不良女「あん? 誰だお前」委員長「え、ええっと……」(76)


委員長「が、学級委員長です。お、同じクラスの……」

不良女「そんなの知るわけねーだろ」

委員長「えっ、あ……。そ、そうだよねっ。ごめん」

不良女「けっ。……じゃ、もう帰っていいぞ」

委員長「えっ?」

不良女「大変だな、学級委員ってのはよぉ。先公に言われてきたんだろ? アタシからはよろしく言っとくからさ、もう帰んなよ」

委員長「え、いやっ、その……い、嫌だったよね、私みたいのが来ちゃ……」

不良女「別に嫌じゃねーけどさ、お前も忙しいだろ? アタシみたいなサボりに付き合ってちゃいけねーよ」

委員長「さ、サボりっていうかっ、でも、君は……。と、とにかく、あの、他にもいろいろ、えっと……」


不良女「ん? なんか用事でもあんのか?」

委員長「あ、えっと、あるけど、それよりも、私は、……その、」

不良女「おいおい、やっぱりあるんじゃねーか。ほら、なんかあんなら、さっさと済ましちまえよ」

委員長「わ、私は……あの……」

不良女「あん? はっきりしろよ、はっきりよぉ!」

委員長「ひゃいっ! すんません!」

不良女「……ったくよぉ」

委員長「こ、これ、あの……水曜日、じゃなかった、きょ、今日までの課題……」

不良女「あん?」

委員長「ひゃうっ! 殴らないで!」

不良女「いや殴らねーよ」

委員長「あ、あとっ、……じゅ、授業のノート……」

不良女「ん?」


委員長「ひゃあっ! 怒んないで!」

不良女「いや怒ってねーよ? っていうか、このノート、お前のだろ? ……いいのか?」

委員長「に、二冊とってたから……」

不良女「なんで?」

委員長「だ、だって、き、君が授業に遅れちゃうと、困ると、思って」

不良女「そうかぁ。……大変だなぁ、学級委員ってのは……」

委員長「ち、違うよ! こ、これは私が自分から、なんていうか、自主的に、」

不良女「へ? そうなの? ……いい奴だな、お前」

委員長「え、えへへ……」

不良女「でも、字は汚ねーな」

委員長「え、えっ、あっ……ごめん……」

不良女「お、おいそんなに落ち込むなよ! 冗談だって!」

委員長「め、迷惑だったら、……そうだ、次からパソコンで打って」

不良女「いや、んなことしなくていーからな! 冗談だから! 真に受けんな馬鹿!」


委員長「ば、馬鹿で……ごめん」

不良女「いや、ええっと……。あーもう! 面倒くせーなお前!」

委員長「うう……」

不良女「……」

不良女「あー、何が言いたいかっていうとだな、」

委員長「うん」

不良女「ありがとな、委員長!」

委員長「こ、こっちこそ!」

不良女「……え? なんで?」

委員長「えっ」

不良女「アタシ、お前になんもしてねーぞ」

委員長「えっ……。あれ、そういえば、なんでだろ……」

不良女「変な奴……はぁ」

委員長「ど、どうかした?」


不良女「あー、わりぃな。熱あってさ……だりぃの」

委員長「えっ!? あっ、ご、ごめん! な、長居しちゃって……!」

不良女「別にいいよ、暇だしさ」

委員長「じゃ、じゃぁ、あのっ、お大事に!」

不良女「おう。見舞い、ありがとな」

委員長「……じゃ、じゃぁね!」

不良女「おーう」

委員長「……」

不良女「……」

委員長「は、早く良くなってね!」

不良女「おい、行かねーのか?」

委員長「いや、その……」

不良女「ん?」

委員長「びょ、病院の階段って……どっちに曲がれば着けるんだっけ……?」

不良女「お前……やっぱ馬鹿だろ」


 ―木曜日―

不良女(昨日来たあいつ……。変な奴だったな)

不良女(まぁ、あんだけ怖がってたんだからもう来ねーだろうけど……)

不良女「……」パラパラ

不良女(ノートも教科書も……頭に入ってこねーなぁ)パラパラ

不良女(かといって、寝てるのも暇だし)

