
オタク(そういえば聞かれた気がする)
委員長「どうしてそんなことを唐突に訊いたと思う?」
オタク(どうしてって、一つしか思い浮かばないけど……)
オタク「ぼ、僕の家に雑誌を隠そうとしたとか?」
委員長「……」
オタク(だ、黙っちゃったけど……違うのか……?)
委員長「……」
オタク「あ、あの……」
委員長「そ、その通り……です……。ごめんなさい」
オタク「あ……」
委員長「そんな酷いことを考えて、遂には実行してしまった。貴方に雑誌を渡した日から今日まで、もう本当に辛くて……」
オタク「えぇ……」
委員長「せめて、あの雑誌で気持ちよくなってくれたらと思って、使っていいよって言ったんだけど……」
オタク(どこまで本気なんだ、この人……!?)
委員長「まさか借りたモノに一切手を付けないぐらいに、良い人だったなんて」
委員長「私は、そんな良い人を自分の都合だけで利用した。ご家族に軽蔑されてしまうリスクまで背負わせた」
委員長「だから、ごめんなさい。本当に成年誌を買ったこと、後悔してる」
オタク「委員長……。そんなに思いつめてたんだ」
オタク(時折、見せていた苦しそうな顔は謝罪したかったからなんだ)
委員長「成年誌は私が持って帰って処分する。今日まで預かってくれてありがとう。お金は、きちんと返すから。今日は、その、持ち合わせがないけど」
オタク「最悪、僕に預ければいいって考えたから、成年誌は買えたんだ」
委員長「そういうことになる、かも。ううん、そういうことだよ。言い訳はしないわ」
オタク「……」
委員長「あんなに付き合わせて、更には爆弾を抱えてくれなんてホントに虫のいい話だよね」
委員長「呆れたでしょ。私は品行方正なんかじゃない。ただのズルくて、小心者で、悪い奴なの」
オタク「そんなこと……」
委員長「ごめんなさい」
オタク「……」
委員長「成年誌、返してくれる?」
オタク(結果としては利用されたのかもしれないけど、僕はそんなに不快じゃない)
オタク(憧れの人に頼られて嬉しい、みたいな考えを持ってる訳でもない)
オタク(ただ……)
オタク「でも、委員長は真剣に悩んで、がんばってお小遣いを貯めて、あれを買ったんじゃないの」
委員長「え?」
オタク「だったら、いいんじゃないかな。他人を利用しても手に入れたいものって、誰にだってあると思うし。委員長が努力して買っているのも見てるし。モノは成年誌だけど」
委員長「どういうこと」
オタク「だ、だから、あの成年誌はずっと預かるし、これからも欲しい本があれば買って、僕の部屋に隠せばいいんじゃないかなってことで……」
委員長「な……!?」
オタク「あ、別に、その、委員長の買ったものには絶対に触れないし、あの鍵付きケースに保管するから。なんだったら鍵は委員長が持っていてくれてもいいし」
委員長「どうしてそこまで……」
オタク「どうしてって……」
オタク(好きだから……とは、いえない……。言ったら、絶対にもうこうして話せないだろ……常識的に考えて……)
オタク「委員長がきちんと悩んで、努力しているのを知っているから。真剣なら、本気なら、利用できるものは全部利用するべきだと思う」
委員長「……」
オタク「だ、だめかな。委員長的には」
委員長「……くれるの?」
オタク「え?」
委員長「露出調教アカデミーも買ってきたら、預かって……くれるの……?」モジモジ
オタク「う、うん。どんな本でもいいけど」
委員長「うぅ……そんなこと言われたら……心が揺らいじゃう……」
オタク(モジモジしてる委員長も素敵だなぁ)
委員長「けど……これ以上、貴方に迷惑は……」
オタク「僕は全然気にしないけど」
委員長「やめて!! これ以上、私を惑わせないで!!」
オタク「ご、ごめんなさい! そういうつもりは……!!」
委員長「……ねえ、聞かせて」
オタク「あ、はい」
委員長「私って、多分、変態だと思うんだけど。男の子って、気にならないの?」
オタク「特には」
オタク(委員長限定だけど)
委員長「気持ち悪いとか思わないの?」
オタク「別に」
委員長「……ほんとに?」
オタク「うん」
委員長「そ、そうなんだ……」
オタク(委員長、黙っちゃったな……。気を悪くさせちゃったかも)
委員長「……」
オタク(ええと、なんとか繕わないと……)
委員長「あの」
オタク「は、はい」
委員長「貴方の言葉に、あ、甘えてもいい……の……?」
オタク「はい?」
委員長「だ、だから、その、わ、私が成年誌、買ってきたら、こ、ここに隠しておいて……くれるの……?」
オタク「う、うん。委員長がそれでいいなら」
委員長「……」
オタク「あ、あ、でも、ここに隠すと、読みたいって思ったときに読めないね……」
委員長「毎日なんて読んだら、ありがたみがなくなるし、週に一回、休日に読めればそれでいいし」
オタク「そ、そう?」
委員長「うん。けど、毎週貴方の家にこうしてお邪魔するのも……迷惑になるか……。だったら、月に一回でも……」
オタク「週1でもいいよ。迷惑なんて、そんなこと思わないし」
委員長「ホント?」
オタク「ほんと、ほんと」
委員長「……」
オタク(すごい見つめられてる……)
委員長「……よろしくお願いします」
オタク「う、うんうん。こちらこそ」
委員長「それじゃあ、その、早速で申し訳ないけど……」
オタク「あ、うん。ちょっと待ってて」ゴソゴソ
オタク「はい、これがケースの鍵だから」
委員長「うんっ」ガチャ
委員長「おぉー」
オタク(あの委員長が成年誌を持って、目を輝かせている……。複雑だ)
委員長「……お手洗い、借りてもいい?」
オタク「え、い、いいけど。部屋を出て、左にいけばあるよ」
委員長「ありがとうっ」テテテッ
オタク(成年誌を持ってトイレに行ってしまった……)
オタク(委員長、トイレで読んでいるのか……)
オタク「……」
オタク「ダメだ!! ダメだ!! それだけは想像するな!!! 想像したらダメだ!!!」
オタク「そうだよ。委員長はただ催しただけなんだ。その際に漫画を持ち込んだだけなんだ。用を足しながら新聞を読む人だっているし、普通だよ」
オタク「ソシャゲでもしよう。考えないようにしたいから、リズムゲーでもしようかな」
オタク「……」ピッ
オタク(できるだけ難しい曲を選ぼう。ゲームに集中できるように)
オタク「……」ピッピッ
オタク(……いや、今はいいけど、今後家のトイレを使うたびによからぬことを意識しちゃうんじゃないか!?)
