【モバマス×龍虎の拳外伝】不破・茜「うおおおおおおおおお!!」 (452)

【モバマス×龍虎の拳】リョウ・サカザキ「俺がアイドルのプロデューサー?」
【モバマス×龍虎の拳】リョウ・サカザキ「俺がアイドルのプロデューサー?」 - SSまとめ速報
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【モバマス×龍虎の拳】リョウ・サカザキ「俺がアイドルのプロデューサー?」【2】
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このSSは上記のクッソ長いSSの続編、番外編となります。
モバマスと龍虎の拳~餓狼伝説シリーズのクロスオーバーです。



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いきなり貼り損ねた


【モバマス×龍虎の拳】リョウ・サカザキ「俺がアイドルのプロデューサー?」【2】
【モバマス×龍虎の拳】リョウ・サカザキ「俺がアイドルのプロデューサー?」【2】 - SSまとめ速報
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(カッコよく乱舞する不破さん)

THE GREAT MAN


(かわいく乱舞する茜さん)

THE HOT BLOODED MAIDEN


ART OF PRODUCE
龍虎のP外伝

加蓮『ふふ……久しぶり……アカネちゃん』

茜『ああ!!カレンちゃん!!心臓の病気の手術中に突然行方不明になって……無事だったんだね!!良かったぁ~……』
タタタッ
ギュッ

加蓮『……』

茜『……カレンちゃん?』

ガチャ

リョウ「戻ったぞ」

有香「ただいま帰りました!」

美波「あ、坂崎さん、有香ちゃん、お帰りなさい」

悠貴「おかえりなさいっ!」

加蓮「あ、2代目Mr.KARATEプロデューサーだ」

リョウ「ああ、ただいま……加蓮、もう俺が悪かったからその呼び方は勘弁してくれ……ん?みんななに観てるんだ?」

拓海「アレだよ、加蓮のドラマデビュー作のアレ。タイトルは……なんつったっけ」

加蓮「『ダイエット』だよ」

リョウ「ああ、あの思い出の深夜ドラマだな」

ロバート「せやけど、突飛な展開が徐々にウケて、放送中の視聴率はイマイチやったけどDVDがジワ売れしてる、コアなファンがついとるドラマや」

悠貴「今ちょうど悪の組織に改造手術を受けて豹変した加蓮さんが登場したところですよっ!」

加蓮『ふふ……アカネちゃん、私はもうあなたの知ってるカレンじゃないの』

茜『え……どういうことなの!?』

加蓮『私は生まれ変わったの……あの方の手術で、文字通りね!』

茜『生まれ変わった……!?』

加蓮『ふふ……そう……こういう風にね!』
カッ
ズビビビ

ドカーン

茜『……て、手から光線が!!』

加蓮『あはははははは!もう弱かったアタシはどこにもいない!出来ないことは何もないんだ!』

茜『どうして……あの優しかったカレンちゃんが、どうして!!カレンちゃん!!正気に戻って!!カレンちゃああああああん!!』

加蓮『アタシはこの力で欲しいものは全て手に入れる。そして、あの方の世界を実現するの』

加蓮『邪魔をするなら……アカネちゃん、あなたでも……容赦はしない』
ザッザッザッ

茜『カレンちゃん……どうして…カレンちゃん……』

茜『うわあああああああああん』

ナレーション『突如として変わってしまった最愛の友、カレン。アカネとカレン、彼女たちの今後は、カロリー計算をしても、わからない……』

ナレーション『次回、第11話 悪玉コレステロール』

リョウ「……もの凄い衝撃の展開だな」

ロバート「ホンマ100メガショック級の展開や。何が衝撃って、この話の前半パートまでは普通の学園モノやったのにラスト10分でこの急展開やからな」

美波「本当に……ついほんの数分前まで体重が何キロ減った、とかの話してたのに……」

拓海「途中の加蓮の手から光線が出る時も……取ってつけたようなやっすいCGだったなありゃ」


加蓮「すっごい低予算だったらしいからね」

悠貴「ですけど、豹変した後の加蓮さん、ノリノリの演技でしたねっ!」

加蓮「そう~?ふふ、まっ大女優カレンちゃんならこの程度の演技はね♪」

拓海「豹変した後の方がコイツの素だからな。そりゃイキイキもするわ」

加蓮「拓海も何かのオーディション受ければ?ヤンキーの役とか不良の役とかならずものの役とか」

拓海「全部同じだろうがコラァァァァァァ!!」

加蓮「わお♪拓海、上手い上手い♪」

拓海「演技じゃねェ!!」

有香「……ですけど、加蓮ちゃんもそうですが茜ちゃんもお芝居上手ですね」

拓海「ああ、こう言っちゃアレだけど、意外だよな。なんつーか、ずっとあの調子の元気一本かと思いきや……」

美波「動揺してるところも、最後に泣き出してしまうところも、凄く感情が籠っててちょっと涙出ちゃった」

加蓮「そうなんだよね。茜は普段はあんな感じだけど、撮影中はすごく役に入るんだ」

リョウ「そう言えばこのドラマのオーディションの時も彼女は良い演技をしていたと聞いたな」

加蓮「それでさ、一回茜に聞いた事あるんだよね。なんか演技の秘訣とかあるの?ってさ」

有香「それで、茜ちゃんはなんと?」

加蓮「そしたらさ、『私は全てに全力で体当たりしているだけです!!それが私で、そして不破プロデューサーとの約束ですから!!!』だってさ」

拓海「わかんねえ」

悠貴「不破プロデューサーって……あの凄い筋肉の人ですよねっ?一回LIVE会場でお見掛けした……」


加蓮「そうそう。私は茜と撮影で一緒になること多かったから何回も見たんだけど……正直ちょっと怖いからあんまり近づかないようにしてたんだよね……叫び声が凄いし」

美波「だけど、茜ちゃんはとても信頼してるみたいだし、良い人なんじゃないかな?」

ロバート「ていうか、そもそも何であんな不破みたいな男がアイドルのプロデューサーやっとんねん。どう見ても世界観というか、作風がちゃうやろ」

拓海「それはお前らも人の事言えないだろ」

リョウ「……」

ロバート「……」

有香「ですが、あの肉体、それに威圧感……見るからに只者ではない……達人の風格を感じます」

拓海「いろんな意味でな」

加蓮「坂崎さん、あの不破って人とは知り合いなんでしょ?どういう人なの?」

リョウ「不破か……奴とは一度グラスヒル・バレーで闘った事があるだけで、深く知っている訳じゃないんだ」

有香「グラスヒル・バレー……香澄ちゃんと最初に出会った地ですね」

リョウ「ああ、そうだ。ちょうど香澄と最初に会った日の前日だったか。俺を追ってきたと言い、いきなり闘いを仕掛けられた」

美波「香澄ちゃんの時と同じ流れですね……」

リョウ「闘った感想としては……腕は立った。恵まれた体躯から繰り出されるパワー溢れる攻撃と、忍者らしいトリッキーな技。闘りにくかった」

リョウ「だが、それ以上に感じたのは、奴の拳に籠った殺意……あいつの拳は明らかに憎しみに染まっていた」

有香「極限流に恨みが?」

リョウ「俺もそう思った。だが奴は如月影二を追っているだけだと。奴に、全てを奪われたのだと言っていた」

拓海「如月影二?」

リョウ「ああ、この男も以前、闘ったことがあってな。己の最強を証明する為に極限流を狙ってきた。こいつも凄腕で、しかも執念が尋常じゃなかった。恐ろしい相手だったよ」

リョウ(まぁ、影二もプロデューサーをやってたんだが……)

リョウ「不破が使っていた技の中には影二が使っていたものに似た技もあった。恐らくは元同門だ」

ロバート「同門同士でのイザコザと言えば……」

リョウ「ああ、恐らく跡目争いだろう。不破と影二の間で流派の悶着があった……というのが俺の予想だ」

有香「……それじゃあ坂崎プロデューサーはその争いに巻き込まれる形で襲われたということですか?」

拓海「はた迷惑な話だな」

リョウ「最強を目指すのは格闘家としての本能だ。拳を振るい続ける以上はこういった闘いは避けては通れないさ」

リョウ「……とは言え、不破の闘う理由については本人から直接聞いたわけでもなし、真相はわからん」

リョウ「だが、ひとつだけ言えるのは俺が会った時の奴はアイドルのプロデューサーなんて……というより他人の為に動くような男ではなかったはずだ」

ロバート「何かしらの心境の変化があったのか、それともなにか狙いがあるんか……」

加蓮(……今までどんな人か聞いた事なかったけど……話を聞く限りだと、茜ってけっこう危ない人といるんじゃないの?)

リョウ「まぁ、全部憶測だ。詳しくは本人たちのみぞ知るってところだな」

加蓮「……」

数日後
ファストフード店

茜「いやあ!!!加蓮ちゃん、今日はお誘い頂きましてありがとうございます!!!」

加蓮「こっちこそ急に誘ってごめんね。あと一応ここお店の中だからもうちょっと声小さくならないかな?」

茜「ああ!!これは失礼しました!!」

加蓮「……」

茜「加蓮ちゃんはポテトだけでいいんですか!?このビッグバーガーとか!!ボリュームがありますよ!!」

加蓮「う、うん、大丈夫……それより、今日はあの、プロデューサーは一緒じゃないの?」

茜「不破プロデューサーですか?今日は私がオフなので一緒じゃないですよ!もしかして不破プロデューサーに御用でしたか!?」

加蓮「いや、そういう訳じゃないんだけど……ねえ茜、あの不破って人とはそもそもどうやって知り合ったの?なんか接点というか、理由がわからないんだけど……」

茜「私と不破プロデューサーの出会いですか!そうですね!道を走っていた私ですが、不破プロデューサーに呼び止められまして!」

加蓮「う、うん」

茜「そしてそこで私が不破プロデューサーに全力タックル!!」

加蓮「うん、う……うん?」

茜「しかし不破プロデューサーはビクともしません!!そして最後には私は天高く放り投げられてしまいました!!!」

加蓮「ちょ、ちょっと待って、え?」

茜「そうして私たちは共にトップを目指す事になったのです!!!!」

加蓮「わかんないよ!」

茜「そうですか!?あはは……すみません!では詳しくお話しますとですね!!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~


茜「うおおおおおおおお!今日も夕日に向かってダーーーーッシュ!!!」
ドドドドドドド

茜「何も!!何も聞こえない!!今の私は走るだけのモノです!!!」
ドドドドドド

――――――待たれよ

茜「ん?」
ドドドドドドド


「 そ こ な 娘 ! ! ! 待 た れ よ ! ! ! ! 」
ビリビリビリビリ

茜「はっ!!誰かが私を呼んでいる!?あそこに立っている頭巾の人でしょうか!?」

茜「はいっ!!なんでしょうか!!!?今私の事を呼びましたね!!!?」

不破「うむ。娘……最早言葉は要らぬ。……来い」
バッ

茜「……なるほど!わかりました!!」
ザッ

茜「では行きますよ!!全力ダーーーシュ!!!」
ドドドド

茜「アンドターーーーーックル!!!」
ズドン

不破「……」
シーン

茜「び、ビクともしません!!!」

不破「それで全力か?」

茜「なんの!まだまだ!!」
ドドドドドド


ズドン
ドドドドドドド
ズドン
ドドドドドド
ズドン

茜「はあ、はあ、はあ……」

不破「さあどうした!!そこまでか!!!」

茜「うう……うわああああああああああああ!!!」
ドドドドドドドド

ズドオン!!
不破「……ふっ」
ニヤリ
ガシッ

不破「はっ!!」
ブオン

茜「!!!?」

茜(な、投げられたんですか!?)
フワ

茜(あ……高い……落ち……)
ヒュ~


ガシッ

不破「……良い体当たりだった。凄い漢だ」

茜「あ……!」

不破「拙は不破刃という。娘よ、名をなんという」

茜「は、はい!!日野茜といいます!!!」

不破「そうか。茜よ、今のが高みだ。そしてそれより遥かに高いところに頂点がある」

茜「頂点……トップですね!!!」

不破「茜よ、この拙と共にアイドルのトップを目指す覚悟があるか?」

茜「はい!!!監督、宜しくお願いしますね!!!」

不破「監督ではない、拙の事は師範と……いや、違うな。プロデューサーと呼べ」

茜「はい!わかりました不破プロデューサー!!!」

不破「そうだ。では往くぞ茜!!!んんん……」

不破「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああ!!!!!」

茜「ボンバーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

ビリビリビリ


ヒイ!ナンダナンダ!ジシンカ!
ワンワン!ワンワン!

~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

今日はここまで

茜「……という事があったのです!!」

加蓮「ごめん、詳細に話してもらったのに全然わかんないんだけど!?むしろ最初に茜がしてくれた説明が全てだったんだけど!?」

茜「はい!!これが不破プロデューサーとの出会いの全てですから!!」

加蓮「……ねえ、茜。あの人ってちゃんとプロデューサーしてるの?いや、仕事してるのは私も見たことあるけど……その……まともなの?」

茜「?不破プロデューサーはすごいプロデューサーですよ?いつも私を導いてくれて、迷った時も助けてくれます!」

加蓮「そうなの……?」

茜「はい!!あれは私がアイドル活動を始めて間もない時……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~

不破「茜よ、今日はロケの仕事だ。生放送のお茶の間に、肉まんの美味さを全力で伝えよ」

茜「おお!!!食レポのお仕事ですね!!!ところでレポってなんでしょう!!!?」

不破「うむ。レポとはレポートの事だ。現地に取材し、その内容や状況を観察し、報告することだ」

茜「なるほど!!不破プロデューサーは博識ですね!!」

不破「観察、取材は重要だ。拙のこの忍の密書にも今まで観察してきたありとあらゆる情報が記されておる。……まぁ他人に公にする事はないがな」

不破「だがお前は難しい事を考えるな。感じたままを、全力で表現すればそれでいい」

茜「はい!!ごはんをおいしく食べるのは得意です!!!それを表現すればいいんですね!!!」

ディレクター「はい、君が日野茜ちゃんね。元気に、ちゃんと味を伝えてね。生放送だけど硬くならなくていいから」

茜「はいっ!!!私にお任せくださいっ!!!」

カメラマン「はい、それじゃあ本番行きまーす」

茜「こんにちわー!私は今商店街の肉まん屋さんに来ていまーーす!!」

茜「はい、ここで出てきましたのは……そう!!肉まんです!!!すごいですねこれは!!もうすっごいおいしそうな肉まんです!!」

茜「それでは早速食べてみたいと思いますっ!頂きまーす!はむっむぐむぐ……」

茜「……おいしーーーーーーーーーい!!!すっごいおいしいです!うわあああ!!おいしい!!もっと頂いていいですか!!むぐむぐむぐ……おいしいいいい!!」
ガツガツ

不破(うむ、実に美味そうだぞ、茜!)

ディレクター(ちょちょちょ!食べてばっかじゃなくて具体的な感想言えよ!おいしい以外に!)

茜「えっ!!おいしい以外の感想ですかっ!?え、ええっと……じゃあ、うまーーーーーーいっ!!」

ディレクター(同じだから!語彙すくなっ!!)

茜「うまい、うまーーい!!ごちそうさまですっ!おいしかったなーー!……でも食べきってしまうと残念な気持ちになってしまいますね……」

おばちゃん「もう1個食べるかい?」

茜「えっ、もう1つ食べていいんですかっ!?やったーーー!ありがとうございますっ!いただきます!もぐもぐ……おいしーーーーい!!」

おばちゃん「うんうん、いい食べっぷりだねえ」

ディレクター「……」

不破「茜、良い食べっぷりだったぞ。実に美味そうだった」(天逆投のポーズ)
グッ

茜「ほんとうですかっ!!ありが……」

ディレクター「ちょっとちょっと!どうなってんの!?」

茜「え?」

ディレクター「え、じゃないよ!結局ただひたすら食べてるだけの絵になっちゃったじゃん!テレビ的にNG!大失敗よ!」

茜「すっ、すみませんでした!!私、ついおいしくて!!」

不破「……待て。今回の目的は視聴者に美味さを伝えることであろう。ならば、先ほどの茜のレポートはこれ以上ないほど美味さを伝えていたであろうが」

ディレクター「……あのねえ、プロデューサーさん。この仕事はそんな簡単なものじゃないの。ただ美味い美味い言うだけだったら誰だっていいんだよ。ちゃんと細かい味の感想が言えてこそプロのお仕事なの」

不破「……話にならんな。真に人の本能に訴えかけるものはそんな小賢しい技術ではない。そんなものを求めているのなら初めからそのプロとやらに頼むべきだったのだ」

ディレクター「ああそう。……言っとくけど、そんな態度だったらあんた達、今後仕事なんて入ってこないよ?その子まだ新人でしょ?」

不破「見るべき者が見れば茜の良さは理解される。貴様のような3流に心配されるまでもなくな」

ディレクター「……チッ、アイドルが素人ならプロデューサーも素人か。……大体なんで半裸なんだよ。はい、撤収撤収!」
パンパン

不破「……茜、拙らも撤収するぞ」

茜「は、はい……」

数日後

茜「……」

不破「……茜。お前らしい覇気がないようだが。そんな調子でトップが取れると思っているのか」

茜「……はっ、不破プロデューサー……そ、そんな事ありません!!私はいつでも元気ですよーーーー!!あは、あはははは……」

不破「……」

茜「……不破プロデューサー、私の食レポ、どこがダメだったんでしょうか……」

不破「全く駄目ではない。お前は最高のレポートをした」

茜「ですが……ディレクターさんにあんなに怒られてしまって……」

不破「……」

茜「やっぱり元気なだけではいけないんでしょうか……それよりも気の利いたコメントとかを言えた方が……」

不破「茜……」


不破「この戯けが」


茜「えっ……?」

不破「我らが目指すのは何だ?制作側の言う事を聞くだけの使い勝手の良い傀儡か」

茜「い、いえ……」

不破「違うだろう。我らが目指すのは頂点。その頂点を目指すに当たってのお前の最大の武器が、その覇気と勢いであろう」

不破「それなのにお前が全力でぶつかることを躊躇してどうする。そんなお前に何の取柄がある」

茜「……」

不破「三流のいう事など聞く必要はない。お前が自らの武器を、力を最大限発揮出来れば必ずお前は認められるだろう……このようにな」
ピッ

茜「これは、手紙ですか?……あっ、あの時の肉まん屋さんからですか……ええっと……」


『美味しそうに食べてくれてありがとう……茜ちゃんの気持ちいい食べっぷりでお客さんが増えました』


茜「不破プロデューサー、これって……」

不破「そうだ。お前の食レポは成功していたのだ。それにあれから別の食レポの仕事も来ている。失敗したと思っていたのはあの三流ディレクターだけだ」

茜「……いぃぃぃやぁったぁーーーーーっ!良かった、本当に良かったですっ!!私、もうこれからどうしたらいいのかわからなくって!!」

不破「……だが、表現力や演技力を身に付けるのをお前が必要だと感じたなら、それを習得する努力は悪いことではない。そのような小技も上手く使えば大きな武器になるかもしれん」

茜「はいっ!私、いろいろな事を学んでいきたいです!もちろん全力で!!そして体当たりで!!!」

不破「……茜!!」

茜「はいっ!不破プロデューサー!!!」

不破・茜「うおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

茜「……と、このように不破プロデューサーは的確に私を導いてくれるすごいプロデューサーなんです!」

加蓮「……う、うん、最後叫んだのは意味わからないけど確かにちゃんとしてるっぽい……」

加蓮(やっぱり私が心配しすぎなのかな?)