不良女「あー、……桜、もうほとんど散っちまったなぁ」

委員長「そ、そうだねっ」

不良女「うおっ!?」

委員長「えっ、え!? ど、どうかした?」

不良女「い、いつからそこに居やがった!」

委員長「ご、五分前くらい、かなー。えへへ……」


不良女「お前……透明人間かなんかなのか?」

委員長「よ、よく言われるんだよね、見えなかったって……。は、班行動とかでも、よく、目の前に居るのに探されるし……」

不良女「ところで、今日は何しに来たんだ?」

委員長「え、あっ、えっと」

不良女「そんなに溜まるもんなのか? 課題とかノートとか……昨日来たばっかだろ?」

委員長「お、お見舞い……。迷惑、だったかな? そうだよね、昨日来たばっかりだし、へ、へへ……か、帰るよ」

不良女「そうじゃねーよ! おい、ちょっと待て! 落ち着け!」

委員長「そ、そっか。居ていいんなら、いいんだけど……えへっ、えへへ」

不良女「むしろ、寝てても暇だからさ。ここの病棟、同じ年頃の奴も少ないし。話し相手になってくれるっつーんなら、アタシは嬉しいんだけど……」

委員長「えっ! ほ、ほんと!? じゃ、じゃぁ、話そう!」

不良女「でも、お前委員長だろ? なんか他にやることとかあるんじゃねーの? ほら、仕事だけじゃなく、部活とかさ、友達づきあいとかさ」


委員長「……」

不良女「ん? ……友達、居るんだろ?」

委員長「……わ、私も……その……ひ、暇だから……」

不良女「え。……え? もしかして、居ない?」

委員長「え、えへへへ……へへ……」

不良女「と、友達だ! 今から、アタシがお前の友達だ!」

委員長「へ……、えっ?」

不良女「あ……、不良じゃ嫌か?」

委員長「え、えええっ、いっ、いや、そんなことっ、全然っ! というか、そ、そそその、う、うれし、」

不良女「じゃ、決まりだな」スッ

委員長「……えっと?」

不良女「ほら、手ぇ出せよ。……あ、パーじゃなくて、しっかり握れよ? よし、当てるぞ?」

 拳 コツンッ


不良女「これで、アタシとお前はダチだ」

委員長「き、君って……」

不良女「ん?」

委員長「手、華奢、というか……やっぱり、きれい……というか」

不良女「……おい、なめてんのか?」

委員長「えっ、」

不良女「なめてんのかって聞いてんだよ!」

委員長「えっ、そ、そんなこと……! ご、ごめん!」

不良女「……」

委員長「……えっと……」

不良女「……ごめんな、急に怒鳴って」

委員長「そ、そんなの、いいよ。……えっと、こっちも、気に障ること言っちゃったみたいで……」


不良女「今日は、もう帰ってくれ……。疲れた」

委員長「う、うん。また、長居しちゃったね」

不良女「階段、場所わかるよな?」

委員長「うっ、うん! だ大丈夫! じゃ、じゃーね!」

不良女「……おう」


不良女「……」

不良女「何やってんだ、アタシは……」


―金曜日―

不良女「……」パラパラ

委員長「そ、それ、卒業アルバムかな?」

不良女「どわっ!?」

委員長「や、やあ! また来ちゃった……えへへ」

不良女「……来て、くれたのか」

委員長「う、うん! あれ? ダメ、だったかな?」

不良女「いや、来てくれないかもって思ってさ」

委員長「……きょ、今日さ!」

不良女「ん?」

委員長「体力測定、あったんだ!」

不良女「へぇー、そうだったのか」

委員長「うん!」


不良女「……」

委員長「……」

不良女「え、それで?」

委員長「えっ、ええっと……あれ? 普通のテストだったかも……あれ? わかんなくなっちゃった、えと……」

委員長「あっ、ところでさ! そ、それって卒業アルバム、かな?」

不良女「は? ……あ、ああ。中学ん時のだよ。暇だったからさ」

委員長「へ、へぇー! あれ、結構遠いところ、だったみたいだね」

不良女「あはは、そーなんだ。ど田舎でさぁ。嫌になって、わざわざ東京の高校受験したってわけ」

委員長「え、じゃぁ、家族とかは……」

不良女「あー、そういや近くに居ねーな」

委員長「さ、寂しくない……のかな?」

不良女「それがさぁ。アタシは前から友達の家とかに泊まることが多かったし、母親は田舎にいるけど、父親の方は海外赴任だし、最初からバラバラだったから。あんまり気にならねーなぁ」

委員長「と、友達の家?」

不良女「おう、グループに入ってたからな。いわゆる不良グループって奴? あ、不良っつっても、犯罪行為とかはしなかったけどよ」


委員長「そ、そうなんだ……なんか、グループとか、いいよね!」

不良女「そーだよな。何しても、一人より楽しいっつーか……。コンビニ前でカップ麺食ってるだけで、なんか楽しかったもんなぁ」

委員長「そ、その人たちも、今、遠いんだよね……?」

不良女「そう、だな。……それは、ちょっと寂しいかもなぁ」

委員長「あっ、あ、だから、卒業アルバム……」

不良女「んー、まぁ、そいつらは載ってねーんだけどな」

委員長「えっ? あ、そう、なんだ……。お、お見舞いとかは」

不良女「来ねーよ、あいつらは」

委員長「えっ、そ、そうなの?」

不良女「だって、あいつらアタシが入院してること知らねーもん」

委員長「え……えっ? ど、どうして?」

不良女「アタシが高校に受かった時も、上京する時も、グループ抜けることになるっていうのに、あいつらすっごい喜んでくれてさ。……だからさ、あんまり心配させたくねーっつーか……。ま、急だったから、連絡できないままになっちまった、っていうのが一番の理由なんだけどな」

委員長「そ、そうなんだ……」


不良女「ところでさ、学校の皆ってどんな感じなんだ?」

委員長「えっ」

不良女「ほら、アタシさ、入学式の後すぐ倒れちまったからさ。よくわかんねーんだよ」

委員長「あっ、みんな、いい人だよ! 担任の先生も、おもしろいし!」

不良女「ああ、あの先公なら会ったぞ。ちょっと小太りで、……子供の写真も見せてくれたな」

委員長「そ、そうそう、もうすぐ五歳なんだってね」

不良女「クラスメートでさ、仲良い奴とかいねーの?」

委員長「あ、えっと、体育とかで、組んでくれるのは、CさんとNさん、かな。Cさんは深夜アニメを全部見てて、声優とかに詳しくて、Nさんは特撮が好きみたいで、怪獣を全部覚えてる」

不良女「へー、すげえな」

委員長「他にも、面白い人が多いよ! Aさんって子は絵がすごく上手くて、でも美術部には入らないみたいで、Bさんが毎日勧誘してるんだけど絶対入ろうとしなくって、で、こないだ入部をかけて画力で勝負してた」

不良女「結果は、どうなったんだ?」

委員長「そ、それが……。百合の花を描こうって勝負だったんだけど、Bさんは普通に静物画のデッサンを持ってきたのに、Aさんが……えっと、なんか、アニメの女の子の絵を描いてきて……」


不良女「はぁ? なんだよそれ」

委員長「投票ではAさんが勝ったんだけど、Bさんがすごい怒っちゃって……。なんか、腕立て伏せをお互いに五回ずつするってことで決着がついてた」

不良女「すげーな。意味わかんねーなぁ」

委員長「う、うん。私も」

不良女「他にも、なんかあるのか?」

委員長「いろいろ、あるよ。え、えっとね……。あ、Dさんの体育着がなくなったことがあって、盗まれたんじゃないかって大騒ぎになった。でも、結局そうじゃなくって、……どこにあったと思う?」

不良女「わかんねーな。家か?」

委員長「ううん。Dさんが最初から着てた。着替えが面倒だからって、家から着てきてたみたいだ」

不良女「……おいおい、気づけよ」

委員長「う、うん、そうだよね……。き、気づかないものなんだね……」

不良女「なんか、楽しそーだなー」

委員長「う、うん!」


不良女「アタシさ、この調子で行ったら、来週には退院できそうなんだよな」

委員長「ほ、ほんとっ!? じゃあ、学校に来たら、さ、その、えっと……」

不良女「ん?」

委員長「えっと、きっと、楽しいよ!」

不良女「お、おう」

委員長「そ、それでねっ、」

不良女「……」

委員長「あ、あれ? どうかした?」

不良女「ん。……わりぃ、ちょっと眠くなってきた」

委員長「う、うん。わかった。また長居しちゃったね……」

不良女「……あ、あのさ」

委員長「えっ、え、なに?」

不良女「また、よかったら来てよ」


委員長「う、うんっ! 来るね!」

不良女「じゃーな」

委員長「じゃ、じゃーね。またねっ」


不良女「……うっ」ブルッ

不良女(やべぇ、なんか……久しぶりに……)

不良女(……気持ちわりぃ……)


 ―土曜日―

ザワザワ……

委員長(あれ? 病室、看護婦さんが出入りしてるし……なんか騒がしいけど、大丈夫かな?)