オタク「あぁー!! もう家のトイレ使えないぞー!!!」
オタク「近所の公衆トイレまで行かなきゃいけないか……それはそれで面倒だけど……」
オタク(まてよ。そもそも女の子がクラスメイトの男子の家でこんな不可解な行動をとるだろうか)
オタク(委員長は頭が良い。きっと何か深い理由があるはずだ。僕みたいなバカには理解できない高尚な理由があるんだ)
オタク(成年誌をトイレに持ち込まなければいけない理由か。なんだろう。難しいな)
オタク「……」
オタク(15分ぐらい経ったな。委員長、体調を崩したんだな。大丈夫かな)
コンコン
オタク「は、はい!」
委員長「ごめんね。お手洗い、貸してくれてありがとう」ガチャ
オタク「う、ううん。全然、いいよ」
委員長「はい。これ、また預かっておいてくれる?」
オタク「お……」
オタク(委員長から差し出された成年誌……。さっきよりも扇情的だ……気のせいだろうけど……)
委員長「あ……やっぱり、嫌かな……」
オタク「ぜ、ぜんぜん! 大丈夫! すぐに仕舞って、鍵かけるから!!」ガチャガチャ
委員長「そ、そんなに焦らなくてもいいのに。ふふっ」
オタク「え、えへへ。そ、そうだね」
オタク「は、はい。これ、鍵は委員長が持っていて。僕が開けてしまわないように」
委員長「別に開けてもいいし、読んでもいいんだけど」
オタク「そ、それだけは絶対にしたくないんだ!!」
委員長「……!」ビクッ
オタク「ご、ごめん。お、大声出して」
委員長「ううん。いいの。分かったよ、鍵は私が責任もって預かるね」
オタク「うん。それが良いと思う」
委員長「……」
オタク「な、なに?」
委員長「来週、また来ても良い?」
オタク「うん。僕は困らないよ」
委員長「嬉しい。本当にありがとう。貴方と同じクラスで良かった」
オタク(うぉぉ。委員長にこんなこと言われるなんて……!! たとえ、成年誌の隠し場所として利用されているだけだとしても、嬉しい……のかなぁ……?)
委員長「そろそろ帰らないと」
オタク「も、もう?」
委員長「妹の面倒みなきゃいけないし、あと塾の課題とかもしなきゃ。夕飯の買い出しもあるか」
オタク「忙しいんだね。僕は何もできないけど、が、がんばって」
委員長「そんなことないよ! ここまでしてくれて、感謝してるから。むしろ、私がもっと恩返ししたいぐらいだもん」
オタク「本を預かってるだけなんだけど」
委員長「その本を隠してくれる人なんて、他にいないよ」
オタク(委員長の頼みなら、普通の男子は断らないと思うな)
委員長「それと、こうして鍵を私に預けてくれる。男の子ならみんなすぐに読んじゃうと思ってたけど」
オタク「あ、預かったものだからね。委員長だって、き、気持ち悪いでしょ」
委員長「ふふっ」
オタク「な、なに?」
委員長「ううん。いいの。それじゃ、ありがとう。また明日ね」
オタク「あ、うん」
委員長「お邪魔しました」
オタク「バイバイ」
委員長「バイバーイ!!」
バタンッ
オタク(はぁー……。なんか緊張しすぎて疲れた……。トイレでも行こう……。あ、ダメだ。公衆トイレ使おう)
オタク「はぁ……」
母「ただいまー」
オタク「おかえり」
母「どうだったのー」
オタク「なにがだよ」
母「女の子、来たんでしょ」
オタク「うるさいなぁ」
母「ねえねえ、写真は? ケータイでとった?」
オタク「撮ってないから」
母「どんな子なの? みせてー」
オタク「いいだろ、別に! 普通の子だよ!!」
母「はいはい。今度はちゃんと紹介してねー。さーて、晩御飯の準備しよーっと」
オタク「まったく」
オタク(普通……だよな……)
オタク(普通の女の子って、どんな感じなのか知らないけど)
―翌日 教室―
オタク(昨日のことが夢みたいだったな。あれから結局、家のトイレ使えないし。僕って相当キモイよな……)
委員長「おはよう」
オタク「お、おはようございます」
委員長「(昨日はありがとう)」ボソッ
オタク「え……」
委員長「ふふっ」
「おはよー」
委員長「あ、おっはよー」
「昨日のドラマ、みたー? 主役ちょーイケメンだったよね」
委員長「みたみたー。確かにイケメンだったね」
「あんな人、どっかにいないかなぁ」
委員長「居ても付き合えないよ」
オタク「……」
オタク(遠くにいるような感じだった委員長が少しだけ身近にいる気がしてきた)
―数日後 夜 自宅―
オタク「んー……。そろそろ寝ようかな」
オタク「……」
オタク(明日、委員長くるのかな。あのケースに入った成年誌を読みに)
オタク(また5日ぐらいはトイレ使えなくなるな、僕)
ピンポーン
オタク「ん? こんな時間に誰だろう」
母『はいはーい』
オタク「宅急便かな」
母『ちょっとー、あんたにお客さんよー』
オタク「は?」
オタク(誰だ……。僕に友達なんていないけど)
母『すっごい美人な女の子がいるけど、もしかしてあの子が彼女なの? きゃー、お母さん、鼻がたかいわぁ』
オタク「な……!? ちがう!! 多分、プリントを持ってきてくれたクラスの委員長だよ!!」
母『そうなの?』
委員長「あ、ごめんなさい。こんな夜分に」
オタク「ど、どうしたの?」
母「どうぞ、上がってください」
委員長「い、いえ!! すぐに用事は終わりますので!!」
母「そう?」
オタク「あの……」
委員長「……」スッ
オタク(なんだ……? この紙袋……)
委員長「また、明日。えっと、お昼の1時ぐらいにお邪魔してもいい?」
オタク「え? うん。勿論、いいけど」
委員長「それじゃ、また明日」
オタク「あ、この中身って……」
委員長「……買っちゃった」
オタク「まさか……」
委員長「露出調教アカデミー……」モジモジ
オタク「おぉぉぉ……。って、お金は……?」
委員長「貴方に借りていた1000円と、今月のお小遣いをちょっとだけ足したの」
オタク(あぁ……なるほどなぁ……。だから1000円札はそのまま持って行ったんだ)
委員長「あと、はい。今月の返済分」
オタク「うん、確かに100円貰いました」
委員長「……どうしても買いたかったの」
オタク「し、知ってる知ってる。これ、仕舞っておかないと。ケースもってくるよ」
委員長「いいよ。仕舞うのは明日で」
オタク「い、いや、でも」
委員長「鍵、持ってきてないし」
オタク「えぇぇ!? だ、だめだよ!! もしも僕が、その、あの……」
オタク(欲望に負けて触ったらとか言えるわけないじゃないか!!!)