加蓮(今の話にしても、そのあと正しく指導をした結果が今の茜の演技力なんだろうし……あの人見た目がアレなだけで優秀なプロデューサーなのかも)

加蓮「うん、そうなんだ……ごめんね茜、いろいろ聞いちゃって」

茜「いえいえ!それより、私も加蓮ちゃんとプロデューサーの出会いの話が聞いてみたいです!!」

加蓮「ええ!?わ、私のは、別に……」

茜「ぜひぜひ!さあさあ!!」

加蓮「~~~……」

今日はここまで

加蓮「……という訳で、茜は特に危険な目に遭ってもいないし、不破って人もまともみたいだよ」

拓海「恰好以外はな」

美波「でもその話を聞く限りだったら本当に熱心で優秀なプロデューサーさんって感じですね」

ロバート「恰好以外はな」

リョウ「そうか……まぁ思えば俺と不破がグラスヒル・バレーで会ってから2年も経ってたんだ。その間に何か心境に変化があってもおかしな話じゃないか」

ロバート「人間は変わるもんやからな、良くも悪くも……ん?」
ペラッ

悠貴「社長さん、どうしたんですかっ?」

ロバート「いや、浜口あやめって娘覚えとるか?」

有香「はい、QOIにも出ていた忍者アイドルの娘ですよね」

美波「彼女がどうかしたんですか?」

ロバート「ああ、その娘が346プロに移るらしい……リョウ、この娘って確か……」

リョウ「ああ……影二がプロデュースしていたはずの娘だ」

拓海「えっ、影二って例の不破のおっさんの因縁の相手だろ。そいつもプロデューサーやってんのか!?」

リョウ「ああ……言ってなかったが実は以前会場で会った……」

拓海「なんでお前の関係者はどいつもこいつもプロデューサーやってんだよ……」

美波「けど、あやめちゃんが346プロに移ったってことは……そのプロデューサーさんも一緒に346に?」

リョウ「いや、奴が組織に所属するような男には思えない……だったら考えられるのは……」

ロバート「影ニがプロデューサーを辞めて、宙に浮いた形のあやめちゃんが346に移った……そう考える方が自然やな……」

リョウ「……アイツの……ギースのようにか……」


リョウ(……何も起きなきゃいいが……嫌な予感がするな……)

影二「……」

不破「……」
シュザッ

影二「……貴様か」

不破「……プロデューサーを辞めたようだな。貴様には荷が勝ちすぎたか」

影二「……貴様には関係のないことだ」

不破「確かにな。だが、恐らくは貴様が己の無力さを痛感しているだろうと思いこうして笑いに来てやったのだ」

影二「……そんなに早死にしたいのならこの場で始末してやる」
ザッ

不破「ふん、良かろう……」
ザッ




茜「……」

茜(不破プロデューサー、いきなり出かけると言っていましたが……)

茜(……何故だかわからないけど嫌な感じがします!!)

茜「……」
タタタッ

不破「食らえぃ!」
ブン

影二「むっ」
スッ

不破「うおあっ!」
ブォン

影二「ふん」
サッ

不破「おのれ、ちょこまかと……!ならばこれならばどうだ!」

不破「真空斬首刀!」
グルグルグルグル

影二「笑止!」
サササササ

影二「相変わらずよな。貴様の技は力任せなばかりでおおよそ精密さが皆無。そのような児戯が拙者に通用すると思ったか」

影二「ふん、しかし真空斬首刀とは聞いて呆れる。大層な名をつけたものだ。そのようななまくらでは案山子の首も落とせぬわ」

不破「貴様!」

影二「ちょうどいい、貴様に見せてやろう……本物の刃の切れ味を」
ヒュン

不破「!!?」

不破(速……)

影二「骨破斬り!!」
ズバ

不破「ぐわあああああ!!」
ブシュウウウ




茜「……なんとなくこちらの方から不破プロデューサーの気配がするんですが……」
タタタ

茜「……あっ!あの猛り狂う背筋はまさしく不破プロデューサー!」

茜「……それと……奥に立っているのは……忍者の方でしょうか?」

茜「……ん?」

茜「……血……!?」


今日はここまで

影二「どうだ?貴様の身体を切り裂く刃の味は……」

不破「ぐ……き、効かぬわ……」
ダラダラ

影二「ふん、それだけ身体を刻まれながらまだ立っていられるとは……貴様のその耐久力……いや、生き汚さだけは認めてやろう」

不破「ぐ……」

不破「うおああああ!!」
ブオン

影二「ハッ」
スカ

不破(なぜ、何故当たらん……!)

影二「何故当たらぬかわからん……といった顔だな」

不破「……!」

影二「単純に貴様の技が大振りなだけという所為もあるが」


影二「だがもうひとつ、決定的な理由がある」

影二「嘗て対峙した時より……今の貴様は踏み込みが半歩浅い」

影二「何故か?簡単な事だ」

影二「貴様は、死を恐れている」

不破「なんだと……!?」

影二「要因は解かる……アイドルだろう」

影二「忌々しいが、拙者も心当たりがあるからな……」


影二(極限流がここ日本を訪れ……なんとアイドル事務所を設立したと聞いた)

影二(我が忍術は天上天下において最強である。故に我を越えるもの、すべてを断つ)

影二(それ故、極限流打倒の為に拙者もアイドルを育てる事にした。そしてそこで同じ忍の道を志す少女に出会った)

影二(彼女は如何に苦しい鍛錬でも拙者についてきた。瞳を輝かせながら)


―――もっと色々教えてください!影二殿!

―――く、苦しい……きつい……けれど、この苦境を乗り越えてこその忍ドルですよね!

―――あやめは…倒れません!影二殿と二人で頂点を取る為に!これぞ、くノ一、最後の意地……

影二(他者との繋がりなど必要ない……影に生きる忍びに家族など無用……)

影二(拙者の思いとは裏腹に、彼女は拙者の心の中に住まうようになった)


影二「ふん!」
バッ

影二「……?」

影二「……」

影二「……!」

影二(だがしかし、気づいてしまった)

影二(拳を振るう時の踏み込み幅が、一昨日よりも昨日よりも、今日の方が狭い)

影二(彼女の存在が大きくなってくるに連れ)

影二(拙者は、闘いの際に前に踏み出せなくなっていたのだ)

あやめ「なんで、どうしてお別れなんですか……?」

影二「邪魔になったからだ。拙者がこれから歩む修羅道にお前はいらん」

影二「だがここまで組んできた情けだ、美城というプロダクションに渡りはつけてある。明日からはそこで世話になるがいい」

あやめ「いやです、影二殿……私は……影二殿が良い……!」

影二「聞き分けのない女だ。……ふん、元より忍びの道に女子など無用だったのだ。本日より拙者とお前は赤の他人」

あやめ「いやだ、いやです……もっとレッスンも頑張ります、きっと貴方の足を引っ張らないよう頑張ります、だから……」

影二「……」

影二「……」
ザッザッザ

影二「あやめよ。同じ道を志すものよ、これからも精進いたせ」


影二(少女の嗚咽の声を背に、拙者はその場を立ち去った)

影二「拙者にはもう恐れるものは何もない」

影二「だが貴様はアイドルという守るべき者を持ってしまった。それ故に死を恐れ、踏み込みは半端になり、最早貴様の児戯が拙者の身体を捉える事は永劫能わぬ」

不破「……!」

影二「……お喋りが過ぎたようだな。だが己が敗因も解からずに死ぬのは無念だったろう、これで安心して逝くが良い」
スッ

不破「……」

茜「不破プロデューサー!!大丈夫ですか不破プロデューサー!!!」
ダダダダ

不破「……茜……」

影二「チッ……邪魔が入ったか」

影二「1週間後……貴様との決着を着けてやる。もし貴様にその覚悟があるならばそれまでに身辺を整えておくがいい」
シュバッ

不破「……」

茜「ハァ……ハァ……こ、こんなに血が……大丈夫ですか不破プロデューサー!」

不破「……案ずるな。大したことはない……」

茜「不破プロデューサー……」

不破「……」

不破「茜……大切な話がある」

茜「!?で、ですがケガが……」

不破「良い。それとも拙の言うことが聞けぬか?」

茜「い、いえ……」


不破「拙は本当はプロデューサーなどではない。影の世界に生きる忍なのだ」

茜「え、ええええええええええ!!!?そ、そんな……!!!」

茜「はっ……不破プロデューサーが時折使う忍隠れ……あれは忍術だったのですか!?」

不破「そうだ。拙とあやつ……如月影二は元々同門だった……」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~

影二「ふんっ」
ズバッ

忍「おお……流石影二殿だ、次期総帥の最有力と言われているだけはある……」

忍B「ああ……技のキレは既に現総帥をも超えたと言われている……」

忍「……だが、強さだけで言えば、もう一人……」

忍B「ああ……」

忍C「うわあああっ」
ドサァ

不破「弱い!貴様、それでも如月流の一門か!」

忍C「う、うう……だ、だが……お前は如月流の技を使っていないじゃないか……」

不破「使うまでもないだけだ。貴様のような軟弱な者など拙のこの鍛え上げた肉体を振るうだけで容易く破ることが出来る」

不破「それに技は後からいくらでもついてくる……一門の総帥には、最強の肉体を持つ者こそ相応しい」

不破「よって、貴様のような弱者は一門には必要ないのだ!出ていけ!」
クワッ

影二「不破……それは貴様が決めることではない。総帥が決めることだ」

不破「影二……ふん、貴様、捨て子だったところを現総帥に拾われたからと言って、もう自分が総帥になったつもりか?」

影二「……なに?」

不破「総帥に選ばれるのは最強の男であるべきだ!そしてそれは影二、貴様ではない!この不破刃だ!!」

影二「……愚かな奴だ。ならばこの場でどちらが強いか思い知らせてやろうか?」

不破「望むところよ……」
ズザッ

忍「ま、不味いことに……あっ!そ、総帥!」

総帥「影二!刃!何をしている!一門内での揉め事は禁止にしているはずぞ!」
ザッザ

影二「ハッ……」
ザッ

不破「……チッ」
ザッ

総帥「……」

数日後

総帥「皆集まっておるな……ではこれより、如月流の次期総帥を推薦する」

影二「……」

不破「ふん……」

忍(順当に影二殿かな……)
ヒソヒソ

忍B(いや、わからんぞ……確かに体躯や肉体の強さでは不破が一番だとする向きもある)
ヒソヒソ

忍(結局は総帥がどう判断されるかだな……)
ヒソヒソ

総帥「では、発表する……儂が推薦するのは……」

総帥「影二、お前だ」

影二「はっ。有り難き……」

不破「ば、馬鹿な!!」

不破「総帥!何故だ!拙の方が影二よりも強い!如月流は最強の忍術、ならばその一門の総帥も最強であらねばならんはずだ!!」

影二「不破、貴様……!」

総帥「……刃、確かにお前の肉体は、或いは影二よりも強いかもしれん」

影二「総帥……!」

不破「で、では……!」

総帥「だが刃、お前は心が備わっておらん。それでは一門を背負って立つ総帥の器ではない」

不破「……ふざけるな」

不破「ふざけるな!!何が器だ、最初から自分が拾ってきた影二を後継者にしたくて仕方がなかったのであろうが!」

影二「貴様!!」

不破「もうよい!このような下らん流派、こちらから願い下げだ!」
バッ

不破「だが、覚えておけよ……いずれ貴様らに目にもの見せてくれるわ!!」
ザッザッザ

影二「おのれ、痴れ者が……!この場で始末してくれる……!」

総帥「良い、影二、放っておけ」

影二「……はっ」

影二(不破……一門の恥さらしめが……!)

不破(影二……見ておれ……!必ずや貴様に復讐してやるわ……!)

~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

不破「そうして拙は下野し……修行の旅に出かけた。全ては如月影二、拙の全てを奪ったあやつに復讐するために」

茜「……」

不破「その折だ。あの影二が日本でアイドルをプロデュースしているという情報を握ったのは」

不破「既に下野してから数年、そろそろ影二を討つために襲撃計画を練っていたところに入ってきたその情報は、拙にまたひとつ計画を加えさせた」

不破「それは、アイドルのプロデュースでも奴を負かすというものだった」

不破「思えば拙は当時の如月流総帥から器ではない、と推薦から外された」

不破「アイドルのプロデュースとは即ち人材の育成に他ならない。つまりプロデュースで奴を負かせばそれは器として拙が奴を上回っている証左になる」

茜「……?」

不破「わからぬか。ではわかりやすく言えば、茜。拙がお前をプロデュースしてきたのは、単に影二への復讐心から来た当てつけに過ぎんという事だ」

茜「……!!」

不破「……だが、あやつがプロデュースを降りた以上、それも終わりだ」

茜「……え?」

不破「茜。我らの関係は今日までだ。明日からは別のところで世話になるといい」

茜「……いや、え!!?わからない……わからないですよ不破プロデューサー!!」

茜「どうして……一緒にトップを目指してくれるって、言ったじゃないですか!!!」

不破「……はっきりと言わねばわからぬか」

不破「お前はもう拙にとって不要、いや、邪魔なのだ!!!」

茜「……!!!!」

不破「……明日からは極限流の事務所を頼るが良い。あそこならお前を邪険には扱わんだろう」

茜「うそ……だ……」

不破「さらばだ……もう二度と会う事もなかろう」
シュザッ

茜「……そんな……うそ……うっ」

茜「うわあああああああああああああああん」



リョウ「……」
タッタッタ

不破「リョウ・サカザキ……」
シュザ

リョウ「ん、不破か……!?その傷はどうしたんだ!?」

不破「拙の事はいい……それより、茜の事を頼む」

リョウ「なに?いったいどういう事だ」

不破「拙は、影二と決着を着ける。……さらばだ」
シュザッ

リョウ「な……おい、不破!待て!」

リョウ「……やっぱり何か悪いことが起こっちまったようだな……」

今日はここまで

翌日

ロバート「……なるほどな、事情は分かったからウチにいてもらう分にはかめへんけど……」

茜「……」

拓海「ったく、最悪じゃねえか半裸忍者」

美波「復讐のための当てつけだなんて……」

加蓮「茜……大丈夫?」

茜「……はい……」

悠貴(どう見ても大丈夫じゃなさそうです……)

拓海「おい坂崎……なんとかなんねえのか?」

リョウ「……難しいな……本人の考えだ」

リョウ(影二も……不破も……そしてギースもそうだった)

リョウ(難しい道かもしれない……だが……必ずしも片方を選ばなければならないのか……?)