委員長(ちょ、ちょっと覗いてみても……)ソーッ

看護師「何か用ですか?」

委員長「ひゃうっ!」

看護師「ここの病室の人にお見舞い?」

委員長「あっ、え、えっと……あの、えっと、今、入っても……」

看護師「ごめんなさいね。昨日の夜に急に熱が上がっちゃったから、今日は遠慮してもらっていい?」

委員長「えっ! あ、はいっ。あ、あの……」

看護師「なに?」

委員長「だ、大丈夫、なんですか?」

看護師「うーん、詳しいことはあまり言えないんだけど、心配しなくても大丈夫よ。あ、退院は、少し伸びるかもしれないかな」

委員長「そ、そうなんですか……。あ、ありがとうございました」


委員長(ほんとに、大丈夫なのかな)

委員長(さっき覗いたとき、ちらっとしか見えなかったけど、でも、看護婦さんたちに囲まれてたし……)

委員長(実は悪い病気、だったりして……)

委員長「……」

委員長(あの中学校のある場所……。確か、電車でも、行けるんだよね……)


―コンビニの駐車場―

委員長(と、遠かった……疲れ、た……ふへ)

委員長「ここが、あの中学校から一番近いコンビニ、なんだけど……」

委員長「そ、そうだよね。そんなに、都合よく、居るわけないし……」ハッ


ピアス男「おっ、おめーそれ新発売の奴じゃね。一口」

茶髪女「っげねーよ自分で買ってこいよ」

金髪女「あーしのあげよっかぁー?」

紫髪男「お前、それはいつもの豚トンコツだ。リーダーはキムチがいいんだよ、キムチ」


委員長「い……居たぁーっ!?」


ピアス男「あん?」


委員長「っ!」ササッ!


茶髪女「んあ? どしたね?」

ピアス男「いや、なんか変な女がこっち見てたけど……。車の後ろに隠れやがった」

金髪女「なにそれきもーい」


委員長「はぁ……はぁ……」

委員長(と、とっさに隠れてしまったけど……)

 ――『コンビニ前でカップ麺食ってるだけで、なんか楽しかったもんなー』

委員長(っていう、言葉に当てはまる、……なんかっ、それっぽい集団が居るーっ!)

紫髪男「こいつか?」

ピアス男「そーそーこいつー」

委員長「っひゃあああああ!?」

金髪女「ちょ、そんなに驚かなくてもいいっしょー?」


委員長「あっ、……あのっ!」

金髪女「あん?」

委員長「うっ……」ビクッ

委員長(が、頑張らないと……! せ、せっかく、ここまで来たんだから……っ!)

委員長「わ、私の学校にっ、こ、ここら辺の、中学校に居た人が、居てっ! あっ、と、東京の学校なんですけど、それでっ、」

茶髪女「……あ?」

委員長「そ、その、もしかして、あなた方と、仲が良かったんじゃないかな、と、お、思いまして……」

金髪女「あっ!? ねー、リーダー! もしかしてさぁ!」

ピアス男「……知らねーな、そんな奴」

茶髪女「ああ、知らねー」

金髪女「はあっ!? ね、ちょっとリー……もごっ!?」

紫髪男「お前は黙ってろっての」

委員長「あっ、そ、そうですか……。す、すみません。では……」


ピアス男「ちょっと待ちな」

委員長「え、ええっ? な、なん、ですか?」

茶髪女「誰からそーんな噂聞いたのか知らねーが……。いいか? あいつは、アタシらとは、なんの関係もねーんだ……。わかったか? あん?」

委員長「え……? あっ、や、やっぱり、知ってるんじゃないですか! 今ですね、あのっ、」

紫髪男「それを知ってどうするつもりだ?」

委員長「えっ、え、ど、どーするって……あの、よくわからないんですけど、今、病院に」

ピアス男「これ以上、あいつの過去を探ろうっつーんなら……それ相応の覚悟はしてもらわねーとなぁ? あ?」

委員長「いえっ、あの、そういうんじゃなくて、ですね、その、卒業アルバムを見て……。って、そうじゃなくてっ。今病院にい」

茶髪女「あいつはな、アタシたちとは違うんだよ。つるんでた理由だってそうさ」

紫髪男「つまりだ。俺らは何にも言うつもりはないし、お前に妙な噂を広めさせるつもりもない……」

委員長「聞いてくださいよっ! 今っ、にゅうい」

ピアス男「口封じ……させてもらうぜ?」ガシッ

委員長「え……」


ピアス男「てめーらやっちまええ!」

茶髪女「こちょこちょこちょこちょ」

金髪女「さわさわさわさわ」

委員長「ひゃっ!? あはっ、や、やめ……っ! あっはははははは!!」


 ―二十分後―

委員長「うぅっ……ぜぇ、ぜぇ……げほっ……」

紫髪男「これに懲りたら……もうこの件には触れないことだ」

茶髪女「あいつの弱みを握ろうなんざ、アタシらが許さねーぜ」

委員長「ち、違います……。つ、伝えたい、ことが……」

金髪女「ん? なにさ?」


委員長「い、今、……その子が、入院、してて……。あんまり、よくないみたい、で……」

ピアス男「はぁっ!? う、嘘つくんじゃねーよ!」

茶髪女「そうだよ! アイツが連絡してこなかったのは、東京の高校に行って、芸能界に入ってアイドルになって、アタシらとはつるめなくなったからで……」

委員長(あいどる……? な、何の話……?)

