道明寺歌鈴「雨に想いを」 (17)

道明寺歌鈴ちゃんのSSです。

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お仕事が終わっていざ帰ろうとすると、しとしとと雨が降っていました。



プロデューサーさんはタクシーを呼んで帰ろうと言ってくれましたが、せっかくなので、と事務所まで歩いて帰ろうと誘いました。

幸いにも折り畳み傘を持ってきましたので濡れることはなく、とは言ってもそこは折り畳み傘なのでお互いに少し濡れてしまうのですが、まあそれくらいなら、とプロデューサーさんも了承してくれました。

お仕事に行く前に傘を持っていった方が良いとアドバイスをくれた朋さんに感謝です。


しっとりと雨が降る中、二人で一つの傘に入りながら歩きます。

私とプロデューサーさんの立てるコツコツとした足音がリズミカルに響き、歩く、という単純な行為ですら何処か楽しくなります。


そんな気持ちが伝わったのでしょうか。

「ご機嫌だな、雨がそんなに好きだったっけ」

と、プロデューサーさんが言いました。


「いえ、プロデューサーさんとこうして帰れるのが嬉しくて」

そう答えるとプロデューサーさんが恥ずかしそうに顔をそらしてしまいました。

もう、と小さく口を尖らせます。変なところで私を照れさせてくるのに私からのは弱いんだから、という思いは心に秘めておきます。


ですがせめてもの仕返しにと腕をプロデューサーさんの腕に絡めます。

なにをするんだと言いたげな視線にはさっきのプロデューサーさんよろしく、ぷいっと顔を逸らしてお返事です。


少しの沈黙の後、どちらからともなく笑ってしまいました。

馬鹿馬鹿しいけどとっても楽しい一時。こうして歩くことになったから感じられる幸せな時間です。



──────


「あ、見てくださいプロデューサーさんっ!」

道端にあるものを見つけてプロデューサーさんの腕を引っ張って呼びます。


「どうした?」

「これです、これ! 綺麗なお花ですね……」

雨を受けながらもしっかりと自分の存在感を示している黄色く咲いた花を指します。

なんてことはない普通のお花。でも何故か他のお花とは違い、私はそれに惹き付けられました。


雨に打たれながらも自分は自分だと誇っているように見えたからでしょうか、理由ははっきりとはしないけれど、それでもそれは美しかったのです。

そんなことを感じながら立ち止まってそのお花を見ていると、プロデューサーさんがぼそっと「歌鈴の方が綺麗だな」と呟いたのが聞こえました。


思わずそれまで地面に向けていた顔をプロデューサーさんの方へと向けてしまいます。

ぱくぱくと声にならない声をあげながらプロデューサーさんに先ほどの言葉の真意を聞こうとします。


そんな私の様子に自分があの台詞を言ったことに気付いたのか、プロデューサーさんの顔が見るみるうちに真っ赤に染まっていきます。

二人で揃って顔を真っ赤にしながら沈黙が私たちを包みます。


「あ、「あのっ!」」

声が重なります。プロデューサーさんに促され口を開きます。

「その、わ、私が綺麗でいられるのはプロデューサーさんのおかげで、その……」

「えっと、だから……これからも、そばにいて下さい!」

──────



気付いたら雨が上がっていました。顔を出した太陽の光に目を細めながら空を見上げると彩やかな虹が橋を架けています。

プロデューサーさん、と呼びかけます。どうした、とこちらを見るプロデューサーさんの頬に背伸びをして軽く口付けしました。

驚いて頬を押さえるプロデューサーさんに、にこっとはにかむと軽やかに駆け出します。


雨上がりの帰り道はキラキラと日光を浴びて輝いていて、きっといい事が待っている。そんな予感にさせてくれるのでした。


以上です。読んでくださりありがとうございました。

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