左衛門佐「むぅ……というかやけに反応が薄いな……？」

エルヴィン「いや……実は、今さっきまで自分の誕生日を忘れててな……」

カエサル「な、何だそれ……」

おりょう「本当にエルヴィンは自分のことには疎いぜよ」

エルヴィン「いや……だが祝ってくれるのは素直に嬉しいぞ。ありがとう、気持ちだけ受け取っておく」

カエサル「気持ちだけって……ならプレゼントである私達は！？」

エルヴィン「どう受け取れと言うんだ！？」

左衛門佐「三日三晩考えたプレゼントなんだぞ！？」

エルヴィン「その結果がこれなのか！？いや嬉しいが！」

おりょう「私達は人を祝うことにあまり慣れてないというか……互いの誕生日を知ったのもつい半年前ぜよ」

カエサル「うむ……その、正直プレゼントと言っても何を渡せばいいか分からないんだ」

左衛門佐「武部殿やウサギさんチームのように『女子！』という感じではないし……」

エルヴィン「それで思いつかなかったからなのか……？」

カエサル「ち、違う！ちゃんと真面目に考えたぞ！」

おりょう「そうぜよ！軍装を渡すにしても……なぁ？」

左衛門佐「だから今日は一日私達はエルヴィンの言いなりというわけだ！」

エルヴィン「言いなりって……」

カエサル「その……私達らしいプレゼントとは何だろうと私達なりに悩んだんだが……」

おりょう「何かを渡すにしても、他の誰かよりエルヴィンを喜ばせることが出来るかは分からない」

左衛門佐「だから今日は我々が一日中エルヴィンの近くに居てやろうと思ってな」

エルヴィン「……とは言ってもいつも一緒にいるだろう？」ｸｽ

カエサル「それはそうだが……で、でも今日は一日エルヴィンが主役だぞ？」

左衛門佐「我々にして欲しいことがあれば何でも言ってくれ」

エルヴィン「ふ……そうか、何だかお前達に1本取られた感じだな」ﾊﾊ

おりょう「それで、エルヴィンは私達に何を望むぜよ？」

エルヴィン「ん、そうだな……」



エルヴィン「その……じゃあ、卒業までずっと4人で居てほしい……とか」ﾎﾞｿ

おりょう「エルヴィン……」ｳﾙｳﾙ

カエサル「うぅ……そんなこと言わなくたって私達はずっと……！」ｳﾙｳﾙ

左衛門佐「……ってちっがーう！！！」ｶﾞﾀｯ

エルヴィン「な、何だ！？」

左衛門佐「いや、私だってずっと4人で居ることは約束するぞ！だがな！もっとこう……あるだろう！？」

エルヴィン「例えば？」

左衛門佐「何が欲しいとかあれこれして欲しいとか！もっとプレゼントらしくというかだな……というかそういうのは最後に言うものじゃないのか！？」

エルヴィン「し、仕方ないだろ……一番大切なことを先に言っておかないと気が済まないんだ……」

左衛門佐「た、大切って……そうか、それなら仕方ないな……」ﾁｮﾛﾛｰﾝ

おりょう (ちょろすぎるぜよ)