金髪女「そーそー! 最後のメールもさ、二か月も前だし! 返信しても音沙汰なかったし! ほら!」

メール『やばい 熱ひかない (笑』

メール『あ なんか治った気する へーきへーき』

金髪女「……これ、やばかったんかな?」

委員長「た、たぶん、その日から入院したんじゃ、ないかと……」

五人共「…………」


委員長「わ、私……人見知り、でして。あんまり、話せる相手、居なくて……。でも、その子、すっごく、優しかったから、甘えちゃって……お見舞いでも長居しちゃったりして……でも、なんか、寂しそうだったから、……」

委員長「それで……だから……っ」ポロポロ

紫髪男「……ほれ」

委員長「え……」

紫髪男「ティッシュだよ。……涙、拭けよ」

委員長「あ、ありが、とう……」

ピアス男「っで、どこなんだその病院! 教えろっ!」

委員長「……あっ、えっとですねっ、……あ、でも、ここから電車の快速で三時間くらいかかったので、それに、今あんまり良くないみたいなので、えっと、週末とかのほうが……」

茶髪女「いーからさっさと教えなっ!」

委員長「ひゃっ、はい……っ!」


ブロロロロ・・・

ピアス男「……あいつさ、可愛いだろ?」

委員長「えっ? あ、はいっ。すっごく……」

ピアス男「東京じゃ普通だろうけどよ、ここらへんじゃ、珍しくってさ」

委員長「い、いえ……」

ピアス男「あ?」

委員長「と、東京でも……あんまり、居ないです……」

ピアス男「そーか。ま、とにかくさ。あいつは可愛すぎたんだよな」

委員長「え……?」

ピアス男「俺らは不良っていうんで有名だったからな。あいつが『入れてくれ』って来たときには、最初は断ったけどよ、事情を聞いてさ、形だけでも教えてやったのさ」

茶髪女「そうそう! あんときゃ、見た目もめちゃくちゃ可愛いしさ、一学年年下だしさ、絶対バカにされてると思った!」

紫髪男「だから、東京に行くのがいいと思ったんだよな、俺らは」


―病院前―

五人共「……」

ピアス男「んだよ、着いたはいいが、夜中になっちまったじゃねーか」

金髪女「でもさ、明日って日曜じゃん? よゆーよゆー」

茶髪女「ねー、ここら辺のネカフェ教えてくんない?」

委員長「あ、あの……ね、ネカフェより、う、うちに泊まりませんか……?」

紫髪男「いいのか? それはさすがにまずいだろ」

委員長「でも、あの、ね、ネカフェ? は、たぶん条例、あれ、条例じゃない、かな? とにかく、そういうのでダメ、なので……。それに、あの、私の家、もともと、知らない人多いので……」

茶髪女「はぁ?」

明日完結させる

あ、しまった抜けてた

>>27>>28の間

金髪女「だからさー、まさか入院してるとは思わなかったしー」

委員長「そ、そうなんですか……。と、ところで、あの……」

ピアス男「んあ? どした? 二人乗りでケツでも痛くなったか?」

茶髪女「リーダーの運転が荒っぽいのがわりーんだよー!」

委員長「あの、……どうして、私たちバイクで移動してるんでしょうか……?」

紫髪男「決まってる。見舞いに行くんだ」

委員長「えっ、えと、……こ、このままだと、夜中になっちゃいます、けど……」

ピアス男「ごちゃごちゃうるせーっ! 行くぞお前らーっ!」

四人共「おおーっ!!!」

委員長(……うう……)


―スナック『おおまち&こまち』―

茶髪女「こ、ここって……」

委員長「あっ、う、裏口から、入りますっ。中は、見た目よりは、広いのでっ、大丈夫です! あっ、ちょっと、待っててください! 今、説明、してきます!」

紫髪男「お、おう」

委員長「おばあちゃんただいまー!」

大ママ「あら、遅かったわねぇー。若ママが心配してたわよぉー」

若ママ「どこ行ってたのよぉ……まったく」

委員長「あ、おかあさーん! 今日さー友達が来てるんだけど、泊まってってもいいかな?」

若ママ「ともだちぃー? こんな夜中に? ……ま、いいけどぉ? てゆうか、あんた友達できたんだー。よかったよかったー」

委員長「いいって! えと、は、入って、きてください!」

ピアス男「お、おじゃましまーす……」

ゾロゾロ・・・

茶髪女「っじゃましまーす……」

金髪女「ち、ちーすっ」

紫髪男「お世話になります」

若ママ「……あれぇ? 多くなーい? すごいじゃん」

委員長「えへへへ」

大ママ「あらあら、うちの孫がお世話になって……」

ピアス男「え、いや、世話んなるのはこっちなんで……か、かたじけねぇっす」

若ママ「でもさぁ、娘ー。お客さん用布団と、あんたのベッド入れても一個足りないよー? どうすんのー」

委員長「私、寝袋で寝るよ! ほら、おかあさんが昔登山部で使ってたやつ! あれで寝てみたかったし!」

大ママ「それじゃぁ、もう遅いし。お布団敷きましょうかねぇ」

茶髪女「そんなっ、あの、うちらでやりますし! てか、アタシらが寝袋で寝ますし! むしろ床でもいいですし!」

大ママ「いえいえ、いいんですよ」


大ママ「他人が布団を敷くのはね、元仲居としての、私の魂が許せないんですよ……」

茶髪女「え? ……あ、あのぉー」

大ママ「お客様を床に寝せるわけにも参りませんしねぇ……おほほ」

ピアス男「おおー……なんかすげー」

金髪女(き、気迫が……パネェっす……)

若ママ「あららぁ、大ママったらさ、あんたが初めて友達連れてきたからはしゃいじゃってるよ。……あ、店じまいの時間だから、残ってるお客さん返さないと」

委員長「……あっ、み、みなさんっ! あ、えっと、私、あの、おかあさんと、お客さんの……えと、お帰り支度? て、手伝ってくるから、先にさ、ご飯とか食べてて、……よ!」