数日後

茜「……おはようございます!」

美波「茜ちゃん、おはよう」

加蓮「茜……今日からレッスンに参加するって聞いたけど……大丈夫なの?」

茜「あはは……いつまでも落ち込んではいられませんから……それに、噂に名高い6810プロのレッスンを受けさせてもらえるのですから、このチャンスは逃せません!」

有香「どんな噂なんでしょうか……」


茜「それはもう!先日開かれたアイドル大運動会での皆さんのご活躍は語り草に……」


リョウ「……」



不破「ハァ!ぬん!」
ブオンブオン


不破(……影二との決闘まであと3日か……)

不破(……茜は、元気にやっているだろうか)

不破(いや、彼奴は強い娘だ。拙がおらずともやっていける……極限流も付いている)

不破(……)

不破「茜……」

茜「うおおおおおおおおおお!!」
ドドドドド

拓海「す、すげえ……なんだこいつの体力は……」

加蓮「己惚れてるわけじゃなかったけど、ちょっとショック……体力では他のところのアイドル達にそうそう負けることはないと思ってたから……」

茜「はいっ!!私もアイドルになってからたくさん鍛えましたから!!」

茜「そうですよね、不破プロデュー……!あっ、いや……」

茜「あ、あははっ!おかしいなー!今なんとなく不破プロデューサーが傍にいるような気がして……そんなわけないのに!!」

美波「茜ちゃん……」

茜「ほんと、どうにかしてますよね……すみません!!ちょっと走ってきまーす!!」
ドドドドド

悠貴「今走ってたばかりですよっ!?」

リョウ(なんとか表面上は元気を取り戻したように振る舞っているが……無理をしているのは一目瞭然だな)

有香「……やっぱりこのままは良くないですよ」

リョウ「……だが、これは不破と日野さんの問題だからな……正直、俺たちにはどうしようもない」

加蓮「茜……」



茜「はあ、はあ」
ドドドドドドド

茜(不破プロデューサー……)
ドドドドドドド

茜「はあ、はあ……」
ドドドドドド・・・・・・

茜「はあ……はあ……」
タタタ……スタスタ……

茜「……」
トボトボ……ガクッ

茜(あの時……初めて不破プロデューサーに会った時も、私は走っていました)

茜(だから……またあの日のように走っていればまた会えると)

茜(そう思っていたのに……いない……)

茜(もう、会えない……!!)
ジワッ

茜「うっ、うう~……」
グスグス

茜「不破ぷろでゅうさぁ……」
ポロポロ


不破「……茜」
ザッザッザ

茜「……!!不破プロデューサー!?」
ガバッ

茜「ど、どうしてここに……あっ」
フラ

不破「……」
ガシッ

不破「……フラフラではないか。何故こんな無茶をした」

茜「ごめんなさい……ですが、初めてお会いした時のように全力で走り続ければ、もしかしたら不破プロデューサーに会えるのではないかと思いまして……」

不破「……会って、如何とする。拙とお前はもはや他人だ」

茜「……不破プロデューサー……戻ってきてください……!」

茜「私には難しい事はわかりません……あの忍者の人とのお話も」

茜「ですが……ですが!!私は……もう……不破プロデューサーと一緒じゃないと、ダメなんです!!!!」

茜「アイドル日野茜は!!!不破プロデューサーが必要なんです!!!」


不破「……!!」

不破「……この、戯けが」

不破「……茜、影二との闘いは拙の今までの人生を懸けたもの……避けて通ることは出来ん」

茜「そんな……」

不破「闘いは3日後……恐らく拙はそこで命を落とす……かもしれん」

茜「……」

不破「だが、もし……拙が奴との闘いに勝利し、生き延びたなら」

不破「その時は胸を張ってお前のところに帰って来る。約束だ」

茜「ほんとう、ですか?」

不破「ああ。お前は待っているのだ」

茜「約束ですよ……今度こそ、本当に約束ですよ!!!!」

不破「うむ!!!約束だ!!茜!!!」

茜「不破プロデューサー!!!」

不破・茜「うおおおおおおおおお!!」

リョウ「くそ、日野さん、いつまでも帰ってこない……あの状態で目を離すべきじゃなかった……」
ブルルルルルル

茜「……」
スタスタ

リョウ「……あれは?日野さん!」
ブルルルルル
キキッ

茜「あっ、サカザキさん!」

リョウ「こんなところにいたのか……さあ、みんな心配してる、後ろに乗ってくれ。帰ろう」

茜「はい!!帰りましょう!!!」

リョウ「……?」

リョウ(元気になっている?良い事があったか?もしや……不破?)

茜(不破プロデューサー……私待っています!!だから……頑張ってください!!!きっと、生きて……!!!)

今日はここまで

3日後
山中


不破「……」
シュザッ

影二「ふん……てっきり怖気づいて現れぬものと思っていたわ」

不破「……」

影二「……どうやら覚悟は出来ているようだな」

影二「ふん、ならば良い……これより貴様との決着を着けてやる」

不破「……応とも」
バッ

影二「……決着は、何れかの死。異論あるまいな」

不破「よかろう」

影二「ならば……往くぞ!不破!!」
ザッ

不破「では……参る」

不破「うおおおおおおお!!」
ブオン

影二「ふん、あいも変わらずの大振り!所詮阿呆は阿呆か!」
シュン

影二「ならば早々にケリを着けてやる……くらえ!」
ヒュン

影二「骨破斬り!!」
ブン

不破「ここだ!!」
ガシッ

影二「なに!?」

不破「ふん!」
ブン

影二「ぬっ!」
ブワッ

影二(拙者の攻撃を敢えて受け、投げるとは……!小癪な!)

影二(だが、地面に叩きつけるのではなく、宙に放り投げるとは、これならば受け身は容易い)
バッ

影二「存外器用な技を使うではないか!だが所詮は児戯……な!?」

影二(不破の姿が消えた!?馬鹿な、何処に……殺気!)
ブオン
ゴロゴロ


不破(忍隠れ)「……不可視の一撃を躱すとは……やるではないか」

影二「……言ったであろう、貴様の児戯など拙者には通じぬと」

影二(なるほど……先ほどの投げは拙者の目線を切らせるのが目的か……!その隙に姿を消す術を……!)

不破(忍隠れ)「ふん!!」
ブォン

影二(くっ……闘気によりおおよその位置は掴めるが、攻撃の挙動が見えん……)
ガッ


影二(……小賢しい!ならば、その小細工ごと切り裂いてくれる!!)
ピタ

不破(忍隠れ)(……動きが止まった?好機!)

不破(忍隠れ)「うおおおおおお!!真空斬首刀!」
グルグルグルグル

影二「……そこか!!見切ったわ!」
ガッ

影二「霞み斬り!!」
ブオォン

ズバ

不破「ぐわああああああ!!」
ブッシャアアアア
ドサァ

影二「ふははは!鉄をも切り裂く我が手刀の大袈裟斬り!さしもの貴様も耐えられまい!」

不破「ぐっ……」
ドクドク

影二「ふん……あれをまともに受けてまだ身体が動く貴様にはもはや呆れるが……今止めを刺してやろ……」
ガクッ

影二「……!?」

影二「な、なんだ……!?膝が……」
タラ

影二「……血だと?」

影二(ば、馬鹿な……!先ほどの奴のなまくら技が掠っていたか……!)

影二(しかし、掠った程度で膝にくる程とは……なんという膂力……!)

影二「……ふん、前回とは見違えるような踏み込みだな。貴様もあのアイドルと別れを告げて吹っ切れたか」

不破「……拙は……茜に別れを告げることは出来ていない」

影二「……なんだと?」

不破「前回貴様に良いようにやられ……一度は拙も茜との別れを決意し、距離を置いた」

不破「しかし、修行をしていても、彼奴の顔ばかりが浮かぶ」

不破「嘗てあれほど渇望した総帥の座や最強の称号を思い浮かべても、彼奴の顔をかき消してはくれぬ」

不破「いつからか、拙にとって彼奴は心を照らす太陽になっていたのだ……」

影二「……」

不破「……故に、拙は彼奴と約束した。必ず勝利し、生きて帰って来ると」

不破「その誓いが拙に踏み込む力を与える」

不破「この不破刃……嘗ては己が為だけにこの拳を振るってきた」

不破「だが今は、我が最愛の友との誓いを守るために闘う」

影二「守るため、だと?」



影二「―――――ふざけるな!!」

影二「何かを突き詰めるとは他を捨てるという事!」

影二(それを、守るためだと!?この不破刃という男が!?)

影二「他人への情を捨て去れなかった時点で貴様はそこまでの男だったと言う事!最早最強を目指すにすら値せぬ!!」

不破「……貴様も、まだ遅くはない。あの忍者娘の元へ……」

影二「黙れ!」

影二「貴様の妄言に付き合うのもここまでだ!全てまとめて切り裂いてくれる!」
ゴゴゴゴゴ


不破「この闘気……!来る……!」

影二「斬鉄波ぁーーー!!」
バシュウ

不破「……!うおおおおおおおお!」

不破「流影陣!!」
ズオオオ

カッ

影二「!?」

ズバァァァァン
影二「ぐわあああああ!!」
ドサァ

影二(なんだと……まさか……!)

影二(跳ね返された……!彼奴が……流影陣を……!)


不破「……跳ね返されたのを目で確認した瞬間、身体を捻って直撃を避けたか。凄い漢だ」

影二(ぐっ……馬鹿な……!あの密度の気弾は……例え拙者の流影陣でも、かき消す事は出来ても反射までは……能わぬ……!)


影二「おのれ、不破ァ……!」
ヨロヨロ

不破(だが……やはりダメージは激しいようだな……!)

不破(そして……それは拙も同じこと……出血が止まらぬ……!)
ドクドク

影二(く……!)

影二(こやつが斬鉄波の反射まで成しえた以上、遠距離からの攻撃は使えぬ……接近して[ピーーー]しかない)

影二(しかしこの恐ろしくしぶとい男を確実に仕留めるには生半可な技では能わぬ……奥義を使わざるを得ん)

影二(しかし、その為には必殺の間合いまで踏み込まねばならぬ……そう、その間合いはつまり奴にとっても必殺……!)

影二「……」
ジリ

不破(奴も解かっているようだな……お互い勝敗を決めるのは奥義しかないと)

不破(つまり次の激突で決着が着く……!)

影二「……」
ジリ

不破「……」
ジリ

影二「……よもや貴様にここまで追い詰められようとはな」

不破「……拙のみでは到達し得なかった。やはり下野して良かったと今では思う」

不破「様々な世界を見、闘い、そしてかけがえのない出会いがあった」

影二「……変わったな、不破」

影二「もし貴様が、もっと早くにあのアイドルに会ってさえいれば……或いは……」

不破「……あり得なかった未来を想像するのは不毛だ」

影二「……ふん、戯言よ。貴様に言われるまでもないわ」

影二「……」

不破「……」

影二「往くぞ!不破ァ!」

不破「来い!!影二ィ!!」

影二「ぬぅん!!」
グン
シュバババ

不破(……速い!)
グググ

影二「斬鉄蟷螂拳!!」
ズババババ

不破(直接乱打……!だが……まだ、遠い……!もっと引き付ける!!)

影二「ぬおおお!」
ガガガガガ

不破「……!」

不破「ここだ!!」
クワッ

不破「うおおおおおおおおおおお!闘神翔ォォォォ!!」
ズゴゴゴゴゴ

影二「ぐわああああああああああ!!!」
ズアアアアアアアア

不破「……!」

影二「……!」

不破(やった……か)

影二「……鬼の引き付け、見事よ」

不破「……!」

影二「だが、この間合いならば拙者もとっておきがある……!」
バサァ

不破「衣……!?……こ、これは……!」

ズバァ
ズバァ
ズバァ

ズバシュ

不破「―――――――」

影二「如月流裏奥義、闇狩り……」

影二「如月流開祖、斬鉄が使ったとされる秘奥義中の秘奥義……!修行を重ねたのは、お前だけでは無かったということだ……」

不破(……直前の乱打は囮か……拙の闘神翔の完全なる間合いの、ほんの僅かな前で止まりおった……)

不破「……見事よ。やはり先代が貴様を見込んだのは間違いではなかったということか……!」
ゴホッ

影二「……まだ口が利けるとはな。返す返すも驚くばかりだ」

影二「……不破流を名乗る如月流の抜け忍、不破刃。お命、頂戴する」
スッ

不破「……応」

不破(茜……すまん……約束、果たせそうもないようだ……)

不破(拙の事は忘れ、どこまでも駆け上がっていくが良い、茜……!お主は、凄い漢女(おとこ)なのだからな……!)

影二「……ぬぅん!」
ブン

ズドッ

今日はここまで

シュザッ
影二「……」

リョウ「……影二!ってことは……不破は……」

影二「土産だ」
ポイッ

リョウ「……これは、不破の頭巾か……」

影二「不破流を名乗る不届き者は確かにこの如月影二が討ち取った」

リョウ「……日野さん……」

影二「……」

数日後

ロバート「茜ちゃん……そない急いで出て行かんでも……ウチの事務所に居てくれててもええんやで?」

茜「ありがとうございます!!ですが、約束の日より数日経っても不破プロデューサーが現れない以上、こうしてはいられません!」

加蓮「茜……どうするつもりなの……?」

茜「不破プロデューサーを捜します!!だって約束したんです……ですからきっとどこかに不破プロデューサーはいるはずですから!!」

茜「それに、なんだか不思議なんです……今でも時々、不破プロデューサーが近くにいるような気がするんです!!」

ロバート「……リョウ」

リョウ「……」


茜「それでは皆さん、本当にお世話になりました!!またお仕事で会いましょう!!」
ドドドドドドドド

拓海「……走ってっちまったぜ」

美波「茜ちゃん……」


リョウ「……見送りも済んだ。さあ、みんな事務所の中に戻るんだ」

有香「で、でも……」

悠貴「坂崎さん……っ不破さんは……」


ロバート「……いいから、みんな事務所に戻るんや。レッスンが待っとるで」

加蓮「……」

リョウ「……」

リョウ「……で、一体いつになったら会ってやるつもりなんだ、不破」

…………

不破(忍隠れ)「……むぅ」
スゥ

リョウ「もう傷も癒えたんだろう……だったら……」

不破(……)

不破(あの最後の時……)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~

影二「……不破流を名乗る如月流の抜け忍、不破刃。お命、頂戴する」
スッ

不破「……応」

影二「……ぬぅん!」
ブン

ズドッ


不破「……!」

不破(影二の手刀は、拙の頭巾のみを切り裂いた)

影二「不破流、不破刃。ここに討ち取った」
スッ

不破「ば、馬鹿な……影二、どういうつもりだ」

影二「……今しがた宣言した通りだ。如月流を裏切り、不破流を名乗った愚かな男は今死んだ。今そこで横たわっている男はただのアイドルのプロデューサーだ」

影二「ただのアイドルのプロデューサーを殺める動機は拙者にはない……拙者の前に敵として立ち塞がらぬ限りはな」

不破「……影二、後悔するぞ……拙は傷が癒えれば再びお主をつけ狙うかもしれん」

影二「……その時は今度こそ命脈を絶つのみだ」
ザッザッザッザ


不破「……影二」




影二「不破流を名乗る不届き者は確かにこの如月影二が討ち取った」

リョウ「……日野さん……」

影二「……」

影二「少し行った先にアイドルのプロデューサーを名乗る男が倒れている。もしまだ息があるようならば貴様が病院にでも連れて行ってやるがいい。その気があるならばな」

リョウ「……!影二、お前……」

影二「勘違いするな、リョウ・サカザキ。我が忍術は天上天下において最強である。故に我を越えるもの、すべてを断つ」

影二「今は手負いの身故に引くが、次に会った時が極限流最後の日だ。覚えておけ」
シュザッ

リョウ「……変わったな、あいつも」

~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

不破「……そうして生き延びたはいいが、拙は所詮敗れた身……」

不破「茜との約束は、『勝って』、生き延びたら、胸を張って会いに来るというもの」

不破「……正直、合わす面が無くてな……」

リョウ「……まぁあんたの気持ちもよくわかるが」

リョウ「恐らく日野さんにとってはあんたが勝っていようが負けていようが些末事だろう」

リョウ「大事なのはあんたが生きて、自分に会いに来てくれる事……この一点に尽きるんじゃないか」

不破「……」

リョウ「まぁ、どうしても合わす面が無いってんなら、手を貸さんこともないが……」
ゴソゴソ

不破「……む?」

墓地

影二「……先代、影二、ただいま戻りました」

影二「申し訳ございません……不破は仕留められませんでした……」

影二「……先代が亡くなられて以来、拙者は愛も情も捨て、ただ如月流の最強を証明するために闘ってきた」

影二「しかし……不破が見せたあの強さ……」

影二「……」

忍「総帥……」
シュザ

影二「お主は……如月流の一門か」

忍「はい……先代が亡くなられたあの日に総帥が里を出て以来、ここに来られるののをお待ちしておりました」

影二「なに?」

忍「先代の遺言です……ご自身が死した後、総帥にこれを渡すようにと」

影二「これは……文と、……古い書状?」
ピラ

影二へ

思えばお主を次期総帥に推薦してからというもの、お主は気負うあまりに技への、強さへの探求のみに没頭するようになった。

そう教えてきたのは儂だった……捨て子であったお主を拾い、忍として育てると決めたあの日から。

しかし、最強への道を追求するあまり、それ以外のものを顧みなくなっていくお主を見ていて、儂は後悔していた。


影二(……なにを仰います。最強への飽くなき執念……それこそが如月流の命題ではありませぬか)

影二、お前に話をしなければならなかった事がある。

本当ならば儂が直接お主に話さねばならなかった事だが、このような形になってしまい、申し訳ない。

如月流の開祖、斬鉄についてだ。

我らが使う如月流……その源流は遥か昔に遡るとされるが、これを流派として確立したのが幕末に生きた忍、斬鉄。

その技と最強の称号を求め続ける志……これは初代から連綿と受け継がれ続けている。

記録にも残る通り、斬鉄はその敵対する相手を悉く斬り、その生涯を閉じる寸前まで闘っていたという。


影二(そう……その初代斬鉄の志こそが正に如月流の志そのものではありませぬか)

だが初代は決して愛や情を持たなかった訳ではない。

影二「なに……?」

初代には一人の娘と、孫がいた。

初代は行方不明になる直前……その技を自身の孫に伝えている。

その孫こそ二代目斬鉄……この孫を初代は溺愛していたようで、そういった書状もこうしていくつか残っている

そして、娘宛てに残されていた手紙も。

影二「……」
ピラッ

影二「……!」
ハッ

影二「……この娘の、名……!」

忍「……大変ご無礼とは存じながら、我ら如月流一門、総帥が里を出られた後もその動きを追わせて頂いておりました」

忍「当然、総帥がアイドルをプロデュースしていたことも、その名も」

影二「……」

忍「まぁ単なる偶然ですが、縁があるとは思いませぬか」

忍「如月流初代斬鉄の一人娘にして、二代目斬鉄の母親……如月流の歴史を語るにおいて、決して欠かせぬその女子の名は……あやめ」

影二「……あやめ……!」



守るべき、愛すべき存在というのは確かに、時に足枷になる時もある。

だが、それ以上の力を、そして覚悟を与えてくれる存在であると、儂は思っている。

儂にとってのお主がそうであったように。

影二「……先代」

影二、守るべき存在によってまだまだお主は強くなれる。或いはあの初代斬鉄よりも……。

影二「……」

影二「……遺言状、確かに受け取り申した」

忍「……総帥、往かれるのですか」

影二「お主らには悪いと思っている。今まで散々一門の事を放っておいて、さらに今から拙者がやろうとしていることは……強さのみを信じて鍛錬してきたお主たちにはあまりに酷かもしれぬ」