委員長「それじゃあ、明日ね」
オタク「ああぁ……」
オタク(ど、どうしよう……こんなの渡されても困るんだけどな……)
母「ホントに帰っちゃったの?」
オタク「うん」
母「そう。けど、すっごい美人ね。いいじゃない。がんばって」
オタク「いやいや、そんな関係でもないから」
オタク(成年誌を預かり、預けるだけの関係だし)
母「で、あの子は何を持ってきたの?」
オタク「貸していた漫画」
母「あんたが読むような漫画って女の子も読むのね」
オタク「うるさいって」
母「いやー、真面目そうだし、良い子そうよね。お母さん、安心しちゃったわ」
オタク(真面目だし、良い子だけど、成年誌を預けにくるんだよなぁ)
母「どうしたの?」
オタク「べ、別に」
母「変な子」
オタク(とりあえず、この成年誌はどこか奥底に眠らそう。明日まで触れちゃいけないんだ。絶対に)
―翌日―
オタク「……」
オタク(一切、手を触れることなく今日を迎えることが出来たぞ……!! 頑張ったな、僕)
ピンポーン
オタク「き、きた……! はーい」
委員長「こんにちは」
オタク「ど、どうぞ」
委員長「お邪魔します。お母さんは?」
オタク「今日も外出してて」
委員長「そう……。昨日、一応のご挨拶はできたけど、きちんとしたかったな」
オタク「気にしなくていいよ」
委員長「気にするよ。実際、迷惑かけちゃってるもん」
オタク「そんなこと……。飲み物、用意するね」
委員長「お構いなく」
オタク(やっぱり動悸が激しくなる……。慣れないよな、二回目程度じゃ)
オタク「お待たせ。麦茶だけど」
委員長「ありがとう」
オタク「ちょっと、待って。すぐに取るから」
委員長「ん?」
オタク「はい、これ」
委員長「あ……。どんな内容だった? 興奮した?」
オタク「よ、読んでないし、触ってもないから!」
委員長「そっか」
オタク(はぁ……。まだ信頼はされてないのか)
委員長「先に読んでもいい?」
オタク「ど、どうぞ、どうぞ」
委員長「それじゃあ、遠慮なく」ゴソゴソ
委員長「おぉー!」
オタク(昨日より目がキラキラしてる気がするなぁ。やっぱり委員長って変な趣味があるんじゃあ……)
委員長「あのぉ……お手洗い、借りてもいい……?」
オタク「う、うん」
委員長「ありがとう」テテテッ
オタク「はぁー……」
オタク(ソシャゲしとこ。今日、イベントの日なんだよなぁ)
オタク「……」ポチッポチッ
オタク(委員長、僕の家にきたらトイレに行くけど、何してるんだろうな)
オタク(僕にはよくわからないや)ポチポチッ
コンコン
オタク「は、はい」
委員長「……」ガチャ
オタク「ど、どうしたの」
オタク(かなり早いな)
委員長「近くに公衆トレイってある?」
オタク「は? な、なんで?」
委員長「3ページ目で、その、もう、多分、これは我慢できないなって思って……」モジモジ
オタク(我慢……!? 何が我慢できないんだ……!? というか前回は我慢したの!?)
委員長「……」モジモジ
オタク「あの、えっと……あるけど……その成年誌、持っていくんだよね……」
委員長「……うん」
オタク「それは、やめておいたほうが」
委員長「どうして?」
オタク「知ってる人に見られたら、どうするの」
委員長「雑誌は隠していくし」
オタク「けど、やめたほうが。変態がいるかもしれない」
オタク(なんで僕は必死に止めようとしているんだろう)
委員長「襲われるかもしれないってこと」
オタク「公衆トイレは何があるかわからないっていうし」
委員長「そっか……」
オタク「気にせずうちのトイレを使ってよ」
委員長「……うん」テテテッ
オタク「ふぅー……」
オタク(委員長、もしかして僕が想像しているようなことはしていないのか)
オタク(まぁ、冷静に考えて他人の、それも異性の家でするなんてとんだ変態だもんな)
オタク(委員長は、変態じゃないし。多分、きっと、おそらく)
コンコン
オタク「はい?」
委員長「ダメ!!」
オタク「な、なにがですか」
委員長「この内容、ヤバすぎ! 私一人で読んでたら、絶対に我慢できない!!」
オタク「そ、そうなんですか」
委員長「くっ……こうなったら、恥ずかしいけど……死ぬほど恥ずかしいけど……これしかない……」
オタク「え? え?」
委員長「見ていて欲しい」
オタク「何をですか」
委員長「私が露出調教アカデミーを読んでいるところを見ていて」
オタク「は!? ちょ、それは……さすがに……!!」
委員長「お願い。誰かに監視されていないと、自分を抑えられないと思うから」
オタク「ま、待ってよ。それは委員長が恥ずかしいだけじゃないか」
委員長「いいの。思えば、こうしているだけでも女の子としては失格だし」
オタク(それは……たしかに……)
委員長「それにこれも私の罰だから。読んでいるところを見られても仕方ないよ」
オタク「自分から読んでいくのはどうなんだろう」
委員長「お願いします。見ていて」
オタク(委員長は決してふざけているわけじゃない。真剣なんだ。だったら、僕もそれに応えないと……)
オタク「わ、わかった。見ます」
委員長「ありがとう。それじゃあ……」ペラッ
オタク(マジで読み始めたぞ)
委員長「……」
オタク(女の子が成年誌を読む光景……。すごい非現実的だぁ……)
委員長「おぉ……」
委員長「……」ペラッ
オタク(この状況、なんだろう。憧れの人がアダルト雑誌を熟読しているとか、リア充の人はどう対応するんだろう)
オタク『委員長?』
委員長『なに?』
オタク『その雑誌に描いてあることを――』
オタク(やめろ!! そんな想像してどうする!! 委員長はそんな変態じゃないだろ!!)
オタク(いや、普通の女の子よりは変態かもしれないけど、僕が思っているほど変態じゃないことは確実だろ!!)
委員長「……」チラッ
オタク(うっ……。こっち見た……!?)
委員長「うぅ……」サッ
オタク(顔を隠した。やっぱり相当恥ずかしいんだろうなぁ)
オタク「い、委員長? 恥ずかしいなら、トイレで……」
委員長「いいの。気を遣わないで、貴方は私のことを見ていて」
オタク「は、はい」
委員長「ふぅー……」パタンッ
オタク「よ、読み終わった?」
委員長「……」コクッ
オタク「よ、よかったね」
委員長「あの……」モジモジ
オタク「な、なに?」
委員長「きょうは……もう……帰ってもいい……?」
オタク「え? あ、うん。今日も忙しいんだね」
委員長「来週、今日のお礼はするから!! ごめんなさい!!」
オタク「いいってば、お礼なんて」
委員長「そ、それじゃあ、また明日!!」
オタク「はい」
委員長「うぅ……バイバイ……」タタタッ
オタク「バ、バイバイ……」
オタク(すごい慌てようだったなぁ……)
オタク「って、鍵……」
オタク(まぁ、いいか。紙袋にいれておけば、お母さんに見られることもないし)
オタク「……」
オタク(よくよく考えれば、女の子が男の目の前で成年誌を読み始めるなんて奇怪な行動をするかな)
オタク「やっぱりこれは、僕を嵌めようとしている女子グループの計略なのでは……」
オタク「……」
オタク(わけないか。委員長がちょっとだけ、一般的な女子学生よりもほんの少し、平均より僅かに変わった子ってだけだ)
オタク(この雑誌、委員長は一人で買ったんだよなぁ。良く買えたよな)
オタク(一度買えたから、二度目からはそこまで抵抗なかったのかもなぁ)
オタク(僕もそうだったしな)
オタク「片付けよう」
オタク「……」ゴソゴソ
オタク(成年誌読んでるときの委員長、メチャクチャ顔が真っ赤だったな)
オタク(恥ずかしいならやらなきゃいいのに、とは思うけど、見れて嬉しかったのも事実だ)
オタク(僕、変態かもしれないな……)
―翌日 教室―
「はよー」
委員長「おはよー」
「早いねー」
委員長「日直だからね」
オタク「……」
オタク(あ、委員長。あ、挨拶しておこうかな)
オタク「お、おはようございます」
委員長「……!」
オタク(あれ……? 聞こえなかったのかな)
オタク「お、おはようございます」
委員長「……」プイッ
オタク「……!?」
オタク(無視された……!? 今、僕、無視された……!?)