紫髪男「あ、ああ。わかった。任せろ!」


―食卓―

ピアス男「な、なぁ……あいつさ、」ヒソヒソ

茶髪女「おう。なんかあるとは思ってたけどさ、まさかこんな家庭環境だったとはなー……」

ピアス男「え? いやいや、そーじゃなくてよ」

茶髪女「へ?」

ピアス男「あいつさ、母親とばーちゃんが相手なら、普通に話せんだなーと思ってよぉ」

茶髪女「あー。あ? って、言われてみりゃそうじゃんっ」

大ママ「ああ、これ、どうぞ。昼の残り物しかありませんが……」

ピアス男「うおっ!? い、居たんすかっ!?」

大ママ「遠慮しないで、頂いてくださいね?」

茶髪女「あっ、あざーすっ!」

ピアス男「頂戴しゃすっ!」

大ママ「お代わりも、少しならありますので……」

金髪女「んっ!? なにこれうめぇっ! なにこれ!?」モグモグ

紫髪男「確かに、うまい。これは、カレー……なのか?」パクパク


大ママ「ええ、便利ですよね。いろんな物を刻んで、煮て、ルウを入れてしまえばカレーになるので」

ピアス男「そうっすよねー」ガツガツ

金髪女「何入れたら、こんなにうまくなるっすかー?」パクパク

大ママ「……聞かない方が、よろしいかと……」

茶髪女「……え?」ピタ

大ママ「おほほほ、ほほ……」

ピアス男「あ、そーっすか。お代わりください」

紫髪男「うん、うまいな……」モグモグ

金髪女「あっ、すんませーん。お水くださーい」パクパク

茶髪女「え? ……ええっ!?」


―カウンター―

若ママ「あーもう、お客さーん、終電なくなっちゃうよぉー?」

客の人「う、うーん……ヒック、ママぁー、俺さ、俺だってさぁ……ゲホッ、ゲホッ」

若ママ「ちょっとぉ、立てるぅー? っていうか、歩ける? んもう、だからあんまり飲むなって言ったのよぉ」

客の人「だいじょーぶだいじょーうぶっ。ほれ、このとーり」ヨロヨロ

委員長「あ、おかあさーん。上着にブラシかけ終わったよー。あ、あと、……えと、鞄、ですっ!」

客の人「ああ……すまないねぇお嬢ちゃーん。……エホ、ゴホッ」

委員長「気を付けて帰ってくださいねー」

 ドア カランカラーン

若ママ「……あーもう、やぁっと帰ったかー。ちゃんと、体大事にしろって言ってるのになぁ」

委員長「咳してたしねー。風邪かな? 心配だねー」

若ママ「インフルエンザなんかも流行ってるからねぇ。って、あんたも、もうこっちはいいよ。友達来てるんでしょ?」

委員長「うん! じゃ、おかーさんお休みー!」

若ママ「おやすみぃ」


若ママ「……あの子が、友達、ねぇ」

若ママ「……よっしゃ!」グッ!


―寝室―

紫髪男「あの、なんだ。俺が、寝袋で寝ようか?」

委員長「えっ、……いっ、いいです……よっ? あの、私、寝袋使ってみたかったし、それに……」

金髪女「んーっ? それに、なにぃー?」

委員長「あの……、その、お、おばあちゃんが……」

ピアス男「なるー」

茶髪女「ほどねぇー」

委員長「……? あっ、で、その、明日、なんですけど……」

ピアス男「おうっ! 今度こそあいつの見舞いに行ってだな、」

委員長「で、でもっ、……あの、今、あんまり、良くないかもしれないから、……断られる、かも……」

紫髪男「しかしだな、俺らは、月曜までには帰らないといけない」

委員長「……あっ、……そ、そうでした……」

茶髪女「断られたらさ、それはそれでいーからさ!」

金髪女「そーだっ! ねーねー、あれじゃん? お見舞いと言ったらさ、折り紙のツルとか花とか持ってくもんじゃね? ね?」


ピアス男「お、……おおーっ! おめーイイこと言うじゃん!」

委員長「でっ、でも、……お花屋さんは、あっ、花屋……? あれ? ……は、明日の朝にならないと……です。そ、それに、お花は、禁止じゃ、ないですけどっ。も、持ってかない方が……」

金髪女「……は?」

委員長「うぇっ!? あ、あっ! 折り紙なら、う、うちにもありますっ! ……けど!」

ピアス男「おっしゃーそうと決まれば、寝てる場合じゃねーぜ! 折るぞツル!」

茶髪女「え、でもよリーダー! ツルはちょっと大げさなんじゃねーか?」

ピアス男「ば、ばっかやろーう。病気に重いも軽いもあるか! 千羽折るぞ、千羽!」

委員長「ふぇっ!? え、あ、……え、どうしよ……えっ」

紫髪男「どうした?」

委員長「じゅ、十二枚しかありません……」

ピアス男「なら十二羽だぁー! 折るぜやろうどもぉー」

四人共「おーうっ!」

委員長「……へっ? あ、あっ。お、おうー」


―病院前―

紫髪男「病室の前まで来れたか。やっとだな」

金髪女「いやー、長い道のりだったーっ!」

茶髪女「って、リーダーはまだ花買うのにもたもたしてんのかよー」

委員長「あっ、あの、……病院なので、もう少し、声を落として……」

委員長(あれ? 結局……買いに行っちゃったんだ……)

金髪女「あ、あーしもそう思うー。びっくりさせたいしー。気づかれたら台無しっつーか」ヒソヒソ

看護師「あら? こないだの子じゃない」

委員長「ふみゅっ!? あっ、あ、あ、か、看護師さん! こないだは、どうも!」

看護師「今日はね、お見舞いしても大丈夫よ。むしろ、これまでで一番元気かも」

委員長「ほっ、ほんとですか!」

看護師「詳しいことは、本人に聞いてあげてね。彼女、すっごく暇そうだから」ニコッ

委員長「あっ、ありがとうございます!」


茶髪女「じゃ、っじゃましまーす」ゾロゾロ

金髪女「ちーすっ! 元気ぃー?」

紫髪男「おす、久しぶり」

委員長「え、あっ、……みなさん、まだリーダーさん、来てませんけど……」

委員長(……い、いいのかな……?)

