葛城宅
アスカ「たっだいまー」
ペンペン「クェー」
アスカ「あれ? なぁーんだ。シンジもミサトもいないじゃない」
ペンペン「クァー」
アスカ「あー、バカシンジはあのバカ二人と遊ぶとか言ってたわねぇ……。ったく、あたしが飢え死にしたらどうするのよ。ホントにバカなんだから」
ペンペン「クェ?」
アスカ「ミサトはまぁ、残業でしょうねー」
ペンペン「クェクェ」
アスカ「んー。とりあえず、何かのもっと」
アスカ「ふんふふーん。なにかあるかしら……」
アスカ「ちっ。気が利いた飲み物も置いてないじゃない。ホント、使えないわね。あのバカだけは。牛乳でものみましょ」
ペンペン「クァー!」
アスカ「はいはい。あんたはこれでしょ。あんたもミサトも好きよね」ポイッ
ペンペン「クァー」
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アスカ「よっこいしょっと。面白いテレビでもやってるかしら」ピッ
ペンペン「クァックァッ」ゴクゴクッ
『今、注目のアイドルグループがこちらの5人です』
『どうもー!』
アスカ「はっ。これが日本のアイドルぅ? レベル低すぎ。あたしのほうが何百倍も可愛いじゃない」
ペンペン「クェ?」
アスカ「歌もぜんっぜん、ヘタだし。ダンスなんて幼稚園のお遊戯のそれと同じね」
ペンペン「クェー?」
アスカ「なによ? 信じられないの?」
ペンペン「クァー」
アスカ「いいわ。それならペンペンだけに見せてあげようじゃない。なにをやらせても天才アスカ様の実力をね」
ペンペン「クェー」
アスカ「ミュージック、スタートっ」
アスカ「タララーラー、タラーラー……」
アスカ「かなしぃーひびーがぁーかせきぃーかわーるよぉーもうすぅぐー」フリフリ
ペンペン「……」
アスカ「さいごぉーのざんげぇーもかなわないならぁー!」フリフリ
アスカ「いつかぁーじだいのよるがあーけーるー!」
アスカ「せかいよーまぶたーをとじてぇ~え~」
ペンペン「クァ?」
アスカ「こころよげんしにもどれぇー」
アスカ「はぁー。まぁ、こんなところね。オーディエンスがペンギン一羽だけっていうのはちょっとつまんないけど」
アスカ「というか、あたしって日本でアイドルとしてもフツーにやっていけるんじゃない?」
アスカ「ふふ。そうねー。あのバカシンジの手の届かない存在になってやれば、あたしの価値にも気が付くはずよ」
アスカ「オーディションでも受けてみようかしら」
アスカ「ねえ、ペンペンもそう思わない?」
ペンペン「クェー」
シンジ「……ただいま」
アスカ「……おかえり」
ペンペン「クェー」
シンジ「ちょっと待っててね。すぐごはんの用意するから」
ペンペン「クァー!!」
アスカ「……」
シンジ「今日はペンペンの大好きなものを買ってきたよ」
ペンペン「クァー!!!」バタバタ
アスカ(見られた……? いや、でも、今さっき「ただいま」って言ったし……)
シンジ「そういえば昨日の残りがまだあったような」ガチャ
アスカ(別に普通だし、多分大丈夫よね。あたしも普通にしていればいいわけだし)
アスカ「ちょっとー、バカシンジ。いつまで遊んでるわけぇ? あたしが飢え死にしたらどう責任とってくれるのよ」
シンジ「どうって言われても……。今日は少し遅くなるってちゃんと伝えたじゃないか」
アスカ「そんなの関係ないわよ。あたしがお腹空いたって言えば、すぐに食事ができるようにしなさいよね」
シンジ「もう。アスカってほんと、自分勝手だよね」
アスカ「はぁ? 料理はあんたの仕事で――」
シンジ「ダンスは確かに可愛かったけど」
アスカ「……」
シンジ「15分もあればできるから、待っててよ」
アスカ「ねえ、シンジ?」
シンジ「なに? もう追加でメニューは増やせないよ」
アスカ「見たの?」
シンジ「何を?」
アスカ「見たんでしょ?」
シンジ「だから、何を?」
アスカ「正直に言いなさいよ!! 今、ダンスはどうのっていったじゃない!!」