オタク(な、なにかしたっけ……。ああ、したな。成年誌読んでいるところを凝視してたな……僕……。いや、でも見ていて欲しいって言われたんだし……)
―授業中―
教師「ここでこれを代入することにより――」
オタク「……」
オタク(昨日、言われるままにしたのがダメだったのかな。委員長、本当は止めてほしかったのかもしれないな)
オタク(完全に終わった……。いや、別に何かが始まっていたわけでもないけどさ)
委員長「……」カキカキ
オタク(またこうして委員長と遠くから見つめるだけの毎日に戻ったんだな。でも、僕みたいな奴が委員長と週末を二度も過ごせたことは誇りに思うことにしよう)
オタク「はぁ……」
委員長「……」チラッ
オタク「え……」
委員長「……!」プイッ
オタク(い、いま、こっち見た?)
オタク(今まで授業中に目が合ったことなんてなかったのに……)
オタク(嫌われているわけじゃないのかな……)
委員長「……」カキカキ
教師「それでは本日はここまで。ああ、そうだ。先週の課題、集めておいてくれるか」
「あー! 忘れてたー」
「そんなのあったっけー」
教師「ちゃんと言っただろ。忘れたやつは覚悟してろ」
委員長「私が集めて職員室に持っていきます」
教師「いいのか? 悪いが頼む。提出は放課後でも構わないから」
委員長「忘れた人は放課後までにやれば大丈夫だって」
「ちょっと貸してくれー!」
教師「大声で言うなよ。それじゃあ、頼んだ」
委員長「はい」
オタク「……」
オタク(課題か。僕みたいなぼっちは忘れたら終わりだ。見せてくれるような人、いないもんな)
オタク(フッフッフ。ちゃんとやってきてるんだ)
委員長「……」
オタク(あれ? 委員長、またこっち見た? 気の所為かな)
―放課後―
委員長「課題の提出、忘れないように」
「まにあったー」
「おねがいしまーす」
委員長「はぁーい」
オタク「あ、あの……これ……おねがいします……」
委員長「待って」
オタク「は、はい?」
委員長「あとで一緒に職員室まで集めた課題を運んでくれる?」
オタク「え? あ、はい」
委員長「ありがとう。みなさん、提出しましたかー」
オタク(な、なんだろう……どうして……)
不良「はやく終わってくれよ。部活に遅刻するだろうが」
委員長「大丈夫みたいね。それじゃあ、掃除当番の人以外は帰ってよし」
「バイバーイ」
委員長「これ、もってくれる?」
オタク「う、うん」
オタク(って、これだけの量なら二人で持つ意味がないような)
オタク「僕が全部、持つよ」
委員長「……」
オタク「……」
オタク(無視……!? この距離で……!? なんで!?)
委員長「このあと、時間ある?」
オタク「あ、あるけど」
委員長「少し、付き合って」
オタク「あ、はい」
委員長「……」
オタク(なんか冷たい。委員長って誰にでも温和で優しかったはずなのに)
オタク(誰が委員長を変えちゃったんだ)
オタク(……僕か?)
―空き教室―
委員長「入って」
オタク「お、おじゃまします」
オタク(職員室を出て真っ直ぐここまで来たけど、何があるんだ……)
委員長「ねえ」
オタク「は、い?」
委員長「正直、答えて欲しいことがあるわ」
オタク「なんでしょうか……?」
オタク(雰囲気が違うぞ……? なんだか怖い……)
委員長「……」
オタク「……」
委員長「……っ」
オタク「ど、どうしたの?」
委員長「男の子から見て、成年誌を読んでいるところ見られて、あの、その、こ、興奮する女の子って、どう思う……?」
オタク「は?」
委員長「どう思うの?」
オタク「ど、どう思うと言われても」
委員長「流石に気持ち悪いって思ったでしょ……。今度こそ完璧に変態だし……」
オタク「ちょっとまって。急にどうしたの?」
委員長「昨日、貴方に監視されながらあの本を読んでいて、なんか、胸がドキドキしっぱなしで……」
委員長「体温をぐんぐん上がるし……顔なんてめちゃくちゃ熱くなるし……」
委員長「本の内容もすっごく良いし!!」
オタク(委員長がどういう女の子なのかここに来て分からなくなってきたぞ!!)
委員長「私って、異常なのかな」
オタク「え、えーと……」
オタク(露出モノをチョイスするあたり、やっぱり羞恥心を刺激されることに何かしらあるのかもしれないな)
委員長「家に帰ったあとでも暫くは体も火照ったままだったし、治まるまで時間がかかるほど私はあの日、感情が昂っていたし」
オタク「そういうこと、男子の前で言わない方が……」
委員長「だからね、ゆっくり考えたの。やっぱりもう貴方の家には行かない方がいいかなって……」
オタク「ま、前にも言ったはずだけど、そんなことで気持ち悪いとは思わないし、寧ろ、それは委員長の魅力になるよ」
委員長「恥ずかしいところを見られて興奮するなんて、まるっきり露出狂じゃない」
オタク(なるほど。そういう解釈になるんだ)
委員長「私は、恥ずかしい姿を見られて悦んでなんかいないのに……」
委員長「ただ、成年誌が読みたいっていう欲求があっただけなのに……」
委員長「魅力なの?」
オタク「たぶん……」
委員長「……とことん優しいね」
オタク「正直、その、誰だって変態的な部分はあると思うんですけど」
委員長「貴方にも?」
オタク「あ、あるよ」
委員長「言える?」
オタク「それは……」
委員長「ごめん。言えるわけないよね、そんなこと。ありがとう、話せて少しだけ楽になれたかも」
オタク「な、なにも力にはなれてないけど」
委員長「ううん。こんな話をできるのも、聞いてくれるのも、貴方だけだから」
オタク(僕だけ……。僕だけだなんて、まるで委員長を独占しているみたいで……幸福感が……)
委員長「それじゃあ、次の日曜日も……お邪魔してもいい……? 成年誌、読みに……」
オタク(委員長はただ僕の家に成年誌を読みにくるだけだけど)
オタク「も、勿論だよ。僕、基本的に暇だし、休みの日だってすることないし、待ってるから」
委員長「うれしい……」
オタク(露出アカデミーを読めることに嬉しがる女の子……。まぁ、嬉しがっているし、これでいいか)
委員長「そろそろ帰らないと。ごめんね、引き留めちゃって」
オタク「き、気にしないってば」
委員長「そうだ! 今度、一緒に……あ、ううん……なんでもない……」
オタク「え? な、なに?」
委員長「いいの。そもそも、もうお金ないし……」
オタク(まさか……)
オタク「ええと、また何か買いたい雑誌でもあるの?」
委員長「もー! いわないでー! こんなの女の子から誘うことじゃないでしょ!!」
オタク(今更なんだよなぁ……)
数日後 日曜日
オタク(ドキドキするなぁ。最近、日曜日はいつも緊張してるな僕)
オタク(もうそろそろかな……)
ピンポーン
オタク「き、きた……!」
オタク「は、はぁい」ガチャ
委員長「こんにちは」
オタク「い、いらっしゃい。どうぞ」
委員長「お邪魔します」
オタク「お、お茶でいい?」
委員長「お構いなく」
オタク(やっぱり慣れないなぁ)
委員長「今日も、見ていてくれる? 私が、読んでいるところ……」
オタク「み、見る見る」
オタク(なんだ、この会話は?)