カエサル「それで、他には何をして欲しいんだ？」

エルヴィン「んん……あ、夕方にトマトと人参買ってきて欲しいんだが」

左衛門佐「またそういう……」

おりょう「ま、まあエルヴィンらしいといえばらしいぜよ……」

エルヴィン「すまない、改めて考えてもあまり思いつかなくてな……」

カエサル「……そうか」

おりょう「どうしたぜよカエサル？」

カエサル「……エルヴィン！」

エルヴィン「なんだカエサ……ふぎゅ！？」

カエサル「よーしよしよし」ﾓｯｷﾞｭｰ

エルヴィン「ふぐぐ……突然どうしたんだ……！？」

カエサル「エルヴィンはもっと人に甘えてもいい！」

エルヴィン「甘、え……？」

カエサル「甘え方が分からないというのも分かるが、せめて私達4人のときだけは本音でもなんでも全部さらけ出してほしいんだ」

左衛門佐「……その通り、私達はソウルメイトというやつだからな」

おりょう「我々4人の間に遠慮などいらんぜよ」

エルヴィン「みんな……」

エルヴィン「私はあまり甘えるということに慣れてなくてな……」

カエサル「なら、私達で慣らしていけばいいんだ」

左衛門佐「今日ばかりは子供の頃に戻った気分でいてもいいんだぞ」

おりょう「私達が世話をする……という言い方は合ってるか分からないが、存分に甘えて欲しいぜよ」

エルヴィン「小さい事でもか？」

カエサル「勿論だ」

エルヴィン「くだらない事でも？」

左衛門佐「さっきは否定したが……やはり今日ばかりはエルヴィンが主役だからな」

エルヴィン「甘える、というよりは我が儘になると思うんだが？」

おりょう「我々の間じゃ我が儘なんて今に始まったことじゃないぜよ」

エルヴィン「……ありがとう、まあ……カエサル達のおかげで少しは分かった気がするな」

カエサル「それは良かった。それで？私達はもう準備は出来てるぞ」

エルヴィン「そうだな……じゃあ今はしばらくこのままでいさせてもらおう」

カエサル「この格好のままでいいのか？」

エルヴィン「ああ、なんだか落ち着くんだ」

左衛門佐（さり気なく胸に埋もれるあたり流石だな……）

おりょう「なんだか子供をあやしてるみたいぜよ」

カエサル「はは、まさかこのまま寝る気じゃないだろうな？」

エルヴィン「…zzz」

カエサル「寝てるし！？」

左衛門佐「流石に日付が変わっているからな……」

おりょう「明日も皆から祝われるだろうからゆっくり寝かせておくぜよ」

カエサル「はぁ……このままじゃいつもと変わらないじゃないか……」ﾔﾚﾔﾚ

エルヴィン「すぅ……」

カエサル (……安心できる寝顔だな)

カエサル「……ときどき寂しくなるよな」

左衛門佐「どういうことだ？」

カエサル「親元を離れてこうやって学園艦で暮らすの。昔は家族が祝ってくれてたけど」

おりょう「誕生日になると毎年電話は来るが……学園艦の停泊の都合もあって直接会うことはほとんど無いぜよ」

カエサル「だからこそ、心の拠り所っていうのが必要なのかもしれないな」

左衛門佐「そうだな……」

カエサル「……よし、2人も来い！このまま4人で寝よう！」

左衛門佐「……って、私達も混ざるのか！？」

カエサル「こういうのはノリと勢いが大切ってひなちゃんが言ってた」

おりょう「突貫ぜよ！」ﾄﾞｽｰﾝ

カエサル「おいコラ！いくらノリと勢いと言ってもそこまで勢いはっ……！っていうか重っ！？」ｽﾞｼｯ

おりょう「失礼な奴ぜよ……ほら、近う寄れ左衛門佐」

左衛門佐「ぅ……き、今日だけだぞ！」ﾋﾟﾄ

カエサル「やけにしおらしくないか？」

左衛門佐「こういうのは気恥しいんだっ！」

カエサル「せっかくだし、起きたら家にグデーリアンでも誘ってみるか。この前からエルヴィンの誕生日プレゼント準備してたみたいだし」

左衛門佐「グデーリアンは大層なプレゼントを用意してそうだな……」

おりょう「これは私達も規模の大きいものを用意するしかないぜよ……」

カエサル「はは、程々にな……」

カエサル「………」ﾅﾃﾞ…

左衛門佐「来年はもっと計画的かつ盛大に祝いたいな」

おりょう「花火でも打ち上げるぜよ？」

カエサル「はは、期待してまってるんだぞエルヴィン？」ﾂﾝﾂﾝ

エルヴィン「んん……」ﾓｿﾞ…

カエサル「………」ｸｽ

カエサル「……起きたらみんなででエルヴィンのプレゼントでも買いに行くか」

左衛門佐「なんだ、結局行くのか」

カエサル「なんだかスッキリしなくてな……」

おりょう「丁度学園艦は停泊してるし、アウトレットでも行くぜよ？」

カエサル「ちゃんと営業してればいいんだけどな……はは」

カエサル (おめでとう、エルヴィン)

カエサル (……これからも、ちゃんと毎年私達が祝うからな)

エルヴィン「…zzz」