忍「いえ、総帥。往ってください。今の如月流の総帥は貴殿だ。何をしようとも文句は言いませぬ」

影二「……かたじけない。では」
シュザッ

忍び(……先代はこうなる事を予測されていたのか?……いや、まさかな……)

商店街

茜「うおおおおおお!!!」
ドドドドドドド


肉まん屋のおばちゃん「おや、茜ちゃんじゃないかい。今日も元気だねぇ」

茜「あっ、肉まん屋さん!!はい!!元気が私の取柄ですから!!」

おばちゃん「もし良かったら肉まん食べてくかい?」

茜「え!!良いんですか!!?ありがとうございまーーーす!!!」

街中

茜「うおおおおおおおおお!!」
ドドドドドドドド


ファン「あっ、アイドルの茜ちゃんだ!」

ファン2「ファンなんです!握手してください!」

茜「もちろんいいですとも!!」
ガシッ
ブンブン

ファン「パ……パワフル……!」

河川敷

茜「うおおおおおお!!」
ドドドドドドドドド

茜(……この河川敷は……)
ドドドドドドドド

茜「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
ドドドドドドドドドドドド

――――――待たれよ

茜「……!?」
ドドドドドドド

「 そ こ な 娘 ! ! ! 待 た れ よ ! ! ! ! 」
ビリビリビリビリ

茜「……!!!」
ピタッ

茜(……ああ……この声は―――――――)

???「……我が名は忍者仮面……む?」

茜「ターーーーーックル!!!!」
ズドゴン

不破「ぐおわぁ!!!」
ドサァ



不破「あ、茜……いきなりなにを」

茜「……」
ギュッ

不破「……茜」

茜「……お帰りなさい……不破プロデューサー……!」

不破「……ああ。今戻った、茜」

珠美「……あやめ殿、もう元気を出してください」

あやめ「……ははは、珠美殿、何を言われます……あやめはこの通り元気な忍ドルですぞ!」

珠美「あやめ殿……」

翠「……あら?あそこに立っているのは……」

あやめ「……!」

影二「……」

珠美「あ、貴方は……!い、今さらなんですか!」

翠「そうです……あやめさんが一体どんな気持ちで……あっ、あやめさん……!」

あやめ「……」
ダッ

影二「……あやめ」

あやめ「……」

影二「……すまぬ」

あやめ「……うっ」

あやめ「うわーーーーーーーん!!」



珠美「……これで良いんでしょうか?」

翠「それは……あのお二人にしかわかりませんね」

後日

ロバート「……結局、茜ちゃんは不破のところに戻ったか……いやあ、こういっちゃなんやけど惜しかったな~……是非ウチに欲しかったな」

リョウ「まぁ、そう言うな。彼女はやはり不破と一緒にいる時が一番輝けるだろう」

加蓮「そうそう。こないだ茜に会ったんだけどさ、前にも増して元気だったよ」

拓海「へっ、良かったじゃねえか」

悠貴「やっぱり茜さんは元気なのが一番ですよねっ!」

加蓮(……本当に、良かったね、茜)

ロバート「……ん?」
ペラ

リョウ「どうした?ロバート」

ロバート「……いや、リョウ、これ見てくれ」

リョウ「どれどれ……」



美城プロダクション
中途入社のお知らせ

如月 影二



茜「いやあ、不破プロデューサー!!今回のお仕事の出来はどうだったでしょうか!!!」

不破「無論、素晴らしかったぞ茜!!お前は……すごい漢だ」
グッ

茜「本当ですか!!ありがとうございます!!!」


不破「ふふふ……お前は着々とアイドルの頂点を目指し進んでいる……」

不破「ならば拙もそれに恥じぬ、最強の格闘家を目指し、再び邁進せねばなるまい!!」

茜「不破プロデューサーならきっと出来ます!!だって不破プロデューサーなんですから!!!」

不破「……茜!!!」

茜「はい!!!不破プロデューサー!!!」

不破・茜「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」





もとい

今日はここまで
不破外伝はこれで終わりです
あと短編が幾つかあるのであともうちょっとだけ続くんじゃ

外伝
エージェント・カーマン・コール



私は最高のエージェントだ。
何故なら、常に最高の仕事をするからだ。
己の仕事に全力を尽くすのはプロとして当然である。
だが、全力の仕事と最高の仕事とはイコールではない。
全力かどうかは己が決めることで、最高の仕事かどうかは、己以外が決めることだからだ。

好きこそものの上手なれという諺が日本にはある。

それはそうだろう。人は好きなものには他人に言われずとも熱中し、その錬度を高めようとする。
結果、上達は早くなる。

しかしその一方で、下手の横好き、という言葉もあるように、いくら好んでいても、上達が望めないケースもある。
それは多くの人間が直面する、『才能』という壁だ。

この壁がある故に、この世の人間全て、万人が己の好きな事を職業にすることが出来ないのである。

ならば、最高の仕事をするにはどうすればいいか?

それは、己の仕事に誇りを持つことである。
誇りがあるから人はベストを尽くし、最高を求めようとするのである。

誇りが持てないのであれば、その仕事も、また、それに捧げる人生もただただ虚しいだけだ。


しかし、時に人はその虚しさを自覚しながらも、それを抱えて仕事に従事しなければならない。
立場故か、生活の為か、はたまたそれ以外か。

かくいう私もそうだ。

いや、そうだった。

私はロバート・ガルシアの直属の部下で、彼に忠誠を誓ってはいるが、毎日毎日することは少女たちの送迎である。

そもそも彼が『日本でアイドルの事務所を作る』などと言った時、ガルシア財団の重役達は一斉に反対した。

彼の実の父、ガルシア財団の会長、アルバート・ガルシアもそうで、彼を社員たちの面前で阿呆と怒鳴りつけた。

当時の私も同意見だった。
何故イタリア・ミラノに本拠を置き、世界中に傘下の会社を持つ有数の財団がこんな極東の島国で、こんな不確かな事業をしなければならないのだ。

だがはねっ返りのロバート坊やにこの対応は不味かった。

案の定彼は反発、独力で事務所を作ると言い放ち、会議室を後にした。

重役たちの嘲笑や失笑が会議室に充満する中で、会長の目だけは笑わずに私の方を見ていた。

私の現在の肩書はロバート・ガルシア個人付けである。
つまり、彼が行くところにはどこであろうと付いていかなければならない。
例えそれが極東の島国であろうと、中東の砂漠であろうと。

―――――カーマン、アイツを頼んだ。

言われずとも聞こえる声に、私はただ頷くしか出来なかった。

日本に来てからの私は、日々疑問を抱える毎日だった。

何せ日本で初めてロバートから下ってきた指令は『秘蔵のワインを急いで事務所に持って来い』である。
そしてその次が夜間のアイドルの送迎である。

無論、手は抜かない。
常に最高の仕事をするのが私だからだ。

だから私はこの仕事内容にではなく、「ロバート・ガルシア個人付け」という肩書に誇りを持つことでモチベーションを必死に維持していた。

ロバートの事は幼少の頃より知っている。

少々自分勝手で強情だが、ガルシア財団次期後継者としてこれ以上の男はいないと確信している。

かつてただワガママだった坊やが極限流空手と出会って人間としても大きく成長したように、本人が言い出したこのアイドル事業もまた彼を大きく成長させるものだと信じて。

この一介のお雇い運転手のような仕事も、そう思う事でなんとかやっていた。


代わりに、喫煙量が増えたが。

車中
加蓮「ねえねえ、カーマンさんって結婚してるの?」

カーマン「……いや?何故そんなことを聞くんだい、ミス・カレン」

加蓮「いや、カーマンさんって渋くてダンディだからモテそうだなって思って。そうなんだ、結婚してないんだ。意外~」

加蓮「あっ、じゃあ本国の方に恋人とかは?イタリアだっけ?」

カーマン「いや、今のところ結婚を考えるような相手はいないな。……それと私はイタリア人ではない。ドイツ人だ」

加蓮「あっ、そうなんだ。社長がイタリアの人だって聞いてたからカーマンさんもそうなのかと思ってた」

カーマン「ガルシア財団の影響力は世界に及ぶ。それこそ社員も世界中にいる」

カーマン「それより……君もアイドルになって、どうだ?男どもからアプローチを受けているんじゃないか?」

加蓮「ん~……確かに声を掛けられることは多くなったけど……言い寄られたりとかはあんまりないよ」

カーマン「なんだ、日本の男たちは随分と臆病だな。君のような可憐なレディに気の利いたセリフひとつ吐けんとは」

加蓮「ふふ……ありがと。けど、普段一緒にいるプロデューサーを見たら、ね」

カーマン「……フッ、そうだな。そういえば君たちにはあの龍虎が付いているのだったな。それでは並みの男なら足も竦むか」

加蓮「あはは……」

カーマン(……この少女も随分変わったものだ。初めて送った時は愛想笑いひとつせず、他者を寄せ付けない雰囲気を出していたものだが)

カーマン(今ではこんな軽口を叩けるようになっている。余裕が出てきたのだろう、この姿が本来の彼女なのかもしれない)

また別の日
車中

拓海「おう、カーマンのおっさん、いつもありがとうな!」

カーマン「……仕事だからな」

拓海「しっかしあんたいつみてもお堅いよなぁ。はっちゃけたりすることねえのか?」

カーマン「多少羽目を外すことはあっても君たちにそれを見せることはない。公私は弁えている」

拓海「おお……堅え……けど、羽目を外したらどうなるんだ?首都高を車でぶっ飛ばしたりすんのか?」

カーマン「……そんなに私も若くない。多少酒量が増えるくらいだ」

拓海「へえ~……ん?そういえばあんた今いくつなんだ?」

カーマン「32だが」

拓海「……はあ!?32!?」

拓海「み、見えねえ!嘘だろ!?」

拓海(30前半の貫禄じゃねえだろ!)

カーマン「……褒め言葉として受け取っておくよ、ミス。」

また別の日

有香「あっ、カーマンさん!すみません、今日もよろしくお願いします!」

カーマン「ああ。だがいつも車の前で礼を取らなくていい」

有香「いえ!本当にいつもお世話になっていますので!」

カーマン「……」

有香「あの、カーマンさん、ひとつお聞きしてもよろしいですか?」

カーマン「なにかね」

有香「はい、以前Mr.BIGという悪漢が私たちを襲ってきた時……カーマンさんは実に鮮やかにあたしたちを助けてくださいました」

カーマン「そういうこともあったな」

有香「その時のご手腕からもカーマンさんが達人なのは疑いようもないと思うのですが……あれは何の格闘技なのですか?極限流空手とは全く別物に見えましたが」

カーマン「私は極限流の門弟ではないからな。私のスタイルは格闘技……というほどのものでは無いが……いわゆる護身術だ。相手を倒すというよりは制する技だ」

有香「な、なるほど……確かにあの時も瞬く間に相手を無力化していました……」

カーマン「どちらかと言えば防御主体だ。攻撃的な技を求める若い時分の君には退屈かもしれんがな」

有香「い、いえ!そんなことありません、技はすぐには無理かもしれませんが、立ち合いの際の心構えなど教えていただければ……!」

カーマン「……勤勉だな、君は……」

カーマン(思い返せば、そうだ。この娘たちが私によく話しかけてくるようになったのは件のMr.BIGとやらの襲撃事件からか)

カーマン(保安部の私はあちらの方が本来の任務には近いのだが……しかしあんな目に遭ったというのにタフな娘たちだ)

また別の日

美波「カーマンさん、すみません……今日もお車出していただいてありがとうございます」

悠貴「よろしく……おねがい……」

カーマン「……だいぶ疲れているみたいだな」

車中
悠貴「すぅ……すぅ……」

美波「……悠貴ちゃん、眠っちゃいましたね……カーマンさんが静かに運転してくれてるおかげですね」

カーマン「車中で眠ってしまうのは久しぶりだな……以前の、クイーン・オブ・ザ・アイドルズ……アレの特訓をしていた時は毎日皆眠りこけていたものだが」

美波「あはは……確かにあれ以来、体力的にあそこまで追い込まれることはないですけど、悠貴ちゃんは夜遅くなってくると、眠くなっちゃうみたいなんです。まだ13歳ですしね」

カーマン「フッ、そうか……とは言え、あのQOI以来、君たちは劇的に成長したといえるだろう。実際の仕事量もそうだが、皆自信に満ちている。良い表情だ」

美波「ありがとうございます。でもそう言ってもらえるのも坂崎さんやロバート社長……ちひろさんにトレーナーさん……もちろんカーマンさんも、皆さんに支えてもらっているからですよ」

カーマン「私はただの護衛に過ぎん。君たちの育成にはノータッチだ」

美波「いえ、本当にみんな、感謝してるんです……あの、これ、もし良ければ」
スッ

カーマン「……これは……もしや私への贈り物か?」

美波「はい、本当は5人揃ってる時にお渡ししたかったんですけど、最近はみんな忙しくてなかなか揃う機会が無くて。だから代表で、私が渡すことになったんです」

カーマン「……開けて見ても?」

美波「はい」

カーマン「……ネクタイか。……良いデザインだ」

美波「気に入って貰えたのなら良かったです。みんなで相談して、出来るだけ実用性のあるものが良いかなって」

カーマン「せっかく選んでもらったんだ、有り難く頂こう。……だが、君たちは別に私に恩や義理を感じる必要はないぞ?これは仕事だから……」

美波「ええ、ですけどこれは私たちが勝手にやりたいと思ってやったことですから。カーマンさんもそんな肩肘張らずに受け取って貰えれば」

カーマン「……わかった。ありがとう」

悠貴「……んん……あれ、私、眠っちゃってたんですか……っ」

美波「あ、ごめんね悠貴ちゃん、起こしちゃったね」

悠貴「……あっ、カーマンさん、ネクタイっ!受け取ってくれたんですねっ!」
パァッ

カーマン「ああ。素晴らしいプレゼントをありがとう」

悠貴「美波さんっ!やりましたねっ!」
スッ

美波「うん、これでみんなにもいい報告ができるね」
パシッ

カーマン「……」

今日はここまで

https://imgur.com/a/8jUpO
この人やな

ロバート「ん?カーマン、そのネクタイどないしたんや?」

カーマン「アイドル達から贈られた。送迎の礼だそうだ」

ロバート「へ~、良かったやん。なかなかいい趣味のネクタイやな」

カーマン「全く義理堅い娘たちだ。私はただプロとして仕事をこなしているだけだというのに」

ロバート「ハハハ……まぁそういう性格やから、わいらもあの娘たちの為に頑張ろうと思えるんや。それに応えてくれるしな」

カーマン「……確かに彼女たちは想像以上の成果を挙げている。本社に報告をしている身としても、社内の空気が変わっているのを感じるよ」

ロバート「おっ、ホンマか?初めボロクソに言うてくれた重役たちも少しは見返せたか」

カーマン「……だが、未だ懐疑的な者もいるようだ。財団の事業の一つにするには規模が小さすぎると」

ロバート「ハッ、今さら頼み込まれたってこの事業を財団に渡すつもりは更々ないっちゅー話やねん。これはわいの個人事業や。最初から最後までな」

ロバート「……ただ、規模というか、アイドルの数に関してはわいも考えとったところや。極娘のみんなに関してはもう安定軌道に入ったけど、それに続くアイドル達をウチから出していきたい」

ロバート「事務所を作ったばかりの手探り状態の頃とは違って、今はもう常駐のトレーナーもおるし、ある程度のノウハウもわかった。ここいらで2、3人新しい娘を入れたいけどなぁ」

カーマン「またスカウトを始めればいいだろう」

ロバート「ただ、わいもリョウも最近完成した極限流日本支部の道場も交代で見とるから余裕がないんや。かといって、スカウトに関してはこの目で直に見るか、信用できる奴に任せたいからあんまり外部から雇いたくないんや」

カーマン「全く、ワガママ放題だな。言っておくが私はそこまでは手伝わんぞ」

ロバート「チェッ、あんたの目利きなら間違いないと思って内心期待しとったのに……まぁスカウトに関しても考えんとな……」

カーマン「ああ、そうしろ。……ところでロバート、私は明日は非番でいいのか?リョウは出張中だろう。人手は足りるのか?」

ロバート「ああ、明日は珍しくロケの仕事一本だけやしわい一人で大丈夫や」

今日は久々の非番だ。
かといって羽目を外しすぎる事はない。いついかなる時にエマージェンシーコールが入ってくるとも限らない。プロとはそういうものだ。

ただ、折角貰った心の籠った贈り物を身に着け、久しく走らせていなかった愛車を転がす……それくらいの休息は許されるだろう。




カーマン「日本の道はどうにも狭く入り組んでいるが、海岸沿いまでくればそれなりに快適にドライブできるものだな……」


ガガガガ

カーマン「む……?」

カーマン「全く……こんなところでエンストとは、少し乗らな過ぎたか」
スッ

カーマン(……近くに整備できそうなところも無い。まいったな)

ブルル

女性「あれれー?どうしたのー?エンストー?」

カーマン「ん?ああ、そのようだ」

女性「どれどれ……わあ……赤いポルシェ……かっこいい!」



女性「……うーん、これはレッカーかな……」

カーマン「やはりそうかね……仕方あるまい」
スッ

女性「……あっ、待って!ねえ、もし急いでなかったら私この子の事ちょっと診てもいい?」

カーマン「診る?君がか」

女性「うん、私これでも整備士なんだ!ほら、工具一式も持ち歩いてるし!」

カーマン「……驚いたな。だが見ず知らずの君にそこまで頼む義理は……」

女性「……原田美世」

カーマン「……ん?」

美世「私の名前だよ。あなたは?」

カーマン「……カーマン・コールだ」

美世「カーマンさんね。はい、これでお互いもう見ず知らずの仲じゃないってことで……ダメ、かな?」

カーマン「……好きにしてくれ」

美世「やったあ!まさかこんな珍しい子をいじれるなんて!」
ウキウキ

カーマン「……」

カチャカチャ
美世「へぇ~、こんな風になってるんだ……やっぱ外車は国産とは違うなぁ」

カーマン(……熱中している)