委員長「目を逸らさないでね」
オタク「は、はい」
委員長「……」ペラッ
オタク(しっかり、見ていないと)
委員長「うぅ……」
オタク(早速、顔真っ赤になってるなぁ……)
委員長「……っ」モジモジ
オタク(目を逸らすなと言われたし、ここで視線を外す方がいけないことになる)
委員長「うぅぅ……」
オタク(委員長、辛そう。でも、僕だって結構恥ずかしいですから)
委員長「あの……」
オタク「は、はい?」
委員長「これって、貴方の目の前で裸になるより恥ずかしいことかな?」
オタク(どっちだろう。難しい問題だなぁ)
委員長「わたし、このままエスカレートしないか不安になってきちゃった……」
オタク「エスカレートって?」
委員長「この漫画にあるの」ペラッ
オタク「み、見せなくていいから!」
委員長「あ、ごめん。ええと、最初は下着を身につけないで夜の街を歩くだけだったのに、それだけじゃ満足できなくなって、昼にも出歩くようになってね」
委員長「次は衣服を身につけないで夜の街を歩いて、最後にはお昼に裸で町中に繰り出すようになるってストーリーなんだけど」
オタク「そ、その話、最後はどうなるの?」
委員長「ええと、主人公の女性が警察に捕まって終わっちゃうの」
オタク(すごい……! 本番のシーンがないとか、本当に露出特化の雑誌なんだ……!!)
委員長「私もこうなるのかな。こうしているだけじゃ満足できなくなって、そのうち……警察に……」
委員長「そうなると、お母さんや妹に迷惑を……かけることに……」
オタク(委員長と同じ理由で悩む女子高生って全国にどれぐらいいるんだろう)
オタク「成年誌を読むってだけだし、エスカレートしてもたかが知れているような」
委員長「最初は立ち読みしようとしているところだけだったのに、いつの間にかこうして男の子の家で、成年誌読んじゃってるんだよ。このままいったら……」
委員長「公園や駅前とか人通りの多いところで読み始めるかもしてないじゃない!」
オタク(多分、警察は動かないと思うけど、変な人は寄ってくるだろうから止めないと)
委員長「考えただけでも……ゾクゾクする……」
オタク「えぇ……」
委員長「い、いや!! そうなったら怖すぎて寒気がするって意味だから!!」
オタク「そ、そうなんだ。よかった」
委員長「はぁ……。もし、そうなりそうだったら私の事止めてね」
オタク「う、うん。それは、止めたい」
委員長「こうしているだけで満足できればいいんだけどなぁ……」
オタク(是非ともそうして欲しいけど、この状況に慣れて来たらどうなるんだろう。エスカレートするのかな、やっぱり)
オタク(百歩、いや、千歩譲って委員長が外で成年誌を読む行為に嵌っちゃうのは許容するとして、本当に露出狂になっちゃったら、擁護のしようがない)
オタク(というか、流石に僕も露出狂と化した委員長を見て、今の気持ちを保つ自信はあんまりない)
オタク(なんとか現状で満足してくれるように工夫しないと……)
委員長「自分が怖い……」ペラッ
委員長「おぉぉ……そういう露出もあるんだ……」
オタク(要は現状に慣れてしまうと次の段階に進んでしまうかもしれないってことだから……)
オタク(僕のほうから新しいものを用意する、というのはどうだろう?)
委員長「今日もありがとう。たくさん、ドキドキしたわ」
オタク「それはよかった」
委員長「それじゃあ、また明日ね」
オタク「う、うん」
委員長「お邪魔しました」
オタク「バイバイ」
委員長「バイバーイ」
オタク「ふぅ……」
オタク(委員長、新しい雑誌を欲しがっているみたいだし、きっと成年誌二冊だけじゃ物足りないんだろうな)
オタク(かといって、僕が何冊も用意したらそれはそれでキモいし、なにより委員長は嫌がるはずだ)
委員長『私、こんなことをしてほしくて頼んだわけじゃない!』
オタク「ぐらいのことは言いそうだもんな」
オタク「となれば、あれしかない」
オタク「早速、調べてみよう」
翌日 学校
委員長「おはよう」
「おはよー」
オタク「……」
委員長「おはよう」
オタク「あ、お、おはよう」
委員長「ねえねえ、今日の体育ってなにするんだっけ」
「バレーボールって言ってたような」
オタク(こ、声をかけてもいいのかな……。いや、だめか……)
委員長「ん? なに?」
オタク「え!? いや、なにも……」
委員長「そう?」
「最近、ホントあの子と良く絡むよね」
委員長「いつも通りだよ」
「うそだー」
放課後
オタク(やっぱり話しかけることはできなかったな。委員長の周りにはいつも誰かいるもんな。ムリムリ)
オタク(当日まで秘密にしておこうか……)
委員長「ごめんね、また誘ってー」
「いいよいいよ」
委員長「早く帰らないと」タタタッ
オタク「あ……あの……」
委員長「なに?」
オタク(しまった……。思わず、声をかけちゃった)
委員長「どうかした?」
オタク「あ、その、次の……日曜日……」
委員長「都合、悪い?」
オタク「う、ううん。むしろ、来てほしいんだ。み、見せたいものが……あるから……」
委員長「見せたいものって?」
オタク「い、委員長が喜ぶものを用意してみようかなって思って……」
委員長「なにそれ? どういうこと? もしかして、何か買ったの?」
オタク「違うよ。全部、ネットで……」
委員長「ネット……!」
オタク「うん。今日も、探してみるし、日曜までには結構な数になるとは思う」
委員長「そう……なんだ……。私のために」
オタク「あ、あの二冊だけじゃ、いつかは飽きるかなって」
委員長「……」
オタク(あ、あれ? 怒ってる? だ、だめだったのか……)
委員長「……私、急いでるから」
オタク「あ、はい」
委員長「それじゃあ」タタタッ
オタク「……」
オタク(反応、悪かったなぁ……こういうことじゃなかったのか……)
オタク(冷静に考えればキモイよなぁ。普通、用意されて喜ぶって言えばアクセサリーや小物とかだもんな)
オタク(ネットでかき集めたネタなんて、嬉しくないよなぁ……)
夜 自室
オタク「……」カチッカチッ
オタク(何やってるんだ、僕。こんなこと意味ないし、やめよう)
オタク「そうだよなぁ。自分から探すのと、他人が探したものを見るのは違うもんな」
オタク「委員長、完璧に不機嫌だったな……。あぁ……失敗したなぁ……」
ピンポーン
オタク「こんな時間になんだろう?」
母『ちょっとー』
オタク「な、なに?」
母「例の女の子よ」
オタク「え!?」
母「やっぱりカノジョなんでしょ? このこのー。自慢の息子めー」
オタク「ち、ちがう!!」
母「ほら、出てあげなさい。あと、泊めちゃダメよ?」
オタク「泊めるわけないだろ!」
オタク「は、はい」ガチャ
委員長「夜分……遅く、ごめんなさい……」
オタク「ど、どうしたの……こんな時間に……」
委員長「……とって」
オタク「え?」
委員長「責任、とって」
オタク「せ、せきにん……って……」
委員長「……」モジモジ
オタク(責任……!? 責任ってなんの責任……!? もしかして……!! いや!! 僕は委員長と何もしてないぞ!! ただ委員長が成年誌を読んでいるところを見ていただけだぞ!!)