委員長「……あ」

委員長(びょ、病室に入るタイミングを……逃して、しまったっ)ガン


不良女(……あれ? 委員長の声がしたような気が)チラッ

不良女「って、来るはずねーよなぁ。昨日断っちまったし……。今日は、あいつの性格的に、遠慮して来ないだろうなー……」


茶髪女「じゃ、っじゃましまーす」

金髪女「ちーすっ! 元気ぃー?」

紫髪男「おす、久しぶり」

不良女「……え?」

茶髪女「おっ、なんだよぉー結構元気そうじゃーん!」

金髪女「あーし、今まで知らなくってさぁ! んんー、寂しかったぁーん?」

不良女「え、お、お前ら……どうして」

紫髪男「最初から、教えてくれりゃいいのによ。……ほらよ」

不良女「え? あ、ありがと……。って、ん? なんだこのゴミ」

茶髪女「うおっ! ひっでぇ!」

金髪女「すげー! 少しも変わってねーよー! あーしらと居た頃のまんまだぁその毒舌ぅー!」


不良女「え……、なんかすまん」

紫髪男「無理もない。……ツル、のはずだったんだがな」

金髪女「あーしら折れなくってさ、結局チューリップになっちゃって!」

茶髪女「ほらほら、あんたチューリップ好きじゃん? チューリップ」

不良女「え、これ、折り紙……? 折ってくれたのか? アタシのために……」

紫髪男「切り貼りもしたな。セロハンテープで」

金髪女「この顔! これ、あーし描いたし!」

不良女「……ありがと。……うれしい、すっごく」ギュッ

茶髪女「ふん……っ」ナデナデ

不良女「うあっ!? な、なでんな!」

茶髪女「……あんたさ、もう金輪際、隠し事なしだかんね?」

不良女「え?」


金髪女「そーそー。言ってくれないとさぁ、あんたが困ってる時もさ、助けにこれないじゃーん」

不良女「で、でも……アタシは……」

紫髪男「……これは本来、リーダーが言うべきなんだろうが」

不良女「……?」

紫髪男「お前は、離れていても、俺らの一員だ」

不良女「……っ!」ジワッ

茶髪女「うんうん。ずーっとだぜ?」

金髪女「あーしら、どこに居たってさ、グループの奴のためならバイク飛ばして駆けつけるからさ!」

不良女「……っ、……!」ポタポタ


茶髪女「……よーしよーし」ナデナデ

金髪女「えーっと、チューリップ、飾っとくね!」

不良女「……うっ……えぐっ……」グスグス

紫髪男「……ティッシュ、要るか?」スッ

不良女「だのむ……」グスッ

不良女「……ぐすっ、……あ、あで?」ズビー

不良女「そういやさ、り、リーダーは、どうしたんだ?」ゴシゴシ

茶髪女「うーんと、そろそろ来ると思うんだけどなー」


委員長(な、なんか、話しこんでるみたいだし……。入らない方が、いいかなぁ)

ピアス男「いやー、遅くなっちまったぁー」

委員長「にゃっ!? あ、あ、リーダーさん、でしたか……」

ピアス男「ほら、買ってきたぞチューリップ!」

委員長「……え」

ピアス男「ここの病室、だよな? おじゃまし」

委員長「まっ、ままま、待ってください! だ、ダメです、ダメっ!」

ピアス男「は? おい、何がダメなんだよぉ?」

委員長「ね、根っこのある奴は……鉢植えはダメです!」

ピアス男「はぁ? おいおい、いいか? 鉢植えの方がな、長持ちしてきれーなんだぞ?」

委員長「ね、根がついてるのは、『寝付く』って意味が、れ、連想されるので、ダメぇ! です!」

ピアス男「根付くんならいいじゃねーか」

委員長「よ、よくないですっ! わ、わわ、私、それで、もし、入院が長くなったりしたら、……嫌ですっ」

ピアス男「え、縁起でもねーこと言うんじゃねーよ! 延びたらどうすんだ!」


委員長「えっ? あ、あれ……? と、とにかく! ダメですっ、……よ!」

ピアス男「はぁー……。わーったよ。そんなに言うなら、返してくらぁ」

委員長「あっ、よ、よかった。……じゃ、なくて、ありがとう、……あれ? ちょっと違いますね。……あっ、そ、そうだ! あ、わ、私が行きます、よっ」

ピアス男「ん? いやいや、俺が行くって」

委員長「い、いえっ。あの、私は、これからいつでも会えます……けどっ。リーダーさんは、そうはいかないと……思うのでっ! あ、会って、話してあげて、くださいっ!」

ピアス男「でもなぁ……」

委員長「わっ、私っ! こういうの、好きで……。それに、たぶん、その方が、あの……嬉しいと、思うのでっ」

ピアス男「そ、そうか……。わぁーった。よし、じゃあ、チューリップはお前に任せたぜ」

委員長「えっ、あ、はいっ! で、ではっ」


ピアス男(変な奴だなぁ……。花屋に行きたかったのかね?)


ピアス男「気を取り直して、おじゃましまーすっ」

不良女「あ……リーダー」

ピアス男「おーおー! ひっさぶりだなぁ!」

金髪女「あれー、一人ぃー? 委員長はぁ?」

ピアス男「ん? あーっ、鉢植えが嫌だっつーからよ、返しに行った」

茶髪女「はぁ!? あんた常識知らずにも程があんだろ! なに根っこのある物持ってきてんだよ!」

ピアス男「え? やっぱダメなの?」

茶髪女「はぁー……馬鹿だ! なんでアタシこいつと付き合ってんだろ!?」

不良女「えっ、委員長? あいつも来てるのか!?」

ピアス男「おお、鉢植え返したら戻ってくると思うけどよー」

不良女「そ、そうか!」


―花屋―

委員長「え、返品……やっぱり、ダメ、ですよね。はい、……す、すみません……」

委員長「チューリップ……持ち帰んなきゃ……」

委員長(あ、でも、家と往復してたら、時間経っちゃうし……。あんまり長くお見舞いしても、また、具合悪くさせちゃったら、大変だし……)

委員長「どうしよう……」

委員長「ちゅ、チューリップ、持ったまま……、病室に入るわけに、いかないし……」

委員長(今、病院戻っても……。邪魔、かなぁ。邪魔、だよねぇ。優しいから、そういう風に言わないだろうけど……やっぱり、水入らず、がいいよね……)

委員長「あっ、でも、」

委員長(今日中に、リーダーさん達帰っちゃう……)

委員長「チューリップ……どうしよう……」

委員長(しょうがないから……。学校で、リーダーさんから、って言って、渡せば、いいよね……?)