美世「おお~、凄い……けど、確かここは実習で見たやつに似てるから……」
カチャカチャ

カーマン(こんな年頃の娘が整備士など、俄かには信じられなかったが……)

美世「あ~、なるほど……カムギアが取れちゃってる……病巣はボルトのあたりかな……?」

カーマン(どうやら腕は間違いないようだ。だが……車をいじる彼女の姿は……)

チンピラ「おい、そこの外国人」

カーマン「……私のことかね?」


チンピラB「おう、日本語話せるのか。アンタどこのモンだ」

カーマン「……私はこういうものだ」
ピッ

チンピラ「……寝男地男工業、課長、ハンス・ミューラー?」

チンピラB「聞いた事ねえ会社だな」

カーマン「小さな会社でね」

カーマン(全てダミーだが)

チンピラ「小さな会社の課長程度がこんないい車に乗れるもんかい?」

カーマン「車好きでね。給料全てを注ぎ込んでる。……それで、何か御用かね」

チンピラB「ああ、こんな所に赤いポルシェが止まってりゃ目立つからな。おっさん、金置いてけや」

チンピラ「ああ、金が無いんだったらその車でも良いぜ。売りゃ良い金になるだろ」

チンピラB「ん?ちょっと待て、あの車の下に潜り込んでるの、女じゃねえか?」

カーマン(……ふう)

カーマン「……せっかく美しいものを見ていたのに台無しだ。この代償は安くないぞ、ヤパーナー?」
スッ

チンピラ「やる気か?こっちは二人で……」

カーマン「これ以上君たちを視界に入れている時間が惜しい。良いから早く来い」

チンピラB「てめえ!」
バッ

パシッ
グイッ


ブンッ
チンピラB「ぐはっ!」
ドサッ

カーマン「ふんっ!」
ズドッ

チンピラB「」
ガクッ

チンピラ「な、なに……!?」

カーマン「さて、お前には2つ選択肢がある。伸びた仲間を連れて消えるか、誰かが通報してくれるまでここで二人仲良く野晒しになるかだ」

チンピラ「な、な、なめんじゃねえ!この野郎!これでエグッてやる!」
スチャ


カーマン「……ふん、それだけか?」

チンピラ「……なに?」

カーマン「ナイフ程度で良いのかと聞いてる。拳銃でも日本刀でも、なんなら機関銃でも構わんぞ」

チンピラ「ふざ、ふざけんなああああ!!」

チンピラ「」

カーマン「出直して来い。素人が」
パッパッ

カーマン(さて、彼女は……)

美世「……」

美世「う~んと……あとはここを組めば……」
カチャカチャ

美世「よし!これでどう!?動くんじゃない?」
バッ
カーマン「……これを」
スッ
美世「え、ハンカチ?……あ、もしかして」

カーマン「ああ。顔に……」

美世「えへへ……熱中しちゃうと、ついね……こんなの女の子っぽくないよね」
フキフキ

カーマン「……確かに女性の身だしなみとしてはそうかもしれん」

カーマン「だが、車に触れる君には、顔についた油でさえ最高の化粧だった」

美世「えっ?」

カーマン「いいや、何でもない」

カーマン「……」
ブルルン ブルルン

美世「あっ!良かった~!かかった~!」

カーマン「すまないな、助かった。修理代は幾らになるかね?レディ」

美世「えっ!?お、お金なんて良いよ!私が好きでやったことだし、ポルシェいじれて満足だし!」

カーマン「そうは言うが、こちらも車を直して貰った上、良いモノも見せてもらった。良い仕事にはそれに応じた報酬が与えられなければならない」

美世「え?良いモノって?」

カーマン「とても美しいものさ」

美世「ええ~……よくわからないけど……あ、じゃあ、いっこお願いしていい?」

カーマン「構わんよ」

美世「……いや~、乗るのは初めてなんだけどホントにポルシェって全然違うんだね。ちょっとアクセル踏んだだけなのに回転数が凄いよ」

カーマン「だが、もう慣れてきたようだな。下手なクラッチ操作ではこうはいかん。整備も運転も、良い腕だ」

美世「えへへ……そうかな?車はいじるのも見るのも乗るのも、全部好きだから」

美世「……ねえ、えっと、カーマンさん?」

カーマン「なにかね?」

美世「実はね、さっき車直してる時……ホントは気づいてたんだ。怖い人たちが因縁つけてきてたの」

カーマン「……!」

美世「それで怖くて車の下から出てこれなくて……けどカーマンさんあっという間にふたりともやっつけちゃって」

カーマン「……」

美世「あなたは何者なの?よくわかんないけど、なんか海外のすごいFBI?みたいな人なの?」

カーマン「……そんな大層な身分ではない。今の私はただの運転手だ……アイドル事務所付きのな」

美世「アイドル……?」

カーマン「もし興味があるなら、来るかね?もしかすれば、君が車と同じくらい夢中になれるものがあるかも知れん」

美世「それって、勧誘?見かけによらず、面白い人だね。でも……見てみたいな。あなたのいるアイドル事務所」

カーマン「疑わんのかね?」

美世「疑わないよ。助けてもらったし、それに……」

カーマン「それに?」

美世「赤いスポーツカーに乗ってる人に悪い人はいないもんねっ!」

後日

ロバート「おう、カーマン、あんたが連れてきてくれた美世ちゃん、正式に契約決まったで」

カーマン「そうか」

ロバート「いや~、あれはエエ娘や。ウチの事務所は車乗りもバイク乗りもおるから本人もかなり喜んでたわ。そしてもちろんわいらも大助かりや」

カーマン「ふむ」

ロバート「それにしてもどういう風の吹き回しや?あんな私は手伝わん、みたいなことを言うとったのに、あんたが事務所に連れて来たときにはあの娘かなり乗り気やったで。どんな口説き方したんや?」

カーマン「別に口説いちゃいない。私はただ連れてきただけだ」

カーマン「だが、アイドルを始めたとして、ここから先はお前たちの仕事だ。あの娘をシンデレラに出来るか、灰かぶりのままにしておくかはな」

ロバート「それはそうやな。せやけど、あんたがそれだけ見込んだって事は……あんたにはもうそのシンデレラの片鱗を見せたんやろ?」

カーマン「フン……」

人は、誰でも幸福を捜している。

しかしその形は一定ではない。

時には死す時までその形が分からない者もいるだろう。

幸福とは実に様々に姿を変え、私たちを惑わせる。

富に、愛に、権力に……

私にとっては、誇りがそうだ。

最高の仕事をしているという、誇り。

彼女が、彼女たちが光り輝く瞬間。

私は、その時確かに誇りを感じた。

すなわち、幸福を。

今は彼女たちを見守るのが最高の仕事なのだと思う。

今の私はそう思える。

そう思わせてくれた者たちがいたのだから。


外伝
エージェント・カーマン・コール

今日はここまで

>>232のカーマンの漫画すっごい出来が良いからぜひ読んでみてね(不破師範は脳筋扱いだけど)

ロバート「キャンプ?」

リョウ「ああ、新しいメンバーも入ったことだし、親睦を深める意味こ込めてな」

ロバート「それやったら別に食事会とかでエエやろ。何でわざわざキャンプなんや?」

リョウ「俺も良く山に籠るからわかるが、自然の中での不便さってのは、人と人が向き合うのに最適だ」

リョウ「何もない故に協力しあい、何もない故に飾りの無い、心の触れ合いがある」

ロバート「へぇ~……まぁ新しい娘らが早く打ち解けられるならそれに越したことはないけどな」

リョウ「……それに、それだけじゃない。山の方なら、都会に比べて星が多いからな……」

ロバート「星?」





外伝
北の大地から来た少女


リョウ(『彼女』が事務所に来たのはほんの少し前。出会ったのは、ここ東京よりもずっと寒い。秋に差し掛かった頃だった)

北海道・小樽市内

リョウ「……ロケの現場の下見とは言え……流石に一人で来るもんじゃな無かったな。地理が全然わからん」

リョウ「ええっと……一応ここは小樽市内なんだよな?で、小樽運河ってのが港の方だから……ううむ……」

リョウ(人に聞いた方がはやいなこりゃあ)


リョウ「あ、そこの人、すみません」

通行人「ひっ、す、すみません、急いでますので」
タタッ

リョウ「……見た目で怖がられるのも久しぶりだな」

リョウ(まぁ馴染みのない土地だから仕方ないか……他に人は…)

リョウ(おっ、前に人が歩いてるな……銀髪?外国人か?)


リョウ「……あー、コホン」

リョウ「Hello, excuse me.」

少女「……シトー?」
クルッ

リョウ「……ッ!?」

リョウ「……ああ、ロシア語……か?参ったな、ロシア語はわからん……」

少女「アー……日本語、わかりますよ。英語も、わかりますけど」

リョウ「あ、そうなのか。それは助かる……運河の方に行きたいんだが、道はわかるかい?」

少女「カナール……運河の方はですね、えーと……ここを、まっすぐに……」


リョウ「……なるほど、わかったよ……君が日本語が上手で助かった」

少女「……私を外国の人と思いましたか?ちがいます、日本人よ」

アーニャ「ミニャー ザヴート アナスターシャ……アー、名前は……アナスタシア。日本とロシアの、ハーフです」

リョウ「……これは失礼だった。俺はリョウ・サカザキ。東京で空手の師範とアイドルのプロデューサーをやってる」
スッ

アナスタシア「アー……どうも……」

リョウ「……」

リョウ「……なぁ、アナスタシアさん。いきなりこんな事を言われても困るかもしれないが……アイドルに興味はないか?」


アナスタシア「アイドル?……イズヴィニーチェ……ごめん、なさい、あまり、詳しくありません」

リョウ「そうか……テレビで見たことないか?」

アナスタシア「……何度か、見たことはあります。けど、なにをするのですか?ピヴィーツァ?バリリーナ?歌とか、踊りですか?」

リョウ「ああ、歌ったり踊ったり……演技したり、トークしたり……色々だな」

アナスタシア「つまり、なんでもですね……プリクラースナ、すごい、です」

アナスタシア「……ですけど、私には、無理ですね」

リョウ「……どうしてだい?」

アナスタシア「さっき……あなたは日本語、上手と褒めてくれました。でもそれは、たぶん外国人にしては……という意味だったと、思います」

リョウ「……」

アナスタシア「ほんとうの事ですから、仕方ないです。けど、私は日本語も、ロシア語も……話すのは少し、苦手です」

リョウ「ロシア語も?」

アナスタシア「……私、もともと日本で生まれました」

アナスタシア「それから、とても小さいときにロシアに行って……そしてまた、10歳のとき、北海道に戻ってきました」

アナスタシア「だから、言葉はうまくなかったです。ママは日本語を教えてくれましたけど、パパはロシア語。どちらも上手では、ありませんでしたね……」

アナスタシア「ですから……私には……」


リョウ「……それは、大変だったな。言葉の苦労、土地の苦労……特に幼少期に仲の良かった友人と頻繁に分かれるってのは、辛いもんがあるよな」

アナスタシア「……あなたも、わかりますか?」

リョウ「ああ、俺も生まれは日本だったんだが、8歳の時に親父の仕事の都合でアメリカに行った。まぁそれからはずっとそこに住んでたから君ほどじゃあないけどな」


アナスタシア「……もしかして、あなたも」

リョウ「ああ……まぁあまり見えないかもしれないが、俺もハーフだ。この髪も自前だ。……ただ、日本にいた頃……ガキの頃にはこのアタマで大分苦労した記憶もある」

リョウ「なんでお前の髪は自分たちと違う色なんだ、ってな。特に子供の時分ってのは自分たちと違うものは好奇の目で見られる。良くも悪くもな」

アナスタシア「……私も、わかります」

リョウ「そうかい?まあ確かに俺たちは境遇的には似ているところがあるかもな」

リョウ「ただ、俺は男だからな。やっぱりその辺は年頃の女の子にしかわからない悩みもあるだろうから、一概に君の気持ちが全部わかる、なんて事は言えないけどな」

アナスタシア「……あなたは、日本にいた時、どんな風に過ごしてましたか?」

リョウ「そうだな……その時はあんまり深く悩むことも無くて、周りにいたやつもカラッとした気質の奴も多かったからな。近所の男の子たちとは打ち解けられた。よく相撲取ってたりしたよ」

アナスタシア「スモウ……」

リョウ「ただ、それは俺の場合だ。君が言う通り、言葉が上手くないってことだったら……周りと打ち解けるってのはかなり難しかったと思う。コミュニケーションの基本はやっぱり言葉ってのは動かし難い事実だからな……」

アナスタシア「……そう、ですね」

アナスタシア(だから……私には……)



リョウ「だが、それが全てでもない」

アナスタシア「……え?」

リョウ「さっき少し話したが、俺は空手をやっててな。小さい頃から続けてるが……色々な奴と闘った。強いヤツ、弱いヤツ……良い人間、悪い人間……言葉が通じる相手、通じない相手」

リョウ「相手がどんなヤツでも、最近は拳を交わせばそいつがどんなヤツかわかるようになってきた」

アナスタシア「……」

リョウ「もちろん、闘うだけじゃない。一番わかりやすいのは感覚的なものさ」

リョウ「歌に音楽……踊りに芝居……格闘もそうだがこういった芸術にも国境や偏見は無い」

リョウ「分かり合う方法は会話だけじゃない……相手の魂に訴えかけるものは、言葉だけじゃないのさ」

アナスタシア「タマシイ……ドゥシャー……」

リョウ「……俺は君の何を知っている訳じゃない」

リョウ「……ただ、もし……もし、君が他人に理解されなくて、今苦しんでいるんだとしたら」

リョウ「少し、変わってみないか?もちろんそれがアイドルになる、という選択肢じゃなくてもいい。俺は、君を応援したい。君を見て、そう思った」

アナスタシア「変わる……」

アナスタシア「……」

アナスタシア「リョウ……プロデューサー……?私にも、出来るでしょうか?」

リョウ「出来るさ……君が諦めなければ」

アナスタシア「……アーニャ、です」

リョウ「ん?」

アナスタシア「私の、ニックネーム。ママが、付けてくれました」

リョウ「アーニャ、か。親しみやすい良いニックネームだな」

アナスタシア「……もし、デビューをするなら……ここを離れなければいけませんね。雪とレンガの大好きな街……」

リョウ「ああ、親御さんにも挨拶しないとな」

アナスタシア「ママやパパと離れるのは、寂しいです……でも、私、覗いてみたいです。まだ知らない遠くの……アイドルの世界……」

今日はここまで

リョウ(そうして事務所に来たアーニャだったが、事務所のメンバーは良く受け入てくれた)



リョウ「……」
プルルルル
ガチャ

ユリ『もしもしー?』

リョウ「ああ、ユリ、俺だ」

ユリ『あ、お兄ちゃん。元気だった?』

リョウ「ああ、俺はいつでも元気だ。お前の方は?親父は……聞くまでもないか」

ユリ『うん、私も元気だよ。お父さんはもう元気すぎて困っちゃう……もう少し元気なくてちょうどいいくらいかも』

リョウ「ははは、そうか……ユリ、少し相談したい事があるんだが、良いか?」

ユリ『お兄ちゃんが私に?珍しいね、女の子関係の事かな?』

リョウ「……なんとなく人聞きが悪いが、まあその通りだ。新しく入った娘でな……」




ユリ『……なるほどね~、その娘、なかなか日本で馴染めなかったんだ』

リョウ「ああ、俺たちも海外移住経験があるが、そこはやはり同じ女子のお前の方が気持ちがわかるんじゃないかと思ってな」

ユリ『う~ん……そうは言っても私たちがサウスタウンに移った時は私は4歳だったから……もうその頃の事ってほとんど覚えてないんだよね』

ユリ『言葉の方もそこから覚えてあんまり苦労しなかったし……』

リョウ「そうか……」

ユリ『あっ、でもそのアーニャちゃんに似た娘がいたよ!』

リョウ「似た娘?」

ユリ『うん、私の友達にまどかちゃんって子がいるんだけどさ』

ユリ『その子もお父さんのお仕事の都合でアメリカに来て……言葉がわかんなくて、寂しそうにしてた』

ユリ『それで、その時たまたま私と知り合ってね。で、英語を教えてあげたの。そうしたら、徐々に周りの子とも馴染んでいって、今ではグループのムードメーカーだよ』

リョウ「ふむ……やはり言葉か……」

ユリ『まあ、言葉はもちろんだけど、やっぱりコミュニケーションをたくさん取るのが大事なんじゃないかな?』

リョウ「そうか……そうだな、助かった、ユリ」

ユリ『良いよ!それよりそのアーニャちゃん、早く打ち解けさせてあげてね』

リョウ「ああ!」





拓海「良いか?まず基本は夜露死苦、んで、親友はマブダチ……」

アナスタシア「ヨロシク……マブダチ……」

美波「ちょ、ちょっと拓海ちゃん。そういう応用編はまだアーニャちゃんには早いかなって……」

加蓮「ちょっとやめてよ拓海。アーニャのガラが悪くなっちゃうでしょ」

拓海「ああ?どれも基本にして知らなきゃ生きていけねえ重要語句じゃねえか」

悠貴「アーニャさんっ!『かわいい』ってロシア語でなんて言うんですかっ?」

アナスタシア「カワイイ?ミーラャ、です」

悠貴「なるほど……アーニャさんっ!とってもミーラャっ!ですっ!」

アナスタシア「スパスィーバ……ユウキも、とっても、ミーラャ、ですね」
ポッ

悠貴「え?えへへへっ」
ポッ

加蓮「二人とも素直過ぎる……ちょっと似てるかも」

リョウ「アーニャ、今いいか?」

アナスタシア「シトー?プロデューサー、どうしましたか?」

リョウ「ああ、こっちに来て、調子はどうかと思ってな」

アナスタシア「アー、オス。とても、ジョートー、です」

リョウ「……ん?」

アナスタシア「……?」

リョウ「あ、いや、すまんな。ジョートーってのは日本語でなんて意味なんだ?」


アナスタシア「……?ジョートー、日本の言葉でしょう?」

リョウ「……上等?」

アナスタシア「ダー、ジョートー」

リョウ「……押忍?」

アナスタシア「オス」


リョウ(……まぁ、良いか)