委員長「貴方がおかしなことを言うから、塾で全然集中できなくて……ずっと頭の中で色んなことがグルグルまわってて……」
オタク「え? え?」
委員長「もしかして、あんなこと? それとも、こんなこと?みたいにどんどん妄想がおおきくなって……」
委員長「だから、責任とってください」
オタク(どう取ればいいんですか……)
委員長「日曜日まで我慢できないのっ」
自室
オタク「ええと、実は、ネットでこういうの集めてみようかなって……」カチカチッ
委員長「おぉ……。露出……体験……」
オタク「絵とか写真はないけど、結構過激な内容も多いから」
委員長「うぉぉ……」
オタク(すごい食いついてる……)
オタク「文章ならプリントアウトして本やノートの間に挟んでいれば問題ないしし」
委員長「……!!」
オタク「あ、その、漫画とかのほうがよかった?」
委員長「ううん!! こ、これ! こっちがいい!! リアル感あるし!! 素敵!!」
オタク(い、今まで見たこともないほど喜んでる……)
委員長「さすが、インターネット……こ、こんなにも濃い内容のが無料で見られるなんて……」
委員長「写真や絵がない分、想像をかき立てられるし」
委員長「ありがとう! とっても嬉しい!」
オタク(満面の笑みを浮かべる委員長が見られて、嬉しいような悲しいような……)
オタク「……」
委員長「はっ……!? ご、ごめんなさい! 私ってば……な、なにいって……」
オタク「い、いいよ。気にしないから」
委員長「気にして!」
オタク「ご、ごめん」
委員長「嬉しいだなんて……何を口走って……はぁ……」
オタク「ところで……」
委員長「な、なに?」
オタク「流石にこれだけの量があるし、絵とか写真じゃないから読むのも時間かかるでしょ」
委員長「そっか、日曜日の時間だけじゃ足りない……」
オタク「良いところまで読んで帰らなくちゃいけなくなったら辛いし」
委員長「悶々としちゃう……けど、それはそれで……」
オタク「だから、好きなだけプリントアウトしていってもいいから」
委員長「……ホントに?」
オタク「うん。持って帰っても問題集のテキストだっていえば誤魔化せるはずだしね」
委員長「こんなにたくさん刷ってもらって、ごめんね」
オタク「い、いいよ。それぐらいなら」
オタク(A4用紙30枚分は相当な量だけど、バレないよね)
委員長「帰ったら読まないと……!」
オタク(一晩で読むつもりですか)
母「帰るの?」
委員長「すみません。こんな時間に、ご迷惑をおかけしました」
母「気にしないで。これからもうちの子をよろしくね」
委員長「とんでもありません。いつもお世話になっているのは私のほうです」
母「あらあら。性格まで良いなんて、うちの子にはもったいないわねぇ」
オタク「う、うるさいなぁ。もういいだろ」
委員長「今日は、本当にありがとう。また明日ね」
オタク「お、送っていくよ」
委員長「いいから! いきなり来ちゃった私が悪いんだし」
オタク「ううん。送らせてほしい」
―外―
委員長「良かったのに」
オタク「夜は危ないし」
委員長「……」
オタク「ところで、それ、一晩で読んじゃうつもり?」
委員長「貴方の言う通り、これならノートと一緒に並べておけば一見すると勉強しているように見えるもの。成年誌は堂々と読めないけど、これは読めるわ」
オタク「あんまり夜更かしすると体に悪いからほどほどにね」
委員長「……エッチ」
オタク「えぇぇ!? あ、そ、そういうつもりで……いったわけじゃ……!!」
委員長「冗談、じょーだん。ふふっ」
オタク「び、びっくりしたぁ」
委員長「今日のお礼は必ずさせてね」
オタク「そんな……プリントアウトしただけだし……」
委員長「次の日曜日も遊びに行ってもいい?」
オタク「聞かなくてもいいってば」
―翌日 学校―
オタク(日曜日に向けて、資料集めてみないと。ただ過激すぎるのは避けないと。本当にエスカレートされても困るし)
「おっはよー!!」
委員長「おはよう……ふわぁ……」
「どうしたの、眠そうだね」
委員長「うん……」
「珍しく夜更かし?」
委員長「うん……後悔してる……」
オタク(夜更かし……したんだ……)
「深夜に映画とかやってたっけ」
委員長「ううん……面白い……本を……」
「どんな本?」
委員長「……ひみつ」
「えー。おしえてよー」
オタク(露出体験を書き綴ったモノなんて、誰も言えるわけない……)
―授業中―
先生「で、このとき明治政府が行った――」
委員長「……」ペラッ
オタク(真剣に、真面目に授業を受けている委員長が昨日の夜、僕の家にきてネットの露出体験に大興奮していたなんて誰が想像するだろう)
オタク(発覚したら一日でクラスどころか学校中に広まりそう)
委員長「……」カキカキ
オタク(まぁ、そんな一面があるなんて誰にもわかるわけ――)
委員長「……」モジモジ
オタク(ん? 委員長の様子がおかしい……?)
委員長「……」ペラッ
オタク(よく見たら教科書の上にプリントが……。今日はまだ配布プリントないけど……)
委員長「……」モジモジ
オタク(ま、まさか……いや……でも……)
委員長「うぅ……」
オタク(読んでる……!? まさか……授業中に昨日渡したプリントを……読んでるの……!?)