シンジ「え? 前に一緒にダンスの訓練をしたじゃないか。そのときの話だよ」
アスカ「あ。そうなの。なら、いいけど」
シンジ「変なアスカ」
アスカ「うっさいわね。はやく作りなさいよ」
シンジ「うん」
アスカ(なーんだ。やっぱり踊り終わった直後に帰ってきてたのね。はぁーよかった。あんなところバカシンジに見られたら一生の恥よ)
シンジ「けど、歌はもう少し練習したほうがいいかもしれないね」
アスカ「……」
シンジ「よっと」
アスカ「……シンジ」
シンジ「なに?」
アスカ「歌の練習って、どういうことよ」
シンジ「え? 今度、音楽の授業で歌のテストがあるじゃないか。その話だけど」
アスカ「あ、ああ。そんなのあった?」
シンジ「あったよ。忘れちゃったの?」
アスカ「そう……。すっかり忘れてたわ」
シンジ「しっかりしないと。あんな歌じゃ追試になっちゃうかもしれないよ」
アスカ「まぁ、あたしならヨユーで合格でしょうけど」
シンジ「天才だもんね」
アスカ「わかってきたじゃない。ほら、その天才に早くごはんを出しなさいよね」
シンジ「わかってるよ」
アスカ「んー。歌のテストかー。特に気にすることはないわね」
シンジ「どうぞ」
アスカ「まってました!!」
シンジ「ペンペンも」
ペンペン「クァー!!!」
アスカ「はむっ。むー……。今日は75点」
シンジ「あはは。ありがとう」
アスカ「75点で満足するなんてアンタ、バカぁ? 男なら100点を目指しなさいよね」
シンジ「そういうアスカは、60点ぐらいだけど」
アスカ「は? なにが?」
シンジ「なんでもない」
アスカ「何が60点なのよ。現代文のテストのことなら日本語が分からなかっただけって言ってたでしょ」
シンジ「あれは30点ぐらいじゃなかった?」
アスカ「数学の話?」
シンジ「そうかも」
アスカ「あっそ」
ミサト「ただいまー!!」
シンジ「おかえりなさい、ミサトさん。遅かったですね」
ミサト「もー、人遣いが荒いったらないわねー」
シンジ「どうぞ」
ミサト「んー! シンちゃん、きがきくぅー! いただきまーす!!」ゴクゴクッ
ミサト「ぷっはぁー!! さいこー!!!」
アスカ「ホント、おっさんね」
ミサト「あんたもすぐにこうなるのよん」
アスカ「絶対にならない」
シンジ「そんなことするとアスカのファンが泣いちゃうよね」
ミサト「ファン? なに、アスカにファンなんているの?」
アスカ「ハンっ。いるにきまってるじゃなーい。この容姿端麗のアスカ様に靡かない男なんていないんだから」
ミサト「ほー。わっかいうちだけだと思うけどぉ」
アスカ「若さに嫉妬ぉ?」
シンジ「テレビでも見ようかな」ピッ
アスカ「ところでシンジー? あたしのファンって誰のこと? あんたも含まれてるわけ?」
シンジ「あ、今注目のアイドルグループだって」
アスカ「あぁ? こんなのが好みなの? 趣味わるぅ」
ミサト「シンちゃんだってお年頃なんだし、好きなアイドルの一人や二人いるに決まってるでしょ」
アスカ「どいつもこいつもあたし以下じゃない。これでアイドルなんて笑わせてくれるわね」
ミサト「まぁ、確かにアスカのほうがちょっちレベルが高いかもね」
アスカ「でしょー?」
ミサト「意外とアスカってアイドルで成功しちゃうんじゃない?」
アスカ「嫌よ。こんな恥ずかしい格好を衆目に晒せるわけないじゃない」
シンジ「そうなの?」
アスカ「確かに歌も踊りも完璧にこなせる自信しかないけど、あたしはこんなチャラチャラしたことなんてやりたくないもの」
シンジ「そうなんだ……」
ミサト「あら、シンちゃん。残念そうね。もしかしてアスカにアイドルデビューしてほしかったわけ?」
アスカ「そうなの?」
シンジ「あ、いえ。そういうわけじゃないんです。アスカがそういうとは思わなくて」
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