委員長(そ、そうだよ。リーダーさん達には、……明日! 学校の帰りに……コンビニのとこまで、言いに行けばいい……かな?)

委員長(そう、だよね。うん……。よし、これで完璧。大丈夫。うんっ)


―病室―

ピアス男「でよーっ、その先公がさぁ」

不良女「おっ、おいおいマジかよ……! あははっ」

金髪女「でさでさっ、あーしもさぁ!」

看護師「あのー!」

茶髪女「へっ? あ、やべっ。すいません、もっと声小さくしまーす」

看護師「いえ、それよりも……」

紫髪男「む?」

看護師「何時間ここに居るつもりですか! 非常識にも程がありますっ!」

ピアス男「うぇっ!? って、やべぇもうこんな時間じゃねーか!」

茶髪女「わりーな、好き放題に話し込んじまって」

不良女「いやいや、そんなことねーって。アタシも、すごい楽しかった……ありがとな」

金髪女「今度もさ、またあーしら遊びに来るからさー。そしたら東京案内してよ、渋谷とかさ!」

不良女「おうっ、任しとけ! ちゃんと調べとくよぉ」


紫髪男「じゃ、またな」

不良女「おーう!」

看護師「まったく……」

看護師(あの人達がもしまた来たら、時間の上限決めとこ……)

不良女「……あ、そういや」

看護師「? どうかした?」

不良女「えっ? あ、大丈夫です、何でもないですから……」

不良女(……委員長、戻ってこなかったみたいだな。……どうしてだろ?)


―月曜日―

 ジリリリリリ・・・

委員長(め、目覚まし……)

 リリリリッ バシッ!

委員長(……起きなきゃ)

委員長「……」ムクッ

委員長「…………」ボー

委員長(あれ? なんか、頭、重い……)

若ママ「起きといでー。遅刻するよぉー?」

委員長「あ、はーい! ……あ、あれ?」フラッ

大ママ「どうしたね、ベッドの横に座り込んで」

委員長「……た、立てなくなっちゃった……え、えへへ、へ……」ヘタッ

若ママ「ほらぁ、朝ごはんできてるってぇ――わっ、ど、どしたの娘!?」

委員長「ご、ごめ……なんか、えへへ……」


若ママ「ちょ、ほら、ママにおでこ貸してみ! ……やだ、すごい熱」

委員長「えー……、じゃ、学校とか……」

若ママ「行けるわけないでしょー? 今日は休んで、ゆっくり寝て。電話しといてやるからぁ。……立てる? ほら、横になって……」

委員長「う、うん……ありがと……」

大ママ「氷枕、作ってきたからねぇ」

委員長「うん……ありが、と……」ウトウト

委員長(あれ? なんか忘れてるような、気が……)ボー

委員長(ま、いいか……)


―コンビニ前―

金髪女「そういやさー、委員長、戻ってこなかったねー。なんで帰っちゃったんだろねー」

茶髪女「戻る前にさ、アタシらが追い出されただけかもしんねーよ?」

ピアス男「さぁなー。帰ったんだとしたらよ、急ぎの用事でもあったんじゃねーの? おい、一口」

茶髪女「っげねーよ自分のがあんだろ」

紫髪男「……気を使ったのかもしれんな」

金髪女「えー?」

紫髪男「内輪の話もあるだろう、と思ったのかもしれん」

ピアス男「まー、確かに内輪ネタ連発しちったからなー。あの場に居てもつまんなかったかもしんねーな、うん」

茶髪女「でも委員長はさー、これから毎日あいつに会えんじゃん? あーもう、うらやましー!」


金髪女「そーそーっ! あーしもうらやましぃー」

紫髪男「俺は、お前のカップめんがうらやましい」

金髪女「えー、食べるぅー? 食べたいー?」

紫髪男「くれるのか?」

金髪女「あっげなぁーい」

ピアス男「ぎゃははは、お前っ、ふられてやんのーっ」

紫髪男「……」ズルズル


―火曜日―

―スナック『おおまち&こまち』―

若ママ「たっだいまー。娘ー、ママが仕事から帰ったよぉー」

大ママ「ああっ、丁度良かった。今、診療所に連れてこうと思ってたんだよ。車出しておやり」

委員長「……はあ、はあ……ケホケホッ」

若ママ「え、ええっ? 今朝、熱下がってたよね?」

大ママ「それがねぇ、お昼くらいからぶり返したみたいで」

委員長「……ご、ごめ……ケホ、ゲホッ」

若ママ「いーから、いーから。ほら、車乗って?」

委員長「……うん……」

委員長(ど、どうしよう……これじゃ、明日も言いに行けないし……。うわわ、これじゃ、チューリップ盗んじゃったみたいになっちゃう……どうしよ……)

若ママ「もうちょっとで着くぞー。あー、でも夜間は混んでるかなぁ? 待つかもねー」

委員長(どうしよ……どうしよ……)ケホケホ


―病室―

不良女「……ん? 委員長……」

不良女「……」

不良女(今日も、来なかったな……。何もなけりゃいいんだけど)

不良女「……」

不良女「あーあ、今、なにしてるんだろうなぁ……」


―水曜日―

若ママ「それがね、検査したらぁ、インフルエンザだって言われて」

大ママ「あらあら……。じゃぁ、お店は開けない方がいいわねぇ」

若ママ「薬も飲ませたし、今は部屋で休ませてるけどぉ。五日以上熱が続くようなら、また受診してってさ」

大ママ「そうかい……。心配だねぇ」

若ママ「ま、あの子、私に似て体は丈夫だからね。すぐ治るでしょー」


委員長「……ケホケホッ、ゲホ……」

委員長(インフルエンザ……って、移るよね? う、移してたらどうしよう……。あっ、それに、病院にお見舞いなんか行っちゃったし……。た、確か熱が出る前から、移るんだよね? ど、どうしよう。ただでさえ、入院するくらい弱ってるのに、そのうえ、インフルエンザなんて……)

