『幸腹グラフィティ』のリョウときりんが百合百合しく絵画うんちくを語りながら美術館めぐりするssです。
美術知識は結構適当なのでご容赦を・・
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きりん「え…?なんでいきなり?」
リョウ「きりん、ごはんばっかり食べていて忘れているかもしれませんが、私たちは美術学校の生徒ですよ?」
きりん「あー…そういえばそんな設定あったねぇ…」
リョウ「設定とか言わない!」
きりん「そんなことよりさ、今日のお昼ごはんなに?」
リョウ「そんなことじゃないです!今日はこれから美術館に行くんです!」
きりん「えー、美術館よりリョウのごはん食べたいよー!」
リョウ「そ、そう言ってくれるのは嬉しいですが……///」
リョウ「今日は美術館に行くんです!」
きりん「やだー!リョウのごはんーー!!」
リョウ「もう。わがまま言わないでください。美術館に行くなら、とっておきのスーパースペシャルなおべんとう、お作りしますよ?」
きりん「え!?スペシャルなおべんとう!?」キラキラ
リョウ「はい♪」
きりん「じゃあ行く!」
リョウ「いい子いい子。でしたら、準備してくださいね」ヨシヨシ
美術館
リョウ「着きました!」
きりん「んーと…『印象派の画家たち~光の世界~』だって。光の世界ってなんだろ?」
リョウ「1800年代後半のフランスを中心に流行した印象派は、光の刹那の輝きを絵画に切り取ることにこだわりを持っていたらしいですよ」
きりん「へー。詳しいね」
リョウ「もう。きりんも美術学校の生徒なんですから、勉強しなきゃですよ?」
きりん「えへへー」
リョウ「それはそうと、きりんと私の刹那の輝きも大切にしたいですね」
きりん「ん??うん。そうだね…?」
きりん「うっわ。この絵なんかえっちだよ///」
リョウ「これは、マネの『オランピア』ですね。ちなみに、ここに描かれている裸の女性は娼婦ですよ」
きりん「しょうゆ…?」
リョウ「娼婦です。要は、お金をもらって男の人とえっちなことをする人です」
きりん「え!?え!?そんなの描いていいの!?」///
リョウ(恥ずかしがるきりん…アリですね)
リョウ「この作品が発表された当時は大炎上でしたよ。裸の娼婦なんて下品なモノを描くなんてけしからんってね。それに、この絵の右下の方を良く見てください」
きりん「右下…あ!黒猫さんだ!」
リョウ(猫にさん付け…///)
リョウ「ええ。この当時、黒猫は魔女の象徴とされていました。こんなものを神聖な絵画に描くなんて、タブー中のタブーだったのです」
きりん「へ、へー。でも、どうしてそんな絵を描いたんだろ」
リョウ「恐らく…マネは何か新しいことがしたかったのでしょう」
きりん「新しいこと…」
リョウ「ええ。伝統や古いしきたりなんかを壊したかったんだと思います」
きりん「ふーん……」
きりん「あー、キレイな絵!黒服のお母さんと、可愛い姉妹ちゃんだよ!」
リョウ「これはルノワールの『シャルパンティエ夫人と子供たち』ですね」
きりん「へー、なんだか、柔らかいタッチだね」
リョウ「ええ。ルノワールはこの絵のように柔らかいタッチで黒服の婦人画を数多く残しています」
きりん「そうなんだー。フリフリの服着た姉妹ちゃんも可愛いよね」
リョウ「これは姉妹ではありませんよ?」
きりん「え?」
リョウ「この当時、五歳くらいまでの男の子には女の子の恰好をさせるのが普通だったんですよ。だから、この絵の片方の子は、恐らく男の娘ではないだろうかと言われています」
きりん「え…男の娘…」
リョウ「ええ。きりんが毎週土曜の朝に見ているアニメにも出ているでしょ?」
きりん「そ、そうだけど…そんな変態的なことしてるのなんて、日本だけかと思ってたよ…」
リョウ「男の娘は決して変態ではありませんよ!あと、もっと言うと、百合も変態ではありません!」
きりん「ゆ、百合!?」
リョウ「女の子同士の恋愛です!」
きりん「え、えっと」
リョウ「きりんは、百合、好きですよね?」ゴゴゴゴ
きりん「き、嫌いじゃないよ…」アワアワ
リョウ(よしっ!)