―放課後 空き教室―
オタク「来てくれるかな……」
委員長「……」
オタク「あ……。急に呼び出してごめん」
委員長「靴箱の手紙、読んだ……」
オタク「あの……」
委員長「……」
オタク「渡したのは僕だけど、流石に学校に持ってきちゃまずいと思うんだけど」
委員長「ごめんなさい……」
オタク「あれは家で楽しんでもらうためであって……」
委員長「ど、どうしても続きが……気になって……。知人宅に下着をつけないで遊びにいく女性の話が……その……おもしろくて……」
オタク「お、面白かったんだ」
委員長「どんな気持ちなんだろう……って……」
オタク(知ってどうするんだろう)
委員長「ごめんなさい……」
オタク「あれぐらいならまずバレないとは思うけど、万が一ってこともあるから」
委員長「うん……もう、もってこない……」
オタク(僕が良かれと思って渡した所為で、抑えられなくなったんだろうか)
オタク「僕の所為でもあるよね。深く考えもせず、渡しちゃって……」
委員長「ち、違う! 私が……ただ、変態なだけで……」
オタク(自分から言って欲しくはない言葉だなぁ)
委員長「はぁ……ダメだって……わかってたのに……」
オタク「僕の家以外では控えたほうがいい。受験だってあるんだし、もし委員長の悪評が広まったら大変だよ」
委員長「……それって、貴方の家ではいいってこと?」
オタク「え? う、うん」
オタク(成年誌読むのは恒例化しそうな勢いでしていることだと思うんですが)
委員長「そっか。うん。そうする」
オタク「そうしてほしいな」
委員長「貴方の家以外では、しない。約束する」
オタク「あ、ありがとう」
―共同玄関―
オタク「さ、帰ろう」
オタク(約束してくれたし、これで委員長の秘密が広まる可能性は万が一にもないかな)
オタク「けど、気になるなぁ、最後の言葉……」
委員長『……それって、貴方の家ではいいってこと?』
オタク「……」
オタク(まあ、僕の部屋なら問題、なくはないけど、まだマシだよな。うん)
オタク(家に帰ったら委員長が好きそうなネタ探そっと。って、僕自身がこんなことしていいんだろうか……。でも、委員長は喜んでくれるし……)
「マジかよ」
不良「マジだって」
オタク(なんか話してる。目を合わさないようにしないと)
オタク(あれ以来絡んでこなくなったなぁ。委員長が裏で助けてくれたのかも)
オタク(恩返しの意味でも委員長が喜びそうなネタ、かき集めるか)
オタク(あぁ……いいのかなぁ……委員長、変な道に進まないかなぁ……)
―週末 自室―
ピンポーン
オタク「いらっしゃい」
委員長「こんにちは。えっと、お母さんは?」
オタク「今日も外出してる」
オタク(気を遣ってくれてるのか、絶対にいないんだよなぁ)
委員長「そっか……。ふぅ……」
オタク「どうかした?」
委員長「ううん。あ、あの、早速なんだけど、お、お手洗い借りてもいいかな」
オタク「あ、うん、どうぞどうぞ」
委員長「ありがとう」
オタク(飲み物の準備しよう)
委員長「……よしっ」ガチャ
オタク(何かを決意したような顔でトイレに入ったな。というか今、鞄を持ったままだったような)
オタク(部屋に置いてからでいいのに、焦ってたのかな?)
委員長「あ、ありがとう……」モジモジ
オタク「うん。どうぞ、座って。これ、飲み物」
委員長「いただきます」モジモジ
オタク(なんだろう。今日の委員長、いつも以上にソワソワしてるような)
オタク「はい。これ」
委員長「新しいやつ?」
オタク「そう。また家で読んで。今は成年誌のほうでしょ」
委員長「そ、そうだね。よ、読んでみる」モジモジ
オタク(挙動が不審だけど、いつものことだしいいかな)
委員長「うぅ……」モジモジ
オタク(ずっとモジモジしてるなぁ。トイレいったばっかりなのに)
委員長「あっ……」
オタク「え?」
委員長「……お手洗い、借ります」
オタク「え? え?」
委員長「ただいま……」
オタク「今日は体調でも悪いの?」
委員長「ううん……。えっと、カーペット、汚れてない?」
オタク「え? なんで?」
委員長「シミになってたら、その、私がクリーニング代を……」
オタク「どうしてシミなんか気にしてるの」
委員長「きょう……その……試してみようと……思って……」
オタク(試す?)
委員長「その事ばっかり考えてたら、もうずっと、体があつくなってて……。でも、あなたはしてもいいっていうから……甘えてみたんだけど……想像以上にすごくて……」
オタク(相変わらず何を言ってるのか理解したくないぞ)
委員長「……」モジモジ
オタク「前に渡した露出体験のやつのことをいってるの?」
委員長「……うん」
オタク「ためしたの? さっき?」
委員長「ごめんなさい、やっぱり、シミになってた……? 危ないって思った瞬間に立ち上がってはみたんだけど……」
オタク「……」
委員長「あ、あの……どこ……かな……。私の恥ずかしいシミ……」
オタク「あ、いや、いいから、いいから。仮にシミになっていたとしても、問題ないよ。安物のカーペットだし」
委員長「……ごめん」
オタク「あの、委員長……」
委員長「なに?」
オタク「やっぱり、今渡したプリントは返して」
委員長「えぇ……!?」
オタク(すごいショックそうな顔だぁ……)
委員長「どうして? 私が変態だから?」
オタク(結論を言えばそうなるけど)
オタク「いや、その、このままだと委員長が取り返しのつかないところにいきそうで……」
委員長「どうしても返さないとダメ?」
オタク「……こ、ここで読むならいいけど」
委員長「よむっ!」
委員長「おぉぉ……首輪つけて……犬みたいな姿勢で……」
委員長「ボディペイント……そんなのもあるんだ……」
オタク(既に小一時間、鼻息荒くネットで拾った嘘か本当かわからない露出体験記を読み漁る委員長を観察している)
委員長「ふんっふんっ」
オタク「……」
委員長「あっ……うぅ……」
オタク(たまに我に返って顔を赤くするのがぐっとくる……。じゃなくて、委員長に理性が残っていることを確認できて安心する)
委員長「うぅ……」
オタク(委員長がもってきた鞄の中には着替えがあるのだろうか? 深く考えたくはないけど)
委員長「あの」
オタク「は、はい」
委員長「とっても楽しかった。はいこれ、返すね」
オタク「あ、うん。もういいの?」
委員長「目をつぶれば情景が浮かんでくるぐらいには読み込んだから」
オタク(何言っているんだ、この人)
委員長「……」
オタク(そっか。そろそろ帰る時間だな。いつもあっという間だ)
委員長「……今日は門限8時にしてもらったの」
オタク「え!?」
委員長「も、もうすこしだけ、ここにいても、いいですか?」
オタク「も、もちろん、好きなだけいてくれていいけど……」
委員長「ホントに?」
オタク「うん。ホントに」
委員長「だったら……その……厚かましいことは分かっているんだけど……」
オタク「う、うん?」
委員長「パソコン、使わせてくださいっ」
オタク「ど、うぞ」
委員長「わぁ……! あのあの! えっと、どう検索したらああいう資料が出てくるサイトにいけるの!?」
オタク「ああ、えっと、そうだね……露出、体験……」カタカタ
委員長「それからそれから?」
委員長「こっちのサイトは? 見ても大丈夫?」
オタク「良いと思う」
委員長「ふんっふんっ」カチッ
オタク「画像付きで露出体験を載せてるサイトだね」
委員長「これ本物かな? 服とか全部脱いでるけど」
オタク「ど、どうだろうね」
委員長「学校卒業しないと、こういうことはできないよね」
オタク「成人してから実行したほうが危ないと思うんですけど」
委員長「あ、そっか……。お母さんも身内から露出狂が出たってなれば悲しむもんね……」
オタク「そ、そうだね」
委員長「……ダメダメ。そんなこと考えちゃ……」
オタク「あの」
委員長「なに?」
オタク「いくらなんでもここで実行していいことと悪いことがあるから……流石にこの体験を再現するのは……うぅん……」
委員長「な……!? なんで考えてることがわかるの!?」
オタク「わかるよ」
委員長「……」
オタク(こんなに目を輝かせてたら、真似したいんだろうなってことはすぐにわかる。けど、いくらなんでも服を脱いで首輪をつけて、しかもこれ……アレまでしちゃってるし……部屋が汚れちゃうよ……)
オタク(まぁ、でも、委員長のなら……我慢できそうな自分が嫌だな……)
委員長「……ねえ」
オタク「はい?」
委員長「……ううん。なんでもない。もっと、見てもいいかな」
オタク「いいよ、まだ三時間以上、時間あるし」
委員長「ほんとに……ありがとう……」
オタク「気にしないでいいよ。パソコンを使うぐらい」
委員長「ちがう」
オタク「え? どういう意味?」
委員長「いいの。あ、こっちはなに? マンガ、かな?」
オタク「フリーのネット漫画みたいだね」
委員長「露出狂の詩って漫画なんだ……。見てもいい?」
委員長「ねえねえ、これなら再現できそうじゃない?」
オタク「さっきのよりはマシだけどさぁ……」
委員長「おぉ……!」
オタク「でも、ダメだよ。流石に……」
委員長「縄で縛って放置もダメかぁ……」
オタク「怪我するよ」
委員長「そうかなぁ……。それじゃあ、ボディペイン――」
母『ただいまぁー』
オタク・委員長「「……!!」」ガタッ
オタク(そうか! もうそんな時間だ!!)