委員長(うわあああ、どうしようどうしようどうし……)


委員長「あっ、……」

委員長(私、そういえば、病室には入ってないんだった……)

委員長「せっ、セーフ……セーフ、だよねっ。……セーフ……」


委員長「ケホケホッ、ゲホッ……はぁ」

委員長(……やっぱり、熱あるときは、寝てたい、よね……)

委員長(……長居して、悪かったなぁ……)

委員長「……ううー……」


―病室―

不良女「……」

不良女(長かったけど……いよいよ、明日かぁ)

不良女(結局、委員長来なかったな……。っつーかあいつ、明日退院だって知らないよな……)

不良女「……あ、でも、学校で会えるし。すぐわかるか」

委員長『うっ、うん! そうだよっ』

不良女「うわっ!? 委員ちょ――」

不良女「……」

不良女「空耳かよぉ……」


―木曜日―

―コンビニ前―

金髪女「……うおーいっ!」

茶髪女「うぃっ!? ど、どした?」

金髪女「メールメール! ほら、退院だよー、退院したってさぁー!」

紫髪男「そうか、今日か……」

ピアス男「よっしゃあ! おい、今日はパーッと行くぞパーッと。食いに行くぞラーメン!」

金髪女「マジかよ! あーし今300円しかもってねーんだけどっ! どうしよ?」

紫髪男「……ふっ」スッ

茶髪女「あ、あんた……まさか、そりゃあ」

紫髪男「ああ。そのまさかだよ」

紫髪男「今までの割り勘分の、割り切れなかった分の余剰をコツコツ貯めてきた、貯金箱のトンちゃんだよ……」

ピアス男「お、おめーに管理を任せてたそれを、ついに……。確かに、使うとしたら今しかねぇ!」

茶髪女「い、いくらだ……? いくら入ってんだよぉ!」


紫髪男「……」スッ

ピアス男「さ……300、円?」

紫髪男「3,000円だ」

3人共「う……うおおおおおっ!!!」

紫髪男(俺のバイト代も多少入れてあるが……そんなことは言わなくてもいいのだ)フッ

 この後めちゃくちゃラーメン食っ(ry

茶髪女「あり? そーいや、委員長の話とか出たん?」

金髪女「それがさー、あれから一回も来てないみたいでさー。……なんかあったんかなー?」


その三日後・・・

―月曜日―

委員長(け、結局、一週間も休んでしまった……)

委員長(もう、退院……しちゃってるよ、ね? 学校なら、他の皆も、居るし……。変に、話しかけない方がいいのかなぁ……。邪魔にならないかなぁ……)

委員長「……行ってから、考えよう。……遅刻しちゃう……」

委員長(治ってから、三日、経ってるし……。チューリップも、忘れないように、持ったし……)

委員長「い、行ってきまーす!」

若ママ「はぁい、いってらっしゃぁーい」

大ママ「いってらっしゃいねぇ」


―学校―

委員長「お、おはよー……」

Bさん「今日こそ、美術部に入ってもらおうか!」

Aさん「い・や」

Bさん「なんでっ? 画材だって使い放題、賞でももらえば推薦にだって使える! あなたの画力なら一等だって夢じゃないのに!」

Aさん「だって……入っちゃったら……」

Aさん「Bさん、追いかけてきてくれないでしょ?」

Bさん「えっ? う……うわぁ」

Aさん「えっ? やだやだぁ、本気にしないでよぉー。冗談―」

Bさん「そ、それなら、いいけど……。って、違う! 美術部にはね、先輩の代からのね、一等と二等と三等を我が校で独占するっていう悲願があるんだ!」


Aさん「あなたが全部獲ればいいじゃない?」

Bさん「わ、わかってて言ってるだろ? 私じゃぁ……二等までが、限界なんだよ……!」

Aさん「そんなことない……。あなたの絵、とっても個性的で。こないだのなんて、シャガールみたいでとっても素敵だったぁ」

Bさん「う、うそつけぇ! お世辞言うなぁ!」

Aさん「そう、私が惚れるくらいに……」

Bさん「え……? う、うわぁあ」

Aさん「冗談。冗談だってば」

Bさん「え? あ、うん……。え?」

委員長(一週間前と、変わらないなぁ。この二人は……)


ガラッ

不良女「おっはよーす」

委員長「あっ……!」


不良女「おっ、委員長ー!」

委員長「あっ、あ、あのっ、……あ、リーダーさんから、チューリップ、あ、鉢植えで……あ、あれ? その前に、あ、退院、おめでとう……って、もう遅い、かな? あれ? あっ……」

不良女「お、落ち着けっ。どうどう」

委員長「ひゃぁっ!? え? えと……」

不良女「ありがとな」

委員長「えっ? え、」

不良女「お前が、あいつらにさ、アタシが入院してること教えてくれたんだろ?」

委員長「あっ、う、うん……。か、勝手にやっちゃって……」

不良女「すごいびっくりしたけどさ、嬉しかったよ」

委員長「え、えへへへ、へへ……」


不良女「……」ぎゅっ

委員長「……えっ? え、え、あの……は、ハグ……?」

不良女「……会えなくてさ、寂しかった」

委員長「えっ、あ、あの……えっ、あ、ごめ、私っ、」

不良女「うんうん。先公から聞いたぞ、インフルエンザだっけ? ……もういいのか?」

委員長「うっ、うん! もう、大丈夫。移んない、平気っ」

不良女「そっか……。よかったな! 元気になって」

委員長「あ、そっちこそっ! その、よかった! ……で、わっ、待って待って、そうだ!リーダーさんから、チューリップが……」


不良女「……」ぎゅー

委員長「……え、えと……」

委員長(後でも、いい、かなぁ……えへへ)…ぎゅっ


Bさん「……委員長が喋ってんの、私初めて見た」

Aさん「……」

Aさん「二人の熱い抱擁……。百合ね」

Bさん「……ああ」

Bさん「……って、いや違うだろっ!」


おわり

暇な>>1の妄想 を読んでくれた人ありがとな

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