リョウ「そうですか。いろいろな価値観を受け入れられないと絵画は楽しめませんからね」
きりん「う、うん」
リョウ「さ、次、行きましょう!」
きりん「わぁ、キレイな風景画だねぇ。ヨーロッパの街並みかな?」
リョウ「ええ。これは、ピサロの『パリのテアトル・フランセ広場、雨』ですね」
きりん「やっぱり雨なんだ。なんか水っぽいなーって思ったよ」
リョウ「ええ。少しぼわっとしているこの絵は、雨の影響もありますが、それよりもピサロが歳のために目がほとんど見えなくなっていたことが原因だと言われています」
きりん「え!?見えないのに書いてたの!?」
リョウ「ええ。ピサロは若いときには全く評価されず、それでも描き続けました。そして、晩年にやっと少しずつ評価され始めるも、今度は目がやられて外に出ることすら難しくなります」
きりん「ついてないね…」
リョウ「それでも彼は描きつづけました。なぜだかわかりますか?」
きりん「…なんでだろ?」
リョウ「絵が大好きだからです」
きりん「大好きだから…か。私もそれは分かる気がするな」
リョウ「そうなんですか?」
きりん「うん!だって私、大好きなリョウのためなら、どんなことだって出来るから!」
リョウ「/////」プシュー
きりん「リョウ?リョウ?だいじょうぶ?」
リョウ「ご、ごめんなさい…嬉しくてちょっと頭の回線がショートしていました///」
きりん「もう!リョウったら!」
リョウ「そ、それでは、次に行きましょうか///」
リョウ「これはマネの弟と結婚した女性画家、モリゾが描いた実の娘ジュリーの絵ですね」
きりん「へー。可愛いね」
リョウ「ええ。でもモリゾは、ジュリーのことを不細工だ、こんななら男の子に生まれれば良かったと言うのですよ」
きりん「なにそれっ!酷いよ!」プンスカ
リョウ(頬をふくらませるきりん…///)
リョウ「そうですね。私だったら例え自分の子供がどれだけ不細工でも、そんな事は言いません」
きりん「そうだね」
リョウ「まぁ、きりんと私の子供が不細工なワケはないので、あまり心配いりませんね///」
きりん「うん…うん?」
きりん「あ!バレリーナさんだ!」
リョウ「これはドガの『舞台訓練』ですね」
リョウ「ドガはこのようによくバレリーナの絵を描いています」
きりん「へー」
リョウ「ですが、それらは全部のぞきで描いてるんですよ」
きりん「え…覗き見?」
リョウ「ええ。彼はお金持ちだったので、バレリーナたちを覗き見る権利をお金で買ったのです。中には入浴シーンや、下の毛を処理している最中の絵もあります」
きりん「う、うわぁ…絵描きの人って変態さんが多いのかな…」
リョウ(言えない…私もきりんの入浴や生着替え、歯磨きからトイレまで除いているなんて…)
きりん「これ知ってるー!モネの『睡蓮』だ!」
リョウ「ええ。モネの『睡蓮』は本当に有名ですよね。恐らく、ゴッホの『ひまわり』にも引けを取らないかと」
きりん「ん…あれ?モネの別の絵もかざってあるけど、隣のルノワールの絵と構図が全く一緒だよ??」
リョウ「ええ。これはモネのものもルノワールのものもタイトルは一緒で『ラ・グルヌイエール』といいます。まったく一緒の絵に見えるのは、二人で隣に座って絵を描いていたからです」
きりん「へー!モネとルノワールは仲良しさんだったの?」
リョウ「ええ。二人は、グレール画塾というところで知り合い、生涯の親友になります。ちなみに、その画塾で一緒だったシスレーという画家も彼らの親友です」
きりん「へー。なんだか私達みたいだね!」
リョウ「え?」
きりん「ルノワールが私で、リョウがモネ。そして、シスレーが椎名!」
リョウ「あ!確かに。言われてみると似てる気がしますね!」
きりん「へへー///」
リョウ「でも…モネとルノワールはそれぞれ別の人と結婚してしまいます…そこだけが違いますね」
きりん「ん…?男の人同士だよ??」
リョウ「はい…それが問題でも?」
きりん「問題だらけだよ!」
リョウ「問題…?あ!この当時はまだiPS細胞がなかったからですか!それには気が付きませんでした…」
きりん「あいぴーえす…?私、ときどきリョウの言ってることが分からないよ…」
リョウ「そろそろ印象派展も終わりに近づいてきました」
きりん「最後の絵は…ゴッホだ!」
リョウ「そうですね。これは『星月夜』です」
きりん「なんだか…吸い込まれそうでちょっと怖い絵だねぇ」