リョウ(事務所に来てから、事務所のメンバーもアーニャには積極的に話かけてくれてるな。アーニャも少しづつ慣れてきてくれているようだが……)




リョウ「美波、どうした?相談ってのは」

美波「あ、ごめんなさい、お忙しいのに。その、アーニャちゃんの事なんですけど」

リョウ「ああ、どんな様子だ?俺が見てる時は楽しそうにやってくれてると思ったが」

美波「そうですね、事務所のみんなともたくさん喋ってますし、アーニャちゃん、素直だから……とってもかわいいです」

美波「ですけど……ふとした時……アーニャちゃんはひとりでいる時が多いんです。もちろんアーニャちゃんが私たちを遠ざけてるわけでもないし、私たちがアーニャちゃんを遠ざけてるわけでもないんですけど」

リョウ「……」

美波「それで、どうしたの?って聞いてもアーニャちゃんは大丈夫ですよ?って笑顔で答えるんです」

美波「本人にとってもひとりになりたい時があると思うから、私もそれ以上は何も聞けなくて」

リョウ「……アーニャは、見た目や言葉の事で日本に来てからはあまり人と積極的に話せなかったらしい。もちろん仲の良い友達もいただろうが」

リョウ「ただ、この事務所に来てからはもう心配なさそうだとは踏んでいたんだが」

美波「きっと……まだこっちに来たばっかりで戸惑ってるんだと思うんですけど」

リョウ「だが、その話を聞いたからにはこのままで良いとは思わない。なにかきっかけがあれば……」

リョウ「美波、何かアーニャが好きなモノとか聞いてるか?趣味とかでも良いんだが」

美波「そうですね……あっ、そういえば星を見るのが好きだって」

リョウ「星か……天体観測は、この都会ではな……都会……」

リョウ「……!」

リョウ「……よし、決めたぞ。美波、ありがとう。良い事を思いついた」

美波「いえ、私が相談したことですし……もし私がお手伝いできることがあったら、何でも言ってくださいね」

リョウ「ああ」

某キャンプ場

リョウ(……という訳でキャンプだ)

美世「坂崎さん!荷物結構車に積んできてたけどどうするの?」

リョウ「ああ、美世、すまないな。ここのキャンプ場はかなり古いところなんで設備があまりないからな。その分荷物が増えちまったな」

有香「美世さん、車出していただいてありがとうございます!」

美世「ううん、全然大丈夫だよ!みんなで車で遠出とかもう楽しみ過ぎて!」

拓海「しっかし、ホントに山奥だなこりゃ……なんもねえ」

美波「でも、普段はこうやって自然に触れ合う機会ってなかなかないから、とても貴重な体験になると思うよ」

加蓮「……けど坂崎さん、ここってお風呂とああるのかな?トイレはあるみたいだけど……」

リョウ「風呂はない。だから簡易シャワーを持ってきた」

加蓮「ええ……」


リョウ「まぁみんな見てくれた通り、基本ここには何もない。だから自分たちで用意する必要がある」

リョウ「まず、寝床だな。1泊2日の予定だから今日の夜泊まる場所が必要になる」

リョウ「あと、食い物だ。食材は買ってきてあるし、簡易ガスコンロやクッカーはあるからこれを使って調理する」

リョウ「そこで、メンバーを2つに分ける。テント設営班と調理班。どっちかやりたいって希望はあるか?」

拓海「それならアタシはテントだな。建て方わかんねーけど坂崎が教えてくれんのか?」

リョウ「ああ、もちろん教えるし調理器具の使い方も教える。だが、基本
的には俺は補助だ。メインはお前らにやってもらう」

美世「みんなで力を合わせて!ってことだね。じゃああたしもテントに回ろうかな?料理でもいいけど、こっちのが人手いるよね」

美波「じゃあ、私はお料理の方に回りますね」

リョウ「……よし、じゃあテント班が拓海、美世、有香、加蓮。調理班が美波、ユウキ、アーニャだな」

リョウ「俺はまずテント班に設営の方法を教えるから、調理班は持ってきた食材で何を作れるか相談だ。で、決まったら教えてくれ。調理器具の使い方を教える」

美波「はい。悠貴ちゃん、アーニャちゃん、頑張ろうね!」

アナスタシア「ヤー スタラーユシ……私、がんばりますね」

悠貴「はいっ!お二人とも、よろしくお願いしますっ」

リョウ「さて、テントだが……今回は7人もいるからな。2つテントを建てる」

美世「え?坂崎さん入れたら8人じゃないの?」

加蓮「……ええ!?」


リョウ「……いや、俺はさすがに一緒に寝られないだろ……個人用のソロテント持ってきてるから大丈夫だ」

美世「あっ……そ、そうだよね、あはは……」

拓海「全く、とんでもねえ事言い出すな……」

リョウ「……で、だ。お前たちにはテント二張り建ててもらうんだが……最近のテントは昔よりわかりやすくてな」

リョウ「基本的にはポールを差し込んでいけば自立するようになってる。コツがいるのはペグ……杭の打ち方とロープの結び方だな。一通り手本を見せるからやってみよう」



加蓮「へえ~……テントって建てるのってすごく力がいるって印象だったけど、そうでもないんだ」

リョウ「最近は女性のキャンパーも増えてるらしいからな。作る側もいろいろ考えてるんだろう」

拓海「つーかもうしっかり自立してんじゃねえか!早速アタシが寝心地確かめてやるぜ!」
ダダダダ

リョウ「拓海!待て!」

ズン

拓海「……固ぇ……」
プルプル

リョウ「……そりゃそうだ。今はテントの下にシート一枚しか敷いてない。これだとほとんど地面みたいなもんだ」

有香「だ、大丈夫ですか拓海さん」

美世「あわてんぼだね……」

リョウ「だから、建てたテントの床部分にもう1枚マットを敷く。これで寝られる程度の柔らかさになるんだ」

拓海「くそ……先に言えよ……」
プルプル




美波「……さて、、ここにあるのが材料だね。にんじんにじゃがいもにお肉に……」

悠貴「なんだかカレーとか作れそうですねっ!」

美波「カレーって確かにキャンプの定番のイメージがあるね。アーニャちゃんはどう?」

アナスタシア「ダー、カレー、とても良いと思います」

美波「そう?じゃあそんなに難しくないし、カレーを……」

アナスタシア「……あっ……」

悠貴「?アーニャさん、どうしたんですかっ?」

アナスタシア「……イズヴィニーチェ、なんでもありませんね、ユウキ」

美波「……アーニャちゃん?もし何か気になる事があったら教えてほしいな。遠慮なんかしなくていいんだよ」

アナスタシア「……アー、でも……」

悠貴「教えてくださいっ!アーニャさん!」

アナスタシア「……材料の中に、ビーツが、ありました」

悠貴「ビーツ?」

美波「この缶のことかな?」

アナスタシア「はい。ビーツあれば、ボルシシ作れるって、思いました」

美波「ボルシシ……ボルシチかあ……私はまだ作ったことないんだけど、アーニャちゃんは作り方知ってる?」

アナスタシア「ダー、ロシアにいたころ、グランマに教わりました」

悠貴「それでしたら、ボルシチ作りましょうっ!」

アナスタシア「え?でも、カレー……」

美波「ううん、アーニャちゃん。私も教えてほしいな、ボルシチの作り方」

アナスタシア「……ダー!スパシーバ、ミナミ、ユウキ。上手にできるか、わかりませんけど……」

美波「それは何を作るにしても同じだよ、アーニャちゃん」

悠貴「みんなキャンプ経験無いですしねっ!

アナスタシア「……」




リョウ「そうだ、ペグはテントとは逆の方向の角度で打ち込む。まぁ何度、とかあんまり神経質にならなくていい」

加蓮「ねえ、坂崎さん?今は風とか全然吹いてないけど、この杭打ちってしなきゃいけないの?」

拓海「そうだぜ、めんどくせえしいらねえんじゃね?」

リョウ「今は穏やかだが、山の天気は変わりやすい。それに、しっかり杭を打っておくことでテント全体の強度も上がって、形も整う。面倒かもしれないが、これは重要だ」

有香「……それに、これはなかなか難しいですけど、慣れると楽しいですよ、ハンマー打ち!」
コンコン

リョウ「おっ、有香、筋が良いな」

美波「坂崎さん!料理、決まりました!」

リョウ「お、そうか。じゃあ器具の使い方教えるから、あっちに行こう。美世、テントの建て方は大体今の通りだ。もう一張りも同じ要領で建ててみてくれ」

美世「うん、わかったよ!さっ、みんな!残り一張り、アクセル全開で行こう!」


今日はここまで

リョウ「そうか、ボルシチか……なら必要な器具はガスコンロと、あとこのダッチオーブンを使う。まあ鍋だな」

悠貴「わあ……重い!」
ズシッ

リョウ「まな板と包丁はここにあるから、皮むきとか切ったりはこれでやってくれ」

リョウ「水は水道があるからそこから引いて使うんだ」

リョウ「……説明はこんな所か。あとは大丈夫か?」

美波「はい、道具の使い方はもう大丈夫です。ありがとうございました!」

悠貴「それじゃあアーニャさんっ!ボルシチ作りましょう!」

アナスタシア「ダー!」

悠貴「アーニャさんはいつもお料理してるんですか?」
トントントン

アナスタシア「アー、いくつか教わりましたけど、日本の料理は、まだ詳しくありませんね」
グツグツ

美波「そうなんだ。今日はアーニャちゃんにボルシチの作り方教わるんだし、もし良ければ私からもお料理教えてあげたいな」
ジュージュー

アナスタシア「ハラショー!ぜひ、お願いしたいです」

悠貴「美波さんっ!私も教えてほしいですっ!」

美波「ふふ、もちろん!」

夕方

拓海「ふい~……これで大体テント完成か?」

加蓮「やっぱり慣れてないのもあったけど、かなり大変だったね」

有香「確かに……これは良い鍛錬になりそうです」

美世「……ん?なんだかいい匂いがするよ」

拓海「なんの匂いだこりゃ」
クンクン


アナスタシア「……フクースナ!良い、味ですね!」

悠貴「うんっ!おいしいですっ!」

美波「すごいよアーニャちゃん!こんなに美味しくできるなんて」

アナスタシア「いえ、ミナミ、ユウキが一緒に作ってくれたから、ですね?」


拓海「おうおう、いい匂いしてんじゃねえか!これは……カレー?」

加蓮「いやいや、ボルシチでしょ」

有香「わあ……!すごく美味しそうです!」

リョウ「おっ、料理、出来上がってそうだな」

美世「坂崎さん!どこ行ってたの?」

リョウ「ああ、自分用のテントを建ててた」
クイッ

拓海「……なんか、小せえし、ボロくね?」

リョウ「なっ、なんてこと言うんだ。アレは俺が山籠もりする時にいつも持っていく、謂わば相棒だぞ」

有香「や、山ごもりって実在するのですね……」

アナスタシア「……穴、開いてますね」

美波「あ、雨とか大丈夫なんですか?」

リョウ「……ちょっとは入って来るな」

加蓮「ダメじゃん!」

リョウ「い、いや、良いんだ。一人用はあんなもんで、良いんだ」


リョウ「それじゃあ……いただきます」

美世「いただきまーす!いや~、おなか減ってたんだよね!」

拓海「……おお!?うめええええええ!!」

加蓮「うん、美味しい!」

有香「いろいろと具も入ってますし!」

悠貴「アーニャさんが教えてくれたんですよ!」

拓海「そうなのか!?すげえじゃねえかアーニャ!」

アナスタシア「スパシーバ……ありがとう、けど、ふたりが手伝ってくれた、おかげです」

リョウ「メシも炊いてある。みんなたくさん食ってくれ」

拓海「ふい~、食った食った……ん?坂崎、何してんだ?」

リョウ「焚火の準備だ」

美世「おっ、キャンプファイヤーかな?いいよね!」

リョウ「ああ、これをやらずにキャンプは終われんからな」

有香「おお……あたしもお手伝いします!」

美波「それじゃあその間に私たちは洗い物済ませちゃおっか?」

アナスタシア「ダー♪」

悠貴「はいっ!」

加蓮「あ、私も手伝うよ」

パチパチ

美世「……うん、あそこのメーカーのはいい音出すよね~」

拓海「だろ!?いやあ~、やっとわかる奴が現れたか!だよな、サイッコーにマブイよな!」

美波「美世さんはいつ免許取ったんですか?私もそろそろ運転免許が欲しくて……」

美世「もう解禁されてからはすぐに行ったよ!楽しみ過ぎてずっとお小遣い貯めてたから!」

有香「そういえばあたしももう免許が取れる年齢ですね……」

加蓮「私はあと2年か~……そういえばアーニャって今いくつだっけ?」

アナスタシア「ダー、15歳、です。カレンのひとつ下、ですね」

悠貴「私はまだあと5年もありますね……はやく運転してみたいなっ」

拓海「そういや年齢と言えばさ、こないだカーマンのおっさんがさ……」



リョウ(……このキャンプで、美世もアーニャもみんな打ち解けてくれたようだな)

リョウ(自然の中の不自由の中で協力しあい、お互いの理解を深めてゆく。今回のキャンプは成功だったな)

リョウ(……ただひとつ、残念だったのは)

リョウ(曇ってんな……昼は晴れてたんだが……星はまた次の機会か)

リョウ「……よし、お前らあんまり遅くなる前に寝るんだぞ。あと、テントの中に寝袋入れてるからちゃんと使うんだぞ。夜は気温が下がって寒いからな」

美波「はい」

夜中

リョウ「……ん」
パチ

リョウ(なんか目が覚めちまった……小便でも行くか)
ノソノソ

リョウ「……ん?」

リョウ「……!」

リョウ(雲が消えて、星満開じゃねえか)

リョウ(あいつらは……もう寝ちまってるか。まあしょうがないか)

リョウ(ん?あそこに立ってんのは……)

リョウ「アーニャ」

アナスタシア「アー、ドーブルイ ヴェーチル、こんばんわ、ですね、リョウプロデューサー」

リョウ「どうしたんだこんな時間に……って星を見てたんだよな」


アナスタシア「ダー、ズヴェズダ……星が見えないかと思って、ずっと空見てました。そうしたら、さっき、見えてきましたね」

リョウ「ああ、夕食後に星が見えてたら全員で天体観測でもやろうと思ってたんだが……曇ってたからな。それにしても思ってたよりずっと星がきれいだな。ここにして正解だったか」

アナスタシア「……はい、こっちにきて、こんなにたくさんのズヴェズダ、初めて見ました」

リョウ「……やっぱり故郷が恋しいか?」

アナスタシア「……ふるさと、パパもママもいます。さみしくなることも、あります」

アナスタシア「でも、事務所のみんなはとても優しくて、温かいです」

アナスタシア「……星を見てたら、昔の事を思い出しました。ヴァスパミナーミエ……孤独だった頃のこと」

アナスタシア「プロデューサー、スカウトの時に、小さい頃のお話、してくれましたね?」

リョウ「ああ」

アナスタシア「私の一番古い記憶……小さい、日本にいた頃は……銀髪だから、お人形みたいって言われました」

リョウ「……」

アナスタシア「それからロシアに住んだ頃には……イポンカ……日本人って、呼ばれたかな」

アナスタシア「そしてロシアから帰ってきたときは、ロシアの子。いつも、どこでも、私は違う何かでしたね、ずっと……」

リョウ「……」

アナスタシア「日本では、よく冷たそうな人って、言われてました。だから、なるべくほほえむようにしていました」

リョウ(そうか。……この娘がほほ笑むのは、他者に受け入れてもらうための手段だった。しかし、同時に他者との間に引いた境界線が、あの笑み)

リョウ「……君は、諦めたのか?他者に自分を理解してもらうことを」

アナスタシア「……そうだったかも、しれません。寂しい、と思う顔をすると、私きっと怖い顔になってました」

アナスタシア「自分の、本当の気持ちを出すと、人が離れていく……そう思っていました」

アナスタシア「……でもここのみんなは違います。ありのままのアーニャを、受け入れてくれる気がします」

アナスタシア「リョウプロデューサー、今日の料理、はじめからボルシシを作らせる気で、いましたね?」

リョウ「……!なんのことだ?」

アナスタシア「材料の、ビーツ……日本ではあまり馴染みありません。なかなか売ってなくて……探すの、大変だったと思います」

アナスタシア「それに、ボルシシの作り方なにもしゃべってないのに、必要な道具の使い方、すぐ教えてくれました」

リョウ「……美波と相談してた。そもそも今回のキャンプもそうだが……」

アナスタシア「……ふふ、プロデューサーはニィウクリュージェ……不器用、ですね」

リョウ「む……」

アナスタシア「だけど、優しい……あったかい、です」




アナスタシア「プロデューサー……私もこんなズヴェズダ……星に、なれますか?」

リョウ「……君は自分を変えるための一歩を、勇気を持って踏み出せたんだ」

リョウ「変わる事を、変化を恐れない限り、何にだってなれるさ。星にだって、太陽にだってな」

アナスタシア「ダー……私、もっと色んなモノを見たい……色んな景色が見たい、です」






ロバート「おう、リョウ、最近のアーニャちゃん表情が豊かになったな」

リョウ「ああ、キャンプで大分打ち解けたな。ああいう風に表情を顔に出すのが本来の彼女なのかもしれない」

ロバート「いや~、最初に来たときはミステリアスクールビューティー路線で行こうと思ってたけど、あんだけ色んな表情が出せるなら方向性にも幅が出るな」

リョウ「まだまだ、これからだ。本人次第でどんな方向にだって彼女は歩き出せるさ」

リョウ(彼女の心は雪のように真っ白だ。それは彼女の純粋さ故か、それとも今までの人生で心を染める機会がなかった故か)