委員長「画面はこうやって私が抱えて隠せばいいかな!?」
オタク「かえって不自然だよ」
母『あら? 今日はまだあの子、帰ってないかしら』
委員長「そうだ。私から挨拶しにいかないと」
オタク(画面、消しておこう)ピッ
母「あらあら、今日は遅くまでいるの?」
委員長「ええと、7時ぐらいには失礼しようかなと」
母「ごはんは? よかったら食べていきなさいよ」
委員長「ええと……」チラッ
オタク(僕を見た?)
委員長「いいんですか?」
母「もちろんよ。息子がいつもお世話になってるしね」
委員長「とんでもありません。むしろ、お世話になっているのは私のほうです。色んな意味で」
オタク(一言多いよぉ)
母「謙虚でいい子ねぇ。わかったわ。ごちそうつくるから!」
委員長「ありがとうございます! いただきます」
オタク「今日、晩御飯とか作りに帰らなくていいの?」
委員長「今日だけは特別」
オタク「そうなんだ」
委員長「うん。あ、お手洗い借りるね」
委員長「ふぅ」
オタク(帰ってきた)
母「30分ぐらい待っててねー」
委員長「お手伝いします」
母「いいのよー。座っててー」
委員長「いえ、手伝わせてください」
母「そう? それじゃあ、サラダの盛り付け頼んじゃおうかしら」
委員長「分かりました」
オタク「……」
オタク(僕も手伝ったほうがいいよなぁ)
オタク「僕もなにか……」
母「いいわよ」
委員長「ここは私がするから」
オタク「う、うん……」
オタク(肩身狭いなぁ)
委員長「こっちのお皿でいいですか?」
母「ええ、おねがいねー」
委員長「はいっ」
オタク(委員長が僕の家の台所にいる……。新鮮でいいなぁ)
委員長「あっ……」モジッ
オタク(いま、スカートをおさえたな……別にめくれ上がってないのに……)
委員長「よいしょっと」
オタク「……」
委員長「あ、あんまり見ないで……」モジモジ
オタク「あ、ごめん……」
母「女の子ばっかりみてスケベねー」
委員長「あはは……」
オタク(まさか……いや……でも……)
委員長「これを……こう……」モジモジ
オタク(絶対、今、スカートの下、何もない……!)
委員長「いただきますっ」
母「召し上がれ」
オタク「……ます」チラッ
委員長「おいしいです!」
母「ありがとう」
オタク(委員長が気になって仕方ない……)
母「ちょっと、あんななにジロジロと見てるのよ。失礼でしょ」
オタク「あ……うん……」
委員長「……」
オタク(委員長の視線が何かを訴えている……)
委員長「(もしかして、気が付いてる?)」
オタク「……」コクッ
委員長「うぅ……」
母「こら、いい加減に見つめるのやめなさい。まったく、うちの子が変態でごめんねー」
委員長「……いえ……とんでもない……むしろ……」モジモジ
委員長「夕食までごちそうになってしまい、すみません」
母「いいのよ。ほら、しっかり送っていってあげなさい」
オタク「わかってるよ」
委員長「それでは、お邪魔しました」
母「またいつでもいらっしゃい」
委員長「はいっ」
オタク「……」
委員長「……」
オタク「はいた?」
委員長「ううん」
オタク「公衆トイレで履く?」
委員長「貴方と一緒だから、いいかなって」
オタク「よくないよ」
委員長「だ、だよね! ちゃんと履いてくる!」
オタク「走っちゃダメだよ!!」
―外―
委員長「今日は、その……なんていうか……私は満足できました……」
オタク「それは良かったって言っていいのかはわからないけど、委員長が満足したならいいと思う」
委員長「あとね、とっても気持ちよかった」
オタク(さらっと爆弾発言するのやめてほしいなぁ)
委員長「こんなに自分をさらけ出したこと、なかったからし。そもそも親にだって言えないもんね」
オタク「公言できる趣味ではないしね」
委員長「貴方と出会えてよかった」
オタク「お……ぅ……」
オタク(不意に笑うのもやめてほしい……)
委員長「また、来週……」
オタク「うん」
委員長「首輪って、どこでかえるかな……」モジモジ
オタク「……まだ、早いんじゃないかな」
委員長「えー……あなたが、そう言うなら……」
―自室―
オタク「あー……ソシャゲ……イベントやってるけど、もういいか……」
オタク「寝よう」
オタク(今日は委員長と今まで以上に濃い時間を過ごしたな)
オタク(順調に委員長は変わっていってるのは不安だけど……)
オタク「結局、僕も嬉しいんだよなぁ……委員長と仲良くなれて……」
オタク(そして、もっと見たいだけだよなぁ……あの委員長を……)
委員長『みないでぇ……』
オタク「……」
オタク「よく考えたら自分からああいうことしておいて見ないでってどういうことだよ」
オタク「まぁ、いいか。可愛いから」
オタク(このままもっと仲良くなれたら……もしかして……委員長と僕……)
オタク「ないか……ないよね……」
オタク(この関係のままでいいんだよ……きっと……)
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