リョウ「ええ。これを描いた当時、ゴッホの精神は異常な状態にありました。ゴッホは嫌なことがあった時、星空を見上げ、それに宗教的な救いを求めたと言われます。そして、この絵を描いた二年後、ゴッホは拳銃で自殺してしまいます」
きりん「…どうしてこの人はそんなにつらかったの?」
リョウ「もともと彼は気難しく、傷付きやすい性格でした。恐らく、そんな彼にトドメを刺したのは同居人のゴーギャンでしょう」
きりん「ゴーギャン…隣に絵が飾ってあるね」
リョウ「『ひまわりを描くゴッホ』ですね。同居中に、ゴーギャンがゴッホをモデルに描いた絵です」
きりん「どうしてゴッホはゴーギャンと同居していたの?」
リョウ「ゴッホは芸術家たちが共同生活をする家を持つことをずっと夢に見ていたのです。そして、その家が完成した時の住人第一号がゴーギャンだったのです」
きりん「ゴーギャンはどうしてゴッホと?」
リョウ「それはゴッホの弟、テオからの仕送りが目当てだったと言われています。その当時、ゴーギャンは無一文でした。だから、ゴッホと共同生活することで、寝る場所を手に入れ、明日のご飯を手に入れたのです」
きりん「なんか…そういうのイヤだね」
リョウ「同居当時、二人は本当に素晴らしい師弟関係にありました。けれど、奔放すぎるゴーギャンと几帳面すぎるゴッホはたびたび衝突します。そのストレスに耐えかねて、ゴッホは遂に自らの耳を切り落としてしまいます」
きりん「うわぁ…」
リョウ「耳を切ったゴッホを見たゴーギャンは、ゴッホとこれ以上一緒にいるのは不可能だと悟り、出て行ってしまいます」
きりん「ひどい…」
リョウ「…ええ」
きりん「なんか…」
リョウ「はい?」
きりん「…なんでもないよ」
リョウ「…?」
リョウ「今日は勉強になりましたね~」
きりん「…」
リョウ「きりんはどの絵が好きでしたか?」
きりん「…」
リョウ「きりん??」
きりん「私って、リョウにとってゴーギャンみたいかな」
リョウ「へ?」
きりん「私、リョウの家に半分居候させてもらってるのに、手伝いもせず、毎日ごはんばっかり食べて…」
きりん「今日もリョウが美術館に行きたいって言うのに、ごはん食べたいばっかり言って、またリョウを困らせて…」
きりん「こんな私って――」
リョウ「きりん」ダキッ
きりん「わふっ」
リョウ「きりんも言ってたじゃないですか。私たちはゴッホとゴーギャンじゃなくて、モネとルノワールですよ」
きりん「で、でも…」
リョウ「そうだ!これから一緒に公園でおべんとうを食べましょう」
きりん「え?」
リョウ「そしたらきっとわかりますよ」ニコリ
リョウ「じゃーん。スペシャルおべんとうです!」ドヤァ
きりん「うわぁ。美味しそう…」
リョウ「実はこのおべんとう、全てきりんがお家から持ってきてくれた食材で作ったのですよ」
きりん「え…全部?」
リョウ「ええ。家まで結構あるのに、きりんはいつもたくさんのお野菜や、お肉や、お米を持ってきてくれますよね」
きりん「…うん」
リョウ「知ってますか?モネもルノワールも全く売れない新人のころ、特にモネは彼の浪費癖も手伝って、かなり貧乏でした」
きりん「そうなんだ」
リョウ「ええ。そして、食べるものがない。餓死寸前!ってところまで追い詰められたことが幾度となくあったそうです」
きりん「…」
リョウ「そんなとき、決まっていつもルノワールは自分の実家に戻り、家にあるありったけのパンを自分の洋服のポケットに詰め込めるだけ詰め込んでモネの家へ走ったそうです」
きりん「へー…」
リョウ「とてもステキな友人関係だと思いませんか?」
きりん「…うん」
リョウ「私も、おばあちゃんが亡くなってから一人で食べるごはんは美味しくなくて、心はきっと餓死寸前でした」
リョウ「でも、そんな時きりんが来てくれた。たくさんの食材もですが、それよりも、大切な人と一緒に食べるごはんの美味しさを思い出させてくれました」
リョウ「だから、私にとってきりんは、言葉では言い表せないくらいの大切な親友です」
きりん「リョウ…!」
リョウ「だから、これからも、ずっと、ずっと一緒にいてくださいね」
きりん「うん…うん!」
リョウ「ふふ。では…」
きりん・リョウ「いただきます!」
終り
ありがとうございました
幸腹グラフィティ百合ss増えろ~
桜トリックの方が濃いです。
こちらは雰囲気的に匂わせる程度なので。
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