リョウ(だから、これからだ。彼女が心を、自らをどんな色に染めていくのか。人は、心次第で何にでもなれる。龍にも、虎にも、そして悪魔にも)


リョウ(だから俺たちはその行く末を、見守る。見届ける義務がある)





外伝
北の大地から来た少女

今日はここまで
あと短編ひとつで終わりの予定です。

外伝
烈風の行く先


都内 カフェ

茄子「皆さん!お元気でしたか~?」

つかさ「もちろんだろ。てかこのメンツ全員で集まるのも久しぶりじゃね?」

真奈美「そうだな。解散が発表された時以来だから……半年ぶりくらいか」

志希「あたしと真奈美さんはいっつも顔合わせてるけどね~♪」

レナ「ああ、真奈美ちゃんと志希ちゃんはあの後美城に移ったんだっけ?どう?美城は?」

真奈美「業界最大手だけあってアイドルの数も含めて規模が大きいな。スタッフの数も多いし、アイドル活動だけに専念出来る環境がある」

つかさ「……まっ、アイドルやりつつ秘書やれだの衣装作れだのボイトレやれだのって方が異常なんだけどな」

志希「そう言うつかさちゃんは今もっと無茶してるって聞いてるよ?なんでも事務所立ち上げようとしてるんだってにゃ?」

つかさ「……まぁな。けどやっぱイチからはなかなか難しいよ」

つかさ「アタシが先に始めてる事業から拡張する感じで進めようとしてるんだけど、やっぱりなかなか人が集まらない。そうなると必然的にアタシがやらなきゃいけない事が増えるんだけど……やっぱり限界があるわ」

真奈美「……そう考えると、ギース・ハワード……あの男は人間性はともかく、やはりその能力は認める他ないな……」

つかさ「……確かにアイツは頭にくるけど天才だった。んで、アタシは天才じゃない。だからあがくんだよ。あがいて、もがいて……」

つかさ「……それでも……アタシは絶対やって見せる。でかい事務所作って、アタシら以上の……Reppu以上のアイドル育てて、目に見せてやるよ。アイツにさ」

茄子「……そうですね、つかさちゃんならきっと出来ますよ!」

つかさ「ていうかさ、そう言う自分とレナさんは今何してんだよ?ヨソに移ったって話も聞かないけどさ」

レナ「う~ん、私は今自分探し中、かな……Reppuでの約1年が今までの人生でも濃すぎてね……」

茄子「え、え~っと……わ、私も充電中です♪」

つかさ「ふ~ん……まっ、どこかに移るにしても何か始めるにしても早い方が良いぞ?時間は小休憩も大事だけど、時間は待ってくれないからな?」

茄子「そ、そうですね……あはは」

レナ「……」

志希「それよりさ、つかさちゃん前会った時と違う香りがする~♪香水変えた?」
ハスハス

つかさ「前会った時の香り覚えてんのかよ……けど、解かる?実はコレアタシがプロデュースしたフレグランスでさ……」

茄子「……」




夕方

つかさ「……っと、もうこんな時間か……そろそろ帰って仕事しないとな」

真奈美「そうだな、今日はこの辺りでお開きとしよう。とても有意義な時間が過ごせたよ」

志希「また集まろーね♪みんなの匂い嗅ぎたいし!」

レナ「そうね。次に会う時は何か報告出来る事を作っておくわ」

茄子「皆さん、今日はありがとうございました♪」



茄子「……」
スタスタ

レナ「茄子ちゃん……ちょっと待って」

茄子「あっ、レナさん。どうしました?」

レナ「いえ、もし良かったらウチの家で少し飲んでいかない?すぐ近くなんだけど、さっきは未成年もいたしね」

茄子「そうなんですね……けど私はお酒はそんなに……」

レナ「今無職なのは私と貴女だけだし、良いでしょ?もちろんお酒じゃなくてもいいし、無理にとは言わないけどね」

茄子「……そうですね、それでしたらお言葉に甘えさせてもらいます」


レナ宅

茄子「お邪魔します……わあ、大人っぽい素敵なお部屋ですね!」

レナ「ありがと。とりあえず居間に座ってて、何かつまめるものと飲み物出すから」


茄子「はい」

茄子「……」
キョロキョロ

茄子(あっ、Reppuのみんなで撮った写真……ハワードさんは……そっぽ向いてる)


レナ「お待たせ……ん?写真見てるの?」

茄子「あ、ごめんなさい、勝手に」

レナ「いいのよ。この写真撮る時……あの人、大概目立ちたがりのくせに写真には写りたがらなかったわね」
シュポン

茄子「そうですね……でも、最後は嫌々でしたけどちゃんと写真に入ってくれました」

レナ「……ねぇ茄子ちゃん。貴女さっきのカフェで……充電中って言ってたわよね。……はい、茄子ちゃんの分。けっこう良いワインよ」
スッ

茄子「ありがとうございます。……はい、そう言いました」

レナ「でも、その充電はちゃんと電源が入ってるかしら?コンセント抜けてるんじゃない?」

茄子「えっ?」

レナ「乾杯♪」
スッ
茄子「あっ、か、乾杯♪」
チン

レナ「……うん、いい味。茄子ちゃんは普段飲まないんだっけ?」

茄子「……はい。お正月の甘酒とかは好きなんですけどね」

レナ「あら、それなら日本酒とか用意しておけば良かったかしらね」

茄子「いえいえ、そんなお構いなく……それに、このワインも美味しいです。初めて飲みましたけど」

レナ「そう、それなら良かったわ」

レナ「……実は、私もなのよね」

茄子「えっ?」

レナ「自分探しなんて言ったけど、どこを探したって見つかるわけない。だって、答はもうわかってるんだもの」

レナ「あの人の事が気にかかって仕方ないのよね」

茄子「……!……はい」

レナ「私もそう……別にあの人が好きな訳じゃない。けど、曲がりなりにも一緒に仕事をして、結果も出して……その結末があの別れじゃあ、踏ん切りつけて新しいことも始められない」

茄子「……はい。私、あの人の本心の言葉が聞きたいです。最後に言っていた言葉……あれが本心だったとは思えないし……思いたくないです」

レナ「……茄子ちゃんはあの人の事どこまで知ってる?」

茄子「え?……海外から来た、青年実業家……だけど、それだけじゃない何かを持っている人……ですか」

レナ「まぁ概ねそれで合ってるんだけど、問題はその何かって部分よ。……まぁこれは私がアメリカにいた時聞いた噂だし真奈美ちゃんから聞いた話も混じるけど……」

茄子「……サウスタウン?」

レナ「そう。あの人はそこにある大きな裏組織に身を置いている……そして表に出せないような悪事にも手を染めている……という噂よ」

茄子「……確かにそう聞いてもあまり不思議はないですけど……でも……」

レナ「そう。私も実際にあの人と一緒に仕事をしてみて……噂ほど彼を悪い人だとは感じなかった。性格は意地悪だったし偉そうだし最悪だったけどね」

茄子「ちょ、ちょっと言い過ぎですよ……」

レナ「でも、だからこそ納得が行かないのよ。これが評判通りの男だったらさっさと忘れられるんだけど、そうじゃなかった。あなたもそうじゃない?茄子ちゃん」

茄子「……はい」

レナ「だからこそ、確かめる必要がある。じゃないと、私はいつまでたっても前に進めない」

茄子「……レナさん、もしかして……」

レナ「ええ。私はサウスタウンに飛ぶつもりよ。それであの人に会って……納得できる言葉をもらうか、ビンタの一発でもお見舞いしてあげる」

茄子「……レナさん。私も……一緒に行きます」

レナ「……こんな話をしておいてなんだけど、サウスタウンは危険な街よ?今は大分落ち着いているらしいけど、ギャング同士が抗争しているような街だもの」

茄子「……それでも、私はあの人に会いたい。でないと、私も一歩を踏み出せないから……」

レナ「……そう。だったら、準備が出来たらまた連絡を頂戴。準備って言うのは、言わなくても解かると思うけど……身辺整理とか、そういうものよ」

茄子「……はい」

空港

レナ「あ、来た来た。茄子ちゃん、こっちよ」

茄子「レナさん!お待たせしました」

レナ「一応確認しておくけど、ここに来たってことは……覚悟は出来てるということよね?」

茄子「はい。しっかり神社でお願いしてきました♪」

レナ「……まぁいいわ。行きましょう」

レナ「目指すは北アメリカ大陸の南東にある街……サウスタウンよ」



真奈美「……あれは?」

セントラルシティ
サウスタウンエアポート

レナ「……やっと着いたわね」

茄子「ここが……サウスタウン」

茄子(……あの人が、いる街)

レナ「ここは繁華街に近いみたい。そっちにまずは行ってみましょう」

繁華街

茄子「けっこう広い街なんですね」

レナ「サウスタウンはいくつかにエリアが別れているみたい」
ガサ

レナ「えっと……ここがサウスタウンの中心街のセントラルシティね」

レナ「で、港の方がサウスタウン・ベイ。治安もいいみたいで、閑静な住宅街が続いてる」

茄子「……すごく治安が悪いイメージでしたけど、静かな住宅街もあるんですね」

レナ「そうね。私も詳しいわけじゃないけど、このサウスタウンの南東にある人工島……イーストアイランドには観光出来るところがたくさんあるみたいだから、世間的には観光地としてのイメージが強いみたい」

レナ「けど、情報収集はこの繁華街が良さそうね。ちょっとこの辺りで人に聞いてみましょう」


レナ「Excuse me?」

通行人「……No」
スタスタ

茄子「……あまり人が相手にしてくれませんね……さっき応じてくれた人はハワードさんの名前を出したら慌てて走って行っちゃいましたし……」

レナ「……この街に住んでいる人はあの人の真の顔を知っている……という事なのかしらね」

茄子「……」


男「……なぁ、そこの姉ちゃんたち」

レナ「……!何か用かしら?」
サッ

男「お、おいおい、いきなり警戒するなよ。まぁ仕方ないか……」

茄子「あの、貴方は……?」

男「ああ、さっき姉ちゃんたちがギース・ハワードの名前を出していたのが気になってな」

レナ「……それが何か?あなた何か知ってるの?」

男「ああ、この街にいる奴は誰でも知ってる……だがな、この繁華街ではその名前を迂闊に出さない方がいい」

茄子「……何故ですか?」

男「……知らねえようだから教えてやるが……ギースってのはこの街の覇権を狙う組織の大幹部なんだ。で……この繁華街には同じく街の覇権を争ってるチャイナタウンの勢力の連中が多くいる……連中の本拠はこのセントラルシティにあるからな」

男「連中にとってはギースはその命を狙う今一番のターゲットなんだ。そいつらにギースの事を嗅ぎまわってるなんて知れたら、とっ捕まって、何されるかわかったもんじゃねえよ」

レナ「……なるほどね。筋は通ってるわ」

茄子(……やっぱり、あの人は)

レナ「ありがとう、忠告をくれて……情報収集は他でやるわ」

男「……あんたたち、見たところ日本人だろ?ここまで聞いてギース捜しを続けるのか?危険なんだぜ」

レナ「……ええ」

茄子「……あの人に聞かなきゃいけないことがあるんです」

男「ワケありって事か……」

男「……もし姉ちゃんたちが良ければ……俺がギースのところに途中まで案内しても良いぜ」

レナ「……!あなた、あの人の居場所を知ってるの!?」

男「ああ……今あの男は……ポートタウンにいる」

茄子「ポートタウン?」

男「ああ、サウスタウン南西にある貿易港なんだが……軍港でもあってな。そこで大量の武器を仕入れてるって話だ」

レナ「……武器……」

男「ああ、解かると思うが……治安はサウスタウンでも最悪だ。日常的に抗争や喧嘩が起こってる無法地帯……この街の闇の部分だよ」

男「……どうだ?ここまで聞いてまだあの男を追う気はあるかい」

茄子「……レナさん」

レナ(茄子ちゃん……私が止めるって言っても一人で行きそうな目しちゃって……)

レナ「……追うわ。けど、貴方は何者なの?どうしてそこまで手を焼いてくれるのかしら」

男「ああ、姉ちゃんたち何か事情があるみたいだし……俺もギースに世話になったことがあってな」

レナ「……」

ポートタウン

レナ「ここが……ポートタウン」

茄子「……これは、まるで……」

男「スラム街さ。観光で栄えたサウスタウンの影の部分を一手に引き受ける……」

男「奴は今夜ここの廃工場に取引で現れるって噂だ」

茄子「……」

レナ「……」

レナ「……もう1時間くらい待ってるわよ。さっきの話、本当なの?」

男「ああ……準備が出来たようだぜ」

茄子「え?」

男「全員出てこい!この女たちだ!」

ザザザ

男「へへ……」

レナ「……!大人数の男たちが……!やっぱり騙したのね……!?」

茄子「……!」

男「ふっ……俺が喋った内容で嘘だったのはギースがポートタウンにいるって話だけさ……あとは全て本当の話だ」

男「ここであんたたちを捕らえて、未だ帰らぬ我らが頭、Mr.BIG様の組織内復権のための対ギースの切り札にする……あんたらはヤツの愛人か何かなんだろう?」

レナ「誰が愛人よ!いい加減な事言わないでくれる!?」
クワッ

男「おお怖い……だが、お前らがなんであれ、奴にとって無視できない存在であれば俺はそれでいい」

レナ(くっ……迂闊だった……!)

茄子「……っ」

男「へっ、早速この女たちを……」

グワ!ギャア!

男「なんだ!どうした!」

???「……BIGならもう帰ってはこないよ。ヤツは日本で行方不明だからね」
スタ

男「……!?マントに、道化の面!?誰だ!」

???「あんたと元同僚だよ。まっ、私は不本意だったけどね」

レナ「……!」

男「ちっ……貴様、キングか!」

キング「ふっ、それにしてもBIGの部下は働き者だね。奴の何がそんなに良いんだか」
バサッ

男「抜かせ!組織の裏切り者め……行け!全員でかかれ!」

男たち「ウオオオオオオオオオオオオオ!!」
ドドドドド

男たち「……」

男「ば、馬鹿な……素人だったとはいえあれだけの人数を……」

キング「……はん、数だけ揃えても私に勝てやしないよ」

キング「あの男に忠誠を誓うのは勝手だけど……彼女たちは私の飲み友達なんだ。手を出そうとした報いを受けてもらうよ」
ザッザッサッ

男「く、くそおおおおお!」
ダダダダダ

キング「……やれやれ、上司に似て逃げ足だけは早いね」

レナ「……キングちゃん……ありがとう、助かったわ……でもどうして」

キング「……日本のマナミから連絡を貰っててね。空港であんた達を見かけたから、もしかしたらサウスタウンに来てるかもしれないって」

茄子「真奈美さん……」

キング「それでエアポートのところで待ってたら、怪しい男にホイホイ付いて行ってるし……ちょっと警戒心が無さすぎるんじゃないかい。ここは安全な日本じゃない……欲望と暴力の街、サウスタウンだよ」

レナ「……返す言葉もないわ」

茄子「……あの、キング、さん?」

キング「ん、あんたはReppuにいた娘だね」

茄子「はい、鷹富士茄子といいます」

キング「カコ……ああ、あんたがリョウが言ってた娘ね。あんたの事は楽屋裏からしか見たことなかったけど、会えてうれしいよ」

レナ「キングちゃんは真奈美ちゃんの友人で、一時期6810プロの……極限drea娘のダンストレーナーをやってたの。だから私たちの事を知ってるの」

茄子「そうなんですね……やっぱり縁って大事です。こうして助けて頂いて」
ペコ

キング「……ちょっと独特の間合いの娘だね」

キング「……話を戻すけど、ここは危険な街なんだ。あんたたちが居るような場所じゃないよ」

レナ「……キングちゃん。助けてもらっておいて言うのも気が引けるけど……私たち、ハワードさんに会いに来たの」

キング「……ギースにかい?だったら尚更さ。あいつが日本でプロデューサーをやっていた時、どんな感じだったかは知らないけど……」

キング「本当のあいつはアイドルのプロデューサーなんてやる男じゃない。あの若さで組織の幹部になってるような男だよ。もうあんたたちはあの男に関わるべきじゃない」

レナ「……あのね、キングちゃん……」

茄子「……キングさん」

キング「……なんだい」

茄子「確かにキングさんが仰ってることは正しいと思います。現に今私たちは危険な目に遭いましたし、街の人達を見てもあの人は畏れられてるようです」

茄子「だけど……だけど、ハワードさんが私たちに見せた表情は……必ずしもそれだけじゃなかったと思うんです。……だから、私たちはあの人の本当の言葉が聞きたい」

茄子「あの人は本当にただの悪人なのか、それともそうじゃないのか……あの人の本当の気持ちはどこにあるのか。そうじゃないと、私たち……前に進めないんです」

レナ「茄子ちゃん……」

キング「……」
ジッ

茄子「……」
キッ

キング「……やれやれ、本気ってことだね」

茄子「……はい」

キング「……だったらいいよ。あんた達がギースに会うまで、私がボディーガードをしてやるよ」

レナ「……本当!?キングちゃん!」

茄子「良いんですか!?」

キング「……本当は良くないけどね。けど、本気の眼をした人間てのは止めても行っちまうもんさ」

キング(そう……あの事件の時のリョウと同じようにね)

キング「だったら私が守ってやらなきゃならない。マナミにも頼まれてるしね」

レナ「キングちゃん……ありがとう」

茄子「この御恩は……忘れません」

キング「礼なら日本に帰ってマナミにしな。……ギースが居るのは恐らくイーストアイランドだよ」

レナ「イーストアイランド?観光で人気の?」

キング「ああ。確かに世間ではビーチもあって有数の観光地だけど……あそこにはギースタワーがある」

レナ「ギ、ギースタワーって……」

キング「まぁ通称だけどね。あの男が建てた高い高層ビル……普段あの男がいるとされてる」

茄子「そこに、あの人が?」

キング「ああ……だから今からイーストアイランドに移動……」

ギャアアアアアアアアアア

茄子「……悲鳴!?」

キング「……このポートタウンでは悲鳴くらい珍しくないけど……この声は」

レナ「さっきの男じゃない……!?」





男「……」
ピクピク

レナ「……!」

茄子「……っ」
サッ

キング「……これは、あんたがやったのかい?」


少年「……そいつよ、あんまり金持ってなかったんだ」


レナ「うそ……まだ十代くらいでしょ……?」

茄子「そんな……」

キング「……その血まみれの鉄パイプを捨てな」

少年「全然、足りねーんだよ……これっぽちじゃ……」

少年「あんたたち、旅行者だろ……?だったら金はたくさん持ってるよなぁ」

キング「やめな……私には勝てないよ」

少年「関係ねーよ……俺が……金持って帰れねーと……」

少年「妹に、パンを食わせてやれねえだろうがァァァァァ!!」
グワッ

茄子「……!」

キング「……!はっ!」
ブオン

ドカッ

少年「ぐはっ」
ドシャ

レナ「っ……キングちゃん……!」

キング「……安心しな、ちょっと眠ってもらっただけ……!」

少年「くそ……クソが……」
フラフラ

茄子「……!」

少年「……ちくしょうが……!さっきのヤツみてえに……潰れたジャガイモになりやがれェェェェ!!」
ガバッ

少年「イヤアアアアアアアアアアオオオオオ!!!」
ブンブンブン

キング「……!ベノムストライク!」
ゴッ

ズドン

少年「―――――」
ドサッ
カランカラン

レナ「……キング、ちゃん」

茄子「……」
タッ

茄子「この子の、手当をしないと……」

キング「……これが、この街の本当の姿だよ。大人も子供も関係ない。みんな餓えて餓えて……食べるものが無いから生きる為に他人を喰いちぎろうとしてる」

キング「そういう街に、ギースは帰ってきたんだ。……その意味をあんたたちも考えることだね」

レナ「……」

茄子「……」

キング(……けど、妹の為、か……)

キング(私も、リョウも……一つ道を違えばこの少年と同じようになってたのかもしれないね……)

今日はここまで
次回更新で完結予定です

イーストアイランド

キング「……見えてきたよ。あの高層ビル……」

茄子「あれが……ギースタワー」

レナ「どれだけ目立ちたがりなのよ……一番高いビルじゃない」

キング「このビルは……わざわざ観光地として賑わってるイーストアイランドに建てられてる」

キング「それはつまり、あの男がサウスタウンを表も裏も両面で支配してるっていう強烈なアピールなんだよ」

茄子「……」

茄子「……ここは、本当に人で賑わってますね。みんな幸せそうな顔をして……」

レナ「……まぁ観光地だしね」

茄子(ほんの少し外れたところにはあんなスラム街があるのに……まるで天国と地獄……)

茄子(ハワードさん、貴方はこの街で何をしてるんです?)

ギース・タワー


ギース「チャイナタウンの連中か?」

リッパー「はい。我々の直属の部下ではありませんが、『組織』の人間がここ数日だけで4件、襲撃を受けています」

ギース「場所はどこが多い」

リッパー「奴らの庭先のセントラルシティで3件、このイーストアイランドで1件です」

ギース「セントラルシティだけならともかく……イーストアイランドでも事が起こっているのは見過ごせんな。人の家の庭先で勝手に花火を上げられるのは不快だ」

リッパー「……では」

ギース「ああ、近々チャイナタウンを襲撃する。兵たちには準備をさせておけ」

リッパー「はい」

ガチャ
ホッパー「……ギース様」

リッパー「ホッパー、どうした?」

ホッパー「はい。……女が3人、ギース様に面会を申し出てきています」

ギース「女が3人?」

リッパー「何者だ?素性がわからんならお引き取り願え」

ホッパー「……それが、その内の1人は……キングという女です」

リッパー「キング?あの第1回キング・オブ・ザ・ファイターズの出場者のか?」

ギース「ほう……あのムエタイ使いか」

ギース(そういえばあの女も日本に来ていたな……)

ギース「それで、後の2名は?その女の仲間か?」

ホッパー「組織のデータには無い人間です。……2人とも日本人のようです」

ギース「……なに?」

リッパー「日本人……?」

ホッパー「名前は……レナ・ヒョウドウとカコ・タカフジと名乗っています」

受付「ですから、アポイントメントが無い方はちょっと……」

キング「だから、身分を明かしてるだろ?さっさと上に話を通しなよ」

プルルルル
受付「……失礼します、内線です」
ガチャ

受付「はい、受付です……え?でも……はい、わかりました」
ガチャ

受付「……OKが出ました。そちらのエレベーターから上にお上がりください」

レナ「……OKを出したのは、社長?」

受付「さあ……私にはわかりかねます」

茄子「……」


ゴオオオオオ
キング「……さて、いよいよご対面だよ。あいつがどういう対応をしてくるかわからないから、いざという時はすぐに逃げ出せるようにしときなよ」

レナ「……まぁその前に平手打ちを一発お見舞いしてあげなきゃね」

茄子「ハワードさん……」


チーン

リッパー「……」

ホッパー「……」

ギース「……」


レナ「……ハワードさん」

茄子「……お元気そうですね。少し安心しました」

ギース「……」

キング「……ちょっと、ギース・ハワード。何とか言ったらどうなんだい」

ギース「……ようこそ、ミス・キング。お会いできて光栄だ」

レナ「……」

茄子「……あの」

キング「私にじゃないよ。この娘たちにだよ。あんたに会うために遥々日本からやってきたんだよ。危険を承知でね」



ギース「……知らんな」

茄子「……え?」

ギース「私はお前たちなど知らん。誰だお前たちは」

茄子「――――!」

レナ「……!!」

レナ「知らない!?ほんの半年前の事をもう忘れちゃった!?だったら思い出させてあげるわよ!!」
ズイ

レナ「私たちは!日本に来ていた貴方からスカウトを受けたアイドルで!貴方がプロデュースしたユニットReppuのメンバーよ!そして貴方が一方的に解散を宣言した理由を、聞きに来たの!!どう!?解かったかしら!?」
ダン

リッパー(……アイドル?Reppu?)

ホッパー「……」
ゴソ

ギース「良い。ホッパー」

ホッパー「……」
スッ

ギース「重ねて言うが、知らんな。私が日本に行っていたのは事実だが、それは武技の修行の為だ。貴様たちなど知らん」

レナ「……!!~~~!……」
スッ

レナ「……ここに来るまでは平手打ちをお見舞いしてやろうと思ってたけど……もうその気も失せたわ。帰る」
スッ

キング「レナ……」

茄子「……貴方は、本当に変わってしまったんですか?私たちに見せてくれた……あの楽しそうな表情は、嘘だったんですか?」

ギース「……一体何を言っているのかわからんな。私は何一つ変わってはいない。常に在るのは、闇の帝王としての私だけだ」

茄子「……」
ジッ

ギース「……」

茄子「……失礼します。お体を大事にしてくださいね」
ペコ
タタッ

バタン




ギース「……フン」

リッパー「……ギース様」

ギース「あの女たちが日本に帰るまで見張りをつけろ。何かあったらすぐに私に知らせろ」

ホッパー「……!はい」

リッパー(……では、あの娘たちは本当に……)

レナ「……っとに信じられない、あの男……いや、性格が最悪なのは知っていたけど!」

キング「レ、レナ……落ち着きなよ」

レナ「これが落ち着いてられますかって話よ!ほんとに無駄足……いや!あの男が本当にどうしようもない男ってわかっただけ無駄足じゃなかったかもね!ある意味せいせいしたわ!!」

レナ「ちょっとキングちゃん!貴女確かサウスタウンにお店持ってるんでしょう!?行きましょう!今から!!」

キング「それは構わないけど……ほどほどにしときなよ……」

茄子「……」

レナ「ちょっと茄子ちゃん!あなたも当然付き合って……どうしたの?」

茄子「……なんだか……街の雰囲気が……」

パーン
キング「……銃声!?こんな街中で!?」







部下「ギ、ギース様!報告します!!」
ドタドタ

リッパー「落ち着いて話せ」

部下「は、はい……!またチャイナタウンの連中の襲撃です!!し、しかも今度はイーストアイランドの真ん中で!!」

ギース「……奴らめ、見境が無くなって来たな」

部下「い、いかがいたしましょう!ギース様……!」

ギース「リッパー、兵の武装はどうなっている」

リッパー「……はい、まだ動員ができる数は少ないようです。こんなに矢継ぎ早にイーストアイランドを狙ってくるとは」

ギース「良い。動ける者から出していけ。私の兵は一騎当千、数で劣ろうともチャイニーズマフィア如きに遅れは取らん」

ホッパー「……ギース様。もう一件、報告が来ました」

ギース「……なんだ?」

ホッパー「その襲撃現場に、先ほどの女たちも居合わせているようです」

ギース「……リッパー、ホッパー、車を出せ。大至急だ」

リッパー「……はい」

ホッパー(……ギース様、自ら……!?)

ドカーン
パパパパパ

キング「……クソ、奴ら銃だけでなく爆弾まで……!ここは市街地だってのに……!」

キング「二人とも!無事かい!?」

レナ「ええ、ケガはないわ……けど……」

茄子「まるで……戦場……!」

キング「……ここに居続けるのは危険だね。なんとか脱出しないと……」

キキキキキ
バタン

ギース「随分好きにやってくれたようだな、ドブネズミども」

チャイニーズマフィア「見ろ!ギース・ハワードだ!やっと出てきやがった!」

チャイニーズマフィア2「奴の庭先まで来て暴れた甲斐があったぜ!確実ここでヤツを始末するんだ!!」

ギース「……やはり最近の襲撃は私をおびき寄せるための罠か」

リッパー「ギース様!お車にお戻りください!危険です!」

ギース(時間を稼がねばならん……奴らが脱出できる程度……)

ギース「リッパーよ、行け。『あちら』の指揮を取れ」

リッパー「……しかし」

ギース「私の命令が聞けんか?フン、案ずるな。私はここで死ぬ気は毛頭ない」

リッパー「……了解しました。ホッパー、出せ!」

ホッパー「……!」
ブルルルルルル

ギース「……行ったか。さて、貴様たちに私の命を獲れるかな?」

チャイニーズマフィア「撃てーーーーー!!」
パパパパパパパ

キング「……銃撃が別方向に集中している……?脱出は今しかないよ!」

茄子「……?」

茄子「……!」

茄子「あれは……ハワードさん……!?危ない!」
ダッ

キング「あっ、カコ!ダメだ!」

レナ「茄子ちゃん!待ちなさい!」
ダッ

チャイニーズマフィア「ば、馬鹿な……」

ギース「ふっ……当たらんな。貴様らのような雑魚の弾が私に当たるわけがない……ん?」

茄子「ハワードさん!大丈夫ですか!?」
タッタッタ

ギース「……なんだと!?」

レナ「ちょっと!待ちなさい、茄子ちゃん!」
タッタッタ

ギース「……馬鹿か貴様たちは。何故私の元に来る。何のために私がわざわざ時間を稼いでやったと思っているのだ」

茄子「……やっぱり、私たちのことを守ってくれたんですね」

レナ「……」

ギース「……死にたがりの女たちめ」




チャイニーズマフィア「なんだ……?ギースの傍に女が二人いるぞ……」

チャイニーズマフィア2「構うな!今がギースを殺れる最大のチャンスなんだ!」

チャイニーズマフィア「だ、だが銃が当たらないぞ!」

チャイニーズマフィア2「だったらコレを投げつけてやれ!銃は躱せても、爆風と破片は躱せん!」



ギース「馬鹿の相手をしている暇はないのだ。早々に日本に帰れ」

レナ「なによ、その言い草は!大体貴方が説明もなしに急に解散なんてするからこんな事に……」

茄子「……!お二人とも!何か飛んできます!」

ギース「……!手りゅう弾だ!」

レナ「!!」

ギース(気で、防御を……駄目だ!二人までは守り切れん!―――――)
ガバ

茄子「―――――――!」

シーン
チャイニーズマフィア「……不発?」

チャイニーズマフィア2「そんなはずはない!もうひとつ投げろ!」
ブン

コンコン

ギース「……」

レナ「……」

茄子「―――――」

シーン

チャイニーズマフィア「こ、これも不発!?」

チャイニーズマフィア2「ば、馬鹿な!あ、ありえん!!ヤツは、ギースには幸運の女神(フォーチュン)が味方に付いているとでも言うのか!」

ギース「……私は運など信じていなかったが、或いはそうなのかもしれんな……」

チャイニーズマフィア2「ええい、ならば白兵戦だ!全員ナイフを持て!直接この手で……」
ドカーン



チャイニーズマフィア「こ、後方で爆発です!あ、あれは……」

リッパー「行け!一人たりとも逃がすな!ギース・ハワードの兵であるという誇りをもって戦え!」

兵たち「はっ!」
パパパパパパ



チャイニーズマフィア2「逆に包囲されてるだと……馬鹿な……」
ガクッ

レナ「な、なんだか知らないけど、助かったの……?」

ギース「……フン、命拾いしたな」

ギース「……だが、これで分かっただろう。この街は血で塗れている。お前たちのいるべき場所ではない」

茄子「……それは、貴方も同じです、ハワードさん。またプロデューサーをやってくださいとは言いません。また日本に来てくださいとは言いません。こんな危険な事は、やめてください……!」

ギース「……聞けんな。この街が血に塗れているように、私の手も血に染まっているのだ。もはや引き返すことは出来ん」

茄子「それでも……いつかは、きっといつかは……」

ギース「……私が日本を発つ直前……ある男にも同じような事を言われたな」

ギース「だが、これは私が望んで決めた道なのだ。勘違いしてもらっては困る、この街の覇権を握り、来るべき強大な敵を討つ……それが私の人生であり、宿命だ」

レナ「……」

ギース「……日本へ、帰れ。お前たちの戦場は、生きる場所はステージの上だ。それと同じで、ここが私にとってのステージなのだ」

茄子「……ハワード、さん……」
ポロ

ギース「……レナ。カコを、頼むぞ」

レナ「……ええ。……もう、会う事は出来ないの?」

ギース「そうだ。今、私とお前たちのステージは完全に別たれた。生きて会うことはもうあるまい」

茄子「……うっ……」
ポロポロ

レナ「……行きましょう、茄子ちゃん」

ギース「……ああ、それと最後に言い忘れていた」

ギース「……お前たちと過ごした時間は……良いものだった。私も少しは『縁』とやらを信じてみる気になったぞ……さらばだ」
ザッザッザッザッ

レナ「……なによ、それ。最後まで……どれだけ上から目線なのよ……」
ポロッ

茄子「ハワード、さん」
ポロポロポロ


茄子「ああ―――――……」

茄子(その後の事は、正直あまり覚えていません。キングさんに凄く怒られたって事と、その日の内にもう日本行の飛行機に乗った事くらいです、覚えているのは)





後日
日本


プルルルル
茄子「はい、鷹富士です♪」

レナ『茄子ちゃん?さっきなんだけど、つかさちゃんから連絡があったわ。相談したい事があるって』

茄子「?なんでしょう?」

都内
カフェ

茄子「……私たちが」

レナ「つかさちゃんの事務所のアイドルに?」

つかさ「……ああ。正直まだアイドル事務所としての体も成してない状態だから心苦しいんだけどさ」

つかさ「ホントはスタートはアタシが社長兼アイドルでやってくつもりだったんだけど……ちょっとキャパが足りそうもない。だから最初はアタシは社長に専念して……で、最初のアイドルは、二人に頼みたいんだわ」

つかさ「他の二人はもう美城に移っちゃってて……正直、アイツのプロデュースしたReppuの元メンバーの手を借りるのは負けたみたいな気がして、悩んだんだけど」

つかさ「けど、今は負けてても、必ずやっていくうちにアイツを追い越して見せる!だから……手を貸してくれ!この通り!」

レナ「……つかさちゃん、顔を上げて」

茄子「良いじゃないですか。私たちで、ハワードさんを追い越しましょう?」

つかさ「……い、良いのか?」

レナ「そうね。どこの事務所だろうと、関係ない。ステージの上が私たちの生きる場所なんだもの」

茄子「まずは目指すはReppu越え!ですね♪」

つかさ「……もちろんだっての!よし、すげー気合い入った。絶対業界1番の事務所にして見せるからな!」

茄子(……そうですハワードさん。きっと、海を越えてあなたに届くくらいに、ステージで輝いてみせますから――――――)



彼女たちが新たな一歩を踏み出した、奇しくも同日……サウスタウンで、一人の男が殺害された。

男の名を――――――ジェフ・ボガード。
殺害したのは―――――――ギース・ハワード。

この日ギースはサウスタウン完全掌握の為の大きな、あまりにも大きな一歩を踏み出した。

これ以降組織は、街は、完全に彼の手中に収まっていくことになる。

そして同時に、その一歩は彼の破滅への一歩でもあった。

それは、この時ジェフの庇護を受けていた……一人の少年を目覚めさせたからである。


後に、ギース・ハワードの物語を終わらせる少年。

少年の―――――餓狼の名を、テリー・ボガード。

少年の、餓狼の慟哭は、新たなる伝説の幕開けを知らせる。

―――――――即ち、餓狼伝説を―――――――


外伝
烈風の行く先

ART OF PRODUCE
龍虎のP外伝


以上で終わりです。
読んでくれた方ありがとうございました。


また続編の予定はあるのかな?

>>444

まだ全く何も考えてないけどぼんやりと最後完結編書こうかな~っていう構想はあります

まぁそもそも今回の外伝も予定は全くなかったんだけど、前作が割と楽しんでもらえたっぽかったので書きました。

SS内の小ネタの解説ページ作ってもらえてたり……絵描いてもらえてたり……
そういうの嬉しすぎるよね……

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